(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する、25℃における動粘度が10〜100,000mm
2/sであるオルガノポリシロキサン
(B)一般式(1)
【化1】
(式中、R
1は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、aは5〜100の整数である)
で表される片末端3官能の加水分解性メチルポリシロキサン:成分(A)100質量部に対して50〜130質量部、
(C)平均粒径が7μm以上16μm以下であるアルミニウム粉末、
(D)平均粒径が2μm以下である酸化亜鉛粉末、
〔成分(C)と成分(D)の配合量は、質量比{成分(C)+成分(D)}/{成分(A)+成分(B)}が8.0〜14.0となる量であって、成分(C)と成分(D)の質量比{成分(C)/成分(D)}が3.0〜6.0となる量〕
(E)一般式(2)
【化2】
(式中、R
2は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、bは5〜100の整数である)
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(F)成分(E)以外の、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
〔成分(E)と成分(F)の配合量は、{成分(E)と成分(F)のケイ素原子に結合した水素原子の合計個数}/{成分(A)のアルケニル基の個数}の値が0.5〜1.5になる量であって、{成分(E)中のケイ素原子に結合した水素原子の個数}/{成分(F)中のケイ素原子に結合した水素原子の個数}の比が0.6〜5.0になる量〕、及び
(G)白金系ヒドロシリル化反応触媒:成分(A)に対し質量基準で白金原子として0.1〜500ppm
を含む熱伝導性シリコーン組成物であって、該組成物を2倍量のトルエンと混合し分散させた液を篩がけした際に、250メッシュ(63μm目開き)での残渣が5ppm以下であり、440メッシュ(32μm目開き)での残渣が200ppm以上である熱伝導性シリコーン組成物。
更に、(H)アセチレン化合物、窒素化合物、有機りん化合物、オキシム化合物及び有機クロロ化合物より選択される反応制御剤:成分(A)に対して質量基準で0.1〜5%となる量、
を含む請求項1記載の熱伝導性シリコーン組成物。
請求項1又は2に記載の熱伝導性シリコーン組成物を、室温で0.15MPaで15分間押圧し、150℃で90分間加熱硬化して得られる硬化物の厚みが室温で35〜60μmである請求項3記載の放熱材料。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年では半導体チップ自身が薄く、また大きくなってきたこと、基板がセラミック基板から有機樹脂基板に変更されつつあることなどによって、実装された放熱グリースにかかる応力が大きくなってきている。このような状況では、放熱グリースの実装時の厚みを薄くすると、−55℃〜170℃などの厳しいヒートサイクル試験下では熱履歴によるチップの歪みに放熱グリースが追従できなくなって剥離してしまったり、最悪の場合チップの破損につながる可能性があるなど、製品としての信頼性に劣るという問題が生じる。
従って、本発明の目的は、−55℃〜170℃のヒートサイクル試験のような厳しい信頼性試験条件下においても放熱グリースの剥離が発生せず、低い熱抵抗を維持できる熱伝導性シリコーン組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
斯かる実情に鑑み本発明者は鋭意研究を行った結果、下記成分(A)〜(G)を含有する熱伝導性シリコーン組成物において、適切な粒度分布のフィラーを用い、組成物の篩残渣を管理することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明は、次の熱伝導性シリコーン組成物及びこれを用いた放熱材料を提供するものである。
<1>
(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する、25℃における動粘度が10〜100,000mm
2/sであるオルガノポリシロキサン、
(B)一般式(1)
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R
1は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、aは5〜100の整数である)
で表される片末端3官能の加水分解性メチルポリシロキサン:成分(A)100質量部に対して50〜130質量部、
(C)平均粒径が7μm以上16μm以下であるアルミニウム粉末、
(D)平均粒径が2μm以下である酸化亜鉛粉末、
〔成分(C)と成分(D)の配合量は、質量比{成分(C)+成分(D)}/{成分(A)+成分(B)}が8.0〜14.0となる量であって、成分(C)と成分(D)の質量比{成分(C)/成分(D)}が3.0〜6.0となる量〕
(E)一般式(2)
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R
2は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、bは5〜100の整数である)
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(F)成分(E)以外の、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
〔成分(E)と成分(F)の配合量は、{成分(E)と成分(F)のケイ素原子に結合した水素原子の合計個数}/{成分(A)のアルケニル基の個数}の値が0.5〜1.5になる量であって、{成分(E)中のケイ素原子に結合した水素原子の個数}/{成分(F)中のケイ素原子に結合した水素原子の個数}の比が0.6〜5.0になる量〕、及び
(G)白金系ヒドロシリル化反応触媒:成分(A)に対し質量基準で白金原子として0.1〜500ppm
を含む熱伝導性シリコーン組成物であって、該組成物を2倍量のトルエンと混合し分散させた液を篩がけした際に、250メッシュ(63μm目開き)での残渣が5ppm以下であり、440メッシュ(32μm目開き)での残渣が200ppm以上である熱伝導性シリコーン組成物。
【0012】
<2>
更に、(H)アセチレン化合物、窒素化合物、有機りん化合物、オキシム化合物及び有機クロロ化合物より選択される反応制御剤:成分(A)に対して質量基準で0.1〜5%となる量、
を含む<1>記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【0013】
<3>
<1>又は<2>に記載の熱伝導性シリコーン組成物からなる放熱材料。
<4>
<1>又は<2>に記載の熱伝導性シリコーン組成物を、室温で0.15MPaで15分間押圧し、150℃で90分間加熱硬化して得られる硬化物の厚みが室温で35〜60μmである請求項3記載の放熱材料。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、−55℃〜170℃のヒートサイクル試験のような厳しい信頼性試験条件下においても放熱グリースの剥離が発生せず信頼性に優れ、かつ低い熱抵抗を維持できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明を詳細に説明する。
[成分(A)]
成分(A)のオルガノポリシロキサンは、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するもので、直鎖状でも分岐状でもよく、またこれら2種以上の異なる粘度の混合物でもよい。
【0016】
ケイ素原子に結合するアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基等炭素原子数2〜6のアルケニル基が例示されるが、合成のし易さ、コストの面からビニル基が好ましい。ケイ素原子に結合するアルケニル基は、オルガノポリシロキサンの分子鎖の末端、途中の何れに存在してもよいが、少なくとも1つは末端に存在することが好ましい。
【0017】
ケイ素原子に結合する残余の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基等のアルキル基;フェニル基等のアリール基;2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基等のアラルキル基が例示され、更にクロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン原子置換炭化水素基も例示される。これらのうち、合成のし易さ、コストの面からメチル基が好ましい。
【0018】
成分(A)の25℃における動粘度は、10〜100,000mm
2/sの範囲、好ましくは100〜50,000mm
2/sである。なお、この動粘度はウベローデ型オストワルド粘度計で測定した値である。
成分(A)は、本発明の熱伝導性シリコーン組成物中、2〜10質量%含有することが好ましく、3〜8質量%含有することがより好ましい。
【0019】
[成分(B)]
成分(B)は下記一般式(1)で表される片末端3官能の加水分解性メチルポリシロキサンである。
【0021】
一般式(1)中、R
1は、炭素原子数1〜6のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。また、一般式(1)中、aは5より小さいと組成物のオイルブリードがひどくなり信頼性が悪くなるおそれがある一方、100より大きいと充填材(成分(C)及び成分(D))との濡れ性が十分でなくなることがあるため、5〜100の整数、好ましくは10〜60の整数である。
【0022】
成分(B)の片末端3官能の加水分解性メチルポリシロキサンの配合量は、成分(A)100質量部に対して50質量部より少ないと十分な濡れ性を発揮できなくなる一方、130質量部より多いと組成物のオイルブリードが激しくなり信頼性が悪くなるため、50〜130質量部、好ましくは60〜120質量部である。
【0023】
[成分(C)]
成分(C)のアルミニウム粉末の形状は特に制限されるものではなく、例えば球状、不定形状等が挙げられ、事前に表面処理したものであってもよい。アルミニウム粉末の平均粒径は、7μmより小さいと組成物の厚みが薄くなりすぎてしまい信頼性に劣る一方、16μmよりも大きいと組成物の厚みが厚くなりすぎて熱抵抗が高くなり性能が低下してしまうおそれがあるため、7μm〜16μmの範囲であり、好ましくは7μm〜14μmの範囲である。
なお、本発明において、平均粒径は日機装(株)製マイクロトラックMT3300EXにより測定した体積基準の体積平均径である。
【0024】
[成分(D)]
成分(D)の酸化亜鉛粉末の形状は特に制限されるものでなく、例えば球状、不定形状等が挙げられる。酸化亜鉛粉末の平均粒径は、2μmより大きいと組成物への充填性が悪くなり組成物の粘度が上昇し伸展性の乏しいものとなってしまうおそれがあるため、2μmである。また、この平均粒径が0.1μmより小さいと、得られる組成物への充填性が悪くなり組成物の粘度が上昇してしまうことがあるので、0.1〜2μmの範囲がよい。
【0025】
成分(C)と成分(D)の配合量は、質量比{成分(C)と成分(D)の合計した配合量}/{成分(A)と成分(B)の合計した配合量}の値が8より小さいと組成物の熱伝導率が低くなり性能が低下する一方、14より大きいと組成物の粘度が上昇し伸展性が乏しくなるため、8.0〜14.0の範囲、好ましくは8.0〜13.5の範囲となる配合量がよい。
また、成分(C)と成分(D)の質量比{成分(C)/成分(D)}が3.0より小さいと組成物の厚みが薄くなりすぎてしまい信頼性に劣る一方、6.0よりも大きいと組成物の厚みが厚くなりすぎて熱抵抗が上昇するため、3.0〜6.0の範囲がよく、好ましくは3.5〜5.5の範囲がよい。
【0026】
[成分(E)]
成分(E)は下記一般式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0028】
一般式(2)中、R
2としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等から選択されるアルキル基が挙げられ、これらのうち、合成のし易さ、コストの面からメチル基が好ましい。また、一般式(2)中、bは5より小さいと成分(E)が揮発成分となるため電子部品の使用上好ましくなく、100より大きいと粘度が高くなり取り扱いが困難となるため5〜100の範囲がよく、好ましくは5〜80の範囲がよい。
【0029】
[成分(F)]
成分(F)は上記成分(E)以外のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、架橋により組成物を網状化するためケイ素原子に結合した水素原子(即ち、Si−H基)を1分子中に少なくとも2個有する。成分(F)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状、分岐状および環状のいずれであってもよく、またこれらの混合物であってもよい。
【0030】
成分(F)のケイ素原子に結合する残余の有機基としては、脂肪族不飽和炭化水素基以外の1価炭化水素基が挙げられる。特には、炭素原子数1〜12、好ましくは1〜10の、非置換又は置換の1価炭化水素基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基などのアルキル基;フェニル基などのアリール基;2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン原子置換炭化水素基が例示され、また2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基などのエポキシ環含有有機基も例として挙げられる。
【0031】
成分(F)の直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記一般式(3)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。
【化5】
式(3)中、R
3は、水素原子又は脂肪族不飽和炭化水素基でない非置換若しくは置換の1価炭化水素基を示し、複数のR
3はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、少なくとも2個は水素原子である。脂肪族不飽和炭化水素基でない非置換若しくは置換の1価炭化水素基としては、上述した有機基が挙げられる。cは0〜1,000の整数であることが好ましく、2〜100の整数であることがより好ましい。
【0032】
また、成分(F)の分岐状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記一般式(4)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。
(HR
32SiO
1/2)
d(R
32SiO)
e(R
3SiO
3/2)
f (4)
式(4)中、R
3は、脂肪族不飽和炭化水素基でない非置換若しくは置換の1価炭化水素基を示し、複数のR
3はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、具体的には上述した有機基が挙げられる。dは0.005〜0.3、eは0.5〜0.98、fは0.01〜0.12、かつd+e+f=1を満たす数である。
中でも、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有し、かつ1分子中に(R
3SiO
3/2)単位を少なくとも2個有する25℃における動粘度が10mm
2/s以上500mm
2/s以下であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
【0033】
さらに、上記一般式(4)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記一般式(5)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましいものとして挙げられる。
【化6】
式(5)中、R
3は、脂肪族不飽和炭化水素基でない非置換若しくは置換の1価炭化水素基を示し、複数のR
3はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、具体的には上述した有機基が挙げられる。xは10〜100の整数を示し、yは2〜20の整数を示す。
【0034】
また、成分(F)の環状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記一般式(6)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。
【化7】
式(6)中、R
3は、脂肪族不飽和炭化水素基でない非置換若しくは置換の1価炭化水素基を示し、複数のR
3はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、具体的には上述した有機基が挙げられる。gは0〜5、hは2〜5の整数であり、g+hは3〜7となるような組み合わせが好ましい。
【0035】
成分(E)と成分(F)の配合量は、{成分(E)と成分(F)のケイ素原子に結合した水素原子の合計個数}/{成分(A)のアルケニル基の個数}の値が0.5より小さいと十分に組成物を網状化できないためグリースがポンプアウトするおそれがある一方、1.5より大きいと組成物の架橋密度が高くなりすぎてしまい信頼性試験中に剥離するおそれがあるため、0.5〜1.5の範囲となる量、好ましくは0.7〜1.3の範囲となる量がよい。
また、{成分(E)中のケイ素原子に結合した水素原子の個数}/{成分(F)中のケイ素原子に結合した水素原子の個数}が0.6より小さいと組成物の架橋密度が高くなりすぎてしまい信頼性試験中に剥離してしまうおそれがある一方、5.0より大きいとグリースがポンプアウトするおそれがあるため、0.6〜5.0の範囲がよい。
【0036】
[成分(G)]
成分(G)の白金系ヒドロシリル化触媒は、成分(A)のアルケニル基と成分(E)及び成分(F)のSi−H基との間の付加反応の促進成分である。成分(G)は白金および白金化合物から選択される触媒であり、例えば白金の単体、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−アルコール錯体、白金配位化合物等が挙げられる。成分(G)の配合量は、成分(A)に対し質量基準で白金原子として0.1〜500ppmの範囲が好ましい。
【0037】
[成分(H)]
また本発明には上記の必須成分(A)〜(G)以外に必要に応じて、成分(H)の反応制御剤を添加してもよい。
成分(H)の反応制御剤は、室温でのヒドロシリル化反応の進行を抑え、シェルフライフ、ポットライフを延長させるものである。反応制御剤としては、付加反応硬化型シリコーン組成物に使用される従来公知のものを使用することができる。例えば、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレン化合物;トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール等の各種窒素化合物;トリフェニルホスフィン等の有機りん化合物;オキシム化合物;有機クロロ化合物等が挙げられる。
成分(H)の配合量は、成分(A)に対して質量基準で0.1〜5%となる量がよい。また、反応制御剤は組成物への分散性を良くするためにトルエン等で希釈して使用してもよい。
【0038】
更に本発明には上記成分以外に必要に応じて、劣化を防ぐために酸化防止剤等を入れてもよい。
【0039】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物の製造方法は、従来の熱伝導性シリコーン組成物の製造方法に従えばよく、特に制限されるものではない。例えば、成分(A)〜(G)及び必要に応じてその他の成分をトリミックス、ツウィンミックス、プラネタリミキサー(いずれも井上製作所(株)製混合機の登録商標)、ウルトラミキサー(みずほ工業(株)製混合機の登録商標)、ハイビスディスパーミックス(特殊機化工業(株)製混合機の登録商標)等の混合機にて混合することで製造することができる。
【0040】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、該組成物を2倍量のトルエンと混合し分散させた液を篩がけした際に、250メッシュ(63μm目開き)での残渣が5ppm以下であり、440メッシュ(32μm目開き)での残渣が200ppm以上である。
本発明の篩残渣試験は例えば以下の方法で行うことができる。
本発明の熱伝導性シリコーン組成物を2倍量のトルエンと混合し分散させた液を250メッシュ(63μm目開き)または440メッシュ(32μm目開き)に通し、洗浄用トルエンを用いてよく洗浄する。その後、メッシュ上に残った粗粒を乾燥機に入れて乾燥し、乾燥後の残渣を薬包紙にとり質量を測定し、組成物中の残渣の割合を算出する。
【0041】
250メッシュ(63μm目開き)の篩を用いた際の残渣が5ppmを超えると実使用時の厚みが厚くなりすぎ熱抵抗が高くなるため5ppm以下がよく、好ましくは2ppm以下がよい。また、440メッシュ(32μm目開き)の篩を用いた際の残渣が200ppm未満であると実使用時の厚みが薄くなりすぎ信頼性試験中に基材から組成物の剥離が発生してしまうおそれがあるため200ppm以上がよい。440メッシュ(32μm目開き)の篩を用いた際の残渣の上限は20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下が良い。20質量%を超えると下記条件による硬化の厚みが60μmを超える場合がある。250メッシュ(63μm目開き)での残渣が5ppm以下であり、440メッシュ(32μm目開き)での残渣が200ppm以上のものとするには、成分(A)と成分(B)を混合した際に、上記の残渣比率となるよう管理したフィラーを用いて所定の配合量とすればよい。
【0042】
本発明の放熱材料は、本発明組成物をプレートに挟み込み、室温で0.15MPaで15分間押圧し、その状態で150℃で90分間加熱硬化し、室温に冷却し厚みを測定し、その厚さが35〜60μmとなるものが好ましい。該厚さが35μmより薄いと信頼性試験中に組成物の剥離が発生してしまうおそれがある一方、60μmより厚いと熱抵抗が上昇して放熱特性が悪化するおそれがある。このような放熱材料とするには、上記残渣量を満足するように調整すればよく、該残渣量は当業者に知られた方法を用いて調整することができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
評価方法、測定方法を以下に示す。
【0044】
〔粘度〕
熱伝導性シリコーン組成物の絶対粘度は、マルコム粘度計(タイプPC−1TL)を用いて25℃で測定した。
【0045】
〔熱伝導率〕
熱伝導性シリコーン組成物の熱伝導率は、各組成物を3cm厚の型に流し込み、キッチン用ラップをかぶせて京都電子工業(株)社製のModel QTM−500で測定した。
【0046】
〔弾性率評価〕
直径2.5cmの2枚のパラレルプレートの間に、熱伝導性シリコーン組成物を厚み2mmで塗布した。塗布したプレートを25℃から5℃/分にて昇温後、150℃において120分間温度を維持するようにプログラムを作成し、貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”の測定を行った。測定は、粘弾性測定装置(レオメトリック・サイエンティフィック社製、タイプRDAIII)を用いて行い、昇温開始後7200秒後の数値を採用した。
【0047】
〔厚み及び熱抵抗測定〕
15mm×15mm×1mmtのSiチップと15mm×15mm×1mmtのNiプレートの間に、熱伝導性シリコーン組成物を挟み込み、室温で0.15MPaで15分間押圧し、その状態で150℃のオーブンで90分間加熱硬化させ、試験片を作製した。硬化後、室温に冷却し、試験片全体の厚みを測定し、SiチップとNiプレートの厚みを差し引くことで熱伝導性シリコーン組成物の厚みを測定した。
また、厚み測定に用いた試験片を用いて熱抵抗の測定を行った(初期値)。さらにその後、ヒートサイクル試験(−55℃〜170℃、2,000サイクル)後の試験片の熱抵抗を初期値と同様に測定した。尚、この熱抵抗測定はナノフラッシュ(ニッチェ社製、LFA447)により行った。
【0048】
〔篩残渣試験〕
50gの熱伝導性シリコーン組成物を250mLのポリ瓶にとりトルエン100gと混合した後に2時間振とうを行い分散させた。分散液を250メッシュ(63μm目開き)または440メッシュ(32μm目開き)に通し、洗浄用トルエンを用いて洗い流し、そのメッシュを乾燥機に入れて乾燥させた。乾燥後にメッシュオンの残渣を薬包紙にとり篩残渣の質量を計量し、組成物中の篩残渣の割合を計算した。
【0049】
実施例及び比較例で使用した各成分を以下に記載する。ここで、動粘度はウベローデ型オストワルド粘度計(柴田科学社製)により25℃で測定した値である。また、平均粒径はマイクロトラックMT3300EX(日機装(株)製)により測定した体積基準の体積平均径である。
【0050】
成分(A)
A−1:両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖され、25℃における動粘度が1000mm
2/sのジメチルポリシロキサン
【0051】
成分(B)
B−1:下記式で表される片末端3官能の加水分解性メチルポリシロキサン
【0052】
【化8】
【0053】
成分(C)
C−1:平均粒径12μmのアルミニウム粉末
C−2:平均粒径8μmのアルミニウム粉末
C−3(比較例用):平均粒径17μmのアルミニウム粉末
C−4(比較例用):平均粒径6μmのアルミニウム粉末
【0054】
成分(D)
D−1:平均粒径0.6μmの酸化亜鉛粉末
【0055】
成分(E)
E−1:下記式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化9】
【0056】
成分(F)
F−1:下記式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化10】
F−2:下記式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化11】
【0057】
成分(G)
G−1:白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を上記A−1と同じジメチルポリシロキサンに溶解した溶液(白金原子含有量:1質量%)
【0058】
成分(H)
H−1:1−エチニル‐1−シクロヘキサノール
【0059】
[実施例1〜6、比較例1〜8]
成分(A)〜(H)を以下のように混合して、実施例1〜6及び比較例1〜8の組成物を得た。即ち、5リットルのプラネタリミキサー(井上製作所(株)製)に100質量部の成分(A)をとり、表1、2に示す配合量(質量部)で成分(B)、(C)及び(D)を加え170℃で1時間混合した。常温になるまで冷却し、次に表1、2に示す配合量(質量部)で成分(E)、(F)、(G)及び(H)を加えて均一になるように混合した。
得られた各組成物について、上記の試験を行った。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】