(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるヘッドマウントディスプレイ用光学系(以下、HMD用光学系と称する)LSを備えるヘッドマウントディスプレイDSPの概略構成を説明する図である。ヘッドマウントディスプレイDSPは、眼鏡型フレームFLと、光源ユニットSUと、投影ユニットPUとを備えて構成される。眼鏡型フレームFLは、光源ユニットSUおよび投影ユニットPUを保持して、光源ユニットSUおよび投影ユニットPUとともに使用者の頭部に装着される。光源ユニットSUは、外部入力装置(図示せず)から入力された画像情報に基づいて画像信号を生成し、この画像信号に応じた強度のレーザー光(以下、「画像光」ともいう)を投影ユニットPUへ射出する。
【0009】
投影ユニットPUは、光源ユニットSUから射出された画像光を2次元方向に走査し、使用者の眼Eへ投射する。これにより、ヘッドマウントディスプレイDSPの装着時に、使用者の眼Eの網膜には、画像光が2次元方向に走査されて画像が投影され、使用者は画像信号に応じた画像を視認することができる。また、投影ユニットPUには、使用者の眼Eと対向する位置にハーフミラーHMが設けられている。外光LaはハーフミラーHMを透過して使用者の眼Eに入射し、投影ユニットPUから射出された画像光LbはハーフミラーHMで反射して使用者の眼Eに入射する。これにより、使用者は外光Laによる外景に画像光Lbによる画像を重ねて視認することができる。
【0010】
投影ユニットPUは、HMD用光学系LSを備える。以下、このHMD用光学系LSについて具体的に説明する。
【0011】
図2および
図3は、HMD用光学系LSの構成を説明する図である。
図2はy−z平面での構成を示し、
図3はx−z平面での構成を示す。HMD用光学系LSは、上記画像光を射出する光源(不図示)側から順に、光偏向素子M1と、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、光反射素子M2と、を備える。
【0012】
光偏向素子M1は、上記光源からの光の進行方向を変化させる。なお、説明を容易にするため、
図2および
図3では、光偏向素子M1において光の進行方向が変化する様子を、複数種の入射角で絞り(この絞りを光偏向素子M1として示す)を通過する光で示している。
【0013】
第1レンズ群G1は、全体として正の屈折力を有し、光軸に対して回転対称に形成された2枚の回転対称レンズL11,L12と光軸に対して回転非対称に形成された1枚の自由曲面レンズL13とで構成され、光偏向素子M1を介して入射した光を集光する。
【0014】
第2レンズ群G2は、第1レンズ群G1により形成される中間像の結像位置(中間結像位置)近傍に配置された、正の屈折力を有する1枚のレンズL21により構成される。
【0015】
第3レンズ群G3は、光軸に対して回転対称に形成された1枚の回転対称レンズL31と光軸に対して回転非対称に形成された1枚の自由曲面レンズL32とで構成される。
【0016】
光反射素子M2は、光軸に対して回転非対称に形成された自由曲面形状であり、第3レンズ群G3を透過した光を反射させる反射面を有する。なお、本実施形態におけるヘッドマウントディスプレイDSPにおいて、光反射素子M2は
図1におけるハーフミラーHMに該当する。
【0017】
HMD用光学系LSでは、光偏向素子M1による光源からの光の進行方向の変化に応じて、光反射素子M2の反射面で反射して使用者の網膜に位置すると想定される描画面I上に達する光が描画面I上を高速で移動し、描画面I上に画像が描画されるように構成されている。
【0018】
HMD用光学系LSは、光源から射出されて光偏向素子M1により進行方向が変化され、第1レンズ群G1〜第3レンズ群G3を透過した光を、光反射素子M2で斜め方向に反射して当該光の光路を折り曲げることにより、全体を小型化することができる。また、HMD用光学系LSは、光軸に対して回転非対称な自由曲面レンズ(第1レンズ群G1の自由曲面レンズL13および第3レンズ群G3の自由曲面レンズL32)を設けたことにより、光反射素子M2で上記光源からの光を斜め方向に反射することで発生する回転非対称な収差を補正し、且つレンズ枚数を減らして全体を軽量化することができる。
【0019】
ここで、本実施形態の説明に用いる種々の定義について説明する。まず、HMD用光学系LSの各レンズおよび反射面における3次元直交座標系(ローカル座標系)について説明する。各レンズおよび反射面のローカル座標系を、例えば
図4に示すように、各レンズ面または反射面と光軸との交点を原点とした(x,y,z)座標系(右手系)とする。ローカル座標系のz軸は、光偏向素子M1と光反射素子M2との間の光軸方向の座標軸であるとする。z軸の正方向は、光偏向素子M1から光反射素子M2へ向かう方向とする。ローカル座標系のy軸は、光偏向素子M1と光反射素子M2との間の光軸および光反射素子M2と描画面Iとの間の光軸を通る断面においてz軸と垂直な座標軸であるとする。y軸の負方向は、光反射素子M2によって光軸が折り曲げられる側の方向であるとする。ローカル座標系のx軸は、z軸およびy軸と垂直な座標軸であるとする。x軸とz軸を含む面をx−z平面と称し、y軸とz軸を含む面をy−z平面と称し、x軸とy軸を含む面をx−y平面と称する。
【0020】
なお、HMD用光学系LSにおいて、光軸とは、各回転対称レンズの曲率中心を通り、光反射素子M2の反射面によって反射(反射の法則に従う)され、使用者の目の中心点を貫く1本の軸であるとする。
【0021】
また、光軸に対して回転対称な非球面に関しては、次式(1)で定義される。式(1)において、Zは光軸に平行な面のサグ量、cは曲率(中心は光軸上にある)、Kはコーニック係数、hは光軸からのこれに垂直な距離であり、A4〜A20はhの各冪級数項に係る係数である。
【数1】
【0022】
さらに、Xトロイダル面に関しては、以下の通り定義される。Xトロイダル面は、x軸方向の曲率Xcとy軸方向の曲率Xyとが異なる面である。この条件のもと、x−z平面内で次式(2)によって表現される面を考える。式(2)において、Zは、Xトロイダル面のx−z平面でのサグ量、Xcは曲率(中心は光軸上にある)、Kはコーニック係数、xは、x軸方向の距離であり、T4〜T10はxの各冪級数項に係る係数である。
【数2】
【0023】
Xトロイダル面は、ローカル座標系の原点からy軸方向の曲率半径Ryだけ移動した位置に配置された、x−z平面に平行な回転軸を中心に、式(2)によって表現される面を回転させてできる面である。
【0024】
さらに、光軸に対して回転非対称な自由曲面に関しては、次式(3)で定義される。式(3)は、xとyとの組み合わせからなる複数の項によって形成されるx−y多項式面(自由曲面)を表すものである。式(3)において、Zは光軸に平行な面のサグ量、cは曲率(中心は光軸上にある)、Kはコーニック定数、hは光軸上の原点においてこれと垂直に交わる平面内での原点からの距離、Cjはxy多項式の係数である。
【数3】
【0025】
なお、式(3)中のj,m,nの間には、次式(4)および(5)で表される関係が成立している。
【数4】
【数5】
【0026】
次に、本実施形態のHMD用光学系LSにおいて、満足することが望ましい条件について説明する。
【0027】
まず、本実施形態のHMD用光学系LSでは、第2レンズ群G2のレンズL21の少なくとも一方のレンズ面がx軸方向に非球面形状を有するXトロイダル面で構成されていることが望ましい。
【0028】
レンズL21の少なくとも一方のレンズ面がXトロイダル面で構成される場合、Xトロイダル面で構成されたレンズ面がx軸方向とy軸方向とで異なる面形状を持つ曲面を形成するので、光反射素子M2の反射面で発生するであろうx軸方向とy軸方向で異なる収差成分(アス成分)を効率的に補正することが可能となる。また、このレンズ面がx方向、y方向でそれぞれ異なる倍率を持てるので、描画面(像面)Iで発生する台形歪みのバランスを調整でき、自由曲面レンズL13,L32および光反射素子M2が有する自由曲面の負荷を減らすことが可能となる。レンズL21の両方のレンズ面がいずれもXトロイダル面で構成されていない場合、上記アス成分の補正が困難となり、さらに台形歪みのバランス調整が不可能となり、自由曲面レンズL13,L32および光反射素子M2が有する自由曲面への負担が増大するため好ましくない。
【0029】
さらに、レンズL21の光反射素子M2側のレンズ面が上記Xトロイダル面で構成され、x軸方向の曲率半径をRx、y軸方向の曲率半径をRyとしたとき、次式(6)を満足することがより望ましい。
【数6】
【0030】
レンズL21の光反射素子M2側のレンズ面がXトロイダル面で構成されることにより、各画角からの光線をレンズ面のより広い領域で受けることが可能となる。さらに、式(6)を満足することにより、このレンズ面をx軸方向、y軸方向で大きく異なる面形状とすることが可能となり、収差のアス成分の補正および台形歪みの調整をさらに細かく行うことができる。
【0031】
また、本実施形態のHMD用光学系LSでは、第2レンズ群G2のレンズL21が光反射素子M2側に凸のメニスカス形状を有し、且つレンズL21において第1レンズ群G1による中間結像位置に近い方のレンズ面が光源からの光を拡散させる拡散板としての機能を有し、次式(7)を満足することが望ましい。式(7)では、レンズL21における中間結像位置に近い方のレンズ面のy軸方向の曲率半径をRy1とし、当該レンズ面と反対側のレンズ面のy軸方向の曲率半径をRy2とする。
【数7】
【0032】
なお、拡散板としての機能を実現するために、レンズL21の中間結像位置に近い方のレンズ面には、例えば、レンズ面の表面一面にマイクロレンズアレイが配置される。
【0033】
レンズL21の中間結像位置に近い方のレンズ面が拡散板としての機能を有する場合、拡散後の光束径が広く取れるので瞳径が大きくなる。これにより、アイモーションエリア(眼が動いたときにケラレない領域)が大きく取れるため、ヘッドマウントディスプレイDSPをモバイル機器として使用する場合に好ましい。
【0034】
また、光を旨く拡散するためには、第1レンズ群G1からの主光線がレンズL21のレンズ面に対してできるだけ垂直に入射することが好ましい。この点を鑑みると、式(7)を満足し、レンズL21を光反射素子M2側に凸のメニスカス形状とすることで、できる限り他のレンズ群に負荷をかけずに光を拡散することが可能となる。式(7)の上限を上回った場合、レンズL21の中間結像位置に近い方のレンズ面の曲率が大きくなりすぎ、第1レンズ群G1による中間像の結像面(一次結像面)が大きな曲率を持たなければ光を旨く拡散できなくなってしまい、第1レンズ群G1に大きな負荷が掛かるので好ましくない。一方、式(7)の下限を下回った場合、レンズL21の中間結像位置に近い方のレンズ面の曲率が小さくなりすぎ、第1レンズ群G1による一次結像面と拡散面(レンズL21の中間結像位置に近い方のレンズ面)とのマッチングが大変困難となってしまう。
【0035】
また、本実施形態のHMD用光学系LSでは、次式(8)および(9)を定義したとき、次式(10)を満足することが望ましい。なお、式(8)では、第3レンズ群G3の自由曲面レンズL32における回転対称レンズL31側のレンズ面(以下、前側レンズ面と称する)の自由曲面形状を式(3)で表した場合における、x2乗項の係数をfC4、x4乗項の係数をfC11、y2乗項の係数をfC6、y4乗項の係数をfC15とする。式(9)では、自由曲面レンズL32における前側レンズ面と反対側のレンズ面(以下、後側レンズ面と称する)の自由曲面形状を式(3)で表した場合における、x2乗項の係数をrC4、x4乗項の係数をrC11、y2乗項の係数をrC6、y4乗項の係数をrC15とする。
【数8】
【数9】
【数10】
【0036】
これらの式(8)〜(10)の意義について、以下説明する。まず、曲率半径がrである球面のサグ量Sagは、球面の中心点を含む軸をz軸(光軸)としたxyz右手系直交座標を用いて次式(11)により表される。なお、サグ量とは、光軸上を0としたときの、光軸に垂直な方向のある距離(高さ)hに対する、面位置の光軸方向の変化量である。
【数11】
【0037】
このとき、式(11)中のhは、次式(12)により決定される。
【数12】
【0038】
因みに式(11)は、式全体を有理化しルートを分母に移すことで、コーニック面の式(13)に対してK(コーニック定数)=0(球面を表す数値)を代入した場合の形に変形することが可能である。コーニック面の式(13)は、非球面形状などを表す際に第1項として大変よく用いられている。なお、式(13)において、c=1/rである。
【数13】
【0039】
ここで、式(11)に関して、hを変数に見立ててテイラー展開(正確にはマクローリン展開)を行い、h4乗の項までで近似すると、球面のサグ量Z(=Sag(h))は、次式(14)により表される。
【数14】
【0040】
この式(14)に式(12)を代入して、xとyの式に書き直すと、球面のサグ量Sag(x,y)は、次式(15)により表される。
【数15】
【0041】
一方、自由曲面のサグ量Zに関しては、上述した式(3)から曲率c=0としてコーニック面の式(13)を省略すると、次式(16)により表される。
【数16】
【0042】
ここで、式(15)と式(16)とを比較すると、自由曲面を表す式(16)の中に球面と関係のある項(すなわち式(15)に含まれる項に対応する項)が含まれていることがわかる。式(16)の中で、球面と関係のある項を4次の項まで書き出すと、式(17)のように表される。
【数17】
【0043】
そして、上記式(15)と式(17)とについて、それぞれ、対応する項の係数が仮に同一であるとすると、次式(18)〜(22)のように表される。
【数18】
【数19】
【数20】
【数21】
【数22】
【0044】
さらに、式(18)〜(22)をrについて整理すると、次式(23)〜(27)のように表される。
【数23】
【数24】
【数25】
【数26】
【数27】
【0045】
このとき、式(23)〜式(27)が厳密に成立する場合、すなわち、以下の式(28)を満足するように各自由曲面係数C
4〜C
15が決定されている場合、式(17)は、4次までの近似として球面を表す式となる。
【数28】
【0046】
さらにこの場合、式(17)を完全に含む式(16)によって示される自由曲面は、式(28)が満足されない場合と比較して、特に光軸に近い領域において回転対称な球面の性質を強く有していることになり、自由曲面としての自由度に欠けていることになる。この式(28)が満足された状態を基準とし、低次の自由曲面係数C
4〜C
15の値を、式(23)〜式(27)を用いて調べることで、自由曲面の非回転対称性の大まかな優劣を簡単に見積もることが可能となる。
【0047】
そこで、本実施形態では、上記の考えを応用し、低次の自由曲面係数を調べることで、その自由曲面の大まかな有効性を簡単に調べることとする。本実施形態では、上記の考えをさらに簡略化し、特に重要であると考えられるx−z平面内とy−z平面内とでそれぞれ個別に球面からのズレを求め、それらのズレ量の差を求めることで、その自由曲面の有効性の評価を行うことにする。すなわち、x−z平面内とy−z平面内とでこのズレ量の差が大きい方が自由曲面としての自由度に優れていると判断する。その簡単な説明を以下に述べる。
【0048】
まず、自由曲面のサグ量Zを表す式(16)から球面と関係のある自由曲面の項を4次まで抜き出してx−z平面内とy−z平面内とに分けると、次式(29)および(30)のように表される。
【数29】
【数30】
【0049】
また、球面のサグ量Zを表す式(15)に関してx−z平面内とy−z平面内とに分けると、次式(31)および(32)のように表される。
【数31】
【数32】
【0050】
前述同様、式(29)〜(32)の対応する項の係数同士を等式で結び、さらにそれをrについて整理すると、次式(33)〜(36)のように表される。
【数33】
【数34】
【数35】
【数36】
【0051】
ここで、式(33)と(34)との差をΔxとし、式(35)と(36)との差をΔyとすると、ΔxおよびΔyは、次式(37)および(38)により表される。
【数37】
【数38】
【0052】
式(37)と(38)とは、それぞれx−z平面内とy−z平面内での球面に関連する項の係数における球面からのズレ具合を表しており、これらΔxとΔyの値が「0」の場合は球面を示すことから、これらΔxとΔyの値の絶対値が大きい程、非球面の度合が大きいことになる。
【0053】
さらに、式(37)と(38)との絶対値の差Δは、次式(39)により表される。
【数39】
【0054】
式(39)で示される値Δは、x−z平面内での非球面形状と、y−z平面内での非球面形状とのズレの量、すなわち、回転非対称な非球面の度合を表す量となり、これは、簡略的に面の自由曲面の度合を表す量と考えることができる。したがって、この値Δが大きいほど、面が自由曲面、すなわち回転非対称な非球面としての性質を強く持っていると評価できる。逆にΔ=0であった場合は、x−z平面内での非球面形状とy−z平面内での非球面形状とが共に等しいことになり、面が回転対称面としての性質を強く有すると考えられる。
【0055】
以上の点を鑑みると、上記式(8)によって表されるfΔは、第3レンズ群G3の自由曲面レンズL32の前側レンズ面についての自由曲面の度合(式(39)におけるΔ)を示している。一方、上記式(9)によって表されるrΔは、自由曲面レンズL32の後側レンズ面についての自由曲面の度合(式(39)におけるΔ)を示している。自由曲面レンズL32において、上記式(10)を満足する、すなわち前側レンズ面よりも後側レンズ面の方が自由曲面の度合が大きいことにより、後側レンズ面が自由曲面としての性質を強く持ち、前側レンズ面は回転対称な面としての性質が強く残る形状を有することになる。
【0056】
さらに、本実施形態のHMD用光学系LSでは、上記式(10)を満足すると共に、次式(40)および(41)を満足することが望ましい。なお、式(40)では、第3レンズ群G3の自由曲面レンズL32の前側レンズ面の自由曲面形状を式(3)で表した場合における、x2乗項の係数をfC4、x4乗項の係数をfC11、y2乗項の係数をfC6、y4乗項の係数をfC15とする。また、第3レンズ群G3の回転対称レンズL31における自由曲面レンズL32側のレンズ面の曲率半径をRrotとする。また、式(41)では、回転対称レンズL31と自由曲面レンズL32との間の光軸上の距離をDとする。
【数40】
【数41】
【0057】
これら式(40)および(41)の意義について以下説明する。前述と同様に、球面のサグ量を表す式(15)と自由曲面のサグ量を表す式(16)とを比較し、2次までの項の係数が仮に同一であるとすると、曲率半径rと自由曲面係数C4、C6との間には、式(33)と式(35)とで表される関係が成立する。自由曲面レンズL32の前側レンズ面の自由曲面形状について、式(33)および式(35)が成立すると仮定した場合、自由曲面レンズL32の前側レンズ面の曲率半径Frotの2乗は、次式(42)で表すことができる。なお、式(42)は、Frot・Frotに式(33)で表されるrと式(35)で表されるrとを一つずつ代入した式である。
【数42】
【0058】
この場合、式(40)は、(Frot)
2/(Rrot)
2の値の範囲を規定する式となる。自由曲面レンズL32の前側レンズ面におけるx2乗の項の係数fC4とy2乗の項の係数fC6とが等しく、さらにこれらから求めた曲率半径Frotが回転対称レンズL31における自由曲面レンズL32側のレンズ面の曲率半径Rrotと等しい場合、(Frot)
2/(Rrot)
2の値は「1」となる。(Frot)
2/(Rrot)
2の値が「1」に近いほど、自由曲面レンズL32の前側レンズ面の特に光軸近辺での形状が、回転対称レンズL31における自由曲面レンズL32側のレンズ面の形状に近い形を有していることになる。
【0059】
ゆえに式(40)を満足することで、回転対称レンズL31における自由曲面レンズL32側のレンズ面と自由曲面レンズL32の前側レンズ面とが比較的近い形状を有することになる。さらに式(41)を満足することで、回転対称レンズL31と自由曲面レンズL32との光軸上の距離Dが比較的短くなる。したがって、式(40)および(41)を満足することで、回転対称レンズL31における自由曲面レンズL32側のレンズ面と自由曲面レンズL32の前側レンズ面とで色収差を補正することが可能となり、第3レンズ群G3全体である程度の色収差補正能力を持たせることが可能となる。
【0060】
また式(40)および(41)に加え、上述した式(10)を満足することで、自由曲面レンズL32において、後側レンズ面が自由曲面としての性質を強く持ち、前側レンズ面が回転対称な面としての性質が強く残る形状を有することになる。したがって、自由曲面レンズL32では、前側レンズ面と回転対称レンズL31とで色収差と回転対称な収差の補正を主に行い、後側レンズ面で光反射素子M2で発生するであろう回転非対称な収差の補正を主に行うといったように、前側レンズ面と後側レンズ面とで役割分担が可能となるので大変好ましい。すなわち、自由曲面レンズL32の前後面形状のバランスを最適化でき、回転対称な収差成分と回転非対称な収差成分とを効率的に補正することが可能となる。上記式(40)、(41)および(10)を満たさない場合、収差の補正が困難となり好ましくない。特に、回転非対称な収差の補正が困難となってしまう。
【0061】
また、本実施形態のHMD用光学系LSでは、第1レンズ群G1の自由曲面レンズL13の自由曲面形状を式(3)で表した場合における、x2乗項の係数をC4、y2乗項の係数をC6としたとき、自由曲面レンズL13の前後両方のレンズ面において、次式(43)を満足することが望ましい。
【数43】
【0062】
第1レンズ群G1内の自由曲面レンズL13は、光反射素子M2で発生する台形歪みの補正を助けるために設けられている。そのため、台形歪みを補正することで発生する回転非対称な収差を自由曲面レンズL13自身で補正し、第1レンズ群G1の一次結像面には良好な像を結ばせる必要がある。式(43)は、この点を満足させるためのものであり、x2乗項の係数C4とy2乗項の係数C6とで正負の符号が異なるという条件を規定したものである。上述した式(28)からもわかるように、2乗項の係数のみに着目すると、x2乗項の係数C4とy2乗項の係数C6とが近い値となるほど回転対称な球面の性質が強く、反対にx2乗項の係数C4とy2乗項の係数C6とが異なる値となるほど自由曲面としての性質が強いことが考えられる。式(43)を満足しない場合、自由曲面レンズL13のレンズ面が自由曲面としての性質不足となり、台形歪みと光線収差を同時に補正することが困難となるので好ましくない。
【0063】
また、本実施形態のHMD用光学系LSでは、第1レンズ群G1全体の焦点距離をf1とし、光偏向素子M1と光反射素子M2との間の光軸上の距離をLとしたとき、次式(44)を満足することが望ましい。
【数44】
【0064】
式(44)は、HMD用光学系LSの大きさに関する条件式である。式(44)の上限を上回った場合、HMD用光学系LSの全長に対して第1レンズ群G1の屈折力が強くなりすぎて、HMD用光学系LSの有効径が大きくなってしまい、HMD用光学系LSの小型化が困難となるので好ましくない。また、収差の補正も困難となってしまう。一方、式(44)の下限を下回った場合、HMD用光学系LSの全長に対して第1レンズ群G1の焦点距離f1が長くなりすぎ、他群とのパワーバランスが大きく崩れ、収差補正が困難となるので好ましくない。
【0065】
また、本実施形態のHMD用光学系LSでは、第1レンズ群G1の2枚の回転対称レンズL11,L12におけるアッベ数νdの差をΔνd1としたとき、次式(45)を満足することが望ましい。
【数45】
【0066】
さらに、第3レンズ群G3の回転対称レンズL31と自由曲面レンズL32におけるアッベ数νdの差をΔνd2としたとき、次式(46)を満足することが望ましい。
【数46】
【0067】
なお、各レンズ群において、アッベ数νdは、d線に対する屈折率をNd、F線に対する屈折率をNF、C線に対する屈折率をNCとしたとき、次式(47)で定義されるものとする。
【数47】
【0068】
式(45)および(46)は、第1レンズ群G1および第3レンズ群G3の各々において、色収差を効率的に補正しながら、その他の収差の発生を極力抑えるためのものである。式(45)および(46)の上限を上回る場合、負レンズ側に高屈折率の材料を使わざるを得なくなり、像面の平坦性が損なわれやすくなる。また、高屈折率の材料は比重が大きい傾向にあるため、HDM用光学系LS全体の重量化を招きやすいので好ましくない。一方、式(45)および(46)の下限を下回る場合、色収差補正能力が乏しくなるので好ましくない。
【0069】
また、本実施形態のHMD用光学系LSでは、光反射素子M2において、反射面に到達する光線のうち描画面Iに描画される画像の4隅に対応する画角の主光線の到達位置4点を結んで形成される図形が台形形状であり、この台形形状の底辺のうちy軸の正方向側を上底とし、負方向側を下底とし、上底の長さをL
upとし、下底の長さをL
undとしたとき、次式(48)を満足することが望ましい。
【数48】
【0070】
上述したアイモーションエリアの関係上、描画面Iに描画される画像の各画角の主光線は、使用者の目(およそ角膜)の位置で一点に交わっていることが理想であり、現実的に使用可能なヘッドマウントディスプレイDSPは、およそこの条件(最悪でも直径4mm以内に収まっている)を満たしていることが必要とされる。式(48)は、この条件と描画面(像面)Iでの台形歪みの補正を同時に満足するためのものである。式(48)を満たさない場合、台形歪みの補正と、各主光線の目の位置での集光を同時に満たすことが不可能となるので、大変好ましくない。
【0071】
また、本実施形態のHMD用光学系LSでは、光反射素子M2が、光を透過する材質で構成され、第3レンズ群G3からの光を反射する反射面と反対側の面から入射した光を透過させることが可能に構成されることが望ましい。そして、HMD用光学系LSは、光反射素子M2を透過して描画面I(網膜)上に達した光により結像される像(外景)と重なって、描画面Iに画像が描画されるように構成されることが望ましい。これにより、使用者は、ヘッドマウントディスプレイDSPの装着時に、光反射素子M2を透過した光による像(外景)に上記画像を重ねて視認することができる。
【0072】
−実施例−
次に、本実施形態に係る実施例について説明する。
図2および
図3は、本実施例に係るHMD用光学系LSの構成を説明する図である。本実施例に係るHMD用光学系LSは、光源(不図示)側から順に、光偏向素子M1と、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、光反射素子M2と、を備える。
【0073】
本実施例において光偏向素子M1は、光源からの光(例えば、レーザー光やLED光等の略平行光)の進行方向を連続的に素早く切り替えることを可能とする可動部を備えるものであり、例えばガルバノミラーが用いられる。ガルバノミラーは、システム部の駆動回路から入力される駆動電圧に応じた量だけ回動して反射角(すなわち光源からの光の進行方向)が変化するようになっている。この機構により、使用者の網膜上で結像点を2次元方向に高速で走査することで、使用者の網膜上に画像を形成することを可能としている。
【0074】
本実施例において第1レンズ群G1は、光源側から順に、負の屈折力を有する回転対称レンズL11と、正の屈折力を有する回転対称レンズL12と、光偏向素子M1より入射する光を減光するための、光軸に対しy−z平面内で−5度傾けて配置された減光フィルターFと、回転非対称な自由曲面レンズL3の計4枚で構成される。
【0075】
本実施例において第2レンズ群G2は、第1レンズ群G1による中間結像位置近傍に配置され、y−z平面において正の屈折力を有し、光偏向素子M1側のレンズ面が球面であり、光反射素子M2側のレンズ面がXトロイダル面であるレンズL21により構成される。レンズL21は、y−z平面において光反射素子M2側に凸のメニスカス形状を有する。また、レンズL21の光偏向素子M1側のレンズ面には、一面にマイクロレンズアレイが配置されており、全体としてレンズL21は、光源からの光を拡散させて各画角における光線の有効径を広げるための、拡散板としての役割も担っている。なお、レンズL21の光偏向素子M1側のレンズ面が、中間結像位置に近い方のレンズ面となっている。
【0076】
本実施例において第3レンズ群G3は、光源側から順に、負の屈折力を有する回転対称レンズL31と、回転非対称な自由曲面レンズL32とで構成される。
【0077】
本実施例において光反射素子M2は、光軸に対しy−z平面内で25度傾けて配置され、第3レンズ群を通過してきた光を反射させ、使用者の目へ導くための回転非対称な自由曲面形状を持つ反射面を有する。
【0078】
また本実施例において光反射素子M2は、光を透過させる透明な材質で構成され、第3レンズ群G3を透過した光を反射させるための反射面の他に、この反射面と反対側に透過面を有し、この透過面から入射した光を透過させ、使用者の目に入射することができるように構成されている、所謂ハーフミラーである。光反射素子M2の透過面は、反射面と同様に光軸に対して回転非対称な自由曲面形状を有している。
【0079】
さらに、使用者の目の中心が光反射素子M2による反射後の光軸上に配置されることを前提としており、本実施例においては、この目を焦点距離17mmの無収差レンズに置き換えて設計を行った。
【0080】
以下の表1に、本実施例に係るHMD用光学系LSの数値データを示す。なお、表1において、面番号は光源側からの各光学面の番号を示し、Ryはy軸方向の曲率半径であり、Rxはx軸方向の曲率半径であり、Dは面間隔(光学面から次の光学面までの光軸上の距離)を示し、Ndはd線に対する屈折率を示す。
<表1>
面番号 Surface Type Ry Rx D Nd
s0 物体面 無限 ← 無限
s1 絞り面 無限 ← 8.00000
s2 非球面 29.22450 ← 3.60000 1.61420
s3 非球面 6.82988 ← 0.50000
s4 非球面 9.52201 ← 4.64956 1.53113
s5 非球面 -11.55702 ← 0.50000
s6 フィルター面 無限 ← 0.10038 1.51680
s7 フィルター面 無限 ← 4.24326
s8 自由曲面 12.66031 ← 3.60000 1.53113
s9 自由曲面 14.97916 ← 11.83267
s10 球面 -100.00000 ← 1.65000 1.49080
s11 Xトロイダル面 -43.68784 9.40251 6.87359
s12 非球面 -61.51808 ← 8.44181 1.61420
s13 非球面 16.61681 ← 0.80873
s14 自由曲面 無限 ← 11.20000 1.49080
s15 自由曲面 無限 ← 24.00000
refl_s16 自由曲面 無限 ← -45.00000 反射面
s17 像面(描画面) 無限 ← -
【0081】
上記表1に示したように、面s2〜s5、s12、s13は、それぞれ非球面である。以下の表2に、これらの非球面における非球面係数の値をそれぞれ示す。
<表2>
(非球面データ1)
係数 s2 s3 s4 s5
Ry 29.22450 6.82988 9.52201 -11.55702
K 0 0 0 0
A4 -5.48866E-04 -1.31081E-03 -4.43283E-04 -3.85018E-05
A6 3.40408E-07 -7.12036E-06 -7.34656E-06 1.60928E-06
A8 2.09680E-07 1.71298E-08 -7.12654E-08 4.68098E-10
A10 -5.06819E-09 1.16043E-09 9.65326E-10 -2.04229E-10
A12 -4.11852E-10 -4.81902E-11 4.74224E-11 -1.58292E-11
(非球面データ2)
係数 s12 s13
Ry -61.51808 16.61681
K 0 0
A4 -4.30748E-05 -5.47315E-05
A6 9.98383E-07 -3.49955E-07
A8 -4.83228E-09 -7.40161E-10
A10 2.04352E-11 3.24607E-12
A12 -3.54814E-13 -1.83364E-15
A14 -2.96196E-15 4.31121E-17
A16 -3.47413E-17 2.65999E-19
A18 9.15311E-20 -4.45791E-22
A20 5.08369E-21 -5.50057E-24
【0082】
また、上記表1に示したように、面s11はXトロイダル面である。以下の表3に、このXトロイダル面の非球面係数の値を示す。
<表3>
係数 s11
Rx 9.40251
Ry -43.68784
K 0
T4 -2.87802E-03
T6 -2.95453E-06
T8 1.41755E-05
T10 -5.66466E-07
【0083】
また、上記表1に示したように、面s8、s9、s14〜s16は回転非対称な自由曲面である。なお、面s16は反射面である。以下の表4に、これらの自由曲面のxy多項式の係数の値を示す。
【0084】
<表4>
(自由曲面データ1)
係数 S8 s9
c(曲率) 12.66030735 14.97916071
C1(K) 0.00000E+00 2.37722E+00
C3(y) -1.22412E-02 -2.04538E-02
C4(x
2) -4.79507E-02 -7.68109E-02
C5(xy) 0.00000E+00 0.00000E+00
C6(y
2) 2.39493E-02 3.02232E-02
C7(x
3) 0.00000E+00 0.00000E+00
C8(x
2y) 4.90430E-03 6.46110E-03
C9(xy
2) 0.00000E+00 0.00000E+00
C10(y
3) -6.67628E-04 -1.51376E-03
C11(x
4) 1.37514E-03 1.43214E-03
C12(x
3y) 0.00000E+00 0.00000E+00
C13(x
2y
2) 2.24698E-04 1.92804E-04
C14(xy
3) 0.00000E+00 0.00000E+00
C15(y
4) -1.29326E-04 -2.83018E-04
C16(x
5) 0.00000E+00 0.00000E+00
C17(x
4y) -1.43304E-04 -8.14209E-05
C18(x
3y
2) 0.00000E+00 0.00000E+00
C19(x
2y
3) -3.37239E-05 3.24514E-07
C20(xy
4) 0.00000E+00 0.00000E+00
C21(y
5) 1.74109E-05 4.75077E-05
C22(x
6) -1.16028E-05 1.57429E-05
C23(x
5y) 0.00000E+00 0.00000E+00
C24(x
4y
2) 1.10855E-06 -1.89768E-06
C25(x
3y
3) 0.00000E+00 0.00000E+00
C26(x
2y
4) 6.91621E-06 1.13882E-05
C27(xy
5) 0.00000E+00 0.00000E+00
C28(y
6) 4.00487E-06 8.58738E-06
C29(x
7) 0.00000E+00 0.00000E+00
C30(x
6y) -4.56638E-07 -5.37659E-06
C31(x
5y
2) 0.00000E+00 0.00000E+00
C32(x
4y
3) 3.85806E-07 -2.62833E-06
C33(x
3y
4) 0.00000E+00 0.00000E+00
C34(x
2y
5) -2.97916E-07 -1.25760E-06
C35(xy
6) 0.00000E+00 0.00000E+00
C36(y
7) -1.21878E-07 -4.54383E-07
C37(x
8) -2.75664E-07 -1.06467E-06
C38(x
7y) 0.00000E+00 0.00000E+00
C39(x
6y
2) 2.25008E-07 5.94529E-07
C40(x
5y
3) 0.00000E+00 0.00000E+00
C41(x
4y
4) -2.01362E-08 8.40335E-08
C42(x
3y
5) 0.00000E+00 0.00000E+00
C43(x
2y
6) -5.90430E-08 -2.97768E-07
C44(xy
7) 0.00000E+00 0.00000E+00
C45(y
8) -1.47995E-09 -4.77896E-09
C46(x
9) 0.00000E+00 0.00000E+00
C47(x
8y) 0.00000E+00 0.00000E+00
C48(x
7y
2) 0.00000E+00 0.00000E+00
C49(x
6y
3) 0.00000E+00 0.00000E+00
C50(x
5y
4) 0.00000E+00 0.00000E+00
C51(x
4y
5) 0.00000E+00 0.00000E+00
C52(x
3y
6) 0.00000E+00 0.00000E+00
C53(x
2y
7) 0.00000E+00 0.00000E+00
C54(xy
8) 0.00000E+00 0.00000E+00
C55(y
9) 0.00000E+00 0.00000E+00
C56(x
10) 0.00000E+00 0.00000E+00
C57(x
9y) 0.00000E+00 0.00000E+00
C58(x
8y
2) 0.00000E+00 0.00000E+00
C59(x
7y
3) 0.00000E+00 0.00000E+00
C60(x
6y
4) 0.00000E+00 0.00000E+00
C61(x
5y
5) 0.00000E+00 0.00000E+00
C62(x
4y
6) 0.00000E+00 0.00000E+00
C63(x
3y
7) 0.00000E+00 0.00000E+00
C64(x
2y
8) 0.00000E+00 0.00000E+00
C65(xy
9) 0.00000E+00 0.00000E+00
C66(y
10) 0.00000E+00 0.00000E+00
(自由曲面データ2)
係数 s14 s15 s16(反射面)
c(曲率) 無限 無限 無限
C1(K) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C3(y) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C4(x
2) 3.38664E-02 -4.54002E-02 -6.15738E-04
C5(xy) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C6(y
2) 3.36434E-02 -3.37166E-02 -2.35402E-03
C7(x
3) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C8(x
2y) -5.58385E-04 -1.02305E-04 -3.08743E-05
C9(xy
2) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C10(y
3) 4.21932E-04 2.72980E-04 -1.99563E-05
C11(x
4) -2.29481E-05 8.02671E-05 -7.08460E-05
C12(x
3y) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C13(x
2y
2) -1.54430E-04 -1.02753E-05 -2.29566E-05
C14(xy
3) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C15(y
4) -7.25766E-06 1.19793E-05 -7.12111E-06
C16(x
5) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C17(x
4y) -9.70680E-06 -2.93798E-06 3.43618E-06
C18(x
3y
2) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C19(x
2y
3) 6.45706E-06 -2.01459E-06 2.76982E-06
C20(xy
4) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C21(y
5) -3.46183E-06 5.65196E-08 7.40762E-07
C22(x
6) -8.46018E-07 -4.79025E-07 1.01475E-06
C23(x
5y) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C24(x
4y
2) -5.86228E-07 9.29455E-08 -8.17737E-08
C25(x
3y
3) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C26(x
2y
4) -1.58046E-07 2.95336E-08 1.56655E-07
C27(xy
5) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C28(y
6) -5.03212E-07 2.58381E-07 6.16791E-09
C29(x
7) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C30(x
6y) 7.24202E-08 -2.70062E-08 1.32694E-08
C31(x
5y
2) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C32(x
4y
3) 7.23348E-08 3.00835E-08 -1.15413E-07
C33(x
3y
4) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C34(x
2y
5) -9.93621E-09 3.10091E-08 -4.52776E-08
C35(xy
6) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C36(y
7) 1.00627E-08 -9.06014E-09 -9.31799E-09
C37(x
8) 4.29560E-09 4.28135E-10 -1.44084E-09
C38(x
7y) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C39(x
6y
2) 1.51442E-09 -1.78074E-08 2.31693E-08
C40(x
5y
3) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C41(x
4y
4) 3.56272E-09 1.92810E-09 1.09225E-09
C42(x
3y
5) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C43(x
2y
6) 4.03754E-09 2.28979E-09 -1.13335E-09
C44(xy
7) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C45(y
8) 2.72814E-10 -2.48776E-09 5.58966E-10
C46(x
9) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C47(x
8y) -1.95707E-09 -1.70257E-09 -1.46366E-09
C48(x
7y
2) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C49(x
6y
3) -6.44138E-11 -1.19312E-10 1.23046E-09
C50(x
5y
4) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C51(x
4y
5) -1.36849E-11 4.47695E-10 6.19476E-10
C52(x
3y
6) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C53(x
2y
7) 1.24875E-10 -2.30615E-11 3.21687E-10
C54(xy
8) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C55(y
9) -6.91918E-11 -8.94855E-12 4.96633E-11
C56(x
10) 1.70282E-10 7.42339E-11 -1.23571E-10
C57(x
9y) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C58(x
8y
2) 2.24934E-12 2.37601E-10 -3.04716E-10
C59(x
7y
3) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C60(x
6y
4) 3.37067E-12 -7.07739E-12 -1.54154E-10
C61(x
5y
5) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C62(x
4y
6) -2.27418E-11 5.91122E-12 1.03088E-11
C63(x
3y
7) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C64(x
2y
8) 2.82575E-13 -1.18488E-11 -9.79045E-12
C65(xy
9) 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
C66(y
10) -5.02534E-12 -8.25320E-13 -4.54704E-12
【0085】
また、以下に、本実施形態において満たすことが望ましい条件である上記式(6)〜(10)、(40)、(41)、(43)〜(46)、(48)に対応する値を示す。
式(6) 9.40250 / (-43.68784) = -0.21522 -0.5 < -0.21522 < 0
式(7) -|-43.68784| / (-100) = 0.43688 0 < 0.43688 < 1
【数49】
【数50】
式(10) |-8.33084| < |-14.07578|
式(40) 1 / (4*0.03387*0.03364*16.61681*16.61681) = 0.79465
0.5 < 0.79465 < 1.2
式(41) D = 0.80873 0 < 0.80873 < 1
式(43) s8面:(-0.04795) / 0.02395 = -2.00209 < 0
S9面:(-0.07681) / 0.03022 = -2.54169 < 0
式(44) L=90.0000 f1=20.6758 L/f1=4.3529
式(45) L11:νd = (1.61420 - 1) / (1.63140 - 1.60740) = 25.59167
L12:νd = (1.53113 - 1) / (1.53783 - 1.52830) = 55.73243
L12νd - L11νd = 30.14076 8 < 30.14076 < 40
式(46) L31:νd = (1.61420 - 1) / (1.63140 - 1.60740) = 25.59167
L32:νd = (1.49080 - 1) / (1.49600 - 1.48830) = 63.74026
L32νd - L31νd = 38.14859 8 < 38.14859 < 40
式(48) Lup / Lund = 8.1015 / 7.01762 = 1.15445 1 < 1.15445 < 1.5
【0086】
以上のように、本実施例に係るHMD用光学系LSは、全ての条件式(6)、(7)、(10)、(40)、(41)、(43)〜(46)、(48)を満足するので、上述した効果を得ることができる。
【0087】
図5〜7に、本実施例に係るHMD用光学系LSの横収差図を示す。
図8に、本実施例に係るHMD用光学系LSの歪曲収差図を示す。以上の
図5〜
図8によれば、本実施例に係るHMD用光学系LSでは、台形歪みが良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。
【0088】
以上説明した実施の形態によれば、次の効果が得られる。
(1)HMD用光学系LSは、光源側から順に、光偏向素子M1と、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、光反射素子M2と、を備える。第1レンズ群G1は、複数の回転対称レンズL11,L12と1枚の自由曲面レンズL13とで構成される。第2レンズ群G2は、第1レンズ群G1による中間結像位置近傍に配置されたレンズL21により構成される。第3レンズ群G3は、1枚の回転対称レンズL31と1枚の自由曲面レンズL32とで構成される。このようにHMD用光学系LSは、光源からの光を光反射素子M2で斜め方向に反射するので、全体を小型化できる。また、HMD用光学系LSは、自由曲面レンズL13,L32および光反射素子M2の自由曲面によって、光源からの光を斜め方向に反射することで発生する回転非対称な収差および台形歪みを補正でき、且つレンズ枚数を減らして全体を軽量化することができる。したがって、以上の構成により、HMD用光学系LSは、小型軽量で優れた光学性能を得ることができる。
【0089】
(2)HMD用光学系LSは、第2レンズ群G2を構成するレンズL21の光反射素子M2側のレンズ面がXトロイダル面で構成され、式(6)の条件を満足するようにした。このようにレンズL21のレンズ面をXトロイダル面で構成したことで、光反射素子M2の斜め反射により発生するx軸方向とy軸方向で異なる収差成分(アス成分)を効率的に補正することができる。また、光反射素子M2側をXトロイダル面とすることで各画角からの光線をレンズ面のより広い領域で受けることができる。さらに、式(6)を満足することで、収差のアス成分の補正および台形歪みの調整をさらに細かく行うことができる。
【0090】
(3)HMD用光学系LSは、第2レンズ群G2を構成するレンズL21は光反射素子側に凸のメニスカス形状を有し、中間結像位置に近い方のレンズ面が拡散板としての機能を有し、式(7)の条件を満足するようにした。これにより、他のレンズ群に負荷をかけずに光を拡散することができ、拡散後の光束径を広くしてアイモーションエリアを大きく取ることができる。
【0091】
(4)HMD用光学系LSは、第3レンズ群G3の回転対称レンズL31および自由曲面レンズL32において、式(10)、(40)および(41)の条件を満足するようにした。これにより、自由曲面レンズL32の前側レンズ面と回転対称レンズL31とで色収差と回転対称な収差の補正を主に行い、自由曲面レンズL32の後側レンズ面で光反射素子M2で発生するであろう回転非対称な収差の補正を主に行うことができ、回転対称な収差成分と回転非対称な収差成分とを効率的に補正することができる。
【0092】
(5)HMD用光学系LSは、第1レンズ群G1の自由曲面レンズL13の前後両方のレンズ面において式(43)の条件を満足するようにした。これにより、自由曲面レンズL13が光反射素子M2で発生する台形歪みを補正すると共に、この補正で発生する回転非対称な収差を自由曲面レンズL13自身で補正し、第1レンズ群G1の一次結像面に良好な像を結ばせることができる。
【0093】
(6)HMD用光学系LSは、第1レンズ群G1全体の焦点距離f1と、光偏向素子M1と光反射素子M2との間の光軸上の距離Lとが式(44)の条件を満足するようにした。これにより、HMD用光学系LSを小型化できると共に収差補正を適切に行うことができる。
【0094】
(7)HMD用光学系LSは、第1レンズ群G1の2枚の回転対称レンズL11,L12のアッベ数の差νd1が式(45)の条件を満足し、第3レンズ群G3の回転対称レンズL31および自由曲面レンズL32のアッベ数の差νd2が式(46)の条件を満足するようにした。これにより、色収差を効率的に補正しながら、その他の収差の発生を極力抑えることができる。
【0095】
(8)HMD用光学系LSは、光反射素子M2において、反射面に到達する光線のうち描画面Iに描画される画像の4隅に対応する画角の主光線の到達位置4点を結んで形成される図形が台形形状であり、この台形形状が式(48)の条件を満足するようにした。これにより、描画面Iに描画される画像の各画角の主光線を使用者の目の位置で一点に集光できると共に、描画面Iでの台形歪みを補正することができる。
【0096】
−変形例−
上述した実施例では、第1レンズ群G1に2枚の回転対称レンズL11,L12が設けられている例について述べたが、第1レンズ群G1に3枚以上の回転対称レンズが設けられていてもよい。この場合は、第1レンズ群G1における複数の回転対称レンズのアッベ数νdの差の最大値をΔνd1とし、上記式(45)を満足することが望ましい。
【0097】
上述した実施例では、第2レンズ群G2レンズL21の光反射素子M2側のレンズ面がXトロイダル面で構成されている例について説明したが、レンズL21の光偏向素子M1側のレンズ面がXトロイダル面で構成されていてもよい。
【0098】
上述した実施形態では、光反射素子M2を透過した光による像(外景)に画像を重ねて視認できるように、光反射素子M2がハーフミラーである例について説明した。しかしながら、光反射素子M2が非透過面であるヘッドマウントディスプレイに本発明を適用するようにしてもよい。
【0099】
以上の説明はあくまで一例であり、上述した構成に何ら限定されるものではなく、種々の態様を変更してもよい。例えば、各レンズ群を構成するレンズの曲率半径、面間隔、硝材等を適宜変更してもよい。
【0100】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特許出願2013年第207295号(2013年10月2日出願)