特許第6388399号(P6388399)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6388399化合物、磁性流体組成物及びその製造方法並びに磁性流体シール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388399
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】化合物、磁性流体組成物及びその製造方法並びに磁性流体シール
(51)【国際特許分類】
   C07C 233/54 20060101AFI20180903BHJP
   C10M 133/06 20060101ALI20180903BHJP
   C10M 133/12 20060101ALI20180903BHJP
   B01F 17/16 20060101ALI20180903BHJP
   B01F 17/22 20060101ALI20180903BHJP
   B01F 17/42 20060101ALI20180903BHJP
   F16J 15/40 20060101ALI20180903BHJP
   H01F 1/34 20060101ALI20180903BHJP
   H01F 1/28 20060101ALI20180903BHJP
   C07C 231/02 20060101ALN20180903BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20180903BHJP
   C10N 40/14 20060101ALN20180903BHJP
【FI】
   C07C233/54CSP
   C10M133/06
   C10M133/12
   B01F17/16
   B01F17/22
   B01F17/42
   F16J15/40
   H01F1/34
   H01F1/28
   !C07C231/02
   C10N30:04
   C10N40:14
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-226961(P2014-226961)
(22)【出願日】2014年11月7日
(65)【公開番号】特開2016-88904(P2016-88904A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】吉本 成香
(72)【発明者】
【氏名】近藤 行成
(72)【発明者】
【氏名】岡部 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】森高 大地
【審査官】 三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−001424(JP,A)
【文献】 特開平06−135889(JP,A)
【文献】 特開2009−149601(JP,A)
【文献】 特開平09−067333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 233/54
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(6)で表される化合物又はその塩。
【化1】
(式中、は、炭素数2〜6のアルキレン基であり、は、炭素数2〜6のアルキレン基であり、nは、1〜10の整数である。)
【請求項2】
請求項1記載の化合物又はその塩を含有する分散剤。
【請求項3】
請求項1記載の化合物又はその塩、磁性粒子及びイオン液体を含有する磁性流体組成物。
【請求項4】
前記イオン液体は、N−アルキルピリジニウム塩を含む、請求項記載の磁性流体組成物。
【請求項5】
前記磁性粒子は、マグネタイトを含む、請求項又は記載の磁性流体組成物。
【請求項6】
下記工程(A)又は工程(B)を含む、請求項の何れか1項記載の磁性流体組成物の製造方法。
工程(A):
磁性粒子と、請求項1記載の化合物又はその塩とを吸着させてなる吸着粒子を得る吸着工程、及び、
前記吸着粒子をイオン液体に分散する分散工程
工程(B):
イオン液体と、請求項1記載の化合物又はその塩とを混合して第1混合物を得る第1混合工程、及び、
前記第1混合物と、磁性粒子とを混合する第2混合工程
【請求項7】
請求項の何れか1項記載の磁性流体組成物を含有する磁性流体シール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、当該化合物を用いる磁性流体組成物及びその製造方法並びに当該磁性流体組成物を含有する磁性流体シールに関する。
【背景技術】
【0002】
磁性流体組成物は、一般に磁性粒子を含有し、磁場中の強磁場部(磁極位置)に保持される。かかる性質を利用して、磁性流体組成物は、例えば半導体加工等に用いられる軸受用潤滑油、ダストシール、真空シール材等としての磁性流体シールに用いられている。
【0003】
磁性流体組成物が磁場に応じて保持されるためには、磁場の作用でその流動学的性質が変化する必要がある。そのためには、磁性粒子が磁性流体組成物において十分に分散されている必要がある。
【0004】
磁性流体組成物に用いられる分散剤としては、例えば、多糖類、ポリアクリレート、ポリエステル等の高分子状の分散剤のほか、アニオン性やカチオン性、両性、ノニオン性界面活性剤(例えば、特許文献1)、分子内に2個以上のアニオン基を有する化合物、イミダゾリウムカチオン等の有機カチオン、金属カチオン等(例えば、特許文献2)、ポリ(メタ)アクリル酸(例えば、特許文献3)、主鎖又は側鎖に芳香環及びスルホン酸基を有するアニオン性高分子分散剤(例えば、特許文献4)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/034820号
【特許文献2】国際公開第2006/132252号
【特許文献3】特開2008−177526号公報
【特許文献4】特開2008−258564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、磁性流体組成物は、沈降しやすい磁性粒子を含有するため、その分散性を高めるニーズがあった。
【0007】
本発明は、磁性流体組成物に分散剤として用いることができる新規化合物、当該化合物を用いる磁性流体組成物及びその製造方法並びに当該磁性流体組成物を含有する磁性流体シールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、アミノ基及びカルボキシ基を両端に有する特定構造の新規化合物が分散剤として作用することができ、しかも、沈降性の高い磁性流体組成物にも分散剤として用いることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
[1]下記一般式(1)で表される化合物又はその塩。
【化1】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、ヘテロ原子を有してもよい炭素数2〜16の2価の有機基であり、Xは、炭素数2〜6のアルキレン基であり、nは、1〜10の整数である。)
[2]上記Rは、下記一般式(2)で表される、上記[1]記載の化合物又はその塩。
【化2】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜11のアルキレン基であり、Arは、アリーレン基であり、mは、1〜3の整数である。)
[3]上記Rは、下記一般式(3)で表される、上記[1]又は[2]記載の化合物又はその塩。
【化3】
(式中、Rは、単結合又は炭素数1〜11のアルキレン基であり、Arは、アリーレン基であり、Rは、単結合又は−CO−O−CO−、−NHCO−及び/若しくは−OCO−を鎖中に有してもよい炭素数1〜11のアルキレン基である。)
[4]下記一般式(4)で表される上記[1]記載の化合物又はその塩。
【化4】
(式中、Yは、−NH−、−O−、*−X−NH−又は*−X−O−であり、*は、上記一般式(4)においてYに隣接するベンゼン環との結合手を示し、Xは、炭素数1〜11のアルキレン基であり、Rは、−CO−O−CO−を鎖中に有してもよい炭素数1〜11のアルキレン基である。X及びnは、上記のとおり。)
[5]下記一般式(5)で表される上記[1]記載の化合物又はその塩。
【化5】
(式中、R、X及びnは、上記のとおり。)
[6]下記一般式(6)で表される上記[1]記載の化合物又はその塩。
【化6】
(式中、Xは、炭素数2〜6のアルキレン基である。X及びnは、上記のとおり。)
【0010】
[7]下記一般式(7)で表されるアミノ基含有化合物に、ジカルボン酸、ジカルボン酸ハロゲン化物及びカルボン酸無水物からなる群より選択される少なくとも1つを反応させることを含む、上記[4]記載の化合物又はその塩の製造方法。
【化7】
(式中、YHは、アミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜11のアミノアルキル基又は炭素数1〜11のヒドロキシアルキル基である。X及びnは、上記のとおり。)
【0011】
[8]上記[1]〜[6]の何れか1項記載の化合物又はその塩を含有する分散剤。
【0012】
[9]上記[1]〜[6]の何れか1項記載の化合物又はその塩、磁性粒子及びイオン液体を含有する磁性流体組成物。
[10]上記イオン液体は、N−アルキルピリジニウム塩を含む、上記[9]記載の磁性流体組成物。
[11]上記磁性粒子は、マグネタイトを含む、上記[9]又は[10]記載の磁性流体組成物。
【0013】
[12]下記工程(A)又は工程(B)を含む、上記[9]〜[11]の何れか1項記載の磁性流体組成物の製造方法。
工程(A):
磁性粒子と、上記[1]〜[6]の何れか1項記載の化合物又はその塩とを吸着させてなる吸着粒子を得る吸着工程、及び、
上記吸着粒子をイオン液体に分散する分散工程
工程(B):
イオン液体と、上記[1]〜[6]の何れか1項記載の化合物又はその塩とを混合して第1混合物を得る第1混合工程、及び、
前記第1混合物と、磁性粒子とを混合する第2混合工程
[13]上記[9]〜[11]の何れか1項記載の磁性流体組成物を含有する磁性流体シール。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、磁性流体組成物に分散剤として用いることができる新規化合物、当該化合物を用いる磁性流体組成物及びその製造方法並びに当該磁性流体組成物を含有する磁性流体シールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の磁性流体組成物の製造方法の一実施態様(調製例1)を示すスキームである。
図2】本発明の磁性流体組成物の製造方法の一実施態様(調製例2)を示すスキームである。
図3】本発明の磁性流体組成物の製造方法の一実施態様(調製例3)を示すスキームである。
図4】本発明の磁性流体シールの一実施態様を示す模式斜視図である。
図5】実施例1で得た本発明の一般式(1)で表される化合物又はその塩のH−NMRスペクトルである。
図6】調製例1で得た本発明の磁性流体組成物の熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA)の測定結果である。
図7】調製例1で得た本発明の磁性流体組成物のX線光電子分光(XPS)の測定結果である。
図8】調製例1により得た、磁性粒子に分散剤が吸着してなる吸着粒子のSEM写真である。
図9】調製例2により得た、磁性粒子に分散剤が吸着してなる吸着粒子のSEM写真である。
図10】調製例3により得た、磁性粒子に分散剤が吸着してなる吸着粒子のSEM写真である。
図11】分散剤を吸着する前のマグネタイト粒子のSEM写真である。
図12】調製例1、2で得た吸着粒子の動的光散乱法(DLS)の測定結果である。
図13】調製例3で得た吸着粒子の動的光散乱法(DLS)の測定結果である。
図14】比較用のマグネタイトの市販品の動的光散乱法(DLS)の測定結果である。
図15】調製例1で得た磁性流体組成物の磁石に対する反応性を観察した写真である。
図16】調製例3で得た10質量%及び15質量%各磁性流体組成物の1週間静置後の磁石に対する反応性を観察した写真である。
図17】調製例3で得た5質量%磁性流体組成物の1週間静置後の磁石に対する反応性を観察した写真である。
図18】調製例3で得た5質量%磁性流体組成物の2週間静置後の磁石に対する反応性を観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0017】
<本発明の化合物又はその塩>
本発明の化合物又はその塩は、下記一般式(1)で表される。
【化8】
【0018】
上記式中、Xは、炭素数2〜6のアルキレン基である。アルキレン基としては、直鎖状又は分岐状の何れであってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、tert−ブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン等が挙げられ、炭化水素3〜5のアルキレン基が好ましく、炭化水素3〜5の直鎖状アルキレン基がより好ましい。
【0019】
上記式中、nは、1〜10の整数であり、1〜8の整数が好ましく、2〜6の整数がより好ましい。
【0020】
上記式中、R及びRは、それぞれ独立に、ヘテロ原子を有してもよい炭素数2〜16の2価の有機基である。2価の有機基としては、例えば炭素数1〜20の有機基が挙げられる。具体的には、例えば、上述したようなアルキレン基;フェニレン基等のアリーレン基;これらの組み合わせ等が挙げられる。上記有機基としては、アリーレン基を含むものが好ましい。R及びRは、同一であっても異なっていてもよいが、異なることが好ましい。
【0021】
上記2価の有機基が有してもよいヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子等の有機基に用いられ得る原子であってよいが、酸素原子、窒素原子が好ましい。これらのヘテロ原子のうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。ヘテロ原子の個数としては、例えば、1〜6個等が挙げられ、1〜3個が好ましく、1〜2個がより好ましい。
【0022】
上記2価の有機基は、カルボニル基、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−OC(=O)−)、アミド結合(−NHC(=O)−)、カーボネート基(−C(=O)−O−C(=O)−)を含んでいてもよく、カルボニル基、−NHCO−、−OCO−を含むものが好ましい。Rとしての2価の有機基としては、上記一般式(1)における−[O−X−に隣接するカルボニル基を含むものが好ましい。Rとしての2価の有機基としては、−NHCO−、−OCO−を含むものが好ましく、−NHCO−を含むものがより好ましい。
【0023】
としての、ヘテロ原子を有してもよい2価の有機基としては、アリーレン基及びカルボニル基を含むものが好ましい。Rとしての、ヘテロ原子を有してもよい2価の有機基としては、アリーレン基及びアルキレン基並びに−NHCO−及び/若しくは−OCO−を含むものが好ましい。
【0024】
上記Rは、下記一般式(2)で表される2価の有機基であることが好ましい。
【化9】
【0025】
上記式中、R及びRは、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜11のアルキレン基である。アルキレン基としては上述したもの等が挙げられ、炭化水素1〜6のアルキレン基が好ましく、炭化水素1〜4のアルキレン基がより好ましく、炭化水素1〜2のアルキレン基が更に好ましく、炭化水素1のアルキレン基が更により好ましい。R及びRは、同一であっても異なっていてもよいが、異なっていてよい。R及びRは、単結合であることが好ましい。
【0026】
上記式中、Arは、アリーレン基であり、炭素数5〜20のアリーレン基が好ましく、炭素数5〜13のアリーレン基がより好ましい。アリーレン基は、単環であってもよいし縮合環であってもよい。アリーレン基としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、及びフェナントレン等の芳香族炭化水素環;該芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環から水素原子を2つ除いた基が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられ、ピリジン環が好ましい。アリーレン基としては芳香族炭化水素環から水素原子を2つ除いた基が好ましく、かかる芳香族炭化水素環としては、単環系芳香族炭化水素環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
【0027】
上記式中、mは、1〜3の整数であり、1〜2の整数が好ましく、1がより好ましい。
【0028】
上記Rは、下記一般式(3)で表される2価の有機基であることが好ましい。
【化10】
【0029】
上記式中、Rは、単結合又は炭素数1〜11のアルキレン基であり、上述のR及びRと同様の説明、例示及び好ましいものが該当する。
【0030】
上記式中、Arは、アリーレン基であり、上述のArと同様の説明、例示及び好ましいものが該当する。
【0031】
上記式中、Rは、単結合、又は、−CO−O−CO−、−NHCO−及び/若しくは−OCO−を鎖中に有してもよい炭素数1〜11のアルキレン基であり、後者の−CO−O−CO−、−NHCO−及び/若しくは−OCO−を鎖中に有してもよい炭素数1〜11のアルキレン基が好ましく、−CO−OCO−を鎖中に有してもよくArに隣接する−NHCO−を有する炭素数1〜11のアルキレン基がより好ましく、Arに隣接する−NHCO−を有する炭素数1〜11のアルキレン基が更に好ましい。
としての該炭素数1〜11のアルキレン基としては、上述のR及びRとしての炭素数1〜11のアルキレン基と同様の説明及び例示が該当し、炭化水素1〜10のアルキレン基が好ましく、炭化水素2〜8のアルキレン基がより好ましく、炭化水素2〜6のアルキレン基が更に好ましい。
【0032】
本発明の化合物又はその塩としては、下記一般式(4)で表される化合物又はその塩が好ましい。
【化11】
【0033】
上記式中、X及びnは、上記のとおりである。
上記式中、Yは、−NH−、−O−、*−X−NH−又は*−X−O−であり、*は、上記一般式(4)においてYに隣接するベンゼン環との結合手を示し、Xは、炭素数1〜11のアルキレン基である。Xとしての該炭素数1〜11のアルキレン基としては、上述のR及びRとしての炭素数1〜11のアルキレン基と同様の説明、例示及び好ましいものが該当する。Yとしては、−NH−、*−X−NH−が好ましく、−NH−がより好ましい。
【0034】
上記式中、Rは、−CO−O−CO−を鎖中に有してもよい炭素数1〜11のアルキレン基であり、炭素数1〜11のアルキレン基が好ましい。Rとしての該炭素数1〜11のアルキレン基としては、上述のR及びRとしての炭素数1〜11のアルキレン基と同様の説明、例示及び好ましいものが該当する。
【0035】
本発明の化合物又はその塩としては、下記一般式(5)で表される化合物又はその塩が好ましい。
【化12】
【0036】
上記式中、X、R及びnは、上記のとおりである。
【0037】
本発明の化合物又はその塩としては、下記一般式(6)で表される化合物又はその塩がより好ましい。
【化13】
【0038】
上記式中、X及びnは、上記のとおりである。
上記式中、Xは、炭素数2〜6のアルキレン基であり、炭素数3〜5のアルキレン基が好ましい。
【0039】
本発明の化合物の塩としては、特に限定されないが、カルボキシ基が形成する塩として、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩等が挙げられ、アミノ基が形成する塩として、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;シュウ酸塩、ギ酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。
【0040】
<本発明の化合物又はその塩の製造方法>
本発明の化合物又はその塩の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、上述の一般式(1)におけるHN−R−[O−X−を有する化合物等のアミノ基含有化合物に、カルボン酸、カルボン酸誘導体等の、一般式(1)における末端のカルボキシ基を供給する化合物(以下、「カルボキシ基供給化合物」ということがある。)を反応させることを含む方法等が挙げられる。
【0041】
本発明の化合物が、上述の一般式(1)におけるRが上述の一般式(2)(但し、R及びRは単結合であり、Arはフェニレン基であり、mは1である。)で表され、一般式(1)におけるRが上述の一般式(3)(但し、Rは単結合であり、Arはフェニレン基であり、Rは−NHCO−及び/若しくは−OCO−を鎖中に有してもよく更に−CO−O−CO−を鎖中に有してもよい炭素数1〜11のアルキレン基である。)で表される化合物である場合、例えば、下記一般式(7)で表されるアミノ基含有化合物に、カルボキシ基供給化合物を反応させることを含む方法等が挙げられる。
【化14】
【0042】
上記式中、X及びnは、上記のとおりである。
上記式中、YHは、アミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜11のアミノアルキル基又は炭素数1〜11のヒドロキシアルキル基である。後二者のアミノアルキル基及びヒドロキシアルキル基が有する炭素数1〜11のアルキレン基としては、上述のR及びRとしての炭素数1〜11のアルキレン基と同様の説明、例示及び好ましいものが該当する。YHとしては、アミノ基、炭素数1〜11のアミノアルキル基が好ましく、アミノ基がより好ましい。
上記アミノ基含有化合物は、特に限定されないが、公知の方法により調製することができる。
【0043】
カルボキシ基供給化合物としては、上述のアミノ基含有化合物との反応性を有し、該反応により得られる本発明の化合物の末端にカルボキシ基を導入することとなる化合物であれば特に限定されず、例えば、ジカルボン酸、ジカルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸無水物等が挙げられ、反応性の点で、ジカルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸無水物が好ましく、ジカルボン酸ハロゲン化物がより好ましい。
【0044】
ジカルボン酸ハロゲン化物としては、ジカルボン酸塩化物、ジカルボン酸臭化物、ジカルボン酸ヨウ化物が好ましく、ジカルボン酸塩化物、ジカルボン酸臭化物がより好ましく、ジカルボン酸塩化物が更に好ましい。
カルボン酸無水物としては、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸等のポリカルボン酸の分子内酸無水物が好ましく、ジカルボン酸の分子内酸無水物がより好ましい。
【0045】
カルボキシ基供給化合物としては、炭素数3〜13の直鎖状若しくは分岐状の飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸等が挙げられ、炭素数3〜13の直鎖状若しくは分岐状の飽和脂肪族カルボン酸が好ましく、炭素数3〜13の直鎖状の飽和脂肪族カルボン酸がより好ましい。かかるカルボキシ基供給化合物の炭素数としては、3〜12が好ましく、4〜10がより好ましく、4〜8が更に好ましい。
【0046】
カルボキシ基供給化合物としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のジカルボン酸;該ジカルボン酸のハロゲン化物、無水物等が挙げられる。
カルボキシ基供給化合物としては、2種以上を用いてもよいが、1種のみを用いることで十分に反応させることができる。
カルボキシ基供給化合物は、特に限定されないが、公知の方法により調製することができる。
【0047】
上述のアミノ基含有化合物に、カルボキシ基供給化合物を反応させる方法としては、特に限定されないが、公知の方法を用いることができ、例えば、溶媒に溶解させたアミノ基含有化合物に、水酸化ナトリウム等の塩基の存在下、ジカルボン酸ハロゲン化物を添加して反応させる方法等が挙げられる。
カルボキシ基供給化合物としてジカルボン酸、ジカルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸無水物等を用いる場合、本発明の化合物又はその塩としては、アミノ基含有化合物が有するアミノ基1個に対し、これらカルボキシ基供給化合物が2分子以上付加したものであってもよい。かかるアミノ基1個に対して複数分子のカルボキシ基供給化合物の過剰な付加、また、得られる一般式(1)で表される化合物において末端アミノ基となるべきアミノ基にまでカルボキシ基供給化合物が反応してしまうことは、例えば希塩酸等を加えることにより、抑制することができる。
【0048】
アミノ基含有化合物と、カルボキシ基供給化合物との反応後、常法により精製することができる。
上記反応により、例えば、上述の一般式(1)におけるnが2〜6である各化合物の混合物として得られることがある。かかる混合物は、該混合物を構成する単一の化合物を分離精製することなく混合物のままであっても、例えば磁性流体シール等の各種用途に支障なく用いることができる。かかる一般式(1)で表される化合物の混合物又はそれらの塩もまた、本発明の一つである。
【0049】
<本発明の化合物又はその塩の特性>
本発明の化合物又はその塩は、上述の一般式(1)で表されるように、1分子中にアミノ基とカルボキシ基とをそれぞれ末端に有するので、分散剤として用いることができ、また、アルキレン基を炭素骨格とするので一定の分散安定性も得ることができる。
【0050】
<磁性流体組成物>
本発明の磁性流体組成物は、上述の一般式(1)で表される化合物又はその塩、磁性粒子及びイオン液体を含有する。
【0051】
上述の一般式(1)で表される化合物又はその塩は、上述のとおりである。
磁性流体組成物に対する一般式(1)で表される化合物又はその塩の含有量としては、特に限定されないが、磁性粒子の分散性の観点から、1〜30質量%が好ましく、2〜15質量%がより好ましく、3〜7質量%が更に好ましい。
【0052】
[磁性粒子]
磁性粒子としては、特に制限はないが、具体的には、フェライト微粒子〔マグネタイト(Fe)、ニッケルフェライト(NiO・Fe)、マンガンフェライト(MnO・Fe)、コバルトフェライト(CoO・Fe)、ニッケル−亜鉛フェライト(Ni・ZnO・Fe)、マンガン−亜鉛フェライト(Mn・ZnO・Fe)、コバルト−亜鉛フェライト(Co・ZnO・Fe)等〕;鉄、マンガン、ニッケル、コバルト等の金属又はそれらのホウ化物、窒化物、炭化物等の微粒子;更にはこれらの金属とマグネシウム、アルミニウム、亜鉛、銅、ニオブ、モリブデン、ガリウム、インジウム、ジルコニウム、カドミウム、錫等の少なくとも一種との合金又はそれらのホウ化物、窒化物、炭化物等の微粒子;等が挙げられる。
磁性粒子としては、磁性特性の観点からフェライト微粒子が好ましい。
【0053】
磁性粒子の体積平均粒径としては、製造性及び磁性の観点から、3〜50nmが好ましく、更に好ましくは4〜40nmであり、特に好ましくは5〜30nmである。磁性粒子の体積平均粒径は、X線小角散乱法で測定して得られた値である。測定機器としては、例えば商品名:RINT2500(理学電気株式会社製)が挙げられる。
【0054】
磁性粒子の形状としては、特に制限はなく、真球状、紡錘状、板状、針状、等が挙げられる。磁性粒子の投影像は、例えば走査電子顕微鏡(SEM)によって撮影することができる。
【0055】
磁性流体組成物に対する磁性粒子の含有量としては、特に限定されないが、磁性流体の粘度と磁化の観点から、1〜25質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましく、3〜7質量%が更に好ましい。
【0056】
[イオン液体]
イオン液体とは、カチオン(a)とアニオン(b)からなる塩であって、室温付近で液状の塩である。イオン液体は常温溶融塩とも称され、通常の塩が高い融点を持つのに比べて低い融点を持っている。本発明において、イオン液体の融点としては、本発明の目的にかなうかぎり特に限定はなく、例えば、本発明において、磁性流体を使用した真空シールが常温で使用される場合、融点は25℃以下であってよく、一方、25℃以上の高温環境下で使用される真空シールの場合は、融点は例えば40℃であっても、使用する環境及び真空シール装置に加熱装置を装備することにより十分本発明の目的を達し得る。
【0057】
本発明におけるイオン液体としては、カチオン及びアニオンのうち少なくとも一つが有機イオンであるものが好ましい。
イオン液体としては、特に制限はないが、(1)イミダゾリニウム塩、(2)イミダゾリウム塩、(3)ピリジニウム塩、(4)脂環式4級アンモニウム塩、(5)脂肪族4級アンモニウム塩等の、カチオンとアニオンからなる塩が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
【0058】
(1)イミダゾリニウムカチオン
1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチルイミダゾリニウム等。
(2)イミダゾリウムカチオン
1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウム等。
(3)ピリジニウムカチオン
N−ブチルピリジニウム、N−1−ヘキシルピリジニウム、N−ブチル−4−メチルピリジニウム、N−tert−ブチル−4−メチルピリジニウム、N−ブチル−4−エチルピリジニウム等。
(4)脂環式4級アンモニウムカチオン
N,N−ブチルメチルピロリジニウム、N,N−ブチルエチルピロリジニウム、N,N−エチルメチルピペリジニウム、N,N−ブチルメチルピペリジニウム等。
(5)脂肪族4級アンモニウムカチオン
ブチルトリメチルアンモニウム、ジヘキシルジメチルアンモニウム、ジメチルエチルヘキシルアンモニウム、ブチルジメチルヘキシルアンモニウム等。
【0059】
イオン液体を構成するアニオン(b)としては、カチオン(a)と組み合わせてイオン液体を形成するものであれば特に制限はなく、分子内に2個以上のカルボキシル基、2個以上のスルホ基、又は1個以上のカルボキシル基と1個以上のスルホ基を有するアニオン等が挙げられる。
具体的には、以下に例示する(b1)〜(b5)の有機化合物に由来するアニオン、及び以下に例示する(b6)の無機酸に由来するアニオン等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
【0060】
(b1)カルボキシル基を2個以上有する有機化合物
炭素数2〜30の脂肪族ポリカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、プロパン−1,2,3−トリカルボン酸、クエン酸、ドデカン2酸等の飽和ポリカルボン酸;マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和ポリカルボン酸);
炭素数8〜30の芳香族ポリカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等);
炭素数3〜30の脂環式ポリカルボン酸(シクロブテン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸、フラン−2,3−ジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプタ−2−エン−2,3−ジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプタ−2,5−ジエン−2,3−ジカルボン酸等)。
【0061】
(b2)スルホ基を2個以上有する有機化合物
炭素数1〜30の脂肪族ポリスルホン酸(メチオン酸、1,1−エタンジスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、1,1−プロパンジスルホン酸、1,3−プロパンジスルホン酸、ポリビニルスルホン酸等);
炭素数6〜30の芳香族ポリスルホン酸;m−ベンゼンジスルホン酸、1,4−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、1,6−ナフタレンジスルホン酸、2,6−ナフタレンジスルホン酸、2,7−ナフタレンジスルホン酸、スルホン化ポリスチレン等);ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)等。
【0062】
(b3)カルボキシル基とスルホ基をそれぞれ1個ずつ以上有する有機化合物
炭素数2〜30のスルホカルボン酸(スルホ酢酸、スルホコハク酸等);
炭素数7〜30のスルホ芳香族モノ若しくはポリカルボン酸(o−スルホ安息香酸、m−スルホ安息香酸、p−スルホ安息香酸、2,4−ジスルホ安息香酸、3−スルホフタル酸、3,5−ジスルホフタル酸、4−スルホイソフタル酸、2−スルホテレフタル酸、2−メチル−4−スルホ安息香酸、2−メチル−3,5−ジスルホ安息香酸、4−プロピル−3−スルホ安息香酸、4−イソプロピル−3−スルホ安息香酸、2,4,6−トリメチル−3−スルホ安息香酸、2−メチル−5−スルホテレフタル酸、5−メチル−4−スルホイソフタル酸、5−スルホサリチル酸、3−オキシ−4−スルホ安息香酸等)等。
【0063】
(b4)カルボキシル基を1個有する有機化合物
脂肪族飽和モノカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ベラルゴン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等);脂肪族不飽和モノカルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸、ステアリン酸等);オキシ脂肪族モノカルボン酸(グリコール酸、乳酸、酒石酸等);脂環式モノカルボン酸(シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸等);芳香族モノカルボン酸(安息香酸、ケイ皮酸、ナフトエ酸等);オキシ芳香族モノカルボン酸(サリチル酸、マンデル酸等)、トリフルオロ酢酸等。
【0064】
(b5)スルホ基を1個有する有機化合物
脂肪族モノスルホン酸(メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、デカンスルホン酸、ウンデカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等);芳香族モノスルホン酸(ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、m−トルエンスルホン酸、4−ドデシルベンゼンスルホン酸、4−オクチルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等)、トリフルオロメタンスルホン酸等。
【0065】
(b6)無機酸
HBF、HBF(CF)、HF、HCl、HBr、HI、AlCl、FeCl、HAsO、HAsO、HAsO、HAsF、HBO、HBrO、HCO、HCN、HOCN、HClO、HClO、HClO、HCrO、HIO、HIO、HMoO、HN、HNO、HNO、H、HNCS、H、HPH、HPHO、HPO、HPO、H10、HPF、HS、HSO、H、HSeO、HSeO、HSiO(OH)、HSbF、HTeO、HTeO、HVO、HWO等。
【0066】
イオン液体の具体例としては、上記アニオンとカチオンとを、少なくとも一方が有機イオンとなるように適宜組み合わせた塩のうち、常温溶融塩となるものが挙げられる。
以下に、25℃で液体である(1)イミダゾリニウム塩、(2)ピリジニウム塩、(3)脂環式4級アンモニウム塩、(4)脂肪族4級アンモニウム塩それぞれの対アニオンの具体例を例示する。
【0067】
(1)イミダゾリニウム塩
BF、BF(CF)、PF、AlCl、Cl、TFSI、CFSO、CHCOO
(2)ピリジニウム塩
FSI、TFSI
(3)脂環式4級アンモニウム塩
FSI、TFSI
(4)脂肪族4級アンモニウム塩
FSI、TFSI
【0068】
イオン液体の分子量としては、粘度が低い方が真空シールに組み込んだ際に密閉
性を高くできる点から、50〜1000が好ましく、更に好ましくは、52〜800、
特に好ましくは55〜500である。
【0069】
磁性流体組成物に対するイオン液体の含有量としては、特に限定されないが、磁性粒子の分散性の観点から、50〜99質量%が好ましく、80〜98質量%がより好ましく、85〜97質量%が更に好ましい。
【0070】
<磁性流体組成物の製造方法>
磁性流体組成物は、例えば、磁性粒子を上述の一般式(1)で表される化合物又はその塩及びイオン液体を用いて分散させることにより製造することができる。
磁性流体組成物は、好ましくは、下記工程(A)又は工程(B)を含む方法により製造することができる。
工程(A)は、磁性粒子と、一般式(1)で表される化合物又はその塩とを吸着させてなる吸着粒子を得る吸着工程、及び、該吸着粒子をイオン液体に分散する分散工程を含む。
工程(B)は、イオン液体と、一般式(1)で表される化合物又はその塩とを混合して第1混合物を得る第1混合工程、及び、該第1混合物と、磁性粒子とを混合する第2混合工程を含む。
【0071】
磁性流体組成物の製造方法としては、工程(A)又は工程(B)の何れを含む方法であってもよいが、工程(A)を含む方法が好ましい。
具体的には、工程(A)を含む磁性流体組成物の製造方法としては、例えば、磁性粒子に一般式(1)で表される化合物又はその塩を吸着させてなる吸着粒子を一旦採取して必要に応じて乾燥した後、イオン液体に分散する方法であってもよい。その一実施態様のスキームを図1に示す。
【0072】
工程(A)を含む磁性流体組成物の製造方法としては、また、例えば、上記吸着粒子を一旦乾燥することなく有機溶媒層にとりイオン液体を添加して溶媒留去等により溶媒交換してイオン液体に分散する方法であってもよい。吸着粒子が乾燥の際に凝集する場合であっても、この方法により、吸着粒子の凝集を防止することができる。その一実施態様のスキームを図2に示す。
【0073】
一般式(1)で表される化合物は、例えば、クロロホルム、トルエン等の有機溶媒に溶解してから添加することができる。
【0074】
磁性粒子は、例えばマグネタイトを用いる場合、例えば、図1及び図2のスキームに一実施態様を示すように、塩化鉄を用いて窒素及びアンモニア水の存在下に調合してもよいし、また、図3のスキームに一実施態様を示すように、例えば50nm以下等の微細な磁性粒子の市販品を用いてもよい。微細な磁性粒子を用いると、得られる磁性流体組成物において分散安定性を向上することができる。
【0075】
磁性流体組成物の製造に際し、有機溶媒等を添加し、調製後用いた有機溶媒を留去してもよい。有機溶媒としては、例えば、トルエン、クロロホルム等の他、エステル溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ケトン溶剤(アセトン、メチルエチルケトン等)、アルコール溶剤(メタノール、エタノール等)、等が挙げられる。溶剤の添加量は、例えば、磁性流体に対し、好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0076】
<磁性流体組成物の特性、用途等>
本発明の磁性流体組成物は、例えば、緩衝材、クラッチ、ブレーキ、他の装置(触覚装置や、衝撃吸収装置、ステア−バイ−ワイヤ式操舵装置、ギアー−及びブレーキ−バイ−ワイヤ式装置、シール、人工補装器、及びベアリング)等に例えば磁性流体シールとして用いることができる。磁性流体シールとしては、例えば、図4の一実施態様に示すように、磁性流体組成物2を磁石1で挟んでなる形態等が挙げられ、磁石と磁性流体組成物とにより空間を遮断することができる。また、本発明の磁性流体組成物は良好な分散性を有し流動性が良好であることから、真空度ないし高真空度が必要とされる環境下においても用いることができ、例えば、真空シールとして、真空用磁性流体シール、特に、高真空度が必要とされる半導体製造用や宇宙空間用のシール等が挙げられる。上述の磁性流体組成物を含有する磁性流体シール、真空シールもまた、本発明の一つである。
【実施例】
【0077】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0078】
合成例1 ポリ(1,4―ブタンジオール)ビス(4―アミノベンゾネート)(PBBA)の合成
【化15】
1,4−ジメトキシテトラヒドロフラン0.666gに1,4−ブタンジオール3.952g及びp-トルエンスルホン酸0.043gを加え、40℃で20時間加熱還流を行い、0.812を得た。次いで、テトラヒドロフラン(THF)に0℃で溶解したモノボラン(BH)を加え、90℃で48時間加熱還流を行い、1,4−ブタンジオールの3量体を得た。
【化16】
4−アミノ安息香酸1.068gに、上記により得られた1,4−ブタンジオールの3量体0.793g及びp-トルエンスルホン酸0.700gを加え、140℃で5時間加熱還流を行い、ポリ(1,4―ブタンジオール)ビス(4―アミノベンゾネート)(PBBA)を得た。
【0079】
合成例2 アジピン酸クロライドの合成
100mlニロナスフラスコにアジピン酸1.244g(8.512mmol)を加え還流冷却管を装着後、フラスコ内を窒素下にした。これに塩化チオニル10mlを加え、80℃で5時間加熱還流を行った。減圧留去した後、ジクロロメタンを8ml加え、アジピン酸クロライドのジクロロメタン溶液とした。
【0080】
実施例1 一般式(1)で表される化合物の合成
【化17】
滴下漏斗を装着した500mlニロナスフラスコに、合成例2で得たポリ(1,4―ブタンジオール)ビス(4―アミノベンゾネート)(PBBA)5.00g(10.64mmol)をとり、ジクロロメタン10mlを加えて溶解させ、氷浴を用いて冷却した。その後0.71molの水酸化ナトリウム水溶液を5ml加え、合成例1で得たアジピン酸クロライドのジクロロメタン溶液を反応系に30分間かけて滴下した。滴下終了後、過剰な反応を抑制するために希塩酸10mlを加えた。その後反応溶液を300ml分液漏斗に移し、ジクロロメタンを10ml加えて洗浄し、有機層を回収した。この操作を5回繰り返した後、回収した有機層を水で3回洗浄した。その後有機層を硫酸マグネシウム(無水)にて脱水し、減圧留去することで目的の生成物である化合物(以下、「分散剤」という。)を得た。収率は15.8%であった。d−DMSOに溶解した分散剤について、H−NMRスペクトルを図5に、H−NMRスペクトルにおける化学シフトのピークを表1に、それぞれ示す。得られた分散剤は、一般式(1)におけるnが2〜6である化合物の混合物であった。
【表1】
【0081】
調製例1 磁性粒子に分散剤が吸着してなる吸着粒子の調製
図1に示すスキームのとおりに磁性流体組成物を調製した。即ち、100mlニロナスフラスコに塩化鉄(II)(FeCl・4HO)0.43g(2.16mmol)及び塩化鉄(III)(FeCl・6HO)1.17g(4.32mmol)を加え、窒素置換後、窒素で30分間バブリングした水1.5ml、次いでアンモニア水を加え、60℃で撹拌した後、トルエン4.0mlを加え、還流冷却管を装着した。別のナスフラスコにて、実施例1で得た分散剤0.50gをクロロホルム4.0mlで溶解させた後、元の系に加え、90℃で23時間加熱還流を行った。その後室温になるまで放冷し、磁石で撹拌子をフラスコの上部まで引き上げ、ピペットを使用して混合液の上澄みを吹きかけることで、撹拌子に付着した磁性粒子を洗い流し、撹拌子を除去した。分液した水層から吸引ろ過、次いで25℃で15時間乾燥し、磁性粒子に分散剤が吸着してなる吸着粒子を得た。イオン液体1mlに吸着粒子0.233gを加えて30秒間撹拌した後、1時間超音波照射し、磁性流体組成物(以下、「分散液1」ともいう。)を得た。
イオン液体としては、下記式で表される1−ヘキシルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(Py6FSI)を用いた。
【化18】
【0082】
調製例2 磁性流体組成物の調製
図2に示すスキームのとおりに磁性流体組成物を調製した。即ち、吸着粒子を分液の際にトルエン層にとり、イオン液体1.72mlを加えて60℃で1時間エバポレーションした後、80℃で1時間加熱留去すること以外は調製例1と同様にして、イオン液体に分散してなる磁性流体組成物(以下、「分散液2」ともいう。)を得た。
【0083】
調製例3 磁性流体組成物の調製
図3に示すスキームのとおりに磁性流体組成物を調製した。即ち、50mlニロナスフラスコにマグネタイトの市販品(酸化鉄(II、III)、平均粒子径50nm未満)0.40gとトルエン4.0mlを加え、還流冷却管を装着した。別のナスフラスコにて、実施例1で得た分散剤10.40gをクロロホルム4.0mlで溶解させた後、元の系に加え、66℃で23時間加熱還流を行った。その後室温になるまで放冷し、磁石で撹拌子をフラスコの上部まで引き上げ、ピペットを使用して混合液の上澄みを吹きかけることで、撹拌子に付着した磁性粒子を洗い流し、撹拌子を除去した。混合液にイオン液体である1−ヘキシルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(Py6FSI)1.72mlを加え、減圧留去することで、磁性粒子に分散剤が吸着してなる吸着粒子のイオン液体に対する分散液(吸着粒子:15質量%)を得た。得られた15質量%の分散液を所定量とり、2mlサンプル瓶に移しPy6FSIを加えて分散液を希釈することで、更に5質量%、10質量%の磁性流体組成物(以下、「分散液3」ともいう。)を調製した。
【0084】
比較例1 比較用磁性流体組成物の調製
実施例1で得た分散剤を添加しないこと以外は調製例3と同様にして、比較用磁性流体組成物(以下、「比較用分散液」ともいう。)を調製した。
【0085】
評価1 磁性粒子に分散剤が吸着してなる吸着粒子の熱物性
調製例1により得た吸着粒子5.5mgをとり、空気下に5.0℃/分の昇温速度で40〜500℃に昇温して、熱重量示差熱測定機器(TG−DTA 2010SA GC9120、Bruker AXS社製)を用いて熱重量測定(TG)及び示差熱分析(DTA)を行った。結果を図6に示す。
図6から、TGにより280℃で分解が始まり、DTAにより、その分解は373.0℃に発熱ピークを与えることがわかった。このことから、分散剤の燃焼温度は280℃であることがわかった。
【0086】
評価2 磁性粒子に分散剤が吸着してなる吸着粒子のX線光電子分光
調製例1により得た吸着粒子について、X線光電子分光装置(JPS−9010MC、日本電子社製)を用いてX線光電子分光(XPS)測定を行った。結果を図7に示す。
図7から、構成元素とその電子状態、極表面(数ナノメートル)の元素分布について、分散剤と吸着粒子には炭素原子が含まれること、及び磁性粒子(マグネタイト)と吸着粒子には鉄原子が含まれることがわかった。また、図7(b)より、酸素原子1s軌道に由来するピークは、分散剤の場合、532eV、マグネタイトの場合、529.5eVであったが、吸着粒子の場合、530eVに強いピークとその高エネルギー側(532eV)にショルダーピークが観察された。このことから、吸着粒子は、マグネタイトの表面に分散剤が吸着したものであることがわかった。
【0087】
評価3 磁性粒子に分散剤が吸着してなる吸着粒子の粒子形態
調製例1〜3により得た吸着粒子を走査電子顕微鏡(SEM)により観察した。調製例1により得た吸着粒子のSEM写真を図8に、調製例2により得た吸着粒子のSEM写真を図9に、調製例3により得た吸着粒子のSEM写真を図10に、それぞれ示す。参考のため、調製例1において調合した、分散剤を吸着する前のマグネタイトの形状について、SEM写真を図11(a)に、比較のため、調製例3で用いたマグネタイトの市販品のSEM写真を図11(b)に、それぞれ示す。
図8〜11から、調製例3により得た吸着粒子は粒子径が比較的小さく揃っていることがわかった。
【0088】
評価4 磁性粒子に分散剤が吸着してなる吸着粒子の粒子径
調製例1〜3により得た、磁性粒子に分散剤が吸着してなる吸着粒子の粒子径を、SEMにより実測することにより測定した。また、動的光散乱装置(ZETASIZER NANO、Malvern社製)を用いて動的光散乱法(DLS)により測定した。比較のため、調製例3で用いたマグネタイトの市販品の粒子径も同様にして測定した。DLSの測定結果を、調製例1、2により得た吸着粒子について図12に、調製例3により得た吸着粒子について図13に、上記マグネタイトの市販品について図14に、それぞれ示す。また、結果を表2に示す。
【0089】
評価5 磁性流体組成物の分散性
調製例1により得た、磁性粒子に分散剤が吸着してなる吸着粒子5質量%の磁性流体組成物(分散液1)が入った2mlサンプル瓶をボルテックスミキサーで30秒間撹拌した後、超音波照射を1時間行った。その後磁石にサンプル瓶を近づけ、分散液の磁石に対する反応性を観察することにより、分散性を評価した。観察結果の写真を図15に示す。
図15から、分散液1全体が磁石に近づくように移動することが観察され、分散性に優れることがわかった。
【0090】
評価6 イオン液体に対する磁性粒子の分散安定性1
調製例1〜3により得た、磁性粒子に分散剤が吸着してなる吸着粒子5質量%の分散液1〜3がそれぞれ入った2mlサンプル瓶をボルテックスミキサーで30秒間撹拌した後、超音波照射を1時間行った。その後サンプル瓶を静置し、上澄みが生じるまでの経過時間を測定することで、作製した吸着粒子のイオン液体に対する分散安定性を評価した。
比較のため、比較例1により得た比較用分散液についても同様にして測定し、マグネタイトの市販品のイオン液体に対する分散安定性を評価した。
結果を表2に示す。
【表2】
【0091】
表2から、本発明の一般式(1)で表される化合物又はその塩(実施例1により得た分散剤)を添加することにより、該分散剤を添加しない比較例よりも吸着粒子の粒径が大きいにもかかわらず、比較例よりもはるかに優れた分散安定性を有することがわかった。また、調製例3により得た分散液の分散安定性が特に優れていることがわかった。
【0092】
評価7 イオン液体に対する磁性粒子の分散安定性2
調製例3により得た、磁性粒子に分散剤が吸着してなる吸着粒子の5質量%、10質量%及び15質量%各分散液がそれぞれ入った2mlサンプル瓶をボルテックスミキサーで30秒間撹拌した後、超音波照射を1時間行った。その後サンプル瓶を静置して所定期間が経過した後、評価5と同様に分散液の磁石に対する反応性を観察することにより、分散安定性を評価した。観察結果の写真を、1週間静置した後の10質量%及び15質量%各分散液について図16に、1週間静置した後の5質量%分散液について図17に、2週間静置した後の5質量%分散液について図18に、それぞれ示す。
【0093】
図16から、10質量%及び15質量%各分散液は1週間静置後であっても磁石に近いものが反応すること、図17及び図18から、5質量%分散液は1週間静置後及び2週間静置後であっても分散液全体が反応することが観察され、何れも分散安定性に優れること、特に5質量%分散液の分散安定性が優れることがわかった。
【符号の説明】
【0094】
1 磁石
2 磁性流体組成物
図1
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