(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の液晶硬化膜(以下、本液晶硬化膜ということがある。)は、通常、基材又は基材に形成された配向膜表面に、式(1−1)で表される化合物(以下、化合物(1−1)ということがある。)と式(2−1)で表される化合物(以下、化合物(2−1)ということがある。)とを含む組成物(以下、液晶硬化膜形成用組成物ということがある。)を塗布し、それらの化合物を液晶配向させたのちにそれらを硬化させることによって得られる。
本明細書において、式(1−1)で表される化合物及び式(2−1)で表される化合物等の化合物を総称して、重合性液晶化合物という。本液晶硬化膜は、位相差膜として、液晶表示装置及び有機EL表示装置等の表示装置に好適に用いられる。
【0009】
<基材>
基材としては、ガラス基材及びプラスチック基材が挙げられ、好ましくはプラスチック基材である。プラスチック基材を構成するプラスチックとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマーなどのポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース及びセルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド及びポリフェニレンオキシドなどのプラスチックが挙げられる。好ましくは、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート又はポリメタクリル酸エステルである。
【0010】
セルロースエステルは、セルロースに含まれる水酸基の少なくとも一部が、エステル化されたものであり、市場から容易に入手することができる。また、セルロースエステル基材も市場から容易に入手することができる。市販のセルロースエステル基材としては、例えば、“フジタックフィルム”(富士写真フイルム(株));“KC8UX2M”、“KC8UY”及び“KC4UY”(コニカミノルタオプト(株))などが挙げられる。
【0011】
環状オレフィン系樹脂とは例えば、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーなどの環状オレフィンの重合体又は共重合体(環状オレフィン系樹脂)から構成されるものであり、当該環状オレフィン系樹脂は部分的に、開環部を含んでいてもよい。また、開環部を含む環状オレフィン系樹脂を水素添加したものでもよい。さらに、当該環状オレフィン系樹脂は、透明性を著しく損なわない点や、著しく吸湿性を増大させない点で例えば、環状オレフィンと、鎖状オレフィンやビニル化芳香族化合物(スチレンなど)との共重合体であってもよい。また、該環状オレフィン系樹脂は、その分子内に極性基が導入されていてもよい。
【0012】
環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと、鎖状オレフィンやビニル基を有する芳香族化合物との共重合体である場合、環状オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、共重合体の全構造単位に対して、通常50モル%以下、好ましくは15〜50モル%の範囲である。鎖状オレフィンとしては、エチレンおよびプロピレンが挙げられ、ビニル基を有する芳香族化合物としては、スチレン、α−メチルスチレンおよびアルキル置換スチレンが挙げられる。環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと、鎖状オレフィンと、ビニル基を有する芳香族化合物との三元共重合体である場合、鎖状オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、共重合体の全構造単位に対して、通常5〜80モル%であり、ビニル基を有する芳香族化合物に由来する構造単位の含有割合は、共重合体の全構造単位に対して、通常5〜80モル%である。このような三元共重合体は、その製造において、高価な環状オレフィンの使用量を比較的少なくすることができるという利点がある。
【0013】
環状オレフィン系樹脂は、市場から容易に入手できる。市販の環状オレフィン系樹脂としては、“Topas”(登録商標)[Ticona社(独)]、“アートン”(登録商標)[JSR(株)]、“ゼオノア(ZEONOR)”(登録商標)[日本ゼオン(株)]、“ゼオネックス(ZEONEX)”(登録商標)[日本ゼオン(株)]および“アペル”(登録商標)[三井化学(株)製]が挙げられる。このような環状オレフィン系樹脂を、例えば、溶剤キャスト法、溶融押出法などの公知の手段により製膜して、基材とすることができる。また、市販されている環状オレフィン系樹脂基材を用いることもできる。市販の環状オレフィン系樹脂基材としては、“エスシーナ”(登録商標)[積水化学工業(株)]、“SCA40”(登録商標)[積水化学工業(株)]、“ゼオノアフィルム”(登録商標)[オプテス(株)]および“アートンフィルム”(登録商標)[JSR(株)]が挙げられる。
【0014】
基材の厚みは、実用的な取扱いができる程度の重量である点では、薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。基材の厚みは、通常5〜300μmであり、好ましくは20〜200μmである。
【0015】
<配向膜>
配向膜は、通常、高分子化合物からなる厚みが500nm以下の膜であり、重合性液晶化合物を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有するものである。
配向膜は、重合性液晶化合物の液晶配向を容易にする。水平配向、垂直配向、ハイブリッド配向、傾斜配向等の液晶配向の状態は、配向膜及び重合性液晶化合物の性質によって変化し、その組み合わせは任意に選択することができる。配向膜が配向規制力として水平配向を発現させる材料であれば、重合性液晶化合物は水平配向又はハイブリッド配向を形成することができ、垂直配向を発現させる材料であれば、重合性液晶化合物は垂直配向又は傾斜配向を形成することができる。水平、垂直等の表現は、液晶硬化膜平面を基準とした場合、配向した重合性液晶化合物の長軸の方向を表す。垂直配向とは液晶硬化膜平面に対して垂直な方向に、配向した重合性液晶化合物の長軸を有することである。ここでいう垂直とは、液晶硬化膜平面に対して90°±20°のことを意味する。
配向規制力は、配向膜層が配向性ポリマーから形成されている場合は、表面状態やラビング条件によって任意に調整することが可能であり、光配向性ポリマーから形成されている場合は、偏光照射条件等によって任意に調整することが可能である。重合性液晶化合物の、表面張力や液晶性等の物性を選択することにより、液晶配向を制御することもできる。
【0016】
基材と液晶硬化膜との間に形成される配向膜としては、配向膜上に液晶硬化膜を形成する際に使用される溶剤に不溶であり、溶剤の除去や液晶の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。配向膜としては、配向性ポリマーからなる配向膜、光配向膜及びグルブ配向膜等が挙げられる。
【0017】
配向膜の厚みは、通常10〜500nmの範囲であり、好ましくは10〜200nmの範囲である。
【0018】
<配向性ポリマーからなる配向膜>
配向性ポリマーとしては、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸エステル類等が挙げられ、ポリビニルアルコールが好ましい。これらの配向性ポリマーは、単独で用いてもよいし、組み合わせてもよい。
【0019】
配向性ポリマーからなる配向膜は、通常、配向性ポリマーが溶剤に溶解した組成物(以下、配向性ポリマー組成物ということがある。)を基材に塗布し、溶剤を除去する、又は、配向性ポリマー組成物を基材に塗布し、溶剤を除去し、ラビングする(ラビング法)ことで得られる。
【0020】
溶剤としては、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶媒;テトラヒドロフラン及びはジメトキシエタン等のエーテル溶媒;クロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素置換炭化水素溶媒;等が挙げられる。これら溶剤は、単独でもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0021】
配向性ポリマー組成物中の配向性ポリマーの濃度は、配向性ポリマー材料が、溶剤に完溶できる範囲であればよいが、溶液に対して固形分換算で0.1〜20%が好ましく、0.1〜10%がさらに好ましい。
【0022】
市販の配向性ポリマー組成物としては、サンエバー(登録商標、日産化学工業(株)製)又はオプトマー(登録商標、JSR(株)製)等が挙げられる。
【0023】
配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法としては、スピンコ−ティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法及びアプリケータ法等の塗布法や、フレキソ法等の印刷法等の公知の方法が挙げられる
【0024】
配向性ポリマー組成物に含まれる溶剤を除去することにより、配向性ポリマーの乾燥被膜が形成される。溶剤の除去方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥法及び減圧乾燥法等が挙げられる。
【0025】
ラビングする方法としては、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールに、配向性ポリマー組成物を基材に塗布しアニールすることで基材表面に形成された配向性ポリマーの膜を、接触させる方法が挙げられる。
【0026】
<光配向膜>
光配向膜は、通常、光反応性基を有するポリマー又はモノマーと溶剤とを含む組成物(以下、「光配向膜形成用組成物」ということがある。)を基材に塗布し、偏光(好ましくは、偏光UV)を照射することで得られる。光配向膜は、照射する偏光の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御できる点でより好ましい。
【0027】
光反応性基とは、光を照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光を照射することで生じる分子の配向誘起又は異性化反応、二量化反応、光架橋反応、或いは光分解反応のような、液晶配向能の起源となる光反応を生じるものである。当該光反応性基の中でも、二量化反応又は光架橋反応を起こすものが、配向性に優れる点で好ましい。上記反応を生じうる光反応性基としては、不飽和結合、特に二重結合を有するものが好ましく、炭素−炭素二重結合(C=C結合)、炭素−窒素二重結合(C=N結合)、窒素−窒素二重結合(N=N結合)、及び炭素−酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも一つを有する基が特に好ましい。
【0028】
C=C結合を有する光反応性基としては、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ−ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基及びシンナモイル基等が挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基及び芳香族ヒドラゾン等の構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基及びホルマザン基等や、アゾキシベンゼンを基本構造とするものが挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基及びマレイミド基等が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリ−ル基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基及びハロゲン化アルキル基等の置換基を有していてもよい。
【0029】
中でも、光二量化反応に関与する光反応性基が好ましく、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向層が得られやすいという点で、シンナモイル基及びカルコン基が好ましい。光反応性基を有するポリマーとしては、当該ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものが特に好ましい。
【0030】
光配向膜形成用組成物の溶剤としては、光反応性基を有するポリマー及びモノマーを溶解するものが好ましく、該溶剤としては、配向性ポリマー組成物の溶剤として挙げられた溶剤等が挙げられる。
【0031】
光配向膜形成用組成物に対する、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの含有量は、0.2質量%以上が好ましく、0.3〜10質量%の範囲が特に好ましい。光配向膜の特性が著しく損なわれない範囲で、ポリビニルアルコ−ルやポリイミド等の高分子材料や光増感剤が含まれていてもよい。
【0032】
光配向膜形成用組成物を基材に塗布する方法としては、配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法と同様の方法が挙げられる。塗布された光配向膜形成用組成物から、溶剤を除去する方法としては、配向性ポリマー組成物から溶剤を除去する方法と同じ方法が挙げられる。
【0033】
偏光を照射するには、基板上に塗布された光配向膜形成用組成物から、溶剤を除去したものに直接、偏光を照射する形式でも、基材側から偏光を照射し、偏光を透過させて照射する形式でもよい。当該偏光は、実質的に平行光であると特に好ましい。照射する偏光の波長は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。具体的には、波長250〜400nmの範囲のUV(紫外線)が特に好ましい。当該偏光照射に用いる光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArF等の紫外光レ−ザ−等が挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ及びメタルハライドランプがより好ましい。これらのランプは、波長313nmの紫外線の発光強度が大きいため好ましい。光源からの光を、適当な偏光子を通過して照射することにより、偏光を照射することができる。かかる偏光子としては、偏光フィルターやグラントムソン、グランテ−ラ−等の偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子を用いることができる。
【0034】
なお、ラビング又は偏光照射を行う時に、マスキングを行えば、液晶配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を形成することもできる。
【0035】
<グルブ配向膜>
グルブ(groove)配向膜は、膜表面に凹凸パターン又は複数のグルブ(溝)を有する膜である。等間隔に並んだ複数の直線状のグルブを有する膜に液晶化合物を置いた場合、その溝に沿った方向に液晶分子が配向する。
【0036】
グルブ配向膜を得る方法としては、感光性ポリイミド膜表面にパターン形状のスリットを有する露光用マスクを介して露光後、現像及びリンス処理を行って凹凸パターンを形成する方法、表面に溝を有する板状の原盤に、硬化前のUV硬化樹脂の層を形成し、樹脂層を基材へ移してから硬化する方法、及び、基材上に形成した硬化前のUV硬化樹脂の膜に、複数の溝を有するロール状の原盤を押し当てて凹凸を形成し、その後硬化する方法等が挙げられる。具体的には、特開平6−34976号公報及び、特開2011−242743号公報記載の方法等が挙げられる。
【0037】
上記方法の中でも、複数の溝を有するロール状の原盤を、硬化前のUV硬化樹脂の層表面に押し当てて凹凸を形成し、その後硬化する方法が好ましい。ロール状原盤としては、耐久性の観点からステンレス(SUS)鋼が好ましい。
【0038】
UV硬化樹脂としては、単官能アクリレートの重合体、多官能アクリレートの重合体又はこれらの混合物の重合体が挙げられる。
単官能アクリレートとは、アクリロイルオキシ基(CH
2=CH−COO−)及びメタクリロイルオキシ基(CH
2=C(CH
3)−COO−)からなる群より選ばれる基(以下、(メタ)アクリロイルオキシ基と記すこともある。)を1個有する化合物である。(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0039】
(メタ)アクリロイルオキシ基を1個有する単官能アクリレートとしては、炭素数4から16のアルキル(メタ)アクリレート、炭素数2から14のβカルボキシアルキル(メタ)アクリレート、炭素数2から14のアルキル化フェニル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びイソボニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
多官能アクリレートとは、2以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であり、(メタ)アクリロイルオキシ基を2から6個有する化合物が好ましい。
【0041】
(メタ)アクリロイルオキシ基を2個有する多官能アクリレートとしては、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート;1,3−ブタンジオール(メタ)アクリレート;1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジアクリレート;ビスフェノールAのビス(アクリロイロキシエチル)エーテル;エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート;プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート及び3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
(メタ)アクリロイルオキシ基を3〜6個有する多官能アクリレートとしては、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート;エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート;トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート;トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート;トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート;トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート;
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物;
トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物;
カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物;カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、及びカプロラクトン変性トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートと酸無水物等が挙げられる。
カプロラクトン変性とは、(メタ)アクリレート化合物のアルコール由来部位と(メタ)アクリロイルオキシ基との間に、カプロラクトンの開環体、又は、開環重合体が導入されていることを意味する。
【0043】
多官能アクリレートの市販品としては、A−DOD−N、A−HD−N、A−NOD−N、APG−100、APG−200、APG−400、A−GLY−9E、A−GLY−20E、A−TMM−3、A−TMPT、AD−TMP、ATM−35E、A−TMMT、A−9550、A−DPH、HD−N、NOD−N、NPG、TMPT[新中村化学(株)]、“ARONIX M−220”、同“M−325”、同“M−240”、同“M−270”同“M−309”同“M−310”、同“M−321”、同“M−350”、同“M−360”、同“M−305”、同“M−306”、同“M−450”、同“M−451”、同“M−408”、同“M−400”、同“M−402”、同“M−403”、同“M−404”、同“M−405”、同“M−406”[東亜合成(株)]、“EBECRYL11”、同“145”、同“150”、同“40”、同“140”、同“180”、DPGDA、HDDA、TPGDA、HPNDA、PETIA、PETRA、TMPTA、TMPEOTA、DPHA、EBECRYLシリーズ[ダイセル・サイテック(株)]等が挙げられる。
【0044】
配向乱れの小さな配向を得るためには、グルブ配向膜の凸部の幅は0.05〜5μmであることが好ましく、凹部の幅は0.1〜5μmであることが好ましく、凹凸の段差の深さは2μm以下であることが好ましく、0.01〜1μmであることが好ましい。
【0045】
<液晶硬化膜>
本液晶硬化膜は、好ましくは、重合性液晶化合物が基材面内に対して水平方向に配向した状態で硬化した10μm以下の膜である。
【0046】
液晶硬化膜の厚みは、0.5μm以上5μm以下の範囲が好ましく、1μm以上3μm以下がさらに好ましい。液晶硬化膜の厚みは、干渉膜厚計やレーザー顕微鏡あるいは触針式膜厚計で測定することができる。
【0047】
本液晶硬化膜は、好ましくは、波長λnmの光に対する複屈折率Δn(λ)が、下記式(3−1)、(3−2)で表される位相差性を示す位相差膜である。
Δn(450)/Δn(550)<1 (3−1)
Δn(650)/Δn(550)>1 (3−2)
Δn(450)、Δn(550)、Δn(650)はそれぞれ波長450nm、550nm、650nmの光に対する複屈折率を表す。
【0048】
さらに本液晶硬化膜は式(3−3)で表される光学特性を有すると好ましい。
100<Re(550)<150 (3−3)
Re(550)は550nmにおける位相差を表し、Δn(550)に膜厚を乗じたものである。
【0049】
複屈折率Δn(λ)は、リタデーションを測定して、液晶硬化膜の厚みで除することで得られる。具体的な測定方法は実施例に示すが、この際、ガラス基板のように基材自体にリタデーションが無いような基材上に製膜したものを測定することで、実質的な液晶硬化膜の特性を測定することができる。
【0050】
化合物(1−1)及び化合物(2−1)以外の重合性液晶化合物としては、重合性基を有し、かつ、液晶性を有する化合物が挙げられる。重合性基は、重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。ここで、光重合性基とは、後述する光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことをいう。また重合性基としては、ラジカル重合性、カチオン重合性基が好ましい。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1−クロロビニル基、イソプロペニル基、4−ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック液晶でも良く、また、サーモトロピック液晶における、ネマチック液晶相を有することが好ましい。
【0051】
本液晶硬化膜は、フィルムを構成する化合物(1−1)に由来する構造と化合物(2−1)に由来する構造の組成比によって、そのΔn、Δn(450)/Δn(550)及びΔn(650)/Δn(550)等の光学特性を制御することができる。
化合物(1−1)に由来する構造と化合物(2−1)に由来する構造との合計100モルに対する、化合物(2−1)に由来する構造の含有量は、好ましくは0.1〜30モルであり、より好ましくは0.1〜18モルであり、さらに好ましくは3〜15モルである。
当該範囲であれば、式(3−1)および式(3−2)を充足することが容易であり、また、基材側の重合度がより高くなるため好ましく、さらに、化合物(1−1)と化合物(2−1)を含む組成物の調製が容易となるため好ましい。
尚、本液晶硬化膜における化合物(1−1)に由来する構造と化合物(2−1)に由来する構造との合計100モルに対する、化合物(2−1)に由来する構造の含有量および化合物(1−1)に由来する構造の含有量は、塗工に用いる化合物(1−1)化合物(2−1)の組成比により、実質的に決定される。
【0052】
<化合物(1−1)及び化合物(2−1)>
本液晶硬化膜は化合物(1−1)および化合物(2−1)に由来する構造を含む。
R
1−A
1−E
1−G
1−D
1−Y−D
2−G
2−E
2−A
2−R
2 (1−1)
R
1−A
1−E
1−G
1−D
1−A
2−R
2 (2−1)
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に重合性基を表す。
Yは、12以上のπ電子を有する、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。
D
1及びD
2は、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
G
1及びG
2は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基及び該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基で置換されていてもよい。該炭素数1〜4のアルキル基及び該炭素数1〜4のアルコキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
E
1及びE
2は、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
A
1及びA
2は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基及び該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基で置換されていてもよい。該炭素数1〜4のアルキル基及び該炭素数1〜4のアルコキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。]
【0053】
R
1及びR
2で表される重合性基としては、式(6−1)で表される基が好ましい。式中*(アスタリスク)はA
1またはA
2との連結を意味する。
P
11−B
2−(F
1)r−B
1−* (6−1)
[P
11は重合反応性基を表す。
F
1は炭素数1〜12の2価のアルカンジイル基を表わす。
B
1およびB
2はそれぞれ独立に連結基を表す。rは0又は1を表す。]
【0054】
P
11で表される重合反応性基としては、光重合反応性が高いという点で、ラジカル重合性基またはカチオン重合性基が好ましく、取り扱いが容易な上、液晶化合物の製造自体も容易であることから、重合性基は、下記の式(P−11)〜式(P−17)で表わされる基であることが好ましい。
[式(P−11)〜(P−17)中、
R
17〜R
24はそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基または水素原子を表わす。]
【0055】
式(P−11)〜式(P−17)で表わされる基の具体例としては、下記式(P−18)〜式(P−24)で表わされる基が挙げられる。
【0056】
P11は、式(P−18)〜式(P−24)で表わされる基であることが好ましく、式(P−19)、式(P−20)、式(P−21)で表される基がより好ましく、式(P−20)が特に好ましい。
【0057】
B
1及びB
2で表される連結基としては、単結合、−CR
9R
10−、−CH
2−CH
2−、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−O−C(=S)−O−、−CO−NR
11−、−NR
11−CO−、−O−CH
2−、−CH
2−O−、−S−CH
2−、−CH
2−S−、−NR
11−及び、−CR
9=CR
10−等が挙げられる。R
9〜R
11はそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基または水素原子を表わす。
【0058】
化合物(1−1)及び(2−1)の製造が容易であるという点で、B
1は、−CH
2−CH
2−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NH−、−NH−CO−、−O−CH
2−、−CH
2−O−、−O−又は単結合であることが好ましい。B
2は、−NH−又は、−O−が好ましい。また、B
1とB
2は同一であるとより好ましい。
【0059】
F
1で表される炭素数1〜12の2価のアルカンジイル基は、直鎖状であると好ましい。該アルカンジイル基を構成する−CH
2−は、−O−に置き換っていてもよい。
F
1で表される炭素数1〜12の2価のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、へキサン−1,6−ジイル基、へプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基およびドデカン−1,12−ジイル基等の炭素数1〜12の直鎖状アルカンジイル基;−CH2−CH2−O−CH2−CH2−、−CH2−CH2−O−CH2−CH2−O−CH2−CH2−および−CH2−CH2−O−CH2−CH2−O−CH2−CH2−O−CH2−CH2−等が挙げられる。F
1は、好ましくはブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、へキサン−1,6−ジイル基、へプタン−1,7−ジイル基又は、オクタン−1,8−ジイル基である。
【0060】
本明細書におけるπ電子とは環を形成するπ電子を表し、たとえばカルボニル基、ニトロ基などの側鎖官能基のπ電子は含まない。また、該アリーレン基又はヘテロアリーレン基に置換基として、単結合を介して単数または複数の第二のアリーレン基又はヘテロアリーレン基が結合している場合にはそのπ電子は含まれる。第二のアリーレン基又はヘテロアリーレン基に置換基として、単結合として単数または複数の第三のアリーレン基又はヘテロアリーレン基が結合している場合にはそのπ電子は含まれる。さらに、アリーレン基又はヘテロアリーレン基に、−CH=CH−基、−C≡C−基を介して単数または複数の第二のアリーレン基又はヘテロアリーレン基が結合している場合には、第一、第二のアリーレン基またはヘテロアリーレン基を構成するπ電子と−CH=CH−基又は−C≡C−基のπ電子を含む。
【0061】
Yが有するπ電子は、合成が容易で可視光の吸収が少なくかつ波長分散性に優れるという点で、好ましくは12以上22以下であり、より好ましくは13以上22以下である。
【0062】
Yは、単結合、−CH=CH−基、−C≡C−基を介した複数のアリーレン基またはヘテロアリーレン基から構成されることが好ましい。中でもYが単結合、−CH=CH−基、−C≡C−基を介して結合する二つ以上アリーレン基またはヘテロアリーレン基から構成される場合、少なくとも一つヘテロアリーレン基が含まれることが好ましく、少なくとも二つのヘテロアリーレン基が含まれることが波長分散特性に優れるのでより好ましい。
【0063】
分子構造が屈曲しづらく液晶性に有利であるため、ヘテロアリーレン基は共役した5員環構造を環に含むことが好ましい。共役した5員環構造とは、チオフェン環、フラン環、チアゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピロール環、および、該5員環が縮環して形成されるベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、チエノチフォフェン環、チエノチアゾール環などを表す。中でもYは、ベンゾチアゾール環、又はベンゾオキサゾール環、ベンゾフラン環を含むことが特に好ましい。
【0064】
Yは、ベンゾチアゾール環を含む、置換基を有していてもよいアリーレン基であると好ましく、また、式(7−1)で表される基であると好ましい。*(アスタリスク)はD
1又はD
2基との連結を表す。
[式(7−1)中、Qは−S−、−O−を表す。
Z
1およびZ
2は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−NR
2R
3または−SR
2を表わすか、または、Z
1とZ
2とが互いに結合して、これらが結合する炭素原子とともに芳香環または芳香族複素環を形成する。R
2およびR
3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表わす。
Y
11は、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の1価の芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい炭素数3〜12の1価の芳香族複素環式基を表わす。]
【0065】
Y
11としては、置換基を有してもよい、フェニル基、チエニル基、フラニル基、チアゾリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、チエノチエニル基、ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
【0066】
D
1およびD
2で表される2価の連結基としては、−C(=O)−O−、−C(=S)−O−、−CR
4R
5−、−CR
4R
5−CR
6R
7−、−O−CR
4R
5−、−CR
4R
5−O−CR
6R
7−、−CO−O−CR
4R
5−、−O−CO−CR
4R
5−、−CR
4R
5−O−CO−CR
6R
7−、−CR
4R
5−CO−O−CR
6R
7−、−NR
4−CR
5R
6−及び、−CO−NR
4−等が挙げられ、好ましくは−C(=O)−O−である。これらの連結基の向きは任意である。
R
4、R
5、R
6およびR
7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表わす。
【0067】
G
1及びG
2は、好ましくは無置換の1,4−シクロヘキサンジイル基又は、無置換の1,4−ベンゼンジイル基であり、より好ましくは1,4−シクロヘキサンジイル基であり、さらに好ましくはトランス1,4−シクロヘキサンジイル基である。1,4−シクロヘキサンジイル基であると、得られる液晶硬化膜の波長分散特性が優れるため好ましい。
【0068】
E
1およびE
2で表される2価の連結基としては、−C(=O)−O−、−C(=S)−O−、−CR
4R
5−、−CR
4R
5−CR
6R
7−、−O−CR
4R
5−、−CR
4R
5−O−CR
6R
7−、−CO−O−CR
4R
5−、−O−CO−CR
4R
5−、−CR
4R
5−O−CO−CR
6R
7−、−CR
4R
5−CO−O−CR
6R
7−、NR
4−CR
5R
6−及びCO−NR
4−が挙げられ、好ましくは−C(=O)−O−である。これらの連結基の向きは任意である。D
1、D
2、E
1及びE
2が、それぞれ独立に、−C(=O)−O−又は−O−C(=O)−であると特に好ましい。
R
4、R
5、R
6およびR
7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表わす。
【0069】
A
1及びA
2は、好ましくは無置換の1,4−シクロヘキサンジイル基又は、無置換の1,4−ベンゼンジイル基であり、より好ましくは無置換の1,4−ベンゼンジイル基である。
【0070】
製造が容易であるため、A
1とA
2、G
1とG
2、及び、R
1とR
2は、それぞれ同一であると好ましい。
【0071】
化合物(1−1)の具体例としては、特許5391682号および特表2011−207765号公報に記載の化合物及び、下記式(8−1)〜(8−4)で示される化合物等が挙げられる。
【0073】
化合物(2−1)の具体例としては、特開2010−024438号公報に記載の化合物及び、下記式(8−5)〜(8−10)で示される化合物等が挙げられる。
【0075】
本発明において、化合物(1−1)は、単独で用いてもよいし、複数種類を組み合わせて用いてもよい。また、化合物(2−1)も、単独で用いてもよいし、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
<液晶硬化膜形成用組成物>
液晶硬化膜形成用組成物における、化合物(1−1)と化合物(2−1)の合計100質量部に対する、化合物(2−1)の含有量は、好ましくは0.1〜30質量部であり、より好ましくは0.1〜18質量部であり、さらに好ましくは3〜15質量部である。
当該範囲であれば、式(3−1)および式(3−2)を充足することが容易であり、また、基材側の重合度がより高くなるため好ましく、さらに、化合物(1−1)と化合物(2−1)を含む組成物の調製が容易となるため好ましい。
【0077】
液晶硬化膜形成用組成物は、化合物(1−1)及び化合物(2−1)以外の、第三の重合性液晶化合物を含んでいてもよい。さらに、第三の重合性液晶化合物は、単独で用いてもよいし、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
第三の重合性液晶化合物は、重合性基を少なくとも一つ有し、かつネマチック液晶相を呈する液晶化合物であると好ましい。
【0078】
具体的に、第三の液晶化合物としては、下記式(8−11)〜(8−16)で示される化合物等が挙げられる。
【0080】
液晶硬化膜形成用組成物は、通常溶剤を含む。溶剤としては、重合性液晶化合物を溶解し得る溶剤であって、且つ、重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶剤が好ましい。
具体的な溶剤としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、フェノール等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、N−メチル−2−ピロリジノン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の非塩素化脂肪族炭化水素溶剤;トルエン、キシレン等の非塩素化芳香族炭化水素溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶剤;およびクロロホルム、クロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶剤;が挙げられる。これら他の溶剤は、単独で用いてもよいし、組み合わせてもよい。
【0081】
液晶硬化膜形成用組成物の溶解性に優れるため、溶剤は、含窒素溶媒を含むと好ましい。含窒素溶媒としては、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン等及び、N,N‘−ジメチルイミダゾリジンなどが挙げられる。
【0082】
液晶硬化膜形成用組成物における溶剤の含有量は、通常、固形分100質量部に対して、10質量部〜10000質量部が好ましく、より好ましくは50質量部〜5000質量部である。固形分とは、液晶硬化膜形成用組成物から溶剤を除いた成分の合計を意味する。
【0083】
液晶硬化膜形成用組成物は、反応性添加剤を含んでもよい。
反応性添加剤としては、その分子内に炭素−炭素不飽和結合と活性水素反応性基とを有するものが好ましい。なお、ここでいう「活性水素反応性基」とは、カルボキシル基(−COOH)、水酸基(−OH)、アミノ基(−NH2)等の活性水素を有する基に対して反応性を有する基を意味し、グリシジル基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、アジリジン基、イミド基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、無水マレイン酸基等がその代表例である。反応性添加剤が有する、炭素−炭素不飽和結合及び活性水素反応性基の個数は、通常、それぞれ1〜20個であり、好ましくはそれぞれ1〜10個である。
【0084】
反応性添加剤において、活性水素反応性基は少なくとも2つ存在すると好ましく、この場合、複数存在する活性水素反応性基は同一でも、異なるものであってもよい。
【0085】
反応性添加剤が有する炭素−炭素不飽和結合とは、炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合、あるいはそれらの組み合わせであってよいが、炭素−炭素二重結合であると好ましい。中でも、反応性添加剤としては、ビニル基及び/又は(メタ)アクリル基として炭素−炭素不飽和結合を含むと好ましい。さらに、活性水素反応性基が、エポキシ基、グリシジル基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種であるものが好ましく、アクリル基と、イソシアネート基とを有する反応性添加剤が特に好ましい。
【0086】
反応性添加剤の具体例としては、メタクリロキシグリシジルエーテルやアクリロキシグリシジルエーテルなどの、(メタ)アクリル基とエポキシ基とを有する化合物;オキセタンアクリレートやオキセタンメタクリレートなどの、(メタ)アクリル基とオキセタン基とを有する化合物;ラクトンアクリレートやラクトンメタクリレートなどの、(メタ)アクリル基とラクトン基とを有する化合物;ビニルオキサゾリンやイソプロペニルオキサゾリンなどの、ビニル基とオキサゾリン基とを有する化合物;イソシアナトメチルアクリレート、イソシアナトメチルメタクリレート、2−イソシアナトエチルアクリレート及び20イソシアナトエチルメタクリレートなどの、(メタ)アクリル基とイソシアネート基とを有する化合物のオリゴマー等が挙げられる。また、メタクリル酸無水物、アクリル酸無水物、無水マレイン酸及びビニル無水マレイン酸などの、ビニル基やビニレン基と酸無水物とを有する化合物などが挙げられる。中でも、メタクリロキシグリシジルエーテル、アクリロキシグリシジルエーテル、イソシアナトメチルアクリレート、イソシアナトメチルメタクリレート、ビニルオキサゾリン、2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート及び前記のオリゴマーが好ましく、イソシアナトメチルアクリレート、2−イソシアナトエチルアクリレート及び前記のオリゴマーが特に好ましい。
【0087】
具体的には、下記式(Y)で表される化合物が好ましい。
[式(Y)中、
nは1〜10までの整数を表わし、R1’は、炭素数2〜20の2価の脂肪族又は脂環式炭化水素基、或いは炭素数5〜20の2価の芳香族炭化水素基を表わす。各繰り返し単位にある2つのR2’は、一方が−NH−であり、他方が>N−C(=O)−R3’で示される基である。R3’は、水酸基又は炭素−炭素不飽和結合を有する基を表す。
式(Y)中のR3’のうち、少なくとも1つのR3’は炭素−炭素不飽和結合を有する基である。]
【0088】
前記式(Y)で表される反応性添加剤の中でも、下記式(YY)で表される化合物(以下、化合物(YY)という場合がある。)が特に好ましいものである(なお、nは前記と同じ意味である)。
化合物(YY)には、市販品をそのまま又は必要に応じて精製して用いることができる。市販品としては、例えば、Laromer(登録商標)LR−9000(BASF社製)が挙げられる。
【0089】
液晶硬化膜形成用組成物が反応性添加剤を含有する場合、その含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは0.1質量部〜5質量部である。
【0090】
液晶硬化膜形成用組成物は、1種以上のレベリング剤を含有することが好ましい。レベリング剤は、液晶硬化膜形成用組成物の流動性を調整し、液晶硬化膜形成用組成物を塗布することにより得られる塗布膜をより平坦にする機能を有し、具体的には、界面活性剤が挙げられる。レベリング剤としては、ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤およびフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0091】
ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤としては、”BYK−350”、”BYK−352”、”BYK−353”、”BYK−354”、”BYK−355”、”BYK−358N”、”BYK−361N”、”BYK−380”、”BYK−381”および”BYK−392”[BYK Chemie社]が挙げられる。
【0092】
フッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤としては、”メガファック(登録商標)R−08”、同”R−30”、同”R−90”、同”F−410”、同”F−411”、同”F−443”、同”F−445”、同”F−470”、同”F−471”、同”F−477”、同”F−479”、同”F−482”および同”F−483”[DIC(株)];”サーフロン(登録商標)S−381”、同”S−382”、同”S−383”、同”S−393”、同”SC−101”、同”SC−105”、”KH−40”および”SA−100”[AGCセイミケミカル(株)];”E1830”、”E5844”[(株)ダイキンファインケミカル研究所];”エフトップEF301”、”エフトップEF303”、”エフトップEF351”および”エフトップEF352”[三菱マテリアル電子化成(株)]が挙げられる。
【0093】
液晶硬化膜形成用組成物がレベリング剤を含有する場合、その含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下が好ましく、0.05質量部以上3質量部以下がより好ましい。レベリング剤の含有量が前記の範囲内であると、重合性液晶を水平配向させることが容易であり、かつ、得られる偏光層がより平滑となる傾向がある。重合性液晶に対するレベリング剤の含有量が前記の範囲内であると、得られる位相差層にムラが生じにくい傾向がある。
【0094】
液晶硬化膜形成用組成物は、1種以上の重合開始剤を含有することが好ましい。重合開始剤は、重合性液晶の重合反応を開始し得る化合物であり、より低温条件下で、重合反応を開始できる点で、光重合開始剤が好ましい。具体的には、光の作用により活性ラジカルまたは酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
【0095】
重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩およびスルホニウム塩が挙げられる。
【0096】
ベンゾイン化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルおよびベンゾインイソブチルエーテルが挙げられる。
【0097】
ベンゾフェノン化合物としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンおよび2,4,6−トリメチルベンゾフェノンが挙げられる。
【0098】
アルキルフェノン化合物としては、ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1,2−ジフェニル−2,2−ジメトキシエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパン−1−オンのオリゴマーが挙げられる。
【0099】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドおよびビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドが挙げられる。
【0100】
トリアジン化合物としては、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシナフチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシスチリル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジンおよび2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジンが挙げられる。
【0101】
重合開始剤には、市販のものを用いることができる。市販の重合開始剤としては、”イルガキュア(Irgacure)(登録商標)907”、”イルガキュア(登録商標)184”、”イルガキュア(登録商標)651”、”イルガキュア(登録商標)819”、”イルガキュア(登録商標)250”、”イルガキュア(登録商標)369”(チバ・ジャパン(株));”セイクオール(登録商標)BZ”、”セイクオール(登録商標)Z”、”セイクオール(登録商標)BEE”(精工化学(株));”カヤキュアー(kayacure)(登録商標)BP100”(日本化薬(株));”カヤキュアー(登録商標)UVI−6992”(ダウ社製);”アデカオプトマーSP−152”、”アデカオプトマーSP−170”((株)ADEKA);”TAZ−A”、”TAZ−PP”(日本シイベルヘグナー社);および”TAZ−104”(三和ケミカル社)が挙げられる。
【0102】
液晶硬化膜形成用組成物が重合開始剤を含有する場合、その含有量は、該組成物に含有される重合性液晶化合物の種類およびその量に応じて適宜調節できるが、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、0.5〜8質量部がさらに好ましい。重合性開始剤の含有量が、この範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができる。
【0103】
液晶硬化膜形成用組成物が光重合開始剤を含有する場合、該組成物は光増感剤をさらに含有していてもよい。光増感剤としては、キサントン、チオキサントンなどのキサントン化合物(例えば、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなど);アントラセン、アルコキシ基含有アントラセン(例えば、ジブトキシアントラセンなど)などのアントラセン化合物;フェノチアジンおよびルブレンが挙げられる。
【0104】
液晶硬化膜形成用組成物が光重合開始剤および光増感剤を含有する場合、該組成物に含有される重合性液晶化合物の重合反応をより促進することができる。光増感剤の使用量は、光重合開始剤および重合性液晶化合物の種類およびその量に応じて適宜調節できるが、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、0.5〜8質量部がさらに好ましい。
【0105】
重合性液晶化合物の重合反応をより安定的に進行させるために、液晶硬化膜形成用組成物は適量の重合禁止剤を含有してもよく、これにより、重合性液晶化合物の重合反応の進行度合いを制御しやすくなる。
重合禁止剤としては、フェノール系化合物、硫黄系化合物及び、リン系化合物などのラジカル捕捉剤が挙げられる。
【0106】
フェノール系化合物としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、ハイドロキノン、アルコキシ基含有ハイドロキノン、アルコキシ基含有カテコール(例えば、ブチルカテコールなど)、ピロガロールなどが挙げられる。また、市販品を使用してもよく、例えば、スミライザー(登録商標)BHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)、スミライザーGM(2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート)、スミライザーGS(F)(2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート)、スミライザーGA−80(3,9−ビス[2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン)(全て住友化学(株)製)等が挙げられる。
【0107】
硫黄系化合物としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のジアルキルチオジプロピオネート;市販品として、スミライザーTPL−R(ジラウリル−3,3’−チオジプロピオナート)、スミライザーTPM(ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオナート)(全て住友化学(株)製)等が挙げられる。
【0108】
リン系化合物としては、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、(オクチル)ジフェニルホスファイト;市販品として、スミライザーGP(6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチル−ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン)(住友化学(株)製)等が挙げられる。
重合禁止剤としては、液晶硬化膜の着色が少ないという点で、フェノール系化合物が好ましい。
【0109】
重合禁止剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、0.5〜8質量部がさらに好ましい。上記範囲内であれば、重合性液晶の配向を乱すことなく重合させることができる。重合禁止剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0110】
液晶硬化膜形成用組成物が重合禁止剤を含有する場合、その含有量は、重合性液晶の種類およびその量、並びに光増感剤の使用量などに応じて適宜調節できるが、重合性液晶100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、0.5〜8質量部がさらに好ましい。重合禁止剤の含有量が、この範囲内であれば、重合性液晶の配向を乱すことなく重合させることができる。
【0111】
<液晶硬化膜の製造方法>
基材又は基材に形成された配向膜表面に、液晶硬化膜形成用組成物を塗布する方法としては、配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法として例示したものと同じ方法が挙げられる。塗布する液晶硬化膜形成用組成物の厚みは、得られる液晶硬化膜の厚みを考慮して定められる。
【0112】
次に、化合物(1−1)及び(2−1)が重合しない条件で液晶硬化膜形成用組成物に含まれる溶剤を除去することにより、基材又は配向膜表面に液晶硬化膜形成用組成物の乾燥被膜が形成される。溶剤の除去方法としては、例えば自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥及び減圧乾燥法等が挙げられる。
【0113】
前記乾燥被膜を加熱するなどして、前記乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物を液晶配向させた後、この液晶配向を保持したまま、前記乾燥被膜にエネルギーを照射することにより、重合性液晶化合物を重合させる。液晶硬化膜形成用組成物が重合開始剤を含有している場合は、重合開始剤が活性化される条件のエネルギーを照射するのが好ましい。重合開始剤が光重合開始剤である場合は、エネルギーは光であると好ましい。照射する光は、前記乾燥被膜に含まれる重合開始剤の種類又は、重合性液晶化合物の種類及びその量に応じて適宜選択される。かかる光としては、可視光、紫外光及びレーザー光からなる群より選択される光や活性電子線等が挙げられるが、中でも、重合反応の進行をコントロールし易い点や、重合に係る装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましい。よって、紫外光によって、重合できるように、液晶硬化膜形成用組成物に含有される重合性液晶化合物及び重合開始剤の種類を選択しておくと好ましい。また、重合させる際には、紫外光照射とともに適当な冷却手段により、前記乾燥被膜を冷却することで重合温度をコントロールするのが好ましい。このような冷却により、より低温で重合性液晶化合物を重合すれば、基材に耐熱性が低いものを用いたとしても、適切に液晶硬化膜を製造できる。
かくして、本液晶硬化膜が得られる。
【0114】
<重合度の評価>
下記式により、本液晶硬化膜の重合度を評価することができる。すなわちP1/P2が1に近いほど、表裏での重合度の差が小さく、重合度がより均一な液晶硬化膜であるといえる。
0.95>P1/P2>0.60 (Y)
P1:液晶硬化膜の厚み方向に対して垂直な面のうち一方の面におけるP値
P2:もう一方の面におけるP値
P=I(1)/I(2)
I(1):赤外全反射吸収スペクトル測定によるエチレン性不飽和結合の面内変角振動由来のピーク強度
I(2):赤外全反射吸収スペクトル測定による芳香環の不飽和結合の伸縮振動由来のピーク強度
【0115】
P値は、赤外全反射吸収スペクトル測定において、芳香環の不飽和結合の伸縮振動由来のピーク強度に対する、エチレン性不飽和結合の面内変角振動由来のピーク強度の比を表す。重合性液晶化合物の硬化において、芳香環の不飽和結合は反応しないが、エチレン性不飽和結合は消失する。したがって、反応しない芳香環の不飽和結合のピーク強度を相対基準としたP値を求めることによって、液晶硬化膜中に含まれるエチレン性不飽和結合の量を算出することができる。
【0116】
液晶硬化膜の厚み方向に対して垂直な面のうち一方の面におけるP値(P1)と、もう一方の面におけるP値(P2)の比(P1/P2)が0.6よりも大きいと、転写が容易で、欠陥発生が少なく、さらに透明性に優れた液晶硬化膜を得ることができる。(P1/P2)が0.95よりも小さいと、粘接着剤とP2面の接着性が向上し、転写時の剥離が容易になる
本明細書では、特に記載のない限り、空気界面側の膜表面をP2、後述する基材界面側の膜表面をP1として、それぞれの膜表面におけるP値を算出している
【0117】
<転写>
本液晶硬化膜は、被転写物へ転写することができる。当該液晶硬化膜を転写する方法としては、基材又は、基材上に形成された配向膜表面に形成された本液晶硬化膜を、粘接着剤層を介して被転写物に貼合し、基材を取り除く方法が挙げられる。具体的には、基材又は、基材上に形成された配向膜表面に形成された本液晶硬化膜表面に、粘接着剤層を形成し、その上に被転写物を積層し、基材を取り除くことで転写される。
【0118】
<プライマー層>
本液晶硬化膜と粘接着剤層との間にプライマー層を有していてもよい。
【0119】
プライマー層は、通常、透明樹脂を含むものであり、透明樹脂溶液から形成される。プライマー層は、粘接着剤層を形成する際に液晶硬化膜の欠陥を抑制することができる。透明樹脂としては、塗工性に優れ、プライマー層形成後の透明性及び密着性に優れるものが好ましい。
【0120】
前記透明樹脂溶液の溶剤には、前記透明の溶解性に応じて、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;酢酸エチル、酢酸イソブチル等のエステル溶媒;塩化メチレン、トリクロロエチレン、クロロホルム等の塩素化炭化水素溶媒;エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール溶媒等の一般的な有機溶媒を用いることができる。
【0121】
プライマー層の形成方法は制限されず、ダイレクト・グラビア法、リバース・グラビア
法、ダイコート法、カンマコート法、バーコート法等の公知の各種コーティング法を用い
ることができる。
【0122】
粘接着剤層は、粘接着剤を液晶硬化膜又はプライマー層の表面に塗布することで形成される。粘接着剤が溶剤を含む場合は、粘接着剤を液晶硬化膜又はプライマー層の表面に塗布し、溶剤を除去することで形成される。また、粘着剤から形成される粘接着剤層は、離型処理が施されたフィルムの離型処理面に粘着剤を塗布し、溶剤を除去することで離型処理が施されたフィルムの離型処理面に粘着剤層を形成した後、この粘接着剤層付のフィルムを、粘接着剤層側が貼合面となるように、液晶硬化膜又はプライマー層の表面に貼り合わせる方法によっても形成することができる。
粘接着剤層が形成される液晶硬化膜又はプライマー層の表面には、あらかじめコロナ放電処理を施しておくことが好ましい。コロナ処理により、液晶硬化膜又はプライマー層と粘接着剤層との密着性をさらに向上させることができる。
【0123】
粘接着剤を塗布する方法としては、例えば、配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法として例示したものと同じ方法が挙げられる。塗布された粘接着剤から、溶剤を除去する方法としては、例えば、配向性ポリマー組成物から溶剤を除去する方法と同じ方法が挙げられる。
【0124】
<被転写物>
被転写物としては、上記基材と同じもの、偏光子、偏光板及び、表示装置等が挙げられる。被転写物に本液晶硬化膜を転写することで、積層体が得られる。
【0125】
偏光子及び偏光板は、偏光機能を有する。偏光子としては、吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルム、又は、吸収異方性を有する色素を塗布したフィルム等が挙げられる。吸収異方性を有する色素としては、二色性色素が挙げられる。
【0126】
<円偏光板>
被転写物が偏光子又は偏光板であり、本液晶硬化膜が式(3−3)を満たす場合、本液晶硬化膜と、被転写物に積層することで積層体として円偏光板が得られる。
【0127】
本液晶硬化膜及び、本液晶硬化膜を含む円偏光板(以下、本円偏光板ということがある。)は、さまざまな表示装置に用いることができる。
表示装置とは、表示素子を有する装置であり、発光源として発光素子または発光装置を含む。表示装置としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、タッチパネル表示装置、電子放出表示装置(例えば電場放出表示装置(FED)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えばグレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置)および圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。液晶表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置および投写型液晶表示装置などのいずれをも含む。これらの表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。特に本円偏光板は有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置及び無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置に有効に用いることができ、光学補償偏光板は液晶表示装置及びタッチパネル表示装置に有効に用いることができる。
【0128】
図1は、本液晶硬化膜を含む液晶表示装置10の断面構成を表す模式図である。液晶層17は、2枚の基材14a及び基材14bで挟まれている。
基材14aの液晶層17側には、カラーフィルタ15が配置されている。カラーフィルタ15が、液晶層17を挟んで画素電極22に対向する位置に配置され、ブラックマトリクス20が画素電極間の境界に対向する位置に配置されている。透明電極16がカラーフィルタ15及びブラックマトリクス20を覆うように液晶層17側に配置されている。なお、カラーフィルタ15と透明電極16との間にオーバーコート層(図示せず)を有していてもよい。
【0129】
基材14bの液晶層17側には、薄膜トランジスタ21と画素電極22とが規則正しく配置されている。画素電極22は、液晶層17をはさんでカラーフィルタ15に対向する位置に配置されている。薄膜トランジスタ21と画素電極22との間には、接続孔(図示せず)を有する層間絶縁膜18が配置されている。
【0130】
基材14a及び基材14bとしては、ガラス基材及びプラスチック基材が用いられる。
かかるガラス基材やプラスチック基材としては、上記の基材として例示したものと同様のものが挙げられる。基材上に形成されるカラーフィルタ15や薄膜トランジスタ21を製造する際、高温に加熱する工程が必要である場合は、ガラス基材や石英基材が好ましい。
【0131】
薄膜トランジスタは、基材14bの材質に応じて最適なものを採用できる。薄膜トランジスタ21としては、石英基材上に形成する高温ポリシリコントランジスタ、ガラス基材上に形成する低温ポリシリコントランジスタ、ガラス基材又はプラスチック基材上に形成するアモルファスシリコントランジスタが挙げられる。液晶表示装置をより小型化するため、ドライバICが基材14b上に形成されていてもよい。
【0132】
透明電極16と、画素電極22との間には、液晶層17が配置されている。液晶層17には、基材14a及び基材14b間の距離を一定に保つために、スペーサ23が配置されている。なお、柱状のスペーサで図示するが、当該スペーサは柱状に限定されるものではなく、基材14a及び基材14b間の距離を一定に保つことができれば、その形状は任意である。
【0133】
各部材は、基材14a、カラーフィルタ15及びブラックマトリクス20、透明電極16、液晶層17、画素電極22、層間絶縁膜18及び薄膜トランジスタ21、並びに基材14bの順番で積層されている。
【0134】
このような液晶層17を挟んでいる基材14a及び基材14bのうち、基材14a及び基材14bの外側には、偏光膜12a及び12bが設けられている。さらに、位相差膜(例えば、1/4波長板や光学補償フィルム)13a及び13bが、積層されており、これらのうち、少なくとも1つの位相差膜に本液晶硬化膜が用いられる。これらの位相差膜により、入射光を直線偏光に変換する機能を液晶表示装置10に付与することができる。なお、位相差膜13a及び13bは、液晶表示装置の構造や、液晶層17に含まれる液晶化合物の種類によっては、配置されていなくてもよい。
【0135】
液晶偏光膜を、位相差膜13a及び/又は13bに用いることにより、液晶表示装置10のさらなる薄型化が達成できる。
【0136】
偏光膜12bの外側には、発光源であるバックライトユニット19が配置されている。バックライトユニット19は、光源、導光体、反射板、拡散シート及び視野角調整シートを含む。光源としては、エレクトロルミネッセンス、冷陰極管、熱陰極管、発光ダイオード(LED)、レーザー光源及び水銀ランプなどが挙げられる。
【0137】
液晶表示装置10が透過型液晶表示装置である場合、バックライトユニット20中の光源から発せられた白色光は導光体に入射し、反射板によって進路を変えられて拡散シートで拡散されている。拡散光は視野角調整シートによって所望の指向性を持つように調整されたのちにバックライトユニット19から偏光膜12bに入射する。
【0138】
無偏光である入射光のうち、ある一方の直線偏光のみが液晶パネルの偏光子12bを透過する。この直線偏光は、基材14b、画素電極22などを順次透過して液晶層17に到る。
【0139】
ここで画素電極22と対向する透明電極16との間の電位差の有無により、液晶層17に含まれる液晶分子の配向状態が変化して、液晶表示装置10から出射される光の輝度が制御される。液晶層17が、偏光をそのまま透過させる配向状態である場合、液晶層17、透明電極16及びカラーフィルタ15を透過した光は、偏光膜12aに吸収される。このことにより、この画素は黒を表示する。
【0140】
逆に、液晶層17が、偏光を変換して透過させる配向状態である場合、その偏光は液晶層17、透明電極16を透過し、ある特定の波長範囲の光がカラーフィルタ15を透過して偏光膜12aに到り、液晶表示装置は、カラーフィルタで決まる色を最も明るく表示する。これら2つの状態の中間の配向状態では、液晶表示装置10から出射される光の輝度も上記両者の中間となるため、この画素は中間色を表示する。
【0141】
図2は、有機EL表示装置30を表わす概略図である。
図2(a)で示した有機EL表示装置30は、本円偏光板31を備えており、層間絶縁膜33を介して、画素電極34が形成された基板32上に、発光層35、及びカソード電極36が積層されたものである。基板32を挟んで発光層35と反対側に、本円偏光板31が配置される。画素電極34にプラスの電圧、カソード電極36にマイナスの電圧を加え、画素電極34及びカソード電極36間に直流電流を印加することにより、発光層35が発光する。発光層35は、電子輸送層、発光層及び正孔輸送層等からなる。発光層35から出射した光は、画素電極34、層間絶縁膜33、基板32、本円偏光板31を通過する。
【0142】
有機EL表示装置30を製造するには、まず、基板32上に薄膜トランジスタ38を所望の形状に形成する。そして層間絶縁膜33を成膜し、次いで画素電極34をスパッタ法で成膜し、パターニングする。その後、発光層35を積層する。
【0143】
次いで、基板32の薄膜トランジスタ38が設けられている面の反対の面に、本円偏光板31を設ける。その場合には、本円偏光板31における偏光板が、外側(基板32の反対側)になるように配置される。
【0144】
基板32としては、サファイアガラス基板、石英ガラス基板、ソーダガラス基板及びアルミナ等のセラミック基板;銅等の金属基板;プラスチック基板等が挙げられる。図示はしないが、基板32上に熱伝導性膜を形成してもよい。熱伝導性膜としては、ダイヤモンド薄膜(DLC等)等が挙げられる。画素電極34を反射型とする場合は、基板32とは反対方向へ光が出射する。したがって、透明材料だけでなく、ステンレス等の非透過材料を用いることができる。基板は単一で形成されていてもよく、複数の基板を接着剤で貼り合わせて積層基板として形成されていていてもよい。これらの基板は、板状のものであっても、フィルムであってもよい。
【0145】
薄膜トランジスタ38としては、多結晶シリコントランジスタ等を用いればよい。薄膜トランジスタ38は、画素電極34の端部に設けられ、その大きさは10〜30μmである。なお、画素電極34の大きさは20μm×20μm〜300μm×300μmである。
【0146】
基板32上には、薄膜トランジスタ38の配線電極が設けられている。配線電極は抵抗が低く、画素電極34と電気的に接続して抵抗値を低く抑える機能があり、一般的にはその配線電極は、Al、Al及び遷移金属(ただしTiを除く)、Ti又は窒化チタン(TiN)のいずれか1種又は2種以上を含有するものが使われる。
【0147】
薄膜トランジスタ38と画素電極34との間には層間絶縁膜33が設けられる。層間絶縁膜33は、SiO
2等の酸化ケイ素、窒化ケイ素等の無機系材料をスパッタや真空蒸着で成膜したもの、SOG(スピン・オン・グラス)で形成した酸化ケイ素層、フォトレジスト、ポリイミド及びアクリル樹脂等の樹脂系材料の塗膜等、絶縁性を有するものであればいずれであってもよい。
【0148】
層間絶縁膜33上に、リブ39を形成する。リブ39は、画素電極34の周辺部(隣接画素間)に配置されている。リブ39の材料としては、アクリル樹脂及びポリイミド樹脂等が挙げられる。リブ39の厚みは、好ましくは1.0〜3.5μmであり、より好ましくは1.5〜2.5μmである。
【0149】
次に、画素電極34と、発光層35と、カソード電極36とからなるEL素子について説明する。発光層35は、それぞれ少なくとも1層のホール輸送層及び発光層を有し、電子注入輸送層、発光層、正孔輸送層及び正孔注入層を順次有する。
【0150】
画素電極34としては、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、IZO(亜鉛ドープ酸化インジウム)、IGZO、ZnO、SnO
2及びIn
2O
3等が挙げられるが、特にITOやIZOが好ましい。画素電極35の厚みは、ホール注入を十分行える一定以上の厚みを有すればよく、10〜500nmが好ましい。
【0151】
画素電極34は、蒸着法(好ましくはスパッタ法)により形成することができる。スパッタガスとしては、Ar、He、Ne、Kr及びXe等の不活性ガス、又はこれらの混合ガスが挙げられる。
【0152】
カソード電極36の構成材料としては、K、Li、Na、Mg、La、Ce、Ca、Sr、Ba、Al、Ag、In、Sn、Zn及びZr等の金属元素が挙げられ、電極の作動安定性を向上させるためには、例示した金属元素から選ばれる2成分又は3成分の合金系が好ましい。合金系としては、Ag・Mg(Ag:1〜20at%)、Al・Li(Li:0.3〜14at%)、In・Mg(Mg:50〜80at%)及びAl・Ca(Ca:5〜20at%)等が好ましい。
【0153】
カソード電極36は、蒸着法及びスパッタ法等により形成される。カソード電極37の厚みは、通常0.1nm以上、好ましくは1〜500nmである。
【0154】
正孔注入層は、画素電極34からの正孔の注入を容易にする機能を有し、正孔輸送層は、正孔を輸送する機能及び電子を妨げる機能を有し、電荷注入層や電荷輸送層とも称される。
【0155】
発光層の厚み、正孔注入層と正孔輸送層とを併せた厚み、及び電子注入輸送層の厚みは、5〜100nmが好ましい。正孔注入層や正孔輸送層には、各種有機化合物を用いることができる。正孔注入輸送層、発光層及び電子注入輸送層の形成方法としては、均質な薄膜が形成できる点で真空蒸着法が好ましい。
【0156】
発光層35としては、1重項励起子からの発光(蛍光)を利用するもの、3重項励起子からの発光(燐光)を利用するもの、1重項励起子からの発光(蛍光)を利用するものと3重項励起子からの発光(燐光)を利用するものとを含むもの、有機物によって形成されたもの、有機物によって形成されたものと無機物によって形成されたものとを含むもの、高分子の材料、低分子の材料、高分子の材料と低分子の材料とを含むもの等を用いることができ、EL素子用として公知の様々なものを用いた発光層35を、有機EL表示装置30に用いることができる。
【0157】
カソード電極36と封止層37との空間には、乾燥剤(図示しない)を配置する。乾燥剤により水分を吸収し発光層35の劣化を防止する。
【0158】
図2(b)で示した本発明の有機EL表示装置30は、本円偏光板31を備えており、層間絶縁膜33を介して、画素電極34が形成された基板32上に、発光層35、及びカソード電極36が積層されたものである。カソード電極上に封止層37が形成され、基板32と反対側に、本円偏光板31が配置される。発光層35から出射した光は、カソード電極36、封止層37、本円偏光板31を通過する。
【実施例】
【0159】
実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。
【0160】
[光配向膜形成用組成物の調製]
下記成分を混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、光配向膜形成用組成物(1)を得た。
光配向性材料(1部):
溶剤(99部):プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0161】
[液晶硬化膜形成用組成物(1)の調製]
下記の成分を混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、液晶硬化膜形成用組成物(1)を得た。
化合物(1−1−A)は、特開2010−31223号公報記載の方法で合成した。
化合物(2−1−A)は、特開2010−24438号公報記載の方法で合成した。
【0162】
化合物(1−1−A)(86部):
【0163】
化合物(2−1−A)(14部):
重合開始剤(6部):2−ジメチルアミノ−2−ベンジル−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン(イルガキュア369;チバ スペシャルティケミカルズ社製)
レベリング剤(0.1部):ポリアクリレート化合物(BYK−361N;BYK−Chemie社製)
重合禁止剤(1部):ジブチルヒドロキシトルエン(和光純薬工業株式会社製)
溶剤:N−メチル−2−ピロリジノン(160部)、シクロペンタノン(240部)
【0164】
[液晶硬化膜形成用組成物(2)の調製]
液晶硬化膜形成用組成物(1)の化合物(2−1−A)を化合物(1−1−B)に変えたこと以外は、液晶硬化膜形成用組成物(1)の調製と同様に、液晶硬化膜形成用組成物(2)を得た。
化合物(1−1−B)は、特開2010−31223号公報記載の方法で合成した。
【0165】
化合物(1−1−B)(14部):
【0166】
実施例
[液晶硬化膜(1)の製造]
ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)(三菱樹脂株式会社製のダイアホイルT140E25)上に、光配向膜形成用組成物(1)をバーコーター塗布し、80℃で1分間乾燥し、偏光UV照射装置(SPOT CURE SP−7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、100mJ/cm
2の積算光量で偏光UV露光を実施した。得られた光配向膜の厚みをレーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)で測定したところ、90nmであった。
続いて、光配向膜上に液晶硬化膜形成用組成物(1)を、バーコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB―15201BY−A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長:365nm、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm
2)することにより液晶硬化膜(1)を形成し、液晶硬化膜(1)を得た。
【0167】
[赤外全反射吸収スペクトル測定]
得られた液晶硬化膜(1)の厚み方向に対して垂直な面のうち、光配向膜側と反対側の表面(面A)に対して、Agilent社製、型式670-IRを用いて測定を行った(入射角60度)。
面A上に粘着剤を貼合し、表面をコロナ処理したCOPフィルムを粘着剤に圧着した後、PETフィルムを取り除くことで、COP、粘接着剤層及び液晶硬化膜(1)をこの順に有する積層体(1)を得た。液晶硬化膜(1)の面Aのもう一方の表面(面B)に対しても、測定を行った(入射角60度)。
【0168】
[位相差値測定]
積層体(1)における液晶硬化膜(1)の厚みをレーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)で測定した。積層体(1)における液晶硬化膜(1)の位相差値を王子計測機器社製のKOBRA−WRを用いて測定した。なお、COPの波長550nmにおける位相差値は略0であるため、位相差値の関係には影響しない。結果を表に示す。
【0169】
[透明性評価]
スガ試験機株式会社製 ヘイズメーター(型式HZ−2)を用いて、ダブルビーム法で、積層体(1)のヘイズ値を測定した。ヘイズ値が小さいほど、透明性に優れる。結果を表に示す。
【0170】
参考例
液晶硬化膜形成用組成物(1)を液晶硬化膜形成用組成物(2)に変えたこと以外は、実施例と同様に、液晶硬化膜(2)、液晶硬化膜(2)及び積層体(2)を得て評価した。結果を表に示す。
【0171】
【表1】
P1:液晶硬化膜の厚み方向に対して垂直な面のうち一方の面におけるP値
P2:もう一方の面におけるP値
P=I(1)/I(2)
I(1):赤外全反射吸収スペクトル測定によるエチレン性不飽和結合の面内変角振動由来のピーク強度(1408cm
-1におけるピーク強度)
I(2):赤外全反射吸収スペクトル測定による芳香環の不飽和結合の伸縮振動由来のピーク強度(1504cm
-1におけるピーク強度)
【0172】
【表2】
【0173】
実施例の液晶硬化膜は、液晶硬化膜の表裏での重合度の差が小さく、重合度がより均一な膜であった。さらに転写された本液晶硬化膜は、透明性が高く、欠陥が少なく、品質の高い膜であった。