特許第6388553号(P6388553)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388553
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20180903BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20180903BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20180903BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   H01L21/31 B
   H01L21/302 101C
   H01L21/302 101B
   H01L21/316 X
   C23C16/455
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-41500(P2015-41500)
(22)【出願日】2015年3月3日
(65)【公開番号】特開2016-162931(P2016-162931A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年8月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】三浦 繁博
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0190341(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0026162(US,A1)
【文献】 特表2013−503971(JP,A)
【文献】 特開2012−209394(JP,A)
【文献】 特開2010−219125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02、21/205、21/302、21/3065、
21/31−21/32、21/365、21/461、
21/469−21/475、21/86、
H01J 37/30−37/36、
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内に回転可能に設けられ、基板を載置可能な回転テーブルと、
前記回転テーブルの表面に第1の反応ガスを供給可能な第1の反応ガス供給部と、
前記第1の反応ガス供給部から前記回転テーブルの周方向に離間して設けられ、前記回転テーブルの表面に前記第1の反応ガスと反応する第2の反応ガスを供給可能な第2の反応ガス供給部と、
前記第1の反応ガス供給部及び前記第2の反応ガス供給部から前記回転テーブルの周方向に離間して設けられ、前記回転テーブルの表面に活性化されたエッチングガスを供給可能な吐出孔が形成された吐出部を含む活性化ガス供給部と、
前記吐出孔と接近して前記回転テーブルの周方向に設けられ、前記回転テーブルの表面にパージガスを供給可能な複数のパージガス供給部と
を備え、
前記複数のパージガス供給部の各々から供給される前記パージガスの流量が独立して制御可能であり、
前記複数のパージガス供給部は、前記吐出部に一体に設けられている、
基板処理装置。
【請求項2】
前記複数のパージガス供給部の各々は、前記回転テーブルの半径方向に沿って互いに接近して設けられている、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記複数のパージガス供給部は、少なくとも前記回転テーブルの回転方向の後方に設けられている、
請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記吐出孔は、前記回転テーブルの回転中心側よりも前記回転テーブルの外周側に多く配置されている、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第1の反応ガスはシリコン含有ガスであり、
前記第2の反応ガスは酸化ガスであり、
前記エッチングガスは、フッ素含有ガスであり、
前記パージガスは、水素含有ガスである、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記活性化ガス供給部により前記回転テーブルの表面に供給される前記エッチングガスの分布に基づいて、前記複数のパージガス供給部の各々から供給される前記パージガスの流量を制御する制御部を更に有する、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記基板の表面に成膜のみを行うときには、前記第1の反応ガス供給部及び前記第2の反応ガス供給部から前記第1の反応ガス及び前記第2の反応ガスを各々供給すると共に、前記活性化ガス供給部からの前記エッチングガスの供給を停止し、
前記基板の表面に形成された膜のエッチングのみを行うときには、前記第1の反応ガス供給部及び前記第2の反応ガス供給部からの前記第1の反応ガス及び前記第2の反応ガスの供給を停止すると共に、前記活性化ガス供給部及び前記パージガス供給部から前記エッチングガス及び前記パージガスを各々供給する、
請求項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
真空容器内に設けられた回転テーブルの表面に基板を載置し、回転テーブルを回転させながらエッチングガスを真空容器内に供給し、前記基板の表面に形成された膜をエッチングするエッチング工程を含む基板処理方法であって、
前記エッチング工程は、前記回転テーブルの表面にエッチングガスを供給すると共に、前記エッチングガスが供給される領域の近傍に設けられた複数のパージガス供給部からパージガスを供給する工程を含み、
前記回転テーブルの表面に供給される前記エッチングガスの分布に基づいて、前記複数のパージガス供給部の各々から供給される前記パージガスの流量を独立に変化させることにより、前記膜をエッチングするエッチング量を制御する、
基板処理方法。
【請求項9】
前記エッチング量を大きくするときには前記パージガスの流量を小さくし、前記エッチング量を小さくするときには前記パージガスの流量を大きくする、
請求項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記回転テーブルを回転させながら、第1の反応ガスと、前記第1の反応ガスと反応する第2の反応ガスとを前記真空容器内に供給し、前記基板の表面に膜を形成する成膜工程を更に有する、
請求項8又は9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記成膜工程は、前記回転テーブルを複数回連続的に回転させながら、前記エッチングガスを前記真空容器内に供給することなく、前記第1の反応ガス及び前記第2の反応ガスを前記真空容器内に供給する工程を含み、
前記エッチング工程は、前記回転テーブルを複数回連続的に回転させながら、前記第1の反応ガス及び前記第2の反応ガスを前記真空容器内に供給することなく、前記エッチングガス及び前記パージガスを前記真空容器内に供給する工程を含む、
請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記回転テーブルを複数回連続的に回転させながら、前記第1の反応ガス、前記第2の反応ガス、前記エッチングガス及び前記パージガスを前記真空容器内に同時に供給し、前記回転テーブルが1回転する間に、前記成膜工程と前記エッチング工程とを1回ずつ行うサイクルを複数回繰り返す、
請求項10に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの回路パターンの更なる微細化に伴い、半導体デバイスを構成する種々の膜についても、更なる薄膜化及び均一化が要求されている。このような要求に応える成膜方法として、第1の反応ガスを基板に供給して基板の表面に第1の反応ガスを吸着させ、次に第2の反応ガスを基板に供給して基板の表面に吸着した第1の反応ガスと第2の反応ガスを反応させることにより、反応生成物から構成される膜を基板に堆積する、いわゆる分子層堆積(MLD:Molecular Layer Deposition)法、又は原子層堆積(ALD:Atomic Layer deposition)法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような成膜方法によれば、反応ガスが(準)自己飽和的に基板の表面に吸着し得るため、高い膜厚制御性、優れた均一性、及び優れた埋め込み特性を実現することができる。
【0004】
しかしながら、回路パターンの微細化に伴って、例えばトレンチ素子分離構造におけるトレンチは、ライン・スペース・パターンにおけるスペースのアスペクト比が大きくなるにつれて、MLD法やALD法においても、トレンチやスペースを埋め込むことが困難な場合がある。
【0005】
例えば、30nm程度の幅を有するスペースを酸化シリコン膜で埋め込もうとすると、狭いスペースの底部に反応ガスが進入し難いため、スペースを画成するライン側壁の上端部近傍での膜厚が厚くなり、底部側で膜厚が薄くなる傾向がある。そのため、スペースに埋め込まれた酸化シリコン膜にはボイドが生じる場合がある。そのような酸化シリコン膜が、例えば後続のエッチング工程においてエッチングされると、酸化シリコン膜の上面に、ボイドと連通する開口が形成されることがある。そうすると、そのような開口からボイドにエッチングガス(又はエッチング液)が進入して汚染が生じたり、又は、後のメタライゼーションの際にボイド中に金属が入り込み、欠陥が生じたりするおそれがある。
【0006】
このような問題は、MLD法やALD法に限らず、化学的気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法においても生じ得る。例えば、半導体基板に形成される接続孔を導電性物質の膜で埋め込んで、導電性の接続孔(いわゆるプラグ)を形成する際に、プラグ中にボイドが形成されてしまう場合がある。これを抑制するため、接続孔を導電性物質で埋め込む際に、接続孔の上部に形成される導電性物質のオーバーハング形状部をエッチバックにより除去する工程を繰り返して行うことにより、ボイドが抑制された導電性接続孔を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載された発明においては、導電性物質の膜の成膜とエッチバックとを異なる装置で行う必要があり、装置間での基板の搬送や、各装置内での処理条件の安定化に時間を要するため、スループットを向上できないという問題があった。
【0008】
また、係る特許文献2に記載された問題を解決すべく、基板の表面に形成される凹形状パターンでのボイドの発生を低減しつつ、高いスループットで埋め込むことが可能な成膜装置及び成膜方法として、基板が載置される回転テーブルと、回転テーブルの基板載置面に対して成膜用の第1及び第2の反応ガスを供給可能な第1及び第2の反応ガス供給部と、第1及び第2の反応ガスが互いに反応して生成された反応生成物を改質する改質ガス及びエッチングするエッチングガスを活性化して供給する活性化ガス供給部とを含む成膜装置を用いて、同一処理室内で回転テーブルの回転により成膜、改質及びエッチングを順に繰り返す成膜方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−56470号公報
【特許文献2】特開2003−142484号公報
【特許文献3】特開2012−209394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の特許文献3に記載の成膜方法では、基板面内でのエッチング量分布を十分に制御することができず、基板面内のエッチング均一性を確保することが困難であった。
【0011】
そこで、本発明の一つの案では、基板面内でのエッチング量分布を制御することが可能な基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一つの案では、真空容器内に回転可能に設けられ、基板を載置可能な回転テーブルと、前記回転テーブルの表面に第1の反応ガスを供給可能な第1の反応ガス供給部と、前記第1の反応ガス供給部から前記回転テーブルの周方向に離間して設けられ、前記回転テーブルの表面に前記第1の反応ガスと反応する第2の反応ガスを供給可能な第2の反応ガス供給部と、前記第1の反応ガス供給部及び前記第2の反応ガス供給部から前記回転テーブルの周方向に離間して設けられ、前記回転テーブルの表面に活性化されたエッチングガスを供給可能な活性化ガス供給部と、前記活性化ガス供給部と接近して前記回転テーブルの周方向に設けられ、前記回転テーブルの表面にパージガスを供給可能な複数のパージガス供給部とを備え、前記複数のパージガス供給部の各々から供給される前記パージガスの流量が独立して制御可能であり、前記複数のパージガス供給部は、前記吐出部に一体に設けられている、基板処理装置が提供される。

【発明の効果】
【0013】
一態様によれば、基板面内でのエッチング量分布を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略平面図(その1)である。
図3】本発明の一実施形態に係る基板処理装置における分離領域を説明するための一部断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の他の断面を示す一部断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る基板処理装置における第3の処理領域を説明するための一部断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略平面図(その2)である。
図7】本発明の一実施形態に係る基板処理装置における第3の処理領域を説明するための一部断面図である。
図8】エッチング工程における真空容器内のフッ素体積割合のシミュレーション結果を示す図(その1)である。
図9】エッチング工程における真空容器内のフッ素体積割合のシミュレーション結果を示す図(その2)である。
図10】エッチング工程における真空容器内のフッ素体積割合のシミュレーション結果を示す図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0016】
(基板処理装置の構成)
本発明の一実施形態に係る基板処理装置について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略断面図である。図2は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略平面図である。図3は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置における分離領域を説明するための一部断面図である。図4は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置の他の断面を示す一部断面図である。
【0017】
本発明の一実施形態に係る基板処理装置は、図1及び図2に示すように、ほぼ円形の平面形状を有する扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。
【0018】
真空容器1は、有底の円筒形状を有する容器本体12と、容器本体12の上面に対して、例えばOリング等のシール部材13を介して気密に着脱可能に配置される天板11とを有している。
【0019】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定され、このコア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は真空容器1の底部14を貫通し、その下端が回転軸22を鉛直軸回りに回転させる駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持されている。
【0020】
回転テーブル2の表面には、図2に示すように、回転方向(周方向)に沿って複数(図示の例では5枚)の基板である半導体ウエハ(以下「ウエハW」という。)を載置可能な円形状の凹部24が設けられている。なお、図2では、便宜上、1個の凹部24だけにウエハWを示す。この凹部24は、ウエハWの直径(例えば300mm)よりも僅かに(例えば4mm)大きい内径と、ウエハWの厚さにほぼ等しい深さとを有している。したがって、ウエハWを凹部24に載置すると、ウエハWの表面と回転テーブル2の表面(ウエハWが載置されない領域)とが同じ高さになる。凹部24の底面には、ウエハWの裏面を支えてウエハWを昇降させるための例えば3本の昇降ピンが貫通する貫通孔(いずれも図示せず)が形成されている。
【0021】
回転テーブル2の上方には、図2に示すように、反応ガスノズル31、32、分離ガスノズル41、42及び活性化ガス供給部90が配置されている。図示の例では、真空容器1の周方向に間隔をおいて、搬送口15(後述)から時計回り(回転テーブル2の回転方向)に、活性化ガス供給部90、分離ガスノズル41、反応ガスノズル31、分離ガスノズル42及び反応ガスノズル32の順に配列されている。なお、反応ガスノズル31は第1の反応ガス供給部の一例であり、反応ガスノズル32は第2の反応ガス供給部の一例である。
【0022】
反応ガスノズル31、32は、各々の基端部であるガス導入ポート31a、32aが容器本体12の外周壁に固定され、真空容器1の外周壁から真空容器1内に導入されている。そして、容器本体12の半径方向に沿って回転テーブル2に対して反応ガスノズル31、32が平行に伸びるように取り付けられている。
【0023】
分離ガスノズル41、42は、各々の基端部であるガス導入ポート41a,42aが容器本体12の外周壁に固定され、真空容器1の外周壁から真空容器1内に導入されている。そして、容器本体12の半径方向に沿って回転テーブル2に対して分離ガスノズル41、42が平行に伸びるように取り付けられている。
【0024】
活性化ガス供給部90については後述する。
【0025】
反応ガスノズル31は、例えば石英からなり、不図示の配管及び流量調整器等を介して第1の反応ガスとしてのSi(シリコン)含有ガスの供給源(図示せず)に接続されている。反応ガスノズル32は、例えば石英からなり、不図示の配管及び流量調整器等を介して、第2の反応ガスとしての酸化ガスの供給源(図示せず)に接続されている。分離ガスノズル41、42は、いずれも不図示の配管及び流量調整バルブ等を介して、分離ガスの供給源(図示せず)に接続されている。
【0026】
Si含有ガスとしては、例えば有機アミノシランガスを用いることができ、酸化ガスとしては、例えばO(オゾン)ガス、O(酸素)ガスを用いることができる。分離ガスとしては、例えばN(窒素)ガス、Ar(アルゴン)ガスを用いることができる。
【0027】
反応ガスノズル31、32には、回転テーブル2に向かって開口する複数のガス吐出孔33(図3参照)が、反応ガスノズル31、32の長さ方向に沿って、例えば10mmの間隔で配列されている。反応ガスノズル31の下方領域は、Si含有ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1となる。反応ガスノズル32の下方領域は、第1の処理領域P1においてウエハWに吸着されたSi含有ガスを酸化させる第2の処理領域P2となる。
【0028】
図2を参照すると、分離ガスノズル41、42と共に分離領域Dを構成する、天板11の裏面から回転テーブル2に向かって突出する凸状部4が真空容器1に設けられている。凸状部4は、頂部が円弧状に切断された扇型の平面形状を有し、本実施形態においては、内円弧が突出部5(後述)に連結し、外円弧が真空容器1の容器本体12の内周面に沿うように配置されている。
【0029】
図3は、反応ガスノズル31から反応ガスノズル32まで回転テーブル2の同心円に沿った真空容器1の断面を示している。図3に示すように、真空容器1内には、凸状部4によって、凸状部4の下面である平坦な低い第1の天井面44と、この第1の天井面44の周方向両側に位置する、第1の天井面44よりも高い第2の天井面45とが存在する。
【0030】
第1の天井面44は、頂部が円弧状に切断された扇型の平面形状を有している。また、図示のとおり、凸状部4には周方向中央において、半径方向に伸びるように形成された溝部43が形成され、分離ガスノズル42が溝部43内に収容されている。もう一つの凸状部4にも同様に溝部43が形成され、この溝部43内に分離ガスノズル41が収容されている。また、高い第2の天井面45の下方の空間に反応ガスノズル31、32がそれぞれ設けられている。これらの反応ガスノズル31、32は、第2の天井面45から離間してウエハWの近傍に設けられている。なお、説明の便宜上、図3に示すように、反応ガスノズル31が設けられる、高い第2の天井面45の下方の空間を空間481とし、反応ガスノズル32が設けられる、高い第2の天井面45の下方の空間を空間482とする。
【0031】
第1の天井面44は、回転テーブル2に対し、狭隘な空間である分離空間Hを形成している。分離空間Hは、第1の領域P1からのSi含有ガスと、第2の領域P2からの酸化ガスとを分離することができる。具体的には、分離ガスノズル42からNガスを吐出すると、Nガスは、分離空間Hを通して空間481及び空間482へ向かって流れる。このとき、空間481及び482に比べて容積の小さい分離空間HをNガスが流れるため、分離空間Hの圧力は空間481及び482の圧力に比べて高くすることができる。すなわち、空間481と482の間に圧力障壁が形成される。また、分離空間Hから空間481及び482へ流れ出るNガスが、第1の領域P1からのSi含有ガスと、第2の領域P2からの酸化ガスとに対するカウンターフローとして働く。したがって、Si含有ガスも酸化ガスも分離空間Hへ流入することは殆どできない。よって、真空容器1内においてSi含有ガスと酸化ガスとが混合し、反応することが抑制される。
【0032】
一方、天板11の下面には、図2に示すように、回転テーブル2を固定するコア部21の外周を囲む突出部5が設けられている。この突出部5は、本実施形態においては、凸状部4における回転中心側の部位と連続しており、その下面が第1の天井面44と同じ高さに形成されている。
【0033】
なお、図2においては、説明の便宜上、第2の天井面45よりも低くかつ分離ガスノズル41、42よりも高い位置にて容器本体12が切断されているように、容器本体12及びその内部を示している。
【0034】
先に参照した図1は、図2のI−I'線に沿った断面図であり、第2の天井面45が設けられている領域を示している一方、図4は、第1の天井面44が設けられている領域を示す断面図である。
【0035】
図4に示すように、扇型の凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)には、回転テーブル2の外端面に対向するようにL字型に屈曲する屈曲部46が形成されている。この屈曲部46は、凸状部4と同様に、分離領域Dの両側から反応ガスが侵入することを抑制して、両反応ガスの混合を抑制する。扇型の凸状部4は天板11に設けられ、天板11が容器本体12から取り外せるようになっていることから、屈曲部46の外周面と容器本体12との間には僅かに隙間がある。屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間、及び屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、例えば回転テーブル2の表面に対する第1の天井面44の高さと同様の寸法に設定されている。
【0036】
容器本体12の内周壁は、分離領域Dにおいては図4に示すように屈曲部46の外周面と接近して垂直面に形成されているが、分離領域D以外においては図1に示すように例えば回転テーブル2の外端面と対向する部位から底部14に亘って外方側に窪んでいる。以下、説明の便宜上、矩形の断面形状を有する、この窪んだ部分を排気領域Eと記す。具体的には、第1の処理領域P1に連通する排気領域Eを第1の排気領域E1と記し、第2の処理領域P2に連通する排気領域Eを第2の排気領域E2と記す。これらの第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2の底部には、各々、第1の排気口61及び第2の排気口62が形成されている。第1の排気口61及び第2の排気口62は、図1に示すように、各々、排気管63を介して真空排気手段である例えば真空ポンプ64に接続されている。また、排気管63には、圧力調整手段65が設けられている。
【0037】
回転テーブル2と真空容器1の底部14との間の空間には、図1及び図4に示すように加熱手段であるヒータユニット7が設けることができ、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハWを、プロセスレシピで決められた温度に加熱することができる。回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の下方領域へのガスの侵入を抑えるために、リング状のカバー部材71が設けられている。カバー部材71は、回転テーブル2の上方空間から排気領域E1、E2に至るまでの雰囲気とヒータユニット7が置かれている雰囲気とを区画している。
【0038】
このカバー部材71は、回転テーブル2の外縁部及び外縁部よりも外周側を下方側から臨むように設けられた内側部材71aと、この内側部材71aと真空容器1の内壁面との間に設けられた外側部材71bと、を備えている。外側部材71bは、分離領域Dにおいて凸状部4の外縁部に形成された屈曲部46の下方にて、屈曲部46と近接して設けられている。内側部材71aは、回転テーブル2の外縁部下方(及び外縁部よりも僅かに外側の部分の下方)において、ヒータユニット7を全周に亘って取り囲んでいる。
【0039】
ヒータユニット7が配置されている空間よりも回転中心側の部位における底部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近におけるコア部21に接近するように上方側に突出して突出部12aをなしている。この突出部12aとコア部21との間は狭い空間になっており、また底部14を貫通する回転軸22の貫通穴の内周面と回転軸22との隙間が狭くなっており、これら狭い空間はケース体20に連通している。そして、ケース体20にはパージガスであるNガスを狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられている。
【0040】
また、真空容器1の底部14には、ヒータユニット7の下方において周方向に所定の角度間隔で、ヒータユニット7の配置空間をパージするための複数のパージガス供給管73が設けられている(図4には一つのパージガス供給管73を示す)。また、ヒータユニット7と回転テーブル2との間には、ヒータユニット7が設けられた領域へのガスの侵入を抑えるために、外側部材71bの内周壁(内側部材71aの上面)から突出部12aの上端部との間を周方向に亘って覆う蓋部材7aが設けられている。蓋部材7aは、例えば石英で作製することができる。
【0041】
また、真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されており、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるNガスを供給するように構成されている。この空間52に供給された分離ガスは、突出部5と回転テーブル2との狭い空間50を介して回転テーブル2のウエハ載置領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出される。空間50は分離ガスにより空間481及び空間482よりも高い圧力に維持され得る。したがって、空間50により、第1の処理領域P1に供給されるSi含有ガスと第2の処理領域P2に供給される酸化ガスとが、中心領域Cを通って混合することが抑制される。すなわち、空間50(又は中心領域C)は分離空間H(又は分離領域D)と同様に機能することができる。
【0042】
さらに、真空容器1の側壁には、図2に示すように、外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間で基板であるウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されている。この搬送口15は、図示しないゲートバルブにより開閉される。また、回転テーブル2におけるウエハ載置領域である凹部24では、この搬送口15に臨む位置にて搬送アーム10との間でウエハWの受け渡しが行われる。このため、回転テーブル2の下方側において受け渡し位置に対応する部位に、凹部24を貫通してウエハWを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン及びその昇降機構(いずれも図示せず)が設けられている。
【0043】
次に、図2図5図6及び図7を参照しながら、活性化ガス供給部90について説明する。図5は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置における第3の処理領域P3を説明するための一部断面図である。図6は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略平面図である。図7は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置における第3の処理領域P3を説明するための一部断面図である。なお、図6は、図2におけるプラズマ生成部91及びエッチングガス供給管92を取り外した状態を表している。また、図7は、図6におけるJ−J'線における概略断面図を表している。
【0044】
活性化ガス供給部90は、ウエハW上に成膜された膜に対して活性化されたエッチングガスを供給し、その膜をエッチングする。活性化ガス供給部90は、図2及び図5に示すように、プラズマ生成部91と、エッチングガス供給管92と、シャワーヘッド部93と、配管94とを備えている。なお、シャワーヘッド部93は、吐出部の一例である。
【0045】
プラズマ生成部91は、エッチングガス供給管92から供給されたエッチングガスをプラズマ源により活性化する。プラズマ源としては、フッ素含有ガスを活性化することでF(フッ素)ラジカルを生成可能であれば、特に限定されるものではない。プラズマ源としては、例えば誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)、容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)を用いることができる。
【0046】
エッチングガス供給管92は、その一端がプラズマ生成部91と接続されており、プラズマ生成部91にエッチングガスを供給する。エッチングガス供給管92の他端は、例えば開閉バルブ及び流量調整器を介してエッチングガスが貯留されたエッチングガス供給源と接続されている。エッチングガスとしては、ウエハWに成膜された膜をエッチング可能なガスを用いることができる。具体的には、CHF(トリフルオロメタン)等のハイドロフルオロカーボン、CF(四フッ化炭素)等のフルオロカーボン等、酸化シリコン膜をエッチングするフッ素含有ガス等を用いることができる。また、これらのフッ素含有ガスに、Arガス、Oガス、H(水素)ガス等を適宜添加することができる。
【0047】
シャワーヘッド部93は、配管94を介してプラズマ生成部91と接続されており、プラズマ生成部91で活性化されたエッチングガスを真空容器1内に供給する部分である。シャワーヘッド部93は、扇型の平面形状を有し、扇型の平面形状の外縁に沿うように形成された押圧部材95によって下方側に向かって周方向に亘って押圧される。また、押圧部材95が図示しないボルト等により天板11に固定されることにより、真空容器1の内部雰囲気が気密状態とされる。天板11に固定されたときのシャワーヘッド部93の下面と回転テーブル2の上面との間隔は、例えば0.5mmから5mm程度とすることができ、このシャワーヘッド部93の下方領域が、例えばシリコン酸化膜をエッチングするための第3の処理領域P3となる。これにより、シャワーヘッド部93を介して真空容器1内に供給される活性化されたエッチングガスに含まれるFラジカルが効率よくウエハWに成膜された膜と反応する。
【0048】
シャワーヘッド部93には、回転テーブル2の角速度の違いに対応して回転中心側で少なく、外周側で多くなるように複数のガス吐出孔93aが設けられている。複数のガス吐出孔93aの個数としては、例えば数十〜数百個とすることができる。また、複数のガス吐出孔93aの直径としては、例えば0.5mmから3mm程度とすることができる。シャワーヘッド部93に供給された活性化されたエッチングガスは、ガス吐出孔93aを通って回転テーブル2とシャワーヘッド部93との間の空間に供給される。
【0049】
配管94は、プラズマ生成部91とシャワーヘッド部93とを接続する。
【0050】
また、図6及び図7に示すように、真空容器1の周方向におけるガス吐出孔93aの前方には、3つのパージガス供給部96(96a、96b、96c)がガス吐出孔93aに接近してシャワーヘッド部93と一体に設けられている。
【0051】
パージガス供給部96は、容器本体12の半径方向に沿って回転テーブル2に対して水平に伸びるように設けられており、回転テーブル2とシャワーヘッド部93との間の空間にパージガスを供給する。パージガス供給部96の各々には、例えば開閉バルブ及び流量調整器が接続されており、各々独立にパージガスの供給流量が制御可能となっている。パージガス供給部96から供給されるパージガスの流量は、活性化ガス供給部90により回転テーブル2の表面に供給されるエッチングガスの分布に基づいて制御される。
【0052】
パージガス供給部96aは、パージガス供給部96bよりも容器本体12の半径方向の回転中心側に配置されている。パージガス供給部96bは、パージガス供給部96cよりも容器本体12の半径方向の回転中心側に配置されている。
【0053】
係るパージガス供給部96から供給されるパージガスにより、ガス吐出孔93aから回転テーブル2とシャワーヘッド部93との間の空間に供給されたエッチングガスに含まれるフッ素体積割合を低下させることができる。パージガスとしては、例えばArガス、ArガスとHガスとの混合ガス(以下「Ar/Hガス」という。)を用いることができるが、Ar/Hガスを用いることが好ましい。これにより、FラジカルがHガスと反応してHF(フッ化水素)が生成されるため、Fラジカルの量が減少する。すなわち、Fラジカルの濃度を制御することができる。
【0054】
また、図6及び図7に示すように、真空容器1の周方向におけるガス吐出孔93aの後方には、3つのパージガス供給部96(96d、96e、96f)がガス吐出孔93aに接近してシャワーヘッド部93と一体に設けられている。
【0055】
パージガス供給部96は、容器本体12の半径方向に沿って回転テーブル2に対して水平に伸びるように設けられており、回転テーブル2とシャワーヘッド部93との間の空間にパージガスを供給する。パージガス供給部96の各々には、例えば開閉バルブ及び流量調整器が接続されており、各々独立にパージガスの供給流量が制御可能となっている。
【0056】
パージガス供給部96dは、パージガス供給部96eよりも容器本体12の半径方向の回転中心側に配置されている。パージガス供給部96eは、パージガス供給部96fよりも容器本体12の半径方向の回転中心側に配置されている。
【0057】
係るパージガス供給部96から供給されるパージガスにより、ガス吐出孔93aから回転テーブル2とシャワーヘッド部93との間の空間に供給されたエッチングガスに含まれるフッ素体積割合を低下させることができる。パージガスとしては、前述と同様、例えばArガス、Ar/Hガスを用いることができる。
【0058】
なお、図6では、パージガス供給部96が真空容器1の周方向におけるガス吐出孔93aの前方に3つ、後方に3つ配置された構成について説明したが、本発明はこの点において限定されるものではない。パージガス供給部96は、真空容器1の周方向におけるガス吐出孔93aの前方のみに配置されていてもよく、後方のみに配置されていてもよい。また、パージガス供給部96の数としては、2つ以上設けられていればよい。
【0059】
また、基板処理装置には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100が設けられている。この制御部100のメモリ内には、制御部100の制御の下に、後述する基板処理方法を基板処理装置に実施させるプログラムが格納されている。このプログラムは後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスク等の記憶部101から制御部100内にインストールされる。
【0060】
(基板処理方法)
本発明の一実施形態に係る基板処理装置を用いた基板処理方法の一例について説明する。以下では、ウエハW上に形成された凹形状パターンの1つであるビア内にSiO膜を形成する方法を例として説明する。なお、第1の反応ガスとしてSi含有ガス、第2の反応ガスとして酸化ガス、エッチングガスとしてCFとArガスとOガスとHガスとの混合ガス(以下「CF/Ar/O/Hガス」という。)を用いる場合を例として説明する。
【0061】
まず、図示しないゲートバルブを開き、図2に示すように、外部から搬送アーム10により搬送口15を介してウエハWを回転テーブル2の凹部24内に受け渡す。この受け渡しは、凹部24が搬送口15に臨む位置に停止したときに凹部24の底面の貫通孔を介して真空容器1の底部側から不図示の昇降ピンが昇降することにより行われる。このようなウエハWの受け渡しを、回転テーブル2を間欠的に回転させて行い、回転テーブル2の5つの凹部24内に各々ウエハWを載置する。
【0062】
続いてゲートバルブを閉じ、真空ポンプ64により真空容器1内を引き切りの状態にした後、分離ガスノズル41、42から分離ガスであるNガスを所定の流量で吐出し、分離ガス供給管51及びパージガス供給管72、73からNガスを所定の流量で吐出する。これに伴い、圧力調整手段65により真空容器1内を予め設定した処理圧力に調整する。次いで、回転テーブル2を時計回りに例えば60rpmの回転速度で回転させながらヒータユニット7によりウエハWを例えば450℃に加熱する。
【0063】
次に、成膜工程を実行する。成膜工程では、反応ガスノズル31からはSi含有ガスを供給し、反応ガスノズル32からは酸化ガスを供給する。また、活性化ガス供給部90からは、何もガスを供給しない。
【0064】
ウエハWが第1の処理領域P1を通過したときに、原料ガスであるSi含有ガスが反応ガスノズル31から供給されてウエハWの表面に吸着する。表面にSi含有ガスが吸着したウエハWは、回転テーブル2の回転により分離ガスノズル42を有する分離領域Dを通過してパージされた後、第2の処理領域P2に入る。第2の処理領域P2では、反応ガスノズル32から酸化ガスが供給され、Si含有ガスに含まれるSi成分が酸化ガスにより酸化され、反応生成物であるSiOがウエハWの表面に堆積する。
【0065】
第2の処理領域P2を通過したウエハWは、分離ガスノズル41を有する分離領域Dを通過してパージされた後、再び第1の処理領域P1に入る。そして、反応ガスノズル31からSi含有ガスが供給され、Si含有ガスがウエハWの表面に吸着する。
【0066】
以上、回転テーブル2を複数回連続的に回転させながら、エッチングガスを真空容器1内に供給することなく、第1の反応ガス及び第2の反応ガスを真空容器1内に供給する。これにより、ウエハWの表面に反応生成物であるSiOが堆積し、SiO膜(シリコン酸化膜)が成膜される。
【0067】
必要に応じて、所定の膜厚までSiO膜が成膜された後、反応ガスノズル31からはSi含有ガスの供給を停止し、反応ガスノズル32からは酸化ガスを供給し続け、回転テーブル2の回転を継続することにより、SiO膜の改質処理を行うようにしてもよい。
【0068】
成膜工程を実行することにより、凹形状パターンの1つであるビア内にSiO膜が成膜される。最初にビア内に形成されるSiO膜は、凹形状に沿った断面形状を有する。
【0069】
次に、エッチング工程を実行する。エッチング工程では、SiO膜が、V字の断面形状にエッチングされる。エッチング工程は、具体的には、以下のように実行される。
【0070】
図2に示すように、反応ガスノズル31、32からのSi含有ガス及び酸化ガスの供給を停止し、Nガスをパージガスとして供給する。回転テーブル2は、エッチングに適した温度、例えば600℃程度に設定される。また、回転テーブル2の回転速度は、例えば60rpmに設定される。この状態で、活性化ガス供給部90のシャワーヘッド部93からCF/Ar/O/Hガスを供給し、パージガス供給部96から例えば予め設定した流量のArガスを供給することで、エッチング処理が開始される。
【0071】
その際、回転テーブル2が低速で回転しているので、SiO膜はV字の断面形状にエッチングされる。ビア内のSiO膜をV字形状にエッチングすることにより、最上部の開口が広い孔をSiO膜に形成することができ、次の成膜の際に底部までSiO膜を埋め込むことができ、ボトムアップ性が高く、ボイドが発生し難い成膜を行うことができる。
【0072】
ところで、エッチング工程においてSiO膜に対してエッチングを行う際、ウエハW面内における回転中心側と外周側との間でエッチング量が異なることがある。そして、ウエハW面内におけるエッチング量が異なると、ウエハW面内のエッチング均一性を確保することが困難である。
【0073】
しかしながら、本発明の一実施形態に係る基板処理装置は、少なくとも真空容器1の周方向におけるガス吐出孔93aの前方及び後方のいずれか一方に複数のパージガス供給部96を有している。そして、パージガス供給部96により、例えば予め設定した流量のArガスを回転テーブル2とシャワーヘッド部93との間の空間に供給することができる。また、複数のパージガス供給部96の各々から供給するArガスの流量を独立して調整することで、ウエハW面でのエッチング量分布を調整することができる。
【0074】
具体的には、例えばウエハW面内における回転中心側でのエッチング量が大きい場合、パージガス供給部96aから供給されるArガス流量を、パージガス供給部96b、96cから供給されるArガス流量よりも大きくなるように調整する。なお、このとき、パージガス供給部96dから供給されるArガス流量を、パージガス供給部96e、96fから供給されるArガス流量よりも大きくなるように調整してもよい。さらに、両方を同時に調整してもよい。
【0075】
また、例えばウエハW面内における外周側でのエッチング量が大きい場合、パージガス供給部96cから供給されるArガス流量を、パージガス供給部96a、96bから供給されるArガス流量よりも大きくなるように調整する。なお、このとき、パージガス供給部96fから供給されるArガス流量を、パージガス供給部96d、96eから供給されるArガス流量よりも大きくなるように調整してもよい。さらに、両方を同時に調整してもよい。
【0076】
なお、パージガス供給部96から供給されるArガス流量の調整は、予め設定した流量となるように、制御部100によって制御されてもよく、オペレータによって制御されてもよい。
【0077】
以上、回転テーブル2を複数回連続的に回転させながら、第1の反応ガス及び第2の反応ガスを真空容器1内に供給することなく、エッチングガス及びパージガスを真空容器1内に供給する。これにより、SiO膜がエッチングされる。
【0078】
次に、再び前述した成膜工程を実行する。成膜工程では、エッチング工程でV字状にエッチングされたSiO膜上に更にSiO膜が成膜され、膜厚が増加する。V字状にエッチングされたSiO膜上に成膜されるため、成膜の際に入口が塞がれず、SiO膜の底部から膜を堆積することができる。
【0079】
次に、再び前述したエッチング工程を実行する。エッチング工程では、SiO膜がV字形状にエッチングされる。
【0080】
以上に説明した成膜工程とエッチング工程とを必要な回数だけ交互に繰り返し、SiO膜内にボイドが発生しないようにしながら、ビアを埋め込んでゆく。これらの工程の繰り返し回数は、ビア等の凹形状パターンのアスペクト比を含めた形状に応じて、適切な回数とすることができる。例えばアスペクト比が大きい場合、繰り返し回数は多くなる。また、トレンチよりもビアの方が、繰り返し回数が多くなることが推定される。
【0081】
なお、本実施形態においては、成膜工程とエッチング工程とを繰り返し、ウエハWの表面に形成された凹形状パターンに埋め込み成膜を行う例について説明したが、本発明はこの点において限定されるものではない。
【0082】
例えば、予め表面に膜が形成されたウエハWを搬入し、エッチング工程のみを行うようにしてもよい。
【0083】
また、例えば回転テーブル2を複数回連続的に回転させながら、第1の反応ガス、第2の反応ガス、エッチングガス及びパージガスを真空容器1内に同時に供給し、回転テーブル2が1回転する間に、成膜工程とエッチング工程とを1回ずつ行ってもよい。さらに、成膜工程とエッチング工程とを1回ずつ行うサイクルを複数回繰り返してもよい。
【0084】
(実施例)
次に、本発明の一実施形態に係る基板処理装置を用いて、シミュレーションを行った。
【0085】
図8は、活性化ガス供給部90からCFガス、Arガス、Oガス及びHガス(以下「CF/Ar/O/Hガス」という。)を供給し、活性化ガス供給部90よりも真空容器1の周方向において前方に配置されたパージガス供給部96(96a、96b、96c)からArガスを供給した場合の真空容器1内のフッ素体積割合のシミュレーション結果を示す図である。
【0086】
なお、シミュレーション条件は、以下のとおりとした。すなわち、真空容器1内の圧力を2Torr、回転テーブル2の温度を600℃、回転テーブル2の回転速度を60rpmとした。また、分離ガス供給管51のArガス流量を0.5slm、パージガス供給管73のArガス流量を1slmとした。また、エッチングガス供給管92のCFガス流量を10sccm、Arガス流量を4slm、Oガス流量を30sccm、Hガス流量を20sccmとした。
【0087】
係る条件下で、パージガス供給部96a、96b、96cから供給されるArガス流量を100sccm又は300sccmに変化させたときの真空容器1内のフッ素体積割合についてシミュレーションを行った。
【0088】
図8(a)は、パージガス供給部96a、96b、96cのArガス流量をすべて100sccmとしたときのシミュレーション結果を示す図である。図8(b)は、パージガス供給部96aのArガス流量を300sccm、パージガス供給部96b、96cのArガス流量を100sccmとしたときのシミュレーション結果を示す図である。図8(c)は、パージガス供給部96bのArガス流量を300sccm、パージガス供給部96a、96cのArガス流量を100sccmとしたときのシミュレーション結果を示す図である。図8(d)は、パージガス供給部96cのArガス流量を300sccm、パージガス供給部96a、96bのArガス流量を100sccmとしたときのシミュレーション結果を示す図である。
【0089】
図8(a)から(d)において、領域Z1のフッ素体積割合が最も高く、領域Z2、領域Z3、領域Z4、領域Z5、領域Z6、領域Z7、領域Z8、領域Z9、領域Z10の順にフッ素体積割合が高いことを示している。
【0090】
図8(a)から(d)を参照すると、パージガス供給部96の周方向における前方の領域において、Arガス流量が300sccmである場合のフッ素体積割合が、Arガス流量が100sccmである場合のフッ素体積割合よりも小さくなっている。具体的には、Arガス流量が300sccmであるパージガス供給部96の周方向における前方の領域において、図8(a)よりも図8(b)から(d)の方が領域Z4の面積が小さくなり、領域Z5から領域Z6の面積が大きくなっている。すなわち、パージガス供給部96のArガス流量を大きくすることで、Arガス流量を大きくしたパージガス供給部96の周方向における前方の領域のフッ素体積割合を小さくすることができる。結果として、当該領域のシリコン酸化膜のエッチング量を小さくすることができる。
【0091】
図9は、図8と同様、活性化ガス供給部90からCF/Ar/O/Hガスを供給し、活性化ガス供給部90よりも真空容器1の周方向において前方に配置されたパージガス供給部96(96a、96b、96c)からArガスを供給した場合の真空容器1内のフッ素体積割合を示したシミュレーション結果を示す図である。なお、図9では、図8と同様のシミュレーション条件下で、パージガス供給部96a、96b、96cから供給されるArガス流量を100sccm又は1000sccmに変化させたときの真空容器1内のフッ素体積割合についてシミュレーションを行った。
【0092】
図9(a)は、パージガス供給部96aのArガス流量を1000sccmとし、パージガス供給部96b、96cのArガス流量を100sccmとしたときのシミュレーション結果を示す図である。図9(b)は、パージガス供給部96bのArガス流量を1000sccmとし、パージガス供給部96a、96cのArガス流量を100sccmとしたときのシミュレーション結果を示す図である。図9(c)は、パージガス供給部96cのArガス流量を1000sccmとし、パージガス供給部96a、96bのArガス流量を100sccmとしたときのシミュレーション結果を示す図である。
【0093】
図9(a)から(c)において、領域Z1のフッ素体積割合が最も高く、領域Z2、領域Z3、領域Z4、領域Z5、領域Z6、領域Z7、領域Z8、領域Z9、領域Z10の順にフッ素体積割合が高いことを示している。
【0094】
図8(a)及び図9(a)から(c)を参照すると、パージガス供給部96の周方向における前方の領域において、Arガス流量が1000sccmである場合のフッ素体積割合が、Arガス流量が100sccmである場合のフッ素体積割合よりも小さくなっている。具体的には、Arガス流量が1000sccmであるパージガス供給部96の周方向における前方の領域において、図8(a)よりも図9(a)から(c)の方が領域Z4の面積が小さくなり、領域Z5から領域Z10の面積が大きくなっている。すなわち、パージガス供給部96のArガス流量を大きくすることで、Arガス流量を大きくしたパージガス供給部96の周方向における前方の領域のフッ素体積割合を小さくすることができる。結果として、当該領域のシリコン酸化膜のエッチング量を小さくすることができる。さらに、Arガス流量を300sccmから1000sccmとすることで、Arガス流量が300sccmのときよりもフッ素体積割合を小さくすることができる。
【0095】
図10は、活性化ガス供給部90からCF/Ar/O/Hガスを供給し、活性化ガス供給部90よりも真空容器1の周方向において後方に配置されたパージガス供給部96(96d、96e、96f)からArガスを供給した場合の真空容器1内のフッ素体積割合を示したシミュレーション結果を示す図である。なお、図10では、図8と同様のシミュレーション条件下で、パージガス供給部96d、96e、96fから供給されるArガス流量を100sccm又は300sccmに変化させたときの真空容器1内のフッ素体積割合についてシミュレーションを行った。
【0096】
図10(a)は、パージガス供給部96d、96e、96fのArガス流量をすべて100sccmとしたときのシミュレーション結果を示す図である。図10(b)は、パージガス供給部96dのArガス流量を300sccmとし、パージガス供給部96e、96fのArガス流量を100sccmとしたときのシミュレーション結果を示す図である。図10(c)は、パージガス供給部96eのArガス流量を300sccmとし、パージガス供給部96d、96fのArガス流量を100sccmとしたときのシミュレーション結果を示す図である。図10(d)は、パージガス供給部96fのArガス流量を300sccmとし、パージガス供給部96d、96dのArガス流量を100sccmとしたときのシミュレーション結果を示す図である。
【0097】
図10(a)から(d)において、領域Z1のフッ素体積割合が最も高く、領域Z2、領域Z3、領域Z4、領域Z5、領域Z6、領域Z7、領域Z8、領域Z9、領域Z10の順にフッ素体積割合が高いことを示している。
【0098】
図10(a)から(d)を参照すると、パージガス供給部96の周方向における後方の領域において、Arガス流量が300sccmである場合のフッ素体積割合が、Arガス流量が100sccmである場合のフッ素体積割合よりも小さくなっている。具体的には、Arガス流量が300sccmであるパージガス供給部96の周方向における前方の領域において、図10(a)よりも図10(b)から(d)の方が領域Z3から領域Z4の面積が小さくなり、領域Z5から領域Z6の面積が大きくなっている。すなわち、パージガス供給部96のArガス流量を大きくすることで、Arガス流量を大きくしたパージガス供給部96の周方向における後方の領域のフッ素体積割合を小さくすることができる。結果として、当該領域のシリコン酸化膜のエッチング量を小さくすることができる。また、パージガス供給部96を活性化ガス供給部90よりも真空容器1の周方向において後方に配置することで、真空容器1の半径方向における中央に配置されたパージガス供給部96からArガスを供給したときに、Arガスが真空容器1の半径方向における外周側に流れることを抑制することができる。このため、フッ素体積割合の制御性が向上する。
【0099】
以上に説明したように、本発明の一実施形態に係る基板処理装置及び基板処理方法によれば、基板面内でのエッチング量分布を制御することができる。
【0100】
以上、基板処理装置及び基板処理方法を実施例によって説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。
【0101】
前述の実施形態では、活性化ガス供給部90におけるプラズマ生成部91が配管94を介してシャワーヘッド部93の上方に設けられている形態について説明した。しかし、プラズマ生成部91を設ける位置としては、ウエハW上に成膜された膜に対して活性化されたエッチングガスを供給することができる位置であれば特に限定されず、例えばシャワーヘッド部93の内部、シャワーヘッド部93の下方であってもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 真空容器
2 回転テーブル
31、32 反応ガスノズル
90 活性化ガス供給部
93 シャワーヘッド部
93a ガス吐出孔
96 パージガス供給部
100 制御部
W ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10