特許第6387815号(P6387815)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 栗田工業株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6387815
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】ホルムアルデヒド含有排水の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20180903BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20180903BHJP
   C02F 1/70 20060101ALI20180903BHJP
   C02F 1/50 20060101ALI20180903BHJP
   C07C 47/058 20060101ALN20180903BHJP
【FI】
   C02F1/44 F
   B01D61/02
   C02F1/70 Z
   C02F1/50 510B
   C02F1/50 520P
   C02F1/50 550H
   C02F1/50 560E
   C02F1/50 531P
   C02F1/50 560Z
   C02F1/50 540B
   !C07C47/058 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-248050(P2014-248050)
(22)【出願日】2014年12月8日
(65)【公開番号】特開2016-107215(P2016-107215A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】亀田 英邦
(72)【発明者】
【氏名】育野 望
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/186260(WO,A1)
【文献】 特開2015−226885(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/146852(WO,A1)
【文献】 特開2013−233489(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103420471(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
B01D 61/02
C02F 1/50
C02F 1/70
C07C 47/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルムアルデヒド含有排水に亜硫酸塩を添加して反応槽で反応させた後、該反応槽からの反応液を逆浸透膜装置で膜分離して透過水を処理水として得る排水処理工程を備えるホルムアルデヒド含有排水の処理方法において、
該排水処理工程後の排水処理停止時に、前記亜硫酸塩の添加を停止し、前記逆浸透膜装置よりも上流側において系内の水に殺菌剤を添加し、該殺菌剤が添加された水を、前記反応槽を経た後逆浸透膜装置を経ることなく、前記亜硫酸塩添加位置よりも上流側へ返送して循環させる殺菌工程を行うことを特徴とするホルムアルデヒド含有排水の処理方法。
【請求項2】
請求項1において、前記殺菌剤を、前記亜硫酸塩添加位置よりも下流側であって、前記反応槽よりも上流側に添加することを特徴とするホルムアルデヒド含有排水の処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記排水処理工程後の排水処理停止時に、前記殺菌工程に先立ち、前記亜硫酸塩の添加を停止し、前記逆浸透膜装置の透過水を前記反応槽よりも上流側に返送し、該逆浸透膜装置の濃縮水を系外へ排出する亜硫酸塩押出工程を行うことを特徴とするホルムアルデヒド含有排水の処理方法。
【請求項4】
請求項3において、前記亜硫酸塩押出工程において、前記殺菌剤の添加を行うことを特徴とするホルムアルデヒド含有排水の処理方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記排水処理工程における前記反応槽の滞留時間が5分以上であることを特徴とするホルムアルデヒド含有排水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品又は飲料工場における容器の熱殺菌工程からの排水、例えば、レトルト排水やパストライザー排水、或いはこれらの混合排水などのホルムアルデヒドを含む排水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場や飲料工場の容器の熱殺菌工程からは、ホルムアルデヒドが微量に溶出された排水が排出されることがある。
【0003】
このようなホルムアルデヒド含有排水に対して、ホルムアルデヒドが確実に水道水質基準以下となるよう除去するための処理方法として、排水に亜硫酸塩を添加して、5分以上滞留させて亜硫酸塩とホルムアルデヒドとを反応させた後、反応物を逆浸透膜により分離除去する方法が提案されている(特許第5527473号公報)。この方法では、ホルムアルデヒド含有排水に亜硫酸塩を添加して、ヒドロキシメタンスルホネートを生成させる。ヒドロキシメタンスルホネートは水中で負に帯電しているので、逆浸透膜によって分離することが可能である。このヒドロキシメタンスルホネートの生成を十分に行うために、特許第5527473号公報では、5分以上の反応時間を確保する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5527473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、熱殺菌工程からの排水は連続的に排出されるものではないため、排水の処理装置は長時間停止することがあるが、この排水にはTOCが0.1〜2.0mg/L程度含まれており、さらに以下のように殺菌効果の低下が起こりやすいため、上記の特許第5527473号公報の方法では、装置の運転停止期間中に系内にスライムが発生する恐れがある。
(1) 亜硫酸塩を添加しても排水の亜硫酸塩濃度は80mg/Lを超えることはなく、亜硫酸塩による殺菌効果は得られない。
(2) 上流側で使用された殺菌剤(酸化性物質)が排水中に残留していた場合でも、亜硫酸塩により酸化性物質が還元処理され、殺菌効果が失われる。特に、亜硫酸塩添加点から逆浸透膜装置の間のユニットは亜硫酸塩による殺菌効果の低下でスライムが発生しやすい。例えば、亜硫酸塩添加点から逆浸透膜装置との間には、ホルムアルデヒドと亜硫酸塩とを反応させるための反応槽が設けられるが、この反応槽の滞留時間を5分以上とするため、槽内はスライムが発生し易い環境となる。
【0006】
本発明は、亜硫酸塩を添加してホルムアルデヒド含有排水を処理する方法において、装置の運転停止時に、系内にスライムが発生することを防止する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、排水処理工程後の排水処理停止時に、所定の殺菌工程を行う本発明に想到した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0008】
[1] ホルムアルデヒド含有排水に亜硫酸塩を添加して反応槽で反応させた後、該反応槽からの反応液を逆浸透膜装置で膜分離して透過水を処理水として得る排水処理工程を備えるホルムアルデヒド含有排水の処理方法において、該排水処理工程後の排水処理停止時に、前記亜硫酸塩の添加を停止し、前記逆浸透膜装置よりも上流側において、系内の水に殺菌剤を添加し、該殺菌剤が添加された水を、前記反応槽を経た後逆浸透膜装置を経ることなく、前記亜硫酸塩添加位置よりも上流側へ返送して循環させる殺菌工程を行うことを特徴とするホルムアルデヒド含有排水の処理方法。
【0009】
[2] [1]において、前記殺菌剤を、前記亜硫酸塩添加位置よりも下流側であって、前記反応槽よりも上流側に添加することを特徴とするホルムアルデヒド含有排水の処理方法。
【0010】
[3] [1]又は[2]において、前記排水処理工程後の排水処理停止時に、前記殺菌工程に先立ち、前記亜硫酸塩の添加を停止し、前記逆浸透膜装置の透過水を前記反応槽よりも上流側に返送し、該逆浸透膜装置の濃縮水を系外へ排出する亜硫酸塩押出工程を行うことを特徴とするホルムアルデヒド含有排水の処理方法。
【0011】
[4] [3]において、前記亜硫酸塩押出工程において、前記殺菌剤の添加を行うことを特徴とするホルムアルデヒド含有排水の処理方法。
【0012】
[5] [1]ないし[4]のいずれかにおいて、前記排水処理工程における前記反応槽の滞留時間が5分以上であることを特徴とするホルムアルデヒド含有排水の処理方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、装置の運転停止期間中における系内のスライム発生を効果的に防止して、食品又は飲料工場の容器の熱殺菌工程等から排出されるホルムアルデヒド含有排水のホルムアルデヒドを効率的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1a】実施の形態に係るホルムアルデヒド含有排水の処理方法の排水処理工程を示す系統図である。
図1b】実施の形態に係るホルムアルデヒド含有排水の処理方法の亜硫酸塩押出工程を示す系統図である。
図1c】実施の形態に係るホルムアルデヒド含有排水の処理方法の殺菌工程を示す系統図である。
図1d】実施の形態に係るホルムアルデヒド含有排水の処理方法の待機工程を示す系統図である。
図1e】実施の形態に係るホルムアルデヒド含有排水の処理方法の殺菌剤除去工程を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1a〜1eは、本発明のホルムアルデヒド含有排水の処理方法の実施に好適なホルムアルデヒド含有排水の処理装置の一例を示す系統図であり、それぞれ、図1aは排水処理工程、図1bは亜硫酸塩押出工程、図1cは殺菌工程、図1dは待機工程、図1eは殺菌剤除去工程における水の流れを示す。図1a〜1eにおいて、実線は水が流れている配管を、破線は水が流れていない配管を示す。
【0016】
図1a〜1eに示すホルムアルデヒド含有排水の処理装置は、原水槽1、精密濾過(MF)膜装置等の除濁膜装置2、反応槽3及び逆浸透(RO)膜装置4を備える。以下において、反応槽3の流出水を「RO給水」と称し、RO膜装置4の透過水を「RO処理水」と称し、濃縮水を「RO濃縮水」と称す場合がある。
【0017】
本発明において処理対象とするホルムアルデヒド含有排水としては、食品又は飲料工場における容器の熱殺菌工程からの排水、例えば、レトルト排水やパストライザー排水、或いはこれらの混合排水などが例示され、そのホルムアルデヒド濃度は、通常0.1〜5.0mg/L程度である。また、これらの排水には、TOCが0.1〜2.0mg/L程度含有され、pHは6.5〜7.5程度である。
【0018】
排水処理工程(通常運転時)においては、図1aに示すように、食品工場や飲料工場の容器の熱殺菌工程等から原水槽1に供給された原水(ホルムアルデヒド含有排水)は、除濁膜装置2で除濁処理された後、亜硫酸塩が添加され、反応槽3へ導入され、反応槽3内でホルムアルデヒドと亜硫酸塩とが反応する。このとき、原水中のホルムアルデヒドはごく微量であるため、反応効率を考慮して、反応槽3の滞留時間は好ましくは5分以上、例えば5〜15分程度とする。反応槽3の槽内液は排出されてRO給水としてRO膜装置4へ通水され、ホルムアルデヒドと亜硫酸塩との反応で生成したヒドロキシメタンスルホネートが除去されたRO処理水を得る。RO処理水の一部は原水槽1へ返送されて循環処理され、残部は系外へ排出される。RO濃縮水は系外へ排出され、必要に応じて、生物処理やO/H又はH/UVによる促進酸化処理等によって処理される。
【0019】
原水に添加する亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム又は重亜硫酸ナトリウムが好適である。
亜硫酸塩の添加量は原水中のホルムアルデヒド濃度との比([SO]/[HCHO]の重量比)が3以上、特に3〜7となる程度が好ましい。また、亜硫酸塩とホルムアルデヒドとの反応時のpHは3〜8程度であることが好ましく、RO膜装置4におけるpH条件は、7以上、特に7〜11、とりわけ8〜11とすることが好ましい。
【0020】
排水処理工程(通常運転)を終了し、排水処理を停止する際には、まず、図1bに示すように、原水の供給及びRO処理水の排出を停止すると共に亜硫酸塩の添加を停止し、RO処理水の循環運転は継続し、RO処理水の全量を原水槽1に循環して、除濁膜装置2及び反応槽3に通水して、RO膜装置4からRO濃縮水を系外排出することにより、系内の亜硫酸塩をRO濃縮水として系外へ排出する亜硫酸塩押出工程を行う。
なお、RO処理水の返送位置については、亜硫酸塩を多く含む反応槽3よりも上流側であれば特に限定されず、例えば一部を原水槽1へ残部を反応槽3に循環することや、全量を反応槽3に循環することもできる。
【0021】
この亜硫酸塩押出工程において、亜硫酸塩添加位置よりも下流側の、反応槽3の入口側で殺菌剤を添加し、反応槽3の出口における殺菌剤濃度を監視することにより、亜硫酸塩の系外押出終了時期を検知することができる。即ち、亜硫酸塩の押出が終了すると、添加した殺菌剤が亜硫酸塩により消費されなくなるため、反応槽3の出口における殺菌剤濃度が所定濃度以上、例えば、殺菌剤が次亜塩素酸又は次亜塩素酸塩の場合は0.1mg/LasCl以上検出されるまで亜硫酸塩押出工程を継続し、その後、次の殺菌工程に移行すればよい。
【0022】
このように、亜硫酸塩押出工程において殺菌剤の添加を行うことで、系内の亜硫酸塩を殺菌剤との反応で消費させて亜硫酸塩の押出しに要する時間を短縮すると共に、上記のように、亜硫酸塩押出工程の終了時期を容易に判定することができるようになる。
また、予め予備試験を行って亜硫酸塩の押出しが完了するまでの時間を推定しておき、タイマー制御で亜硫酸塩押出工程を終了するようにしてもよい。
【0023】
なお、この亜硫酸塩押出工程では、原水の通水を停止すると、系外へ排出されるRO濃縮水の分だけ原水槽1の水位が下がるため、必要に応じて、原水を原水槽1に補充するようにしてもよい。
【0024】
上記の亜硫酸塩押出工程の終了後は、図1cに示すように、反応槽3の入口側で殺菌剤を添加して、反応槽3の流出水(RO給水)の全量を原水槽1に循環する殺菌工程を行う。
殺菌剤が添加された水をRO膜装置4に導入すると殺菌剤によりRO膜が劣化する恐れがあるため、殺菌剤を含むRO給水はRO膜装置4に通水することなく全量を原水槽1に循環する。この殺菌工程は、殺菌剤の添加で系内の殺菌剤濃度が経時的に増加し、十分な殺菌剤濃度となるまで行われる。例えば、殺菌剤が次亜塩素酸又は次亜塩素酸塩の場合は、反応槽3の出口での次亜塩素酸濃度が1mg/LasClに達するまで殺菌工程を継続することが好ましい。また、この殺菌工程についても、亜硫酸塩押出工程と同様に、予め予備試験を行って、系内の殺菌剤濃度が所定濃度に達するまでの時間を推定しておき、タイマー制御で殺菌工程を終了してもよい。
【0025】
本発明において、殺菌剤としては、酸化性の殺菌剤が好ましく、例えば、次亜塩素酸や次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸塩などの塩素系殺菌剤が好適である。
【0026】
殺菌工程における殺菌剤の添加箇所は、系内で最もスライムが発生し易い環境となることから、亜硫酸塩の添加位置と反応槽3との間、即ち、亜硫酸塩の添加位置よりも下流側であって反応槽3よりも上流側が好ましい。亜硫酸塩押出工程でも殺菌剤を添加する場合は、殺菌剤の添加箇所は殺菌工程における殺菌剤の添加箇所と同じでよい。
【0027】
上記の殺菌工程終了後は、次の排水処理工程の開始まで、図1dの通り、すべての通水を停止して待機する。この待機工程における系内の殺菌剤濃度は、0.1〜10mg/L、特に1〜5mg/Lであることが好ましく、殺菌剤が次亜塩素酸又は次亜塩素酸塩の場合は、次亜塩素酸濃度0.1〜2mg/LasClであることが好ましい。
待機工程における殺菌剤濃度が上記上限より高くてもスライムの発生防止効果に差異は殆どなく、殺菌剤添加量が多くなり経済性を損ねる。待機工程における殺菌剤濃度が上記下限よりも低いと、装置の運転を停止した待機工程において、系内にスライムが発生する恐れがある。従って、待機工程において、系内の殺菌剤濃度が上記の下限を下回る場合は、再度図1cの殺菌工程を行うことが好ましい。この場合においても、予め予備試験を行って、系内の殺菌剤濃度が上記下限を下回る待機時間を推定しておき、タイマー制御で殺菌工程に移行してもよい。
【0028】
図1dの待機工程を終了し、図1aの排水処理工程(通常運転)を行う際には、まず、図1eに示すように、反応槽3の入口側で亜硫酸塩を添加すると共に、反応槽3の流出水(RO給水)の全量を原水槽1に循環する殺菌剤除去工程を行う。前述の通り、殺菌剤が残留する状態の水をRO膜装置4に導入すると殺菌剤によりRO膜が劣化する恐れがあるため、殺菌剤が残留するRO給水はRO膜装置4に通水することなく全量を原水槽1に循環する。その際、残留する殺菌剤を亜硫酸塩により還元して除去する。
【0029】
図1eの殺菌剤除去工程を終了した後は、原水を導入し、図1aの排水処理工程を再開する。このときの殺菌剤除去工程の終了についても、タイマー制御でもよく、殺菌剤濃度に基づく終了判定でもよい。
以降、上記の各工程を順次繰り返し行う。
【0030】
図1a〜1eは本発明のホルムアルデヒド含有排水の処理方法の実施に好適な装置の一例を示すものであって、何ら本発明は図1a〜1eに示す装置を用いるものに限定されるものではなく、除濁膜装置2を省略してもよく、また、RO膜装置の後段に更なる高度処理装置を有していてもよい。
【0031】
本発明のホルムアルデヒド含有排水の処理方法は、例えば、図1a〜1eに示すホルムアルデヒド含有排水の処理装置において、反応槽3又は反応槽3の出口配管に殺菌剤濃度の検出手段を設けておき、この殺菌剤濃度の検出手段と流路切替手段を連動させて、各工程間の移行を自動制御にて行うようにすることもできる。また、前述の通り、タイマーにて各工程間の移行を自動制御することもできる。
【実施例】
【0032】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0033】
[実施例1]
<通常運転(排水処理工程)>
レトルト排水と、殺菌剤として次亜塩素酸を添加したパストライザー排水との混合排水を想定して、ホルムアルデヒド0.5mg/L、次亜塩素酸1mg/LasClの模擬排水を調製した。この模擬排水のTOC濃度は1.0mg/L、pHは6.5であった。この模擬排水に対して、重亜硫酸ナトリウムを5mg/L添加し、反応槽で5分間滞留させ、その後、RO膜装置に通水してホルムアルデヒドを除去する連続処理を1時間行った。
【0034】
<通常運転停止(亜硫酸塩押出・殺菌・待機工程)>
上記の排水処理工程後、模擬排水の供給と重亜硫酸ナトリウムの添加を停止し、反応槽直前で殺菌剤として次亜塩素酸ナトリウムを添加し、反応槽からRO膜装置を経て得られたRO透過水の全量を重亜硫酸ナトリウム添加位置よりも上流側へ返送する循環通水を行った。反応槽出口で次亜塩素酸濃度が0.1mg/LasClに到達した時点で重亜硫酸ナトリウムの押出しが完了したと判断し(亜硫酸塩押出工程終了)、RO給水(反応槽流出水)の全量を循環ラインへの供給に切替えて連続通水を行った。循環通水を継続し、反応槽出口の次亜塩素酸濃度が1mg/LasClに到達した時点で殺菌性能が所定値に達したと判断し(殺菌工程終了)、すべての通水を停止すると共に次亜塩素酸ナトリウムの添加を停止した。以上の亜硫酸塩押出工程及び殺菌工程にはそれぞれ10分程度を要した。
【0035】
通常運転開始から3日経過後、系内の水をブローして殺菌剤を押出した後に通常運転を再開し、再開時の反応槽出口の菌数を培地を使用したコロニーカウントによる菌数分析により測定した。
上記処理を、更に3セット(合計4セット、計12日間)行い、それぞれ、通常運転再開時の反応槽出口の菌数を測定し、結果を表1に示した。なお、いずれの場合も、通所運転再開時の、殺菌剤押出し前の反応槽出口の殺菌剤濃度は0.1〜1.0mg/LasClであった。
【0036】
[比較例1]
実施例1と同様の通常運転を実施し、通常運転停止時には重亜硫酸ナトリウムの添加を停止し、殺菌剤を添加することなく通水を停止し、そのまま静置した。実施例1と同様に3日経過後、通常運転を再開し、再開時の反応槽出口の菌数を測定した。
上記処理を、更に3セット(合計4セット、計12日間)行い、それぞれ、通常運転再開時の反応槽出口の菌数を測定し、結果を表1に示した。
【0037】
【表1】
【0038】
表1に示すように、実施例1では経時による菌数増加は認められないが、比較例1では菌数増加が認められた。
【0039】
以上の結果から明らかなように、本発明の方法によれば、ホルムアルデヒド含有排水の処理装置におけるスライム発生を防止することができる。
一方、比較例1の方法では、原水中に酸化剤が含まれているにも拘わらず、装置の運転停止期間の増加に伴い系内の菌数が増加し、スライム発生によるスライム障害の問題がある。
【符号の説明】
【0040】
1 原水槽
2 除濁膜装置
3 反応槽
4 RO膜装置
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e