特許第6388158号(P6388158)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388158
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】酸化チタン光触媒を用いた蚊取り器
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/02 20060101AFI20180903BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20180903BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20180903BHJP
   A01M 1/14 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   A01M1/02 C
   B01J35/02 J
   B01J37/02 301J
   A01M1/14 S
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-228925(P2014-228925)
(22)【出願日】2014年11月11日
(65)【公開番号】特開2016-86790(P2016-86790A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】317015560
【氏名又は名称】ユーヴィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097320
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 貞二
(74)【代理人】
【識別番号】100100398
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 茂夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131820
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 俊幸
(74)【代理人】
【識別番号】100155192
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 美代子
(72)【発明者】
【氏名】森戸 祐幸
(72)【発明者】
【氏名】藤嶋 昭
(72)【発明者】
【氏名】中根 滋
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−087371(JP,A)
【文献】 特開2012−001532(JP,A)
【文献】 特開平08−206455(JP,A)
【文献】 特開2011−183240(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3144480(JP,U)
【文献】 特開2007−254363(JP,A)
【文献】 特開2007−167009(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0181997(US,A1)
【文献】 特開2009−095257(JP,A)
【文献】 特表2001−523476(JP,A)
【文献】 特開2006−000086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 − 99/00
B01J 35/02
B01J 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ガスを発生する有機ガス供給部と;
紫外線を照射する紫外線照射部と;
前記紫外線を受光し、前記有機ガスを分解して炭酸ガスを発生させるアナターゼ型酸化チタン光触媒シートを有する光触媒部と;
前記有機ガス供給部、前記紫外線照射部及び前記光触媒部を収納し、窓を有する収納容器と;
前記窓を覆い、蚊が通れる寸法より少し大きい寸法の網目を有する蚊選別ネットと;
前記網目を通り前記収納容器内に侵入した蚊を捕集する捕集部とを備える;
酸化チタン光触媒を用いた蚊取り器。
【請求項2】
前記アナターゼ型酸化チタン光触媒シートは、アナターゼ型酸化チタン粒子を担持した光触媒シートであって、片面又は両面から非周期的パターンによるエッチング処理を施して表裏を貫通する多数の微細流路が形成された非周期性海綿構造を有するチタン箔の表面に、陽極酸化被膜による酸化チタンベースが形成され、当該酸化チタンベースにアナターゼ型酸化チタン粒子が焼き付けられた光触媒シートである;
請求項1に記載の酸化チタン光触媒を用いた蚊取り器。
【請求項3】
前記有機ガス供給部はアルコールを含浸した第1の繊維質シートと乳酸を含浸した第2の繊維質シートと、前記アルコールを収容するアルコール漕及び前記乳酸を収容する乳酸漕と、前記アルコール漕から前記第1の繊維質シートに前記アルコールを導く第1の有機液伝送具と、前記乳酸漕から前記第2の繊維質シートに前記乳酸を導く第2の有機液伝送具とを有する;
請求項1又は請求項2に記載の酸化チタン光触媒を用いた蚊取り器。
【請求項4】
前記捕集部は、前記蚊を粘着する粘着シート又は前記蚊を吸引する吸引器を有する;
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の酸化チタン光触媒を用いた蚊取り器。
【請求項5】
前記紫外線の波長は、388nm以下である;
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の酸化チタン光触媒を用いた蚊取り器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蚊取り器に関する。詳しくは酸化チタン光触媒を用いた蚊取り器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の酸化チタンと紫外線を用いた蚊取り器は、例えば特許文献1により開示されている。酸化チタン層に付着した汚れ等を活性酸素又はオゾンガスにより炭酸ガスに分解しているが、赤外線で加熱して分解を促進している。また、紫外線で集めて吸い取る吸引方式の蚊取り器が市販されている。また、炭酸ガスボンベを用いた蚊取り器も市販されている。しかしながら、思うような効果が得られないという問題があった。また、炭酸ガスボンベを用いる方法ではボンベの交換に手間がかかる、ボンベが重く移動が困難という問題があった。
【0003】
ところで、発明者達は、顕著な有機ガス分解効率を有するアナターゼ型酸化チタン光触媒シートを開発した(特許文献2参照)。また、アナターゼ型酸化チタン光触媒シートを多数の微細流路が形成された非周期性海綿構造とすることにより、有機ガス分解効率をさらに向上させた。そこで、発明者等が開発したアナターゼ型酸化チタン光触媒シートを蚊取り器に適用して、有機ガスの分解効率、すなわち炭酸ガスの発生効率を上げて、蚊の捕集効率を向上することとした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−95257号公報
【特許文献2】特許第5474612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アナターゼ型酸化チタン光触媒を用いて、光触媒による炭酸ガスの発生効率を高くし、蚊の捕集効率を高くする蚊取り器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る酸化チタン光触媒を用いた蚊取り器1は、例えば図1に記載のように、有機ガスを発生する有機ガス供給部10と、紫外線を照射する紫外線照射部20と、紫外線を受光し、有機ガスを分解して炭酸ガスを発生させるアナターゼ型酸化チタン光触媒シート31を有する光触媒部30と、有機ガス供給部10、紫外線照射部20及び光触媒部30を収納し、窓41を有する収納容器40と、窓41を覆い、蚊が通れる寸法より少し大きい寸法の網目を有する蚊選別ネット50と、網目を通り収納容器40内に侵入した蚊を捕集する捕集部60とを備える。
【0007】
ここにおいて、有機ガスとはアルコール、アセトン、トルエン等有機溶剤から発生するガスをいう。分解すると炭酸ガスと水蒸気になる。本願では揮発しやすく、炭酸ガスに分解しやすい低分子アルコールガスが好ましい。また、乳酸は蒸気圧が低いが、少量ではあるが揮発するので、有機ガスには乳酸ガスも含まれるものとする。アナターゼ型酸化チタン光触媒シートとは、典型的には、アナターゼ型酸化チタン光触媒を担持したチタン箔をシート状にしたものをいうが、アナターゼ型酸化チタン光触媒を担持したシート状のものであれば良い。また、蚊が通れる寸法より少し大きい寸法とは、殆どの蚊が細長い体系で15mm以下であり、羽をすぼめて通ることも可能であることから、例えば10mm〜15mmとする。
本態様のように構成すると、有機ガスを分解して炭酸ガスを発生させる効率が非常に高いアナターゼ型酸化チタン光触媒を使用するので、蚊の捕集効率が高い蚊取り器を提供できる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る酸化チタン光触媒を用いた蚊取り器1は、第1の態様において、例えば図2に示すように、アナターゼ型酸化チタン光触媒シート31は、アナターゼ型酸化チタン粒子36を担持した光触媒シート31であって、片面又は両面から非周期的パターンによるエッチング処理を施して表裏を貫通する多数の微細流路が形成された非周期性海綿構造を有するチタン箔33の表面に、陽極酸化被膜39による酸化チタンベース35が形成され、酸化チタンベース35にアナターゼ型酸化チタン粒子36が焼き付けられた光触媒シート31である。
【0009】
ここにおいて、多数の微細流路が形成された非周期性海綿構造とは、必ずしも海綿と同じ構造に限られず、流路が多数形成され、かつ網目状に張り巡らされた周期性のない不規則な構造であれば良い。なお、周期性のない不規則性は、ミクロな範囲についてあれば良く、マクロな範囲では周期性があっても良い。
本態様のように構成すると、光触媒シート31は表裏を貫通する多数の微細流路34が形成されており、光触媒層37の表面積が増える。これにより、触媒による分解効率が格段に向上し、蚊の捕集効率も格段に向上する。また、陽極酸化被膜による酸化チタンベース35と光触媒層37は、結合性が極めて強く、光触媒層37が剥がれ難く、蚊取り器を長寿命にできる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る酸化チタン光触媒を用いた蚊取り器1は、第1の態様又は第2の態様において、例えば図1に記載のように、有機ガス供給部10はアルコールを含浸した第1の繊維質シート11Aと、乳酸を含浸した第2の繊維質シート11Bと、アルコールを収容するアルコール漕12及び乳酸を収容する乳酸漕13と、アルコール漕12から第1の繊維質シート11Aにアルコールを導く第1の有機液伝送具14Aと、乳酸漕12から第2の繊維質シート11Bに乳酸を導く第2の有機液伝送具14Bとを有する。
【0011】
ここにおいて、第1の繊維質シート11A、第2の繊維質シート11Bに含浸される有機液は、それぞれ、アルコール、乳酸を含めば良く、酒、牛乳でも良い。
本態様のように構成すると、本態様において供給されるガスは炭酸ガスと乳酸を含むので、蚊を多く集められる。
【0012】
本発明の第4の態様に係る酸化チタン光触媒を用いた蚊取り器1は、第1の態様ないし第3の態様のいずれかにおいて、例えば図1又は図5に示すように、捕集部60は蚊を粘着する粘着シート61又は蚊を吸引する吸引器62を有する。
このように構成すると、蚊を効率的に捕集できる。
【0013】
本発明の第5の態様に係る酸化チタン光触媒を用いた蚊取り器1は、第1の態様ないし第4の態様のいずれかにおいて、前記紫外線の波長は、388nm以下である。
このように構成すると、酸化チタン光触媒から発生する活性種にアルコール等の有機ガスを分解させて炭酸ガスを発生させられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光触媒による炭酸ガスの発生効率が高く、蚊の捕集効率が高いアナターゼ型酸化チタン光触媒を用いた蚊取り器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施例における酸化チタン光触媒を用いた蚊取り器の構成例を示す図である。
図2】酸化チタン光触媒シートの構成例を示す図である。
図3】実施例2における酸化チタン光触媒シートの構成例を示す図である。
図4】実施例3における酸化チタン光触媒シートの構成例を示す図である。
図5】実施例4における酸化チタン光触媒を用いた蚊取り器の構成例を示す図である。
図6】実施例5における酸化チタン光触媒を用いた蚊取り器の構成例を示す図である。
図7】実施例8における酸化チタン光触媒を用いた蚊取り器の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して以下に本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、互いに同一又は相当する部分には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【実施例1】
【0017】
〔構成〕
図1に本実施例における酸化チタン光触媒を用いた蚊取り器1の構成例を示す。図1(A)は蚊取り器の断面図、図1(B)は分解斜視図、図1(C)は外観斜視図である。蚊取り器1は、有機ガス供給部10、紫外線照射部20、光触媒部30、収納容器40、蚊選別ネット50、捕集部60、電気供給部70、制御部72を備える。
【0018】
有機ガス供給部10は有機ガスを発生する。有機ガス供給部10は繊維質シート11(第1、第2の繊維質シート11A,11B)、アルコール漕12、乳酸漕13、有機液伝送具14(第1、第2の有機液伝送具14A,14B)、を有する。例えば、アルコール漕12にアルコールを含む有機液としての酒を収容しておく。アルコール漕12の上にはシート置台65が設置され、シート置台65上に第1の繊維質シート11Aとしての第1の布製シートが敷かれる。第1の布製シート11Aの一端は第1の有機液伝送具14Aとして下に垂らされアルコール漕12内の酒に浸漬される。そしてアルコール漕12から酒を第1の布製シート11Aに毛管現象により吸い上げる。これにより、第1の布製シート11Aは酒を含浸したものとなる。そして、第1の布製シート11Aからアルコールが揮発する(20℃でのエタノールの蒸気圧は0.058気圧)。また、乳酸漕13に乳酸を含む有機液としての牛乳を収容しておく。乳酸漕13の上にはシート置台65が設置され、シート置台65上に第2の繊維質シート11Bとしての第2の布製シートが敷設される。第2の布製シート11Bの一端は第2の有機液伝送具14Bとして下に垂らされ乳酸漕13内の牛乳に浸漬される。そして乳酸漕13から牛乳を第2の布製シート11Bに毛管現象により吸い上げる。これにより、第2の布製シート11Bは牛乳を含浸したものとなる。そして、第2の布製シート11Bから乳酸が揮発する(20℃での乳酸の蒸気圧は3.9×10−6気圧)。
【0019】
紫外線照射部20は紫外線を照射する。紫外線照射部20として、例えば、紫外線LED等の紫外線ランプが使用される。本実施例では紫外線LEDを使用し、有機ガス供給部10の上方に設置され、有機ガス供給部10の方向に照射する。紫外線はアナターゼ型酸化チタンのバンドギャップ3.2eVに相当する388nm以下の波長のものを使用できる。例えば、10cm×10cmボードの下面に5mmφ、ピーク波長375nmの紫外線LEDを4×4=16個配置する。リード線はボードの上側に配線して引き出し、まとめて操作盤72を介して電気供給部70に導かれる。
【0020】
光触媒部30は紫外線を受光し、有機ガス(アルコールガス等)を分解して炭酸ガスを発生させるアナターゼ型酸化チタン光触媒シート31を有する。この光触媒シート31は有機ガス供給部10と紫外線照射部20の間に敷設される。すなわち、繊維質シート11上にスペーサ32を介して敷設される。紫外線照射部20とアナターゼ型酸化チタン光触媒シート31はアナターゼ型酸化チタン光触媒を担持するシートである。アナターゼ型酸化チタンは波長388nm以下の紫外線を受光すると、強い酸化力を持つヒドロキシルラジカル(OHラジカル)を生成し易い正孔と強い還元力を持つスーパーオキサイドアニオンを生成し易い電子が発生する。アナターゼ型酸化チタンは間接遷移型半導体であるため、正孔と電子は即座に再結合せず、直接遷移型のルチル型酸化チタンに比して電子の寿命は10倍以上(10ns)になる。ヒドロキシルラジカル、スーパーオキサイドアニオン、正孔、電子等の活性種は第1の繊維質シート11Aから揮発したアルコールを炭酸ガス及び水蒸気に分解する。アナターゼ型酸化チタンでは正孔及び電子が長寿命であるため、活性種を発生し続け、アルコールの分解を促進する。分解速度定数は1.80〜1.86と抜群の処理能力を示し、分解効率が著しく高い。スペーサ32は、例えばプラスチック製で四の字型の枠体で構成し、繊維質シート11(第1、第2の繊維シート11A,11B)上に置かれて、アナターゼ型酸化チタン光触媒シート31を搭載支持する。光触媒シート31が直接繊維質シート11に接触しないように支持すればよく、高さを例えば10〜30mm等、ある程度自由に設定できる。
【0021】
図2に酸化チタン光触媒シートの構成例を示す。アナターゼ型酸化チタン光触媒シート31は、アナターゼ型酸化チタン粒子36を担持した光触媒シートである。基板としてチタン箔33を使用し、その片面又は両面から非周期的パターンによるエッチング処理を施すことにより、表裏を貫通する多数の微細流路34が形成されている。これにより、当該チタン箔33は非周期性海綿構造を有するものとなっている。かかる非周期性海綿構造を有するチタン箔33の表面に陽極酸化を施すことにより、陽極酸化被膜による酸化チタンベース35が形成されている。陽極酸化被膜はチタン箔33の表裏両面だけでなく、微細流路34の内壁面にも形成される。そして、当該酸化チタンベース35にアナターゼ型酸化チタン粒子36が焼き付けられて光触媒層37が形成されている。陽極酸化処理及び焼き付け処理により、チタン箔33にはひび割れ38が多数出現する。酸化チタンベース35の膜厚は例えば70〜150nmであり、酸化チタンベース35及び光触媒層37はひび割れ38を覆って形成されている。陽極酸化被膜による酸化チタンベース35と光触媒層37は、酸化チタン同士が結合することでその結合性が極めて強く、光触媒層37が剥がれ難くなっている。さらに、微細流路34の表面が複雑な凹凸形状をなし、ミクロンオーダーの微細なひび割れを有するので、光触媒層37の表面積が増え、触媒による分解効率が格段に向上する。また、紫外線を照射したときに光触媒層37の表面及び酸化チタンベース35との界面で乱反射・光散乱が起き、紫外線を効率良く使用できる。
【0022】
図1に戻る。収納容器40は有機ガス供給部10、紫外線照射部20及び光触媒部30を収納する。また、蚊が収納容器40の中の炭酸ガス及び乳酸に惹かれて中に入るための窓41を有する。窓41は収納容器40の側面のほぼ全方向に、およそ有機ガス供給部10と紫外線照射部20の間の高さに設けられる。また、収納容器40にはアルコール漕12及び乳酸漕13を出し入れする扉42が取り付けられている。蚊選別ネット50は、収納容器40の窓41を覆うように設置される。蚊選別ネット50は、蚊が通れる寸法より少し大きい寸法の網目を有する。殆どの蚊が細長い体系で15mm以下であり、羽をすぼめて通ることも可能であることから、蚊が通れる寸法より少し大きい寸法とは、例えば10mm〜15mmとする。これにより、蛾等の大きな昆虫が蚊の侵入を妨げることが大いに減少する。捕集部60は収納容器40に侵入した蚊を捕集する。捕集部60は、粘着シート61又は吸引器を有する。本実施例では粘着シート61が用いられる。蚊選別ネット50の内側に、多数の帯状の粘着シート61が蚊選別ネット50に沿って上下方向に取り付けられる。そして、蚊選別ネット50を通過して収納容器40の中に侵入し、粘着シート61の片面又は両面に塗布された粘着層に触れた蚊を、粘着層に粘着して捕集する。蚊選別ネット50を収納容器40の窓41に着脱可能にして、窓41から取り外すことにより、蚊を捕集した粘着シート61を回収し、新しい粘着シート61を取り付ける。また、粘着シート61はその上下端を例えばフック、クリップ、マグネット等の止め具64を用いて着脱可能に収納容器40内に取り付けられる。
【0023】
電気供給部70は紫外線LED21及び制御部90に電気を供給する。電気供給部70は例えば収納容器40の中のシート置台65の下の空間で、アルコール漕12及び乳酸漕13の残りの空間に設置される。本実施例では電気供給部70を商用電源に接続し、交流100Vを紫外線LED21に必要な例えば直流約4V、約6V、約8V等に変換する。制御部72は本実施例では操作盤からなる。操作盤72は収納容器40の外側に設けられる。操作盤72には電気供給部70のスイッチ(紫外線LEDの点灯/消灯を兼ねる)と紫外線LED21の光量調節ダイヤルが取り付けられており、紫外線LED21の点灯/消灯とその光量の調節が可能である。また、操作盤72にはアルコール漕12及び乳酸漕13の残量を示すメータが取り付けられる。酒及び/又は牛乳の残量が少なくなった時には、扉42を開けて補充する。
【0024】
〔作用〕
次に、蚊取り器1の作用について説明する。第1の布製シート11Aはアルコール漕12から酒を吸い上げて、アルコールを揮発する。第2の布製シート11Bは乳酸漕13から牛乳を吸い上げて、乳酸を揮発する。紫外線LEDから波長388nm以下の紫外線をアナターゼ型酸化チタン光触媒シート31に照射すると、ヒドロキシルラジカル(OHラジカル)、スーパーオキサイドアニオン、正孔、電子等の活性種を発生する。これらの活性種は第1の繊維質シート11Aから揮発したアルコールを炭酸ガス及び水に分解する。炭酸ガス及び乳酸に惹かれて蚊が収納容器40の窓41に設けられた蚊選別ネット50を通って蚊が侵入する。収納容器40内に侵入した蚊が粘着シート61に触れると、粘着シート61に捕集される。
【0025】
アナターゼ型酸化チタンの分解効率は非常に大きいので、蚊の捕集効率が著しく改善された。また、表裏を貫通する多数の微細流路34が形成されているので、光触媒層37の表面積が増える。また、紫外線を照射したときに光触媒層37の表面及び酸化チタンベース35との界面で乱反射・光散乱が起き、紫外線を効率良く使用できる。これらにより、有機ガスの分解効率が格段に向上し、蚊の捕集効率も格段に向上する。また、陽極酸化被膜による酸化チタンベース35と光触媒層37は、酸化チタン同士が結合することでその結合性が極めて強く、光触媒層37が剥がれ難くなっている。このため、蚊取り器1が長寿命になる。
【実施例2】
【0026】
実施例1では、酸化チタン光触媒シート31が平板状である例について説明したが、実施例2では、酸化チタン光触媒シート31Aが一方向に沿って連続する起伏が波板状に形成された例について説明する。
【0027】
図3に実施例2における酸化チタン光触媒シート31Aの構成例を示す。陽極酸化処理の前又は後に波板状にプレス加工して形成される。波板状とすることにより、平板状よりさらに光触媒層37の表面積が増えるので、光触媒効果を高めることができる。その他の構成は実施例1と同様であり、実施例1と同様の効果を奏する。
【実施例3】
【0028】
実施例1では、酸化チタン光触媒シート31が非周期性海綿構造を有する例について説明したが、実施例3では、非周期性海綿構造に代えて、酸化チタン光触媒シート31Bが切込部位を曲げ加工して開口された多数の流通口45と、ガスが流通口45を流通する被処理流体と衝突する位置に曲げ加工された切込部位からなる多数の衝突片46を有する例について説明する。
【0029】
図4に実施例2における酸化チタン光触媒シート31Bの構成例を示す。図4(A)は正面図、図4(B)はその縦断面図、図4(C)は拡大斜視図、図4(D)はA−A断面図である。陽極酸化処理の前に切込部位を作成し、チタン箔33Bを曲げ加工する。酸化チタン光触媒シート31Bは切込部位を曲げ加工して開口された多数の流通口45と、有機ガスが流通口45を流通する被処理流体と衝突する位置に曲げ加工された切込部位からなる多数の衝突片46を有している。これにより、光触媒シート31Bの片側から反対側へ透過する有機ガスが衝突流路47A,47Bを通過する際に衝突片46に衝突されて、方向を変えながら光触媒シート31Bの反対側へ透過されることになる。すなわち、流通口45側から衝突片46側に流れる有機ガスは、衝突片46に衝突して光触媒シート31Bの反対面側に拡散される。衝突片46側から流通口45側に流れる有機ガスは、衝突片46に衝突してこれを回り込むように流れて流通口45から光触媒シート31Bの反対面側に透過される。これにより、有機ガスは光触媒シート31Bに沿って流れ、光触媒層37に触れる時間が多くなり、光触媒による有機ガスの分解効果を増加させる。さらに、光触媒シート31Bの表面はサンドブラスト等により粗面化された凹凸面44となっており、その表層に陽極酸化被膜39が形成され、さらにその表面に、アナターゼ型酸化チタン粒子36が付着焼成された光触媒層37が形成されている。
酸化チタン光触媒シート31B以外の構成は実施例1と同様であり、実施例1と同様な効果を奏する。
【実施例4】
【0030】
図5に実施例4における酸化チタン光触媒を用いた蚊取り器1Aの構成例を概略的に示す。以上の実施例では捕集部が粘着シート61を有する例を説明したが、実施例4では捕集部が吸引器62を有する例を説明する。吸引器62は例えば収納容器40の窓41近くの一方向に設置され、その後方に位置する蚊選別ネット50の部分を取り外して補虫ネット63を取り付ける。吸引器62のファンを回転させて収納容器40の内部にいる蚊を吸引し、補虫ネット63中に放出する。補中ネット63の袋口を紐で縛って蚊を捕集する。
捕集部60及び蚊選別ネット50以外の構成は実施例1と同様であり、実施例1と同様な効果を奏する。
【実施例5】
【0031】
図6に実施例5における酸化チタン光触媒を用いた蚊取り器1Bの構成例を概略的に示す。以上の実施例では電源に商用電源を用いる例を説明したが、実施例5では、蚊取り器1Bの電源に風車71を用いる例について説明する。屋外等の商用電源に接続困難な場所で使用する際に便宜である。
現在、プロペラ径20cm、出力14.5V,最大出力2.8Wの超小型風力発電機が市販されている。例えば紫外線LED1個当たりの順電圧4V,光出力15mWなので、かかる超小型風力発電機も電源に使用可能である。かかる超小型力発電機の風車71を風況の良い所に設置する。風車71は蚊取り器1B周辺の空気の流れに影響を与えないように蚊取り器1Bから離れた場所に設置するのが好ましい。また、常時電力を供給できるように、風車71に蓄電器を接続して使用することが好ましい。風車の代わりに太陽電池を用いても良い。太陽電池も約60cm×40cmで最大電力30W,17.0Vの小型モジュールが市販されており、電源に使用可能である。これらの電源を電気供給部70に接続し、電気供給部70にて紫外線LED21に適する電圧に変換して使用する。また、常時電力を供給できるように、太陽電池に蓄電器を接続して使用することが好ましい。また、風車又は太陽電池に代えて電池を使用しても良い。電池を直列連結して紫外線LED21に適する電圧にして供給する。天候や風に依存せず常時安定して電力を供給でき、任意の場所に持ち運んで使用する場合や商用電源に接続困難な場所で使用する場合に便宜である。
電源と電気供給部以外の構成は実施例1と同様であり、実施例1と同様な効果を奏する。
【実施例6】
【0032】
以上の実施例では、蚊の誘引材料としてアルコールと乳酸を使用する例を説明したが、実施例6では、この成分に蚊の誘引材料を追加する例を説明する。蚊は炭酸ガスを好む。さらに炭酸ガスに乳酸を混合すると、蚊を良く誘引する。乳酸は、D−乳酸よりL−乳酸の方が良く誘引する。さらに、含硫アミノ酸、メチオニン、シスチン、システインが高い誘引性を示すとの報告もある。また、棲息水の臭いにも誘引される。また、蜂蜜、マテバシイの花にも誘引される。したがって、これら誘引材料、例えば棲息水を収納容器内で揮発させると、一層蚊を誘引できる。
その他の構成は実施例1と同様であり、実施例1と同様な効果を奏する。
【実施例7】
【0033】
以上の実施例では、紫外線照射部20として紫外線LEDを用いる例を説明したが、本実施例では直管型紫外線ランプを用いる例を説明する。
58cm長、20W型の直管型の紫外線LEDランプ等が市販されている。このような直管型を用いると、紫外線照射部20は直管型のランプを、長手方向を水平にして光触媒シート31の上方に設置する。2本平行に並べて設置しても良い。また、ボードを用いず、収納容器40に直接又は間接的に取り付けても良い。また、直管型のLEDランプの代わりに直管型の紫外線蛍光灯を用いても良い。
紫外線照射部20以外の構成は実施例1と同様であり、実施例1と同様な効果を奏する。
【実施例8】
【0034】
以上の実施例では、紫外線照射部20を光触媒シート31の上方に設置する例を説明したが、実施例8では蚊取り器を円筒型とし、円筒の中心軸(鉛直線上)に直管型の紫外線ランプを設置する例を説明する。
【0035】
図7に実施例8における酸化チタン光触媒を用いた蚊取り器1Cの構成例を示す。紫外線照射部20の直管型の紫外線ランプ22を円筒の中心軸上に配置する。直管型の紫外線ランプ22を中心にして、光触媒部30のアナターゼ型酸化チタン光触媒シート31を同心円状に円周方向に配置する。光触媒シート31の周囲に、有機ガス供給部10の繊維質シート11を同心円状に配置する。第1の繊維質シート11Aの下側(一端)の部分は第1の有機液伝送具14Aとして下に垂らされアルコール漕12内の酒に浸漬される。第2の繊維質シート11Bの下側(一端)の部分は第2の有機液伝送具14Bとして下に垂らされ乳酸漕13内の牛乳に浸漬される。繊維質シート11の周囲に収納容器40を、側面を同心円状に配置する。収納容器40の側面にはほぼ全方向に窓41が設けられ、収納容器40の窓41を覆うように蚊選別ネット50が設置される。窓41は例えばアルコール漕12及び乳酸漕13より上側の高さで、収納容器40の蓋の下側に設けられる。蚊選別ネット50の内側に、多数の帯状の粘着シート61が蚊選別ネット50に沿って上下方向に取り付けられる。
このように配置すれば円筒型の蚊取り器1Cを構成できる。各部の配置は異なるが、各部の材料は実施例1と同様であり、実施例1と同様な効果を奏する。
【0036】
例えば、以上の実施例では、有機ガス供給部10において、繊維質シート11にアルコール及び乳酸を導くのに有機液伝送具14として布製シートの一端を使用する例を説明したが、有機液伝送具14として点滴針を用いても良い。すなわち、アルコール漕及び乳酸漕として、繊維質シート11の上方にアルコール点滴ビン及び乳酸点滴ビンを置き、アルコール点滴ビン及び乳酸点滴ビンから点滴針を通して繊維質シート11にアルコール及び乳酸を滴下しても良い。また、以上の実施例では繊維質シート11として布製シートを使用する例を説明したが、繊維質シートとして紙製シートを使用しても良い。また、以上の実施例では、有機液としてアルコール及び乳酸を共に使用する例を説明したが、乳酸に代えて乳酸エチル(20℃での蒸気圧は0.00355気圧)を使用しても良く、乳酸を省くことも可能である。その他、光触媒シート31や繊維質シート11の寸法、形状、蚊取り器内部の部品の配置等、適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は蚊取り器に利用できる。
【符号の説明】
【0038】
1,1A〜1E 蚊取り器
10 有機ガス供給部
11 繊維質シート
11A 第1の繊維質シート(第1の布製シート)
11B 第2の繊維質シート(第2の布製シート)
12 アルコール漕
13 乳酸漕
14 有機液伝送具
14A 第1の有機液伝送具(第1の布製シートの一端)
14B 第2の有機液伝送具(第2の布製シートの一端)
20 紫外線照射部
21 紫外線LED
22 直管型紫外線ランプ
30 光触媒部
31,31A,31B 酸化チタン光触媒シート
32 スペーサ
33,33B チタン箔
34 微細流路
35 酸化チタンベース
36 アナターゼ型酸化チタン粒子
37 光触媒層
38 ひび割れ
38A 凹凸面
39 陽極酸化被膜
40,40A 収納容器
41 窓
42 扉
45 流通口
46 衝突片
47A,47B 衝突流路
50 蚊選別ネット
60 捕集部
61 粘着シート
62 吸引器
63 捕虫ネット
64 止め具
65 シート置台
70 電気供給部
71 風車
72 制御部(操作盤)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7