(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液透過性トップシートと、液不透過性バックシートと、前記トップシートと前記バックシートの間に配置された吸収体とを含む吸収性物品であって、前記吸収体は、上面及び下面を有し、長手方向、短手方向及び厚さ方向を有する吸収コアと、当該吸収コアの少なくとも下面を覆うコアラップシートとを含み、
前記コアラップシートは、熱可塑性合成繊維を50質量%以上含み、第1面及び当該第1面とは反対側の第2面とを有し、前記コアラップシートは、さらに、前記吸収コアの長手方向に平行な第1方向と、厚さ方向と、前記第1方向及び厚さ方向の両方向と直交する第2方向とを有し、
前記コアラップシートの第1面が、前記吸収コアの下面と当接する領域を有し、当該領域の少なくとも一部に、前記第2面から前記第1面の方向に向けて突出する複数の畝部と、前記第1面から前記第2面の方向に向けて窪んだ複数の溝部とを備え、前記複数の畝部及び複数の溝部は前記第1方向に延び、かつ、前記第2方向に予め定めた間隔で交互に設けられており、
前記コアラップシートの第1面の各溝部は、第1底部を有し、さらに、当該第1底部に、第1方向に対して不連続に設けられ、かつ、第1面から第2面の方向に向けて窪んだ複数の凹部を備える、
吸収性物品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収体の柔軟性の向上により吸収性物品の着用時の装着感を改善するために、吸収体に含まれる吸収コアの木材パルプ繊維含有率を減らす一方で、高吸収性ポリマー(SAP)の含有率を増やし、吸収コアの吸収キャパシティを低下させることなく吸収コアを薄型にする試みがなされている。しかしながら、一般的に、吸収コアの木材パルプ繊維含有率が減ると、吸収体の吸収速度が低下し易くなる。さらに、吸収コアの高吸収性ポリマー粒子の含有率を増加させるとともに木材パルプ繊維の含有率を減少させると、木材パルプ繊維の交絡数が減少して吸収コアの強度が低下し易くなる。また、コアラップシートとして木材パルプ繊維主体のコアラップシートを使用した吸収体では、SAP粒子が体液を吸収することにより膨潤して、木材パルプ繊維主体のコアラップシートは破けやすくなる。この対策として、コアラップシートとして湿潤してもシート強度が低下しない熱可塑性合成繊維を用いた不織布も使用されているが、吸水性がない為、木材パルプ繊維の使用量削減には限度があった。また、吸収速度の向上のために凹凸形状が賦形された木材パルプ繊維ウェブをコアラップシートとして使用した場合、コアラップシートが多量の尿等の体液に繰り返し曝され多量の体液を吸収すると凹凸形状が不可逆的になくなり、嵩高さが減少する。更に、コアラップシートの強度を高めるためにコアラップシートに紙力増強剤を添加したりコアラップシートを高密度化したりすると、吸収体の吸水性は低下する。そのため、凹凸形状が賦形された木材パルプ繊維ウェブをコアラップシートと使用した場合には、吸収体の液吸収速度を向上させ、液戻り量を低減させるという凹凸の所期の効果を達成することが困難であった。また、コアラップシートが多量の体液を繰り返し吸収すると、コアラップシートの強度が低下することによりコアラップシートが破れ、コアラップシートにより覆われた吸収コアの膨潤した高吸収性ポリマー粒子が吸収体の外部へ漏れ出るおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、尿等の体液を繰り返し吸収した場合でも、液体吸収性を高いレベルで維持することができる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を鋭意検討した結果、コアラップシートとして、熱可塑性合成繊維を50質量%以上含み、吸収コアと液不透過性バックシートの間の領域の少なくとも一部に所定の凹凸パターン形状を有するシートを使用した場合に、吸収体が尿等の体液を繰り返し吸収した場合でも、コアラップシートが破れにくく、液体吸収性が低下しにくくなるという知見を得た。
【0007】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、液透過性トップシートと、液不透過性バックシートと、当該トップシートとバックシートの間に配置された吸収体とを含む吸収性物品であって、吸収体は、上面及び下面を有し、長手方向、短手方向及び厚さ方向を有する吸収コアと、当該吸収コアの下面を覆うコアラップシートとを含み、
当該コアラップシートは、熱可塑性合成繊維を50質量%以上含み、第1面及び当該第1面とは反対側の第2面とを有し、当該コアラップシートは、さらに、吸収コアの長手方向に平行な第1方向と、厚さ方向と、第1方向及び厚さ方向の両方向と直交する第2方向とを有し、
コアラップシートの第1面が、吸収コアの下面と当接する領域を有し、当該領域の少なくとも一部に、第2面から第1面の方向に向けて突出する複数の畝部と、第1面から第2面の方向に向けて窪んだ複数の溝部とを備え、複数の畝部及び複数の溝部は第1方向に延び、かつ、第2方向に予め定めた間隔で交互に設けられている、吸収性物品を提供する。
【0008】
本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
液透過性トップシートと、液不透過性バックシートと、当該トップシートと前記バックシートの間に配置された吸収体とを含む吸収性物品であって、吸収体は、上面及び下面を有し、長手方向、短手方向及び厚さ方向を有する吸収コアと、当該吸収コアの少なくとも下面を覆うコアラップシートとを含み、
当該コアラップシートは、熱可塑性合成繊維を50質量%以上含み、第1面及び当該第1面とは反対側の第2面とを有し、当該コアラップシートは、さらに、吸収コアの長手方向に平行な第1方向と、厚さ方向と、第1方向及び厚さ方向の両方向と直交する第2方向とを有し、
コアラップシートの第1面が、吸収コアの下面と当接する領域を有し、当該領域の少なくとも一部に、第2面から第1面の方向に向けて突出する複数の畝部と、第1面から第2面の方向に向けて窪んだ複数の溝部とを備え、当該複数の畝部及び複数の溝部は第1方向に延び、かつ、第2方向に予め定めた間隔で交互に設けられている、吸収性物品。
上記態様1では、吸収コアとコアラップシートの間及びコアラップシートと液不透過性バックシートの間に復元可能な液輸送チャネルが確保され、一度に多量の体液を吸収した場合でも繰り返し多量の尿を吸収した場合でも強度が低下しにくく、高い吸収速度と優れた拡散性を発揮することができる。吸収コアの長手方向と平行な第1方向に複数の畝部及び複数の溝部が延びているので、第1方向への体液の拡散を促進でき、吸収速度を高めることができる。さらに、コアラップシートに上記のとおりの複数の畝部及び複数の溝部が設けられていることによりコアラップシートの柔軟性及び伸縮性が向上し、コアラップシートが着用者の動きに追従して変形することができ、吸収性物品の装着感を改善することができる。
【0009】
[態様2]
前記コアラップシートの第1面の各溝部は、第1底部を有し、さらに、当該第1底部に、第1方向に対して不連続に設けられ、かつ、第1面から第2面の方向に向けて窪んだ複数の凹部を備える、上記態様1に記載の吸収性物品。
上記態様2では、コアラップシートを第1面側から見た場合、コアラップシートが2段階に窪んでいるため、コアラップシートの厚み方向の嵩回復性をより高めることができ、高い吸収速度と優れた拡散性を維持することができる。
【0010】
[態様3]
前記凹部は周壁部及び第2底部を有し、当該周壁部の少なくとも一部にコアラップシートの第2面に通じる孔部を備える、上記態様2に記載の吸収性物品。
上記態様3では、周壁部の少なくとも一部にコアラップシートの第2面に通じる孔部があるため、バックシート側への液透過性に優れ、コアラップとバックシートの間の液拡散性を向上することができ、吸収速度を高めることができる。
【0011】
[態様4]
吸収コアが、下面側に、長手方向に延びる1つ以上の主溝部を有する、上記態様1〜3のいずれか一つに記載の吸収性物品。
上記態様4では、吸収コアの下面側の主溝部により、吸収コアとコアラップシートとの間に空間を確保することができるため尿を一時的に貯蔵しつつ拡散させることができ、そのため吸収速度をより高めることができ、吸収された液体がより戻りにくい(すなわちリウェット性により優れる)。
【0012】
[態様5]
吸収コアが、下面側に、上記溝部と交差する1つ以上の従溝部を有する、上記態様4に記載の吸収性物品。
上記態様5では、従溝部により、吸収コアとコアラップシートとの間に形成される空間が増すことで、尿を一時的に貯蔵しつつ拡散させる性能がより向上し、吸収速度をより高めることができ、リウェット性をより向上することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コアラップシートが、熱可塑性合成繊維を主原料とするもの(すなわち、熱可塑性合成繊維の含有量が50質量%以上であるもの)であり、吸収コアの下面側と当接する領域を有し、当該領域の少なくとも一部に、前記第2面から前記第1面の方向に向けて突出する複数の畝部と、前記第1面から前記第2面の方向に向けて窪んだ複数の溝部とを備え、前記複数の畝部及び複数の溝部は吸収コアの長手方向に平行な方向に延び、かつ、前記第2方向に交互に設けられていることにより、コアラップシートが多量の尿等の体液に繰り返し曝された場合でも嵩高さが損なわれにくく、強度が低下しにくくなるために、吸収コアとコアラップシートの間及びコアラップシートと液不透過性バックシートの間に液輸送チャネルを維持することができる。その結果、吸収コアとコアラップシートの間及びコアラップシートと液不透過性バックシートの間で、高い液体拡散性を維持することができ、その結果、吸収性物品は高い液体吸収速度を維持することができる。コアラップシートが荷重を受けることにより厚み方向に潰れて当該シートの嵩高さが減少したとしても、本発明におけるコアラップシートは嵩回復性に優れているために、吸収コアとコアラップシートの間及びコアラップシートと液不透過性バックシートの間に液輸送チャネルを復元することができる。さらに、コアラップシートが、吸収コアの下面側と当接する領域を有し、当該領域の少なくとも一部に、吸収コアの長手方向と平行に延びる複数の畝部及び複数の溝部を備えるので、吸収コアの長手方向における体液の拡散を促進でき、その結果、液体吸収速度を高めることができ、吸収コアにより吸収しきれなかった体液があふれて漏れ出ることを抑制することができる。さらに、コアラップシートが上記のパターン形状を有することにより、コアラップシートの柔軟性及び伸縮性が向上し、コアラップシートが着用者の動きに追従して変形する能力を高めることができ、吸収性物品の装着感を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の吸収性物品について、以下、詳細に説明する。
図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態の展開図(正面図)であり、より具体的には、使い捨ておむつ1の展開図である。
図1に示した使い捨ておむつ1は、液透過性シート2と、液不透過性シート(図示せず)と、液透過性シート2及び液不透過性シートの間の吸収体3とを含む。
図1に示した使い捨ておむつ1はまた、一対の立体ギャザー4と、一対のテープファスナ5とを有する。
図1に示した使い捨ておむつ1では、紙面の下側が着用者の正面側であり、紙面の上側が着用者の背面側である。吸収体3の長手方向(縦方向)D1及び短手方向(横方向)D2はそれぞれ使い捨ておむつ1の長手方向D1及び短手方向D2に一致する。
【0016】
図2(A)及び(B)は、それぞれ、
図1に示した吸収性物品に使用される吸収体のIII−III線断面図であり、
図2(A)は、吸収コア6が1枚のコアラップシート7で覆われている吸収体の断面図を示し、
図2(B)は、吸収コア6が下側コアラップシート7’及び上側コアラップシート7”で覆われている吸収体の断面図を示す。
図2(A)及び(B)では、紙面の上側が液透過性シート側であり、紙面の下側が液不透過性シート側である。コアラップシート7、下側コアラップシート7’及び上側コアラップシート7”は、それぞれ、第1面(上面)7a,7’a,7”aと、その反対側の第2面(下面)7b,7’b,7”bを有する。吸収コア6は、例えば複数の線状又は点状の接着部(図示せず)によりコアラップシート(7,7’,7”)と接着されていてもよい。接着部は、例えばホットメルト接着剤により形成することができる。
【0017】
図2(A)に示した吸収体の実施形態では、吸収コア6の下面がコアラップシート7の第1面(上面)7aと当接しており、かつ、コアラップシート7は、吸収コア6の下面と当接する領域を有し、かつ、当該領域の少なくとも一部に、吸収コア6の長手方向に平行な第1方向に延び、かつ、当該第1方向と直交する第2方向に予め定められた間隔で交互に設けられた複数の畝部及び複数の溝部とを備える。
図2(B)に示した吸収体の実施形態では、吸収コア6の下面が下側コアラップシート7’の第1面(上面)7’aと当接しており、吸収体の短手方向D2において、下側コアラップシート7’の両端と上側コアラップシート7”の両端が接合されている。
図2(A)及び
図2(B)に模式的に示されているように、コアラップシート7及び下側コアラップシート7’は両方とも、第2面(下面)7b,7’bにも、第1方向と直交する第2方向に予め定められた間隔で交互に設けられた複数の畝部及び複数の溝部とを備える。各溝部は隣り合う畝部と畝部の間に存在する。コアラップシート7,7’の第2面7b,7’bに設けられた複数の溝部及び畝部は、それぞれ、コアラップシート7,7’の第1面7a,7’aに設けられた複数の畝部及び溝部の反対側の位置に存在する。
【0018】
本発明の吸収性物品は、着用者の動きによりコアラップシートの厚み方向にコアラップシートに荷重(すなわち、圧縮荷重)が加わることによって、及び/又は、コアラップシートを引き伸ばす方向(すなわちコアラップシートの第1方向及び第2方向により規定される面内方向)にコアラップシートに荷重(引張荷重)が加わることよって、コアラップシートの液輸送チャネルとして作用する空間の体積が減少したとしても、当該コアラップシートは優れた嵩回復性を有するために、吸収コアとコアラップシートの間及びコアラップシートと液不透過性バックシートの間に液輸送チャネルを復元することができ、それにより高い液体拡散性を維持することができ、その結果、高い液体吸収速度を維持することができる。
【0019】
コアラップシートの第1面(上面)側の畝部について、溝部の底部から畝部の頂部までの高さ(以下、「上面側畝部高さ」という)は好ましくは0.1〜5mm、さらに好ましくは0.2〜3mm、より好ましくは0.25〜2mmである。なお、畝部の頂部は、第2方向における畝部の略中央部に位置する。上面側において、隣り合う畝部の頂部間の間隔(以下、「上面側畝部間隔」という)は好ましくは0.25〜5mm、さらに好ましくは0.5〜3mm、より好ましくは0.75〜2mmである。これらの範囲の上面側畝部高さ及び上面側畝部間隔では、吸収コアとコアラップシートの間及びコアラップシートと液不透過性バックシートの間に液輸送チャネルとして作用する空間が形成され、毛細管現象により、当該空間に体液を引き込んで拡散させることができる。液体拡散性向上の観点から、上記複数の畝部及び溝部は、吸収コアの長手方向に平行な方向において、コアラップシートの一方の端縁から他方の端縁まで連続して延びていることが好ましい。コアラップシートが、上記のとおり複数の畝部及び複数の溝部とを有することによって、コアラップシートの柔軟性及び伸縮性が向上し、コアラップシートが着用者の動きに追従して変形する能力を高めることができ、吸収性物品の装着感を向上することができる。上記の上面側畝部高さ及び上面側畝部間隔は、2次元レーザー変位計を用いて測定される。2次元レーザー変位計としては、例えば、キーエンス株式会社製の高精度2次元レーザー変位計LJ−Gシリーズ(型式:LJ−G030)が挙げられる。
【0020】
コアラップシートについて、上面側畝部高さが0.25mm未満である場合には、吸収コアとコアラップシートの間及びコアラップシートと液不透過性バックシートの間に液輸送チャネルとして作用するのに十分な空間を形成することが困難である。上面側畝部高さが5mmを超えると、吸収性物品の厚みが増大するため、薄型の吸収性物品が求められる場合には好ましくない。また、当該高さが高すぎると、毛細管現象が生じにくくなる。上面側畝部間隔が0.25mm未満である場合、吸収コアとコアラップシートの間及びコアラップシートと液不透過性バックシートの間に液輸送チャネルとして作用するのに十分な空間を形成することが困難である。吸収コアの第2方向(短手方向)における単位長さ当たりの連続する畝部及び溝部の数は隣接する畝部間の間隔が大きくなるほどより少なくなるため、上面側畝部間隔が5mmを超えると、毛細管作用が生じにくくなる。
【0021】
図3、
図4(A)及び
図4(B)は、本発明におけるコアラップシートの実施形態を示す。コアラップシート7(7’)は、
図3、
図4(A)及び
図4(B)において、第1面である上面12と、上面12とは反対側の第2面である下面13とを有し、下面13から上面12の方向に向けて突出する複数の畝部14と、上面12から下面13の方向に向けて窪んだ複数の溝部15とを上面12側に有する。複数の畝部及び複数の溝部は、吸収コアの長手方向D1に平行な第1方向に延び、かつ、第1方向と直交する第2方向(D2)に予め定められた間隔で交互に設けられている。各溝部15は、隣り合う畝部の間に形成されており、底部16を有する。溝部15の底部16には、第1面から第2面の方向に向けて窪んでおり、第1方向に不連続に設けられた複数の凹部17を有する。各凹部17は、周壁部18及び底部19を有する。コアラップシートが、溝部15の底部16に凹部17を有する実施形態にある場合には、以下、溝部15の底部16を第1底部といい、凹部17の底部19を第2底部という。
図4(A)及び
図4(B)に示す実施形態では、周壁部18は、第1方向に延びる一対の第1周壁部18a,18aと、第2方向に延びる一対の第2周壁部18b,18bとを備え、一対の第1周壁部18a,18aは相互に向かい合って設けられており、一対の第2周壁部18b,18bは相互に向かい合って設けられている。かかるコアラップシートは、例えば日本国特許第5829326号公報に記載されている装置を使用して製造することができる。本発明の吸収性物品では、コアラップシートを上面側から見た場合、コアラップシートが2段階に窪んでいるため、コアラップシートの厚み方向の嵩回復性をより高めることができ、多量の尿等の体液に繰り返し曝された場合でも高い液体吸収速度をより維持することができる。また、コアラップシートの凹部17は吸収コア側に開いた開口を有するため、吸収コアを透過した体液を上記の溝部及び畝部により拡散させつつ体液を凹部内の空間に一時的に貯留することができる。凹部に貯留された体液は、溝部15を通じて拡散し、及び/又は、毛細管作用により下面13側に移行し下面側で流動し、コアラップシートの面内方向に拡散することができる。下面13側に移行した体液は、拡散後、再びコアラップシートを透過して上面側に移行し、吸収コアにより吸収される。
【0022】
図4(B)に示す実施形態では、凹部17の各第1周壁部18aに、当該第1周壁部18aを貫通してコアラップシート7(7’)の下面13側に通じる孔部20が形成されている。孔部20を通じてコアラップシート7(7’)の上面12側から下面13側に体液が移行することができるため、コアラップシート7(7’)の上面12側から下面13側への体液の移行を促進することができる。
図4(B)に示した実施形態では、孔部20は、第1周壁部18aにおける凹部17の第2底部19寄りの位置に形成されており、各凹部17に2つの孔部20が存在する。
図4(B)に示した実施形態では、かかる孔部は、第2周壁部18b,18bに設けられていない。上記実施形態においては、凹部17の孔部20が、第1方向に沿うように形成された一対の第1周壁部に設けられているが、孔部は第2方向に沿うように形成された一対の第2周壁部に設けられていてもよく、また、いずれか1つの周壁部に設けられている構成であってもよい。
【0023】
図4(A)及び
図4(B)に示した実施形態において、上面(第1面)側において、第1底部の高さから第2底部の上面側の高さまでの距離(以下、「上面側凹部深さ」という)は、上面側畝部高さの10〜80%であることが好ましく、さらに好ましくは15〜70%、より好ましくは20〜60%である。上面側凹部深さが上面側畝部高さの10%未満であると、体液を貯留するのに十分な容積を有する空間を凹部17内に確保することができない。上面側凹部深さが上面側畝部高さの80%を超えると、凹部17が深くなりすぎるため、吸収性物品の厚みが増大し、薄型の吸収性物品が求められる場合には好ましくない。また、凹部の第1方向の長さは、好ましくは0.25〜5mm、さらに好ましくは0.5〜3mm、より好ましくは0.75〜2mmである。凹部の第2方向の長さは、上面側畝部間隔によるが、好ましくは0.25〜5mm、さらに好ましくは0.5〜3mm、より好ましくは0.75〜2mmである。凹部の第1方向及び/又は第2方向の長さが0.25mm未満であると、凹部が小さすぎるため、吸収コアを透過した体液を凹部に一次的に貯留するという効果が十分に発揮されない。上面側畝部間隔によるが、凹部の第1方向及び第2方向の長さが5mmを超えると、凹部内の空間で毛細管作用が生じにくくなるため、体液をコアラップシートの面内方向に拡散させることや、体液の上面側から下面側への移行、下面側から上面側への移行を促進することが困難になるおそれがある。上記の上面側凹部深さ、凹部の第1方向の長さ及び凹部の第2方向の長さは、2次元レーザー変位計を用いて測定される。2次元レーザー変位計としては、例えば、キーエンス株式会社製の高精度2次元レーザー変位計LJ−Gシリーズ(型式:LJ−G030)が挙げられる。
【0024】
図4(B)に示した実施形態において、凹部17の第2周壁部18bに孔部20が設けられている理由は、第2周壁部18bに孔部20を設けた場合には、孔部20が、凹部に隣接する下面(第2面)側の溝部(すなわち上面側の畝部の反対側の部分)に向けて開口しており、下面側の溝部が液輸送チャネルとして作用することができるため、体液の上面側から下面側への移行、下面側から上面側への移行を促進することができ、その結果、体液をコアラップシートの面内方向に拡散させることを促進することができる。孔部20は、コアラップシート7(7’)の熱可塑性樹脂繊維を溶融せずに形成することが好ましい。熱可塑性樹脂繊維を溶融切断した場合には、繊維の端部が溶けて丸くなるために繊維径が大きくなり、その結果、孔部20の周縁部において毛細管作用が生じにくくなるため、熱可塑性樹脂繊維を破断することにより孔部を形成することが好ましい。孔部20の内部空間内には、その内部空間に架け渡された繊維と、一部の延出した繊維とが混在した状態となっていて、完全に開放された空間とはなっていないことが好ましい。孔部の内部空間の開孔率は、1〜50%とすることが好ましく、さらに好ましくは1.5〜35%、より好ましくは2.5〜20%とすることである。孔部の内部空間の開孔率が1%未満であると、孔部によりもたらされる効果が不十分であり、開孔率が50%以上であると孔部が設けられた第1周壁部の強度が低くなり易い。ただし、孔部の内部空間の開孔率については、本発明の吸収性物品の種類や用途等に応じて、上記の範囲以外であってもよく、任意に設定することができる。
【0025】
本開示の吸収性物品において、コアラップシートは、熱可塑性合成繊維を主成分とする(すなわち50質量%以上含む)ものである。コアラップシートは、熱可塑性合成繊維を主成分とする(すなわち50質量%以上含む)限り、その他の構成繊維を含有してもよい。熱可塑性合成繊維の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマー樹脂等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタラート、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリ乳酸等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド等が挙げられる。その他の構成繊維の例としては、例えば、木材又は非木材パルプ繊維、天然繊維(例えば、羊毛、綿等)、再生セルロース繊維(例えば、レーヨン,アセテート等)、無機繊維(例えば、ガラス繊維,炭素繊維等)が挙げられる。コアラップシートを構成する繊維は、芯・鞘型繊維、サイド・バイ・サイド型繊維、島/海型繊維等の複合繊維;中空タイプの繊維;扁平、Y型、C型等の異型繊維;潜在捲縮又は顕在捲縮の立体捲縮繊維;水流、熱、エンボス加工等の物理的負荷により分割する分割繊維等の形態を有するものであることができる。コアラップシートは、例えば、ウェブ(フリース)を形成し、繊維同士を物理的・化学的に結合させる方法により製造された不織布を上記の畝部、溝部及び必要に応じて凹部を形成するための賦形加工することにより製造できる。ウェブの形成方法としては、例えば、乾式法(スパンボンド法、カード法、メルトブローン法、エアレイド法等)、湿式法等が挙げられ、結合方法としては、例えば、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、ステッチボンド法、スパンレース法等が挙げられる。このようにして製造された不織布の他、水流交絡法によりシート状に形成したスパンレースを使用してもよい。賦形加工対象の不織布の坪量は、通常は10〜75g/m
2であり、好ましくは10〜45g/m
2であり、更に好ましくは10〜25g/m
2である。賦形加工対象の不織布の厚みは、通常は0.1〜5mmであり、好ましくは0.2〜3mmであり、更に好ましくは0.4〜2mmである。
【0026】
以下、前記構成を有するコアラップシート7(7’)の製造方法について説明する。
図5は、コアラップシート7(7’)を製造するための製造装置の一例を示すものであり、
図6は、コアラップシートの製造装置に備えられる賦形装置の一対の賦形ロールを模式的に示す要部拡大斜視図である。
図7は、下方の賦形ロールのピンの配置を模式的に示す要部拡大図であり、
図8は、上方の賦形ロールと下方の賦形ロールの噛み合わせ状態を示す要部拡大図である。
図5に示す製造装置50は、コアラップシート7(7’)に加工される不織布51がロール状に巻かれ、不織布51を搬送方向MDに向けて巻き出す巻出装置52と、巻出された不織布51を予熱する予熱装置61と、予熱された不織布51に対して上記の畝部、溝部及び必要に応じて凹部を形成するための賦形加工を行う賦形装置62とを備える。
【0027】
加工対象の不織布に用いる熱可塑性合成繊維は、吸収性物品に用いたときの体液の隠ぺい性の観点から、不透明性、特に、白化性の高い繊維を用いることができる。熱可塑性合成繊維は、例えば、繊維を不透明化させる光線透過抑制剤(例えば酸化チタンなど)を含んでいてもよい。熱可塑性合成繊維には、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、可塑剤等の添加剤が添加されていてもよい。熱可塑性合成繊維は、界面活性剤、親水剤等により親水化処理されていることが好ましい。
【0028】
予熱装置61は、この実施の形態においては、上下一対の加熱ロール61a,61bを備えていて、搬送されてきた不織布51を、回転している下方の加熱ロール61bに巻き付けて加熱した後、回転している上方の加熱ロール61aに受け渡し、その加熱ロール61aによって不織布51を再度加熱することが可能となっている。また、賦形装置62は、上下一対の延伸ロール63,64を備えていて、
図6に示すように、上方の延伸ロール63は、ロール幅方向に一定の間隔で配設された、この上方の延伸ロール63の外周面に沿って相互に平行に複数設けられた突稜63aと、隣り合う突稜63a,63aの間に設けられた複数の凹溝63bとを備えている。一方、下方の延伸ロール64は、外周面に、上方の延伸ロール63の凹溝63bと噛み合うように設けられた複数のピン64aを備えている。
図8に示すように、これらのピン64aは、ロール幅方向に対しては、上方の延伸ロール63の突稜63aと接触しないように一定の間隔で配設されていると共に、ロールの周方向に対しては、外周面に沿って一定の間隔でほぼ直線的に配設されている。また、
図7に示すように、この実施の形態における下方の延伸ロール64は、複数のピン64aが、下方の延伸ロール64の外周面に千鳥状に配設された構成となっている。
【0029】
前記構成を有する製造装置50を用いて、コアラップシート7(7’)の製造方法を実施する場合には、巻出装置52から巻き出された不織布51を予熱する予熱工程と、予熱工程を経た不織布51を賦形加工する賦形工程とを順次行う。予熱工程は、巻出装置から巻き出され、搬送方向MDに沿って搬送されてきた不織布51を、予熱装置61の回転している上下一対の加熱ロール61a,61bの外周面に順次接触させることにより、不織布51を予熱する。予熱温度は、不織布を構成する熱可塑性樹脂繊維の種類によるが、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)と高密度ポリエチレン(HDPE)との芯鞘型の複合繊維の場合、加熱ロールの外周面の温度が60〜120℃程度であることが好ましい。賦形工程は、予熱工程を経て搬送されてきた不織布51を、賦形装置62において、噛み合いながら回転している上下一対の延伸ロール63,64の間に装入し、不織布51を、噛み合っている上方の延伸ロール63の突稜63a及び凹溝63bと、下方の延伸ロール64のピン64aとの間で延伸して賦形する。なお、賦形工程を実施する際、賦形を行い易いように、延伸ロール63,64を60〜120℃に加熱しながら賦形することが好ましい。このとき、上方の延伸ロール63は、突稜63aが不織布51と接触している部分を下方の延伸ロール64の方向に押し込み、これにより畝部14が賦形される。一方で、下方の延伸ロール64は、周方向に一列に並んでいる複数のピン64aが、そのピン64aの先端部分に接触している不織布51を、上方の延伸ロール63の同一の凹溝63b内に押し込む。このとき、不織布51のうち、ピン64aと非接触状態で凹溝63b内に引っ張られた部分は溝部15となる。また、ピン63aの先端部分と接触していた部分は、凹溝63b内に強く押し込まれて賦形されるため、これにより、畝部14及び溝部15が延びる方向に延びる第1周壁部18a、及びロール幅方向に延びる第2周壁部18a、並びに底部19を有する凹部17が形成される。なお、凹部17の底部19については、形成時において、上方の延伸ロール9と下方の延伸ロールとが不織布51を噛み込んだ状態で、ピン63aの先端部分が不織布51の当接部分を凹溝63b内に押し込む。
【0030】
不織布51において、ピン64aの先端部分の幅方向(ロール幅方向)の両端部に接触していた部分は、突稜63aが不織布51を下方の延伸ロール64の方向に押し込む際に発生する張力も手伝って、ピン64aが第1周壁部8aを形成する熱可塑性樹脂繊維を掻き分けたり、あるいは、繊維を破断して、破断端部を有する破断繊維を形成したりする。これにより、凹部17に、破断繊維の破断端部が含まれた孔部20が形成される。なお、一部の熱可塑性樹脂繊維は、孔部20の内部空間に架け渡された状態で残り、また、一部の破断繊維の破断端部は内部空間内に延出した状態となる。ここで、孔部20が形成されるのは、不織布51の搬送方向MDに沿う方向、即ち、延伸ロール63,64の回転方向であって、畝部14及び溝部15が延びる方向であることから、孔部20も畝部14及び溝部15が延びる方向に沿う第1周壁部18aに形成される。上記実施形態においては、凹部17は略直方体状に形成されているが、凹部の形状については、円柱状や角柱状等、任意の形状とすることができる。賦形工程が終了した不織布を吸収性物品用のコアラップシート7(7’)として使用して公知の方法に従って吸収性物品を製造することができる。
【0031】
本開示の吸収性物品において、吸収コアが、下面側に長手方向に延びる1つ以上の主溝部を有することが好ましい。主溝部は、長手方向に直線状、非直線状、例えば、湾曲状に延びることができる。吸収コアの下面側に長手方向に延びる1つ以上の主溝部により、吸収コアとコアラップシートとの間に空間を確保することができるため、体液を一時的に貯蔵しつつ長手方向に拡散させることができ、そのため吸収速度を高めることができ、吸収された液体を着用者側に戻りにくくすること、すなわちリウェット性を改善することができる。当該主溝部は、好ましくは2〜8mm、より好ましくは3〜6mmの幅を有する。主溝部の幅が上記範囲内にあると、吸収性物品が液体を吸収した後に、主溝部がその形状を保持しやすい。なお、本明細書において、吸収体の厚さ(mm)は、(株)大栄科学精器製作所製のFS−60DS[測定面44mm(直径),測定圧3g/cm
2]により、標準状態(温度23±2℃,相対湿度50±5%)で、吸収体の異なる5つの部位を加圧し、各部位における加圧10秒後の厚さを測定した5つの測定値の平均値を指す。主溝部の深さは、好ましくは2mm以下、より好ましくは2mm〜0.5mmである。吸収コアは、液体を吸収する前だけでなく、液体を繰り返し吸収した後であっても、主溝部31を基点に折れ曲がりやすく、フィット性にも優れる。その結果、本発明の吸収性物品は、液体を吸収する前と、液体を吸収した後(特に、繰り返し液体を吸収した後)の両方において、着用感に優れる。
【0032】
図9は、本発明の吸収性物品に使用できる吸収コアの一実施形態を模式的に示す平面図である。
図9に示す実施形態では、吸収コア6は、その下面側に長手方向D1に沿って3つの主溝部31を有する。3つの主溝部31は吸収コア6の一方の端縁から他方の端縁まで連続して延びている。
図9に示す実施形態では、3つの主溝部31は、吸収コアの短手方向D2における中央領域に設けられているが、主溝部31の数及び位置は
図9に示した実施形態に限定されない。
【0033】
図10は、本発明の吸収性物品に使用できる吸収コアの別の実施形態を模式的に示す平面図であり、
図11は、
図10に示した実施形態の吸収コアのV−V線断面部分斜視図である。
図10及び11に示す実施形態では、吸収コア6は、長手方向D1に延びる3つの主溝部31と、各主溝部31から吸収コア6の短手方向D2に分岐した複数の従溝部32を有する。吸収コアが、主溝部31に加えて、従溝部32を有することによって、主溝部を通って長手方向に拡散した液体が、従溝部32を通って短手方向に拡散し、吸収コア6の広範囲で吸収される。その結果、吸収性物品のリウェット性をよりいっそう高めることができる。従溝部は、主溝部31と基端で連結しており、終端の先に吸収コアが存在していることが好ましい。吸収性物品の用途によるが、従溝部は、主溝部の単位長さ(1cm)当たり、好ましくは0.05〜1本、さらに好ましくは0.1〜0.5本存在する。従溝部が上記所定の範囲内の本数で設けられていると、吸収体に供給された液体が従溝部に到達して長手方向以外の方向に拡散された際に、液体が区分された従溝部の終端を介して、毛細管現象により吸収コアの内部により効果的に吸収されやすくなるため、吸収体のリウェット性をより一層向上させることができる。
【0034】
本開示の吸収性物品における吸収コアは、例えば、吸収コアの主溝部に対応する領域又は主溝部と従溝部に対応する領域に突起を有する凹部を含む型に、吸収コアを構成する材料(たとえばパルプとSAP)を堆積することにより形成することができる。具体的には、同一出願人の特開2010−233839号公報、特開2014−136126号公報等に記載の方法に従って形成することができる。吸収コアは、当技術分野で公知の吸収コアであることができ、高分子吸収剤を含むものであることができる。高分子吸収剤としては、当技術分野で公知の高分子吸収剤、例えば、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系の高分子吸収剤が挙げられる。
【0035】
本開示の吸収性物品は、特に制限されず、例えば、尿を主に吸収する吸収性物品、例えば、使い捨ておむつ、尿取りパッド、動物用の排尿シート等、経血等を主に吸収する吸収性物品、例えば、生理用ナプキン、パンティーライナー等が挙げられる。吸収性物品としては、本開示の効果をより発揮できる観点から、尿を主に吸収する吸収性物品であることが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、例を挙げて本開示を説明するが、本開示はこれらの例に限定されるものではない。
【0037】
[下側コアラップシートA]
親水性ポリプロピレン(PP)スパンボンド(SB)不織布(坪量15g/m
2、旭化成(株)製)を170mm(吸収コアの短手方向に平行な方向の長さ)×350mm(吸収コアの長手方向に平行な方向の長さ)のサイズに裁断して下側コアラップシートAを作製した。下側コアラップシートAと同様に、下記の下側コアラップシートB1、B2、C1、C2、D1及びD2についても、吸収コアを覆う前の吸収コアの長手方向に沿う長さが350mmであった。
【0038】
[下側コアラップシートB1]
親水性PPスパンボンド不織布(坪量15g/m
2、旭化成(株)製)を原反として
図5〜8に示した製造装置を用いて加工することにより下側コアラップシートB1を作製した。具体的には、上記PPスパンボンド不織布を、外周面温度が90〜95℃である一対の加熱ロール61a,61bで予熱後、一対の延伸ロール63,64により賦形した。不織布の搬送速度は150m/分であった。賦形された不織布は、両面に、複数の畝部及び溝部を有し、延伸ロール64と当接した面に
図4(A)及び(B)に示した凹部19に相当する凹部を複数有していた。上記複数の畝部及び溝部は、当該コアラップシートの一方の端縁から他方の端縁まで連続して延びていた。賦形された不織布において、複数の凹部19を有する側が、吸収性物品におけるシートの上面側に対応する。賦形された不織布を170mm×350mmのサイズに裁断して下側コアラップシートB1を作製した。電子顕微鏡観察により求めた場合、下側コアラップシートB1の上面側において、連続する溝部の底部から連続する畝部の頂部までの高さは1.0mmであり、隣り合う畝部の頂部間の間隔は1.0mmであった。凹部は略直方体状の空間を有し、凹部の深さは、約0.2mmであった。
【0039】
[下側コアラップシートB2]
サイズを120mm×350mmに変更したことを除き、下側コアラップシートB1と同様に下側コアラップシートB2を作製した。下側コアラップシートB2は、両面に、一方の端縁から他方の端縁まで連続して延びる複数の畝部及び溝部を有し、延伸ロール64と当接した面に
図4(A)及び(B)に示した凹部19に相当する凹部を複数有していた。
【0040】
[下側コアラップシートC1]
ティッシュペーパー(坪量16g/m
2、ニットク(株)製)を170mm×350mmのサイズに裁断して下側コアラップシートC1を作製した。
【0041】
[下側コアラップシートC2]
ティッシュペーパー(坪量16g/m
2、ニットク(株)製)を120mm×350mmのサイズに裁断して下側コアラップシートC2を作製した。
【0042】
[下側コアラップシートD1]
親水性PPスパンボンド不織布をティッシュペーパー(坪量16g/m
2、ニットク(株)製)に置き換えたことを除き、下側コアラップシートB1と同様に170mm×350mmのサイズの下側コアラップシートD1を作製した。下側コアラップシートD1は、両面に、一方の端縁から他方の端縁まで連続して延びる複数の畝部及び溝部を有し、延伸ロール64と当接した面に
図4(A)及び(B)に示した凹部19に相当する凹部を複数有していた。
【0043】
[下側コアラップシートD2]
サイズを120mm×350mmに変更したことを除き、下側コアラップシートD1と同様に下側コアラップシートD2を作製した。下側コアラップシートD2は、両面に、一方の端縁から他方の端縁まで連続して延びる複数の畝部及び溝部を有し、延伸ロール64と当接した面に
図4(A)及び(B)に示した凹部19に相当する凹部を複数有していた。
【0044】
[上側コアラップシートT1]
サイズを120mm×350mmに変更したことを除き、下側コアラップシートAと同様に上側コアラップシートT1を作製した。上側シートT1を使用して吸収体を作製する場合、当該上側シートT1を吸収コアの上面に配置した後、170mm×350mmのサイズの下側コアラップシートの両側部を、
図2(B)に示したように、吸収コアの下面側から側面を覆って上側コアラップシートT1の短手方向端部と接合するように巻いた。このような方法で作製された吸収体を、下記表1及び2では、「上側及び下側コアラップシート接合位置」について、「上面側」と表す。
【0045】
[上側コアラップシートT2]
下側コアラップシートAと同様に170mm×350mmのサイズの上側コアラップシートT1を作製した。上側コアラップシートT2を使用して吸収体を作製する場合、120mm×350mmのサイズの下側コアラップシートを吸収コアの下面に配置した後、上側シートT2の両側部を、吸収コアの上面側から側面を覆って下側コアラップシートの短手方向側部と接合するように巻いた。このような方法で作製された吸収体を、下記表1及び2では、このような方法で作製された吸収体を、下記表1及び2では、「上側及び下側コアラップシート接合位置」について、「下面側」と表す。
【0046】
[吸収体の作製]
吸収体は、下記のとおり吸収コアを作製した後、吸収コアを上記のとおり作製した上側コアラップシート及び下側コアラップシートにより覆うことにより作製した。
表1及び表2に記載の坪量になるようにパルプをハンマーミルで綿状に粉砕しながらサクションボックスの350mm×120mm(長手方向×短手方向)のサイズを有する成形用凹部に空気搬送しながら積層して吸収コアのパルプ層を形成するが、パルプ供給時間を前半と後半に分け、SAPの供給量を変えることで、SAPのブレンド率を調整した。パルプとSAPの供給時間の前半が下層に、後半が上層に相当する。均一ブレンドは前半と後半のSAP供給量を同量とすることで、また上層と下層のSAPブレンド比70:30はSAPの総供給量の30パーセントを前半に供給した後、残りの70パーセントを後半に供給して積層することで作成できる。次に、成形用凹部から吸収コアを抜き出し、350mm×120mm(長手方向×短手方向)のサイズの吸収コアを得た。実施例4、5及び9の吸収体では、吸収コアが、その下面(バックシート側面)に、4本の長手方向に直線状に延びる主溝部(溝長さ:350mm、溝幅:4mm)を有していた。短手方向の隣り合う主溝部の端と端との間隔は18mmであった。吸収コアは、さらに、各主溝部から分岐する従溝部(溝長さ(短手方向長さ):6mm、溝幅:4mm)を14本有していた。長手方向の隣り合う従溝部の端と端との間隔は20mmであり、短手方向に互いに隣合う従溝の終端と終端の間の間隔は6mmであった。これらの主溝部及び従溝部は、150g/m
2の坪量を有していた。なお、使用したパルプはIP社製のSuper Soft Nであり、使用したSAPは住友精化(株)製のAquakeep(登録商標)保水量40倍タイプであった。上記のように作製した上側コアラップシート及び下側コアラップシートにホットメルト接着剤をスパイラル状に塗工量6g/m
2で塗布し、吸収コアを上側コアラップシート及び下側コアラップシートで覆い、得られた積層体を油圧プレスでプレスして厚さ2.4mmの吸収体を得た。
【0047】
[吸収性物品の作製]
上記のように作製した吸収体の上面(上側コアラップシート側の表面)に液透過性トップシート(ユニ・チャーム国光ノンウーブン(株)製のエアスルー不織布)を貼り付け、そして下面(下側コアラップシート側の表面)に液不透過性バックシート(福助工業(株)製のポリエチレンフィルム)を貼り付けることにより、吸収性物品サンプルを作製した。
得られた吸収性物品サンプルを下記の試験法により評価し、評価結果を吸収体の構成とともに下記表1及び2に示す。なお、下記表1及び表2において、下側コアラップシートについて、記号「SB」は親水性PPスパンボンド不織布を表し、記号「T」は、ティッシュペーパーを表す。
【0048】
[吸収性試験]
(1)吸収性物品サンプルを、側面視が略U字型であるU字器具にセットする。なお、吸収性物品は、U字器具に、吸収体の長手方向の中央位置と、U字器具中央部(最も高さが低い位置)との位置を合わせるようにセットする。
【0049】
<第1サイクル>
(2)吸収体の中央位置に、ビュレットから、80mLの人工尿(1回目)を、80mL/10秒の速度で注入する。
(3)1回目の人工尿の注入開始から、U字器具内の人工尿がなくなるまでの時間を、吸収時間(80mL)として記録する。
(4)1回目の人工尿の注入開始から3分後、吸収性物品サンプルの液透過性トップシート(TS)側及び液不透過性バックシート(BS)側において人工尿が拡散した領域の輪郭(80mL)を記録する。
【0050】
<第2サイクル>
(5)1回目の人工尿の注入開始から10分後、吸収体の中央位置に、ビュレットから、80mLの人工尿(2回目)を、80mL/10秒の速度で注入する。
(6)2回目の人工尿の注入開始から、U字器具内の人工尿がなくなるまでの時間を、吸収時間(160mL)として記録する。
(7)2回目の人工尿の注入開始から3分後、サンプルのTS側及びBS側において人工尿が拡散した領域の輪郭(160mL)を記録する。
【0051】
<第3サイクル>
(8) (5)〜(7)の操作を繰り返し、吸収時間(240mL)を測定し、サンプルのTS側及びBS側において人工尿が拡散した領域の輪郭(240mL)を記録する。
【0052】
<第4サイクル>
(9) (5)〜(7)の操作を繰り返し、吸収時間(320mL)を測定し、サンプルのTS側及びBS側において人工尿が拡散した領域の輪郭(320mL)を記録する。
(10)4回目の人工尿の注入開始から4分後、U時器具から吸収性物品を取り出し、アクリル製の平板上に、液透過性シートが上面となるように吸収性物品を拡げて1分間静置する。
(11)4回目の人工尿の注入開始から5分後、100mm×100mmのろ紙60gを、人工尿注入点を中心として吸収性物品の液透過性シート上に静置する。さらに、その上に3.5kg、100mm×100mm×50mm(高さ)の錘を静置する。なお、ろ紙については事前に試験前の質量を測定する。
(12)4回目の人工尿の注入開始から8分後、錘を取り除いて、ろ紙の質量を測定し、試験前のろ紙の質量を差し引き、その差分をリウェット量とする。
(13)人工尿が拡散した領域の輪郭(160mL〜320mL)から、吸収性物品の長手方向の人工尿の拡散長を測定する。
【0053】
なお、人工尿は、イオン交換水10Lに、尿素200g、塩化ナトリウム80g、硫酸マグネシウム8g、塩化カルシウム3g及び色素:青色1号約1gを溶解させることにより調製した。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表1及び表2から、実施例1は、比較例1と同じ原反(親水性PPスパンボンド不織布)を賦形加工して得られた下側コアラップシートと、パルプ及びSAPの坪量が同じ吸収コアとを有するものであり、比較例1と比べて、特に4回目の吸収において短い吸収時間を示した。実施例2は、比較例2と同じ原反(親水性PPスパンボンド不織布)を賦形加工して得られた下側コアラップシートと、パルプ及びSAPの坪量が同じ吸収コアとを有するものであり、原反(親水性PPスパンボンド不織布)を賦形加工して得られた下側コアラップシートを有するものであり、比較例2と比べて、特に4回目の吸収において短い吸収時間を示した。実施例2は、比較例4と比べて、特に4回目の吸収において短い吸収時間を示した。実施例3は、比較例2、7及び8と比べて、特に4回目の吸収において短い吸収時間を示した。実施例4及び5は、実施例1と比べて吸収コアの下層側のSAP含有率が低く、吸収コアの下面側に溝が設けられたものであり、1〜4回目の吸収において、実施例1よりもさらに優れた吸収性を示し、比較例9よりも短い吸収時間を示した。実施例1〜5の吸収性物品では、液体吸収性試験後にコアラップシートに破れは認められなかった。上記結果から、本発明の吸収性物品は、液体を繰り返し吸収した場合でも、高い吸収性を維持できることが判る。