特許第6387637号(P6387637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6387637-イオン交換装置及びイオン交換処理方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6387637
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】イオン交換装置及びイオン交換処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/42 20060101AFI20180903BHJP
   B01J 39/04 20170101ALI20180903BHJP
   B01J 39/20 20060101ALI20180903BHJP
   B01J 47/02 20170101ALI20180903BHJP
   B01J 49/00 20170101ALI20180903BHJP
   G03F 7/32 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   C02F1/42 A
   C02F1/42 D
   B01J39/04
   B01J39/20
   B01J47/02
   B01J49/00
   G03F7/32
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-55081(P2014-55081)
(22)【出願日】2014年3月18日
(65)【公開番号】特開2015-174079(P2015-174079A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 眞美
(72)【発明者】
【氏名】安達 恒康
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−030208(JP,A)
【文献】 特開昭49−087578(JP,A)
【文献】 特開昭56−097507(JP,A)
【文献】 米国特許第03458436(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0215550(US,A1)
【文献】 特開昭55−067386(JP,A)
【文献】 特開昭63−111994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/42
B01J 39/00 − 49/02
G03F 7/00
G03F 7/06 − 7/07
G03F 7/12 − 7/14
G03F 7/26 − 7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弱酸性陽イオン交換樹脂が充填されたイオン交換塔を、2塔以上直列に連結してなるイオン交換塔群を有し、テトラアルキルアンモニウムイオンを100〜10,000mg/Lの濃度で含む被処理液が、該イオン交換塔群の最前段のイオン交換塔から最後段のイオン交換塔まで連続して通液されるイオン交換装置において、
該最前段のイオン交換塔が流動床式イオン交換塔であり、該最前段以外のイオン交換塔が下向流通液方式の固定床式イオン交換塔であることを特徴とするイオン交換装置。
【請求項2】
請求項1において、前記イオン交換塔はイオン交換体の再生液の通液手段を有し、前記最前段のイオン交換塔において、前記被処理液を通液する通液工程の後、該被処理液の通液を停止し、該最前段のイオン交換塔に再生液を通液してイオン交換体を再生する再生工程が行われることを特徴とするイオン交換装置。
【請求項3】
請求項2において、前記最前段のイオン交換塔への前記被処理液の通液を停止した後、前記イオン交換塔群の第2段目以降のイオン交換塔が、直列に連結されたイオン交換塔群の最前段以降のイオン交換塔となり、前記再生工程を経た前記最前段のイオン交換塔が、該イオン交換塔群の最後段のイオン交換塔となるように、前記被処理液の通液流路を切り換える流路切換手段を有することを特徴とするイオン交換装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記最前段のイオン交換塔は、上向流通液方式のイオン交換塔であることを特徴とするイオン交換装置。
【請求項5】
弱酸性陽イオン交換樹脂が充填されたイオン交換塔を、2塔以上直列に連結し、テトラアルキルアンモニウムイオンを100〜10,000mg/Lの濃度で含む被処理液を最前段のイオン交換塔から最後段のイオン交換塔まで順次通液するイオン交換処理方法において、
該最前段のイオン交換塔を流動床式イオン交換塔とし、該最前段以外のイオン交換塔を下向流通液方式の固定床式イオン交換塔とすることを特徴とするイオン交換処理方法。
【請求項6】
請求項5において、前記最前段のイオン交換塔において、前記被処理液を通液する通液工程を行った後、該被処理液の通液を停止し、該最前段のイオン交換塔に再生液を通液してイオン交換体を再生する再生工程を行うことを特徴とするイオン交換処理方法。
【請求項7】
請求項6において、前記最前段のイオン交換塔への前記被処理液の通液を停止した後、該最前段の次段以降のイオン交換塔に順次前記被処理液を通液し、前記再生工程を経た該最前段のイオン交換塔を、最後段のイオン交換塔として通液することを特徴とするイオン交換処理方法。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれか1項において、前記最前段のイオン交換塔に、前記被処理液を上向流で通液することを特徴とするイオン交換処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2塔以上のイオン交換塔を直列に連結し、前段のイオン交換塔から順次被処理液を通液してイオン交換処理するイオン交換装置及びイオン交換処理方法に係り、特に電子プロセスの現像工程で排出されるテトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(以下、「TAAH」という。)を含有する廃液の処理に好適なイオン交換装置及びイオン交換処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、結晶ディスプレイ、プリント基板等の電子部品等を製造する工程の一つにフォトリソグラフィー工程がある。この工程では、ウェハー等の基板上にフォトレジストの被膜を形成し、パターンマスクを通して光等を照射し、次いで現像液により不要のフォトレジストを溶解して現像し、さらにエッチング等の処理を行った後、基板上の不溶性のフォトレジスト膜を剥離除去する。このフォトレジストには、露光部分が可溶性となるポジ型と露光部分が不溶性となるネガ型があり、ポジ型フォトレジストの現像液としてはアルカリ現像液が主流であり、ネガ型フォトレジストの現像液としては有機溶剤系現像液が主流であるが、アルカリ現像液を用いるものもある。
【0003】
上記アルカリ現像液としては、多くの場合、テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAH)、特にテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(以下、「TMAH」という。)水溶液が用いられるため、かかる現像工程や現像後の洗浄工程からは、TAAHを含む廃液が排出される。
【0004】
従来、TAAH含有廃液を処理してTAAHを回収再利用するために、陽イオン交換樹脂が充填された陽イオン交換塔に廃液を通液して、廃液中のテトラアルキルアンモニウム(以下、「TAA」という。)イオンをイオン交換により陽イオン交換樹脂に吸着させ、次いでTAAイオンを吸着した陽イオン交換樹脂を酸で再生すると共にTAAイオンを溶離させて、TAA塩を高濃度に含む溶離液を得、この溶離液中のTAA塩を電気分解等によりTAAHに変換して再利用することが行われている。
【0005】
特許文献1には、陽イオン交換樹脂によるTAAH含有廃液の処理に際して、陽イオン交換樹脂の充填塔を複数塔直列に連結し、廃液を第1段目の塔から順次通液し、第1段目の塔が目標交換率になるまで廃液を通液した後、該塔の再生とTAAイオンの溶離を行い、その後は第2段目の塔を最前段の塔として廃液を順次通液し、再生と溶離を行った塔を最後段の塔として同様に処理する、所謂メリーゴーランド方式で通液処理する方法が提案されている。
この特許文献1では、直列に連結したすべての塔について、被処理液も再生のための酸も、下向流通液とされている。このように、充填塔に廃液を下向流通液すると、塔内には陽イオン交換樹脂の固定床が形成される。固定床式のイオン交換塔は、流動床式のイオン交換塔に比べて通液時に未吸着イオンがリークしにくいという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−30208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のように、直列に連結した充填塔をすべて下向流通液として塔内に固定床を形成すると、以下の理由により、特に、第1段目の充填塔において、塔内の通液差圧の上昇が大きく、塔内のイオン交換樹脂の破砕、充填塔の破損といった問題が起こる。
【0008】
即ち、イオン交換樹脂には、イオン交換でイオンを吸着して負荷形となった場合に膨潤するものがある。特に、弱酸性陽イオン交換樹脂は、負荷形となった場合の膨潤の程度が大きい。強酸性陽イオン交換樹脂はイオン交換により陽イオンを吸着して負荷形になると通常は収縮するが、TAAイオンを吸着した場合は、吸着前よりも膨潤する。塔内の樹脂が膨潤すると、塔内の通液差圧が上昇する。
特許文献1のように、複数の充填塔を直列に連結して廃液を順次通液する場合、第1段目の充填塔は、最も高濃度の廃液が通液される最も負荷が大きい充填塔であるため、塔内の陽イオン交換樹脂の膨潤の程度も大きく、樹脂の膨潤による通液差圧の上昇、それによる樹脂の破砕、充填塔の破損等の問題が大きく現れる。
【0009】
本発明は、このように、イオン交換塔を2塔以上直列に連結し、被処理液を最前段のイオン交換塔から最後段のイオン交換塔まで順次通液して処理するに当たり、第1段目のイオン交換塔における塔内の通液差圧の上昇や塔内のイオン交換体の破砕、イオン交換塔の破損等を防止して、安定かつ効率的な処理を行えるイオン交換装置及びイオン交換処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、2塔以上直列に連結されたイオン交換塔のうち、第1段目(最前段)のイオン交換塔を固定床ではなく流動床式とすることにより、イオン交換樹脂等のイオン交換体が膨潤しても、通液差圧を上昇させることはなく、このため、イオン交換体の破砕やイオン交換塔の破損を引き起こすこともないこと、このように、イオン交換塔を流動床式とすると、このイオン交換塔から未吸着イオンがリークしやすくなるが、第1段目のイオン交換塔から未吸着イオンがリークしても、第2段目以降の固定床式のイオン交換塔でリークしたイオンを確実に吸着除去することができること、を見出した。
【0011】
なお、イオン交換塔を2塔以上直列に連結したイオン交換装置、特にメリーゴーランド方式を採用するイオン交換装置において、直列に連結された複数のイオン交換塔については、通常、同一の塔構造で同一のイオン交換体及び充填量、更には同一の通液条件が採用される。これは、第1段目のイオン交換塔の再生後は、第2段目のイオン交換塔が最前段のイオン交換塔となり、第1段目のイオン交換塔は最後段のイオン交換塔となるように、イオン交換塔の通液順序が変わっていくため、すべてのイオン交換塔が同一規格であることが好ましいことによる。このため、特に、メリーゴーランド方式を採用するイオン交換装置において、直列に連結された複数のイオン交換塔について、一部のイオン交換塔を流動床式とし、一部のイオン交換塔を固定床式とすることは従来行われていない。
このような状況において、本発明では、第1段目のイオン交換塔と第2段目以降のイオン交換塔とで異なる通液方式を採用することで課題解決するに到った。
【0012】
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0013】
[1] 弱酸性陽イオン交換樹脂が充填されたイオン交換塔を、2塔以上直列に連結してなるイオン交換塔群を有し、テトラアルキルアンモニウムイオンを100〜10,000mg/Lの濃度で含む被処理液が、該イオン交換塔群の最前段のイオン交換塔から最後段のイオン交換塔まで連続して通液されるイオン交換装置において、該最前段のイオン交換塔が流動床式イオン交換塔であり、該最前段以外のイオン交換塔が下向流通液方式の固定床式イオン交換塔であることを特徴とするイオン交換装置。
【0016】
] [1]において、前記イオン交換塔はイオン交換体の再生液の通液手段を有し、前記最前段のイオン交換塔において、前記被処理液を通液する通液工程の後、該被処理液の通液を停止し、該最前段のイオン交換塔に再生液を通液してイオン交換体を再生する再生工程が行われることを特徴とするイオン交換装置。
【0017】
] []において、前記最前段のイオン交換塔への前記被処理液の通液を停止した後、前記イオン交換塔群の第2段目以降のイオン交換塔が、直列に連結されたイオン交換塔群の最前段以降のイオン交換塔となり、前記再生工程を経た前記最前段のイオン交換塔が、該イオン交換塔群の最後段のイオン交換塔となるように、前記被処理液の通液流路を切り換える流路切換手段を有することを特徴とするイオン交換装置。
【0018】
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、前記最前段のイオン交換塔は、上向流通液方式のイオン交換塔であることを特徴とするイオン交換装置。
【0019】
[5] 弱酸性陽イオン交換樹脂が充填されたイオン交換塔を、2塔以上直列に連結し、テトラアルキルアンモニウムイオンを100〜10,000mg/Lの濃度で含む被処理液を最前段のイオン交換塔から最後段のイオン交換塔まで順次通液するイオン交換処理方法において、該最前段のイオン交換塔を流動床式イオン交換塔とし、該最前段以外のイオン交換塔を下向流通液方式の固定床式イオン交換塔とすることを特徴とするイオン交換処理方法。
【0022】
] [5]において、前記最前段のイオン交換塔において、前記被処理液を通液する通液工程を行った後、該被処理液の通液を停止し、該最前段のイオン交換塔に再生液を通液してイオン交換体を再生する再生工程を行うことを特徴とするイオン交換処理方法。
【0023】
] []において、前記最前段のイオン交換塔への前記被処理液の通液を停止した後、該最前段の次段以降のイオン交換塔に順次前記被処理液を通液し、前記再生工程を経た該最前段のイオン交換塔を、最後段のイオン交換塔として通液することを特徴とするイオン交換処理方法。
【0024】
[8] [5]ないし[7]のいずれかにおいて、前記最前段のイオン交換塔に、前記被処理液を上向流で通液することを特徴とするイオン交換処理方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、イオン交換塔を2塔以上直列に連結し、被処理液を最前段のイオン交換塔から最後段のイオン交換塔まで順次通液して処理するに当たり、最前段のイオン交換塔を流動床式とすることにより、塔内のイオン交換樹脂等のイオン交換体が膨潤しても、通液差圧を上昇させることが防止され、オン交換体の破砕やイオン交換塔の破損といった問題も解消される。このように、イオン交換塔を流動床式とすると、このイオン交換塔から未吸着イオンがリークしやすくなるが、本発明では最前段以外のイオン交換塔を固定床式とするため、最前段のイオン交換塔から未吸着イオンがリークしても、第2段目以降の固定床式のイオン交換塔でリークしたイオンを確実に吸着除去することができる。
このため、本発明によれば、イオン交換装置の安定運転を長期に亘り維持して高水質の処理水を確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明のイオン交換装置の実施の形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0028】
本発明のイオン交換装置は、イオン交換体が充填されたイオン交換塔を、2塔以上直列に連結してなるイオン交換塔群を有し、被処理液が、該イオン交換塔群の最前段のイオン交換塔から最後段のイオン交換塔まで連続して通液されるイオン交換装置において、該最前段のイオン交換塔が流動床式イオン交換塔であり、該最前段以外のイオン交換塔が固定床式イオン交換塔であることを特徴とする。
本発明のイオン交換処理方法は、イオン交換体が充填されたイオン交換塔を、2塔以上直列に連結し、被処理液を最前段のイオン交換塔から最後段のイオン交換塔まで順次通液するイオン交換処理方法において、該最前段のイオン交換塔を流動床式イオン交換塔とし、該最前段以外のイオン交換塔を固定床式イオン交換塔とすることを特徴とする。
【0029】
このような本発明のイオン交換装置及びイオン交換処理方法は、特にTAAHを含有する被処理液を、イオン交換体として陽イオン交換樹脂を充填した陽イオン交換塔に通液して処理するイオン交換装置及びイオン交換処理方法に有効である。従って、以下においては、主としてTAAH含有液を被処理液とし、陽イオン交換樹脂を充填したイオン交換塔に通液処理する態様を例示して本発明を説明するが、本発明は何ら以下に説明する態様に限定されず、被処理液のイオン交換処理でイオン交換体の膨潤が起こる被処理液とイオン交換体の組み合わせにおいて、有効に適用される。
【0030】
[被処理液]
本発明において被処理液として好適なTAAH含有液としては、TAAHを含む水溶液であれば特に制限しない。
被処理液中のTAAHの濃度については、特に制限なく、種々のTAAH濃度の被処理液を処理することができる。
【0031】
本発明は特に、半導体や液晶製造等の電子プロセスの現像工程から排出されるTAAHを含有する現像廃液を、陽イオン交換樹脂でイオン交換処理してTAAイオンを陽イオン交換樹脂に吸着させた後、陽イオン交換樹脂を再生すると共にTAAイオンを溶離させて高濃度TAA塩水溶液として回収する処理に好適である。
【0032】
半導体や液晶製造工程より排出される現像廃液中のTAAH濃度は通常100〜10,000mg/L程度である。現像廃液中のTAAHとしては、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド等が挙げられるが、これらのTAAHの中でも、半導体や液晶製造工程における現像液としては、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)が広く用いられているため、TMAHが挙げられる。
【0033】
この現像廃液には、半導体や液晶製造工程における金属層や配管材料等から溶出する微量の金属成分が含まれている。例えば、半導体製造工程において排出されるTAAH含有廃液では0.1〜0.5μg/L、液晶製造工程から排出されるTAAH含有廃液では1〜100μg/L程度の金属成分が含まれている。また、ノボラック樹脂、ポリスチレン樹脂等のフォトレジスト由来の有機物や微量の有機溶媒、界面活性剤等の有機物が溶解している。
【0034】
[陽イオン交換樹脂]
イオン交換塔に充填する陽イオン交換樹脂としては、被処理水中に存在するTAAイオンを吸着できるものであれば特に限定されず、工業的に入手可能な陽イオン交換樹脂を用いることが可能である。例えば、スチレン−ジビニルベンゼン共重合物、アクリル酸−ジビニルベンゼン共重合物、メタアクリル酸−ジビニルベンゼン共重合物等の基体にスルホン酸基等の強酸基を導入した強酸性陽イオン交換樹脂、および上記の基体にカルボキシル基、フェノール性ヒドロキシル基等の弱酸基を導入した弱酸性陽イオン交換樹脂が挙げられる。これらの陽イオン交換樹脂の中でも、吸着されたTAAイオンを容易に脱着できる点から弱酸性陽イオン交換樹脂を使用することが好ましい。
【0035】
陽イオン交換樹脂の構造についても、特に制限せず、ゲル型、ポーラス型、ハイポーラス型等のいずれの構造の陽イオン交換樹脂も好適に使用できる。
【0036】
上記陽イオン交換樹脂は、通常、対イオンが水素イオン(H形)かナトリウムイオン(Na形)で市販されているが、Na形の陽イオン交換樹脂を用いた場合には、TAAイオンとのイオン交換により、Naイオンが増加する傾向がある。従って、陽イオン交換樹脂としては、H形を用いることが好ましい。また、H形の陽イオン交換樹脂は、TAAイオンを含有する被処理液と接触させる前に、純水で十分に洗浄しておくことが望ましい。
本発明においては、弱酸性陽イオン交換樹脂にTAAイオンが吸着すると、弱酸性陽イオン交換樹脂が2〜3倍に膨潤することから、弱酸性陽イオン交換樹脂を使用すると本発明の効果が特に有効に発揮される。
【0037】
[イオン交換塔]
本発明において、直列に連結された2以上のイオン交換塔のうち、第1段目(最前段)のイオン交換塔は流動床式とし、第2段目以降(最前段以外)のイオン交換塔は固定床式とする。具体的には、第1段目のイオン交換塔は上向流通液とすることで流動床を形成し、第2段目以降のイオン交換塔は下向流通液とすることで固定床を形成する。
【0038】
イオン交換塔の大きさは、被処理液のTAAH濃度および被処理液量、選定した陽イオン交換樹脂の性能を考慮して決定されるが、特に、後述のメリーゴーランド方式を採用する場合、直列に連結される複数のイオン交換塔は、同一ないしは実質的に同一の大きさ、塔構造を有し、同一の陽イオン交換樹脂が同じ樹脂量で充填されたものであることが好ましい。ただし、本発明において、複数のイオン交換塔は、大きさや塔構造、充填されたイオン交換体及びその量が異なるものであってもよい。
【0039】
イオン交換塔の高さは、選定した陽イオン交換樹脂の膨潤度を考慮して決定する。その際、第1段目(最前段)のイオン交換塔については、後述の被処理液の通液で流動床が形成されたときの陽イオン交換樹脂の展開率をも考慮して塔高を決定する。具体的には、イオン交換塔内に陽イオン交換樹脂が展開して形成された流動床の高さが、イオン交換塔の有効高さの80%以下となるように塔高を決定することが、塔上部からの陽イオン交換樹脂の漏出を防止できる点で好ましい。
【0040】
イオン交換塔に充填した陽イオン交換樹脂の初期充填高さ(通液開始前の充填高さ)(L)と、イオン交換塔の直径(D)との比(D/L)は0.5以上、例えば0.5〜30であることが好ましい。
【0041】
なお、本発明において、イオン交換装置を構成するイオン交換塔の数は2以上であればよく、直列に連結されるイオン交換塔の数の上限には特に制限はないが、運転効率及び通液中のトラブルなどを考慮した場合、2塔であることが好ましい。
【0042】
[被処理液の通液工程]
前述の通り、本発明では、最前段である第1段目のイオン交換塔に被処理液を上向流で通液して、このイオン交換塔に流動床を形成し、最前段以外の第2段目以降のイオン交換塔に前段のイオン交換塔の流出液を下向流で通液して第2段目以降のイオン交換塔には固定床を形成する。
【0043】
被処理液の通液速度は、流動床を形成する最前段の第1段目のイオン交換塔を基準に決定する。具体的には、第1段目のイオン交換塔において、被処理液を上向流で通液することにより、塔内の陽イオン交換樹脂の展開率(陽イオン交換樹脂の初期充填高さに対する上向流通液で形成される陽イオン交換樹脂の流動床の高さの比)が1.1〜4倍程度となるように通液速度を決定することが好ましく、従って、イオン交換塔の高さは、前述の通り、このような展開率で陽イオン交換樹脂の流動床が形成されても陽イオン交換樹脂が流出することがないように十分な高さに決定される。
【0044】
[再生・溶離工程]
被処理液の通液で陽イオン交換樹脂に被処理液中のTAAイオンが吸着除去される。
陽イオン交換樹脂に吸着されたTAAイオンは、該樹脂に酸を接触させることにより溶離(脱離)することができ、これにより陽イオン交換樹脂を再生することができる。陽イオン交換樹脂の再生及びTAAイオンの溶離に用いる酸としては、水溶液の状態で水素イオンが生成するものであれば特に限定されず、例えば塩酸、硫酸等の鉱酸水溶液が例示される。これらの酸のうち、安価で濃度調整が容易な点から、塩酸水溶液、例えば1〜20重量%程度の塩酸水溶液が好適である。
【0045】
酸水溶液の酸濃度及び使用量については、陽イオン交換樹脂に吸着しているTAAイオンのモル濃度と当倍以上となるように設定する。1Lの陽イオン交換樹脂当たりの酸使用量は、純分として、強酸性陽イオン交換樹脂を用いる場合は、200g以上、弱酸性陽イオン交換樹脂を用いる場合は、150g以上とすることが好適である。
【0046】
酸水溶液は下向流で通液することが好ましく、その際の通液速度は、酸水溶液の濃度および使用量等より適宜決定される。
【0047】
酸水溶液の通液でTAAイオンを溶離させてH形とした陽イオン交換樹脂は、再び被処理液を通液してTAAイオンの吸着に用いるため、十分に再生されていることが望ましい。イオン交換塔に酸水溶液を通液して得られる溶離液(再生廃液)は、TAA塩を高濃度で含むものであり、通常、TAAHの回収工程に送給されて現像液として再利用される。
【0048】
[メリーゴーランド方式のイオン交換処理]
以下に図1を参照してメリーゴーランド方式を採用して本発明によるイオン交換処理を行う方法について説明する。
【0049】
図1のイオン交換装置は第1段目のイオン交換塔(以下、「第1イオン交換塔」という。)1と、第2段目のイオン交換塔(以下、「第2イオン交換塔」という。)2が直列に連結されてなるものである。
【0050】
まず、図1(a)に示すように、被処理液のTAAH含有廃液を第1イオン交換塔1に上向流通液して第1イオン交換塔1の流出液を第2イオン交換塔2に下向流通液する(第3段目以降のイオン交換塔が更に連結されている場合は、第3段目以降のイオン交換塔もすべて下向流通液とする。)。
【0051】
最後段のイオン交換塔(図1(a)では第2イオン交換塔2)或いは特定のイオン交換塔の流出液のTAAイオン濃度が規定量になるまで、或いは、所定時間の通液を行った後、被処理液の通液を停止し、図1(b)に示すように、第1イオン交換塔1に酸水溶液を下向流で通液して塔内の陽イオン交換樹脂を再生すると共にTAAイオンを溶離する。
次に、この処理で、塔内の陽イオン交換樹脂をH形とした第1イオン交換塔1を最後段のイオン交換塔とし、図1(c)に示す通り、第2イオン交換塔2を最前段のイオン交換塔として被処理液の通液を再開し、第2イオン交換塔2に上向流通液し、第2イオン交換塔2の流出液を第1イオン交換塔1に下向流通液する(第3段目以降のイオン交換塔が更に連結されている場合は、第3段目以降のイオン交換塔を2段目以降のイオン交換塔としてすべて下向流通液とする。)。
【0052】
図1(a)の場合と同様に、最後段のイオン交換塔(図1(c)では第1イオン交換塔1)或いは特定のイオン交換塔の流出液のTAAイオン濃度が規定量になるまで、或いは、所定時間の通液を行った後、被処理液の通液を停止し、第2イオン交換塔2に酸水溶液を下向流で通液して塔内の陽イオン交換樹脂を再生すると共にTAAイオンを溶離する。
次に、この処理で、塔内の陽イオン交換樹脂をH形とした第2イオン交換塔2を最後段のイオン交換塔とし、図1(a)に示す通り、第1イオン交換塔1を最前段のイオン交換塔として被処理液の通液を再開し、第1イオン交換塔1に上向流通液し、第1イオン交換塔1の流出液を第2イオン交換塔2に下向流通液する。
以降、同様の処理を繰り返し行う。
【0053】
このような被処理液の流路切り換え、酸水溶液の通液等は、図示しないバルブ操作により常法に従って行うことができる。
【0054】
なお、図1では、2塔のイオン交換塔を用いてメリーゴーランド方式でイオン交換処理を行うが、本発明において、イオン交換塔は2塔に限らず、3塔以上であってもよい。また、予備のイオン交換塔を設け、1つのイオン交換塔で再生、溶離を行っている間に、その他の2以上のイオン交換塔でイオン交換処理を行うようにすることもでき、この場合は被処理液の通液を停止することなく、連続処理を行うことが可能となる。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0056】
[実施例1]
図1に示すイオン交換装置を用いて、TMAHを2500mg/L含有する模擬廃液の処理を行った。第1イオン交換塔1及び第2イオン交換塔2としては、下記仕様のものを用いた。
【0057】
<第1イオン交換塔及び第2イオン交換塔>
塔径:150mm
塔高:1200mm
樹脂種:弱酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学株式会社製 WK40L)
樹脂量:5L
D/L比:0.53
【0058】
図1(a)に示すように、模擬廃液を第1イオン交換塔1にLV5m/hrで上向流通液し、第1イオン交換塔1の流出液を第2イオン交換塔2にLV5m/hrで下向流通液したところ、第1イオン交換塔1の流出液のTMAH濃度は50mg/L、第2イオン交換塔2の流出液のTMAH濃度は3mg/Lとなった。なお、第1イオン交換塔1に模擬廃液を上向流通液したときの陽イオン交換樹脂の展開率は1.3倍であった。
【0059】
6hrの通液で、第1イオン交換塔1の貫流イオン交換容量(BTC)が301g−TMA/L−樹脂となったので、廃液の通液を停止して、図1(b)に示すように、第1イオン交換塔1に5重量%塩酸水溶液をLV4m/hrで4BV、下向流通液して樹脂の再生と、TMAイオンの溶離を行ったところ、ほぼ100%のTMAイオンを樹脂から溶離することができた。
【0060】
第1イオン交換塔1の再生後は、図1(c)に示すように、まず第2イオン交換塔2に模擬廃液を上向流通液した後、第2イオン交換塔2の流出液を第1イオン交換塔1に下向流通液する処理に切り換え、以降、再生、溶離を行う毎に、第1イオン交換塔1と第2イオン交換塔2との通液順を交互に切り換えるメリーゴーランド方式の運転を継続したところ、上記と同様に安定な処理を継続することができた。
【0061】
[比較例1]
実施例1において、第1イオン交換塔も第2イオン交換塔も共に下向流通液としたこと以外は同条件で模擬廃液の通液を行ったところ、第1イオン交換塔1の通液差圧が上昇し、通液開始から4時間で通液不能となった。
【符号の説明】
【0062】
1 第1イオン交換塔
2 第2イオン交換塔
1A,2A 流動床
2A,2B 固定床
図1