特許第6388916号(P6388916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6388916反応器カスケード中で2−置換4−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピランを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388916
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】反応器カスケード中で2−置換4−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピランを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 309/10 20060101AFI20180903BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20180903BHJP
【FI】
   C07D309/10
   !C07B61/00 300
【請求項の数】27
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-511022(P2016-511022)
(86)(22)【出願日】2014年4月28日
(65)【公表番号】特表2016-522185(P2016-522185A)
(43)【公表日】2016年7月28日
(86)【国際出願番号】EP2014058538
(87)【国際公開番号】WO2014177486
(87)【国際公開日】20141106
【審査請求日】2017年4月24日
(31)【優先権主張番号】13165767.8
(32)【優先日】2013年4月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100180862
【弁理士】
【氏名又は名称】花井 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】シュトルク,ティモン
(72)【発明者】
【氏名】ベック,カール
(72)【発明者】
【氏名】エーベル,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】バイ,オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】グラーラ,ガブリエーレ
【審査官】 齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0295024(US,A1)
【文献】 特表2012−527419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
(R1は、直鎖状若しくは分岐鎖状のC1-C12-アルキル、直鎖状若しくは分岐鎖状のC2-C12-アルケニル、全部で3〜20個の炭素原子を有する、非置換若しくはC1-C12-アルキル及び/若しくはC1-C12-アルコキシで置換されたシクロアルキル、又は全部で6〜20個の炭素原子を有する、非置換若しくはC1-C12-アルキル及び/若しくはC1-C12-アルコキシで置換されたアリールである)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランの製造方法であって、
酸性触媒の存在下に、式(III)
【化2】
の3-メチルブタ-3-エン-1-オールを、式(IV)のアルデヒド
R1-CHO (IV)
(式(IV)中、R1は、前記で与えられた意味を有する)と反応させることを含み、該反応が、直列に連結したn個の反応器(nは少なくとも2の自然数である)からなる構成内で実施され、流れの一部を流れの方向における第1及び最後の反応器の間で取り出し、取り出した位置から上流に配置される反応器に供給し、取り出した流れの一部を取り出した位置の上流に配置される反応器に供給する前に、流れの一部から熱を取り除く、前記方法。
【請求項2】
前記反応が連続的に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応が、溶媒の存在下実施される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
反応が、水の存在下に実施される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
流れの一部を流れの方向における第1及び/又は第2の反応器の反応器排出流から取り出し、外部からの再循環により流れ方向における第1の反応器に少なくとも一部を戻す、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
反応器排出流の流れの一部を第1の反応器から取り出し、外部循環により流れ方向において第1の反応器に戻す、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
流れの方向における少なくとも第1の反応器が、主に等温で、すなわち反応器中の温度間隔ΔTが、断熱的な温度上昇よりも小さい条件で操作される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
流れの方向における第1及び第2の反応器が、それぞれの場合において、主に等温で、すなわち反応器中の温度間隔ΔTが、断熱的な温度上昇よりも小さい条件で操作される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
流れの方向における(n-1)番目の反応器が、主に等温で、すなわち反応器中の温度間隔ΔTが、断熱的な温度上昇よりも小さい条件で操作される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
流れの方向における次の反応器に反応器排出流が導入される前に、第1の反応器から(n-1)番目の反応器の少なくとも1つからの反応器排出流から熱を取り除く、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
流れの方向における少なくとも最後の反応器が、反応器排出流の再循環なしで操作される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
nが2又は3ある、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
nが2である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
流れの方向における少なくとも最後の反応器における反応が、断熱状態で実施される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの固定層反応器を有する反応器構成反応に使用される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
n個全ての反応器が固定層反応器である反応器構成が反応に使用される、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
内部に配置された熱交換器を有する少なくとも1つの反応器を含む反応器構成が反応に使用される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
基R1がイソブチル又はフェニルである、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
反応が、性触媒の存在下に実施される、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
反応が、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及び強酸性陽イオン交換体から選択される酸性触媒の存在下に実施される、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
反応が、強酸性陽イオン交換体の存在下に実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
式(III)のアルコール及び式(IV)のアルデヒドが、0.7:1〜2:1の範囲のモル比で使用される、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
式(III)及び(IV)の成分並びに水からなる反応混合物の量を基準とし、3重量%〜15重量%水の存在下に、式(III)のアルコールと式(IV)のアルデヒドとを反応させる、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
式(III)及び(IV)の成分並びに水からなる反応混合物の量を基準とし、5重量%〜12重量%の水の存在下に、式(III)のアルコールと式(IV)のアルデヒドとを反応させる、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
反応が、0℃〜70℃の範囲温度で実施される、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
反応が、20℃〜60℃の範囲の温度で実施される、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
反応が、1バール〜15バールの範囲の圧力で実施される、請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランは、香料として使用するのに重要な化合物である。したがって、例えば、2-(2-メチルプロピル)-4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランのシス/トランスジアステレオマー混合物は谷のユリの心地よい香りを特徴とし、特に香料として使用するのに、例えば香料組成物を製造するのに適している。
【化1】
【0003】
欧州特許出願公開第1493737号A1には、対応するアルデヒドをイソプレノールと反応させることにより、エチレン性不飽和4-メチル-又は4-メチレンピランと、対応する4-ヒドロキシピランとの混合物を製造する方法であって、反応をイソプレノールに対するアルデヒドのモル比が1を超える、すなわち、アルデヒドを過剰に使用する反応系内で開始させる方法が開示されている。更に、該文献には、前記混合物をその後脱水することで所望のエチレン性不飽和ピランを得ることが開示されている。最初の反応工程について明記されている適切な触媒は、塩酸又は硫酸等の鉱酸であるが、好ましくはメタンスルホン酸又はp-トルエンスルホン酸である。
【0004】
欧州特許出願公開第1516879号A1には、脱水条件下で、対応するアルデヒドをイソプレノールと反応させることにより、エチレン性不飽和4-メチル-及び4-メチレンピランを製造する方法であって、反応器中の水の量が0.25重量%以下であり、不足量で使用される出発化合物の変換率が50%未満である方法が開示されている。この目的に適していると特定される触媒は、同様に塩酸又は硫酸等の鉱酸であるが、好ましくはメタンスルホン酸又はp-トルエンスルホン酸である。
【0005】
WO2010/133473には、式(I)
【化2】
(式中、基R1は、1〜12個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基又はアルケニル基、全部で3〜12個の炭素原子を有する、場合によりアルキル置換されたシクロアルキル基、又は全部で6〜12個の炭素原子を有する、場合によりアルキル置換及び/又はアルコキシ置換されたアリール基を表わす)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチル-テトラヒドロピランの製造方法であって、イソプレノール(3-メチルブタ-3-エン-1-オール)を、式R1-CHOのアルデヒドと反応させ、該反応が、水の存在下及び強酸性の陽イオン交換体の存在下で実施される方法が記載されている。
【0006】
WO2011/154330には、得られた反応混合物を、隔壁カラム、又は2つの熱的に連結した蒸留カラム内で蒸留作業に供給する、WO2010/133473と同様な方法が記載されている
【0007】
未発表の欧州特許出願公開第12188518.0号には、一般式(I)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン、及び一般式(II)の2-置換4-メチルテトラヒドロピラン
【化3】
(式中、R1は、直鎖状若しくは分岐鎖状のC1-C12-アルキル、直鎖状若しくは分岐鎖状の C2-C12-アルケニル、全部で3〜20個の炭素原子を有する、非置換若しくはC1-C12-アルキル及び/若しくはC1-C12-アルコキシで置換されたシクロアルキル、又は全部で6〜20個の炭素原子を有する、非置換若しくはC1-C12-アルキル及び/若しくはC1-C12-アルコキシで置換されたアリールである)を製造する方法であって、
a)酸性触媒の存在下に、式(III)の3-メチルブタ-3-エン-1-オール
【化4】
を、式(IV)のアルデヒド
R1-CHO (IV)
(式(VI)中、R1は、前記で与えられた意味を有する)と反応させて、少なくとも1種の一般式(I)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランと、化合物(V.1)、(V.2)又は(V.3)の少なくとも1種と、少なくとも1種のジオキサン化合物(VI)とを含む反応混合物を得る工程、
【化5】
(式(VI)中、R1は、前記で与えられた意味を有する)
b)工程a)からの反応生成物を分離に供し、一般式(I)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランが富化された画分、化合物(V.1)、(V.2)又は(V.3)の少なくとも1種と、少なくとも1種のジオキサン化合物(VI)とを含む画分を得る工程、
c)化合物(V.1)、(V.2)又は(V.3)の少なくとも1種と少なくとも1種のジオキサン化合物(VI)とを含む画分を水素化に供する工程、
d)2-置換4-メチルテトラヒドロピラン(II)が富化された画分、及び少なくとも1種のジオキサン化合物(VI)が富化された画分を、工程c)で得られた水素化生成物から分離する工程を含む、前記方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1493737号A1
【特許文献2】欧州特許出願公開第1516879号A1
【特許文献3】WO2010/133473
【特許文献4】WO2011/154330
【特許文献5】欧州特許出願公開第12188518.0号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、廃棄が必要な所望でない副産物の形成の可能性の最も低い、工業規模で効率的製造を可能にする、2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランの改良された製造方法を提供することである。
【0010】
意外にも、この目的が、直列に連結された少なくとも2つの反応器を使用する方法により達成されることを見出した。特に、これは連続工程である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、一般式(I)
【化6】
(R1は、直鎖状若しくは分岐鎖状のC1-C12-アルキル、直鎖状若しくは分岐鎖状のC2-C12-アルケニル、全部で3〜20個の炭素原子を有する、非置換若しくはC1-C12-アルキル及び/若しくはC1-C12-アルコキシで置換されたシクロアルキル、又は全部で6〜20個の炭素原子を有する、非置換若しくはC1-C12-アルキル及び/若しくはC1-C12-アルコキシで置換されたアリールである)
の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランの製造方法であって、
酸性触媒の存在下に、式(III)
【化7】
の3-メチルブタ-3-エン-1-オールを、式(IV)のアルデヒド
R1-CHO (IV)
(式(IV)中、R1は、前記で与えられた意味を有する)
と反応させることを含み、該反応が、直列に連結したn個の反応器(nは少なくとも2の自然数である)からなる装置内で実施される、前記方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、再循環流を有する主反応器及び二次反応器を用いる、本発明の方法の実施態様を示す。
図2図2は、統合熱交換器を有する主反応器及び二次反応器を用いる、本発明の方法の実施態様を示す。
図3図3は、再循環流を有する2つの反応器ステージ及び二次反応器を用いる、本発明の方法の実施態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の方法は以下の利点を有する
- 本発明の方法は、より低い最高温度及び/又は温度ピークの回避によって、反応器内容物の熱応力の低下を可能にする。
- したがって、前記方法は、より高い収率、及び/又は標的化合物に関するより高い選択性を可能にする。
- より低い最大温度及び/又は温度ピークの回避は安全性の観点からも有利であり、及び/又はより長い触媒寿命を可能にする。
- 具体的には、触媒固定層を使用することにより、更に触媒寿命に有利な効果を得ることができる。その結果、使用済み触媒を交換するため、及び/又は触媒を再生するための面倒な始動及び停止操作が回避される。更に、触媒固定層の使用により、触媒の機械的応力及び分解も減少する。
【0014】
より正確に下記で示されない限り、本発明との関係における「2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン」及び「2-(2-メチルプロピル)-4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン」という用語は、あらゆる組成のシス/トランス混合物、及び純粋な立体異性体をも意味する。上記用語は、更に純粋な形態の全てのエナンチオマー、これらの化合物のエナンチオマーのラセミ体及び光学活性混合物を意味する。
【0015】
本発明との関係において、直鎖又は分岐鎖状アルキルという表現は、好ましくはC1-C6-アルキル、特に好ましくはC1-C4-アルキルを意味する。アルキルは、特に、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル(2-メチルプロピル)、sec-ブチル(1-メチルプロピル)、tert-ブチル(1,1-ジメチルエチル)、n-ペンチル又はn-ヘキシルである。具体的には、アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル又はイソブチルである。
【0016】
本発明との関係において、直鎖又は分岐鎖状アルコキシという表現は、好ましくはC1-C6-アルコキシ、特に好ましくはC1-C4-アルコキシを意味する。アルコキシは、特に、メトキシ、エトキシ、n-プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n-ブチルオキシ、イソブチルオキシ、sec-ブチルオキシ、tert-ブチルオキシ、n-ペンチルオキシ又はn-ヘキシルオキシである。具体的には、アルコキシは、メトキシ、エトキシ、n-プロピルオキシ、イソプロピルオキシ又はイソブチルオキシを意味する。
【0017】
本発明との関係において、直鎖又は分岐鎖状アルケニルという表現は、好ましくは、C2-C6-アルケニル、特に好ましくはC2-C4-アルケニルを意味する。単結合以外に、アルケニル基は、1以上の、好ましくは1〜3個の、特に好ましくは1又は2個の、非常に好ましくは1個のエチレン性二重結合をも有している。アルケニルは、具体的には、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-メチルエテニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル又は2-メチル-2-プロペニルを意味する。
【0018】
本発明との関係において、シクロアルキルは、好ましくは3〜10個、特に好ましくは5〜8個の炭素原子を有する脂環式基を意味する。シクロアルキル基の例は、特に、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、又はシクロオクチルである。具体的には、シクロアルキルはシクロヘキシルである。
【0019】
置換シクロアルキル基は、その環のサイズに依存して1以上(例えば、1,2,3,4又は5)の置換基を有していてもよい。これらは、好ましくはC1-C6-アルキル及びC1-C6-アルコキシからお互いに独立して選択される。置換の場合、シクロアルキル基は、好ましくは1以上、例えば、1,2,3,4又は5個のC1-C6-アルキル基を有している。置換シクロアルキル基の例は、具体的には、2-及び3-メチルシクロペンチル、2-及び3-エチルシクロペンチル、2-、3-及び4-メチルシクロヘキシル、2-、3-及び4-エチルシクロヘキシル、2-、3-及び4-プロピルシクロヘキシル、2-、3-及び4-イソプロピルシクロヘキシル、2-、3-及び4-ブチルシクロヘキシル及び2-、3-及び4-イソブチルシクロヘキシルである。
【0020】
本発明との関係において、「アリール」という表現には、通常6〜18個、好ましくは6〜14個、特に好ましくは6〜10個の炭素原子を有する、単核又は多核芳香族炭化水素基が含まれる。アリールの例は、具体的には、フェニル、ナフチル、インデニル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル、ナフタセニル、クリセニル、ピレニル等であり、特にフェニル又はナフチルである。
【0021】
置換アリールは、その環系の数及びサイズに依存し、1以上(例えば、1,2,3,4又は5個)の置換基を有することができる。これらは、好ましくは、C1-C6-アルキル、及びC1-C6-アルコキシからお互いに独立して選択される。置換アリール基の例は、2-、3-及び4-メチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、2-、3-及び4-エチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジエチルフェニル、2,4,6-トリエチルフェニル、2-、3-及び4-プロピルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジプロピルフェニル、2,4,6-トリプロピルフェニル、2-、3-及び4-イソプロピルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジイソプロピルフェニル、2,4,6-トリイソプロピルフェニル、2-、3-及び4-ブチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジブチルフェニル、2,4,6-トリブチルフェニル、2-、3-及び4-イソブチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジイソブチルフェニル、2,4,6-トリイソブチルフェニル、2-、3-及び4-sec-ブチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジ-sec-ブチルフェニル、2,4,6-トリ-sec-ブチルフェニル、2-、3-及び4-tert-ブチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジ-tert-ブチルフェニル及び2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニルである。
【0022】
本発明の方法のための1つの出発物質は、式(III)
【化8】
の3-メチルブタ-3-エン-1-オール(イソプレノール)である。
【0023】
イソプレノールは、イソブテン及びホルムアルデヒドから任意の規模で既知の方法によって容易に得られ、商業的に入手可能である。本発明において使用されるイソプレノールの純度、品質又は製造方法に特別な要件はない。イソプレノールは、本発明の方法において、標準的な商用品質及び純度で使用することができる。使用するイソプレノールは、純度90重量%以上のものが好ましく、純度95〜100重量%のものが特に好ましく、純度97〜99.9重量%のものが非常に特に好ましく、98〜99.8重量%のものがさらにより好ましい。
【0024】
本発明の方法のためのさらなる出発物質は、式(IV)R1-CHO(式(IV)中のR1は前記で与えられた意味を有する。)のアルデヒドである。
【0025】
好ましくは、式(I)、(II)及び(IV)の化合物内のR1は、直鎖状若しくは分岐鎖状のC1-C12-アルキル、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC2-C12-アルケニルである。特に好ましくは、R1は、直鎖状若しくは分岐鎖状のC1-C6-アルキル、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のC2-C6-アルケニルである。更に好ましい実施態様においては、R1はフェニルである。
【0026】
したがって、本発明による好ましい基R1の意味は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル又はn-ヘプチルであり、好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチルであり、非常に特に好ましくはイソブチル(2-メチルプロピル)である。
【0027】
基R1は、特に好ましくはイソブチル又はフェニルである。
【0028】
好ましく使用される式(IV)のアルデヒドは、アセトアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、ベンズアルデヒド、シトラール、シトロネラルである。本発明によれば、非常に特に好ましく使用される式(IV)のアルデヒドは、イソバレルアルデヒド及びベンズアルデヒドであり、特にイソバレルアルデヒドである。
【0029】
化合物(III)及び(IV)の反応は、直列に連結されたn個の反応器からなる構成内で実施される。ここで、nは、少なくとも2の自然数である。本発明によれば、流れの方向において、相前後して配置される2〜8個、好ましくは2、3、4、5又は6個の反応器がある。
【0030】
本発明の1つの構成においては、直列に連結された1以上又は全ての反応器を、並列に連結された2つ以上の反応器と置き換えることも可能である。これにより、直列に、及び並列に組み合わされた(n+m)個の反応器の連結がもたらされる。相前後して連結した最も長い一連の反応器における反応器の数をnとする。他の反応器の全ての数を合計でmとし、ここで、mは任意の所望の自然数であり得る。
【0031】
好ましくは、反応は連続的に実施される。これは、直列に連結されたn個全ての反応器が、それぞれ連続的に作動することを意味する。
【0032】
適切な実施態様においては、反応は溶媒の存在下に実施される。場合によっては、本発明の反応を実施するために、式(III)及び(IV)の化合物も本明細書及び以下で出発物質として言及され、それぞれは、適切な溶媒との混合物の形態で供給される。好ましくは、両方の出発物質(III)及び(IV)は、最初に同じ溶媒中に導入される。溶媒は、好ましくは、水、又は反応条件下で不活性な溶媒、例えば、tert-ブチルメチルエーテル、シクロヘキサン、トルエン、ヘキサン又はキシレンである。特定の溶媒は、それ自体で、又は混合物の形態で使用することができる。好ましい実施態様においては、反応は、有機溶媒を追加せずに実施される。特に好ましい実施態様においては、反応は水の存在下に実施される。
【0033】
本発明の方法の適切な実施態様においては、流れの一部を流れの方向における第1及び最後の反応器の間で取り出し、取り出した位置から上流に配置される反応器に供給する。
【0034】
好ましい実施態様においては、流れの一部を流れの方向における第1及び/又は第2の反応器の反応器排出流から取り出し、外部からの再循環により流れ方向における第1の反応器に少なくとも一部を戻す。この実施態様によれば、流れの方向における少なくとも第1の反応器は逆混合で作動する。
【0035】
特に、反応器排出流の流れの一部を第1の反応器から取り出し、外部回路により流れ方向において第1の反応器に戻す。この操作方法は、本明細書及び以下においてループモードとも呼ばれる。好ましくは、ここではnは2である。一時的な冷却の前又は後に、再循環のための流れの分割を場合により実施してもよい。
【0036】
他の実施態様によれば、反応は、相前後して連結したn個の反応器内で実施される(ここで、nは少なくとも3の整数である)。この実施態様においては、流れの一部を(n-1)番目の反応器から取り出し、外部回路により第1の反応器内に導入された流れに戻す。その結果、第1の反応器から(n-1)番目の反応器は一緒にループを形成する。特に、ここではnは3である。また、ここでも、一時的な冷却の前又は後に、再循環のための流れの分割を場合により実施することができる。
【0037】
特に好ましい実施態様においては、取り出した流れの一部を取り出した位置の上流に配置される反応器に供給する前に、流れの一部から熱を取り除く。
【0038】
本発明の方法の他の実施態様においては、流れの方向における少なくとも第1の反応器が、主に等温で操作される。
【0039】
本発明との関係において、「主に等温で操作される」は、各反応ゾーンにおいて、狭い温度間隔が観察されるという意味であると理解される。反応器が「主に等温で操作される」なら、本発明との関係において、反応器中の温度間隔ΔTが、断熱的な温度上昇よりも小さい意味であると理解すべきである。反応器内の温度間隔については、好ましくはΔTは12K以下であり、特に好ましくはΔTは10K以下である。
【0040】
主に等温様式の操作のために、熱伝達面は、適切には第1の反応器の内部に配置されている。この場合、第1の反応器における逆混合は不要とすることができ、これは、特に好ましくは直線的な流路で操作されていることを意味する。反応器が「直線的な流路(straight pass)」で操作されているなら、これは、本明細書及び以下において、反応器が、ループモードの意味における反応生成物の再循環なしで操作される意味であると理解される。直線的な流路における操作様式は、基本的に内部の逆混合及び/又は反応器内の装置の撹拌を除外するものではない。
【0041】
適切な実施態様においては、流れの方向における第1及び第2の反応器が、それぞれの場合において、主に等温で操作される。このために、熱伝達面は、この2つの最初の反応器の内部に適切に配置されている。このようにして、場合により、反応器中で、異なる温度レベルを確立することができる。この場合、第1及び第2の反応器における逆混合の手間を省くことができ、これは、両反応器が、特に好ましくは、直線的な流路で動作していることを意味する。
【0042】
適切な実施態様においては、それぞれの場合において、反応器に導入される1以上又は全ての流れは、反応器に入る前に熱処理される。このために、通常の熱交換器を使用することができる。一般に、反応器から取り出された流れは、次の反応器に入る前に一時的に冷却される。工程で得られた熱は、工程内の他の適切なポイントで、流れを加熱するために使用することができる。熱統合及び/又はピンチ解析のための対応する方法は当業者に公知である。
【0043】
本発明の方法の特定の有利な実施態様においては、流れの方向における次の反応器に反応器排出流が導入される前に、第1の反応器から(n-1)番目の反応器の少なくとも1つからの反応器排出流から熱を取り除く。
【0044】
同様に好ましい実施態様においては、流れの方向における少なくとも最後の反応器が、反応器排出流の再循環なしで操作される。流れの方向における最後の反応器を出た後に、完全又は部分的な生成物再循環は、好ましくは、連続操作において認識されていない。
【0045】
特に、流れの方向における最後の反応器は、基本的に逆混合なしで操作される。この場合には、管型反応器は、特に、内部の逆混合なしで、流れの方向における最後の反応器として提供される。
【0046】
好ましくはnは2又は3である。特に好ましくはnは2である。
【0047】
本発明の方法の適切な実施態様においては、反応は、流れの方向における少なくとも最後の反応器において、断熱的に実施される。
【0048】
本発明との関係において、「断熱的」という用語は、技術的な意味において理解され、物理化学的意味において理解されるものではない。したがって、反応器を通って流れた反応混合物は、通常、発熱反応のために温度が上昇する。断熱反応の実施では、反応中に放出される熱の量は、反応器内の反応混合物に吸収される手順を意味すると理解されており、冷却は、冷却装置を用いて行われていない。その結果、反応混合物を有する反応器から、反応熱が実質的に除去される。残存量は、反応器からの自然な熱伝導及び/又は放射線の結果として環境中に放出されると認識されている。好ましくは、本明細書における最後の反応器は直線的な流路で操作される。
【0049】
好ましい実施態様によれば、反応器の配置は、少なくとも1つの固定層反応器を含む反応のために使用される。特に好ましくは、n個全ての反応器が固定層反応器である反応器構成を使用することである。
【0050】
適切な一実施態様によれば、内部に配置された熱交換器を有する少なくとも1つの反応器を含む反応器構成が反応に使用される。
【0051】
好ましくは、反応は、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、及び強酸性陽イオン交換体から選択される酸性触媒の存在下に実施される。特に、反応は、強酸性陽イオン交換体の存在下に実施される。
【0052】
好ましくは、式(III)のアルコール及び式(IV)のアルデヒドが、0.7:1〜2:1の範囲のモル比で使用される。
【0053】
好ましくは、式(III)のアルコール及び式(IV)のアルデヒドは少なくとも3重量%、特に好ましくは少なくとも5重量%の水の存在下に反応が実施される。式(III)のアルコール及び式(IV)のアルデヒドは、例えば3重量%〜15重量%、好ましくは5重量%〜12重量%の水の存在下に反応させる。上記の重量%は、本明細書において、式(III)及び(IV)の成分、並びに水からなる反応混合物の量に基づいている。
【0054】
一般に、式(III)のアルコールは、少なくとも約10モル%の水の存在下に式(IV)のアルデヒドとの反応が実施される(水の量は、必要に応じて不足分で使用され、又は2種の出発材料のうちの1つの定量的な量の当モル反応の場合に基づいている)。記載された値を超えると、水の量は自由に選択することができ、唯一、処理やコストの観点により制限される。水は大過剰で、例えば、10倍〜100倍の過剰、又はそれ以上で使用することができる。好ましくは、混合物は、式(III)のアルコール及び式(IV)のアルデヒドと選択された量の水から製造され、これは、加えた水が混合物内に溶解したままであることを意味する。すなわち、2相系は存在しない。
【0055】
適切な実施態様においては、出発物質は、少なくとも25モル%、好ましくは少なくとも50モル%の水の存在下に反応させる。例えば、出発物質は、25〜150モル%、好ましくは40〜150モル%、特に好ましくは50〜140モル%、特に50〜80モル%の水の存在下に反応させる。ここで、使用される水の量は、不足分において使用されてもよい出発物質の定量的な量、又は等モル反応の場合、2種のうちの1種の定量的な量を意味する。
【0056】
本発明の方法の適切な実施態様においては、反応は、0℃〜70℃の範囲、好ましくは20℃〜70℃の範囲、特に好ましくは20℃〜60℃の範囲の温度で実施される。
【0057】
本発明の方法の同様な適切な実施態様においては、反応は、1バールから15バールの範囲の圧力で実施される。
【0058】
第1の反応器の下流に連結された反応器(すなわち、第2の反応器〜n番目の反応器)の1つで反応した反応混合物が、生成する反応熱による反応器内の所望の温度を維持するために低すぎる出発物質の画分を有するなら、反応器(又は個々の反応域)の熱処理も必要である場合がある。熱処理は、外部循環流を加熱することにより、又は熱交換面を介して、内部の加熱による反応熱の上記の損失と同様に行うことができる。1つの適切な実施態様においては、前述の反応器の少なくとも一方からの反応熱の放散を熱処理のために使用することができる。
【0059】
反応の回収熱は、反応器の供給流を加熱するためにも任意に使用することができる。このために、例えば、第1の反応器の出発物質流を、この反応器の外部循環流と少なくとも部分的に混合することができ、次いで、混合した流れを第1の反応器に供給することができる。更に、この反応器に連結しているそれぞれの反応器からの循環流により、供給流を、第2〜n番目の反応器の1以上又は全てに供給することができる。更に、出発物質流及び/又は他の供給流は、反応の回収熱を使用して操作される熱交換器を利用して加熱することができる。
【0060】
一実施態様においては、追加の完全混合を、使用する反応器の少なくとも1つで実施することができる。反応が、反応混合物の長い滞留時間で実施される場合、追加の完全混合は特に有利である。静的及び動的混合装置の両者が適している。適切な混合装置は、当業者に十分に知られている。完全な混合のために、反応器に供給される供給流は、好ましくは、ノズルのような適切な混合装置によって、それぞれの反応器に供給することができる。完全に混合するために、ループモードとして前述したように、外部回路に伝達されるそれぞれの反応器からの(部分的な)流れを、同様に好ましく使用することができる。
【0061】
前述したループモードは、反応温度と、反応媒体、装置壁及び周囲の間の熱伝達とを制御するのに特に有利に適している。熱平衡を調節するためのさらなる選択肢は、出発物質及び/又はそれぞれの供給流の入り口温度を調節することからなる。したがって、入ってくる供給流の温度を低くすることにより、反応熱の回収が向上する。触媒活性が低下すると、反応の更に高い速度を達成し、それによって低下した触媒活性を補うために、選択される入り口温度を高くすることができる。したがって、使用する触媒の寿命を有利に長くすることができる。
【0062】
第1の部分流は、通常、化学的に変化しない反応系に戻される。必要に応じて、再循環の前に、温度及び/又は圧力を所望の値に調節することができる。第1の部分流は、それぞれの供給流と一緒に、又は別個に、それが除去された反応器から反応器に供給され得る。それぞれの供給流に対する、反応器に供給された第1の部分流(再循環流)の重量比は、好ましくは1:1〜50:1の範囲であり、特に好ましくは2:1〜30:1の範囲であり、特に5:1〜20:1の範囲である。
【0063】
第2の変形例においては、反応は、強酸性陽イオン交換体の存在下に実施される。ここで、強酸性陽イオン交換体という用語は、強い酸性基を有するH+型の陽イオン交換体を意味するとして理解される。強い酸性基は、通常、スルホン酸基である。酸性基は、通常、ポリマーマトリクス、に結合しており、例えば、ゲル様又はマクロ多孔性であってもよい。したがって、本発明の方法の好ましい実施態様は、スルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換体を使用することで特徴付けられる。適切な強酸性陽イオン交換体は、WO2010/133473及びWO 2011/154330に開示されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0064】
使用するのに適しているものは、ポリスチレンをベースとし、H+型でスルホン酸基を有する、単体マトリクスとしてのスチレン及びジビニルベンゼンのコポリマーを含み、スルホン酸基(-SO3H)により官能化されたイオン交換基をも有する、強酸性イオン交換体(例えば、Amberlyst、Amberlite、Dowex、Lewatit、Purolite、Serdolit)である。イオン交換体は、そのポリマー骨格の構造が異なり、かつ区別がゲル様とマクロ多孔性樹脂との間に形成されている。特定の実施態様においては、過フッ素置換されたポリマーイオン交換体樹脂が使用される。このタイプの樹脂は、例えば、DupontによりNafion(登録商標)という商品名で市販されている。言及され得る、このような過フッ素置換されたポリマーイオン交換樹脂の一例は、Nafion(登録商標)NR-50である。
【0065】
反応に適した市販の強酸性陽イオン交換体は、例えば、Lewatit(登録商標)(Lanxess)、Purolite(登録商標)(The Purolite Company)、Dowex(登録商標)(Dow Chemical Company)、Amberlite(登録商標)(Rohm and Haas Company)、Amberlyst(商標)(Rohm and Haas Company)の商品名で公知である。好ましい強酸性陽イオン交換体は、Lewatit(登録商標)K 1221、Lewatit(登録商標)K 1461、Lewatit(登録商標)K 2431、Lewatit(登録商標)K 2620、Lewatit(登録商標)K 2621、Lewatit(登録商標)K 2629、Lewatit(登録商標)K 2649、Amberlite(登録商標)FPC 22、Amberlite(登録商標)FPC 23、Amberlite(登録商標)IR 120、Amberlyst(商標)131, Amberlyst(商標)15、Amberlyst(商標)31、Amberlyst(商標)35、Amberlyst(商標)36、Amberlyst(商標)39、Amberlyst(商標)46、Amberlyst(商標)70、Purolite(登録商標)SGC650、Purolite(登録商標)C100H、Purolite(登録商標)C150H、Dowex(登録商標)50X8、Serdolit(登録商標)red及びNation(登録商標)NR-50である。
【0066】
強酸性イオン交換樹脂は、一般に塩酸及び/又は硫酸で再生される。
【0067】
特定の実施態様においては、3-メチルブタ-3-エン-オール(III)及びアルデヒド(IV)が、強酸性陽イオン交換体の存在下、及び水の存在下で反応する。原則として、反応混合物は、可能な二次反応として式(I)の工程生成物の脱水素の結果として放出され得る少量の水を既に含んでいてもよい。特定の実施態様によれば、水は、反応混合物、並びにイソプレノール(III)、式(IV)のアルデヒド及び反応からの水にも更に加えることができる。
【0068】
好ましくは、式(III)のアルコール及び式(IV)のアルデヒドは、少なくとも3重量%、特に好ましくは少なくとも5重量%の水の存在下に反応させる。式(III)のアルコール及び式(IV)のアルデヒドは、例えば、3重量%〜15重量%、好ましくは5重量%〜12重量%の水の存在下に反応させる。本明細書で前述したパーセントは、式(III)及び(IV)の成分と水とからなる反応混合物の全量を基準とする。
【0069】
記載された値を超えると、水の量は自由に選択することができ、たとえあったとしても、処理やコストの観点のみにより制限され、大過剰で、例えば、5〜15倍過剰又はそれ以上で使用することができる。好ましくは、イソプレノール(III)及び式(IV)のアルデヒド、好ましくはイソバレルアルデヒドの混合物を、加えた水がイソプレノール及びアルデヒドの混合物中で溶解したままであるように、すなわち、2相系が存在しないように、ある量の水を用いて調製する。
【0070】
通常、本発明の方法の本実施態様との関係において、出発物質であるイソプレノール(III)及び式(IV)のアルデヒドは、少なくとも25モル%、好ましくは少なくとも50モル%の存在下で反応させる。例えば、出発物質は、25〜150モル%、好ましくは40〜150モル%、特に好ましくは50〜140モル%、特に50〜80モル%の水の存在下に反応させる。これに関連し、使用される水の量は、不足分において使用されてもよい出発物質の定量的な量、又は等モル反応の場合、2種のうちの1種の定量的な量を意味する。
【0071】
イソプレノール(III)のアルデヒド(IV)との反応について、記載された出発物質及び必要に応じて添加された水は、酸性陽イオン交換体と接触させることができる。好ましくは、イソプレノール(III)、アルデヒド(IV)及び必要に応じて添加された水は、混合物の形態で使用される。特定の出発物質、即ち、イソプレノール(III)、アルデヒド(IV)及び前記量で使用される水は、お互いに接触させてもよく、及び/又は所望の順序で混合してもよい。
【0072】
強酸性陽イオン交換体の量は重要でなく、経済的及び処理態様を考慮に入れる広い範囲で自由に選択することができる。したがって、反応は、触媒量の強酸性陽イオン交換体の存在下、及び大過剰の強酸性陽イオン交換体の存在下の両方で実施することができる。特定の強酸性陽イオン交換体は、個々に、又は混合物の形態のいずれでも使用することができる。
【0073】
空間速度は、例えば、50〜2500モル/触媒m3・時間の範囲、好ましくは100〜2000モル/触媒m3・時間の範囲、特に130〜1700モル/触媒m3・時間の範囲であり、モルにおける定量的量は、式(IV)の出発物質を意味する。
【0074】
強酸性陽イオン交換体の存在下における反応は、必要に応じて、更に反応条件下に不活性である溶媒の存在下に実施してもよい。適切な溶媒は、例えば、tert-ブチルメチルエーテル、シクロヘキサン、デカリン、ヘキサン、ヘプタン、ナフサ、石油エーテル、トルエン又はキシレンである。特定の溶媒は、それ自体で、又はお互いの混合物の形態で使用することができる。好ましくは、反応は、有機溶媒を添加せず、強酸性陽イオン交換体の存在下に実施される。
【0075】
好ましくは、イソプレノール(III)と選択されたアルデヒド(IV)の反応は、水の存在下下、及び強酸性陽イオン交換体の存在下、0〜70℃の範囲の温度で、特に好ましくは20〜70℃の範囲の温度で、特に20〜60℃の範囲の温度で実施される。これは、反応混合物の温度である。
【0076】
価値のある生成物を得るための反応生成物の後処理は、当業者に公知の慣用の方法により行うことができる。好ましくは、反応混合物の後処理は、少なくとも1回の蒸留工程を含む。価値のある生成物を得るために、反応生成物は、蒸留又は精留による公知の方法により分離することができる。例えば、後処理は、WO2011/154330に記載された方法と同様に実施することができる。
【0077】
本発明の方法を、図1〜3を参照してより詳細に説明する。本発明は、これらの実施態様に限定されない。
【0078】
本発明の方法は、カスケード構成において、少なくとも1個の主反応器、好ましくは1〜2個の主反応器を用いて実施することができる。主反応器は、並列又は直列で、好ましくは直列で、必要に応じて一時的に冷却しながら操作することができる。ここで、手順は、例えば、逆混合反応器系又は等温モードで実施することができる。逆混合反応器系では、主反応器部分の全ての循環流が逆混合及び冷却され、又は各主反応器が別個に逆混合及びそれ自体の循環系によって冷却され、及び/又は中間冷却は各主反応器の後に実施することができる。2以上の層への分割は、場合によっては一時的に冷却され、1つの装置内で実施することもできる。
【0079】
反応の主反応器部分から出た後に、少なくとも1つの反応器、好ましくは1〜2個の二次反応器が続く。これらは、直線的な流路内で(等温又は逆混合)、並列又は直列で操作され得る。好ましくは、反応器は直列に連結し、逆混合なしで直線的な流路内で操作される。
【0080】
図1は、主反応器(1)及び二次反応器(3)を有する適切な2段階反応器カスケードの適切な実施態様を示す。
【0081】
3種の出発物質流、イソプレノール(A)、アルデヒド(B)及び水(C)を、3つの供給口を通して反応器(1)に導入する。反応器(1)からの排出流はライン及びポンプ(5)を介して除去され、2つの部分流に分けられる。再循環流(D)は、冷却ユニット(2)を介して、出発物質流(A)、(B)及び(C)とともに主反応器(1)に供給される。供給流は、冷却ユニット(4)を介して二次反応器(3)に通される。出発物質(E)は、排出流のように二次反応器(3)から直接除去され、必要に応じて後処理段階に供給される。
【0082】
この実施態様においては、両反応器は、好ましくは固定層反応器として構成される。主反応器(1)はループモードで操作されるが、二次反応器は直線的な流路で操作される。図1に示す構成においては、触媒床よりも上の温度プロファイルが、主反応器系内の逆混合を介して調節できるように、主反応器(1)と二次反応器(3)とは直列に連結されている。結果として、反応開始時の大きな温度上昇を防止することができる。
【0083】
図2は、主反応器(1)及び二次反応器(3)を有する、適切な2段階反応器カスケードの他の実施態様を示す。再循環に代え、反応器(1)内に統合された熱交換器を介して等温反応工程が達成される。
【0084】
3種の出発物質流、イソプレノール(A)、アルデヒド(B)及び水(C)が反応器(1)に導入される。反応器(1)からの排出流は除去され、冷却ユニット(4)を介して供給流として二次反応器(3)に供給される。出発物質(E)は二次反応器(3)からの排出流として直接除去され、必要に応じて後処理工程に供給される。主反応器は統合熱交換器面を備えているが、二次反応器(3)は簡単な固定層反応器として設計されている。この実施態様においては、両反応器は直線的な流路で操作される。図2に示す等温反応の方法により、望ましくない温度ピークを回避する。
【0085】
図3は、2つの主反応器(1)、(6)、及び二次反応器(3)を有する3段階反応器カスケードの1つの適切な実施態様を示す。
【0086】
3種の出発物質流、イソプレノール(A)、アルデヒド(B)及び水(C)が、3つの供給口を介して反応器(1)に導入される。反応器(1)からの排出流は除去され、冷却ユニット(7)を介して供給流として二次反応器(6)に供給される。反応器(6)からの排出流は、ライン及びポンプ(5)を介して除去され、2つの部分流に分けられる。再循環流(D)は、冷却ユニット(2)を介して出発物質流(A)、(B)及び(C)とともに主反応器(1)に戻される。供給流は、冷却ユニット(4)を介して三次反応器(3)に通される。出発物質(E)は、排出流のように二次反応器(3)から直接除去され、必要に応じて後処理段階に供給される。
【0087】
この実施態様においては、3つの反応器は全て、好ましくは固定層反応器として構成される。主反応器(1)及び(6)はループモードで操作されるが、二次反応器(3)は直線的な流路で操作される。図3に示す構成においては、触媒床よりも上の温度プロファイルが、主反応器系内の逆混合と、第1及び第2の主反応器間の一時的冷却とを介して調節できるように、主反応器(1),(6)と二次反応器(3)とは直列に連結されている。結果として、両反応器内の温度ピークを効率的に防止することができる。
【実施例】
【0088】
実施例1(連続法)
【0089】
主反応器と、3つの個々の反応器からなる二次反応器とからなる装置を使用した。使用した主反応器は、断熱工程のための熱媒体のないRA4から製造された、長さ150cm、内径2.6cmのジャケット付き反応器であった。使用した二次反応器は、それぞれ長さ150cm、内径1.0cmで、それぞれ30℃、40℃及び50℃で加熱した、RA4から製造された3つのジャケット付き反応器であった。
【0090】
装置を、合計328gの強酸性陽イオン交換体Amberlyst(商標)131で満たした。この場合、主反応器を230g(305ml)の陽イオン交換体で、二次反応器を、それぞれ32.5g(44ml)の陽イオン交換体で満たす。陽イオン交換体を、使用前に、最初に水で数回、次いでメタノールで1回、最後にメタノールが含まれないように水で洗浄した。系を、ピラノ-ル:水の質量比95:5の混合物を導入することにより調節した。次いで、主反応器を、2000g/hの再循環流で逆混合操作し、再循環流は、主反応器に再度入る前に25℃の温度まで冷却される。二次反応器は、変換を完了させるために直線的な流路で操作された。
【0091】
陽イオン交換体を記載されたピラノ-ル/水混合物に調節した後、25℃で、100g/hの全定量的流れで、質量比が45:50:5のイソバレルアルデヒド:イソプレノール:水の混合物を導入した。これにより、50℃の最後の二次反応器からの出口温度を有する祖生成物を、以下の組成を有するイソバレルアルデヒド上のそれぞれの場合に基づいて、76%の収率及び77.6%の選択性で得た。
【0092】
イソバレルアルデヒド: 1.03 GC重量%、
イソプレノール:3.6GC重量%、
ジヒドロピラン異性体:8.69GC重量%、
1,3-ジオキサン:5.56GC重量%、
アセタール:0.57GC重量%、
トランス-ピラノ-ル:18.26GC重量%、
シス-ピラノ-ル:50.08GC重量%、
水:6.8重量%(Karl Fischerによる)
【符号の説明】
【0093】
図1〜3においては、以下の符号が使用される。
1 (主)反応器
2 冷却ユニット
3 (二次)反応器
4 (中間)冷却ユニット
5 ポンプ
6 反応器
7 冷却ユニット
8 分離カラム
A イソプレノール流
B アルデヒド流
C 水
D 再循環流
E 出発物質
図1
図2
図3