【文献】
S. T. Gulati(他4名),Two Point Bending of Thin Glass Substrate,SID Symposium Digest of Technical Papers,2011年 6月,第42巻,p.652-654
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シート物にクラックが形成されるときに発生する弾性波の有無を検出し、前記シート物にクラックが形成されるか否かを調べる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の曲げ試験方法。
前記第1の支持盤は、前記第1の支持盤の支持面と前記第2の支持盤の支持面とが平行となる第1の位置と、前記第1の支持盤の支持面および前記第2の支持盤の支持面とが斜めになる第2の位置との間で回動自在とされる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の曲げ試験方法。
前記シート物は、ガラスまたはセラミックスで形成される脆性シートと、該脆性シート上に樹脂を含む材料で形成される補強層とを有する複合シートである、請求項6に記載のシート物の製造方法。
前記シート物は、ガラスまたはセラミックスで形成される脆性シートと、該脆性シート上に形成される素子とを含む素子付き脆性シートである、請求項6に記載のシート物の製造方法。
連結部を介して前記第1の支持盤を、前記第1の支持盤の支持面と前記第2の支持盤の支持面とが平行となる第1の位置と、前記第1の支持盤の支持面および前記第2の支持盤の支持面とが斜めになる第2の位置との間で回動自在に支持する支持部を備える、請求項11〜13のいずれか1項に記載の曲げ試験装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成には、同一の又は対応する符号を付して、説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態による曲げ試験装置の試験の様子を示す図である。
図1において、実線で示す状態で、ベースに対して下側支持盤が図中左方向に移動されると、一点鎖線で示す状態になる。
図2は、
図1の曲げ試験装置の上面図である。
図3は、
図1の曲げ試験装置のシート物のセット時の状態を示す図である。
図1および
図3において、移動部の一部を破断して示す。
【0014】
曲げ試験装置10は、脆性材料を含むシート物を湾曲させる装置である。シート物としては、例えばガラスシート2が用いられる。湾曲させるガラスシート2にクラックが形成されるか否かを調べることで、ガラスシート2の耐久性がわかる。
【0015】
ガラスシート2は、画像表示パネルや太陽電池、薄膜2次電池などの電子デバイスの基板として用いられるものであってよく、ガラスシート2上に各種の素子が形成されてよい。
【0016】
ガラスシート2のガラスの種類は、多種多様であってよく、例えばソーダライムガラス、無アルカリガラスなどでよい。
【0017】
ガラスシート2の厚さは、例えば200μm以下である。ガラスシート2の厚さが200μm以下の場合、ガラスシート2を渦巻き状に巻回してガラスロールを作製することが可能である。ガラスシート2の厚さは、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。また、ガラスシート2の厚さは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは5μm以上である。
【0018】
ガラスシート2が矩形状の場合、長辺の長さは150mm〜3050mm、短辺の長さは100mm〜2850mmであってよい。
【0019】
曲げ試験装置10は、例えば
図1〜
図3に示すように、ベース12、第1の支持盤としての上側支持盤14、第2の支持盤としての下側支持盤16、移動部20、調整部30、検出部40、支持部50、および載置部60を備える。
【0020】
上側支持盤14は、ガラスシート2を支持する。上側支持盤14の支持面14aは、下向きの平坦な面であってよく、例えばテープなどでガラスシート2の一端部を固定する面であってよい。上側支持盤14における支持面14aとは反対側の面は、平坦であっても平坦でなくてもよい。
【0021】
上側支持盤14は、ガラスシート2の損傷を防止するため、ガラスシート2と接触する樹脂層と、金属製の本体とで構成されてよい。樹脂層は、金属製の本体に分離自在に取り付けられてよい。ガラスシート2の破片などが樹脂層に刺さった場合に、樹脂層が交換できる。
【0022】
下側支持盤16は、上側支持盤14と同様に、ガラスシート2を支持する。下側支持盤16の支持面16aは、上向きの平坦な面であってよく、例えばガラスシート2の他端部を載せる載置面であってよい。ガラスシート2の他端部は重力で下側支持盤16の支持面16aに押し付けられ、摩擦力で固定される。下側支持盤16の支持面16aには、ガラスシート2の位置ずれを防止するため、ガラスシート2の他端部と当接するストッパ17が設けられてよい。下側支持盤16における支持面16aとは反対側の面は、平坦であっても平坦でなくてもよい。
【0023】
下側支持盤16は、ガラスシート2の損傷を防止するため、ガラスシート2と接触する樹脂層と、金属製の本体とで構成されてよい。樹脂層は、金属製の本体に分離自在に取り付けられてよい。ガラスシート2の破片などが樹脂層に刺さった場合に、樹脂層が交換できる。
【0024】
移動部20は、互いに平行な上側支持盤14の支持面14aと下側支持盤16の支持面16aとの間隔Dを維持した状態で、上側支持盤14に対する下側支持盤16の位置を移動させる。移動部20は、上側支持盤14に対する下側支持盤16の位置を移動させるため、ベース12に対して下側支持盤16を平行に移動させる。
【0025】
尚、本実施形態の移動部20は、ベース12に対して下側支持盤16を平行に移動させるが、ベース12に対して上側支持盤14を平行に移動させてもよいし、上側支持盤14および下側支持盤16の両方を平行に移動させてもよい。いずれの場合でも、上側支持盤14に対する下側支持盤16の位置が移動する。
【0026】
移動部20は、例えば、昇降フレーム21、モータ22、ボールねじ機構23、スライダブロック24などで構成される。昇降フレーム21は、ベース12に対して移動自在とされる。モータ22は、例えば電動サーボモータであってよく、昇降フレーム21に取り付けられる。ボールねじ機構23は、モータ22の回転運動を直線運動に変換してスライダブロック24に伝える。スライダブロック24は、下側支持盤16と連結され、下側支持盤16と共にベース12に対して平行に移動する。モータ22は、マイクロコンピュータなどで構成されるコントローラによる制御下で、ボールねじ軸23aを回転させ、ボールねじナット23bを移動させる。ボールねじナット23bの移動に伴って、スライダブロック24および下側支持盤16がベース12に対して平行に移動する。
【0027】
尚、本実施形態のモータ22は回転モータであるが、リニアモータであってもよい。リニアモータは、固定子と可動子とで構成され、可動子に下側支持盤16が取り付けられる。固定子と可動子との間に作用する磁力によって、可動子が直線運動し、下側支持盤16が移動する。
【0028】
調整部30は、互いに平行な上側支持盤14の支持面14aと下側支持盤16の支持面16aとの間隔Dを調整する。調整部30は、間隔Dを調整するため、ベース12に対して下側支持盤16を昇降させてよい。
【0029】
尚、本実施形態の調整部30は、ベース12に対して下側支持盤16を昇降させるが、ベース12に対して上側支持盤14を昇降させてもよいし、下側支持盤16および上側支持盤14の両方を昇降させてもよい。いずれの場合でも、上側支持盤14と下側支持盤16との間隔Dが調整できる。
【0030】
調整部30は、例えばパンタグラフ式のジャッキで構成される。調整部30は、移動部20(詳細には昇降フレーム21)とベース12との間に配設され、ベース12に対して移動部20を昇降させる。移動部20の昇降に伴って、下側支持盤16が昇降し、下側支持盤16と上側支持盤14との間隔が調整できる。
【0031】
尚、本実施形態の調整部30は、パンタグラフ式のジャッキで構成され、手動で作動させられるが、移動部20と同様に構成されてよく、モータなどで構成されてよい。調整部のモータは、コントローラによる制御下で作動する。
【0032】
検出部40は、ガラスシート2にクラックが形成されるときに生じる弾性波(例えばAE(Acoustic Emission)波)を検出するセンサ(例えばAEセンサ)で構成される。上側支持盤14および下側支持盤16で支持されたままの状態でガラスシート2にクラックが形成されるか否かがわかる。ガラスシート2のクラックは、ガラスシート2に存在する欠陥(傷、付着物、内包物など)を起点として形成される。検出部40は、ガラスシート2を支持する下側支持盤16に取り付けられるが、上側支持盤14に取り付けられてもよい。
【0033】
尚、本実施形態の検出部40は、ガラスシート2で生じるクラックの弾性波を検出するセンサで構成されるが、ガラスシート2に光を照射する光源と、ガラスシート2からの反射光を受光する受光素子とで構成されてもよい。受光素子の受光量に基づいて、ガラスシート2でクラックが発生しているか否かが分かる。また、目視や顕微鏡などでクラックの有無を調べてもよい。
【0034】
支持部50は、ベース12に対して固定され、蝶番などの連結部52を介して、上側支持盤14を回動自在に支持する。上側支持盤14は、上側支持盤14の支持面14aが下側支持盤16の支持面16aに対して平行となる試験位置(第1の位置)と、上側支持盤14の支持面14aが下側支持盤16の支持面16aに対して斜めになるセット位置(第2の位置)との間で回動自在とされる。上側支持盤14が試験位置からセット位置に回動する間、上側支持盤14および下側支持盤16で支持されたガラスシート2の湾曲部の曲率半径が徐々に大きくなる。上側支持盤14をセット位置で停止させる回動ストッパが支持部50に取り付けられてもよい。尚、支持部50は、昇降フレーム21を上下に案内するガイドとして機能してもよい。
【0035】
載置部60は、ベース12に対して固定され、下側支持盤16よりも上方に配設される上側支持盤14を載せる。上側支持盤14は、試験位置(
図1の位置)にあるとき、載置部60の上端面に載せられる。上側支持盤14の姿勢が安定化するように、上側支持盤14は
図2に示すように複数の載置部60に載せられてよい。各載置部60にはボルト62の軸部62bを螺合するボルト孔が形成される。また、上側支持盤14にはボルト62の軸部62bを貫通させる貫通孔が形成される。ボルト62の頭部62aと各載置部60とで上側支持盤14が挟まれ、上側支持盤14の姿勢が安定化できる。
【0036】
次に、上記構成の曲げ試験装置10の動作(曲げ試験方法)について説明する。
【0037】
先ず、作業者は、ボルト62を外し、上側支持盤14を試験位置(
図1に示す位置)からセット位置(
図3に示す位置)に回動させ、セット位置で停止させる。次いで、作業者は、上側支持盤14と下側支持盤16とにそれぞれガラスシート2を支持させる。セット時のガラスシート2の湾曲部の曲率半径は、試験時のガラスシート2の湾曲部の曲率半径よりも大きい。ガラスシート2の湾曲部で生じる引張応力がセット時に最小となり、試験時に最大となるため、設定値以上の過度な引張応力がガラスシート2で生じることがない。セット時に、ガラスシート2の湾曲部で生じる引張応力は十分小さく、湾曲部にクラックが形成されることはほとんどない。
【0038】
次いで、作業者は、上側支持盤14をセット位置から試験位置に回動させ、載置部60に載せる。上側支持盤14をセット位置から試験位置に回動させる間、クラックが形成されるときに生じる弾性波の有無を検出部40が監視してよい。続いて、作業者は、載置部60とボルト62の頭部62aとで上側支持盤14を挟む。上側支持盤14の姿勢が安定化でき、上側支持盤14の支持面14aと、下側支持盤16の支持面16aとが平行に維持できる。
【0039】
次いで、作業者は、手動で調整部30を作動させて、互いに平行な上側支持盤14の支持面14aと下側支持盤16の支持面16aとの間の間隔Dを調整し、上側支持盤14と下側支持盤16との間で湾曲させるガラスシート2に設定値の引張応力を発生させる。
【0040】
ガラスシート2の湾曲部の頂端(
図1においてガラスシート2の右端)に発生する引張応力σは、下記の式(1)に基づいて算出可能である。
σ=A×E×t/(D−t)・・・(1)
上記式(1)中、Aは本試験に固有の定数(1.198)、Eはガラスシート2のヤング率、tはガラスシート2の厚さである。式(1)から明らかなように、間隔D(D>2×t)が狭くなるほど、引張応力σが大きくなる。
【0041】
本実施形態では、間隔Dを調整するため、ベース12に対して下側支持盤16を昇降させる。下側支持盤16は、上側支持盤14よりもベース12に近く、ベース12に対して平行な姿勢に維持しやすい。よって、上側支持盤14の支持面14aと、下側支持盤16の支持面16aとの平行度が良好に維持できる。
【0042】
次いで、作業者は、コントローラによる制御下で移動部20を作動させ、間隔Dを維持した状態で、上側支持盤14に対する下側支持盤16の位置を移動させる。具体的には、ベース12に対して下側支持盤16を図中左右方向に移動させる。下側支持盤16は、所定の回数だけ往復移動される。尚、下側支持盤16は、1回だけ往復されてもよいし、1回だけ左方向に移動されてもよいし、1回だけ右方向に移動されてもよい。いずれの場合でも、ガラスシート2の引張応力σの発生位置が移動できる。
【0043】
ところで、ガラスシート2のクラックの起点となる欠陥(傷、付着物、内包物など)は、ガラスシート2に点在している。
【0044】
本実施形態では、ガラスシート2の引張応力σの発生位置が移動でき、大面積の試験が可能であるため、ガラスシート2の耐久性が精度良く求められる。
【0045】
上側支持盤14に対する下側支持盤16の位置の所定方向への1回の移動量は、好ましくは100mm以上、より好ましくは200mm以上、さらに好ましくは300mm以上である。
【0046】
ガラスシート2の評価面積は、好ましくは100cm
2以上、より好ましくは300cm
2以上、さらに好ましくは900cm
2以上である。「評価面積」は、ガラスシート2における湾曲部の頂端(
図1においてガラスシート2の右端)の所定方向への1回の移動面積のことである。例えば、上側支持盤14に対する下側支持盤16の相対移動方向が矩形状のガラスシート2の短辺に対して垂直な場合、「評価面積」は、ガラスシート2の短辺の長さと、上記移動量との積である。
【0047】
上側支持盤14と下側支持盤16との間で湾曲させるガラスシート2にクラックが形成されるか否かは、クラックが形成されるときに生じる弾性波の有無を検出部40で検出することで調べられる。上側支持盤14および下側支持盤16で支持されたままの状態でガラスシート2にクラックが形成されるか否かが確認できる。
【0048】
ガラスシート2にクラックが生じない場合、作業者は、手動で調整部30を作動させて、互いに平行な上側支持盤14の支持面14aと下側支持盤16の支持面16aとの間の間隔Dを狭める。これにより、上側支持盤14と下側支持盤16との間で湾曲させるガラスシート2に前回よりも高い引張応力が発生する。
【0049】
次いで、作業者は、コントローラによる制御下で移動部20を作動させ、間隔Dを維持した状態で、上側支持盤14に対する下側支持盤16の位置を移動させ、上側支持盤14と下側支持盤16との間で湾曲させるガラスシート2にクラックが形成されるか否か調べる。ガラスシート2にクラックが形成されるまで、間隔Dを段階的に狭め、ガラスシート2にかける引張応力σを段階的に強めることで、ガラスシート2の破壊強度がわかる。ガラスシート2が割れたときの引張応力σが破壊強度として用いられる。
【0050】
ガラスシート2の曲げ試験前に、ガラスシート2の評価面(曲げ試験で引張応力が生じる面)とは反対側の面の少なくとも一部に飛散防止フィルムを貼り合わせておいてもよい。曲げ試験で割れた破片が飛び散らないので、次の測定への移行がはかどり、また割れ発生起点の解析も可能である。
【0051】
尚、本実施形態では、ガラスシート2の破壊強度を調べる目的で、間隔Dを段階的に狭めるが、ガラスシート2の破壊強度が閾値(例えば50MPa)よりも大きいことを確認する場合、閾値に対応する間隔Dで試験を行ってクラックが形成されたか否かを調べればよい。クラックが形成されない場合、さらに間隔Dを狭めなくてよい。クラックが形成されない場合、ガラスシート2の破壊強度は閾値値よりも大きいとみなすことができる。
【0052】
尚、本実施形態では、脆性材料を含むシート物として、ガラスシート2を用いたが、シート物の種類は特に限定されない。脆性材料としては、ガラスの他に、セラミックスなどが挙げられる。例えばシート物は、セラミックスシートでもよい。ガラスシートおよびセラミックスシートを脆性シートと総称する。
【0053】
また、シート物は、
図4に示すように、複合シート6でもよい。複合シート6は、ガラスシート2と、ガラスシート2上に樹脂を含む材料で形成される補強層4とを含む。尚、
図4の複合シート6は、ガラスシート2の片側にガラスシート2と結合する補強層4を有するが、ガラスシート2を挟んだ両側にそれぞれガラスシート2と結合する補強層を有してもよい。ガラスシート2を挟んで配設される2つの補強層は、同じ厚さを有しても異なる厚さを有してもよく、同じ物性(ヤング率、熱膨張係数など)を有しても異なる物性を有してもよい。また、
図4の複合シートは、脆性シートとして、ガラスシートを含むが、セラミックスシートを含んでもよい。
【0054】
ガラスシート2は、ガラスシート2と補強層4との結合力を高めるため、ガラスシート2における補強層4と結合する主面2aがシランカップリング剤などの表面処理剤で表面処理されたものでもよい。表面処理によるガラスシート2の厚みの変化は、表面処理前のガラスシート2の厚みに比べて十分に小さい(例えば10nm以下)。
【0055】
補強層4は、巻芯などのロールに沿って複合シート6を曲げ変形したときに、ガラスシート2と剥離しない程度の結合力を有し、ガラスシート2の傷が開くのを制限する。補強層4は、電子デバイスの製造工程の途中でガラスシート2から剥離されてもよく、電子デバイスの一部とならなくてもよい。
【0056】
補強層4は、ガラスシート2の平均破壊強度を高めたい部分を覆えばよく、ガラスシート2の一方の主面2aの少なくとも一部を覆う。補強層4は、好ましくは、ガラスシート2の一方の主面2a全体を覆う。尚、補強層4はガラスシート2の一方の主面2aからはみ出してもよい。
【0057】
補強層4は、ガラスシート2上に液状の樹脂組成物を塗布し固化させて形成されてもよいし、ガラスシート2に樹脂フィルムを貼り付けて形成されてもよい。後者の場合、補強層4は、樹脂フィルムおよび樹脂フィルムとガラスシートとを接着する接着層で構成されてもよい。尚、後者の場合、接着剤を用いずに、ガラスシートの表面処理(例えばシランカップリング処理)した面と、樹脂フィルムの表面処理(例えばコロナ処理)した面とを貼り合わせてもよい。表面処理による樹脂フィルムの厚みの変化は、表面処理前の樹脂フィルムの厚みに比べて十分に小さい(例えば10nm以下)。
【0058】
補強層4は、
図4では1つの層で構成されるが、材料の異なる複数の層で構成されてもよい。補強層4におけるガラスシート2と結合する主面とは反対側の面は、露出面であってよい。
【0059】
補強層4は、例えば樹脂のみで形成されてよい。尚、補強層4は、樹脂を含む材料で形成されていればよく、例えば樹脂およびフィラーで形成されてもよい。フィラーとしては、繊維状もしくは、板状、鱗片状、粒状、不定形状、破砕品など非繊維状の充填剤が挙げられ、具体的には例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属酸化物、カーボン粉末、黒鉛、カーボンフレーク、鱗片状カーボン、カーボンナノチューブなどが挙げられる。金属粉、金属フレーク、金属リボンの金属種の具体例としては銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫などが例示できる。ガラス繊維あるいは炭素繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、補強層4は、樹脂を含浸した織布、不織布などで構成されてもよい。
【0060】
補強層4の樹脂は、多種多様であってよく、例えば例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリイミド(PI)、エポキシ(EP)等が用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルホン(PES)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、アクリル(PMMA)、ウレタン(PU)等が用いられる。尚、樹脂膜は、光硬化性樹脂で形成されてもよく、共重合体、または混合物であってもよい。ロールツーロール法による電子デバイスの製造工程は加熱処理を伴う工程を含むことがあり、樹脂の耐熱温度(連続使用可能温度)は好ましくは100℃以上である。耐熱温度が100℃以上の樹脂としては、例えばポリイミド(PI)、エポキシ(EP)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルホン(PES)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル(PMMA)、ウレタン(PU)などが挙げられる。
【0061】
補強層4の平均厚みは、例えば100μm未満である。補強層4の平均厚みが100μm未満であれば、複合シート6のフレキシブル性が十分確保できる。また、補強層4の平均厚みが100μm未満であれば、樹脂とガラスとの熱膨張係数差による反りが抑制できる。補強層4の平均厚みは、好ましくは90μm以下、より好ましくは75μm以下である。
【0062】
また、補強層4の平均厚みは、例えば0.5μm以上である。補強層4の平均厚みが0.5μm以上であれば、補強層4の存在によってガラスシート2の傷が開くのを制限できる。補強層4の平均厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上である。
【0063】
さらに、シート物は、素子付きの脆性シート、最終製品である電子デバイスなどでもよい。素子付きの脆性シート、電子デバイスは、少なくとも脆性シートを含み、
図4に示す補強層4をさらに含んでもよい。
【0064】
電子デバイスとしては、画像表示パネル、太陽電池、薄膜二次電池、撮像素子(CCD、CMOSなど)、圧力センサ、加速度センサ、生体センサなどが挙げられる。画像表示パネルとしては、液晶パネル(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機ELパネル(OLED)、電子ペーパなどが挙げられる。
【0065】
図5は、本発明の一実施形態による液晶パネルを示す図である。液晶パネル70は、TFT基板72、CF基板74、および液晶層76などで構成される。TFT基板72は、ガラスシート2上にTFT素子(薄膜トランジスタ)73などをパターン形成してなる。CF基板74は、ガラスシート2上にカラーフィルター素子75をパターン形成してなる。TFT基板72およびCF基板74が特許請求の範囲に記載の素子付き脆性シートに相当する。
【0066】
図6は、本発明の一実施形態による有機ELパネル(OLED)を示す図である。有機ELパネル80は、例えばガラスシート2、透明電極82、有機層84、反射電極86、および封止板88などで構成される。有機層84は、少なくとも発光層を含み、必要に応じて正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層を含む。例えば、有機層84は、陽極側から、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、および電子注入層をこの順で含む。透明電極82、有機層84、および反射電極86などで、ボトムエミッション型の有機EL素子81が構成される。尚、有機EL素子は、トップエミッション型でもよい。
【0067】
図7は、本発明の一実施形態による太陽電池を示す図である。太陽電池90は、例えばガラスシート2、透明電極92、シリコン層94、反射電極96、および封止板98などで構成される。シリコン層は、例えば、陽極側から、p層(p型にドーピングされた層)、i層(光吸収層)、n層(n型にドーピングされた層)などで構成される。透明電極92、シリコン層94、および反射電極96などで、シリコン型の太陽電池素子91が構成される。尚、太陽電池素子は、化合物型、色素増感型、量子ドット型などでもよい。
【0068】
図8は、本発明の一実施形態による薄膜2次電池を示す図である。薄膜2次電池100は、例えばガラスシート2、透明電極102、電解質層104、集電層106、封止層108、および封止板109などで構成される。透明電極102、電解質層104、集電層106、および封止層108などで、薄膜2次電池素子101が構成される。尚、本実施形態の薄膜2次電池素子101は、リチウムイオン型であるが、ニッケル水素型、ポリマー型、セラミックス電解質型などでもよい。
【0069】
図9は、本発明の一実施形態による電子ペーパを示す図である。電子ペーパ110は、例えばガラスシート2、TFT層112、電気工学媒体(例えばマイクロカプセル)を含む層114、透明電極116、および前面板118で構成される。TFT層112、電気工学媒体の層114、および透明電極116などで、電子ペーパ素子111が構成される。電子ペーパ素子は、マイクロカプセル型、インプレーン型、ツイストボール型、粒子移動型、電子噴流型、ポリマーネットワーク型のいずれでもよい。
【0070】
ところで、複合シートや素子付き脆性シート、電子デバイスでは、ガラスシート2の少なくとも片側に薄膜が形成される。曲げ試験時に、ガラスシート2の薄膜形成面の湾曲部の頂端に発生する引張応力σは、下記の式(2)に基づいて算出可能である。
σ=A×E×t/(D´−t)・・・(2)
上記式(2)中、Aは本試験に固有の定数(1.198)、Eはガラスシート2のヤング率、tはガラスシート2の厚さ、D´は「D´=D−2×u」の式から算出される値である。uは薄膜の厚さを表す。薄膜の存在によって、ガラスシートの上端と下端の間隔が間隔Dよりも2×uだけ短くなる。尚、薄膜の存在によるガラスシート2の中立面の変位量は、ガラスシート2の厚さtの5%以下であり、引張応力σの計算結果にほとんど影響を与えないので、無視する。中立面とは、引張応力も圧縮応力も生じない面であって、薄膜が存在しない場合、ガラスシート2の板厚方向中心面である。中立面の変位量は、材料力学の一般的な式を用いて算出できる。ガラスシート2が割れたときの引張応力σが破壊強度として用いられる。
【0071】
次に、シート物の製造方法について説明する。シート物の製造方法は、シート物を製造するシート物製造工程と、シート物製造工程で製造したシート物を湾曲させる試験工程とを有する。
【0072】
シート物製造工程は、一般的な工程であってよい。例えばシート物がガラスシートの場合、シート物製造工程はフロート法、フュージョン法、リドロー法のいずれでもよい。フロート法では、浴槽内の溶融スズ上で溶融ガラスを流動させて帯板状に成形し、成形したガラスを徐冷した後、徐冷したガラスを所望のサイズに切断する。フュージョン法では、樋状部材から左右両側に溢れ出た溶融ガラスを、樋状部材の下端で合流させて帯板状に成形し、成形したガラスを徐冷した後、徐冷したガラスを所望のサイズに切断する。リドロー法では、ガラスシートを熱で軟化させたうえで所望の厚さに引き伸ばし、引き伸ばしたガラスシートを固化させる。
【0073】
試験工程は、上記曲げ試験装置10を用いて行われてよい。試験方法については既に説明した通りである。破壊強度が所定値を超えるシート物は良品と判定され、破壊強度が所定値以下のシート物は不良品と判定される。
【0074】
次に、ガラスシート2について説明する。
ガラスシート2は、好ましくは、
図1の曲げ試験装置10を用いて下記式(3)の条件で曲げ試験を行う場合にクラックが形成されないものである。下記式(3)は上記式(1)を変形したものである。
D=(A×E×t/σ)+t・・・(3)
D;上側支持盤14の支持面14aと下側支持盤16の支持面16aとの間隔(単位[mm])
A=1.198
E;ガラスシート2のヤング率(単位[MPa])
t;ガラスシート2の厚さ(単位[mm])
σ=50(単位[MPa])
つまり、ガラスシート2は、
図1の曲げ試験装置10を用いて曲げ試験を行う場合の破壊強度が50MPaよりも大きいものであってよい。破壊強度が50MPaよりも大きいガラスシート2は、巻芯に対して渦巻き状に巻き付けて保管した場合に、ほとんど割れない。
【0075】
尚、セラミックスシートも、
図1の曲げ試験装置10を用いて曲げ試験を行う場合の破壊強度が50MPaよりも大きいものであってよい。
【実施例】
【0076】
例1〜例4では、脆性シートとして矩形状のガラスシート(長辺300mm、短辺200mm)を用意した。ガラスシートは、フロート法で作製した。具体的には、溶融スズ上で溶融ガラスを流動させて帯板状に成形し、成形したガラスを徐冷した後、徐冷したガラスを所望のサイズに切断した。徐冷工程および切断工程において、ガラスを圧縮空気の空気圧で支持し、ガラスが固体物と触れないようにした。切断工程では、非接触切断法であるレーザ切断法を用いた。用意したガラスシートを
図1の曲げ試験装置で曲げ試験した。
【0077】
例5および例6では、脆性シートとして、例1〜例4と同様に作成したガラスシートを用意し、ガラスシートの評価面に予めサンドペーパで深さ10μm程度の傷を付けた。その後、用意したガラスシートを
図1の曲げ試験装置で曲げ試験した。曲げ試験では、ガラスシートの傷を付けた面に引張応力が生じるように複合シートを曲げた。
【0078】
例1〜例6の試験条件および試験結果を表1に示す。表1のt、E、D、σは、式(1)のt、E、D、σと同じ意味である。
【0079】
【表1】
表1から明らかなように、例1〜例4では、徐冷工程および切断工程において、ガラスを圧縮空気の空気圧で支持し、ガラスが固体物と触れないようにしたので、曲げ試験でクラックが形成されず、破壊強度が50MPaよりも大きいことを確認できた。また、例1〜例2のガラスシートと同様に作成した帯状のガラスシート(長辺30m、短辺300mm、厚さ50μm)を直径3インチ(直径76.2mm)の巻芯に渦巻き状に巻き付けて30日間保管したところ、クラックが発生しなかった。また、例3〜例4のガラスシートと同様に作成した帯状のガラスシート(長辺30m、短辺300mm、厚さ100μm)を直径6インチ(直径152.4mm)の巻芯に渦巻き状に巻き付けて30日間保管したところ、クラックが発生しなかった。
【0080】
また、表1から明らかなように、例5〜例6では、ガラスシートに傷がついているので、曲げ試験でクラックが形成され、破壊強度が50MPa以下であることを確認できた。また、例5のガラスシートと同様の帯状のガラスシート(長辺30m、短辺300mm、厚さ50μm)を直径3インチ(直径76.2mm)の巻芯に渦巻き状に巻き付けて30日間保管したところ、クラックが発生した。ガラスシートは、ガラスシートの傷を付けた面に引張応力が生じるように巻芯に巻き付けた。また、例6のガラスシートと同様の帯状のガラスシート(長辺30m、短辺300mm、厚さ100μm)を直径6インチ(直径152.4mm)の巻芯に渦巻き状に巻き付けて30日間保管したところ、クラックが発生した。ガラスシートは、ガラスシートの傷を付けた面に引張応力が生じるように巻芯に巻き付けた。
【0081】
以上、曲げ試験装置などの実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明は、特許請求の範囲に記載された趣旨の範囲で変形や改良が可能である。
【0082】
例えば、上記実施形態では、第1の支持盤としての上側支持盤14と、第2の支持盤としての下側支持盤16とが上下方向に間隔をおいて配設されるが、第1の支持盤と第2の支持盤とは水平方向に間隔をおいて配設されてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、
図1に示すように、ガラスシート2の一端部を上側支持盤14にテープで固定し、ガラスシート2の他端部を下側支持盤16に載置するが、ガラスシート2のセット方法は多種多様であってよい。
【0084】
図10は、変形例による曲げ試験装置のシート物のセット時の状態を示す図である。
図11において、曲げ試験装置の要部のみ図示する。
図11は、
図10の下側支持盤を上方から見た図である。例えば
図10に示すように、帯板状の上側固定板122と上側支持盤14との間にガラスシート2の一端部を挟み、上側固定板122と上側支持盤14とを上側固定ボルト124で締めて固定してよい。また、帯板状の下側固定板126と下側支持盤16との間にガラスシート2の他端部を挟み、下側固定板126と下側支持盤16とを下側固定ボルト128で締めて固定してよい。
【0085】
下側支持盤16には、
図11に示すように下側固定ボルト128の軸部128bを挿通させる長孔16bが形成されてよい。下側固定ボルト128を緩め、下側固定ボルト128を長孔16bの長手方向に移動させることで、下側支持盤16に対する下側固定板126の位置が調節可能である。種々のサイズのガラスシート2に対応することができる。
【0086】
下側固定ボルト128が下側固定板126から上方に突出しないように、下側固定ボルト128の頭部128aは下側支持盤16と接触し、下側固定ボルト128の軸部128bは下側支持盤16に形成されるボルト孔に螺合される。下側固定板126は、ガラスシート2の損傷を防止するため、ガラスシート2と接触する樹脂層と、金属製の本体とで構成されてよい。
【0087】
尚、下側支持盤16と同様に、上側支持盤14にも長孔が形成されてよい。また、下側固定ボルト128と同様に、上側固定ボルト124は上側固定板122から下方に突出しないように構成されてよい。
【0088】
本出願は、2013年4月15日に日本国特許庁に出願された特願2013−085220号に基づく優先権を主張するものであり、特願2013−085220号の全内容を本出願に援用する。