(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2半導体層を、平面視が四角形で、かつ前記基板の第1主面上に行列方向に複数配列させる請求項1〜6のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る発光素子の製造方法を実施するための形態を詳細に、図面を参照しながら説明する。各図面が示す部材の大きさ、厚み、位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称又は符号は、原則として同一又は同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。
発光素子及びその部材において、第1主面及びそれに対応する面を「上面」と、第2主面及びそれに対応する面を「下面」と称することがある。
【0013】
本発明の発光素子の製造方法は、概して、
(A)基板の第1主面上に形成された半導体積層体を準備し、
(B)離間半導体層を形成し、
(C)第1保護膜を形成し、
(D)支持部材を形成し、
(E)半導体積層体から基板を分離し、
(F)離間半導体層を切断する工程を含む。
あるいは、
(A)基板の第1主面上に形成された半導体積層体を準備し、
(B’)離間半導体層を複数形成し、
(C’)第1保護膜を形成し、
(D)支持部材を形成し、
(E)半導体積層体から基板を分離し、
(F’)複数の離間半導体層のうちいずれかを切断する工程を含む。
【0014】
また、これらの工程の間、中又は後に、さらに
(G)光反射性電極を形成し、
(H)第2半導体層と電気的に接続された第2電極を形成し、
(I)第1半導体層と電気的に接続された第1電極を形成し、
(J)第2保護膜を形成し、
(K)第2外部電極を形成し、
(L)第1外部電極を形成し、
(M)透光性部材を形成する工程等を任意に実行してもよい。
【0015】
(A)半導体積層体の準備
基板の第1主面上に形成された半導体積層体を準備する。
半導体積層体は、1単位の発光素子を構成し得る半導体層積層体の複数が一体的に積層された集合体である。なかでも、半導体積層体は、第1半導体層と、この第1半導体層の一部の領域上に配置された複数の第2半導体層とを有することが好ましく、特に、第1半導体層と、発光層と、第2半導体層とがこの順に基板の上面に積層されて構成されるものが好ましい。ここで、第1とはn型、第2とはp型であってもよいし、その逆でもよい。
【0016】
第1半導体層、発光層、第2半導体層の種類、材料は特に限定されるものではなく、例えばIn
XAl
YGa
1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y<1)等の窒化ガリウム系の半導体材料が好適に用いられる。これらの第1半導体層、発光層及び第2半導体層はいずれも、単層であってもよいし、2層以上の多層又は超格子等の積層構造を含んでいてもよい。
また、第1半導体層、発光層及び第2半導体層ならびに半導体積層体の厚みは、特に限定されず、意図する特性、使用する材料等によって適宜調整することができる。
【0017】
半導体積層体は、通常、基板上に積層される。基板の材料としては、後述するように半導体積層体から基板を分離する際、レーザリフトオフ法で用いられるレーザ光を透過できる材料であれば良く、例えば、サファイア(Al
2O
3)、スピネル(MgA1
2O
4)、炭化ケイ素(SiC)、ZnS、ZnO、GaAs等の透光性基板が挙げられる。
【0018】
半導体積層体は、後述するように、第1半導体層上及び第2半導体層上に、それぞれ第1電極及び第2電極を形成するために又は1単位の発光素子ごとに分割するために、第2半導体層及び発光層が配置しない領域を有している。この領域では、第1半導体層が露出した領域となっている。この領域は、第1半導体層の厚み方向の一部を除去していてもよい。以下、第1半導体層が露出した領域を露出領域ということがある。
【0019】
露出領域は、例えば、第2半導体層が、平面視で四角形を形成するように配置することが好ましい。ただし、加工の精度等から、その角の角度が±5度程度変動することは許容される。この場合、第2半導体層を、基板の上面に、行列方向に配列するように形成することがより好ましい。そのため、第1半導体層の露出領域は、基板の上面に、格子状に形成することが好ましい。
【0020】
(光反射性電極の形成)
第1半導体層及び/又は第2半導体層の上面に、光反射性電極を形成することが好ましい。ここで光反射性とは、発光層から出射される光を、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上反射させる性質を意味する。
【0021】
光反射性電極としては、半導体層に電気的に接続することができる材料であれば特に限定されず、例えば、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、タングステン(W)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)、亜鉛(Zn)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mn)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)等の金属又はこれらを含む合金、例えばAlとCuとの合金(AC)、AlとSiとCuとの合金(ASC)等が挙げられる。これら電極材料は、単層であってもよいし、積層構造でもよい。
【0022】
光反射性電極は、積層構造の場合、各層は、同一の形状であってもよいし、上層の少なくとも1層が、下層の少なくとも1層を被覆することが好ましい。ここでの被覆とは、上面及び側面等の露出面の全面を覆うことを意味する。特に、下層において銀又は銀合金が用いられている場合には、その上層において、銀又は銀合金による下層の全面を被覆することが好ましい。これによって、銀のマイグレーションを効果的に防止することができる。
【0023】
光反射性電極は、真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオン・ベーパー・デポジション(IVD)法、スパッタリング法、プラズマ蒸着法、化学的気相成長(CVD)法等の公知の方法によって形成することができる。また、光反射性電極を所望の形状にパターニングする場合には、フォトリソグラフィ及びドライエッチング又はウェットエッチング工程、リフトオフ法等の公知の方法を利用することができる。
光反射性電極の厚みは特に限定されるものではなく、意図する特性等によって適宜調整することができる。
【0024】
光反射性電極の大きさ及び形状は、特に限定されるものではなく、通常、電流をそれぞれ半導体層の面内全体に均一に供給するために、半導体積層体の各半導体層の上面と同じ又はそれよりも若干小さい大きさ、半導体積層体の各半導体層の上面と同様の形状又は相似形状とすることが好ましい。
【0025】
光反射性電極は、半導体積層体における第1半導体層又は第2半導体層の一方のみに形成してもよいが、効率的に光を取り出すために、露出面積がより大きな第2半導体層に形成することが好ましい。
【0026】
(B)及び(B’)離間半導体層の形成
隣接する第2半導体層間における第1半導体層に、基板の上面に至る溝部を形成し、離間半導体層を形成する。溝部は、各第2半導体層の周縁部の少なくとも一部、好ましくは全部を囲むように形成することが好ましい。このような溝部を形成することにより、溝部に挟まれ、半導体積層体から離間する離間半導体層を形成する。離間半導体層を、隣接する第2半導体層間、つまり、分割予定ライン周辺に設けることで、レーザリフトオフ法によって基板を半導体積層体から剥離する際、基板との間で離間半導体層の分解および隙間の発生が起こる。そのため、分割予定ライン周辺の半導体積層体の全てを除去した場合と比べて、基板の剥離を容易に行うことができる。
ここで、隣接する第2半導体層間とは、1単位の発光素子を構成するための第2半導体層の領域同士が隣接することを意味し、それらが離間した形態のみならず、2単位の発光素子を構成するために、隣接しかつ連結されたままの第2半導体層をも包含する。従って、溝部は、基板に到達したものであれば、第1半導体層と発光層と第2半導体層が積層された半導体積層体の厚み方向の全てにわたっていてもよい。これらの場合、離間される離間半導体層は、発光には直接寄与しないため、第1半導体層と発光層と第2半導体層の全てを備えていてもよいし、第1半導体層と発光層とを備えていてもよいし、第1半導体層のみを備えていてもよい。
【0027】
なかでも、先の工程において、発光素子ごとに分割するための第1半導体層の露出領域が形成されており、これによって、互いに離間して隣接する第2半導体層の間、つまり、露出領域に、溝部を形成することが好ましい。この場合、離間半導体層は、第1半導体層のみを備えることになる。これによって、溝部を、簡便に精度よく形成することができる。
第1溝の深さは、基板の上面に至るものであれば、基板内におよんでいてもよい。
このような溝部は、通常、フォトリソグラフィ及びエッチング工程によって形成することができる。また、レーザーアブレーション法等の公知の方法を利用してもよい。
溝部は、隣接する第2半導体層間に、第2半導体層のそれぞれの周縁部を囲むように、2以上配置していればよい。
溝部の幅は、2つの溝によって挟まれる島状の半導体層が、発光素子を構成する半導体積層体から離間させることができる幅以上であればよい。具体的には、0μmより大きく35μm程度以下が挙げられ、10μ以上15μm以下がより好ましい。これにより、基板が保護膜と接する面積を極力小さくすることができるため、レーザリフトオフ法による基板の剥離を容易に行うことが可能となる。
【0028】
離間半導体層は、1単位の発光素子を構成するための半導体積層体に隣接して、つまり、この半導体積層体の両側(行方向及び列方向の一方)に配置されていればよいし、さらに別の両側(行方向及び列方向の他方)に配置されていることが好ましい。
島状半導体層の幅及び長さは、特に限定されるものではなく、隣接する2つの溝部の配置によって、適宜調整することができる。
【0029】
また、隣接する第2半導体層間に溝部を複数形成し、離間半導体層を複数設けてもよい。例えば、第2半導体層のそれぞれの周縁部を囲う溝部の外側を囲むようにさらなる溝部を形成することで、複数の離間半導体層を形成することができる。
【0030】
(C)及び(C’)第1保護膜の形成
先の工程で形成した溝部及び離間半導体層を一体的に被覆する第1保護膜を形成する。
先の工程で溝部及び離間半導体層を形成した場合には、溝部及び溝部の全ての溝内に第1保護膜を埋込み、離間半導体層及び離間半導体層の少なくとも一部を被覆する第1保護膜を一体的に形成することが好ましい。
第1保護膜は、その一部が半導体積層体において露出した第1半導体層の一部を被覆していることが好ましい。
【0031】
第1保護膜の形成と同時に、第1半導体層から第2半導体層を被覆する第2保護膜を形成することが好ましい。
ここで同時とは、保護膜の材料を、基板上全面に、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオン・ベーパー・デポジション(IVD)法等、スパッタリング法、ECRスパッタリング法、プラズマ蒸着法、化学的気相成長(CVD)法、ECR−CVD法、ECR−プラズマCVD法、EB法、ALD法等の公知の方法によって成膜し、続いて、例えば、フォトリソグラフィ及びドライエッチング又はウェットエッチング工程等の公知の方法によって第1保護膜と第2保護膜とに分離してパターニングすることによって形成することを意味する。
【0032】
第1保護膜と第2保護膜とは、発光素子を構成する半導体積層体の上、好ましくは、この半導体積層体の外周部分で離間させることが好ましい。言い換えると、第1保護膜の端部と第2保護膜の端部とは、いずれも、1つの発光素子を構成する半導体積層体の外周部分で互いに離間して配置していることが好ましい。特に、第2保護膜は、第1半導体層上で第1保護膜と分離していることが好ましい。第2保護膜が第1保護膜と離間していることで、第2保護膜第1保護膜と第2保護膜とが互いに離間した部分において、第1半導体層と第1電極を電気的に接続することができる。
【0033】
第1保護膜及び第2保護膜は、Si、Ti、Zr、Nb、Ta、Alからなる群より選択された少なくとも一種の元素を含む酸化物、窒化物又は酸窒化物によって単層又は積層構造で形成することができる。例えば、酸化シリコン、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム及び酸化タンタルからなる群から選択される少なくとも1種によって形成することができる。特に、第1保護膜を、Nb
2O
5/SiO
2、TiO
2/SiO
2等の2層構造とすることが好ましい。Nb
2O
5、TiO
2がレーザリフトオフ法によって用いられるレーザ光に反応しやすく、半導体積層体から基板をさらに剥離しやすくなるからである。
【0034】
第1保護膜及び第2保護膜は、2種以上の誘電体を複数層積層させた多層構造膜からなるDBR(distributed Bragg reflector:分布ブラッグ反射)型構造として形成してもよいし、2種以上の誘電体の複数層と金属反射層とを積層させた多層構造膜としてもよい。金属反射層としては、例えば、Al、Ag等の反射率の高い金属又は合金によって、単層又は積層構造の層として形成することができる。Alを単独で用いる場合、高出力の発光素子を得ることができる。また、Al合金としては、Alを主成分(50atom%以上を含有する)としたCu、Ag、Pt、Si等との合金が挙げられる。なかでも、AlとCuとの合金(AC)、AlとSiとCuとの合金(ASC)を用いる場合、Alのマイグレーションを抑制することができ、高信頼性の発光素子を得ることができる。
【0035】
金属反射層をAl、Ag等で形成する場合、その上には、Al、Agの腐食防止の効果等を有する絶縁又は導電材料を積層させることが好ましい。このような積層構造としては、例えば、Al合金/Ti等の2層構造、Al合金/SiO
2/Ti等の3層構造等が挙げられる。金属反射層の厚みは、特に限定されるものではなく、例えば、100nm〜5μm程度が挙げられる。
【0036】
第1保護膜及び第2保護膜の厚みは特に限定されるものではなく、例えば、0.1μm〜20μm程度が好ましく、0.5μm〜10μm程度がより好ましい。
【0037】
第2保護膜は、開口を有することが好ましい。
開口は、第2保護膜を厚み方向に貫く貫通孔であり、第2半導体層の一部領域上に配置することが好ましい。この開口は、光反射性電極上以外のところに形成してもよいが、第2半導体層の領域上であって、上述した光反射性電極の上に配置されていることがより好ましい。これによって、後述する第2電極を光反射性電極と接続することができる。
開口の形状は、例えば、平面形状を円形、楕円形、多角形等とすることができ、その大きさ、数、レイアウト等は適宜設定することができる。例えば、1つのみ、複数例で及び/又は複数行で、あるいは複数列及び複数行で規則的に又はランダムに配置することができる。
【0038】
(第1電極及び第2電極の形成)
第1電極及び第2電極を、第1半導体層及び第2半導体層上にそれぞれ電気的に接続するように形成する。先の工程で、光反射性電極が形成されている場合には、光反射性電極を介して第1半導体層及び第2半導体層上にそれぞれ電気的に接続するように形成してもよい。
第1電極及び第2電極としては、特に限定されず、例えば、半導体積層体(つまり、発光層)からの光を効率良く取り出すことができるように、光反射性電極として例示した材料から適宜選択することができる。また、亜鉛、インジウム、スズ、ガリウム及びマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む導電性酸化物(例えば、ITO、ZnO、IZO、GZO、In
2O
3及びSnO
2等)等を用いてもよい。これら電極材料は、単層であってもよいし、積層構造でもよい。
【0039】
第1電極及び第2電極は、上述した光反射性電極で例示した方法と同様の方法によって形成することができる。
第1電極及び第2電極の厚み、大きさ及び形状は、意図する特性等によって適宜調整することができる。
特に、第2電極は、第2半導体層の上のみ、なかでも、光反射性電極の上のみに形成することが好ましい。つまり、上述したように、第2保護膜は、第2半導体層上に配置する第2半導体層、特に、光反射性電極の一部を露出する開口を有する。従って、この開口を介して光反射性電極と接続された第2電極を形成する。
第1電極は、第1半導体層の上、特に、第1保護膜と第2保護膜とが離間する第1半導体層の上に形成することが好ましい。また、第1保護膜及び/又は第2保護膜の上に配置するように形成してもよい。さらに、第2半導体層の上にも配置するように、第2保護膜を介して配置されていることがより好ましい。
【0040】
(第1外部電極及び第2外部電極層の形成)
第1外部電極及び第2外部電極とは、外部からの電力の供給のために発光素子以外の端子又は電極等と接続するための電極を指し、パッド状、ワイヤ状、バンプ状及びこれらの組み合わせなどの種々の形態の電極を含む。
【0041】
これら第1外部電極及び第2外部電極は、同時に形成することが好ましい。
ここで同時とは、第1外部電極及び第2外部電極を構成するワイヤを順次、第1電極及び第2電極にワイヤボンドする方法のほか、外部電極の材料を、基板上全面に形成し、公知の方法によってパターニングする方法、例えば、第1外部電極及び/又は第2外部電極を形成する領域に開口を有するレジスト層を予め形成し、その上に、外部電極の材料を、基板上全面に形成し、リフトオフ法を利用して、外部電極材料をパターニングする方法等が挙げられる。
【0042】
第1外部電極及び第2外部電極は、第1電極及び第2電極として例示した材料から適宜選択して形成することができる。直径10〜70μm程度の金、銅、白金、アルミニウム等の金属及びそれらの合金を用いた導電性ワイヤ、例えば、ITOなどの導電性酸化物、白金族元素の金属、Ni/Au、Ti/Rh/Ti、Ti/Pt/Au、Ti/Rh/Au、Ti/Ni/Au、Co/Au、Rh/Ir、Pt/Pd等からなる多層膜等によって形成することができる。ワイヤを用いる場合は、第1電極間、第2電極間又は第1電極及び第2電極間で、それぞれループを形成するようにボンディングすることが好ましい。
第1外部電極及び第2外部電極の厚みは特に限定されるものではなく、意図する特性等によって適宜調整することができる。第1外部電極及び第2外部電極がワイヤを含む場合には、ワイヤの高さは特に限定されるものではなく、意図する特性等によって適宜調整することができる。
【0043】
(D)支持部材の形成、
第1保護膜の上、つまり、第1保護膜の基板とは反対の面側に、支持部材を形成する。支持部材は、樹脂からなる。樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ABS樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、PBT樹脂等の樹脂を用いることができる。これら樹脂には、着色剤、遮光材、光拡散材等の添加材を含有していてもよい。これら添加材としては、TiO
2、SiO
2、Cr
2O
3、MnO
2、Fe
2O
3、カーボンブラック等が挙げられる。
【0044】
このような樹脂からなる支持部材は、モールド法、ポッティング法、印刷法等、種々の方法により形成することができる。
支持部材は、第1外部電極及び第2外部電極を露出させるように形成することが好ましい。この場合、上述した方法により支持部材を形成した後、支持部材の表面を研磨又は切削して、第1外部電極及び第2外部電極の上面を露出させる加工を行ってもよいし、第1外部電極及び第2外部電極を露出させたまま、支持部材を塗布等する方法等を採用してもよい。
【0045】
特に、第1外部電極及び第2外部電極の一部にワイヤを用いる場合、ワイヤを第1電極及び第2電極にボンディングした後、ワイヤの表面を露出させて支持部材を形成することが好ましい。また、その露出したワイヤに、上述した電極材料の単層又は積層構造膜を接続するように、支持部材上に、電極パターンを配置することが好ましい。従って、これらワイヤ及び電極パターンによって、それぞれ第1外部電極及び第2外部電極を形成してもよい。電極パターンは、それぞれ、1単位の発光素子を構成し得る半導体層積層体が配置された領域内に配置されることが好ましい。
【0046】
支持部材の厚みは、特に限定されるものではなく、少なくとも半導体積層体と、第1及び第2電極とを完全に被覆できる厚みとすることが好ましい。
【0047】
(E)基板の分離
基板の第2主面(下面)側からレーザ光(例えば、KrFエキシマレーザ、YAGレーザなど)を照射して、半導体積層体及び離間半導体層から基板を分離する。基板を分離する方法は、公知のレーザリフトオフ法を利用することができる。例えば、特開2007−300134号公報に記載の方法、特開2012−15150号公報に記載のレーザリフトオフ装置、市販のレーザリフトオフ装置(UX4-LEDsLLO150、ウシオ電機製)等を利用することができる。
【0048】
(透光性部材の形成)
半導体積層体から基板を分離した後、その基板が存在していた面に、透光性部材を形成することが好ましい。
透光性部材は、発光層から出射される光の80%以上を透過するもの、さらには90%以上を透過するものが好ましい。透光性部材は、例えば、シリコーン樹脂組成物、変性シリコーン樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、変性エポキシ樹脂組成物、アクリル樹脂組成物等、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂及びこれらの樹脂を少なくとも1種以上含むハイブリッド樹脂等の樹脂等によって形成することができる。透光性部材には、当該分野で公知の蛍光体、光散乱材、無機フィラー等を含有していてもよい。
【0049】
蛍光体は、当該分野で公知のものを使用することができる。例えば、発光素子として青色発光する窒化ガリウム系発光素子を用いる場合、青色光を吸収して黄色〜緑色系発光するYAG系、LAG系、緑色発光するSiAlON系(βサイアロン)、赤色発光するSCASN、CASN系の蛍光体の単独又は組み合わせが挙げられる。
透光性部材は、単層でもよいし、積層構造でもよく、蛍光体、光散乱材、無機フィラー等の2種以上を組み合わせて配置してもよい。
【0050】
透光性部材の厚みは、用いる材料、含有する蛍光体、光散乱材、無機フィラー等の量、意図する特性等によって適宜調整することができる。
【0051】
(F)及び(F’)半導体積層体の切断
支持部材側から、ブレードを用いて離間半導体層を切断する。これによって、複数の発光素子を個片化することができる。
ブレードは、従来から当該分野で使用されているもののいずれをも使用することができる。ブレードによる切断の使用条件等も、適宜調整することができる。
【0052】
離間半導体層を複数形成した場合には、離間半導体層のうちいずれを切断してもよく、全てを切断してもよい。これによって、複数の発光素子へ個片化することができる。
【0053】
このような一連の工程によって、半導体積層体を1単位の発光素子ごとに分割するために形成される分割予定ラインに沿った周辺領域(露出領域)において、第1半導体層を配置することができるために、レーザリフトオフ法を行う際に、レーザ光がこの部位を透過することがない。従って、この部位では、半導体層の分解及び隙間が十分に生じ、基板の分離を確実に行うことが可能となる。
また、機械切削具による分割を行う場合であっても、半導体積層体と離間した離間半導体層を切断することにより、発光素子を構成する領域の半導体積層体にクラックが生じるのを効果的に防止することができる。その結果、発光素子としての信頼性を確保することができる。
さらに、分割予定ラインに沿う周辺領域では、厚み方向の全てに樹脂が配置されているのではなく基板が分離された側の表面に離間半導体層が存在する。よって、機械切削具による樹脂のバリを効果的に防止することができる。
【0054】
以下に本発明の発光素子の製造方法の実施形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明を以下に限定するものではない。
<実施の形態1>
この実施の形態で製造される発光素子10は、
図1Aから
図1Dに示すように、主に、半導体積層体11と、離間半導体層12と、光反射性電極13と、第1保護膜14と、第2保護膜15と、第1電極16と、第2電極17と、支持部材18と、第1外部電極19と、第2外部電極20と、透光性部材21とを備えて、平面視が略長方形の形状で構成されている。
なお、
図1Aは4単位の発光素子10を示すものであり、
図1Bは
図1AのA−A’線断面図における1単位の発光素子の電極構造のみを、
図1Cは
図1AのB−B’線断面図における1単位の発光素子の電極構造のみを詳細に示す拡大図である。
【0055】
半導体積層体11は、
図1Dに示すように、第1半導体層3(例えば、n層)、発光層29及び第2半導体層4(例えば、p層)がこの順に積層されている。第1半導体層3は、半導体積層体11の外周部分で第2半導体層4及び発光層29から露出している。
離間半導体層12は、第1半導体層からなり、半導体積層体11と溝部22によって離間されている。つまり、離間半導体層12は、第2半導体層のそれぞれの周縁部を囲むように、溝部22に挟まれて配置されている。溝部22は、半導体積層体11の外周の全部を取り囲んで配置されており、幅が10μm〜15μm程度である。
【0056】
第2半導体層4上面の略全面には、光反射性電極13が形成されている。光反射性電極13は、
図1Dに示すように、第2半導体層4側からAg(膜厚0.1μm程度)膜13a、Ni(膜厚0.3μm程度)膜13b、Ti(膜厚0.1μm程度)膜13c及びRu(膜厚0.1μm程度)膜13dが同一形状で積層され、これら積層膜の上面及び側面の全てを被覆するようにAlCu(膜厚2μm程度)膜13eが積層されてなる。
【0057】
第1保護膜14は、溝部22及び離間半導体層13の全部と、半導体積層体11の一部とを一体的に被覆している。第1保護膜14は、例えば、SiO
2(膜厚1μm程度)によって形成されている。
第2保護膜15は、第1保護膜14と、第1半導体層3の上で10μm程度離間して、第1半導体層3上から第2半導体層上にわたって配置されている。第2保護膜15は、第2半導体層4上の一部領域において開口23を有する。
【0058】
第1電極16は、第1保護膜14と第2保護膜15とが離間して露出した第1半導体層3と電気的に接続されている。第1電極16は、離間半導体層12、溝部22、第1半導体層3及び第2半導体層4の上にわたって配置されている。
第2電極17は、第2保護膜15の第2半導体層上の一部領域上における開口23内に形成されており、第2半導体層4と電気的に接続されている。
第1電極16は、
図1Dに示すように、半導体層側から、ASC(膜厚0.3μm程度)膜16a、Ti(膜厚0.3μm程度)膜16b、Pt(膜厚0.1μm程度)膜16c及びAu(膜厚0.5μm程度)膜16dが積層されてなる。第2電極17も、これらと同一の積層構造を有する。
【0059】
支持部材18は、カーボンブラックを1重量%程度含有するエポキシ樹脂によって形成されている。支持部材18は、半導体積層体11と、離間半導体層12と、溝部22と、第1保護膜14及び第2保護膜15上の第1電極16及び第2電極17と、第2保護膜15に形成された開口23内の一部と、第1外部電極19及び第2外部電極20の一部とを一体的に被覆している。また、その上面は比較的平坦であり、第1外部電極19及び第2外部電極20の他の一部を載置している。
【0060】
図1Dに示すように、第1外部電極19は、第2半導体層上方に配置された第1電極16とボンディングされたワイヤ19aと、ワイヤ19aの端部に接続され、上述した支持部材の上面に配置する電極パターンとによって構成されている。
第2外部電極20は、第2保護膜15に形成された開口23内で第2半導体層と接続された第2電極17とボンディングされたワイヤ20aと、ワイヤ20aの端部に接続され、上述した支持部材18の上面に配置する電極パターンとによって構成されている。
【0061】
ワイヤ19a、20aは、直径35μm程度の金線からなる。電極パターンは、支持部材18側からNi(膜厚0.2μm程度)膜19b、20b及びAu(膜厚1μm程度)膜19c、20cの積層構造によって形成されている。第1外部電極19及び第2外部電極20を構成する電極パターンは、互いに同じ平面積であり、例えば、それぞれ、発光素子の平面積の20%程度の平面積を有する。
【0062】
透光性部材21は、半導体積層体11の支持部材18とは反対側の面上に配置している。透光性部材21は、蛍光体を70重量%程度で含有するシリコーン樹脂によって、厚み20μm程度で形成されている。
【0063】
このような構成を有する発光素子は、以下の方法によって製造することができる。
図2A(a)に示すように、表面に凹凸を有するサファイアウェハからなる基板2上に、例えば、In
XAl
YGa
1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y<1)からなる第1半導体層3、発光層29及び第2半導体層4を積層して半導体積層体11を形成する。
次いで、半導体積層体11の第2半導体層上に、Ag、Ni、Ti及びRuからなる積層膜を成膜し、フォトリソグラフィ及びエッチング工程によって、所定の形状にそれぞれパターニングする。続いて、これらパターニングした積層膜上にAlCuからなる単層膜を成膜し、それぞれパターニングして、積層膜の上面及び側面の全てを被覆する単層膜を形成し、第2半導体層と電気的に接続され、互いに離間した複数の光反射性電極13を形成する。
【0064】
図2A(b)に示すように、光反射性電極13の外周を取り囲むように第2半導体層4の一部を残して、第2半導体層4及び発光層29を厚み方向にエッチングして、第1半導体層3の表面を露出させる。
【0065】
図2A(c)に示すように、複数の第2半導体層4のうちの互いに隣接する第2半導体層4間であって、露出した第1半導体層3内に、基板2表面に至る溝部22を形成する。溝部22は、第2半導体層4のそれぞれの周縁部を囲むように形成する。これによって、溝部22に挟まれ、半導体積層体11から離間する離間半導体層12を形成することができる。つまり、隣接する第2半導体層4間に、溝部22が2本形成される。なお、
図2A(c)以降においては、第1半導体層3、活性層29、第2半導体層4の境界の記載を省略している。
【0066】
図2A(d)に示すように、その後、SiO
2を成膜し、所望の形状にパターニングすることにより、離間半導体層12、溝部22及び第1半導体層3の一部を被覆する第1保護膜14と、第1半導体層3上から第2半導体層4上の光反射性電極13上にわたり、光反射性電極13上で開口23を有する第2保護膜15を形成する。
【0067】
図2A(e)に示すように、得られたウェハ上に、保護膜側からASC、Ti、Pt及びAuからなる積層膜を成膜し、フォトリソグラフィ及びエッチング工程によって、所定の形状にそれぞれパターニングする。これによって、第1半導体層3の上、特に、第1保護膜14と第2保護膜15とが離間する第1半導体層3の上に接続される第1電極16を形成する。同時に、この第1電極16は、離間半導体層11及び溝部22上の第1保護膜14上から、第2半導体層4上の第2保護膜15の上に配置する。第2保護膜15の開口23内、つまり、第2半導体層4の光反射性電極13の上のみに配置され、開口23を介して光反射性電極13と接続される第2電極17を形成する。
【0068】
図2A(f)に示すように、第1電極16及び第2電極17を互いにワイヤWで接続するように、ワイヤボンディングする。
図2A(g)に示すように、得られたウェハ上に、ワイヤボンディングしたワイヤW、第1電極16及び第2電極17、半導体積層体11を被覆するように、支持部材18を形成する。支持部材18は、例えば、ワイヤWのトップまで埋設するように形成する。
図2A(h)に示すように、その後、第1電極16及び第2電極17上でワイヤWの断面を露出するように、支持部材18を切削する。切断されたワイヤWのうち、第1電極16と接続されたものがワイヤ19a、第2電極17と接続されたものがワイヤ20aとなる。この際、支持部材18の上面は略平坦に切削される。
図2A(i)に示すように、得られた支持部材18の上面に、支持部材18側から、Ni及びAuからなる積層膜を成膜し、フォトリソグラフィ及びエッチング工程によって、所定の形状にそれぞれパターニングする。これによって、第1電極16と接続されたワイヤ19aに接続される電極パターン19dと、第2電極17と接続されたワイヤ20aに接続される電極パターン20dとを形成する。
【0069】
その後、
図2A(j)に示すように、基板2の裏面側(半導体積層体11が配置しているのと反対側)からレーザ光を照射し、半導体積層体11及び離間半導体層12から基板2を分離する。ここでのレーザ光の照射は、例えば、YAGレーザを用いて、半導体層で分解反応を生じさせる程度の出力、例えば、1kW程度の出力で行った。
【0070】
続いて、
図2A(k)に示すように、基板2を分離した面に、蛍光体を含有する透光性部材21を形成する。
その後、
図2A(l)に示すように、支持部材18側から、ブレード24を用いて離間半導体層12を切断し、複数の発光素子10を個片化する。
【0071】
このような一連の工程によって、半導体積層体を1単位の発光素子ごとに分割する部位に第1半導体層を離間半導体層として配置することができる。これによって、レーザリフトオフ法を行う際に、レーザ光がこの部位を透過することができず、半導体層の分解及び隙間が十分に生じ、基板の分離を確実に行うことができる。
また、ブレードによる分割を行う際に、ブレードが、離間半導体層と、半導体積層体上を被覆する第2保護膜と分離した第1保護膜とを切断するため、半導体積層体へのクラックを効果的に防止することができる。その結果、発光素子を構成する領域の半導体積層体へのクラックを生じさせることを阻止することができる。
さらに、ブレードによる切断の際に、厚み方向の全てに樹脂が配置されず、離間半導体層が配置されるために、ブレードの押引に起因する樹脂のバリを効果的に防止することができる。
【0072】
<実施の形態2>
この実施の形態で製造される1単位の発光素子20は、
図3Aから
図3Cに示すように、隣接する離間半導体層12の間に、溝部26が2本配置し、言い換えると、第1溝部22の外側において、第1溝部22の周縁部を囲むように第2溝部26が配置し、第1離間半導体層12から離間する第2離間半導体層27が配置されている以外、発光素子10と同様の構成を有する。
第2溝部26の幅及び深さは、第1溝部22と同様である。
このような発光素子は、実質的に実施の形態1で説明した製造方法によって製造することができる。なお、半導体積層体11の形成する工程、および、第1半導体層3を露出させる工程(すなわち、
図3A(a)と
図3A(b)にあたる工程)については、実施の形態1と同様であるため、図示を省略する。
例えば、実施の形態1における
図2A(c)に代えて
図3A(c)に示すように、複数の第2半導体層4のうちの互いに隣接する第2半導体層4間であって、露出した第1半導体層3内に、基板2表面に至る第1溝部22を形成する。その後、隣接する第1溝部22の間に第2溝部26を2本形成する。これによって、第2溝部26に挟まれ、第1島状半導体層12から離間する第2島状半導体層27を形成することができる。
【0073】
その後、
図2A(d)に代えて
図3A(d)に示すように、SiO
2を成膜し、所望の形状にパターニングすることにより、第1離間半導体層12、第2離間半導体層27、第1溝部22、第2溝部26及び第1半導体層3の一部を被覆する第1保護膜28と、第1半導体層3上から第2半導体層4上の光反射性電極13上にわたり、光反射性電極13上で開口23を有する第2保護膜15を形成する。
【0074】
その後は、
図3A(e)〜3C(k)に示すように、実施の形態1と同様に支持部材を設け、基板を分離する。
続いて、
図3C(l)に示すように、支持部材18側から、ブレード24を用いて離間半導体層27を切断し、複数の発光素子を個片化する。この際、離間半導体層27は、離間半導体層12よりも半導体積層体11から離れているため、離間半導体層27を切断することで、半導体積層体11にクラック等のダメージを与える可能性をより低くすることができる。
【0075】
このような一連の工程によって、実施の形態1と同様の効果に加え、より信頼性の高い発光素子の製造を可能とすることができる。