特許第6388149号(P6388149)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6388149屈折率調整膜用ハードコーティング樹脂組成物及びそれを用いた硬化膜、複層膜
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  • 特許6388149-屈折率調整膜用ハードコーティング樹脂組成物及びそれを用いた硬化膜、複層膜 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388149
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】屈折率調整膜用ハードコーティング樹脂組成物及びそれを用いた硬化膜、複層膜
(51)【国際特許分類】
   C09D 4/02 20060101AFI20180903BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20180903BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20180903BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20180903BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20180903BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   C09D4/02
   C09D7/63
   C09D5/00 Z
   G02B1/111
   G02B1/14
   B32B9/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-24340(P2014-24340)
(22)【出願日】2014年2月12日
(65)【公開番号】特開2015-151420(P2015-151420A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2017年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森本 禎子
(72)【発明者】
【氏名】中村 武史
(72)【発明者】
【氏名】会津 和郎
【審査官】 安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−186288(JP,A)
【文献】 特開2004−352951(JP,A)
【文献】 特開2012−159744(JP,A)
【文献】 特開2003−322706(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/164843(WO,A1)
【文献】 特開2011−023515(JP,A)
【文献】 特開2010−078642(JP,A)
【文献】 特開平08−297202(JP,A)
【文献】 特開平10−253833(JP,A)
【文献】 特開昭62−025706(JP,A)
【文献】 特開2008−144108(JP,A)
【文献】 特開2007−138147(JP,A)
【文献】 特開2003−268047(JP,A)
【文献】 特開2000−080114(JP,A)
【文献】 特開平8−302336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D,C08F,C08L
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)屈折率が1.40〜1.46である単官能(メタ)アクリルモノマと、
(b)多官能(メタ)アクリルモノマと、
(c)重合開始剤と、を含有し、(a)成分の単官能(メタ)アクリルモノマが、アルキル(メタ)アクリレートで、アルキル基の炭素数が1〜10であり、(c)成分の重合開始剤が、熱重合開始剤であり、(1)パーオキシエステル及びアゾ重合開始剤から選ばれる一種類以上と、(2)パーオキシジカーボネートを含み、1分間半減期温度が、硬化温度より50℃以上低い半減期温度を有する重合開始剤で、前記(a)成分が1〜90質量部、前記(b)成分が5〜50質量部、前記(c)成分が0.1〜10質量部配合されてなる屈折率調整膜用ハードコーティング樹脂組成物。
【請求項2】
前記請求項に記載の屈折率調整膜用ハードコーティング樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜。
【請求項3】
屈折率が1.4〜1.5となる請求項に記載の硬化膜。
【請求項4】
電極薄膜の上に請求項又は請求項に記載の硬化膜を形成してなる複層膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基材の表面に塗工することにより反射を低減することができる低屈折率膜を形成するための屈折率調整膜用ハードコーティング樹脂組成物とそれを用いた硬化膜、複層膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より各種ディスプレイ、光学製品、乗り物の窓ガラスなどには、反射防止のためのコーティング層が設けられている。また、近年透明導電フィルムが注目されているが、配線の不可視化が大きな課題となっている。配線の不可視化には、屈折率調整層を設けることによって改善されることが知られている。
このような屈折率調整層として、F(フッ素)やSi(珪素)含有膜が一般に用いられてきた(例えば特許文献1)。しかし、Fは撥水性が高く、ITOなどの電極上に積層できないという難点があった。Siは耐アルカリ性に劣るという難点があるために、電極のエッチング工程で浸食されるなどによる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2011/129011号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題に鑑み、F、Si化合物を含まなくても被覆性や耐アルカリ性に優れ反射防止や配線の不可視化が可能な低い屈折率や、屈折率調整が可能な屈折率調整膜用ハードコーティング樹脂組成物及び、それを用いた硬化膜、複層膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成とした。
本発明は、[1](a)屈折率が1.40〜1.46である単官能(メタ)アクリルモノマと、(b)多官能(メタ)アクリルモノマと、(c)重合開始剤と、を含有し、(a)成分の単官能(メタ)アクリルモノマが、アルキル(メタ)アクリレートで、アルキル基の炭素数が1〜10であり、(c)成分の重合開始剤が、熱重合開始剤であり、(1)パーオキシエステル及びアゾ重合開始剤から選ばれる一種類以上と、(2)パーオキシジカーボネートを含み、1分間半減期温度が、硬化温度より50℃以上低い半減期温度を有する重合開始剤で、前記(a)成分が1〜90質量部、前記(b)成分が5〜50質量部、前記(c)成分が0.1〜10質量部配合されてなる屈折率調整膜用ハードコーティング樹脂組成物に関する

らに、本発明は、[]前記[1]に記載の屈折率調整膜用ハードコーティング樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜に関する。
また、本発明は、[]屈折率が1.4〜1.5となる上記[]に記載の硬化膜に関する。
また、本発明は、[]電極薄膜の上に上記[]又は[]に記載の硬化膜を形成してなる複層膜に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の屈折率調整膜用ハードコーティング樹脂組成物によれば、FやSi化合物を用いずに、低屈折性の反射防止効果を有する膜や、配線の不可視化が可能な低い屈折率を有する硬化膜、複層膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施例でスチールウールによる耐擦傷性を評価するための試験装置を説明する概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の屈折率調整膜用ハードコーティング樹脂組成物は、少なくとも(a)成分として屈折率が1.40〜1.46である単官能(メタ)アクリルモノマと、(b)成分として多官能(メタ)アクリルモノマと、(c)成分として重合開始剤と、を含有する。各成分(a)、(b)、(c)と共に、さらに組成物を均一化するため有機溶剤を含有することが好ましい。
本発明の屈折率調整膜用ハードコーティング樹脂組成物は、(c)成分の重合開始剤により、光、放射線、加熱などの硬化手段により、重合に必要なエネルギーを加えることで重合、硬化し、きわめて容易に低屈折率の硬化膜や複層膜が得られる。
ここで、(メタ)アクリルモノマ、多官能(メタ)アクリルモノマの(メタ)アクリルは、アクリルモノマおよびそれに対応するメタクリルモノマの総称である。また、多官能(メタ)アクリルモノマは、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有することを意味する。
【0009】
本発明の屈折率調整膜用ハードコーティング樹脂組成物において、(a)成分の単官能(メタ)アクリルモノマは、主に得られた薄膜組成物の屈折率を下げる。また、(b)成分の多官能(メタ)アクリルモノマは、得られた薄膜組成物の硬度や耐擦傷性を向上させる効果を担う。また、(c)成分の重合開始剤は、短時間で硬化させる効果を担う。したがって、これらを組み合わせた組成物とすることで、前者の低屈折率と後者の硬度や耐擦傷性を向上させた特性を併せ持つ優れた反射防止膜、配線不可視化膜を得ることができる。
本発明の屈折率調整膜用ハードコーティング樹脂組成物の各成分の含有量としては、以下の範囲が好ましい。
(a)成分の屈折率1.40〜1.46である単官能(メタ)アクリルモノマ:1〜90質量部、より好ましくは10〜90質量部、さらに好ましくは50〜90質量部、(b)成分の多官能(メタ)アクリルモノマ:5〜50質量部、より好ましくは10〜40質量部、さらに好ましくは15〜35質量部、(c)成分の重合開始剤:0.1〜10質量部、より好ましくは1〜8質量部、さらに好ましくは3〜6質量部である。
以下本発明の屈折率調整膜用ハードコーティング樹脂組成物の各成分について説明する。
【0010】
[(a)成分:屈折率が1.40〜1.46である単官能(メタ)アクリルモノマ]
屈折率が1.40〜1.46は、本発明では、測定温度が20〜30℃の範囲での値を示す。
(a)成分の単官能(メタ)アクリルモノマとしては、特に制限されるものではないが、例えばアクリル酸メチル(N25(屈折率:ナトリウムのD線(589.3nm)、25℃)1.402以下同様)、アクリル酸エチル(N20 1.405、以下、N20を省略し()で示す)、アクリル酸ラウリル(N251.443)、アクリル酸ステアリル(1.443)、アクリル酸イソブチル(1.414)、アクリル酸t−ブチル(1.409)、アクリル酸n-ブチル(1.409)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(N251.445)、2-ヒドロキシプロピルアクリレート(N251.444)、エトキシ-ジエチレングリコールアクリレート(N251.437)、メトキシ-トリエチレングルコールアクリレート(N251.445)、2-エチルヘキシル-ジグルコールアクリレート(N251.444)、メトキシ-ポリエチレングリコール(約9モル)アクリレート(N251.459)、メトキシジプロピレングルコールアクリレート(N251.432)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(N251.457)、2-ヒドロキシプロピルアクリレート(N251.444)、2-ヒドロキシブチルアクリレート(N251.447)、2-アクリロイロキシエチル-コハク酸(N251.464)、 メタクル酸メチル(1.413)、メタクリル酸エチル(N251.416)、メタクリル酸ラウリル(N251.444)、メタクリル酸ステアリル(N251.451)、メタクリル酸イソブチル(N251.422)、メタクリル酸t−ブチル(N251.412)、メタクリル酸n-ブチル(N251.425)、2-エチルヘキシルメタクリレート(N251.440)、イソデシルメタクリレート(N251.442)、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート(N251.439)、メトキシポリエチレングリコール(約9モル)メタクリレート(N251.458)、シクロヘキシルメタクリレート(N251.460)、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(N251.459)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(N251.454)、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(N251.449)、2-ヒドロキシブチルメタクリレート(N251.448)、ジメチルアミノエチルメタクリレート(N251.441)、ジエチルアミノエチルメタクリレート(N251.445)、グリシジルメタクリレート(N251.450)、2-メタクリロイロキシエチルコハク酸(N251.463)などが例示される。
本発明では、低屈折率の観点から屈折率が1.40〜1.46である単官能(メタ)アクリルモノマを用いるが、この範囲を外れるアクリルモノマとして、例えば、ベンジルメタクリレート(N251.511)、フェノキシエチルアクリレート(N251.519)、フェノキシエチルメタクリレート(N251.5120)、フェノキシ-ポリエチレングリコールアクリレート(N251.510)、ノニルフェノールEO付加物(約4モル)アクリレート(N251.495)、イソボルニルアクリレート(N251.475)、イソボルニルメタクリレート(N251.476)、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート(N251.5258)、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸(N251.484)、2-アクリロイロキシエチル-フタル酸(N251.517)、ネオペンチルグリコール-アクリル酸-安息香酸エステル(N251.501)、2-アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(N251.472)、2-メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸(N251.482)、などが例示される。
上記の屈折率が1.40〜1.46である単官能(メタ)アクリルモノマの中から単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも特に、屈折率等の特性のバランスからメタクリル酸t−ブチルが好ましい。
前記したように(a)成分の使用量は、(a)、(b)、(c)の総計100質量に対し、1〜90質量部、より好ましくは10〜90質量部、さらに好ましくは50〜90質量部である。屈折率は、より高いものであれば、アクリル酸ステアリル(n=1.452、20℃)、2-アクリロイロキシエチル-コハク酸(N251.464)などを用い、より低いものであれば、アクリル酸メチル(1.402、25℃)を多く用いると好ましい。一般的にアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の鎖長が長いと屈折率が高くなる傾向にあり、モノマを重合したポリマの屈折率は、モノマのそれより高い値を示す傾向にあるので、それらを考慮してモノマを選択する。
アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数が1〜10であると好ましい。その範囲であると屈折率が低く、また、耐磨耗性や耐アルカリ性に優れたものとなる。
【0011】
[(b)成分:多官能(メタ)アクリルモノマ]
(b)成分の多官能(メタ)アクリルモノマとしては、特に限定されるものではないが、2官能(メタ)アクリルモノマには、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどの多環式脂環族骨格を有するジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレートなどのビスフェノール骨格を有するジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなどの橋架け環式脂環族骨格(特に、2環〜4環C8−12橋架け環式脂環族骨格)を有するジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリルモノマには、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。さらに、これらの多官能(メタ)アクリレートにおいて、多価アルコールは、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのC2−4アルキレンオキシド)の付加体であってもよい。アルキレンオキシドの平均付加モル数は、例えば、0〜30モル(特に1〜10モル)程度の範囲から選択できる。これらの多官能(メタ)アクリレートは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
前記したように(b)成分の使用量は、(a)、(b)、(c)の総計100質量に対し、5〜50質量部、より好ましくは10〜40質量部、さらに好ましくは15〜35質量部である。
【0012】
[(c)成分:重合開始剤]
本発明で用いる重合開始剤は、特に限定されるものではなく、用途や目的とする膜の特性、製造方法に適した重合開始剤を選択して用いればよく、熱又は光重合開始剤を用いるのがより好ましい。
光重合開始剤は、特に制限はなく、従来公知の化合物を適宜採用することができる。一例を挙げると、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマーなどのアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4´−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3´,4,4´−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリドなどのベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリドなどのチオキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフォンオキサイド類などが挙げられる。これらの光重合開始剤は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。これらの中でも特に、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。
【0013】
熱重合開始剤は、有機過酸化物が好適に用いられ、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、アゾ重合開始剤などが用いられる。
ケトンパーオキサイドとして、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、などが挙げられる。
パーオキシケタールとして、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ジ(4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパンなどが挙げられる。
ハイドロパーオキサイドとして、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。
ジアルキルパーオキサイドとして、ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2.5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2.5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3などが挙げられる。
ジアシルパーオキサイドとして、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジサクシニックアシッドパーオキサイド、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイドなどが挙げられる。
パーオキシエステルとして、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイックアシッド、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキセン、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエートなどが挙げられる。
パーオキシジカーボネートとして、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネートなどが挙げられる。
アゾ重合開始剤として、2,2´-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN),2,2´−アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2´-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1´-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2´-アゾビス[N-(2-プロピル)-2-メチルプロピオアミド]、2,2´-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオアミド)などが挙げられる。
これらは、一種類単独用いてもよく、複数種類を併用して用いることもできる。特に、パーオキシエステル及びアゾ重合開始剤から選ばれる一種類以上とパーオキシジカーボネートを併用することが短時間で硬化するという観点から好ましい。
熱重合開始剤の1分間半減期温度が、硬化温度より50℃以上低い半減期温度を有する重合開始剤であると好ましい。短時間で硬化させることができ、耐摩耗性や耐アルカリ性が向上する。1分間半減期温度は、有機過酸化物の製造メーカーなどのカタログや文献に記載されている。
【0014】
前記したように(c)成分の使用量は、(a)、(b)、(c)の総計100質量に対し、0.1〜10質量部、より好ましくは1〜8質量部、さらに好ましくは3〜6質量部である。
光重合開始剤は、紫外線や電子線などのエネルギー線の照射により開裂し重合反応を開始させるラジカルを発生し、組成物を重合、高分子化し、物性に変化を与える。その活性エネルギー線として、電子線、紫外線、可視光線が挙げられる。装置コストや生産性の点から紫外線を利用することが一般的である。紫外線は、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、アルゴンレーザ等のガスレーザ、YAGレーザ等の固体レーザ、半導体レーザ及び窒化ガリウム系青紫色レーザ等を用いる。
熱重合開始剤は、加熱により開裂し重合反応を開始させるラジカルを発生し、組成物を重合、高分子化し、物性に変化を与える。加熱は、150〜200℃の加熱を30秒〜5分行うことが望ましく、160〜190℃で30秒〜4分、特に185〜175℃で1〜3分行うことが好ましい。
【0015】
本発明では、用いる(a)成分、(b)成分、(c)成分と共に、さらに組成物を均一化するため有機溶剤を含有することが好ましい。
本発明に用いられる有機溶剤としては、上記単官能モノマと多官能モノマを溶解あるいは分散させることが可能な溶剤であれば特に限定されるものではない。具体的には酢酸ブチル、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、メチルケトン等を例示できる。
さらに、本発明にかかる樹脂組成物については着色防止において、酸化防止剤が含まれることが好ましい。
着色を抑制する方法として、種々の酸化防止剤を樹脂組成物に添加する方法が知られている。本形態に用いる酸化防止剤は、特に制限はなく、従来公知の化合物を適宜採用することができる。一例を挙げると、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等の一次酸化防止剤やリン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等の二次酸化防止剤がある。
【0016】
フェノール系酸化防止剤として、例えば、2,6−ジ−t-ブチルフェノール、2,6−ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、4,4´-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4´-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4´-ビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2´-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2´-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4´-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4´-イソプロピリデンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2´-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2´-メチレンビス(4-メチル-6-ノニルフェノール)、2,2´-イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール)、2,6-ビス(2´−ヒドロキシ-3´-t-ブチル-5´-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、2-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸オクチル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸ステアリル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸オレイル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸ドデシル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸デシル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸オクチル、テトラキス{3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオニルオキシメチル)メタン、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸グリセリンモノエステル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸とグリセリンモノオレイルエーテルとのエステル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸ブチレングリコールジエステル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸チオジグリコールジエステル、4,4´−チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4´−チオビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2´−チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,6-ジ-t-ブチル-α-ジメチルアミノ-p-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-4-(N,N´−ジメチルアミノメチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)サルファイド、トリス{(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル―オキシエチル}イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、ビス{2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル}サルファイド、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラフタロイル-ジ(2,6-ジメチル-4-t-ブチル-3-ヒドロキシベンジルサルファイド)、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-2,4-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン、2,2-チオ-{ジエチル-ビス-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)}プロピオネート、N,N´−ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ−ヒドロシナミド)、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス{3,3´−ビス-(4´−ヒドロキシ-3´-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド}グリコールエステル等が挙げられる。
【0017】
アミン系酸化防止剤としては、例えば、1-ナフチルアミン、フェニル-1-ナフチルアミン、p-オクチルフェニル-1-ナフチルアミン、p-ノニルフェニル-1-ナフチルアミン、p-ドデシルフェニル-1-ナフチルアミン、フェニル-2-ナフチルアミン等のナフチルアミン系酸化防止剤;N,N´−ジイソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N´−ジイソブチル-p-フェニレンジアミン、N,N´−ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N´−ジ-β-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N´−イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N´−フェニル-p-フェニレンジアミン、N-1,3-ジメチルブチル-N´−フェニル-p-フェニレンジアミン、ジオクチル-p-フェニレンジアミン、フェニルヘキシル-p-フェニレンジアミン、フェニルオクチル-p-フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系酸化防止剤;ジピリジルアミン、ジフェニルアミン、p,p´−ジ-n-ブチルジフェニルアミン、p,p´−ジ-t-ブチルジフェニルアミン、p,p´−ジ-t-ペンチルジフェニルアミン、p,p´−ジオクチルジフェニルアミン、p,p´−ジノニルジフェニルアミン、p,p´−ジデシルジフェニルアミン、p,p´−ジドデシルジフェニルアミン、p,p´−ジスチリルジフェニルアミン、p,p´−ジメトキシジフェニルアミン、4,4´−ビス(4-α,α−ジメチルベンゾイル)ジフェニルアミン、p-イソプロポキシジフェニルアミン、ジピリジルアミン等のジフェニルアミン系酸化防止剤;フェノチアジン、N-メチルフェノチアジン、N-エチルフェノチアジン、3,7-ジオクチルフェノチアジン、フェノチアジンカルボン酸エステル、フェノセレナジン等のフェノチアジン系酸化防止剤が挙げられる。
【0018】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジt-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチル-5-メチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2−t-ブチル-4-(3−t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフィト、ビス(2,4,6-トリ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4´-n-ブチリデンビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ−5−t-ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ-t-ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10-ジハイドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、2,2´−メチレンビス(4,6-t-ブチルフェニル)-2-エチルヘキシルホスファイト、2,2´−メチレンビス(4,6−t-ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2-〔(2,4,8,10-テトラキス-t-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ〕エチル)アミン、2-エチル-2-ブチルプロピレングリコールと2,4,6-トリ-t-ブチルフェノールのホスファイト等が挙げられる。
【0019】
チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、テトラキス[メチレン-3-(ラウリルチオ)プロピオネート]メタン、ビス(メチル-4-[3-n−アルキル(C12/C14)チオプロピオニルオキシ]5-t−ブチルフェニル)スルファイド、ジトリデシル-3,3´−チオジプロピオネート、ジラウリル-3,3´-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3´−チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3´−チオジプロピオネート、ラウリル/ステアリルチオジプロピオネート、4,4´−チオビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、2,2´−チオビス(6-t-ブチル-p-クレゾール)、ジステアリル−ジサルファイドが挙げられる。
これらの酸化防止剤の使用量は、好ましくは、組成物の総量100質量部に対して、0.001〜0.3質量部、より好ましくは0.01〜0.3質量部である。
【0020】
本発明の屈折率調整膜用ハードコーティング樹脂組成物においては、フェノール系酸化防止剤を用いることが好ましく、BASF社製のIrganox−1010を用いることが特に好ましい。
【0021】
本発明の屈折率調整膜用ハードコーティング樹組成物により目的とする硬化膜を得るには、例えば、1〜90質量部の単官能(メタ)アクリルモノマと、5〜50質量部の多官能(メタ)アクリルモノマと、重合開始剤からなる混合物を塗工して光照射または加熱して膜状の低屈折組成物を得ることができる。
本発明における熱硬化では、前記のように、150〜200℃の加熱を30秒〜5分行うことが望ましい。より好ましくは160〜190℃で30秒〜4分、特に185〜175℃で1〜3分行うことが好ましい。
本発明における光硬化では、高圧水銀灯、低圧水銀灯、タリウムランプ、インジウムランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、紫外線LED、青色LED、白色LED等の発光光があげられるほか、太陽光の使用も可能である。光硬化反応が進みにくい場合には、光照射を酸素非存在下で実施することが望ましい。酸素存在下では酸素阻害のためフィルム表面のべたつきがなかなかとれず、開始剤の使用量を増やすことが必要となる。なお、酸素非存在下での硬化方法としては、窒素ガス、炭酸ガス、ヘリウムガス等の雰囲気で行うことが挙げられる。
照射する光の量は、光重合開始剤がラジカルを発生させる範囲であれば任意であるが、極端に少ない場合は重合が不完全となるため、硬化物の耐熱性、機械特性が十分に発現されず、逆に極端に過剰な場合は硬化物の黄変等の光による劣化を生じるので、モノマの組成および光重合開始剤の種類、量に合わせて、例えば高圧水銀灯を好ましくは100〜1000mJ/cm2、100〜500mW/cmの範囲で照射する。
【0022】
屈折率調整膜用ハードコーティング樹脂組成物を膜状に形成するための方法としては特に限定されるものではなく、公知の種々の膜形成の方法、例えば塗布法、コート法、印刷法、ディップ法などにより形成することができる。また、形成される膜の膜厚は前記溶剤の量や種類、あるいは増粘剤、添加微粒子等の添加物、成膜、硬化方法等の膜形成工程により調整することができる。
本発明で得られる膜組成物の屈折率は、ナトリウムD線(589nm)の光に対し、アッベ式屈折率計を用いて測定することができる。本発明の樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜の屈折率は1.4以上、1.5未満、好ましくは1.41以上、1.5未満、より好ましくは1.42以上、1.5未満であることも特徴として挙げられる。屈折率1.4未満では耐擦傷性に劣り、屈折率1.5以上では反射を低減することができない。
配線の不可視化は、配線としてITOを用いる場合、透明基板上にITO配線を形成すると、ITO配線が形成された部分と、そうでない部分では、透明基板よりも屈折率の高いITO配線に起因して反射プロファイルや透過プロファイルに差が生じ、ITO配線が容易に視認されて商品価値が低下してしまう。これを解決する手段としてITO配線と透明基板の間に屈折率がITO配線や透明基板と異なる少なくとも1層以上からなる下地層を形成してITO配線を視認しにくくする方法、或いは、透明基板と透明基板上に形成されたITO配線の上にITO配線と屈折率が同等の屈折率のオーバーコート層を形成してITO配線を視認しにくくする方法がある。
本発明の屈折率調整膜用ハードコーティング樹脂組成物は、下地層やオーバーコート層に用いてITO配線を視認しにくくするものである。ある種類のITOの屈折率は、波長分散性があり波長400nmで2.115、波長800nmで1.780であり、ITOの製造方法やメーカーにより屈折率が異なってくる。
本発明では、屈折率が15〜30℃で1.4〜1.5の範囲であることが好ましく、オーバーコート層に用いる場合、屈折率1.7〜2.1の透明層をITO配線層上に設け、さらにその透明層の上に本発明の硬化膜を設けるものである。ITO配線をインジュウム化合物と錫化合物を溶剤に溶解させてウエットコーティング法により塗布、焼成して形成させる場合、低屈折率透明微粒子などを導入しITOの屈折率を下げれるので、本発明の硬化膜をオーバーコート層とすることができる。
以下に記載した実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
以下の実施例の屈折率、膜厚、耐擦傷性(耐スチールウール荷重)、耐アルカリ性を下記のようにして測定した。
(屈折率、膜厚)
屈折率は25℃で波長589nm(D線)にてアッベ屈折率計(NAR-2T、株式会社アタゴ製)で測定した。膜厚は、フィルメトリクス株式会社製の薄膜測定システムF20で測定した。
(耐擦傷性)
耐擦傷性は、直径25mmの円柱の平滑な断面にスチールウール(#0000、超極細)を均一に取り付け、100gずつ荷重をかけて試料表面に押し付けた(図1参照)。なお、前記スチールウールを取り付けた円柱の速度は2000mm/minとし、10往復させた。そして往復させた後、前記試料の表面の傷の有無を目視によって確認し、傷がつかなかった最大荷重を耐スチールウール荷重とした。
(耐アルカリ性)
耐アルカリ性は下記により評価した。試験片を2質量%の水酸化ナトリウム溶液に60℃で5分間浸漬し、水洗後、その試験片の状態を目視により観察し、以下の基準に従い評価した。
「○」:全く変化が認められないもの
「×」:アルカリ浸漬痕が見られるもの
【0024】
(比較例1)
(a)成分の屈折率が1.40〜1.46である単官能(メタ)アクリルモノマとしてメタクリル酸t-ブチル(ND20=1.415)を95質量部、(b)成分の多官能(メタ)アクリルモノマとしてアロニックスM-400(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート、東亞合成株式会社製)を5質量部、メチルエチルケトンを20質量部、(c)成分の重合開始剤としてパーブチルZ(t-ブチルパーオキシベンゾエート、パーオキシエステル、日油株式会社製)を4質量部、パーロイルTCP(ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、パーオキシジカーボネート、日油株式会社)を0.6質量部、Irganox1010(ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、BASF社製)を0.05質量部混合し、目視にて均一になるまで攪拌した。その溶液の一部をPET表面に80〜100nmの厚みになるようスピンコーターで塗布し、180℃の乾燥機で1.5分硬化させたところ、べたつきのない透明な薄膜が得られた。その薄膜の膜厚は90nmで、屈折率は1.461で、耐スチールウール荷重0gで、耐アルカリ性良好であった。
【0025】
(実施例)
単官能(メタ)アクリルモノマとしてメタクリル酸t−ブチルを90質量部、多官能(メタ)アクリルモノマとしてアロニックスM−400を10質量部、メチルエチルケトンを20質量部、パーオクタO(1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、パーオキシエステル、日油株式会社製)を4質量部、パーロイルTCPを0.6質量部、Irganox1010を0.05質量部混合し、目視にて均一になるまで攪拌した。その溶液の一部をPET表面に80〜100nmの厚みになるようスピンコーターで塗布し、180℃の乾燥機で1.5分硬化させたところ、べたつきのない透明な薄膜が得られた。その薄膜の膜厚は90nmで、屈折率は1.465で、耐スチールウール荷重200gで、耐アルカリ性良好であった。
【0026】
(実施例)
単官能(メタ)アクリルモノマとしてメタクリル酸t-ブチルを80質量部、多官能(メタ)アクリルモノマとしてアロニックスM-400を20質量部、メチルエチルケトンを20質量部、パーオクタOを4質量部、パーロイルTCPを0.6質量部、Irganox1010を0.05質量部混合し、目視にて均一になるまで攪拌した。その溶液の一部をPET表面に80〜100nmの厚みになるようスピンコーターで塗布し、180℃の乾燥機で1.5分硬化させたところ、べたつきのない透明な薄膜が得られた。その薄膜の膜厚は90nmで、屈折率は1.475で、耐スチールウール荷重700gで、耐アルカリ性良好であった。
【0027】
(実施例)
単官能(メタ)アクリルモノマとしてメタクリル酸t-ブチルを70質量部、多官能(メタ)アクリルモノマとしてアロニックスM-400を30質量部、メチルエチルケトンを20質量部、パーオクタOを4質量部、パーロイルTCPを0.6質量部、Irganox1010を0.05質量部混合し、目視にて均一になるまで攪拌した。その溶液の一部をPET表面に80〜100nmの厚みになるようスピンコーターで塗布し、180℃の乾燥機で1.5分硬化させたところ、べたつきのない透明な薄膜が得られた。その薄膜の膜厚は90nmで、屈折率は1.489で、耐スチールウール荷重900gで、耐アルカリ性良好であった。
【0028】
(実施例)
単官能(メタ)アクリルモノマとしてメタクリル酸t-ブチルを60質量部、多官能(メタ)アクリルモノマとしてアロニックスM-400を40質量部、メチルエチルケトンを20質量部、パーオクタOを4質量部、パーロイルTCPを0.6質量部、Irganox1010を0.05質量部混合し、目視にて均一になるまで攪拌した。その溶液の一部をPET表面に80〜100nmの厚みになるようスピンコーターで塗布し、180℃の乾燥機で1.5分硬化させたところ、べたつきのない透明な薄膜が得られた。その薄膜の膜厚は90nmで、屈折率は1.502で、耐スチールウール荷重1000gで、耐アルカリ性良好であった。
【0029】
(実施例)
単官能(メタ)アクリルモノマとしてアクリル酸メチル(ND20=1.403)を80質量部、多官能(メタ)アクリルモノマとしてビスコート#802(トリペンタエリスリトールアクリレート、モノ及びジペンタエリスリトールアクリレート、ポリペンタエリスリトールアクリレートの混合物、大阪有機化学工業株式会社製)を20質量部、メチルエチルケトンを20質量部、パーオクタOを4質量部、パーロイルTCPを0.6質量部、Irganox1010を0.05質量部混合し、目視にて均一になるまで攪拌した。その溶液の一部をPET表面に80〜100nmの厚みになるようスピンコーターで塗布し、180℃の乾燥機で1.5分硬化させたところ、べたつきのない透明な薄膜が得られた。その薄膜の膜厚は90nmで、屈折率は1.492で、耐スチールウール荷重500gで、耐アルカリ性良好であった。
【0030】
(比較例2)
単官能(メタ)アクリルモノマとしてメタクリル酸ステアリル(ND20=1.451)を80質量部、多官能(メタ)アクリルモノマとしてアロニックスM-400を20質量部、メチルエチルケトンを20質量部、パーオクタOを4質量部、パーロイルTCPを0.6質量部、Irganox1010を0.05質量部混合し、目視にて均一になるまで攪拌した。その溶液の一部をPET表面に80〜100nmの厚みになるようスピンコーターで塗布し、180℃の乾燥機で1.5分硬化させたところ、透明な薄膜が得られた。その薄膜の膜厚は90nmで、屈折率は1.496で、耐スチールウール荷重0gで、耐アルカリ性不良であった。
【0031】
(比較例3)
単官能(メタ)アクリルモノマとしてメタクリル酸t-ブチルを80質量部、多官能(メタ)アクリルモノマとしてアロニックスM-400を20質量部、メチルエチルケトンを20質量部、パーブチルZを4質量部、パーロイルTCPを0.6質量部、Irganox1010を0.05質量部混合し、目視にて均一になるまで攪拌した。その溶液の一部をPET表面に80〜100nmの厚みになるようスピンコーターで塗布し、180℃の乾燥機で10分硬化させたところ、べたつきのない透明な薄膜が得られた。その薄膜の膜厚は90nmで、屈折率は1.474で、耐スチールウール荷重0gで、耐アルカリ性不良であった。
【0032】
(参考例1)
単官能(メタ)アクリルモノマとしてメタクリル酸t-ブチルを90質量部、多官能(メタ)アクリルモノマとしてアロニックスM-400を10質量部、メチルエチルケトンを20質量部、Irgacure184(1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、ラジカル系光重合開始剤、BASF社製)を3質量部、Irganox1010を0.05質量部混合し、目視にて均一になるまで攪拌した。その溶液の一部をPET表面に80〜100nmの厚みになるようスピンコーターで塗布し、500mJ/cmの紫外線を照射(株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション、UV照射機)したところ、べたつきのない透明な薄膜が得られた。その薄膜の膜厚は90nmで、屈折率は1.466で、耐スチールウール荷重700gで、耐アルカリ性良好であった。
【0033】
(比較例)
Si含有(メタ)アクリルモノマとしてコンポブリッドUM2-U902MA(アトミクス株式会社製)を50質量部、多官能(メタ)アクリルモノマとしてアロニックスM-400を50質量部、メチルエチルケトンを20質量部、パーブチルZを4質量部、パーロイルTCPを0.6質量部、Irganox1010を0.05質量部混合し、目視にて均一になるまで攪拌した。その溶液の一部をPET表面に80〜100nmの厚みになるようスピンコーターで塗布し、180℃の乾燥機で1.5分硬化させたところ、べたつきのない透明な薄膜が得られた。その薄膜の膜厚は90nmで、屈折率は1.422で、耐スチールウール荷重500gで、耐アルカリ性不良であった。
【0034】
【表1】
【0035】
(b)成分
アロニックスM-400:ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート、東亞合成株式会社製、
ビスコート#802:トリペンタエリスリトールアクリレート、モノ及びジペンタエリスリトールアクリレート、ポリペンタエリスリトールアクリレートの混合物、大阪有機化学工業株式会社製、
(c)成分
パーブチルZ:t-ブチルパーオキシベンゾエート、パーオキシエステル、日油株式会社製、
パーオクタO:1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、パーオキシエステル、日油株式会社製、
パーロイルTCP:ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、パーオキシジカーボネート、日油株式会社、
Irgacure184:1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、ラジカル系光重合開始剤、BASF社製、
(その他の成分)
Irganox1010:ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4- ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、BASF社製。
【0036】
実施例1〜5、比較例1〜3、参考例1に示したように(a)〜(c)成分を有する屈折率調整膜用ハードコーティング樹脂組成物を用いることにより屈折率を1.461〜1.502の範囲に調整できる。また、実施例参考例1に示すように、(c)成分の重合開始剤を、実施例の熱重合開始剤と参考例1の光重合開始剤としても同様な屈折率を示し、耐アルカリ性は良好で、耐摩耗性では、光重合開始剤の方がより耐磨耗性に優れる。
耐アルカリ性又は耐摩耗性に優れるものとするには、上記組成に制限がある。
比較例1に示すように(a)成分の配合量が1〜90質量部を外れる95質量部では屈折率は低いが耐磨耗性に劣るので、(a)成分の配合量が1〜90質量部の範囲内にすることが耐摩耗性を向上させる上で好ましい。
また、熱重合開始剤にパーオキシエステルとパーオキシジカーボネートを併用した実施例1〜5、比較例1〜3では、比較例1、3のパ−ブチルZとパーロイルTCPの組合わせは、実施例1〜5のパーオクタOとパーロイルTCPの組合わせに対して、耐磨耗性に劣る。パ−ブチルZの1分間半減期温度は、166.8℃、パーオクタOの1分間半減期温度は、124.3℃で、パーロイルTCPの1分間半減期温度は、92.1℃であり、1分間半減期温度が、硬化温度の180℃より50℃以上低い熱重合開始剤との組み合わせが耐摩耗性、耐アルカリ性向上に好ましい(180℃の硬化温度での硬化時間が少ないことが予想されるが、比較例3では10分間の硬化を行い比較例1〜2、実施例1〜5の1.5分に比べて長くしている)。
比較例2の耐摩耗性も低いが、(a)成分のメタクリル酸ステアリルのようにアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の鎖長が長くアルキル基の炭素数が1〜10を超えてくると硬度が低下し耐磨耗性、耐アルカリ性も低下してくる。そのため、(a)成分のアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数を1〜10とすることが耐摩耗性、耐アルカリ性向上には好ましい。

図1