特許第6387322号(P6387322)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6387322
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】展開型使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/56 20060101AFI20180827BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20180827BHJP
   A61F 13/494 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   A61F13/56 210
   A61F13/514 500
   A61F13/494 111
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-90293(P2015-90293)
(22)【出願日】2015年4月27日
(65)【公開番号】特開2016-202738(P2016-202738A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】辻井 真紀
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 友美
(72)【発明者】
【氏名】坂口 智
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5690966(JP,B1)
【文献】 特開2014−204754(JP,A)
【文献】 特開2007−260145(JP,A)
【文献】 実開平01−141711(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15−13/84
A61L15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する縦方向と横方向と厚さ方向とを有し、第1胴回り部と股下部と第2胴回り部とを備えた展開型使い捨ておむつであって、
前記横方向の中央部に設けられた吸収体と、
前記第2胴回り部における前記横方向の各端部に設けられたファスニングテープと、
前記ファスニングテープよりも前記縦方向の第1胴回り部側、かつ、前記吸収体よりも前記横方向の外側の領域の、少なくとも一部を切り取るための第1切り取り線及び第2切り取り線と、
を有し、
前記第1切り取り線の一端及び前記第2切り取り線の一端は、前記第2胴回り部に設けられ、
前記第1切り取り線の一端及び他端は、前記横方向の一方の端に設けられ、
前記第2切り取り線の一端及び他端は、前記横方向の前記一方の端とは反対側の他方の端に設けられていることを特徴とする展開型使い捨ておむつ。
【請求項2】
請求項1に記載の展開型使い捨ておむつにおいて、
前記横方向の両側の各位置には、それぞれ前記縦方向に沿って設けられたシート状の立体ギャザー部を有しており、
前記第1切り取り線及び第2切り取り線は、前記立体ギャザー部よりも前記横方向外側の位置に形成されていることを特徴とする展開型使い捨ておむつ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の展開型使い捨ておむつにおいて、
前記横方向の両側の各位置には、それぞれ前記縦方向に沿って設けられたレッグギャザー部を有しており、
前記第1切り取り線及び第2切り取り線は、前記レッグギャザー部に設けられた弾性部材よりも前記横方向外側の位置に形成されていることを特徴とする展開型使い捨ておむつ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の展開型使い捨ておむつにおいて、
前記第1切り取り線の一端及び前記第2切り取り線の一端は、前記第2胴周り部の前記横方向の最も外側の端に設けられていることを特徴とする展開型使い捨ておむつ。
【請求項5】
請求項4に記載の展開型使い捨ておむつにおいて、
前記第1切り取り線及び第2切り取り線は、前記横方向において、前記横方向の最も外側に設けられた前記第1切り取り線の一端及び前記第2切り取り線の一端から、それぞれ前記ファスニングテープの固定部の内側まで設けられていることを特徴とする展開型使い捨ておむつ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の展開型使い捨ておむつにおいて、
前記第1切り取り線及び第2切り取り線は、
それぞれ、
前記第1切り取り線の一端及び第2切り取り線の一端から前記横方向内側に向かって前記縦方向の外側に向かって凸となる湾曲形状の第1曲線状部分と、
前記第1切り取り線の他端及び第2切り取り線の他端から前記第2胴周り部に向かった直線状部分と、
前記第1曲線状部分より前記横方向内側に位置しつつ、前記第1曲線状部分と前記直線状部分とをつなぐ第2曲線状部分とを有し、
前記第2曲線状部分は、前記第1曲線状部分より大きな曲率であることを特徴とする展開型使い捨ておむつ。
【請求項7】
請求項6に記載の展開型使い捨ておむつにおいて、
前記第1切り取り線の他端及び第2切り取り線の他端は、それぞれ前記展開型使い捨ておむつの前記縦方向中央よりも前記第2胴回り部側に位置することを特徴とする展開型使い捨ておむつ。
【請求項8】
請求項6に記載の展開型使い捨ておむつにおいて、
前記吸収体は一対の切り欠き部を少なくとも1つ有し、
最も前記第2胴回り部側に位置する前記一対の切り欠き部において、一対の前記切り欠き部によって切り欠かれることによって最も幅が狭くなった前記吸収体の最狭部分が形成され、
前記最狭部分よりも、第2胴周り部側に、前記第1切り取り線の他端及び第2切り取り線の他端が位置することを特徴とする展開型使い捨ておむつ。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか1項に記載の展開型使い捨ておむつにおいて、
前記第1切り取り線及び第2切り取り線の第1曲線状部分の前記横方向の端部における接線と、前記直線状部分との角度は、82.5度以上102.5度以下であることを特徴とする展開型使い捨ておむつ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の展開型使い捨ておむつにおいて、
前記第1切り取り線及び第2切り取り線は、前記厚さ方向に貫通する複数の貫通孔によって形成されていることを特徴とする展開型使い捨ておむつ。
【請求項11】
請求項10に記載の展開型使い捨ておむつにおいて、
前記第1切り取り線及び第2切り取り線の単位長さ当たりに占める前記貫通孔の長さの割合について比べた場合に、前記直線状部分の前記割合よりも、前記第1曲線状部分の前記割合の方が小さいことを特徴とする展開型使い捨ておむつ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の展開型使い捨ておむつにおいて、
前記第1切り取り線及び第2切り取り線の一端に対応させて前記一端の位置を示す目印が設けられていることを特徴とする展開型使い捨ておむつ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の展開型使い捨ておむつにおいて、
前記第1切り取り線及び第2切り取り線は、複数のシートが前記厚さ方向に重ね合わせられた位置の、少なくとも一つのシートに形成されており、
前記複数のシートのうちで一つのシートを第1シートとし、前記複数のシートのうちで前記第1シートと異なる一つのシートを第2シートとした場合に、
前記第1シートには前記第1切り取り線及び第2切り取り線が形成されており、前記第2シートには前記第1切り取り線及び第2切り取り線が形成されていないことを特徴とする展開型使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、展開型使い捨ておむつに関する。
【背景技術】
【0002】
3000グラム以下の低体重児は、母体内にいたときの、ポジショニング姿勢と呼ばれる胎児様屈曲姿勢で大半の時間を過ごす場合がある。図1Aに示すように、側面視C字状に背中を丸めた状態であるとともに、その脚は、図1Bに示すようにM字に開脚しつつ、両膝が腹部に付くくらい引き付けられた状態となる。そして、不図示の円座上に寝かせる等の適宜な安全処理が施された上で、うつぶせ姿勢とされる。
【0003】
このとき、低体重児によっては、安静が必要であったり、余計なストレスを与えないために、身体に触れないことが望ましいとされる場合がある。
【0004】
このような低体重児9にも、特許文献1のような展開型の使い捨ておむつ1’が使用される。この展開型の使い捨ておむつ1’は、通常、仰向け姿勢の低体重児9への着用を考慮したもので、うつぶせ姿勢においては、ファスニングテープ7’のフック材71’が係止される第1胴回り部11’のターゲット領域114’は、低体重児9の腹側、すなわち低体重児9の身体の下に位置し、第1胴回り部11’のターゲット領域114’へのフック材71’の着脱が難しい。このため、低体重児9を仰向けに体位変更して、おむつ交換を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−308343号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような体位変更は、極力行わないのが望ましく、うつぶせ姿勢のまま低体重児9等の着用対象者におむつ1’を着脱するのが望ましい。そのため、低体重児9が仰向け姿勢の場合には、おむつ1’を通常通り使用し、低体重児9がうつぶせ姿勢の場合には、おむつ1’を前後逆に使用していた。おむつ1’を前後逆に使用すると、低体重児9は、図1Bのように脚を引き付けるため、通常、おむつ1’の背側に設けたお尻部分を支持する領域が、低体重児9のそけい部を圧迫してしまうという問題を生じていた。
【0007】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、うつぶせ姿勢の着用対象者にも着脱可能な展開型使い捨ておむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための主たる発明は、
互いに直交する縦方向と横方向と厚さ方向とを有し、第1胴回り部と股下部と第2胴回り部とを備えた展開型使い捨ておむつであって、前記横方向の中央部に設けられた吸収体と、前記第2胴回り部における前記横方向の各端部に設けられたファスニングテープと、前記ファスニングテープよりも前記縦方向の第1胴回り部側、かつ、前記吸収体よりも前記横方向の外側の領域の、少なくとも一部を切り取るための第1切り取り線及び第2切り取り線と、を有し、前記第1切り取り線の一端及び前記第2切り取り線の一端は、前記第2胴回り部に設けられ、前記第1切り取り線の一端及び他端は、前記横方向の一方の端に設けられ、前記第2切り取り線の一端及び他端は、前記横方向の前記一方の端とは反対側の他方の端に設けられていることを特徴とする展開型使い捨ておむつである。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1及び第2切り取り線で切り取ることで、着用対象者のそけい部の圧迫を減少させることができ、前後逆に着用することができる展開型使い捨ておむつを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1Aは、ポジショニング姿勢の低体重児9の概略側面図であり、図1Bは、図1A中のB−B矢視図である。
図2】本実施形態の使い捨ておむつ1の展開状態の平面図である。
図3図3Aは、図2中のA−A断面図、図3Bは、図2中のB−B断面図、及び図3Cは、図2中のC−C断面図である。
図4図4Aは、通常の装着状態のおむつ1の概略斜視図であり、図4Bは、切り取り線1cで切り取った後の装着状態のおむつ1の概略斜視図である。
図5図5は、前後逆におむつ1を着用した時のうつぶせ姿勢の低体重児9の概略側面図である。
図6図6は、切り取り線1cを説明するための要部拡大図である。
図7図7は、その他の実施形態の切り取り線1cを説明するための要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
互いに直交する縦方向と横方向と厚さ方向とを有し、第1胴回り部と股下部と第2胴回り部とを備えた展開型使い捨ておむつであって、前記横方向の中央部に設けられた吸収体と、前記第2胴回り部における前記横方向の各端部に設けられたファスニングテープと、前記ファスニングテープよりも前記縦方向の第1胴回り部側、かつ、前記吸収体よりも前記横方向の外側の領域の、少なくとも一部を切り取るための第1切り取り線及び第2切り取り線と、を有し、前記第1切り取り線の一端及び他端は、前記横方向の一方の端に設けられ、前記第2切り取り線の一端及び他端は、前記横方向の前記一方の端とは反対側の他方の端に設けられていることを特徴とする展開型使い捨ておむつである。
【0012】
このような展開型使い捨ておむつによれば、第1及び第2切り取り線で切り取ることで、着用対象者のそけい部の圧迫を減少させることができ、前後逆に着用することができる展開型使い捨ておむつを提供することができる。
【0013】
かかる展開型使い捨ておむつであって、前記横方向の両側の各位置には、それぞれ前記縦方向に沿って設けられたシート状の立体ギャザー部を有しており、前記第1切り取り線及び第2切り取り線は、前記立体ギャザー部よりも前記横方向外側の位置に形成されていることが望ましい。
【0014】
このような展開型使い捨ておむつによれば、立体ギャザーの横方向外側を切り取ることになるため、立体ギャザーの横方向内側に保持する排泄物がおむつから漏出する恐れを軽減させることができる。
【0015】
かかる展開型使い捨ておむつであって、前記横方向の両側の各位置には、それぞれ前記縦方向に沿って設けられたレッグギャザー部を有しており、前記第1切り取り線及び第2切り取り線は、前記レッグギャザー部に設けられた弾性部材よりも前記横方向外側の位置に形成されていることが望ましい。
【0016】
このような展開型使い捨ておむつによれば、レッグギャザー部に設けられた弾性部材の横方向外側を切り取ることになるため、脚回りから排泄物が漏出する恐れを軽減することができる。
【0017】
かかる展開型使い捨ておむつであって、前記第1切り取り線の一端及び前記第2切り取り線の一端は、前記第2胴周り部の前記横方向の最も外側の端に設けられていることが望ましい。
【0018】
このような展開型使い捨ておむつによれば、第1及び第2切り取り線を横方向の最も外側に設けることで、作業者は第1及び第2切り取り線を容易に切り取ることができる。
【0019】
かかる展開型使い捨ておむつであって、前記第1切り取り線及び第2切り取り線は、前記横方向において、前記横方向の最も外側に設けられた前記第1切り取り線の一端及び前記第2切り取り線の一端から、それぞれ前記ファスニングテープの固定部の内側まで設けられていることが望ましい。
【0020】
このような展開型使い捨ておむつによれば、ファスニングテープの固定部は、おむつの他の部分より固くなっている。そのため、作業者が切り取り作業を行い易い横方向の最も外側から切り取ると、着用者のそけい部がファスニングテープの固定部付近に当接して、他より固い部分が着用者のそけい部を圧迫してしまう恐れがある。そこで、第1及び第2切り取り線をファスニングテープの固定部より横方向内側まで設けることで、固定部より内側の比較的柔らかい領域に着用者のそけい部が当接し、着用者のそけい部が圧迫される恐れを軽減させることができる。
【0021】
かかる展開型使い捨ておむつであって、前記第1切り取り線及び第2切り取り線は、それぞれ、前記第1切り取り線の一端及び第2切り取り線の一端から前記横方向内側に向かって前記縦方向の外側に向かって凸となる湾曲形状の第1曲線状部分と、前記第1切り取り線の他端及び第2切り取り線の他端から前記第2胴周り部に向かった直線状部分と、前記第1曲線状部分より前記横方向内側に位置しつつ、前記第1曲線状部分と前記直線状部分とをつなぐ第2曲線状部分とを有し、前記第2曲線状部分は、前記第1曲線状部分より大きな曲率であることが望ましい。
【0022】
このような展開型使い捨ておむつによれば、第1及び第2切り取り線に曲率の異なる曲線部を形成することで、おむつを前後逆に使用したとしても、着用者のそけい部に沿った形状とすることができ、着用者のそけい部の圧迫を軽減させることができる。
【0023】
かかる展開型使い捨ておむつであって、前記第1切り取り線の他端及び第2切り取り線の他端は、それぞれ前記展開型使い捨ておむつの前記縦方向中央よりも前記第2胴回り部側に位置することが望ましい。
【0024】
このような展開型使い捨ておむつによれば、第1及び第2切り取り線をおむつの中央より第2胴回り部側に設けることで、前後逆に使用しても着用者のそけい部の圧迫の恐れを軽減させることができるおむつを提供することができる。
【0025】
かかる展開型使い捨ておむつであって、前記吸収体は一対の切り欠き部を少なくとも1つ有し、最も前記第2胴回り部側に位置する前記一対の切り欠き部において、一対の前記切り欠き部によって切り欠かれることによって最も幅が狭くなった前記吸収体の最狭部分が形成され、前記最狭部分よりも、第2胴周り部側に、前記第1切り取り線の他端及び第2切り取り線の他端が位置することが望ましい。
【0026】
このような展開型使い捨ておむつによれば、着用時には、最狭部分が股下部に該当する位置になるため、その部分より第2胴回り部側を切り取ることで、切り取り線を不用意に長く形成することなく、着用者のそけい部の圧迫の恐れを軽減させることができる。
【0027】
かかる展開型使い捨ておむつであって、前記第1切り取り線及び第2切り取り線の第1曲線状部分の前記横方向の端部における接線と、前記直線状部分との角度は、82.5度以上102.5度以下であることが望ましい。
【0028】
このような展開型使い捨ておむつによれば、第1及び第2切り取り線を所定の角度に切り取ることで、着用者のそけい部の形状に適したおむつを提供することができる。
【0029】
かかる展開型使い捨ておむつであって、前記第1切り取り線及び第2切り取り線は、前記厚さ方向に貫通する複数の貫通孔によって形成されていることが望ましい。
【0030】
このような展開型使い捨ておむつによれば、第1及び第2切り取り線は、複数の貫通孔で形成されているので、切り取り線を小さな力で切断することができる。
【0031】
かかる展開型使い捨ておむつであって、前記第1切り取り線及び第2切り取り線の単位長さ当たりに占める前記貫通孔の長さの割合について比べた場合に、前記直線状部分の前記割合よりも、前記第1曲線状部分の前記割合の方が小さいことが望ましい。
【0032】
このような展開型使い捨ておむつによれば、第1曲線状部分から切り取り始めると、初めは力を入れやすく、切り離しやすいため、不意に切り取り線部分を超えて切り取ってしまうおそれがある一方、直線状部分については、力を入れにくく、切り離しが難しいことがある。そのため、力を入れやすい第1曲線状部分の貫通孔の割合を小さくして、誤って切り取り線部分以外を切り取ることを防止することとし、力を入れにくい直線上部分の貫通孔の割合を比較的多くすることで、直線状部分を切り取り易くすることができる。
【0033】
かかる展開型使い捨ておむつであって、前記第1切り取り線及び第2切り取り線の一端に対応させて前記一端の位置を示す目印が設けられていることが望ましい。
【0034】
このような展開型使い捨ておむつによれば、第1及び第2切り取り線の一端の位置を示す目印が設けられていることで、切り取り線の位置を目視で認識し易くなる。
【0035】
かかる展開型使い捨ておむつであって、前記第1切り取り線及び第2切り取り線は、複数のシートが前記厚さ方向に重ね合わせられた位置の、少なくとも一つのシートに形成されており、前記複数のシートのうちで一つのシートを第1シートとし、前記複数のシートのうちで前記第1シートと異なる一つのシートを第2シートとした場合に、前記第1シートには前記第1切り取り線及び第2切り取り線が形成されており、前記第2シートには前記第1切り取り線及び第2切り取り線が形成されていないことが望ましい。
【0036】
このような展開型使い捨ておむつによれば、第1シートには第1及び第2切り取り線が形成されているが、第2シートには第1及び第2切り取り線が形成されていないため、おむつを横方向の両側に引っ張った際に、第1及び第2切り取り線に作用し得る引っ張り力を、切り取り線が形成されていない第2シートで効果的に受けることができ、意図せず切り取られてしまうことを防止することができる。
【0037】
===本実施形態===
<使い捨ておむつ1の構成>
図2は、本実施形態の使い捨ておむつ1の展開状態の平面図である。また、図3Aは、図2中のA−A断面図、図3Bは、図2中のB−B断面図、及び図3Cは、図2中のC−C断面図である。更に、図4Aは、通常の装着状態のおむつ1の概略斜視図である。
【0038】
本実施形態の使い捨ておむつ1は、体重が3000g以下の児(以下、「低体重児」)のための展開型の使い捨ておむつであり、特に、体重が2500g未満の低出生体重児、体重が1500g未満の極低出生体重児、及び、体重が1000未満の超低出生体重児に、適したおむつである。以下では、着用対象者を低体重児9として説明するが、何等これに限らず、着用対象者は、乳児や幼児でも良いし、大人でも良い。
【0039】
図2の展開状態においては、おむつ1は、互いに直交する三方向として縦方向と横方向と厚さ方向とを有する。ここで、縦方向に関しては、第1胴回り部11と股下部13と第2胴回り部12とをこの順番で並んで有していて、通常、図4Aに示すように、第1胴回り部11は低体重児9の腹側を覆い、股下部13は、低体重児9の股間を覆い、第2胴回り部12は低体重児9の背側を覆う。
【0040】
また、おむつ1は、排泄液を吸収する略縦長形状の吸収体3と、この吸収体3よりも横方向及び縦方向の外側に突出した柔軟かつ薄厚なシート状部材と、シート状部材に固定されたファスニングテープ7、7とを有する。第1胴回り部11と第2胴回り部12は、それぞれ股下部13よりも横方向の両側に突出しており、厚さ方向から見たおむつ1のシート状部材の外形形状は、略砂時計形状をなしている。
【0041】
以下では、このシート状部材のうちで吸収体3よりも横方向の両側に突出した各部分を、「サイドフラップ10」と言う。また、サイドフラップ10は、第1胴回り部11と股下部13と第2胴回り部12に跨がっており、以下では、第1胴回り部11に位置するサイドフラップ112を「第1サイドフラップ112」、股下部13に位置するサイドフラップ132を「股下サイドフラップ132」、第2胴回り部12に位置するサイドフラップを「第2サイドフラップ122」、各第1サイドフラップ112の横方向における最も外側端部を「第1横端115」、各第2サイドフラップ122の横方向における最も外側端部を「第2横端125」、第1サイドフラップの縦方向における最も外側端部を「縦端113」、第2サイドフラップの縦方向における最も外側端部を「縦端123」と言う。なお、各サイドフラップ112、122、132の横方向における外側端部が、「端」であり、「横端」とも言う。また、以下では、厚さ方向の一方側を「肌側」とも言い、他方側を「非肌側」とも言う。ちなみに、図2の平面図は、展開状態のおむつ1を肌側から見たもので、図2中のX−X線は、おむつ1の製品長L1の縦方向中心を示している。
【0042】
おむつ1のシート状部材は、吸収体3を肌側から覆う液透過性のトップシート2と、吸収体3を非肌側から覆う液不透過性の防漏シート4と、防漏シート4を非肌側から覆い、おむつ1の外形形状をなす略砂時計形状の不織布等の外装シート5と、トップシート2上に横方向に一対並んで設けられ、吸収体3の横方向の各端部にそれぞれ防漏壁としての立体ギャザー6,6を形成する一対の立体ギャザーシート61,61と、を有している。
【0043】
図3A乃至図3Cに示すように、吸収体3は、吸収性コア31と、吸収性コア31のほぼ全外周面を被覆する液透過性シートであるコアラップシート32と、を有する。吸収性コア31は、略矩形形状の液体吸収性素材で、横方向端部に一対の切り欠き33、34を縦方向に2つ有している。縦端123に近い方の切り欠きを第1切り欠き33、33、縦端113に近い方の切り欠きを第2切り欠き34、34とする(図2)。この一対の切り欠き33、34により切り欠かれることによって、吸収性コア31及び吸収体3には、横方向に最も狭くなった最狭部分が形成される。このとき、第1切り欠き33及び第2切り欠き34は、いずれも縦方向における縦方向中心X−X線より縦端113側に形成されている。なお、吸収性コア31の形状は何等上記の形状に限らず、例えば略砂時計形状でも良い。
【0044】
図2図3A乃至図3Cに示すように、トップシート2と防漏シート4は、吸収体3の縦方向の両側及び横方向の両側から飛び出すような平面寸法を有し、接着や溶着等によって接合され、両シート2,4同士の間に吸収体3が保持されている。そして、外装シート5の肌側面に、両シート2,4及び両シート2,4同士の間に保持された吸収体3が、横方向の中央位置を互いに揃えながら重ね合わせられて接着又は溶着等で一体化されている。
【0045】
図2図3A乃至図3Cに示すように、立体ギャザーシート61,61は、SMS不織布等の柔軟性を有する不織布が用いられ、トップシート2の横方向の各端部をそれぞれ肌側から覆うように一対で設けられている。各立体ギャザーシート61は、トップシート2に接着剤等で固定されて起立不能な縦方向に沿った帯状の基端部63と、基端部63を支点として厚さ方向の肌側に起立可能な起立部65と、を横方向に並んで有している。そして、起立部65の横方向の先端部には、縦方向に沿った立体ギャザー用弾性部材として糸ゴム64が固定され、起立部65の縦方向への収縮で、起立部65が複数の襞を形成しながら厚さ方向の肌側に起立して、立体ギャザー6として機能する。また、起立部65のうちの縦方向の各端部には、それぞれ当該各端部を固定する固定部62,62が縦方向に沿って形成されている。
【0046】
なお、立体ギャザーシート61は、横方向の外側へ、外装シート5の外側の端縁とほぼ同位置まで延在し、この端縁近傍で外装シート5と接着又は溶着で一体化されている(図2図3A乃至図3C)。これにより、立体ギャザーシート61と外装シート5とが共同して、第1胴回り部11、第2胴回り部12及び股下部13で、それぞれ各第1サイドフラップ112、各第2サイドフラップ122及び各股下サイドフラップ132を形成する。
【0047】
各股下サイドフラップ132は、各第1サイドフラップ112及び各第2サイドフラップ122とともに、脚回り開口部1HLを構成する部分であり、低体重児9の脚回りを覆う部分となる。そして、各股下サイドフラップ132には、それぞれレッグギャザー部の弾性部材として縦方向に沿った糸ゴム(レッグギャザー部に設けられた弾性部材)8が伸長状態で接着等により固定されている。この糸ゴム8の伸長状態が緩和されると、股下サイドフラップ132は縦方向に収縮して複数の襞が形成されて、この襞がレッグギャザーとなる。
【0048】
おむつ1は、必要に応じて切り取る一対の切り取り線1c、1c(第1切り取り線、第2切り取り線)と切り取り線2cとを有している(図2)。詳細については、後述する。
【0049】
ファスニングテープ7、7は、一対の第2サイドフラップ122、122の横方向の各第2横端125にそれぞれ設けられている(図2)。各ファスニングテープ7は、それぞれ横長形状の帯状シートをテープ基材とし、このテープ基材の横方向の一端部が第2サイドフラップ122の一部に固定され、他端部が第2横端125よりも横方向外側に突出している。そして、この突出部分の肌側面に複数の係止用突起(不図示)を備えた面ファスナーのフック材71が固定されている。フック材71の係止用突起が、第1胴回り部11の非肌側面に設けられたターゲット領域114に引っ掛かることにより、第1胴回り部11にファスニングテープ7が係止される。これにより、胴回り開口部1HBと一対の脚回り開口部1HL,1HLとが形成されて、おむつ1は低体重児9に装着される(図4A図4B)。
【0050】
<おむつ1の装着について>
本実施形態におけるおむつ1の低体重児9への装着について説明する。
おむつ1を低体重児9に装着させる際には、一対のファスニングテープ7、7でおむつ1の第2胴回り部12を横方向の両側に引っ張りながら、各ファスニングテープ7をそれぞれ第1胴回り部11のターゲット領域114に係止する(図4A図4B)。
【0051】
通常、低体重児9を仰向け姿勢にして、おむつ1の第1胴回り部11が低体重児9の腹部を覆い、第2胴回り部12が背部を覆うようにして装着させると(以下、「通常の装着」)、図1Aに示すような状態となる。おむつ1は、予め、吸収性コア31の最狭部分を基点に縦方向に二つ折りされて包装されおり、装着時にはこの最狭部分(第1切り欠き33)を低体重児9の股下に配置させる。最狭部分(第1切り欠き33)が、おむつ1の縦方向中心より縦端123側に形成されているため、低体重児9におむつ1を装着させると、低体重児9の腹側より背側の方が広く覆われる。なお、胴回り開口部1HBは、低体重児9の胴回りに当接し、脚回り開口部1HLは脚回りに当接し、その一部はそけい部に当接する。
【0052】
低体重児9は、安静が必要とされ、極力体位変更を行わないことが好ましく、うつぶせ姿勢の低体重児9をおむつ交換の度に仰向けにすることは、低体重児9に余計なストレスを与えてしまう。これを防ぐために、おむつを前後逆に装着させることがあるが、従来のおむつを前後逆に装着させると、両膝が腹部に付くくらい引き付けた状態の低体重児9(図1A)は、脚回り開口部1HLのサイドフラップ10によってそけい部が圧迫される恐れがある。
【0053】
そこで、図5に示すように、うつぶせ姿勢の低体重児9には、後述の切り取り線1c、1c及び2cで切り取ったおむつ1を用いることで、おむつ1の第1胴回り部11が低体重児9の背部を覆い、第2胴回り部12が腹部を覆い、第2胴回り部12に固定されたファスニングテープ7のフック材を、背部を覆っている第1胴回り部11に係止(以下、「前後逆に装着」)した場合でも、低体重児9のそけい部の圧迫を軽減させることができる。図4Bは、切り取り線1c、1c及び2cで切り取った後の装着状態のおむつ1の概略斜視図である。切り取り線1c、2cで切り取ったおむつ1は、図4Aに示す通常の装着状態のおむつ1と比べて、脚回り開口部1HLを比較的広く開口して、低体重児9のそけい部の圧迫を軽減させ、胴回り開口部1HBのうち腹部を比較的露出させたものとなる。
【0054】
<切り取り線1cについて>
以下、切り取り線1cについて更に詳しく説明する。
図6は、切り取り線1cを説明するための要部拡大図である。切り取り線1c(第1切り取り線、第2切り取り線)は、装着時に脚回り開口部1HLとなる部分の一部を切り取るための線であり、複数の細長い貫通孔で形成されている。この切り取り線1cの貫通孔の長さや、間隔については、切断性などを考慮して適宜設定される。例えば、貫通孔の長さを1mm〜3mm、貫通孔の間隔(貫通孔が無い部分の長さ)を0.5mm〜2mmとすることができる。
【0055】
切り取り線1cは、縦方向については、ファスニングテープ7よりも縦端113側で、横方向については、吸収体3よりも外側の領域に設けられている。また、一方の第2サイドフラップ122及び股下サイドフラップ132に形成された切り取り線1cと、他方の第2サイドフラップ122及び股下サイドフラップ132に形成された切り取り線1cとは、互いに、おむつ1の横方向の中心線C1に関して線対称に形成されている(図6)。
【0056】
この各切り取り線1cの一端及び他端は、サイドフラップ10の横端に設けられ、湾曲形状の曲線状部分(第1曲線状部分)1cAと、縦方向に沿った直線状部分1cLと、曲線状部分1cAと直線状部分1cLとをつなぐ曲線状部分(第2曲線状部分)1cBとを有した略J字状をなしている。
【0057】
湾曲形状の曲線状部分1cAは、横方向に沿った曲線である。切り取り線1cの一端である曲線状部分1cAの起点は、第2横端125のうちファスニングテープ固定部128より縦端113側に位置する。曲線状部分1cAは、横方向においてファスニングテープ固定部128が設けられた領域内に形成された曲線で、起点から横方向の内側へ進むに従って縦端123に向かって凸に湾曲した形状である。
【0058】
曲線状部分1cAのうち、第2横端125に位置する起点と反対側の部分から、曲線状部分1cAと直線状部分1cLとをつなぐ曲線状部分1cBが形成される。曲線状部分1cBは、曲線状部分1cAより大きな曲率で湾曲している。曲線状部分1cBは、横方向においてファスニングテープ固定部128より内側に形成される。
【0059】
続いて、曲線状部分1cBから直線状部分1cLが、縦方向に平行な直線に沿って縦方向の内側へと形成され、直線状部分1cLは、股下サイドフラップ132の横端まで達する。
【0060】
この切り取り線1cを切断することで、脚回り開口部1HLの開口の大きさを広げることができる。特に、サイドフラップ10のうち、おむつ1を前後逆に装着させた場合にそけい部に当接する部分を広げることができる。
【0061】
なお、切り取り線1cのうち、曲線状部分1cA及び曲線状部分1cBを曲線状とすることで、低体重児9に当接する部分を低体重児9のそけい部(脚)に沿った形状とすることができる。また、曲線状部分1cAより曲線状部分1cBの方が大きな曲率とすることで、低体重児9のそけい部により一層沿った形状とすることができ、低体重児9のそけい部の圧迫をより軽減させることができる。
【0062】
本実施形態においては、切り取り線1cは、曲線状部分1cA、1cB、及び直線状部分1cLから成るものとしたが、これに限られない。切り取り線1cの形状は適宜変更可能である。例えば、切り取り線1cを、全て直線としてもよく、全て曲線としてもよい。
【0063】
また、切り取り線1cの一端は、サイドフラップ10の横端に設けられ、特に、切り取り線1cの一端を第2横端125に設けて、切断の起点とすることが好ましい。作業者は、比較的広い領域である第2横端125やファスニングテープ固定部128を片手で安定して支持することができ、もう一方の手で第2横端125から切断し始めることができるため、切断作業を行いやすくなるためである。このとき、切り取り線1cの切断起点を第2横端125に設けて、第2横端125と切り取り線1cの切断起点における接線とが垂直であるほど、作業者は、切断しやすい傾向がある。このため、切り取り線1cの一端を第2横端125に設け、曲線状部分1cA、曲線状部分1cB、曲線状部分1cLの順に切り取ることが作業者にとって、容易に切断できるルートである。
【0064】
さらに、曲線状部分1cAの第2横端125における接線と、直線状部分1cLとの角度θを82.5度以上102.5度以下とする。特に、好ましい角度θは92.5度である。このようにすることで、低体重児9のそけい部の形状に最も適した脚回り開口部1HLを形成することができ、低体重児9のそけい部を圧迫する恐れをより軽減することができる。また、上記範囲の角度θは、作業者にとっても、切り取り線1cの切断作業を行いやすい角度であり、誤って切り取り線1c以外の部分を切り取る恐れも軽減させることができる。
【0065】
なお、切り取り線1cの縦方向については、第2サイドフラップ122及び股下サイドフラップ132に渡っているが、第2サイドフラップ122に収まるように形成してもよく、第2サイドフラップ122と股下サイドフラップ132、更に第1サイドフラップ112に渡るように形成してもよい。縦方向における切り取り線1cの範囲については、対象とする低体重児9の身体の大きさ等によって適宜変更可能である。
【0066】
ただし、切り取り線1cの他端である直線状部分1cLの端をおむつ1の縦方向における中央よりも縦端123側に設けることが好ましい。このようにすることで、低体重児9におむつ1を前後逆に装着させる場合には、各切り取り線1cで切り取ることにより、低体重児9のそけい部の圧迫を軽減させることができる一方、おむつ1を通常の装着で用いる場合であっても、切り取り線1cが過剰に形成されていないため、不用意に切断されることを防ぎ、低体重児9のお尻等を支持することができる。
【0067】
さらに、切り取り線1cの他端である直線状部分1cLの端を吸収性コア31の第1切り欠き33による最狭部分よりも縦端123側に設けることが好ましい。低体重児9がおむつ1を装着すると、股下に最狭部分が位置される。このとき、最狭部分より縦端123側を切り取ることは、おむつ1を前後逆に装着させたことによるそけい部の圧迫を軽減させるのに必要な切断領域を確保できる一方で、不必要に広い領域を切り取ることを防ぐことができる。
【0068】
一方、横方向については、吸収体3より外側の領域に1cを設けることとするが、ファスニングテープ固定部128より横方向の内側まで形成することが好ましい。低体重児9が膝を腹部に引き付けた場合、図6に示すクッション領域129により強く当接する。このとき、一方の第2サイドフラップ122のクッション領域129(図6)と、他方の第2サイドフラップ122のクッション領域129とは、互いに、おむつ1の横方向の中心線C1に関して線対称に形成されている。クッション領域129は、比較的柔らかい素材で構成されたサイドフラップ10の一部分であり、切り取り線1cのうち曲率が最も大きな曲線状1cBが形成された部分であって、低体重児9のそけい部に柔らかく当接する機能を有する。一方、ファスニングテープ固定部128は、他の領域に比べて固くなっているため、クッション領域129として機能することができない。このため、切り取り線1cを、横方向においてファスニングテープ固定部128より内側まで形成することで、そけい部が強く圧迫されることをより防ぐことができる。
【0069】
さらに、横方向については、立体ギャザー6よりも外側で、かつ、レッグギャザー部に設けられた糸ゴム8よりも外側に切り取り線1cを形成している。
【0070】
立体ギャザー6が形成された領域に切り取り線1cを形成し、切り取り線1cで切断すると、立体ギャザー6の立体ギャザーシート61、基端部63、及び糸ゴム64が切断され、立体ギャザー6により保持された排泄液がおむつから漏出してしまい、防漏壁としての機能を果たせなくなってしまうからである。
【0071】
また、糸ゴム8が位置する領域に切り取り線1cを設けると、糸ゴム8が切断され、股下サイドフラップ132によって形成された襞が崩されてしまい、排泄物が脚回りから漏出してしまうからである。
【0072】
なお、本実施形態の切り取り線1cの形成位置には、複数枚のシート5、61が存在し、具体的には、厚さ方向の肌側から立体ギャザーシート61、及び外装シート5が存在している。切り取り線1cは、これらのシート5、61を貫通した複数の貫通孔が形成されているため、作業者は、切り取り線1cを小さな力で切断することができる。
【0073】
このとき、切り取り線1cのうち切断の起点を有する曲線状部分1cAの部分は、直線状部分1cLの部分に比べて、単位長さ当たりに占める貫通孔の長さの割合が小さいものする。つまり、一定の長さ(例えば、1cm)における貫通孔の長さの合計の差を比較すると、直線状部分1cLの貫通孔の長さの合計をより大きくして、曲線状部分1cAより直線状部分1cLの方を切断し易い切り取り線としている。
【0074】
この割合の設定は、例えば、貫通孔の長さの変更により行うことができる。貫通孔の間隔を一定に維持しつつ、貫通孔の長さを異ならせることで、切り取り線1cの単位長さ当たりに占める貫通孔の長さの割合を変化させることができる。
【0075】
曲線状部分1cAの切断起点が設けられた第2横端125は、前述のように作業者がつかみやすい部分であり、切り始めの部分であるため一般的に力を入れやすい。そのため、作業者が力を入れすぎてしまい、不意に切り取り線1cを超えて切り取ってしまうおそれがある。一方で、直線部分1cLは、作業者がおむつ1を支持しづらい部分であり、切断作業が難しい場合がある。これらのことから、比較的力を入れやすい曲線状部分1cA部分の貫通孔の割合を小さくして、切り取り線1c以外の部分を誤って切り取ることを軽減させる。一方、力を入れにくい直線状部分1cLの貫通孔の割合を多く形成して、作業者が小さな力でも切断しやすいようにする。
【0076】
なお、本実施形態においては、細長い貫通孔により切り取り線1cを形成したが、これに限られない。円形の貫通孔等、所定の形状の貫通孔としてもよい。また、サイドフラップ10を貫通せず、連続した切り込みを形成して切り取り線1cとしてもよい。
【0077】
以上のように、通常の装着の場合には、切り取り線1cで切断せずに低体重児9におむつ1を装着させることができる一方、うつぶせ姿勢の低体重児9には、切り取り線1cで切断したおむつ1を前後逆に装着させることができる。このように、本実施形態のおむつ1で、通常の装着と前後逆の装着の両方に適したおむつを提供することができる。
【0078】
<切り取り線2cについて>
切り取り線2cは、装着時に胴回り開口部1HBとなる部分の一部を切り取るための線であり、切り取り線1cと同様に複数の貫通孔で形成されている。
【0079】
図6に示すように、切り取り線2cは、縦方向において、第2胴回り部12の吸収体3及びファスニングテープ7より縦端123側に設けられた、横方向に沿った直線状の切り取り線である。
【0080】
うつぶせ姿勢の低体重児9に対して、おむつ1を前後逆に装着させる場合には、作業者は、予め切り取り線2cで切り取ってから、図5に示すように低体重児9におむつ1を着用させる。おむつ1を前後逆に装着させると、第2胴回り部12は、通常、低体重児9の腹部を広く覆うところ、切り取り線2cで第2胴回り部12を切り取ることで、図4Bに示すように胴回り開口部1HBの第2胴回り部12が切り取られ、低体重児9の腹部を露出させることができ、低体重児9の呼吸の様子や色を観察することができる。
【0081】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0082】
例えば、図7は、その他の実施形態の切り取り線1cを説明するための要部拡大図である。図7に示すように、切り取り線1cの一端が位置する第2横端125に、切り取り線1cの位置を示す目印として切り欠き部1kが形成されている。この切り欠き部1kは、横方向の内側に略V字状に形成されている。
【0083】
切り欠き部1kによって、作業者は、切り取り線1cの位置を目視で認識しやすくなり、また、薄暗い作業環境下においても切り欠き1kに手で触れることで切り取り線1cの位置を認識することもできる。さらに、切り取り線1cを切り始める際に、比較的小さな力で切断することも可能となる。
【0084】
なお、切り取り線1cの位置を示す目印は、略V字状の切り欠き部1kに限られない。例えば、半円状の切り欠き部等の所望の形状としてもよく、第2サイドフラップ122から突出した摘み部を形成してもよい。また、切り取り線1cの一端を着色して目印としてもよい。
【0085】
さらに、上述の実施形態においては、切り取り線1cを複数のシート5、61を貫通した貫通孔で形成されていたが、これに限らない。例えば、切り取り線1cを外装シート5(第1シートに相当)に形成して、立体ギャザーシート61(第2シートに相当)には形成しないこととしてもよい。
【0086】
このように、外装シート5に切り取り線1cを形成し、立体ギャザーシート61に切り取り線1cを形成しないこととすることで、おむつ1を横方向に引っ張った際に、切り取り線1c、1cに作用し得る引っ張り力を、切り取り線1cが形成されていない立体ギャザーシート61側で効果的に受けることができる。その結果、意図せずに切り取り線1cで切り取られてしまうという事態を防ぐことができる。
【0087】
上述の実施形態においては、立体ギャザーシート61が設けられた領域内にレッグギャザーの弾性部材である糸ゴム8が配置されているがこれに限らない。例えば、糸ゴム8が立体ギャザーシート61よりも横方向の外側に位置するおむつ1でもよく、立体ギャザー6を有さないおむつ1であってもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 おむつ(使い捨ておむつ)、
10 サイドフラップ、
11 第1胴回り部、
112 第1サイドフラップ(端)、113 縦端、
114 ターゲット領域、115 第1横端、
12 第2胴回り部、
122 第2サイドフラップ(端、横端)、123 縦端、125 第2横端、
128 ファスニングテープ固定部(ファスニングテープが固定されている部分)、
129 クッション領域、
13 股下部、132 股下サイドフラップ(端)、
2 トップシート、
3 吸収体、
31 吸収性コア、32 コアラップシート、
33 第1切り欠き、34 第2切り欠き、
4 防漏シート、
5 外装シート、
6 立体ギャザー、
61 立体ギャザーシート、62 固定部、63 基端部、
64 糸ゴム(立体ギャザー用弾性部材)、65 起立部、
7 ファスニングテープ、71 フック材、
8 糸ゴム(レッグギャザーに設けられた弾性部材)、
9 低体重児(着用対象者)、
1HB 胴回り開口部、1HL 脚回り開口部、
1c 切り取り線(第1切り取り線、第2切り取り線)、
1cA 曲線状部分、1cB 曲線状部分、1cL 直線状部分、
1k 切り欠き部(目印)、
2c 切り取り線、2k 切り欠き部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7