(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記センサは、前記リンス液と前記乾燥気体によって前記基板の表面に形成されるべき前記リンス液の界面の外側をセンシングする液領域センサであることを特徴とする請求項1に記載の基板乾燥装置。
前記センサは、前記リンス液と前記乾燥気体によって前記基板の表面に形成されるべき前記リンス液の界面の内側をセンシングする乾燥領域センサであることを特徴とする請求項1に記載の基板乾燥装置。
前記センサは、前記リンス液と前記乾燥気体によって前記基板の表面に形成されるべき前記リンス液の界面の外側をセンシングする液領域センサと、前記リンス液と前記乾燥気体によって前記基板の表面に形成されるべき前記リンス液の界面の内側をセンシングする乾燥領域センサとを含むことを特徴とする請求項1に記載の基板乾燥装置。
前記液領域センサは、前記リンス液ノズルから吐出されたリンス液の前記基板の表面における着水エリアの重心と前記基板の中心との間の距離と、前記液領域センサの前記基板の表面におけるセンシングエリアの最も内側と前記基板の中心との間の距離とが、ほぼ同じになるように、前記リンス液ノズル及び前記乾燥気体ノズルの移動に伴って移動することを特徴とする請求項2又は4に記載の基板乾燥装置。
前記乾燥領域センサは、前記リンス液ノズルから吐出されたリンス液の前記基板の表面における着水エリアの最も内側と前記基板の中心との距離と、前記乾燥領域センサの前記基板の表面におけるセンシングエリアの重心と前記基板の中心との距離とが、ほぼ同じになるように、前記リンス液ノズル及び前記乾燥気体ノズルの移動に伴って移動することを特徴とする請求項3又は4に記載の基板乾燥装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、枚葉IPA乾燥において、基板の回転による基板表面の移動速度に対して、リンス液の供給量やリンス液ノズル及び乾燥気体ノズルの外周に向かう移動速度等の乾燥条件が適切でないと、枚葉IPA乾燥が良好に行われずに、ウォーターマークや残存異物による欠陥が発生する。特に、基板が大径化すると、中心寄りの箇所と外周寄りの箇所では、リンス液ノズル及び乾燥気体ノズルに対する基板表面の相対的な移動速度の差が大きくなる等の理由から、スループットを極力上げつつ、中心から外周にかけてリンス液の界面を移動させて良好な枚葉IPA乾燥を行うことが困難になる。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、良好な枚葉IPA乾燥を行うことで欠陥の発生を抑制できる基板乾燥装置、制御プログラム、及び基板乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の基板乾燥装置は、基板を水平面内で回転させる基板回転機構と、前記基板回転機構によって回転する前記基板に対して相対的に前記基板の中心から遠ざかるように移動しつつ、前記基板にリンス液を吐出するリンス液ノズルと、前記リンス液ノズルの移動に伴って前記基板回転機構によって回転する前記基板に対して相対的に前記基板の中心から遠ざかるように移動しつつ、前記基板に乾燥気体を吹出する乾燥気体ノズルと、前記リンス液ノズル及び前記乾燥気体ノズルの移動に伴って前記基板の中心から遠ざかるように移動することで、前記基板の表面の前記リンス液の界面付近をセンシングするセンサと、前記センサのセンシング結果に基づいて、前記リンス液と前記乾燥気体によって前記基板の表面に前記リンス液の界面が前記基板の外周に向けて広がるように、乾燥条件を制御する制御部とを備えた構成を有している。
【0010】
この構成により、センサが移動しながら外周に向けて広がるリンス液の界面の付近をセンシングし、そのセンシング結果に基づいて乾燥中にリンス液の界面が所望の形状になるように乾燥条件を制御できる。なお、センサについて、リンス液ノズル及び乾燥気体ノズルの移動に伴って移動するとは、リンス液ノズル及び乾燥気体ノズルが移動したときにセンサも移動するという意味であり、必ずしも一体となって移動することを言うものではない。
【0011】
上記の基板乾燥装置において、前記センサは、前記リンス液と前記乾燥気体によって前記基板の表面に形成されるべき前記リンス液の界面の外側をセンシングする液領域センサであってよい。この構成によりに、リンス液の界面の外側にあるべき領域にリンス液がない状態を検知して乾燥条件を制御できる。
【0012】
上記の基板乾燥装置において、前記センサは、前記リンス液と前記乾燥気体によって前記基板の表面に形成されるべき前記リンス液の界面の内側をセンシングする乾燥領域センサであってよい。この構成により、リンス液がない状態及びリンス液の界面の内側にあるべき領域にリンス液がある状態を検知して乾燥条件を制御できる。
【0013】
上記の基板乾燥装置において、前記センサは、前記リンス液と前記乾燥気体によって前記基板の表面に形成されるべき前記リンス液の界面の外側をセンシングする液領域センサと、前記リンス液と前記乾燥気体によって前記基板の表面に形成されるべき前記リンス液の界面の内側をセンシングする乾燥領域センサとを含んでいてよい。この構成により、リンス液の界面の外側にあるべき領域にリンス液がない状態及びリンス液の界面の内側にあるべき領域にリンス液がある状態を検知して乾燥条件を制御できる。
【0014】
上記の基板乾燥装置において、前記液領域センサは、前記リンス液ノズルから吐出されたリンス液の前記基板の表面における着水エリアの重心と前記基板の中心との間の距離と、前記液領域センサの前記基板の表面におけるセンシングエリアの最も内側と前記基板の中心との間の距離とが、ほぼ同じになるように、前記リンス液ノズル及び前記乾燥気体ノズルの移動に伴って移動してよい。この構成により、リンス液ノズルの移動が遅く、又はリンス液の吐出量が不足している状態を検知して乾燥条件を制御できる。
【0015】
上記の基板乾燥装置において、前記乾燥領域センサは、前記リンス液ノズルから吐出されたリンス液の前記基板の表面における着水エリアの最も内側と前記基板の中心との距離と、前記乾燥領域センサの前記基板の表面におけるセンシングエリアの重心と前記基板の中心との距離とが、ほぼ同じになるように、前記リンス液ノズル及び前記乾燥気体ノズルの移動に伴って移動してよい。この構成により、リンス液ノズルの移動が速く、又はリンス液の吐出量が過剰である状態を検知して乾燥条件を制御できる。
【0016】
上記の基板乾燥装置において、前記リンス液ノズルと前記液領域センサとの相対位置関係は固定されていてよい。この構成により、液領域センサは、確実にリンス液ノズルの移動に追随して移動して、リンス液の界面付近の液領域をセンシングできる。
【0017】
上記の基板乾燥装置において、前記リンス液ノズルと前記乾燥領域センサとの相対位置関係は固定されていてよい。この構成により、乾燥領域センサは、確実にリンス液ノズルの移動に追随して移動して、リンス液の界面付近の乾燥領域をセンシングできる。
【0018】
上記の基板乾燥装置において、前記乾燥条件は、前記リンス液ノズルからの前記リンス液の吐出量を含んでいてよい。この構成により、リンス液不足によって、基板が回転している間にリンス液の界面が途切れてしまう等の状況を改善できる。
【0019】
上記の基板乾燥装置において、前記乾燥条件は、前記リンス液ノズルの移動速度を含んでいてよい。この構成により、リンス液ノズルの移動速度が速すぎてリンス液ノズルが基板の外周方向にリンス液の界面を追い越す等の状況を改善できる。
【0020】
上記の基板乾燥装置において、前記乾燥条件は、前記基板の回転速度を含んでいてよい。この構成により、基板の回転速度が速すぎて基板の外周方向にリンス液の界面がリンス液ノズルを追い越す等の状況を改善できる。
【0021】
本発明の別の態様の基板乾燥装置は、基板を水平面内で回転させる基板回転機構と、前記基板回転機構によって回転する前記基板に対して相対的に前記基板の中心から遠ざかるように移動しつつ、前記基板にリンス液を吐出するリンス液ノズルと、前記リンス液ノズルの移動に伴って、前記基板回転機構によって回転する前記基板に対して相対的に前記基板の中心から遠ざかるように移動しつつ、前記基板に乾燥気体を吹出する乾燥気体ノズルと、前記リンス液ノズルとともに移動しつつ、前記基板の表面をセンシングするセンサと、前記センサのセンシング結果に基づいて、乾燥条件を制御する制御部とを備えた構成を有している。
【0022】
この構成により、リンス液ノズルとともに移動するセンサによって基板の表面をセンシングするので、リンス液ノズルと乾燥気体ノズルによって外周に向けて広がるリンス液の状態に基づいて乾燥中にリンス液の界面が所望の形状になるように乾燥条件を制御できる。
【0023】
本発明のさらに別の態様の基板乾燥装置は、基板を水平面内で回転させる基板回転機構と、前記基板回転機構によって回転する前記基板に対して相対的に前記基板の中心から遠ざかるように移動しつつ、前記基板にリンス液を吐出するリンス液ノズルと、前記リンス液ノズルの移動に伴って前記基板回転機構によって回転する前記基板に対して相対的に前記基板の中心から遠ざかるように移動しつつ、前記基板に乾燥気体を吹出する乾燥気体ノズルと、前記リンス液ノズルが前記基板の中心から遠ざかるに従って前記リンス液の吐出量が多くなるように、前記リンス液ノズルを制御する制御部とを備えた構成を有している。
【0024】
この構成により、基板の中心から離れるに従ってリンス液の吐出量が多くなるので、ンク液ノズルがリンス液を吐出する基板の表面の速度が増加しても所望のリンス液の界面を形成できる。
【0025】
本発明の基板乾燥方法は、基板を水平面内で回転させ、前記基板の中心から遠ざかるようにリンス液ノズルを移動させつつ、前記リンス液ノズルから前記基板にリンス液を吐出し、前記乾燥気体ノズルの移動に伴って前記基板の中心から遠ざかるように乾燥気体ノズル移動させつつ、前記乾燥気体ノズルから前記基板に乾燥気体を吹出し、前記リンス液ノズル及び前記乾燥気体ノズルの移動に伴って前記基板の中心から遠ざかるように移動することで、前記基板の表面の前記リンス液の界面付近をセンシングし、前記センシングの結果に基づいて、前記リンス液と前記乾燥気体によって前記基板の表面に前記リンス液の界面が前記基板の外周に向けて広がるように、乾燥条件を制御する構成を有している。
【0026】
この構成により、外周に向けて広がるリンス液の界面の付近をセンシングし、そのセンシング結果に基づいて乾燥中にリンス液の界面が所望の形状になるように乾燥条件を制御できる。
【0027】
本発明の制御プログラムは、基板を水平面内で回転させる基板回転機構と、前記基板回転機構によって回転する前記基板に対して相対的に前記基板の中心から遠ざかるように移動しつつ、前記基板にリンス液を吐出するリンス液ノズルと、前記リンス液ノズルの移動に伴って前記基板回転機構によって回転する前記基板に対して相対的に前記基板の中心から遠ざかるように移動しつつ、前記基板に乾燥気体を吹出する乾燥気体ノズルと、前記リンス液ノズル及び前記乾燥気体ノズルの移動に伴って前記基板の中心から遠ざかるように移動することで、前記基板の表面の前記リンス液の界面付近をセンシングするセンサとを備えた基板乾燥装置を制御する制御プログラムであって、前記制御部に、前記センサのセンシング結果に基づいて、前記リンス液と前記乾燥気体によって前記基板の表面に前記リンス液の界面が前記基板の外周に向けて広がるように、乾燥条件を制御させる構成を有している。
【0028】
この構成によっても、センサが移動しながら外周に向けて広がるリンス液の界面の付近をセンシングし、そのセンシング結果に基づいて乾燥中にリンス液の界面が所望の形状になるように乾燥条件を制御できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、センサが移動しながら外周に向けて広がるリンス液の界面の付近をセンシングし、そのセンシング結果に基づいて乾燥中にリンス液の界面が所望の形状になるように乾燥条件を制御できる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態の基板乾燥装置について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
【0032】
図1は、基板乾燥装置1の概略構成を示す斜視図である。まず
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る基板乾燥装置1を説明する。基板乾燥装置1は、処理される基板Wを回転させる基板回転機構10と、基板Wにリンス液としてのリンス液Rを供給するリンス液ノズル20と、基板Wに乾燥気体Gを供給する乾燥気体ノズル30と、リンス液ノズル20及び乾燥気体ノズル30を基板Wの面と平行に移動させる移動機構40と、基板回転機構10及び移動機構40を含む基板乾燥装置1の動作を制御する制御装置50とを備えている。処理される基板Wは、典型的には、半導体素子製造の材料である半導体基板であり、円板状に形成されている。基板Wは、一方の面に回路が形成されており(この面を「表面WA」という。)、他方の面(裏面)には回路が現れていないことが多い。
【0033】
基板回転機構10は、チャック爪11と、回転駆動軸12とを有している。チャック爪11は、基板Wの外周端部(エッジ部分)を把持して基板Wを保持するように複数設けられている。チャック爪11は、基板Wの面を水平にして保持することができるように、それぞれ回転駆動軸12に接続されている。本実施の形態では、表面WAが上向きとなるように、基板Wがチャック爪11に保持される。回転駆動軸12は、基板Wの面に対して垂直に延びる軸線まわりに回転することができ、回転駆動軸12の軸線まわりの回転により基板Wを水平面内で基板回転方向Drに回転させることができるように構成されている。
【0034】
移動機構40は、可動アーム41と、可動軸42と、駆動源43とを含んで構成されている。可動アーム41は、基板Wの半径よりも大きな長さを有する。その先端部分であるアーム先端41aには、リンス液ノズル20及び乾燥気体ノズル30が取り付けられる。可動軸42は、駆動源43の動力を可動アーム41に伝達する棒状の部材であり、その長手方向が可動アーム41の長手方向に対して直交するようにその一端が可動アーム41のアーム先端41aとは反対側の端部に接続されており、その他端は駆動源43に接続されている。駆動源43は、可動軸42を軸線まわりに回動させる装置である。可動軸42は、基板Wの外側で鉛直方向に延びるように設置されている。
【0035】
可動アーム41は、可動軸42との接続端の反対側に取り付けられた乾燥気体ノズル30から吐出された乾燥気体流Gfが、基板Wの回転中心に衝突することができるように構成されている。移動機構40は、駆動源43を稼働させると可動軸42を介して可動アーム41が回転し、可動アーム41の回転に従って、その先端41aに設けられたリンス液ノズル20及び乾燥気体ノズル30は基板Wの中心Wcから遠ざかって外周に向かう方向に移動するように構成されている。
【0036】
本実施の形態では、移動機構40は、基板回転機構10によって回転する基板Wに対して、相対的に基板Wの中心から遠ざかるように、リンス液ノズル20を基板Wの上方で移動させるリンス液ノズル移動機構と、基板回転機構10によって回転する基板Wに対して、相対的に基板Wの中心から遠ざかるように乾燥気体ノズル30を基板Wの上方で移動させる乾燥気体ノズル移動機構とを兼ねている。
【0037】
リンス液ノズル20は、基板Wの表面WA上の液が液滴の状態から乾燥することに起因するウォーターマーク等の欠陥の発生を回避するために、基板Wの上面を液膜で覆うためのリンス液Rを、基板Wに液流(リンス液流Rf)の状態で供給するノズル(筒状で先端の細孔から流体を噴出する装置)である。
【0038】
リンス液Rは、典型的には純水であるが、溶存塩類及び溶存有機物を除去した脱イオン水、炭酸ガス溶解水、(水素水や電解イオン水などの)機能水等を用いてもよい。ウォーターマーク発生の原因となる溶存塩類及び溶存有機物を排除する観点からは脱イオン水を用いるのがよい。また、基板Wの回転によるリンス液Rの基板W上の移動に伴う静電気の発生が異物を誘引し得るところ、リンス液Rの導電率を上昇させて帯電を抑制する観点からは炭酸ガス溶解水を用いるのがよい。
【0039】
リンス液流Rfは、基板Wの表面WAの面積に対して細い。処理される基板Wとしては直径が200mm〜450mmのものがあり、リンス液流Rfを形成することとなるリンス液ノズル20の内径は、1mm〜10mm、あるいは3mm〜8mmのうちの適切なものを用いるとよい。リンス液ノズル20から吐出されて基板Wの表面WAに衝突するリンス液流Rfの直径(リンス液流Rfの断面直径)は、リンス液ノズル20の内径と略同じになる。
【0040】
図2は、ノズル先端まわりの部分拡大側面図であり、(a)はリンス液ノズルの側面図であり、(b)は乾燥気体ノズルの側面図である。リンス液ノズル20から吐出されたリンス液流Rfが基板Wの表面WAに衝突する領域を着水エリアRaという。
図2(a)に示すように、実際には着水エリアRaにはすでにリンス液Rが存在しているので、リンス液ノズル20から吐出されたリンス液流Rfはすでに基板Wの表面WAに存在しているリンス液Rに混ざることになるが、着水エリアRaというときは、このような基板Wの表面WAにすでに存在しているリンス液Rを考慮せずにリンス液流Rfが基板Wの表面WAに衝突する領域をいうものとする。
【0041】
乾燥気体ノズル30は、基板Wの表面WAを覆うリンス液Rの膜に対してIPAを供給すると共にリンス液Rの膜を押しのける乾燥気体Gを、基板Wに気体流(乾燥気体流Gf)の状態で供給するノズルである。乾燥気体Gは、典型的にはキャリアガスとして機能する窒素やアルゴン等の不活性ガスに対してIPAの蒸気を混合させたものであるが、IPA蒸気そのものであってもよい。乾燥気体流Gfは、基板Wの表面WAの面積に対して細い。
【0042】
処理される基板Wとしては直径が200mm〜450mmのものがあり、乾燥気体流Gfを形成することとなる乾燥気体ノズル30の内径は、3mm〜10mm、あるいは4mm〜8mmのうちの適切なものを用いるとよい。乾燥気体ノズル30の径は、リンス液ノズル20の径と同じであっても異なっていてもよい。乾燥気体ノズル30から吐出されて基板Wの表面WAに衝突する乾燥気体流Gfの直径(乾燥気体流Gfの断面直径)は、乾燥気体ノズル30の内径と略同じになる。
【0043】
乾燥気体ノズル30から吐出された乾燥気体流Gfが基板Wの表面WAに衝突する領域を着ガスエリアGaという。
図2(b)に示すように、着ガスエリアGaにはすでに乾燥気体Gが存在しているので、乾燥気体ノズル30から吹出された乾燥気体流Gfはすでに基板Wの表面WAに存在している乾燥気体Gに混ざることになるが、着ガスエリアGaというときは、このような基板Wの表面WAにすでに存在している乾燥気体Gを考慮せずに乾燥気体流Gfが基板Wの表面WAに衝突する領域をいうものとする。
【0044】
乾燥気体流Gfは、枚葉IPA乾燥を行うのに適した細さに設定される。また、リンス液流Rfの着水エリアRaと乾燥気体流Gfの着ガスエリアGaとの関係は、枚葉IPA乾燥を適切に行うことができるようにする観点から決定される。典型的には、リンス液流Rf及び乾燥気体流Gfが移動する際においても、乾燥気体流Gfがリンス液流Rfよりも中心側にある状態が維持される。
【0045】
図3(a)は基板乾燥装置の移動機構まわりの平面図であり、
図3(b)は移動機構の可動アーム先端の部分拡大平面図である。
図3(a)を参照して、リンス液ノズル20及び乾燥気体ノズル30を備えたアーム先端41aが移動する方向(これを「ノズル移動方向Dn」という。)について説明する。ノズル移動方向Dnは、枚葉IPA乾燥が行われる際に、すなわち基板Wの表面WAにリンス液R及び乾燥気体Gが供給される際に、アーム先端41aが移動する方向であり、基板Wの回転中心Wcから外周へ向かう方向である。
【0046】
図3(a)に示すように、アーム先端41aには、リンス液ノズル20及び乾燥気体ノズル30に加えて、液領域センサ51及び乾燥領域センサ52が設けられている。即ち、リンス液ノズル20及び乾燥気体ノズル30と、液領域センサ51及び乾燥領域センサ52とは、アーム先端41aという同一の部材に設けられており、互いの相対位置関係は固定されており、アーム先端41aの移動に伴ってすべて同時に移動する。乾燥気体センサ51及び液領域センサ52は、アーム先端41aに設けられることで、リンス液ノズル20及び乾燥気体ノズル30とともに基板の中心から遠ざかるように移動する。液領域センサ51及び乾燥領域センサ52は、それぞれ基板Wの表面WAのリンス液の界面付近をセンシングする。
【0047】
図3(b)は、移動機構の可動アーム先端の部分拡大平面図である。
図3(b)には、着水エリアRa、着ガスエリアGaに加えて、液領域センサ51のセンシングエリアSw乾燥領域センサ52のセンシングエリアSdが示されている。
図3(b)に明確に示されるように、液領域センサ51は、リンス液Rと乾燥気体Gによって基板Wの表面WAに形成されるべきリンス液Rの界面Reの外側をセンシングし、乾燥領域センサ52は、リンス液Rの界面Reの内側をセンシングする。
【0048】
液領域センサ51及び乾燥領域センサ52は、それぞれ基板Wの表面WAに形成されるリンス液Rの液膜の膜圧を測るセンサである。この液領域センサ51及び乾燥領域センサ52としては、レーザ式、超音波式、接触式、静電容量式などの液膜の膜厚を測定できる任意のセンサを用いることができる。
【0049】
また、
図3(b)に示すように、着ガスエリアGaは着水エリアRaに対してノズル移動方向Dnの上流側に位置し、着ガスエリアGaと基板Wの中心Wcとの間の距離R52は着水エリアRaと基板Wの中心Wcとの間の距離R51より近い。また、基板回転方向Drについて見れば、着水エリアRaは着ガスエリアGaよりも上流側となる。このとき、着水エリアRa内に乾燥気体流Gfが入らないようにしつつ、乾燥気体Gの作用を、少なくとも着水エリアRaにあるリンス液Rに実質的に及ぼすことができる範囲内で、着水エリアRa及び着ガスエリアGaを決定するとよい。
【0050】
ここで、リンス液Rに乾燥気体Gの作用を実質的に及ぼすことができる範囲とは、リンス液Rの表面張力を低下させるという乾燥気体Gの作用のうちの1つを、期待される程度(枚葉IPA乾燥を適切に行うことができる程度)に発揮できる範囲である。リンス液Rの表面張力を低下させる作用は、基板Wの回転に伴う遠心力で広がったリンス液Rが飛散するのを防ぐ観点から、主に表面WAに衝突後に拡散された乾燥気体Gにより及ぼされるものであることが好ましい。基板Wに対して上述の位置にリンス液流Rf及び乾燥気体流Gfを供給することができるように、リンス液ノズル20及び乾燥気体ノズル30が可動アーム41に取り付けられている。
【0051】
図4は、基板乾燥装置の制御系の構成を示すブロック図である。基板乾燥装置1は、液領域センサ51、乾燥領域センサ52、制御部53、リンス液吐出量調節部54、アーム揺動速度調節部55、及び基板回転速度調節部56を備えている。液領域センサ51及び乾燥領域センサ52は、センシング結果を制御部53に送信する。制御部53は、コンピュータで構成され、液領域センサ51及び乾燥領域センサ52のセンシング結果に基づいて、制御プログラムに従って、リンス液吐出量調節部54、アーム揺動速度調節部55、基板回転速度調節部56に対する制御信号を生成して送信する。
【0052】
リンス液吐出量調節部54は、制御部53からの制御信号に従ってリンス液ノズル20から吐出されるリンス液流Rfの流量(吐出量)を調節する。アーム揺動速度調節部55は、移動機構40の駆動源43と信号ケーブルで接続されており、制御部53からの制御信号に従って駆動源43による可動軸42の回転速度を調節することにより可動アーム41の移動速度を調節する。基板回転速度調節部56は、回転機構10の回転駆動軸12と信号ケーブルで接続されており、制御部53からの制御信号に従って回転駆動軸12の回転速度を調節することにより基板Wの回転速度を調節する。これらのリンス液流Rfの流量、可動アーム41の移動速度、基板Wの回転速度は、本発明の乾燥条件に相当する。
【0053】
図5は、リンス液の界面と、着水エリア、着ガスエリア、及び各センシングエリアとの位置関係を示す、
図3の部分Lの拡大図である。
図5は、リンス液Rの界面Reが理想的な形状となっている状態を示している。以下では、着水エリアRaの重心Rac、センシングエリアSwの重心、及びセンシングエリアSdの重心と、基板Wの中心Wcとの間の距離をそれぞれR
1、R
2、R
3とし、着水エリアRa、センシングエリアSw、及びセンシングエリアSdの半径をそれぞれr
1、r
2、r
3とする。なお、本実施の形態では、センシングエリアSw、Sdは円形であるので、それらの重心は即ち中心である。また、以下の説明において、内側及び外側は、それぞれ基板Wの中心Wcに向かう方向及び基板Wの中心Wcから外周に向かう方向を意味するものとする。
【0054】
図5に示すように、センシングエリアSwの内側の端と基板Wの中心Wcとの間の距離(即ち、R
2−r
2)は、着水エリアRaの重心Racと基板Wの中心Wcとの間の距離R
1と同じであり、センシングエリアSwの全体が、基板Wの周方向に着水エリアRaと重なっている。また、センシングエリアSdの中心と基板Wの中心Wcとの距離R
3は、着水エリアRaの内側の端とW基板の中心Wcとの距離(即ち、R
1−r
1)と同じである。
【0055】
リンス液ノズル20、液領域センサ51、及び乾燥領域センサ52が上記の条件を満たすよう配置されていると、
図4に示す理想的なリンス液Rの界面Reが形成されているときに、液領域センサ51はある程度の膜圧のリンス液Rの液膜を検知し、乾燥領域センサ52は、リンス液Rを一切検知しない。制御部53は、液領域センサ51があるリンス液Rのある程度の膜圧を検知し、乾燥領域センサ52がリンス液Rを検知ないときに、理想的なリンス液Rの界面Reが形成されていると判断する。
【0056】
基板乾燥装置1の作用を説明する。以下の説明における各部材の動作は、制御部53により制御される。前工程において、CMPが行われ、薬液等で湿式洗浄が行われた基板Wが、基板回転機構10のチャック爪11に把持されている。乾燥工程前の湿式洗浄処理は、これから乾燥処理が行われる際に用いられるのと同じ基板回転機構10上で行われてもよい。乾燥処理が行われる基板Wが基板回転機構10に保持されると、リンス水ノズル20の吐出口が基板Wの表面WAの回転中心Wcよりやや外れた部分に対向する位置に至るまで可動アーム41を移動させる。このとき、乾燥気体ノズル30は、着ガスエリアGa内に表面WAの回転中心Wcが存在しつつ、衝突範囲の重心が表面WAの回転中心Wcよりもノズル移動方向Dnの上流側となる場所に位置することとなる。
【0057】
可動アーム41が上述の位置まで移動したら、リンス液Rが基板Wの表面WAに供給されるように、リンス液流Rfをリンス水ノズル20から吐出させる。表面WAへのリンス液流Rfの供給を開始したら、回転駆動軸12を回転させ、これにより基板Wが水平面内で回転する。
【0058】
表面WAがリンス液Rで覆われ、基板Wの回転速度が所定の値まで上昇したら、乾燥気体ノズル30から表面WAへ乾燥気体流Gfが供給される。表面WAへの乾燥気体流Gfの供給が開始されても、表面WAへのリンス液流Rfの供給は継続している。表面WAへ乾燥気体流Gfが供給されることにより、表面WA上のリンス液Rに働く遠心力が小さい回転中心Wc付近についても、乾燥気体Gが供給された部分のリンス液Rが除去されて、表面WAに乾燥した領域が現れる。表面WAへの乾燥気体流Gfの供給が開始されたら、可動アーム41をノズル移動方向Dnに移動させ、これに伴い表面WAに対して着水エリアRa及び着ガスエリアGaがノズル移動方向Dnに移動する。可動アーム41が稼働を始める前の乾燥気体ノズル30は、着ガスエリアGaの重心が表面WAの回転中心Wcよりもノズル移動方向Dnの上流側となる場所に位置していたため、可動アーム41の移動によって着ガスエリアGaの重心は回転中心Wcを通り過ぎることとなる。
【0059】
リンス液流Rf及び乾燥気体流Gfが表面WAに供給されながら可動アーム41が回転中心Wcから基板Wの外周まで移動することにより、リンス液Rと乾燥気体Gとの境界が同心円状に徐々に広がり、表面WA上の乾燥した領域が徐々に拡大していく。このとき、リンス液Rの界面Reでは、リンス液Rに乾燥気体Gが吹き付けられることによって乾燥気体G中のIPAがリンス液Rに溶解し、リンス液Rの表面張力の低下が生じている。リンス液R中に溶解したIPA濃度は、乾燥気体流Gfの接触位置から離れるほど低くなるため、リンス液Rの表面張力に、ノズル移動方向Dnの上流側ほど低く下流側ほど高い勾配が生じる。この表面張力の勾配により、リンス液Rが表面張力の小さな方から大きな方へ引き寄せられるマランゴニ力が作用する。
【0060】
これに加えて、基板Wの回転により、リンス液Rが回転中心Wc側から基板Wの外周側に引き寄せられる遠心力が加わる。これらの力の相互作用により、リンス液Rが表面WA上から適切に除去される。上述した枚葉IPA乾燥によれば、疎水性の表面WAに対してもウォーターマーク等の不都合の発生を抑制して効果的に乾燥処理を行うことができる。なお、上述した枚葉IPA乾燥は、基板Wの表面WAが疎水性である場合に有効であるが、親水性の面に対しても適用可能である。
【0061】
可動アーム41が基板Wの外周に到達したら、表面WAへのリンス液流Rf及び乾燥気体流Gfの供給を停止する。このとき、表面WAに対するリンス液流Rfの供給の停止が先に行われ、次いで乾燥気体流Gfの供給の停止が行われる。その後、基板Wの回転速度を上昇させ(本実施の形態では約800〜2000rpmに上昇させる)、基板Wの外周端部(エッジ部分)及び裏面に残存している液滴を遠心力により除去する。以上で乾燥工程が終了し、基板Wの回転が停止された後、基板Wが回転機構10から搬出される。
【0062】
次に、上記のように枚葉IPA乾燥を行っている際に、リンス液Rの界面Reが理想的な状態とならない場合、及びそのときの制御部53によるフィードバック制御について説明する。上述のように、可動アーム41は、基板Wの中心Wcから外周に向けて移動する。このとき、基板Wは、基板回転機構10によって中心Wcを回転中心として回転している。よって、基板Wの表面WAの周方向への移動速度は、基板Wの外周に向かって徐々に大きくなっていき、遠心力もそれに従って大きくなっていく。上述のように、枚葉IPA乾燥は、遠心力とマランゴニ力とによって基板Wの表面WAに供給されたリンス液Rの液膜の界面Reを基板Wの中心Wcから外周に向けて徐々に拡大させながら移動させて基板Wを中心Wcから徐々に乾燥していく方法である。従って、リンス液Rの界面Reを適切に制御することが重要になる。
【0063】
図6〜
図8は、リンス液Rの界面Reが崩れてしまっている例を示す図である。アーム先端41aと基板Wの中心Wcとの距離が離れてくると、アーム先端41aの下での基板Wの周方向の移動速度は速くなり、リンス液ノズル20からのリンス液Rの吐出量が一定であるとすると、基板Wの表面WAの単位面積当たりに供給されるリンス液Rの量は少なくなる。また、上述のように基板Wの外周に向く遠心力も強くなる。そうすると、
図6及び
図7に示すように、アーム先端41aに対して基板Wの回転方向の上流側ではリンス液Rが不足してその液膜が薄くなり、界面Reが崩れてしまい、この領域ではマランゴニ効果を得ることができなくなる。そして、界面Reが崩れるとそこから基板Wの外周に向けた液筋が形成されて、これがウォーターマークの原因となる。
【0064】
図6及び
図7のような状態のときには、液領域センサ51は、きわめて薄い液膜厚しか検出できず、又は、液膜を間欠的にしか検知できず、又は、液膜をまったく検知できない。制御部53は、液領域センサ51のこのようなセンシング結果を受けると、それに基づいて
図6のような状況が生じていると判断する。この場合は、制御部53は、リンス液吐出量調節部54に対してリンス液Rの吐出量を多くする制御、及び/又は基板回転速度調節部56に対して基板Wの回転速度を低下させる制御を行う。リンス液Rの吐出量が多くなると、界面Reが途切れてしまっている領域でも十分なリンス液Rが存在して界面Reが形成されることが期待でき、また、基板Wの回転速度を低下させると、遠心力が弱くなって界面Re付近の液膜厚が保たれることが期待できる。
【0065】
図9は、リンス液Rの界面Reが着水エリアRaを追い越していまい、リンス液Rの界面Reがアーム先端41aの下で切れてしまっている例を示す、
図3の部分Lの拡大図である。まず、
図9に示すような状況が生じる背景について説明する。
【0066】
基板のサイズが従来の300mm(直径)から将来450mm(直径)に大型化すると、半径150mmよりも外側の部分(外周部=半径150mm〜225mm)が存在することとなり、平置きされた基板表面上の乾燥では、外周部において300mm基板では経験のない角速度が基板表面上のリンス液に作用することになる。従って、特に、大型化した基板の外周部において、乾燥特性が維持できない可能性がある。その要因としては、遠心力の増大、空気との摩擦乾燥などによる液膜薄膜化、及び液膜欠損が推測される。よって、枚葉IPA乾燥のような界面乾燥において界面を維持するための液コントロールが必要である。
【0067】
基板Wの回転速度が速すぎると遠心力が大きくなって、
図9に示すように、リンス液ノズル20から吐出された直後に形成された界面Reが基板Wを1週する間に外周に向けて移動しすぎて、再びアーム先端41aに戻ってきたときには、リンス液Rの界面Reは着水エリアRaよりも外側に移動していまい、切れ目が形成される。
【0068】
このような状態は、リンス液Rの界面の基板Wの外側に向けた移動速度が速く、アーム先端41aに対して基板Wの回転方向の上流側の速度がアーム先端41aに対して基板Wの回転方向の下流側の速度よりも相当に大きく、それによって、基板Wの回転によって周回して再びアーム先端41aに戻ってきたときに、リンス液Rの界面Reが着水エリアRaの外側の端よりも外側に移動してしまうことで生じる。このように切れ目が形成されると、
図9に示すようにその位置では径方向に3ラインの界面が形成されることになるが、外側の2ラインについては、乾燥気体流Gfが供給されないため、不安定な乾燥となる。
【0069】
図9のような状態のときは、液領域センサ51は液膜を検知できない。制御部53は、液領域センサ51のこのようなセンシング結果を受けると、それに基づいて
図9のような状況が生じていると判断する。この場合は、制御部53は、アーム揺動速度調節部55に対してアーム41の揺動速度(回転速度)を速める制御、及び/又は基板回転速度調節部56に対して基板Wの回転速度を低下させる制御を行う。アーム41の揺動速度が増すと着水エリアRaがアーム先端41aより上流側のリンス液Rの界面Reに追いついて、アーム先端41aの上流と下流でリンス液Rの界面Reが着水エリアRaを介してつながることが期待でき、基板Wの回転数を低下させると、遠心力が弱くなって界面Reの外周向きの移動速度を遅くして、アーム先端41aの上流と下流でリンス液Rの界面Reが着水エリアReを介してつながることが期待できる。
【0070】
図10は、着水エリアRaがリンス液Rの界面Reを追い越してしまい、リンス液Rの界面Reが基板Wの周方向全体で連続して(着水エリアRaの上流側と下流側で直接つながって)しまっている例を示す、
図3の部分Lの拡大図である。まず、
図10に示すような状況が生じる背景について説明する。
【0071】
近年、生産性を上げるためにスループット向上が要求されており、短時間による乾燥処理が枚葉IPA乾燥でも要求される。中心部から外周へ向けて表面乾燥する枚葉IPA乾燥では、乾燥に要する時間を短縮して生産性をあげるために、外周へ向けての処理速度をアップさせる必要である。特に、次世代の450mm基板においては、従来の300mm基板と比較して、直径が1.5倍であることから、300mm基板と同等レベルの生産性を得るだけでも中心部から外周への表面乾燥時間を同一にするために少なくとも1.5倍以上の処理速度アップが必要である。
【0072】
生産性向上のためにアーム41の揺動速度を速くしすぎると、
図10に示すように、着水エリアRaがリンス液Rの界面Reを外側に越えてしまう。この状態になると、リンス液ノズル20から供給された直後のリンス液Rによって形成されるべき界面が実際の界面よりも外側に進んでしまう。また、このような状態は、基板Wの回転速度が遅すぎて遠心力が小さくなりすぎた場合にも生じ得る。この状況が悪化すると、リンス液Rの界面Reがさらに内側に形成されて、着ガスエリアGaにまで達し、さらに、それを越えると、もはやリンス液Rの界面Reに対して乾燥ガスノズル30は乾燥空気流Gfをリンス液Rの界面Reに吹き付けることができなくなり、よって、リンス液Rの界面Reでマランゴニ効果が得られなくなる。
【0073】
図10のような状態のときは、乾燥領域センサ52が液膜を検知する。また、その予兆として、乾燥領域センサ52は、まず液膜を間欠的に検知するようになる。制御部53は、乾燥領域センサ52のこのようなセンシング結果を受けると、それに基づいて
図10のような状況が生じており、又は生じるおそれがあると判断する。この場合、制御部53は、アーム揺動速度調節部55に対してアーム41の揺動速度を低下させる制御、及び/又は基板回転速度調節部56に対して基板Wの回転速度を低下させる制御を行う。アーム41の揺動速度が低下すると、着水エリアRaがアーム先端41aより上流のリンス液Rの界面Reを追い越す状態が改善されることが規定でき、基板Wの回転数を低下させると、遠心力が弱くなって界面Reの外周向きの移動速度を遅くして、リンス液Rの界面Reの外周向きの移動がアーム先端41aの外周向きの移動に追いつくことが期待できる。
【0074】
基板Wの枚葉IPA乾燥において上記の乾燥条件の制御を行うことで、リンス液ノズル20からのリンス液Rの吐出量は、リンス液ノズル20が基板Wの外周に向かうに従って増加することになる。
図11は、リンス液Rの吐出量とアーム先端41aの基板Wの半径方向の位置との関係を示すグラフである。
図11に示すように、制御部53は、リンス液ノズル20が基板Wの外周に向かうに従って、リンス液ノズル20から吐出するリンス液Rの量が増加するように制御を行う。
【0075】
同様に、上記の乾燥条件の制御を行う際には、リンス液ノズル20の外周に向かう移動速度(揺動速度)は、リンス液ノズル20が基板Wの外周に向かうに従って増加させることがある。即ち、制御部53は、リンス液ノズル20が基板Wの外周に向かうに従って、リンス液ノズル20の移動速度が増加するような制御を行う。また、基板Wの回転速度は、リンス液ノズル20が基板Wの外周に向かうに従って低下させることがある。即ち、制御部53は、リンス液ノズル20が基板Wの外周に向かうに従って、基板Wの回転速度が低下するような制御を行う。
【0076】
以上のように、本実施の形態の基板乾燥装置1によれば、リンス液ノズル20及び乾燥気体ノズル30が基板の中心から遠ざかるように移動するのとともに、リンス液Rの界面Reの若干外側における液膜厚をセンシングする液領域センサ51及びリンス液Rの界面Reの若干内側における液膜厚をセンシングする乾燥領域センサ52も基板Wの中心Wcから遠ざかるように移動するので、基板Wの表面WAを外周に向けて広がりながら進んでいくリンス液Rの界面Reの状態をセンシングできる。そして、制御部53がリンス液Rの界面Reのセンシング結果に基づいて、乾燥条件を制御するので、リンス液Rの界面Reを良好に保って枚葉IPA乾燥を行うことができる。
【0077】
なお、上記の実施の形態では、基板乾燥装置1が液領域センサ51及び乾燥領域センサ52を備え、
図6〜10のいずれの状況をも検知して乾燥条件を制御したが、基板乾燥装置がいずれかのセンサのみを備え、
図6〜10のいずれかの状況の検知及びその対処のための乾燥条件の制御を行ってもよい。
【0078】
また、上記の実施の形態では、リンス液ノズル20、乾燥気体ノズル30、液領域センサ51、及び乾燥領域センサ52がいずれもアーム先端41aに設けられ、それらの相対的位置関係が固定されていたが、それぞれが独自の移動機構によって基板Wの上方を移動してもよい。
【0079】
また、1枚又は複数枚の基板Wの乾燥について、制御部53のリンス液吐出量調節部54等に対する制御信号、即ち乾燥条件のログを取っておき、それらのログに基づいてレシピを作成してもよい。制御部53は、このようにして作成されたレシピに従って、液領域センサ51や乾燥領域センサ52のフィードバックを必要とせずに、良好な枚葉IPA乾燥を行うことができる。例えば、制御部53は、リンス液ノズル20が基板Wの外周に向かうに従って、リンス液ノズル20から吐出するリンス液Rの量が増加するように制御し、リンス液ノズル20が基板Wの外周に向かうに従って、リンス液ノズル20の移動速度が増加するように制御し、かつ/又は、リンス液ノズル20が基板Wの外周に向かうに従って、基板Wの回転速度が低下するように制御する。
【0080】
レシピを作成する際には、アーム先端41aの基板Wの半径方向の位置を複数の領域に分けて、領域ごとに乾燥条件を一定としてもよい。
図12(a)は、リンス液Rの吐出量とアーム先端41aの基板Wの半径方向の位置との関係を示すグラフである。この例では、制御部53は、アーム先端41aの基板Wの半径方向の位置をA1〜A4の4つの領域に分けて、領域ごとに乾燥条件を一定としつつ、外周に向かってリンス液Rの吐出量が段階的に増加するようにリンス液Rの吐出量を制御する。また、
図12(b)は、同様にリンス液Rの吐出量とアーム先端41aの基板Wの半径方向の位置との関係を示すグラフであるが、この例では、制御部53は、各領域A1〜A4において連続的にリンス液Rの吐出量が増加するようにリンス液Rの吐出量を制御する。
【0081】
また、制御部53がレシピに従って制御を行っている場合において、上記の実施の形態で説明した液領域センサ51及び乾燥領域センサ52及び制御部53の演算をインターロックとして利用してもよい。
【0082】
また、液領域センサ51のセンシング範囲Sw及び乾燥領域センサ52のセンシングエリアSdの位置は、上記の実施の形態の位置に限られない。液領域センサ51については、
図6及び
図7に示すようにリンス液Rの界面Reが途切れてしまっている状態を検知するために必要な条件は、センシングエリアSwの全体が基板Wの周方向に着水エリアRaと重なっていることであり、即ちR
2+r
2<R
1+r
1を満たすことである。また、乾燥領域センサ52については、
図9に示すようなンス液Rの界面Reが基板Wの周方向全体で着水エリアRaを介さずに連続してしまっている状態を検知するために必要な条件は、センシングエリアSdの少なくとも一部が基板Wの周方向に着水エリアRaと重なっていることであり、即ちR
3+r
3>R
1−r
1を満たすことである。これらを総合して、望ましい条件は、R
3+r
3<R
2+r
2<R
1+r
1かつR
1−r
1>R
3を満たすことである。
【0083】
また、制御部53は、液領域センサ51が液膜を検知しない状況において、
図5の状況になっているのか、
図6の状況になっているのかは、そのときの基板Wの回転数、アーム41の揺動速度、アーム先端41aの位置等に基づいて判断する。
【0084】
また、上記の実施の形態では、
図5の状況における対策として、制御部53が、リンス液吐出量調節部54に対してリンス液Rの吐出量を多くする制御、及び/又は基板回転速度調節部56に対して基板Wの回転速度を低下させる制御を行うと説明し、
図6の状況における対策として、制御部53が、アーム揺動速度調節部55に対してアーム41の揺動速度(回転速度)を速める制御、及び/又は基板回転速度調節部56に対して基板Wの回転速度を低下させる制御を行うと説明し、
図9の状況における対策として、制御部53が、アーム揺動速度調節部55に対してアーム41の移動速度を低下させる制御、及び/又は基板回転速度調節部56に対して基板Wの回転速度を低下させる制御を行うと説明したとおり、基板乾燥装置は、リンス液吐出量調節部54、アーム揺動速度調節部55、基板回転速度調節部56のいずれかを備えていない構成としてもよい。また、リンス液吐出量調節部54、アーム揺動速度調節部55、基板回転速度調節部56のいずれかが、液領域センサ51や乾燥領域センサ52のセンシング結果にかかわらず所定の設定値(レシピ)に従ってリンス液Rの流量、アーム41の移動速度、基板Wの回転速度を制御してもよい。
【0085】
また、上記の実施の形態では、枚葉IPA乾燥において外周に向けて進行するリンス液の界面を制御するために、基板乾燥装置1は、リンス液吐出量調節部54、アーム揺動速度調節部55、及び基板回転速度調節部56を備え、乾燥領域センサ51及び液領域センサ52のセンシング結果に基づく制御部53の制御によって、リンス液の吐出量、アームの搖動速度、及び/又は基板の回転速度を調節した。これらのリンス液吐出量調節部54、アーム揺動速度調節部55、及び基板回転速度調節部56に代えて、又はそれらに加えて、基板乾燥装置1は、乾燥気体濃度調節部、及び乾燥気体流量調節部を備えていてよい。すなわち、本発明の「乾燥条件」は、リンス液の吐出量、アームの搖動速度、及び/又は基板の回転速度の他に、乾燥気体のIPA濃度、流量をも含む概念である。
【0086】
乾燥気体濃度調節部は、制御部53からの制御信号に従って、乾燥気体ノズル30から吹出される乾燥気体G中のIPA濃度を調節する。また、乾燥気体流量調節部は、制御部53からの制御信号に従って、乾燥気体ノズル30から吹出される乾燥気体流Gfの流量(吹出量)を調節する。なお、乾燥気体中のIPA濃度を調整する手法としては、例えば特開2011−192967号公報に開示された手法を採用することができる。
【0087】
制御部53は、例えば、リンス液の液膜が厚すぎる場合には流量を減らすよう乾燥気体流量調節部を制御できる。この場合には、制御部53は、乾燥気体の流量Gfを減らすとともに、基板の回転数を上げて、遠心力でリンス液を伸ばして液膜を薄くする。また、IPAは表面張力を下げる効果があるので、これによる液膜フィードバックも可能となる。また、リンス液の液膜が厚すぎる場合には、乾燥気体GのIPA濃度を上昇させることで、界面を形成した直後の膜厚を薄くすることも可能である。