【実施例】
【0041】
(第1実施例)
以下、本願の各実施例を添付図面に基づいて説明する。まず、本願の第1実施例について
図1〜
図3および表1を用いて説明する。
図1は、第1実施例に係る光学系TL(TL1)の断面図である。第1実施例に係る光学系TL1は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2とを備えて構成される。
【0042】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、前群G1aと、この前群G1aに対し第1レンズ群G1の中で最も長い空気間隔を隔てた後群G1bとから構成される。第1レンズ群G1の前群G1aは、物体側から順に、単レンズである第1正レンズL11と、第2正レンズL12と第1負レンズL13とが貼り合わされた接合レンズと、回折光学素子DOE1が配置される第3正レンズL14とから構成される。なお、第3正レンズL14における像面I側のレンズ面に、正の屈折力を有する回折光学素子DOE1が配置される。第1レンズ群G1の回折光学素子DOE1は、互いに異なる材質の2種類の回折素子要素が同一の回折格子溝で接する密着複層型の回折光学素子であり、2種類の紫外線硬化樹脂によって格子高さが約20μmの1次の回折格子(光軸に対して回転対称形状の回折格子)が形成される。第1レンズ群G1の後群G1bは、物体側から順に、第2負レンズL15と第4正レンズL16とが貼り合わされた接合レンズから構成される。
【0043】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、第5正レンズL21と第3負レンズL22とが貼り合わされた合焦レンズLFと、第4負レンズL23と第6正レンズL24とが貼り合わされた第1色消しレンズLC1と、第7正レンズL25と第5負レンズL26とが貼り合わされた接合レンズと、単レンズである第6負レンズL27と、第8正レンズL28と第7負レンズL29とが貼り合わされた第2色消しレンズLC2と、回折光学素子DOE2が配置される第9正レンズL30とから構成される。そして、無限遠物体から近距離(有限距離)物体への合焦(フォーカシング)の際、合焦レンズLFが光軸に沿って像面I側に移動するようになっている。なお、第9正レンズL30における物体側のレンズ面に、負の屈折力を有する回折光学素子DOE2が配置される。第2レンズ群G2の回折光学素子DOE2は、第1レンズ群G1の回折光学素子DOE1と同様であり、詳細な説明を省略する。また、第2レンズ群G2における合焦レンズLFと第1色消しレンズLC1との間に、絞りSが配設される。
【0044】
以下に、表1〜表2を示すが、これらは第1〜第2実施例に係る光学系(望遠レンズ)の諸元の値をそれぞれ掲げた表である。各表の[全体諸元]において、fは焦点距離を、FNOはFナンバーを、ωは半画角(最大入射角:単位は「°」)を、Yは像高を、Bfはバックフォーカス(空気換算長)をそれぞれ示す。また、[全体諸元]において、Lは光学系の全長(1番目のレンズ面から像面Iまでの距離)を、f1は第1レンズ群の焦点距離を、f2は第2レンズ群G2の焦点距離を、fdoe1は第1レンズ群G1における回折光学素子DOE1の焦点距離の和を、fdoe2は第2レンズ群G2における回折光学素子DOE2の焦点距離の和をそれぞれ示す。また、[レンズデータ]において、面番号は物体側から数えたレンズ面の番号を、Riは物体側からi番目のレンズ面の曲率半径を、Diは物体側からi番目のレンズ面とi+1番目のレンズ面との間のレンズ厚または空気間隔を、ndはd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率を、νdはd線(波長λ=587.6nm)に対するアッベ数をそれぞれ示す。なお、曲率半径「∞」は平面を示し、空気の屈折率nd=1.0000はその記載を省略している。
【0045】
また、[回折面データ]において示す回折面の位相形状ψは、次式(A)によって表わされる。
【0046】
ψ(h,m)={2π/(m×λ0)}×(C2×h
2+C4×h
4+C6×h
6…) …(A)
但し、
h:光軸に対して垂直な方向の高さ、
m:回折光の回折次数、
λ0:設計波長、
Ci:位相係数(i=1,2,3,…)。
【0047】
また、任意の波長λおよび任意の回折次数mにおける回折面の屈折力φDは、最も低次の位相係数C1を用いて、次式(B)のように表わすことができる。
【0048】
φD(h,m)=−2×C1×m×λ/λ0 …(B)
【0049】
[回折面データ]において位相係数を示すが、「E-n」は「×10
-n」を示す。また、[条件式対応値]には、各条件式の対応値をそれぞれ示す。なお、以下の全ての諸元値において掲載されている焦点距離f、曲率半径Ri、面間隔Di、その他長さの単位は一般に「mm」が使われるが、光学系は、比例拡大または比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。また、後述の第2実施例の諸元値においても、本実施例と同様の符号を用いる。
【0050】
下の表1に、第1実施例における各諸元を示す。なお、表1における第1面〜第31面の曲率半径Riは、
図1における第1面〜第31面に付した符号R1〜R31に対応している。また、第1実施例において、第8面および第29面が回折面となっている。
【0051】
(表1)
[全体諸元]
f=294
FNO=4.1
2ω=8.4
Y=21.63
Bf=54.00
L=190.4
f1=99.86
f2=-71.18
fdoe1=11135.50
fdoe2=-5343.01
[レンズ諸元]
面番号 Ri Di nd νd
1 119.301 6.91 1.4875 70.3
2 1138.274 1.01
3 80.232 11.49 1.4978 82.6
4 -504.651 2.50 1.5750 41.5
5 246.455 2.02
6 73.087 5.00 1.5168 63.9
7 98.376 0.20 1.5278 33.4
8 98.376 0.30 1.5572 50.0 (回折面)
9 98.376 26.00
10 41.419 1.50 1.9108 35.2
11 26.417 7.50 1.4875 70.3
12 76.338 6.33
13 125.596 2.38 1.6200 36.4
14 -356.488 1.20 1.6968 55.5
15 42.511 23.65
16 ∞ 2.77 (絞り)
17 52.557 2.08 1.9108 35.2
18 23.312 2.76 1.5750 41.5
19 226.400 2.58
20 60.916 2.13 1.7283 28.4
21 -102.282 0.85 1.7292 54.6
22 30.417 2.18
23 -71.955 0.80 1.7292 54.6
24 83.995 2.33
25 78.862 3.04 1.5481 45.5
26 -52.965 1.00 1.7880 47.4
27 -240.018 10.32
28 68.731 0.20 1.5572 50.0
29 68.731 0.20 1.5278 33.4 (回折面)
30 68.731 5.15 1.4875 70.3
31 -68.731 54.00
[回折面データ]
第8面 第29面
m 1 1
C1 -4.490E-05 9.358E-05
C2 -2.488E-09 -2.112E-07
[条件式対応値]
条件式(1),(1A) f1/fdoe1=0.0090
条件式(2) f2/fdoe2=0.0133
条件式(3) νd3−νd4=6.3 (第1色消しレンズLC1)
νd3−νd4=-1.9 (第2色消しレンズLC2)
条件式(4) L/f=0.65
【0052】
このように本実施例では、上記条件式(1)〜(4)が全て満たされていることが分かる。
【0053】
図2は第1実施例に係る光学系TL1の縦収差図であり、
図3は第1実施例に係る光学系TL1の横収差図である。各収差図において、dはd線(λ=587.6nm)、gはg線(λ=435.8nm)における収差をそれぞれ示す。また、非点収差を示す収差図において、実線はサジタル像面を示し、破線はメリディオナル像面を示している。以上、各収差図の説明は他の実施例においても同様である。
図2および
図3より、第1実施例では、軸上色収差および倍率色収差等の諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることがわかる。その結果、第1実施例の光学系TL1を搭載することにより、デジタル一眼レフカメラCAMにおいても、優れた光学性能を確保することができる。
【0054】
(第2実施例)
以下、本願の第2実施例について
図4〜
図6および表2を用いて説明する。
図4は、第2実施例に係る光学系TL(TL2)の断面図である。第2実施例に係る光学系TL2は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2とを備えて構成される。
【0055】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、前群G1aと、この前群G1aに対し第1レンズ群G1の中で最も長い空気間隔を隔てた後群G1bとから構成される。第1レンズ群G1の前群G1aは、物体側から順に、単レンズである第1正レンズL11と、第2正レンズL12と第1負レンズL13とが貼り合わされた接合レンズと、回折光学素子DOE1が配置される第3正レンズL14とから構成される。なお、第3正レンズL14における像面I側のレンズ面に、正の屈折力を有する回折光学素子DOE1が配置される。第1レンズ群G1の回折光学素子DOE1は、第1実施例の回折光学素子と同様であり、詳細な説明を省略する。第1レンズ群G1の後群G1bは、物体側から順に、第2負レンズL15と第4正レンズL16とが貼り合わされた接合レンズから構成される。
【0056】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、第5正レンズL21と第3負レンズL22とが貼り合わされた合焦レンズLFと、第4負レンズL23と第6正レンズL24とが貼り合わされた第1色消しレンズLC1と、第7正レンズL25と第5負レンズL26とが貼り合わされた接合レンズと、単レンズである第6負レンズL27と、第8正レンズL28と第7負レンズL29とが貼り合わされた第2色消しレンズLC2と、回折光学素子DOE2が配置される第9正レンズL30とから構成される。そして、無限遠物体から近距離(有限距離)物体への合焦(フォーカシング)の際、合焦レンズLFが光軸に沿って像面I側に移動するようになっている。なお、第9正レンズL30における物体側のレンズ面に、負の屈折力を有する回折光学素子DOE2が配置される。第2レンズ群G2の回折光学素子DOE2は、第1実施例の回折光学素子と同様であり、詳細な説明を省略する。また、第2レンズ群G2における合焦レンズLFと第1色消しレンズLC1との間に、絞りSが設けられる。
【0057】
下の表2に、第2実施例における各諸元を示す。なお、表2における第1面〜第31面の曲率半径Riは、
図4における第1面〜第31面に付した符号R1〜R31に対応している。また、第2実施例において、第8面および第29面が回折面となっている。
【0058】
(表2)
[全体諸元]
f=294
FNO=4.1
2ω=8.4
Y=21.63
Bf=54.00
L=190.5
f1=101.56
f2=-70.80
fdoe1=10664.24
fdoe2=-2695.54
[レンズ諸元]
面番号 Ri Di nd νd
1 108.100 7.82 1.4875 70.3
2 1929.565 0.25
3 78.299 11.62 1.4978 82.6
4 -504.651 2.50 1.5827 46.5
5 175.188 2.06
6 77.145 5.00 1.5168 63.9
7 107.014 0.20 1.5278 33.4
8 107.014 0.30 1.5572 50.0 (回折面)
9 107.014 25.82
10 41.850 1.50 1.9108 35.2
11 26.436 7.60 1.4875 70.3
12 78.638 6.19
13 121.142 2.41 1.6200 36.4
14 -406.824 1.20 1.6968 55.5
15 41.951 23.56
16 ∞ 2.73 (絞り)
17 48.168 2.46 1.9108 35.2
18 22.821 2.82 1.5750 41.5
19 175.142 2.59
20 56.934 2.25 1.7283 28.4
21 -105.781 0.85 1.7292 54.6
22 29.506 2.27
23 -69.059 0.80 1.7292 54.6
24 87.427 2.22
25 66.543 2.95 1.5443 52.1
26 -64.557 1.00 1.7675 40.3
27 -744.439 10.41
28 74.687 0.20 1.5572 50.0
29 74.687 0.20 1.5278 33.4 (回折面)
30 74.687 4.71 1.5218 66.5
31 -73.143 54.00
[回折面データ]
第8面 第29面
m 1 1
C1 -4.689E-05 1.855E-04
C2 -1.487E-09 -2.405E-07
[条件式対応値]
条件式(1),(1A) f1/fdoe1=0.0095
条件式(2) f2/fdoe2=0.0263
条件式(3) νd3−νd4=6.3 (第1色消しレンズLC1)
νd3−νd4=11.8 (第2色消しレンズLC2)
条件式(4) L/f=0.65
【0059】
このように本実施例では、上記条件式(1)〜(4)が全て満たされていることが分かる。
【0060】
図5は第2実施例に係る光学系TL2の縦収差図であり、
図6は第2実施例に係る光学系TL2の横収差図である。
図5および
図6より、第2実施例では、軸上色収差および倍率色収差等の諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることがわかる。その結果、第2実施例の光学系TL2を搭載することにより、デジタル一眼レフカメラCAMにおいても、優れた光学性能を確保することができる。
【0061】
なお、上述の実施形態において、以下に記載の内容は、光学性能を損なわない範囲で適宜採用可能である。
【0062】
上述の各実施例において、レンズ群または部分レンズ群を光軸に垂直な方向の成分を持つように移動させ、または、光軸を含む面内方向に回転移動(揺動)させて、手ブレによって生じる像ブレを補正する防振レンズ群としてもよい。例えば、絞りSよりも像側に配置されるレンズのうち少なくとも一部を防振レンズ群とすることができ、特に、第7正レンズL25、第5負レンズL26、第6負レンズL27を防振レンズ群とすることが好ましい。また、第7正レンズL25、第5負レンズL26、第6負レンズL27の物体側および像側の少なくとも一方に、正レンズと負レンズとからなる色消しレンズLC1,LC2を配置することがより好ましく、当該色消しレンズLC1,LC2は前述の条件式(3)を満足することがより好ましい。また、当該色消しレンズLC1,LC2は接合レンズとしてもよい。
【0063】
また、レンズ面は、球面または平面で形成されても、非球面で形成されても構わない。レンズ面が球面または平面の場合、レンズ加工および組立調整が容易になり、加工および組立調整の誤差による光学性能の劣化を防げるので好ましい。また、像面がずれた場合でも描写性能の劣化が少ないので好ましい。レンズ面が非球面の場合、非球面は、研削加工による非球面、ガラスを型で非球面形状に形成したガラスモールド非球面、ガラスの表面に樹脂を非球面形状に形成した複合型非球面のいずれの非球面でも構わない。また、レンズ面は回折面としてもよく、レンズを屈折率分布型レンズ(GRINレンズ)あるいはプラスチックレンズとしてもよい。
【0064】
また、開口絞りは合焦レンズLFよりも像側に配置されるのが好ましいが、開口絞りとしての部材を設けずに、レンズの枠でその役割を代用してもよい。
【0065】
また、各レンズ面には、フレアやゴーストを軽減し高コントラストの高い光学性能を達成するために、広い波長域で高い透過率を有する反射防止膜を施してもよい。
【0066】
また、本実施形態では、第1レンズ群G1に、正の屈折力を有する回折光学素子DOE1が1つ配置されているが、これに限られるものではなく、正の屈折力を有する回折光学素子DOE1が複数配置されてもよい。また、第2レンズ群G2に、負の屈折力を有する回折光学素子DOE2が1つ配置されているが、これに限られるものではなく、負の屈折力を有する回折光学素子DOE2が複数配置されてもよい。
【0067】
また、本実施形態では、光学系の一例として望遠レンズを例に説明したが、これに限られるものではなく、例えば、ズームレンズ等の光学系であってもよい。なお、本実施形態では、焦点距離が300mm程度としたが、これに限られるものではなく、焦点距離が200〜800mm(35mm換算)程度の望遠レンズであってもよい。
【0068】
また、本実施形態の光学系をデジタル一眼レフカメラに使用しているが、これに限られるものではなく、例えば、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等の光学機器にも使用することができる。