(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プロセスガス噴出孔は、前記第1のガス供給路に第1の横方向ガス流路を介して接続される第1のガス噴出孔と、前記第2のガス供給路に第2の横方向ガス流路を介して接続される第2のガス噴出孔と、を有することを特徴とする請求項1に記載の気相成長装置。
前記第2のガスがトリメチルインジウムを含む場合には前記パージガスがアンモニアと窒素を含み、前記第2のガスがトリメチルインジウムを含まない場合には前記パージガスがアンモニアと窒素と水素を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の気相成長装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0015】
なお、本明細書中では、気相成長装置が成膜可能に設置された状態での鉛直方向を「下」と定義し、その逆方向を「上」と定義する。したがって、「下部」とは、基準に対し鉛直方向の位置、「下方」とは基準に対し鉛直方向を意味する。そして、「上部」とは、基準に対し鉛直方向と逆方向の位置、「上方」とは基準に対し鉛直方向と逆方向を意味する。また、「縦方向」とは鉛直方向である。
【0016】
また、本明細書中、「水平面」とは、鉛直方向に対し、垂直な面を意味するものとする。
【0017】
また、本明細書中、「プロセスガス」とは、基板上への成膜のために用いられるガスの総称であり、たとえば、ソースガス、キャリアガス、分離ガス等を含む概念とする。
【0018】
また、本明細書中、「パージガス」とは、成膜中に反応室の側壁内面(内壁)に膜が堆積することを抑制するため、基板の外周側に反応室の側壁に沿って供給されるガスを意味する。
【0019】
(第1の実施形態)
本実施形態の気相成長装置は、反応室と、反応室内に設けられ、基板を載置可能な支持部と、アンモニアを含む第1のガスを供給する第1のガス供給路と、有機金属ガスを含む第2のガスを供給する第2のガス供給路と、窒素、水素及び不活性ガスから選ばれる少なくとも1種と、アンモニアと、を含むパージガスを供給するパージガス供給路と、第1のガス供給路及び第2のガス供給路と接続され反応室内に第1のガス及び第2のガスを供給するプロセスガス噴出孔を有する第1の領域と、第1の領域の外周に設けられパージガス供給路に接続され反応室内にパージガスを供給するパージガス噴出孔を有する第2の領域と、を有するシャワープレートと、を備える。
【0020】
以下、MOCVD法(有機金属気相成長法)を用いてGaN(窒化ガリウム)またはInGaN(インジウム窒化ガリウム)をエピタキシャル成長させる場合を例に説明する。
【0021】
図1は、本実施形態の気相成長装置の模式断面図である。本実施形態の気相成長装置は、枚葉型のエピタキシャル成長装置である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の気相成長装置は、たとえばアルミニウム製又はステンレス製で円筒状中空体の反応室10を備えている。反応室10の側面は側壁11である。そして、この反応室10上部に配置され、反応室10内に、プロセスガスを供給するシャワープレート100を備えている。
【0023】
また、反応室10内のシャワープレート100下方に設けられ、半導体ウェハ(基板)Wを載置可能な支持部12を備えている。支持部12は、たとえば、中心部に開口部が設けられる環状ホルダー、または、半導体ウェハW裏面のほぼ全面に接する構造のサセプタである。
【0024】
また、支持部12をその上面に配置し回転する回転体ユニット14、支持部12に載置されたウェハWを加熱する加熱部16としてヒーターを、支持部12下方に備えている。ここで、回転体ユニット14は、その回転軸18が、下方に位置する回転駆動機構20に接続される。そして、回転駆動機構20により、半導体ウェハWをウェハ中心を回転中心として、たとえば、50rpm以上3000rpm以下で回転させることが可能となっている。
【0025】
円筒状の回転体ユニット14の径は、支持部12の外周径とほぼ同じにしてあることが望ましい。なお、回転軸18は、反応室10の底部に真空シール部材を介して回転自在に設けられている。
【0026】
そして、加熱部16は、回転軸18の内部に貫通する支持軸22に固定される支持台24上に固定して設けられる。加熱部16には、図示しない電流導入端子と電極により、電力が供給される。この支持台24には半導体ウェハWを支持部12から脱着させるための、たとえば突き上げピン(図示せず)が設けられている。
【0027】
反応室10内部の支持部12の周囲には、リフレクター40が設けられている。リフレクター40は、基板Wを効率良く加熱するために、加熱部16により加えられた熱を反射し、側壁11に伝わることを抑制する。リフレクター40は、たとえば、石英を用いて作製されていることが好ましい。
【0028】
さらに、半導体ウェハW表面等でソースガスが反応した後の反応生成物及び反応室10の残留ガスを反応室10外部に排出するガス排出部26を、反応室10底部に備える。なお、ガス排出部26は真空ポンプ(図示せず)に接続してある。
【0029】
そして、本実施形態の気相成長装置は、第1のプロセスガス(第1のガス)を供給する第1のガス供給路31、第2のプロセスガス(第2のガス)を供給する第2のガス供給路32、第3のプロセスガス(第3のガス)を供給する第3のガス供給路33を備えている。
【0030】
さらに、窒素、水素及び不活性ガスから選ばれる少なくとも1種と、アンモニアと、を含むパージガスを供給するパージガス供給路37を備えている。
【0031】
MOCVD法により、GaNの単結晶膜を半導体ウェハWに成膜する場合、たとえば、第1のプロセスガス(第1のガス)として、窒素のソースガスとなるアンモニア(NH
3)を供給する。また、たとえば、第2のプロセスガス(第2のガス)として、Ga(ガリウム)のソースガスであり有機金属であるトリメチルガリウム(TMG)を、キャリアガスである水素(H
2)で希釈したガスを供給する。また、第3のプロセスガスとして、たとえば、水素(H
2)を分離ガスとして供給する。なお、キャリアガスまたは分離ガスとして、窒素(N
2)または窒素と水素の混合ガスを用いてもよい。
【0032】
また、MOCVD法により、InGaNの単結晶膜を半導体ウェハWに成膜する場合、第1のプロセスガス(第1のガス)として、たとえば、窒素(N)のソースガスとなるアンモニア(NH
3)を供給する。また、第2のプロセスガス(第2のガス)として、たとえば、Ga(ガリウム)のソースガスであり有機金属であるトリメチルガリウム(TMG)とIn(インジウム)のソースガスであり有機金属であるトリメチルインジウム(TMI)を、キャリアガスである窒素(N
2)で希釈したガスを供給する。また、第3のプロセスガスとして、たとえば、窒素(N
2)を分離ガスとして供給する。
【0033】
ここで、第3のプロセスガス(第3のガス)である分離ガスとは、第3のガス噴出孔113から噴出させることで、第1のガス噴出孔111から噴出する第1のプロセスガスと第2のガス噴出孔112から噴出する第2のプロセスガスとを分離するガスである。分離ガスとしては、第1のプロセスガス及び第2のプロセスガスと反応性に乏しいガスを用いることが好ましい。
【0034】
パージガスは、たとえばGaNの単結晶膜を半導体ウェハWに成膜する場合、分子量が28の窒素(N
2)、分子量が2の水素(H
2)、及び原子量が4のヘリウム(He)、原子量が40のアルゴン(Ar)などの不活性ガスから選ばれる少なくとも1種を含む第1のパージガス成分ガスと、分子量が17のアンモニア(NH
3)を含む第2のパージガス成分ガスと、を含む。
【0035】
また、たとえばInGaNの単結晶膜を半導体ウェハWに成膜する場合、窒素(N
2)、及び不活性ガスから選ばれる少なくとも1種を含む第1のパージガス成分ガスと、アンモニア(NH
3)を含む第2のパージガス成分ガスと、を含む。これにより、プロセスガスの平均分子量に応じて、パージガスの平均分子量を適宜設定することが可能となる。
【0036】
なお、
図1に示した枚葉型エピタキシャル成長装置では、反応室10の側壁11に、半導体ウェハを出し入れするための図示しないウェハ出入口及びゲートバルブが設けられている。そして、このゲートバルブで連結するたとえばロードロック室(図示せず)と反応室10との間において、ハンドリングアームにより半導体ウェハWを搬送できるように構成される。ここで、たとえば合成石英で形成されるハンドリングアームは、シャワープレート100とウェハ支持部12とのスペースに挿入可能となっている。
【0037】
以下、本実施形態のシャワープレート100について詳細に説明する。
図2は、本実施形態のシャワープレートの模式上面図である。シャワープレート内部の流路構造は、破線で示している。
【0038】
図3は、
図2のAA断面図、
図4(a)〜(c)は、それぞれ、
図2のBB断面図、CC断面図、DD断面図である。
図5は、本実施形態のシャワープレートの模式下面図である。
【0039】
シャワープレート100は、たとえば、所定の厚さの板状の形状である。シャワープレート100は、たとえば、ステンレス鋼やアルミニウム合金等の金属材料で形成される。
【0040】
シャワープレート100の内部には、複数の第1の横方向ガス流路101、複数の第2の横方向ガス流路102、複数の第3の横方向ガス流路103が形成されている。複数の第1の横方向ガス流路101は、第1の水平面(P1)内に配置され互いに平行に延伸する。複数の第2の横方向ガス流路102は、第1の水平面より上方の第2の水平面(P2)内に配置され互いに平行に延伸する。複数の第3の横方向ガス流路103は、第1の水平面より上方、第2の水平面より下方の第3の水平面(P3)内に配置され互いに平行に延伸する。
【0041】
そして、第1の横方向ガス流路101に接続され縦方向に延伸し、反応室10側に第1のガス噴出孔111を有する複数の第1の縦方向ガス流路121を備える。また、第2の横方向ガス流路102に接続され縦方向に延伸し、反応室10側に第2のガス噴出孔112を有する複数の第2の縦方向ガス流路122を備える。第2の縦方向ガス流路122は、2本の第1の横方向ガス流路101の間を通っている。さらに、第3の横方向ガス流路103に接続され縦方向に延伸し、反応室10側に第3のガス噴出孔113を有する複数の第3の縦方向ガス流路123を備える。第3の縦方向ガス流路123は、第1の横方向ガス流路101の間を通っている。
【0042】
第1の横方向ガス流路101、第2の横方向ガス流路102、第3の横方向ガス流路103は、板状のシャワープレート100内に水平方向に形成された横孔である。また、第1の縦方向ガス流路121、第2の縦方向ガス流路122、第3の縦方向ガス流路123は、板状のシャワープレート100内に鉛直方向(縦方向または垂直方向)に形成された縦孔である。
【0043】
第1、第2、及び第3の横方向ガス流路101、102、103の内径は、それぞれ対応する第1、第2、及び第3の縦方向ガス流路121、122、123の内径よりも大きくなっている。
図3、
図4(a)〜(c)では、第1、第2、及び第3の横方向ガス流路101、102、103、第1、第2、及び第3の縦方向ガス流路121、122、123の断面形状は円形となっているが、円形に限らず、楕円形、矩形、多角形等その他の形状であってもかまわない。また、第1、第2、及び第3の横方向ガス流路101、102、103の断面積は、同一でなくてもかまわない。また、第1、第2、及び第3の縦方向ガス流路121、122、123の断面積も、同一でなくてもかまわない。
【0044】
シャワープレート100は、第1のガス供給路31に接続され、第1の水平面(P1)より上方に設けられる第1のマニフォールド131と、第1のマニフォールド131と第1の横方向ガス流路101とを第1の横方向ガス流路101の端部で接続し縦方向に延伸する第1の接続流路141を備えている。
【0045】
第1のマニフォールド131は、第1のガス供給路31から供給される第1のプロセスガスを、第1の接続流路141を介して複数の第1の横方向ガス流路101に分配する機能を備える。分配された第1のプロセスガスは、複数の第1の縦方向ガス流路121の第1のガス噴出孔111から反応室10に導入される。
【0046】
第1のマニフォールド131は、第1の横方向ガス流路101に直交する方向に延伸し、たとえば、中空の直方体形状を備える。本実施形態では、第1のマニフォールド131は、第1の横方向ガス流路101の両端部に設けられるが、いずれか一方の端部に設けられるものであってもかまわない。
【0047】
また、シャワープレート100は、第2のガス供給路32に接続され、第1の水平面(P1)より上方に設けられる第2のマニフォールド132と、第2のマニフォールド132と第2の横方向ガス流路102とを第2の横方向ガス流路102の端部で接続し縦方向に延伸する第2の接続流路142を備えている。
【0048】
第2のマニフォールド132は、第2のガス供給路32から供給される第2のプロセスガスを、第2の接続流路142を介して複数の第2の横方向ガス流路102に分配する機能を備える。分配された第2のプロセスガスは、複数の第2の縦方向ガス流路122の第2のガス噴出孔112から反応室10に導入される。
【0049】
第2のマニフォールド132は、第2の横方向ガス流路102に直交する方向に延伸し、たとえば、中空の直方体形状を備える。本実施形態では、第2のマニフォールド132は、第2の横方向ガス流路102の両端部に設けられるが、いずれか一方の端部に設けられるものであってもかまわない。
【0050】
さらに、シャワープレート100は、第3のガス供給路33に接続され、第1の水平面(P1)より上方に設けられる第3のマニフォールド133と、第3のマニフォールド133と第3の横方向ガス流路103とを第3の横方向ガス流路103の端部で接続し垂直方向に延伸する第3の接続流路143を備えている。
【0051】
第3のマニフォールド133は、第3のガス供給路33から供給される第3のプロセスガスを、第3の接続流路143を介して複数の第3の横方向ガス流路103に分配する機能を備える。分配された第3のプロセスガスは、複数の第3の縦方向ガス流路123の第3のガス噴出孔113から反応室10に導入される。
【0052】
また、
図5に示すように、シャワープレート100は、第1〜第3のガス噴出孔111〜113が設けられる内側領域100aと、パージガスを噴出するパージガス噴出孔117が設けられる外側領域100bに区分される。パージガス噴出孔117は、第1〜第3のガス噴出孔111〜113より反応室10の側壁11側に設けられることになる。
【0053】
パージガス噴出孔117は、横方向パージガス流路107に接続される。パージガス流路107はシャワープレート100の外側領域100b内部に、リング状の中空部分として形成される。そして、横方向パージガス流路107は、パージガス接続流路147に接続される。さらに、パージガス供給路37はパージガス接続流路147に接続される。したがって、パージガス供給路37が、パージガス接続流路147及び横方向パージガス流路107を介して、複数のパージガス噴出孔117に接続される。
【0054】
なお、
図4(a)〜(c)では、パージガス接続流路147の断面形状は円形となっているが、円形に限らず、楕円形、矩形、多角形等その他の形状であってもかまわない。
【0055】
シャワープレートにプロセスガスの供給口として設けられるガス噴出孔から、反応室10内に噴出するプロセスガスの流量は、成膜の均一性を確保する観点から、各ガス噴出孔間で均一であることが望ましい。本実施形態のシャワープレート100によれば、プロセスガスを複数の横方向ガス流路に分配し、さらに、縦方向ガス流路に分配してガス噴出孔から噴出させる。この構成により、簡便な構造で各ガス噴出孔間から噴出するプロセスガス流量の均一性を向上させることが可能となる。
【0056】
また、均一な成膜を行う観点から配置されるガス噴出孔の配置密度はできるだけ大きいことが望ましい。もっとも、本実施形態のように、互いに平行な複数の横方向ガス流路を設ける構成では、ガス噴出孔の密度を大きくしようとすると、ガス噴出孔の配置密度と横方向ガス流路の内径との間にトレードオフが生じる。
【0057】
このため、横方向ガス流路の内径が小さくなることで横方向ガス流路の流体抵抗が上昇し、横方向ガス流路の伸長方向について、ガス噴出孔から噴出するプロセスガス流量の流量分布が大きくなり、各ガス噴出孔間から噴出するプロセスガス流量の均一性が悪化するおそれがある。
【0058】
本実施形態のシャワープレートによれば、第1の横方向ガス流路101、第2の横方向ガス流路102及び第3の横方向ガス流路103を異なる水平面に設けた階層構造とする。この構造により、横方向ガス流路の内径拡大に対するマージンが向上する。したがって、ガス噴出孔の密度をあげつつ、横方向ガス流路の内径に起因する流量分布拡大を抑制する。
【0059】
次に、本実施形態の気相成長方法について説明する。本実施形態の気相成長方法は、実施形態の気相成長方法は、反応室内に設けられた支持部に基板を載置し、基板を加熱し、反応室の上部より、アンモニアを含む第1のガスと、有機金属ガスである、トリメチルガリウム及びトリメチルインジウムから選ばれる少なくとも1種を含む第2のガスと、を基板上に供給しながら、反応室の上部より、窒素、水素、及び不活性ガスから選ばれる少なくとも1種と、アンモニアと、を含むパージガスを支持部より反応室の側壁側に供給し、基板表面に半導体膜を成膜する。
【0060】
以下、
図1〜
図5に示した気相成長装置を用いて、GaNまたはInGaNをエピタキシャル成長させる場合を例に説明する。また、
図6は、本実施形態の気相成長方法の説明図である。
【0061】
反応室10にH
2などのキャリアガスが供給され、図示しない真空ポンプを作動して反応室10内のガスをガス排出部26から排気して、反応室10を所定の圧力に制御している状態で、反応室10内の支持部12に半導体ウェハWを載置する。ここで、たとえば、反応室10のウェハ出入口のゲートバルブ(図示せず)を開きハンドリングアームにより、ロードロック室内の半導体ウェハWを反応室10内に搬送する。そして、半導体ウェハWはたとえば突き上げピン(図示せず)を介して支持部12に載置され、ハンドリングアームはロードロック室に戻され、ゲートバルブは閉じられる。
【0062】
支持部12に載置した半導体ウェハWは、加熱部16により所定温度に予備加熱される。さらに、加熱部16の加熱出力を上げて半導体ウェハWをエピタキシャル成長温度に昇温させる。昇温中も、反応室10には例えばH
2が供給されている。
【0063】
そして、上記真空ポンプによる排気を続行すると共に、回転体ユニット14を所要の速度で回転させながら、第1〜第3のガス噴出孔111、112、113から所定の第1〜第3のプロセスガス(
図6中の白矢印)を噴出させる。第1のプロセスガス(第1のガス)は、第1のガス供給路31から第1のマニュフォールド131、第1の接続流路141、第1の横方向ガス流路101、第1の縦方向ガス流路121を経由して第1のガス噴出孔111から反応室10内に噴出される。また、第2のプロセスガス(第2のガス)は、第2のガス供給路32から第2のマニュフォールド132、第2の接続流路142、第2の横方向ガス流路102、第2の縦方向ガス流路122を経由して第2のガス噴出孔112から反応室10内に噴出される。また、第3のプロセスガスは、第3のガス供給路33から第3のマニュフォールド133、第3の接続流路143、第3の横方向ガス流路103、第3の縦方向ガス流路123を経由して第3のガス噴出孔113から反応室10内に噴出される。
【0064】
さらに、第1〜第3のプロセスガスを噴出すると同時に、パージガス噴出孔117から、所定の流速、流量で、プロセスガスの平均分子量に近づけるように調整されたパージガスを噴出させる(
図6中の黒矢印)。
【0065】
GaNをエピタキシャル成長させる場合は、加熱部16を制御し、ウェハをGaN膜の成長温度とした後、第1のガス噴出孔111にアンモニアを供給し、第2のガス噴出孔112にTMGを供給する。これにより、半導体ウェハW表面に、GaNの単結晶膜がエピタキシャル成長により形成される。
【0066】
また、InGaNをエピタキシャル成長させる場合は、加熱部16を制御し、ウェハをInGaNの成長温度とした後、第1のガス噴出孔111にアンモニアを供給し、第2のガス噴出孔112にTMGとTMIを供給し、半導体ウェハW表面に、InGaNの単結晶膜がエピタキシャル成長により形成される。
【0067】
そして、エピタキシャル成長終了時には、第2のガス噴出孔113へのTMGやTMIの供給を停止し、単結晶膜の成長が終了される。
【0068】
成膜後は、半導体ウェハWの降温を始める。所定の温度まで半導体ウェハWの温度が低下してから、第2のガス噴出孔112へのアンモニア供給を停止する。ここで、たとえば、回転体ユニット14の回転数を低下させ、単結晶膜が形成された半導体ウェハWを支持部12に載置したままにして、加熱部16の加熱出力を初期状態に戻し、予備加熱の温度に低下するよう調整する。
【0069】
次に、半導体ウェハWが所定の温度に安定した後、たとえば突き上げピンにより半導体ウェハWを支持部12から脱着させる。そして、再びゲートバルブを開いてハンドリングアームをシャワープレート100及び支持部12の間に挿入し、その上に半導体ウェハWを載せる。そして、半導体ウェハWを載せたハンドリングアームをロードロック室に戻す。
【0070】
以上のようにして、一回の半導体ウェハWに対する成膜が終了し、たとえば、引き続いて他の半導体ウェハWに対する成膜を上述のプロセスシーケンスに従って行うことも可能である。
【0071】
上述したように、パージガスの平均分子量をプロセスガスの平均分子量に近づけることで、パージガスとプロセスガスの境界での流れの乱れが抑制され、反応室10における側壁11の膜堆積が抑制される。特に、分子量が2の水素と分子量が28の窒素の間の分子量を有する、分子量が17のアンモニアを用いることで、いっそう両者の境界での流れの乱れが抑制され、反応室10における側壁11の膜堆積が抑制される。また、水素と窒素とアンモニアの動粘度の関係により、さらに反応室10における側壁11の膜堆積が抑制されると推測される。
【0072】
InGaNの単結晶膜を半導体ウェハWに成膜する場合、パージガスにH
2を用いるとInが半導体ウェハW上の膜に取り込まれにくくなる。そのため、第2のガスがトリメチルインジウムを含む場合にはパージガスがアンモニアと窒素を含み、第2のガスがトリメチルインジウムを含まない場合にはパージガスがアンモニアと窒素と水素を含むことが好ましい。
【0073】
また、パージガスは、あらかじめ第1のパージガス成分ガスと第2のパージガス成分ガスを混合したガスをパージガス供給路37に供給し、パージガス噴出孔117から反応室10内部に供給してもよい。あるいは、パージガスを構成するガスを個別に反応室10内部に供給してもよい。ただし、あらかじめパージガスを構成するガスを混合したガスをパージガス噴出孔117から反応室10内に供給するほうが、シャワープレート100の構造が簡易になるという点でより好ましい。
【0074】
支持部12の周囲に設けられるリフレクター40は、石英を用いて作製されていることが好ましいが、耐熱性に優れた炭化ケイ素(SiC)を用いてもよい。通常炭化ケイ素は多孔質であるため、不純物の吸着が問題になるが、本実施態様のように、アンモニアを反応室10の側壁方向に導入することにより、リフレクター40の表面に窒化膜が形成される。そのため、吸着されたガスの離脱による膜質の劣化を防ぐことが可能となる。
【0075】
成膜のために流される第1、第2及び第3のプロセスガスの平均分子量とパージガスの平均分子量を近づける観点から、パージガスの平均分子量が、プロセスガスの平均分子量と略同一であり、パージガスの平均流速と、プロセスガスの平均流速が略同一であることが望ましい。混合ガスの平均分子量が、プロセスガスの平均分子量の80%以上120%以下であれば、パージガスとプロセスガスの境界で、流れに乱れが生じにくく、好適である。
【0076】
本実施形態の気相成長装置及び気相成長方法によれば、プロセスガスとパージガスの平均分子量を近づけることで、反応室側壁への膜堆積が抑制される。したがって、反応室内のパーティクルやダストの発生が抑制される。よって、低欠陥の膜を基板に成膜することが可能となる。
【0077】
(第2の実施形態)
本実施形態の気相成長装置は、パージガス供給路に接続され第1のマスフローコントローラを備え第1のパージガスを供給する第1の副パージガス供給路と、パージガス供給路に接続され第2のマスフローコントローラを備え第2のパージガスを供給する第2の副パージガス供給路と、パージガス供給路に接続され第3のマスフローコントローラを備え第3のパージガスを供給する第3の副パージガス供給路と、パージガス供給路に接続され第4のマスフローコントローラを備え第4のパージガスを供給する第4の副パージガス供給路と、パージガス供給路に接続され第5のマスフローコントローラを備え第5のパージガスを供給する第5の副パージガス供給路と、第1のマスフローコントローラと第2のマスフローコントローラと第3のマスフローコントローラと第4のマスフローコントローラと第5のマスフローコントローラを制御する第1の制御部と、をさらに備える以外は、第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0078】
図7は、本実施形態の気相成長装置の模式断面図である。本実施形態の気相成長装置は、枚葉型のエピタキシャル成長装置である。
【0079】
図7に示すように、本実施形態の気相成長装置は、パージガス供給路37に接続され第1のマスフローコントローラM1を備える第1の副パージガス供給路37aと、パージガス供給路37に接続され第2のマスフローコントローラM2を備える第2の副パージガス供給路37bと、パージガス供給路37に接続され第3のマスフローコントローラM3を備える第3の副パージガス供給路37cと、パージガス供給路37に接続され第4のマスフローコントローラM4を備える第4の副パージガス供給路37dと、パージガス供給路37に接続され第5のマスフローコントローラM5を備える第5の副パージガス供給路37eと、第1のマスフローコントローラM1と第2のマスフローコントローラM2と第3のマスフローコントーラM3と第4のマスフローコントーラM4と第5のマスフローコントーラM5を制御する第1の制御部50を備える。
【0080】
第1の副パージガス供給路37aは第1のパージガス(Pu1)を供給する。第1のパージガスの流量は、第1のマスフローコントローラM1で制御される。また、第2の副パージガス供給路37bは第2のパージガス(Pu2)を供給する。第2のパージガスの流量は、第2のマスフローコントローラM2で制御される。また、第3の副パージガス供給路37cは第3のパージガス(Pu3)を供給する。第3のパージガスの流量は、第3のマスフローコントローラM3で制御される。また、第4の副パージガス供給路37dは第4のパージガス(Pu4)を供給する。第4のパージガスの流量は、第4のマスフローコントローラM4で制御される。また、第5の副パージガス供給路37eは第5のパージガス(Pu5)を供給する。第5のパージガスの流量は、第5のマスフローコントローラM5で制御される。第1のパージガス、第2のパージガス、第3のパージガス、第4のパージガス及び第5のパージガスは、第1のマスフローコントーラM1、第2のマスフローコントローラM2、第3のマスフローコントローラM3、第4のマスフローコントローラM4及び第5のマスフローコントローラM5で流量を制御され、混合されて混合ガスとなる。
【0081】
第1の制御部50は、第1のマスフローコントローラM1と第2のマスフローコントローラM2と第3のマスフローコントローラM3と第4のマスフローコントローラM4と第5のマスフローコントローラM5を、たとえば、制御信号を伝達することにより制御する。これにより、第1のパージガスの流量と第2のパージガスの流量と第3のパージガスの流量と第4のパージガスの流量と第5のパージガスの流量を変化させ、反応室10に供給されるパージガスの平均分子量を変化させる。
【0082】
第1の制御部50は、成膜プロセス中に反応室10に供給されるプロセスガスの種類等の変化により、プロセスガスの平均分子量が変化した場合に、パージガスの平均分子量がプロセスガスの平均分子量に近づく方向に変化させる。
【0083】
基板上にGaNを成長させる場合には、たとえば、第1の副パージガス供給路37aを用いて窒素を、第2の副パージガス供給路37bを用いて水素を、第3の副パージガス供給路37cを用いて不活性ガスであるヘリウムを、第4の副パージガス供給路37dを用いて不活性ガスであるアルゴンを、また第5の副パージガス供給路37eを用いてアンモニアを供給する。
【0084】
たとえば、第1の副パージガス供給路37a、第2の副パージガス供給路37b、第3の副パージガス供給路37c、第4の副パージガス供給路37dを用いて第1のパージガス成分ガスを混合できる。また、第5の副パージガス供給路37eを用いて、第2のパージガス成分ガスを混合できる。
【0085】
また、その後連続してInGaNを成長させる場合には、たとえば、第1の副パージガス供給路37aを用いて窒素を、第3の副パージガス供給路37cを用いてヘリウムを、第4の副パージガス供給路37dを用いてアルゴンを、また第5の副パージガス供給路37eを用いてアンモニアを供給する。パージガスの平均分子量は、それぞれGaN成膜またはInGaN成膜に用いられるプロセスガスの平均分子量に近づく方向に変化させる。
【0086】
第2の制御部52は、第1のガス供給路31、第2のガス供給路32、第3のガス供給路33に、それぞれ設けられる第6のマスフローコントローラM6、第7のマスフローコントローラM7及び第8のマスフローコントローラM8を、たとえば、制御信号を伝達することにより制御する。これにより、第1のガスと、第2のガスと、第3のガスの流量を制御する。
【0087】
第1の制御部50と第2の制御部52は互いに接続され、第1のマスフローコントローラM1、第2のマスフローコントローラM2、第3のマスフローコントローラM3、第4のマスフローコントローラM4、第5のマスフローコントローラM5、第6のマスフローコントローラ、第7のマスフローコントローラ及び第8のマスフローコントローラを同時に制御する構成であってもかまわない。この構成により、たとえば、プロセスガスの流量とパージガスの流量を連動して制御する。この制御により、プロセスガスの平均分子量の変化に連動して、パージガスの平均分子量を変化させることが可能となる。
【0088】
また、第1の制御部50または第2の制御部52のいずれか一方が、第1のマスフローコントローラM1、第2のマスフローコントローラM2、第3のマスフローコントローラM3、第4のマスフローコントローラM4、第5のマスフローコントローラM5及び第6のマスフローコントローラ、第7のマスフローコントローラ及び第8のマスフローコントローラに接続され、上記8個のマスフローコントローラを制御してもよい。
【0089】
なお、第1の制御部50及び第2の制御部52は、たとえば、電子回路等のハードウェア、または、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせで構成される。
【0090】
また、パージガスの構成は適宜選択することができ、例えば、不活性ガスを供給する第3、第4の副パージガス供給路及びその流量をコントロールする第3、第4のマスフローコントローラーは必ずしも設けられなくてよい。
【0091】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られるとともに、パージガスの平均分子量を容易に制御することが可能となる。さらに、成膜プロセス中にプロセスガスの平均分子量が変化しても、パージガスの平均分子量も同一になる方向に変化させることが可能となる。したがって、反応室側壁への膜堆積を抑制され、反応室内のパーティクルやダストの発生が抑制される。よって、低欠陥の膜を基板に成膜することが可能となる。
【0092】
(第3の実施形態)
本実施形態の気相成長装置は、第1の横方向ガス流路と第3の横方向ガス流路を接続する第1の横方向ガス流路接続流路と、第2の横方向ガス流路と第3の横方向ガス流路を接続する第2の横方向ガス流路接続流路と、をさらに備える点以外は、第1の実施形態及び第2の実施形態の気相成長装置と同様である。したがって、第1の実施形態及び第2の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0093】
図8は、本実施形態の気相成長装置の模式断面図である。
【0094】
本実施形態では、第1の横方向ガス流路101と第3の横方向ガス流路103を接続する第1の横方向ガス流路接続流路104と、第2の横方向ガス流路102と第3の横方向ガス流路103を接続する第2の横方向ガス流路接続流路105と、がさらに設けられている。このため、第1のプロセスガス(第1のガス)と第2のプロセスガス(第2のガス)と第3のプロセスガス(第3のガス)はシャワープレート100で混合されて、第4のガス噴出孔114から反応室に供給される。
【0095】
本実施形態によれば、プロセスガスを構成するガスを混合した後均一に基板W上に供給する場合であっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第2の実施形態と同様に副パージガス供給路を設けることにより、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0096】
(第4の実施形態)
本実施形態の気相成長装置は、第1のプロセスガスと第2のプロセスガスと第3のプロセスガスが混合される第4のマニフォールドを備える点以外は、第1の実施形態、第2の実施形態及び第3の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態、第2の実施形態及び第3の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0097】
図9は、本実施形態の気相成長装置の模式断面図である。
【0098】
本実施形態では、第1のガス供給路31から供給される第1のプロセスガスと、第2のガス供給路32から供給される第2のプロセスガスと、第3のガス供給路33から供給される第3のプロセスガスが、第4のマニフォールド135に供給される。第1のプロセスガスと第2のプロセスガスと第3のプロセスガスは、第4のマニフォールドで混合された後、第4のガス噴出孔114から反応室に供給される。これにより、プロセスガスをより均一に混合することが可能になる。
【0099】
本実施形態によれば、プロセスガスを構成するガスを混合した後均一に基板W上に供給する場合であっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第2の実施形態と同様に副パージガス供給路を設けることにより、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0100】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。上記、実施形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、各実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもかまわない。
【0101】
たとえば、実施形態では横方向ガス流路等の流路を3系統設ける場合を例に説明したが、横方向ガス流路等の流路を4系統以上設けても、2系統であってもかまわない。
【0102】
また、たとえば、実施形態では、GaN(窒化ガリウム)の単結晶膜を成膜する場合を例に説明したが、たとえば、Si(珪素)やSiC(炭化珪素)の単結晶膜等の成膜にも本発明を適用することが可能である。
【0103】
また、実施形態では、ウェハ1枚毎に成膜する枚葉式のエピタキシャル装置を例に説明したが、気相成長装置は、枚葉式のエピタキシャル装置に限られるものではない。たとえば、自公転する複数のウェハに同時に成膜するプラネタリー方式のCVD装置等にも、本発明を適用することが可能である。
【0104】
実施形態では、装置構成や製造方法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や製造方法等を適宜選択して用いることができる。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての気相成長装置及び気相成長方法は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物の範囲によって定義されるものである。