(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子に要求される回路線幅の精度管理の要求はますます高くなっている。これらの半導体素子は、回路パターンが形成された原画パターン(マスク或いはレチクルともいう。以下、マスクと総称する)を用いて、いわゆるステッパと呼ばれる縮小投影露光装置でウェハ上にパターンを露光転写して回路形成することにより製造される。よって、かかる微細な回路パターンをウェハに転写するためのフォトリソグラフィマスクの製造には、微細な回路パターンを描画することができる電子ビームを用いたパターン描画装置を用いる。かかるパターン描画装置を用いてウェハに直接パターン回路を描画することもある。
【0003】
そして、多大な製造コストのかかるCPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などのLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。歩留まりを低下させる大きな要因の一つとして、半導体ウェハ上に超微細パターンをフォトリソグラフィ技術で露光、転写する際に使用されるフォトリソグラフィマスクのパターン欠陥があげられる。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。そのため、LSI製造に使用される転写用マスクの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が好ましいとされている。
【0004】
検査手法としては、拡大光学系を用いてフォトリソグラフィマスク等の試料上に形成されているパターンを所定の倍率で撮像した光学画像と、設計データ、あるいは試料上の同一パターンを撮像した光学画像と比較することにより検査を行う方法が知られている。例えば、パターン検査方法として、同一マスク上の異なる場所の同一パターンを撮像した光学画像データ同士を比較する「die to die(ダイ−ダイ)検査」や、パターン設計されたCADデータをマスクにパターンを描画する時に描画装置が入力するための装置入力フォーマットに変換した描画データ(パターンデータ)を検査装置に入力して、これをベースに設計画像データ(参照画像)を生成して、それとパターンを撮像した測定データとなる光学画像とを比較する「die to database(ダイ−データベース)検査」がある。かかる検査装置における検査方法では、試料はステージ上に載置されステージが動くことによって光束が試料上を走査し、検査が行われる。試料には、光源及び照明光学系によって光束が照射される。試料を透過あるいは反射した光は光学系を介して、光検出器上に結像される。光検出器で撮像された画像は測定データとして比較回路へ送られる。比較回路では、画像同士の位置合わせの後、測定データと参照データとを適切なアルゴリズムに従って比較し、一致しない場合には、パターン欠陥有りと判定する。
【0005】
パターン検査によって判定された欠陥の欠陥補正方法は多様化している。従来から、パターンをFIB(Focused Ion Beam)でスパッタリングして取り除く方法、レーザーCVD(Chemical Vapor Deposition)によって金属膜を堆積させる方法、FIBまたは電子線によってアモルファスカーボン膜をパターンとして堆積させる方法などが、補正方法として使用されてきた。特許文献1には、フォトリソグラフィマスクのパターンを有する基板の透過率をフェムト秒レーザパルスで変化させ、フォトリソグラフィマスクの転写像を補正する方法が記載されている。
【0006】
このように欠陥の検査方法と欠陥補正方法が多様化しているため、欠陥の欠陥補正方法に基づいて欠陥の過剰な検出を防止したフォトリソグラフィマスクの検査をすることが出来る検査装置および検査方法が求められていた。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0017】
なお、以下の記載においては、フォトリソグラフィマスク(被検査試料)を単にマスクと表記する。
【0018】
(第1の実施形態)
本実施形態の検査装置は、欠陥を有する被検査試料に照明光を照射する照明部と、被検査試料を透過したまたは被検査試料によって反射された照明光を結像した光学画像を取得する結像部と、欠陥の欠陥補正方法情報を保存する第1の記憶部と、欠陥補正方法情報に基づいて光学画像と参照画像の比較を行う比較部と、比較部における比較の結果と欠陥補正方法情報に基づいて欠陥の補正の適否を判断する判断部と、を備える。
【0019】
本実施形態の検査方法は、欠陥を有する被検査試料に照明光を照射し、被検査試料を透過した照明光を結像した第1の光学画像と被検査試料によって反射された照明光を結像した第2の光学画像のいずれか一方または両方を取得し、被検査試料を透過した照明光を結像した光学画像の参照となる第1の参照画像と第1の光学画像を比較しまたは被検査試料によって反射された照明光を結像した光学画像の参照となる第2の参照画像と第2の光学画像を比較し、欠陥の欠陥補正の要否を判断し、欠陥の欠陥補正方法を判断し、欠陥の欠陥補正方法情報を保存し、欠陥補正方法を用いて欠陥を補正し、被検査試料に照明光を照射し、被検査試料を透過した照明光を結像した第3の光学画像と被検査試料によって反射された照明光を結像した第4の光学画像のいずれか一方または両方を取得し、欠陥補正方法情報に基づいて第1の参照画像と第3の光学画像を比較または第2の参照画像と第4の光学画像を比較し、比較の結果と欠陥補正方法情報に基づいて補正の適否を判断する。
【0020】
図1は、第1の実施形態における検査装置1000の模式図である。本実施形態の検査装置は、マスクの欠陥検査を行うパターン検査装置である。
【0021】
保持部100には、マスクMが載置される。
【0022】
ステージ200は保持部100の下に配置され、保持部100を支持する。ステージ200は、互いに直交する横方向であるX方向およびY方向に、それぞれ第1のモーター210aおよび第2のモーター210bによって移動される。また、ステージ200は、鉛直方向に垂直な面内で、第3のモーター210cによって回転される。レーザー測長計220は、ステージ200のX方向における位置およびY方向における位置を測定する。
【0023】
移動制御部300は、後述する制御計算機650にバスライン670を介して接続される走査範囲設定機構310と、走査範囲設定機構310で設定される走査範囲内でステージ200が移動されるように第1のモーター210a、第2のモーター210bおよび第3のモーター210cを制御するモーター制御機構320と、を備える。
【0024】
照明部400は、光源410と、第1の照明部用レンズ420と、第2の照明部用レンズ430と、第1の照明部用ミラー440と、コンデンサレンズ450と、第1の照明部用光束分配手段460と、第2の照明部用ミラー470と、第2の照明部用光束分配手段480と、対物レンズ490と、を備える。
【0025】
光源410から出射されたレーザー光などの照明光は、第1の照明部用レンズ420および第2の照明部用レンズ430により平行な光束に拡径される。拡径された光束は、第1の照明部用ミラー440とコンデンサレンズ450によりマスクMの上面に照射される。第1の照明部用レンズ420と、第2の照明部用レンズ430と、第1の照明部用ミラー440と、コンデンサレンズ450は、透過照明系を構成する。なお、光源410の波長は、マスクMを用いて露光が行われた場合に近い状態でマスクMの検査をすることができるため、マスクMが用いられる露光装置が有する光源の波長と同程度であることが望ましい。
【0026】
また、光源410から出射されたレーザー光などの照明光は、第1の照明部用レンズ420および第2の照明部用レンズ430により平行な光束に拡径された後、第2の照明部用レンズ430と第1の照明部用ミラー440との間に配置された第1の照明部用光束分配手段460により反射される。第1の照明部用光束分配手段460により反射された照明光は、第2の照明部用ミラー470と第2の照明部用光束分配手段480によりマスクMの下面に照射される。第1の照明部用光束分配手段460と第2の照明部用ミラー470と第2の照明部用光束分配手段480は反射照明系を構成する。なお、第1の照明部用光束分配手段460および第2の照明部用光束分配手段480としては、具体的には、ハーフミラー、スリット、偏光ビームスプリッタなどを好ましく用いることができる。
【0027】
結像部500は、第1の光検出器510と、第1の結像部用レンズ520と、第2の光検出器530と、第2の結像部用レンズ540と、分離ミラー550と、を備える。
【0028】
透過照明系によりマスクMの上面に照射されマスクMを透過した照明光は、透過光と呼ばれる。また、反射照明系によりマスクMの下面に照射された後、マスクMにより反射された照明光は、反射光と呼ばれる。透過光と反射光は、対物レンズ490と第2の照明部用光束分配手段480を通して分離ミラー550に入射される。透過光は、分離ミラー550から第1の結像部用レンズ520を通して第1の光検出器510に結像される。また、反射光は、分離ミラー550から第2の結像部用レンズ540を通して第2の光検出器530に結像される。
【0029】
制御回路600は、第1の比較部(比較部)610と、第2の比較部612と、参照部620と、展開部622と、第1の判断部(判断部)624と、第2の判断部626と、第3の判断部628と、第4の判断部629と、パターンデータ記憶部630と、第1の記憶部632と、第2の記憶部634と、第3の記憶部636と、第4の記憶部638と、第5の記憶部639と、位置検出部640と、制御計算機650と、マップ作成部660と、バスライン670と、レビュー部680と、転写像作成部690と、を備える。
【0030】
マップ作成部660は、マスクMの欠陥のマップを作成する。ここで、マスクMの欠陥とは、マスクMのパターンエッジのラフネス、マスクMの線幅の分布(CDマップ)、マスクMのパターンの位置ずれ(REGマップ)などがあげられる。
【0031】
オートフォーカス部700は、オートフォーカス光束分配手段710と、フォーカスずれ検出機構720と、フォーカス制御機構730と、オートフォーカス部用モーター740と、を備える。
【0032】
オートフォーカス光束分配手段710は、反射光をフォーカスずれ検出部720に入射する。フォーカスずれ検出部720は、入射された反射光からフォーカスずれの程度を検出し、フォーカス制御部730にフォーカスずれの程度を入力する。フォーカス制御部730は、入力されたフォーカスずれの程度に基づいて、オートフォーカス手段用モーター740を制御して対物レンズ490を高さ方向に動かし、対物レンズ490の焦点をマスクM上にあわせる。なお、ステージ200を鉛直方向に動かしてもよい。なお、オートフォーカス光束分配手段710としては、具体的には、ハーフミラー、スリット、偏光ビームスプリッタなどを好ましく用いることができる。
【0033】
マスクMの検査方法としては、たとえばX軸方向を主走査方向、Y軸方向を副走査方向として、ステージ200のX軸方向の移動により照明光をX軸方向に走査し、ステージ200のY軸方向の移動により走査位置をY軸方向に所定のピッチで移動させる。なお、マスクMの検査方法は、上記の記載に限定されない。
【0034】
図2は、本実施形態における基板Sの透過率を減少させる補正をおこなったマスクMを透過した照明光を結像した光学画像の断面を示す模式図である。基板Sはたとえば石英からなり、遮光膜Fはクロムなどの金属の薄膜からなる。遮光膜Fはパターンを構成する。
図2(a)は欠陥を有するマスクM、
図2(b)は欠陥が補正された後のマスクM、
図2(c)は欠陥を有するマスクMのA−A’断面における透過光画像、
図2(d)は欠陥が補正された後のマスクMのA−A’断面における透過光画像である。
図2(a)の中央の遮光膜Fは、遮光膜Fの一部が欠落している白欠陥Iを、欠陥として有する。この白欠陥が配置されている部分は、
図2(c)のように、他の遮光膜Fが配置されている部分に比べて、透過光の量が多くなる。
【0035】
図2(b)のマスクMは、白欠陥I付近の基板をフェムト秒レーザパルスで溶解させて基板の透過率が減少した部分Cを有する。このため、
図2(d)では、中央の遮光膜が配置されている部分の周囲と他の遮光膜が配置されている部分の周囲とで、透過光の量が等しくなっている。このようにして、欠陥を補正することができる。なお、たとえば基板Sの膜厚を薄くすることにより、透過率を増加する補正をすることも可能である。
【0036】
図3は、本実施形態における欠陥を有するマスクMの検査装置の要部の模式図である。
図4は、本実施形態における欠陥を補正したマスクMの検査装置の要部の模式図である。
図5は、本実施形態におけるマスクMの検査方法のフローチャートである。
【0037】
まず、制御計算機650が、照明部400を用いて、欠陥を有するマスクMに照明光を照射し(S10)、結像部500を用いてマスクMを透過した照明光を結像した第1の光学画像とマスクMによって反射された照明光を結像した第2の光学画像を取得する(S12)。なお、第1の光学画像と第2の光学画像のいずれか一方を取得してもよい。取得された第1の光学画像と第2の光学画像は、第2の比較部612に送られる。
【0038】
次に、制御計算機650が、パターンデータ記憶部630に保存されているパターンデータを、展開部622に入力して、各層ごとに展開する。パターンデータは設計者によってあらかじめ作成されている。ここで、パターンデータは通常検査装置1000によって直接読みこめるように設計されていない。そのため、パターンデータは、まず各層(レイヤ)ごとに作成された中間データに変換された後に、各検査装置1000によって直接読み込める形式のデータに変換され、その後展開部622に入力される。
【0039】
次に、制御計算機650が、参照部620を用いて、展開部622で各層ごとに展開されたパターンデータから、マスクMを透過した照明光を結像した光学画像の参照となる第1の参照画像と、マスクMによって反射された照明光を結像した光学画像の参照となる第2の参照画像のいずれか一方あるいはその両方を作成する。
【0040】
次に、制御計算機650が、第2の比較部612を用いて、第1の参照画像と第1の光学画像を比較し、第2の参照画像と第2の光学画像を比較する(S14)。なお、欠陥の種別によっては、第1の参照画像と第1の光学画像の比較と第2の参照画像と第2の光学画像の比較のいずれか一方でもよい。ここで比較手法の一例としては、第1の光学画像のパターンの箇所の透過光量と、対応する第1の参照画像のパターンの箇所の透過光量を比較する手法が挙げられる。また、第2の光学画像のパターンの箇所の反射光量と、対応する第2の参照画像のパターンの箇所の反射光量を比較する手法が挙げられる。
【0041】
第1の光学画像と第1の参照画像または第2の光学画像と第2の参照画像は、レビュー部680に送られ、オペレータによるレビューがおこなわれる。ここでレビューとは、オペレータによる光学画像と参照画像の比較の作業のことをいう。
【0042】
なお、第1の比較部610と第2の比較部612とレビュー部680には、位置検出部640により求められたマスクMの欠陥座標が入力される。位置検出部640は、たとえば、マスクMの光学画像で基準となるマークと欠陥の場所との相対的な位置関係を測定し、相対的な座標として表すことにより、欠陥の場所を検出する。ここで、基準となるマークとしては、マスクM上の検査領域の四隅に配置されてプレート回転アラインメントに使用するアラインメントマークの一つを定義することが好ましく用いられる。
【0043】
次に、第4の判断部629またはオペレータが、第2の比較部612における比較の結果に基づいて、マスクMの欠陥の補正の要否を判断する(S16)。ここで判断手法の一例としては、第1の光学画像のパターンの箇所の透過光量と、対応する第1の参照画像のパターンの箇所の透過光量の差に基づいて判断する手法が挙げられる。また、第2の光学画像のパターンの箇所の反射光量と、対応する第2の参照画像のパターンの箇所の反射光量の差に基づいて判断する手法が挙げられる。本実施形態においては、マスクMが白欠陥をIを有することから、第1の参照画像と第1の光学画像との比較で欠陥の補正が望ましいと判断され、また、第2の参照画像と第2の光学画像との比較で欠陥の補正が望ましいと判断される。
【0044】
次に、第2の判断部626またはオペレータが、欠陥の補正が望ましいと認められたマスクMの欠陥の欠陥種別を判断する(S18)。判断された欠陥種別に関する欠陥の欠陥種別情報は、第3の記憶部636に保存される(S20)。ここで欠陥の欠陥種別情報とは、マスクMの欠陥の種別を示す情報であり、たとえば、パターンの形状の欠陥、パターンの線幅の欠陥、またはパターンの位置ずれの欠陥か、といった情報である。さらに、たとえば、反射光による光学画像により見つけられた欠陥か、あるいは透過光による光学画像により見つけられた欠陥か、といった情報であってもよい。本実施形態における欠陥の欠陥種別は白欠陥であり、本実施形態における欠陥の欠陥種別情報は「欠陥は白欠陥である」という情報である。
【0045】
また、第3の判断部628またはオペレータが、欠陥の欠陥補正方法を判断する(S22)。判断された欠陥補正方法に関する欠陥の欠陥補正方法情報は、第1の記憶部632に保存される(S24)。ここで欠陥補正方法情報とは、その補正が望ましいと判断された欠陥を補正する方法の情報である。ここで欠陥補正方法としては、たとえば、遮光膜Fの近傍の基板の一部をフェムト秒レーザパルス等で溶解させる等により基板の透過率を減少させる欠陥補正方法、基板の膜厚を減少させる等により基板の透過率を増加させる欠陥補正方法、余剰な遮光膜Fをレーザー光またはFIB(Focused Ion Beam)によって取り除く欠陥補正方法、マスクMの一部を局所的に腐食性ガス雰囲気にして余剰な遮光膜FをFIBまたは電子線により取り除く欠陥補正方法、余剰な遮光膜FをAFMカンチレバーの刃先で取り除く欠陥補正方法、レーザーCVD(Chemical Vapor Deposition)により金属膜を堆積させる欠陥補正方法、FIBまたは電子線によってアモルファスカーボン膜を堆積させる欠陥補正方法があげられる。本実施形態の補正方法は基板の透過率を減少させる方法であり、本実施形態の欠陥補正方法情報は基板の透過率を減少させる欠陥補正方法という情報である。
【0046】
次に、第4の判断部629またはオペレータが、補正が望ましいマスクMの座標をまとめた補正箇所座標リストを作成し、第4の記憶部638に保存する。
【0047】
補正箇所座標リストと欠陥種別情報と欠陥補正方法情報は、インターフェース800を通じて、補正装置2000に送られる。補正装置2000は、補正箇所座標リストと欠陥種別情報と欠陥補正方法情報を用いてマスクMの欠陥の補正をおこなう(S26)。
【0048】
次に、制御計算機650が、照明部400を用いて、マスクMに照明光を照射する(S28)。次に、制御計算機650が、結像部500を用いて、マスクMを透過した照明光を結像した第3の光学画像とマスクMによって反射された照明光を結像した第4の光学画像を取得する(S30)。なお、第3の光学画像と第4の光学画像のいずれか一方を取得してもよい。取得された第3の光学画像と第4の光学画像は、第1の比較部610に送られる。
【0049】
次に、制御計算機650が、第1の比較部610を用いて、補正箇所座標リストと欠陥種別情報と欠陥補正方法情報に基づいて、第1の参照画像と第3の光学画像の比較と第2の参照画像と第4の光学画像の比較をおこなう。(S32)。なお、第1の参照画像と第3の光学画像の比較と第2の参照画像と第4の光学画像の比較のいずれか一方でもよい。
【0050】
また、第3の光学画像と第1の参照画像または第4の光学画像と第2の参照画像は、レビュー部680に送られ、オペレータによるレビューがおこなわれる。
【0051】
本実施形態においては、欠陥種別情報は「欠陥は白欠陥である」という情報であり、欠陥補正方法情報は「基板の透過率を減少させる欠陥補正方法」という情報である。そのため、補正された箇所で、透過光による光学画像と反射光による光学画像のいずれも参照画像と比較することが望ましい。そこで制御計算機650は、第1の比較部610を用いて、補正された箇所の座標で第3の光学画像と第1の参照画像および第4の光学画像と第2の参照画像の比較をおこなう。
【0052】
次に、第1の判断部624またはオペレータが、第1の比較部610における比較の結果と欠陥種別情報と欠陥補正方法情報に基づいて補正の適否を判断する(S34)。本実施形態においては、遮光膜Fの形状を変更していない。そのため、マスクMによって反射された照明光を結像した光学画像には、補正前後で差があらわれず、第4の光学画像には欠陥が検出される。一方、マスクMを透過した照明光を結像した光学画像には補正前後で差があらわれ、補正が適切であれば第3の光学画像には欠陥が検出されない。そこで本実施形態においては、第1の参照画像と第3の光学画像の比較により欠陥は検出されなければ、第2の参照画像と第4の光学画像の比較により欠陥は検出されても、補正は適切であると判断する。
【0053】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
【0054】
本実施形態における基板の透過率を変化させる補正は、遮光膜Fの形状に変化を与えないものである。そのため、欠陥補正前のマスクMによって反射された照明光を結像した光学画像と欠陥補正後のマスクMによって反射された照明光を結像した光学画像に変化は検出されない。よって、欠陥種別情報と欠陥補正方法情報を用いずに補正の適否を判断すると、補正が適切に行われなかったという判断となり、欠陥を過剰に検出するおそれがある。本実施形態のように、欠陥種別情報と欠陥補正方法情報に基づき判断することにより、欠陥の過剰な検出を防止し、補正の適否を適切に判断することが可能となる。
【0055】
また、欠陥種別情報を用いると、展開部622を用いて、第1の光学画像と第2の光学画像のうち欠陥が検出されると予想される方の光学画像に対応する参照画像のみを展開するといった処理が可能となる。これにより、参照画像を作成する時間を少なくして、マスクMの検査を迅速に行うことができる。また、欠陥を検出する工程で光学画像と参照画像の比較のため光学画像と参照画像の画像アライメントを合わせるときに、欠陥種別情報と補正箇所座標リストを用い、欠陥を有する場所については画像アライメントを合わせるために用いないようにすることができる。これにより、光学画像と参照画像の比較をより厳密に行うことが出来る。特に欠陥を有する場所に大局的な線幅の太りや細りがある場合には、画像アラインメントを合わせる精度が大きく向上する。
【0056】
さらに、欠陥種別情報を用いると、第1の比較部610を用いて、第1の光学画像と第2の光学画像のうち欠陥があると判定された照明光に対応する光学画像のみについて、参照画像と比較をすることができる。これにより、マスクMの検査を迅速におこなうことができる。また、パターンの形状の欠陥か、パターンの線幅の欠陥か、パターンの位置ずれの欠陥か、といった情報が第1の比較部610に入力されることにより、マスクMの検査手順を省略することができるため、マスクMの検査を効率的におこなうことができる。
【0057】
補正箇所座標リストを用いると、余分なパターンをFIBでスパッタリングして取り除く方法や、レーザーCVDによって金属膜を堆積させる方法や、FIBまたは電子線によってアモルファスカーボン膜をパターンとして堆積させる方法と異なり、補正の際に用いられる遮光膜の原料が破片としてマスクM上に残留しない。そのため、欠陥と判定された座標箇所を中心とする所定の寸法範囲においてのみ光学画像と参照画像の比較をおこなえば足りる。これにより、マスクMの検査を効率的に行うことが可能となる。なお、上記の所定の寸法範囲は、たとえば、10μmから1mm程度であり、補正の規模に応じて適宜設定することが出来る。
【0058】
以上のように、本実施形態の検査装置および検査方法によれば、多様化するフォトリソグラフィマスクの欠陥補正方法に基づいて欠陥の過剰な検出を防止したフォトリソグラフィマスクの検査をすることが出来る検査装置および検査方法の提供が可能となる。
【0059】
(第2の実施形態)
本実施形態の検査装置は、転写パラメータと光学画像に基づいて転写像を作成する転写像作成部をさらに備える点で、第1の実施形態の検査装置と異なっている。ここで、第1の実施形態と重複する点については、記載を省略する。
【0060】
図6は、本実施形態における欠陥を補正した後のマスクの検査装置の模式図である。
【0061】
第5の記憶部639に保存されている転写パラメータは、たとえば、点光源やダイポール光源といった露光に用いられる光源の種類、露光に用いられる波長、露光に用いられるレンズの開口数である。
【0062】
転写像作成部690では、上記の転写パラメータと、結像部500によって得られた光学画像に基づいて、欠陥を補正した後のマスクを用いたと仮定した場合におけるウェハに転写したときの転写像を作成する。作成された転写像は第1の比較部610に送られ、レビュー部680にてレビューに用いられる。
【0063】
本実施形態においては、欠陥の補正が十分なものであるかどうかを、ウェハに転写したと仮定した場合の転写像により確認することが出来る。これにより、補正の可否をより具体的に判断することが可能となるため、マスクMの補正の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0064】
以上のように、本実施形態の検査装置によれば、多様化するフォトリソグラフィマスクの欠陥補正方法に基づいて欠陥の過剰な検出を防止したフォトリソグラフィマスクの検査をすることが出来る検査装置および検査方法の提供が可能となる。
【0065】
(第3の実施形態)
本実施形態の検査装置は、比較部で用いる感度指定データを記憶する第2の記憶部をさらに備える点で、第1の実施形態および第2の実施形態の検査装置と異なっている。ここで、第1の実施形態および第2の実施形態と重複する点については、記載を省略する。
【0066】
図7は、本実施形態における欠陥を補正した後のマスクの検査装置の模式図である。
【0067】
アシストバーなどのウェハ上に転写されないパターンやCMPを均一に行うためのダミーパターンの欠陥は、ウェハ上に転写されるトランジスタ等のパターンの欠陥と比較して、厳密に判定されなくともよい。そこで、アシストバーやダミーパターンが配置される部分は、欠陥判定の感度が低くなるように感度指定データを決定する。これにより、マスクMの歩留まりをあげることが出来る。
【0068】
また、本実施形態の検査装置によりパターンの線幅や位置ずれの欠陥は補正出来たがパターンの形状欠陥がまだ残っているという場合がある。このときには、欠陥判定の感度が高くなるように感度指定データを決定することにより、形状欠陥を厳密に判定することが出来る。
【0069】
本実施形態の検査装置によれば、多様化するフォトリソグラフィマスクの欠陥補正方法に基づいて欠陥の過剰な検出を防止したフォトリソグラフィマスクの検査をすることが出来る検査装置および検査方法の提供が可能となる。
【0070】
本実施形態の検査装置は、欠陥を有する被検査試料に照明光を照射する照明部と、被検査試料を透過したまたは被検査試料によって反射された照明光を結像した光学画像を取得する結像部と、欠陥の欠陥補正方法情報を保存する第1の記憶部と、欠陥補正方法情報に基づいて光学画像と参照画像の比較を行う比較部と、比較部における比較の結果と欠陥補正方法情報に基づいて欠陥の補正の適否を判断する判断部と、を備えることにより、多様化するフォトリソグラフィマスクの欠陥補正方法に基づいて欠陥の過剰な検出を防止したフォトリソグラフィマスクの検査をすることが出来る検査装置の提供が可能となる。
【0071】
以上の説明において、「記憶部」の処理内容或いは動作内容は、コンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができる。或いは、ソフトウェアとなるプログラムだけではなく、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせにより実施させても構わない。或いは、ファームウェアとの組み合わせでも構わない。また、プログラムにより構成される場合、プログラムは、図示していない磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、ROM(リードオンリメモリ)、SSD(ソリッドステートドライブ)の記録媒体に記録される。
【0072】
実施形態では、構成等、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる構成等を適宜選択して用いることができる。また、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての検査装置および検査方法は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。