特許第6388823号(P6388823)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388823
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20180903BHJP
   B23K 26/02 20140101ALI20180903BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   B23K26/00 P
   B23K26/00 M
   B23K26/02 A
   H01L21/78 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-243305(P2014-243305)
(22)【出願日】2014年12月1日
(65)【公開番号】特開2016-104491(P2016-104491A)
(43)【公開日】2016年6月9日
【審査請求日】2017年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】小田切 航
(72)【発明者】
【氏名】根橋 功一
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル カーワー
(72)【発明者】
【氏名】大久保 広成
(72)【発明者】
【氏名】築地 修一郎
(72)【発明者】
【氏名】大庭 龍吾
(72)【発明者】
【氏名】小田中 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】三瓶 貴士
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−177770(JP,A)
【文献】 特開平6−28644(JP,A)
【文献】 特開2014−82296(JP,A)
【文献】 特開2011−31302(JP,A)
【文献】 特開2014−87806(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0244656(US,A1)
【文献】 特開昭61−238489(JP,A)
【文献】 特開平4−251686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する被加工物保持手段と、該被加工物保持手段に保持された被加工物にパルスレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該被加工物保持手段と該レーザー光線照射手段とを相対的にX軸方向に移動するX軸方向移動手段と、該被加工物保持手段と該レーザー光線照射手段とを相対的にX軸方向を直交するY軸方向に移動するY軸方向移動手段と、該レーザー光線照射手段と該X軸方向移動手段と該Y軸方向移動手段を制御する制御手段と、を具備するレーザー加工装置であって、
該レーザー光線照射手段は、パルスレーザー光線を発振するパルスレーザー光線発振手段と、該パルスレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線を集光して該被加工物保持手段に保持された被加工物に照射する集光器と、該パルスレーザー光線発振手段と該集光器との間に配設され該パルスレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線を反射して該集光器に導くとともにパルスレーザー光線の波長以外の波長の光を透過するダイクロイックミラーと、該ダイクロイックミラーと該集光器との経路に光を照射するストロボ光照射手段と、該ストロボ光照射手段と該ダイクロイックミラーとの間に配設され該被加工物保持手段に保持された被加工物からの光を分岐するビームスプリッターと、該ビームスプリッターによって分岐された経路に配設された撮像手段と、を具備し、
該制御手段は、該パルスレーザー光線発振手段によって発振され該被加工物保持手段に保持された被加工物に照射されるパルスレーザー光線のタイミングに合わせて該ストロボ光照射手段と該撮像手段とを作動し、該撮像手段からの画像信号に基づいて加工状態を検出する、
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
該ストロボ光照射手段は、光を発するストロボ光源と、該ストロボ光源から発せられた光の視野サイズを規定する絞りと、該絞りを通過した光を該被加工物保持手段に保持された被加工物に集光するレンズとを具備し、
該撮像手段は、収差補正レンズと結像レンズとからなる組レンズと、該組レンズによって捕らえられた像を撮像する撮像素子(CCD)とを具備している、請求項1記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
該制御手段は、該撮像手段からの画像信号に基づいて該レーザー光線照射手段によって照射されたパルスレーザー光線の照射位置と設定された加工位置とのズレを検出し、該ズレ量が予め設定した許容値を超える場合には該ズレを修正するように該X軸方向移動手段または該Y軸方向移動手段を制御する、請求項1又は2記載のレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルに保持された半導体ウエーハ等の被加工物にレーザー加工を施すレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列された分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハを分割予定ラインに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体デバイスを製造している。
【0003】
半導体ウエーハ等のウエーハを分割予定ラインに沿って分割する方法として、ウエーハに対して吸収性を有する波長のパルスレーザー光線を分割予定ラインに沿って照射することによりアブレーション加工を施してレーザー加工溝を形成し、この破断起点となるレーザー加工溝が形成された分割予定ラインに沿って外力を付与することにより割断する技術が実用化されている。
【0004】
上述したレーザー加工を行うレーザー加工装置は、被加工物を保持する被加工物保持手段と、該被加工物保持手段に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、被加工物保持手段とレーザー光線照射手段を相対的に移動する移動手段と、被加工物保持手段に保持された被加工物の加工すべき領域を検出するアライメント手段と、を具備している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−253432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して、レーザー光線照射手段によって照射されるレーザー光線の出力が変化したり光学系に歪が生じると、加工が不十分になったり、レーザー光線の集光スポットが加工すべき位置に位置付けられなくなったりして、被加工物に所望の加工を施すことができなくなるという問題がある。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、レーザー光線照射手段によって照射されるレーザー光線の出力の変化やレーザー光線の照射位置を監視することができるレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持する被加工物保持手段と、該被加工物保持手段に保持された被加工物にパルスレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該被加工物保持手段と該レーザー光線照射手段とを相対的にX軸方向に移動するX軸方向移動手段と、該被加工物保持手段と該レーザー光線照射手段とを相対的にX軸方向を直交するY軸方向に移動するY軸方向移動手段と、該レーザー光線照射手段と該X軸方向移動手段と該Y軸方向移動手段を制御する制御手段と、を具備するレーザー加工装置であって、
該レーザー光線照射手段は、パルスレーザー光線を発振するパルスレーザー光線発振手段と、該パルスレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線を集光して該被加工物保持手段に保持された被加工物に照射する集光器と、該パルスレーザー光線発振手段と該集光器との間に配設され該パルスレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線を反射して該集光器に導くとともにパルスレーザー光線の波長以外の波長の光を透過するダイクロイックミラーと、該ダイクロイックミラーと該集光器との経路に光を照射するストロボ光照射手段と、該ストロボ光照射手段と該ダイクロイックミラーとの間に配設され該被加工物保持手段に保持された被加工物からの光を分岐するビームスプリッターと、該ビームスプリッターによって分岐された経路に配設された撮像手段と、を具備し、
該制御手段は、該パルスレーザー光線発振手段によって発振され該被加工物保持手段に保持された被加工物に照射されるパルスレーザー光線のタイミングに合わせて該ストロボ光照射手段と該撮像手段とを作動し、該撮像手段からの画像信号に基づいて加工状態を検出する、
ことを特徴とするレーザー加工装置が提供される。
【0009】
上記ストロボ光照射手段は、光を発するストロボ光源と、該ストロボ光源から発せられた光の視野サイズを規定する絞りと、該絞りを通過した光を被加工物保持手段に保持された被加工物に集光するレンズとを具備し、
上記撮像手段は、収差補正レンズと結像レンズとからなる組レンズと、該組レンズによって捕らえられた像を撮像する撮像素子(CCD)とを具備している。
また、上記制御手段は、撮像手段からの画像信号に基づいてレーザー光線照射手段によって照射されたパルスレーザー光線の照射位置と設定された加工位置とのズレを検出し、該ズレ量が予め設定した許容値を超える場合には該ズレを修正するように該X軸方向移動手段または該Y軸方向移動手段を制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるレーザー加工装置においては、被加工物保持手段に保持された被加工物にパルスレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段は、パルスレーザー光線を発振するパルスレーザー光線発振手段と、該パルスレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線を集光して被加工物保持手段に保持された被加工物に照射する集光器と、パルスレーザー光線発振手段と集光器との間に配設されパルスレーザー光線を反射して集光器に導くとともにパルスレーザー光線の波長以外の波長の光を透過するダイクロイックミラーと、該ダイクロイックミラーと集光器との経路に光を照射するストロボ光照射手段と、該ストロボ光照射手段とダイクロイックミラーとの間に配設され被加工物保持手段に保持された被加工物からの光を分岐するビームスプリッターと、該ビームスプリッターによって分岐された経路に配設された撮像手段とを具備し、制御手段は、パルスレーザー光線発振手段によって発振され被加工物保持手段に保持された被加工物に照射されるパルスレーザー光線のタイミングに合わせてストロボ光照射手段と撮像手段とを作動し、撮像手段からの画像信号に基づいて加工状態を検出するので、パルスレーザー光線の出力が変化したりパルスレーザー光線のスポットが設定された加工位置に照射されなくなった場合には、加工状況をリアルタイムに検出して修正が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
図2図1に示すレーザー加工装置に装備されるレーザー光線照射手段のブロック構成図。
図3図1に示すレーザー加工装置に装備される制御手段のブロック構成図。
図4】被加工物としての半導体ウエーハの斜視図。
図5図4に示す半導体ウエーハを環状のフレームに装着されたダイシングテープの表面に貼着した状態を示す斜視図。
図6図1に示すレーザー加工装置によって実施するレーザー加工工程の説明図。
図7】レーザー光線照射手段によって照射されるパルスレーザー光線とストロボ光照射手段によって照射される光のタイミングを示す説明図。
図8図1に示すレーザー加工装置によって実施されるレーザー光線照射位置監視工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1には、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工装置は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向であるX軸方向に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、基台2上に配設されたレーザー光線照射手段としてのレーザー光線照射ユニット4とを具備している。
【0014】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上にX軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上にX軸方向に移動可能に配設された第1の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上にX軸方向と直交する矢印Yで示す割り出し送り方向であるY軸方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持された支持テーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361の上面である保持面上に被加工物である例えば円形状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、半導体ウエーハ等の被加工物を保護テープを介して支持する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0015】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面にY軸方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動させるためのX軸方向移動手段37を具備している。X軸方向移動手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第1の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0016】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記チャックテーブル36のX軸方向位置を検出するためのX軸方向位置検出手段374を備えている。X軸方向位置検出手段374は、案内レール31に沿って配設されたリニアスケール374aと、第1の滑動ブロック32に配設され第1の滑動ブロック32とともにリニアスケール374aに沿って移動する読み取りヘッド374bとからなっている。このX軸方向位置検出手段374の読み取りヘッド374bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のX軸方向位置を検出する。なお、上記加工送り手段37の駆動源としてパルスモータ372を用いた場合には、パルスモータ372に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36のX軸方向位置を検出することもできる。また、上記X軸方向移動手段37の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のX軸方向位置を検出することもできる。
【0017】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、Y軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動させるためのY軸方向移動手段38を具備している。Y軸方向移動手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0018】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記第2の滑動ブロック33のY軸方向位置を検出するためのY軸方向位置検出手段384を備えている。Y軸方向位置検出手段384は、案内レール322に沿って配設されたリニアスケール384aと、第2の滑動ブロック33に配設され第2の滑動ブロック33とともにリニアスケール384aに沿って移動する読み取りヘッド384bとからなっている。このY軸方向位置検出手段384の読み取りヘッド384bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のY軸方向位置を検出する。なお、上記Y軸方向移動手段38の駆動源としてパルスモータ382を用いた場合には、パルスモータ382に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36のY軸方向位置を検出することもできる。また、上記Y軸方向移動手段38の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のY軸方向位置を検出することもできる。
【0019】
上記レーザー光線照射ユニット4は、上記基台2上に配設された支持部材41と、該支持部材41によって支持され実質上水平に延出するケーシング42と、該ケーシング42に配設されたレーザー光線照射手段5と、ケーシング42の前端部に配設されレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント手段6を具備している。なお、アライメント手段6は、被加工物を照明する照明手段と、該照明手段によって照明された領域を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた像を撮像する撮像素子(CCD)等を備え、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0020】
上記レーザー光線照射手段5について、図2を参照して説明する。
レーザー光線照射手段5は、パルスレーザー光線発振手段51と、該パルスレーザー光線発振手段51から発振されたパルスレーザー光線を集光してチャックテーブル36に保持された被加工物Wに照射する集光器52と、パルスレーザー光線発振手段51と集光器52との間に配設されパルスレーザー光線発振手段51から発振されたパルスレーザー光線を集光器52に導くダイクロイックミラー53を具備している。パルスレーザー光線発振手段51は、パルスレーザー光線発振器511と、これに付設された繰り返し周波数設定手段512とから構成されている。なお、パルスレーザー光線発振手段51のパルスレーザー光線発振器511は、図示の実施形態においては波長が355nmのパルスレーザー光線LBを発振する。上記集光器52は、上記パルスレーザー光線発振手段51から発振されたパルスレーザー光線LBを集光する集光レンズ521を具備している。上記パルスレーザー光線発振手段51と集光器52との間に配設されたダイクロイックミラー53は、パルスレーザー光線発振手段51から発振されたパルスレーザー光線LBを反射して集光器52に導くとともにパルスレーザー光線LBの波長(図示の実施形態においては355nm)以外の波長の光を透過する機能を有している。
【0021】
図示のレーザー光線照射手段5は、ダイクロイックミラー53と集光器52との経路に光を照射するストロボ光照射手段54と、該ストロボ光照射手段54とダイクロイックミラー53との間に配設されチャックテーブル36に保持された被加工物Wからの光を分岐するビームスプリッター55と、該ビームスプリッター55によって分岐された経路に配設された撮像手段56を具備している。ストロボ光照射手段54は、キセノンフラッシュランプからなる白色光を発光するストロボ光源541と、該ストロボ光源541から発光された白色光の視野サイズを規定する絞り542と、該絞り542を通過した白色光をチャックテーブル36に保持された被加工物Wに集光するためのレンズ543と、該レンズ543によって集光された白色光を上記ビームスプリッター55に向けて方向変換する方向変換ミラー544とからなっている。
【0022】
上記ビームスプリッター55は、上記ストロボ光照射手段54の方向変換ミラー544によって導かれた白色光を上記ダイクロイックミラー53に導くとともに、チャックテーブル36に保持された被加工物Wからの光を撮像手段56に向けて分岐する。
【0023】
上記撮像手段56は、収差補正レンズ561aと結像レンズ561bとからなる組レンズ561と、該組レンズ561によって捕らえられた像を撮像する撮像素子(CCD)562とからなっており、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0024】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、図3に示す制御手段7を具備している。制御手段7はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)71と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)72と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)73と、入力インターフェース74および出力インターフェース75とを備えている。制御手段7の入力インターフェース74には、上記X軸方向位置検出手段374、Y軸方向位置検出手段384、撮像手段56の撮像素子(CCD)562、アライメント手段6等からの検出信号が入力される。そして、制御手段7の出力インターフェース75からは、上記X軸方向移動手段37、Y軸方向移動手段38、レーザー光線照射手段5のパルスレーザー光線発振手段51、ストロボ光照射手段54等に制御信号を出力する。
【0025】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図4には、上述したレーザー加工装置によって加工される被加工物としての半導体ウエーハ10の斜視図が示されている。図4に示す半導体ウエーハ10は、シリコンウエーハからなっており、表面10aに複数の分割予定ライン101が格子状に形成されているとともに、該複数の分割予定ライン101によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイス102が形成されている。
【0026】
上述した半導体ウエーハ10を分割予定ライン101に沿って分割するために、先ず、半導体ウエーハ10の裏面10bに合成樹脂からなる粘着テープの表面を貼着するとともに粘着テープの外周部を環状のフレームによって支持する被加工物支持工程を実施する。即ち、図5に示すように、環状のフレームFの内側開口部を覆うように外周部が装着された粘着テープTの表面に半導体ウエーハ10の裏面10bを貼着する。なお、粘着テープTは、図示の実施形態においては塩化ビニール(PVC)シートによって形成されている。
【0027】
上述したウエーハ支持工程を実施したならば、図1に示すレーザー加工装置のチャックテーブル36上に半導体ウエーハ10の粘着テープT側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、半導体ウエーハ10を粘着テープTを介してチャックテーブル36上に吸引保持する(被加工物保持工程)。なお、半導体ウエーハ10を粘着テープTを介して支持した環状のフレームFは、チャックテーブル36に配設されたクランプ362によって固定される。
【0028】
上述した被加工物保持工程を実施したならば、X軸方向移動手段37を作動して半導体ウエーハ10を吸引保持したチャックテーブル36をアライメント手段6の直下に位置付ける。チャックテーブル36がアライメント手段6の直下に位置付けられると、アライメント手段6および制御手段7によって半導体ウエーハ10のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、アライメント手段6および制御手段7は、半導体ウエーハ10の所定方向に形成されている分割予定ライン101に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段5の集光器52との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する。また、半導体ウエーハ10に形成されている所定方向と直交する方向に形成されている分割予定ライン101に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。
【0029】
以上のようにしてチャックテーブル36上に保持された半導体ウエーハ10に形成されている分割予定ラインを検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、図6の(a)で示すようにチャックテーブル36をレーザー光線照射手段5の集光器52が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定の分割予定ライン101の一端(図6の(a)において左端)を集光器52の直下に位置付ける。そして、集光器52から照射されるパルスレーザー光線の集光点Pを半導体ウエーハ10の表面(上面)付近に位置付ける。次に、レーザー光線照射手段5の集光器52から半導体ウエーハに対して吸収性を有する波長(図示の実施形態においては355nm)のパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル36を図6の(a)において矢印X1で示す方向に所定の移動速度で移動せしめる。そして、分割予定ライン101の他端(図6の(b)において右端)が集光器52の直下位置に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル36の移動を停止する。この結果、図6の(b)および図6の(c)に示すように半導体ウエーハ10には、分割予定ライン101に沿ってレーザー加工溝110が形成される(レーザー加工工程)。
【0030】
上記レーザー加工工程は、以下の加工条件で行われる。
レーザー光線の光源 :YVO4レーザーまたはYAGレーザー
波長 :355nm
繰り返し周波数 :50kHz
平均出力 :3W
集光スポット径 :φ10μm
加工送り速度 :100mm/秒
【0031】
上述したレーザー加工工程を実施している際に、レーザー光線照射手段5のパルスレーザー光線発振手段51から集光器52までの光学系に歪が生じるとレーザー加工が不十分になったり、パルスレーザー光線の集光スポットが加工すべき位置に位置付けられなくなったりして、被加工物である半導体ウエーハ10に所望のレーザー加工を施すことができなくなるという問題がある。そこで、図示の実施形態におけるレーザー加工装置においては、レーザー光線照射手段5の集光器52から照射されるパルスレーザー光線の照射位置を監視するようにしている。即ち、レーザー光線照射手段5のパルスレーザー光線発振手段51から発振され集光器52からチャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ10に照射されるパルスレーザー光線の照射タイミングに合わせて上記ストロボ光照射手段54を作動して半導体ウエーハ10におけるパルスレーザー光線照射領域に白色光を照射し、半導体ウエーハ10からの光を上記撮像手段56によって撮像して撮像した画像信号を制御手段7に送ることにより、制御手段7が撮像手段56の撮像素子(CCD)562から送られた画像信号に基づいてパルスレーザー光線が照射された位置と加工すべき位置とのズレ(加工状態)を検出する(レーザー光線照射位置監視工程)。
【0032】
上述したレーザー光線照射位置監視工程について、図7を参照してさらに詳細に説明する。
図示の実施形態においては、レーザー光線照射手段5のパルスレーザー光線発振手段51から発振されるパルスレーザー光線の繰り返し周波数が50kHzであるから、チャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ10には20μs毎に1パルスのパルスレーザー光線LBが照射される。このように照射されるチャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ10に照射されるパルスレーザー光線の照射位置を検出するために、制御手段7は、上記ストロボ光照射手段54のストロボ光源541を作動する。このストロボ光源541を作動するタイミングは、パルスレーザー光線LBと重ならないようにパルスレーザー光線LBとパルスレーザー光線LBとの間に照射されるように作動する。即ち、図示の実施形態においては図7に示すように最初はパルスレーザー光線の発振開始から50μsとし、以後100μs毎に作動し、白色光WLをチャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ10に照射するように設定されている。従って、白色光WLが照射される直前(10μs前)にチャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ10に照射されたパルスレーザー光線により加工された領域からの光が集光レンズ521、ダイクロイックミラー53、ビームスプリッター55を介して撮像手段56に導かれる。
【0033】
撮像手段56に導かれた光は、収差補正レンズ561aおよび結像レンズ561bからなる組レンズ561を介して撮像素子(CCD)562に結像される。そして、撮像素子(CCD)562は、結像された画像信号を制御手段7に送る。このようにして、撮像素子(CCD)562から100μs毎に送られる画像信号を、制御手段7はランダムアクセスメモリ(RAM)73に格納する。図8には、チャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ10の分割予定ライン101に沿って照射されたパルスレーザー光線の各スポットLBSと撮像素子(CCD)562から送られた第1の撮像画像n1と第2の撮像画像n2が示されている。図8に示す実施形態においては、半導体ウエーハ10に形成されたデバイス102にはそれぞれ所定位置にターゲット102aが設定されており、このターゲット102aから隣接する分割予定ライン101の中心(加工位置)までのY軸方向距離が例えば300μmに設定されている。図8に示す実施形態においては、第1の撮像画像n1においてはターゲット102aから照射されたパルスレーザー光線のスポットLBSまでのY軸方向距離は300μmであるが、第2の撮像画像n2においてはターゲット102aから照射されたパルスレーザー光線のスポットLBSまでのY軸方向距離は320μmとなっており、分割予定ライン101の中心(加工位置)から20μmズレていることが検出された。このようにして、チャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ10の分割予定ライン101に沿って照射されたパルスレーザー光線のスポットLBSの位置が所定の加工位置からズレている場合には、制御手段7はズレ量が許容値(例えば10μm)を超えている場合に上記Y軸方向移動手段38を制御してレーザー光線照射手段5の集光器52から照射されるパルスレーザー光線の照射位置を修正する。このとき、制御手段7は、Y軸方向位置検出手段384からの検出信号に基づいてY軸方向移動手段38を制御する。
【0034】
なお、上述した実施形態においては、レーザー光線照射手段5の集光器52から照射されるパルスレーザー光線の照射位置のズレを検出して修正する例を示したが、上記制御手段7は撮像手段56の撮像素子(CCD)562から送られる画像信号に基づいてパルスレーザー光線のスポットLBSの形状および大きさを検出することができ、パルスレーザー光線のスポットLBSの形状および大きさ等の加工状態に基づいてパルスレーザー光線の出力を修正することが可能となる。
【符号の説明】
【0035】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
36:チャックテーブル
37:X軸方向移動手段
374:X軸方向位置検出手段
38:Y軸方向移動手段
384:Y軸方向位置検出手段
4:レーザー光線照射ユニット
5:レーザー光線照射手段
51:パルスレーザー光線発振手段
52:集光器
53:ダイクロイックミラー
54:ストロボ光照射手段
541:ストロボ光源
55:ビームスプリッター
56:撮像手段
562:撮像素子(CCD)
6:アライメント手段
7:制御手段
10:半導体ウエーハ
F:環状のフレーム
T:粘着テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8