(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に対する理解を助けるため、本発明をさらに詳しく説明する。
【0024】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0025】
本発明の一実施形態に係る正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物粒子;及び伝導性酸化物粒子を含み、前記伝導性酸化物粒子は、インジウム錫酸化物(ITO;Indium tin oxide、以下、ITOと称する)及びアンチモン錫酸化物(ATO;Antimony Tin Oxide、以下、ATOと称する)からなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物を含む。
【0026】
さらに、本発明の一実施形態に係る前記正極活物質は、X線回折(X−Ray Diffraction;XRD)分析の測定時に単一相ピークを有する伝導性酸化物粒子を含むことができる。
【0027】
本発明の一実施形態に係る正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物粒子及び単一相を有する特定の伝導性酸化物粒子を含むことにより、優れた電子伝導性を有するとともに、リチウムイオンのような金属イオンがリチウム遷移金属酸化物粒子に伝えられ得るよう優れたイオン伝達能を有するだけでなく、二次電池の容量減少や出力減少を最小化することができる。
【0028】
それだけでなく、前記伝導性酸化物粒子の構造的特徴によって正極工程、特にプレス工程の際に衝撃吸収効果を有して正極活物質の破れ現象の最小化が可能であり、こういうわけで二次電池に適用する場合、寿命特性をさらに向上させることができる。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、前記伝導性酸化物粒子は、ITO及びATOからなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合酸化物を含むことができ、好ましくは、ATO単独またはATOを含む混合伝導性酸化物であるのがよい。
【0030】
万が一、前記混合伝導性酸化物を用いる場合、前記ITO及びATOの含量の割合は1:0.01から1:1の重量比、好ましくは1:0.1から1:0.5の重量比であってよい。
【0031】
本発明の一実施形態に係る正極活物質において、前記ATOは、下記式(1)及び(2)で表される化合物のうちいずれか一つまたはこれらの混合物を含むことができる。
[化学式1]
(SnO
2)
x(Sb
2O
3)
y、x+y=1、0<y/x≦2 (1)
[化学式2]
(SnO
2)
x(Sb
2O
5)
y、x+y=1、0<y/x≦2 (2)
【0032】
このとき、前記式で、xは好ましくは0.6から0.99であり、yは0.001から0.2、さらに好ましくは0.002から0.1であってよい。
【0033】
本発明の一実施形態に係る正極活物質において、前記ITOは、下記式(3)及び(4)で表される化合物のうちいずれか一つまたはこれらの混合物を含むことができる。
[化学式3]
(InO
2)
a(
SnO2)
b、a+b=1、0<b/a≦2 (3)
[化学式4]
(InO
2)
a(
SnO2)
b、a+b=1、0<b/a≦2 (4)
【0034】
このとき、前記式で、aは好ましくは0.6から0.99であり、bは0.001から0.2、さらに好ましくは0.002から0.1であってよい。
【0035】
本発明で用いられる前記ITOは、インジウム酸化物と錫酸化物から合成された物質であって、高い電気伝導度と光学的透明を同時に有することを特徴とし、可視光領域で高い透過率と低い電気比抵抗を有する電気的な特性を有している。
【0036】
さらに、前記ATOは錫酸化物にアンチモン酸化物がコーティングされたものであって、前記ITOに比べてコストの面で経済的であり、透明性と導電性に優れるという利点を有している。
【0037】
具体的に、前記ATOは、前記粒子内にSb
3+またはSb
5+で存在可能であり、Sb
3+で存在する場合、酸素欠乏(oxygen vacancy)を生成させることができる。このように生成された酸素欠乏のため、イオン伝導度が増加することができる。つまり、イオン伝導度及び電気伝導度が共に形成され、正極活物質の粒子の外部、内部または外部及び内部に含まれる場合、二次電池の率特性及び出力特性を向上させることができる。
【0038】
さらに、前記正極活物質は、XRD測定の際に単一相ピークを有する伝導性酸化物、即ち、ATOまたはITOを含むことができる。前記コーティング層に含まれる伝導性酸化物は、熱処理後にも相分離がなされず正極活物質に前記酸化物固有の構造が維持されることを意味することができる。
【0039】
本発明の一実施形態に係る正極活物質によれば、前記伝導性酸化物粒子の平均粒径は1nmから100nm、好ましくは5nmから80nm、さらに好ましくは10nmから60nmであるナノ粒子酸化物が好ましいといえる。
【0040】
本発明の第1実施形態に係る正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物粒子及び伝導性酸化物粒子を含み、前記伝導性酸化物粒子は、前記リチウム遷移金属酸化物粒子の外部表面にコーティングされてコーティング層を形成することができる。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、前記コーティング層は、前記伝導性酸化物粒子が単一相に形成されることにより、前記伝導性酸化物の平均粒径と同一または類似の1nmから100nmのコーティング層の厚さを有することができる。
【0042】
前記コーティング層が多層を形成する場合、コーティング層の厚さが増加してLiイオンの移動を妨げるので、出力特性の低下の問題があり得、前記コーティング層が100nmを超過する場合、前記厚いコーティング層が抵抗として作用し得るので、過電圧の発生及び出力低下などの問題があり得る。
【0043】
したがって、本発明は、一実施形態に基づき、前記1nmから100nmの平均粒径を有する伝導性酸化物粒子が単一層に形成されることが初期容量及び出力の測面で好ましく、前記厚さは、好ましくは5nmから80nm、さらに好ましくは10nmから60nmであってよい。
【0044】
さらに、本発明の第2実施形態に係る正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物粒子及び伝導性酸化物粒子を含み、前記伝導性酸化物粒子は、前記リチウム遷移金属酸化物粒子の内部に含まれてよい。
【0045】
本発明の一実施形態に係る正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物粒子の内部に伝導性酸化物粒子が含まれて前記リチウム遷移金属酸化物粒子とともに複合体を形成することにより、正極活物質の構造的結晶崩壊を防止して構造的安定性及び電気化学的特性を改善させることができる。
【0046】
具体的に検討してみれば、本発明の一実施形態によると、前記伝導性酸化物粒子は、リチウム遷移金属酸化物粒子の表面から内部に行くほど濃度が減少する濃度勾配を有し、リチウム遷移金属酸化物粒子とともに複合化されて複合体を形成することができる。
【0047】
例えば、本発明の正極活物質において、前記伝導性酸化物粒子は、リチウム遷移金属酸化物粒子の外部バルクにおける含量が内部バルクにおける含量に比べて少なくとも20%以上さらに高いことがあり、前記内部バルクは、前記リチウム遷移金属酸化物粒子の中心とその周辺領域として、粒子全体の遷移金属の原子数の50%を含んでいる領域を意味することができる。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、前記伝導性酸化物粒子は、リチウム遷移金属酸化物粒子の表面から粒子半径の0.0001から80%の厚さ範囲で含まれてよい。
【0049】
さらに、本発明の第3実施形態に係る正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物粒子及び伝導性酸化物粒子を含み、前記伝導性酸化物粒子は、前記リチウム遷移金属酸化物粒子の外部表面にコーティングされてコーティング層を形成し、前記リチウム遷移金属酸化物粒子の内部に前記リチウム遷移金属酸化物粒子とともに含むことができる。
【0050】
前記伝導性酸化物粒子は、リチウム遷移金属酸化物粒子の表面から内部に行くほど減少する濃度勾配を有し、リチウム遷移金属酸化物粒子とともに複合化されて複合体を形成することができる。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、前記伝導性酸化物粒子は、正極活物質全体に対して50から30000ppmの量、好ましくは100から20000ppmの量で含まれてよい。
【0052】
前記正極活物質の平均粒径は3から30μmであるのがよい。
【0053】
さらに、本発明の一実施形態に係る正極活物質は、複合粒子をさらに含むことができる。前記複合粒子は、リチウム遷移金属酸化物粒子の外部、内部または外部及び内部に前記伝導性酸化物粒子とともにまたはそれぞれ含まれてよい。
【0054】
この場合、前記伝導性酸化物粒子と複合粒子の混合(含量)の割合は、1:0.01から1:1.5の重量比、好ましくは1:0.1から1:1の重量比であってよい。前記範囲の重量比の場合、複合粒子の構造的利点を最大限に取ることができ、よって、正極活物質の衝撃吸収効果を最大化することができるので、破れ効果が低減可能であり、相対的な導電性の減少を防止して出力や容量の低下を防止することができる。
【0055】
前記複合粒子は、YSZ(yttria stabilized zirconia)、GDC(gadolinia−doped ceria)、LSGM(lanthanum strontium gallate magnesite)、LSM(lanthanum strontium manganite)、CSZ(Ca doped zirconia、CaO−stabilized zirconia)、SSZ(Sc doped zirconia)及びNi−YSZからなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物を含み、前記複合粒子は、伝導性酸化物粒子と同様に、XRD測定の際に単一相ピークを有する。
【0056】
本発明の一実施形態に係る正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物粒子及び単一相を有する特定の伝導性酸化物粒子、特に伝導性酸化物粒子及び複合粒子を共に含むことにより、二次電池の容量減少や出力減少をさらに最小化することができる。それだけでなく、前記複合粒子の構造的特徴によって正極工程、特にプレス工程の際に衝撃吸収効果を有して正極活物質の破れ現象の最小化が可能であり、こういうわけで二次電池に適用する場合、寿命特性をさらに向上させることができる。
【0057】
前記YSZはイットリア安定化ジルコニア(yttria stabilized zirconia)であって、酸化ジルコニウム(ジルコニア)に酸化イットリウム(イットリア)を添加して常温でも安定化させたセラミック材料である。前記YSZは、ジルコニアにイットリアが添加されることにより、Zr
4+イオンのうち一部がY
3+で代替可能である。これに伴い、4つのO
2−イオンの代わりに3つのO
2−イオンで代替され、結果的に酸素欠乏(oxygen vacancy)が生成され得る。このように生成された酸素欠乏のため、YSZはO
2−イオン伝導性を有することになり、温度が高いほど伝導度が良好になる。このような特徴は、高温で動作する固体酸化物燃料電池(SOFC)で有効に用いられ得る。
【0058】
さらに、前記LSGMは、ランタン−ストロンチウム−ガリウム−マグネシウム酸化物(LaSrGaMg)であって高いイオン伝導度を有するので、固体酸化物燃料電池の作動温度を低めることができる物質である。
【0059】
さらに、GDCはガドリニウム(Gd)がドープされたセリアであって、例えば、Gd
0.1Ce
0.9O
1.95を挙げることができ、LSGMと同様に高いイオン伝導度を有する。
【0060】
さらに、LSMはマンガン系ペロブスカイト(Perovskite)構造であって、例えば、LaSrMnOまたはLa
(1−x)Sr
xMnO
3(0.01≦x≦0.30)ペロブスカイト構造を有し、イオン伝導性は殆どなく、電子伝導性は優れる。La
1−xSr
xMn
yO
3−δ(1≧X≧0.05)(0.95≦y≦1.15)(δは完全化学量(perfect stoichiometry)から小さな偏差を意味する数値として規定される)であってよい。
【0061】
さらに、SSZは、(ZrO
2)
1−2x(Sc
2O
3)
X、(ZrO
2)
1−2x(Sc
2O
3)
x−z(Y
2O
3)
zまたは(Zr0
2)
1−2x−z(Sc
2O
3)
x(CeO
2)
z(0<x≦0.25)(0<z≦0.l)であってよい。
【0062】
さらに、CSZは、カルシウムドープされたジルコニアまたはカルシア安定化ジルコニア(CaO−stabilized zirconia)であってよく、カルシアを添加することによりジルコニアの熱的安定性を向上させることができる。前記CSZは、キュービック結晶構造及び正方(tetragonal)結晶構造が混在された状態である。正方結晶構造は、温度が上昇すればキュービック結晶構造に変わり、温度が低くなれば再度正方結晶構造に変わるところ、このように結晶構造が変わる過程で体積の膨張及び収縮が繰り返され得る。
【0063】
本発明の一実施形態に係る正極活物質において、前記複合粒子であるYSZ、GDC、LSGM、LSM、CSZ、SSZ及びNi−YSZは単一相を有することを特徴とする。
【0064】
本発明の一実施形態に係る正極活物質において、前記複合粒子は、ジルコニア系の、YSZ、CSZ及びSSZからなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物が好ましいといえる。
【0065】
特に、前記YSZは、Zr
(1−x)Y
xO
2−x/2、0.01≦x≦0.30であってよく、好ましくは0.03≦x≦0.20であってよい。
【0066】
さらに、SSZは、好ましくは(ZrO
2)
1−2x(Sc
2O
3)
X、(ZrO
2)
1−2x(Sc
2O
3)
x−z(Y
2O
3)
zまたは(Zr0
2)
1−2x−z(Sc
2O
3)
x(CeO
2)
z(0.01≦x≦0.2)(0.01≦z≦0.l)であってよい。
【0067】
さらに、CSZは、CaO含量がCSZ全体重量に対して2重量%から17重量%であるCSZを含むのが好ましい。
【0068】
本発明の一実施形態に係る正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物粒子、伝導性酸化物粒子及び複合粒子を含み、前記複合粒子は、伝導性酸化物粒子とともにまたはそれぞれ前記リチウム遷移金属酸化物粒子の外部、内部または内部及び外部に含まれてよい。
【0069】
具体的に検討してみれば、例えば、前記複合粒子がYSZであり、YSZを前記リチウム遷移金属酸化物の外部表面に含む場合、YがZrサイトに入って単一相を先に形成することができ、正極活物質構造がスーパーストラクチャー(superstructure)を有することにより、構造内部に酸素欠乏が発生して正極活物質の表面に空の空間が多く生じ得る。
【0070】
図1及び
図2は、本発明の一実施形態に係る正極活物質に含まれているYSZ(yttria stabilized zirconia)がDFT(Discrete Fourier transformation)の構造最適化を介して最適化された複合粒子YSZ(yttria stabilized zirconia)におけるリチウムの移動通路予想モデリング及びリチウムイオンのイオン伝導度を比較分析した図である。
【0071】
図1で検討してみたところのように、前記最適化されたYSZでリチウムの移動通路を検討してみれば、前記YSZの構造内部の酸素欠乏による空の空間により、正極活物質の表面にLiが抜け出すことができる空間が多く発生することが分かる。
【0072】
さらに、
図2に示す通り、DFTを介してYSZでリチウムイオンが通過することができる経路を探してリチウムイオンのイオン伝導度を分析した結果、酸素欠乏がある
図2のPath 2−3−4区間で約1.0eVのエネルギー差を見せることを確認することができる。
【0073】
これを介し、酸素欠乏のある経路が連結されればリチウムイオン伝導度が非常に高いことがあり、このような酸素欠乏により複合粒子YSZを含む正極活物質を二次電池に適用する場合、容量減少または出力減少の最小化が可能である。
【0074】
さらに、本発明の一実施形態に係る正極活物質は、前記コーティング層にCa、Nb、W、Mg、Ti、B、Mo及びZrのうち一つ以上の元素を含む酸化物をさらに含むことができる。
【0075】
前記Ca、Nb、W、Mg、Ti、B、Mo及びZrのうち一つ以上の元素を含む酸化物は、前記コーティング層に50ppmから30000ppmの量で含まれてよい。
【0076】
さらに、本発明の一実施形態に係る正極活物質において、前記リチウム遷移金属酸化物粒子は、下記式(5)の化合物を含むことができる:
[化学式5]
Li
(1+a)Ni
(1−b−c)Mn
(b)Co
(c)M’
(s)M’’
(v)O
2 (5)
【0077】
前記式で、M’は、Sb、Sn、In、Y、Zr、La、Sr、Ga、Mg、Mn、Ca、Sc及びNiからなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合元素、好ましくは、Y、Zr及びNiからなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合元素を含み、
M’’は、Ca、Nb、W、Mg、Ti、B、Mo、Sc及びZrのうち一つ以上の元素であり、
0≦a<0.2、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0≦s≦0.2、0≦v≦0.2である。
【0078】
本発明の一実施形態によれば、前記式(5)において、0≦a<0.2であり、M’はSb、Sn、In、Zr、Y、Zr、Ca、Sc及びNiからなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合元素を含むのが好ましく、前記s及びvは、リチウム遷移金属酸化物粒子の表面から内部に行くほど減少する濃度勾配を有することができる。
【0079】
さらに、本発明の一実施形態によれば、前記式(1)で好ましくは0≦a≦0.09、さらに好ましくは0≦a≦0.06であってよい。
【0080】
前記式(1)でaが0.09超過、特にaが0.2以上の場合、リチウム遷移金属粒子に伝導性酸化物粒子及び複合粒子(例えば、YSZ)をコーティングする効果は、他の酸化物(例えば、ZrO
2)をコーティングした場合に比べて、寿命特性効果の差が約10%以内で著しくないことがある。一方、前記式(1)でaが0.09以下、特にaが0の場合、リチウム遷移金属粒子に前記複合粒子をコーティングする効果は、他の酸化物をコーティングした場合に比べて、寿命特性効果が30%から70%までの著しい差を示すことができる。
【0081】
さらに、本発明の一実施形態に係る正極活物質のBET比表面積は、0.1m
2/gから10m
2/gであるのが好ましい。BET比表面積が前記範囲を外れる場合、二次電池の出力特性が低下し得る。
【0082】
本発明の一実施形態によれば、前記正極活物質の比表面積は、BET(Brunauer−Emmett−Teller;BET)法で測定することができる。例えば、気孔分布測定器(Porosimetry analyzer;Bell Japan Inc、Belsorp−II mini)を用いて窒素ガス吸着流通法によってBET 6点法で測定することができる。
【0083】
一方、本発明は、前記正極活物質の製造方法を提供する。
【0084】
本発明の一実施形態に係る正極活物質の製造方法は、リチウム遷移金属酸化物粒子及び伝導性酸化物粒子を混合して熱処理する段階を含み、伝導性酸化物粒子は、インジウム錫酸化物(ITO;Indium tin oxide)及びアンチモン錫酸化物(ATO;Antimony Tin Oxide)からなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物を含み、前記正極活物質は、X線回折(X−Ray Diffraction;XRD)分析測定の際に単一相ピークを有する伝導性酸化物粒子を含むことができる。
【0085】
さらに、本発明の一実施形態に係る前記正極活物質の製造方法において、前記混合時に複合粒子をさらに添加することができる。
【0086】
前記複合粒子は、YSZ(yttria stabilized zirconia)、GDC(gadolinia−doped ceria)、LSGM(LaSrGaMg)、LSM(La
(1−x)Sr
xMnO
3)、CSZ、SSZ及びNi−YSZからなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物を含むことができる。
【0087】
本発明の一実施形態によれば、前記伝導性酸化物粒子は、ATO、またはATO及びITOの混合粒子を含むのが好ましく、前記複合粒子は、YSZ、CSZ及びSSZからなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物を含むのが好ましい。
【0088】
さらに、本発明の一実施形態によれば、前記正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物粒子及び伝導性酸化物粒子としてATO、複合粒子としてYSZを含むのがさらに好ましい。
【0089】
万が一、前記伝導性酸化物粒子としてATO、複合粒子としてYSZを用いる場合、前記ATO及びYSZの混合(含量)の割合は1:0.01から1:1.5の重量比、好ましくは1:0.1から1:1の重量比であってよい。
【0090】
本発明の一実施形態によれば、前記熱処理は、100から1200℃の温度範囲で4時間から24時間の間行われてよい。
【0091】
本発明の一実施形態に係る正極活物質の製造方法によれば、前記リチウム遷移金属酸化物粒子の表面に伝導性酸化物粒子、または伝導性酸化物粒子及び複合粒子を含むコーティング層を形成するか;またはリチウム遷移金属酸化物粒子の内部に前記伝導性酸化物粒子、または前記伝導性酸化物粒子と複合粒子をともに含むか;またはリチウム遷移金属酸化物粒子の外部及び内部に前記伝導性酸化物粒子、または前記伝導性酸化物粒子と複合粒子をともに含むことは、熱処理の際に熱処理温度及び時間に影響を及ぼし得る。
【0092】
本発明の一実施形態に基づき、例えば、200から800℃、好ましくは300から600℃の温度範囲で熱処理を行う場合、前記熱処理によってリチウム遷移金属酸化物粒子の外部表面にコーティング層を形成することができる。
【0093】
つまり、200から800℃の温度範囲で熱処理を行う場合、リチウム遷移金属酸化物粒子の表面にコーティング層が形成され、前記コーティング層は、伝導性酸化物粒子、または前記伝導性酸化物粒子及び複合粒子を含み、前記伝導性酸化物粒子及び複合粒子は、XRD測定の際に単一相ピークを有する正極活物質を得ることができる。
【0094】
本発明の一実施形態によれば、前記200から800℃の温度範囲での熱処理でも伝導性酸化物粒子、または伝導性酸化物粒子及び複合粒子の一部が前記リチウム遷移金属酸化物の内部に含まれてよく、この場合、前記伝導性酸化物粒子、または伝導性酸化物粒子及び複合粒子は、リチウム遷移金属酸化物粒子の表面から内部に行くほど減少する濃度勾配を有し、リチウム遷移金属酸化物粒子の表面及びリチウム遷移金属酸化物粒子の内部に含まれ、リチウム遷移金属酸化物粒子とともに複合化されて複合体を形成することができる。
【0095】
本発明の一実施形態によれば、リチウム遷移金属酸化物粒子上に外部コーティング層を形成する場合、例えば、高速で回転するスプレー噴射方式でコーティングする場合、ナノ分散が可能なのでコーティング層が単一層コーティングでよくなされ得る。
【0096】
前記伝導性酸化物粒子の量に従って前記リチウム遷移金属酸化物粒子上に形成されるコーティング層の厚さが変わることがあり、よって、前記伝導性酸化物粒子の量が前記範囲を超過する場合、コーティング層は伝導性酸化物の粒子が単一層でなく多層に形成された形態なので、出力及び内部抵抗の測面で好ましくないことがある。
【0097】
さらに、本発明の一実施形態に基づき、例えば、600から1200℃の温度範囲で熱処理を行う場合、前記熱処理によってリチウム遷移金属酸化物粒子の内部に伝導性酸化物粒子、または伝導性酸化物粒子及び複合粒子を含む正極活物質を得ることができる。
【0098】
このとき、前記伝導性酸化物粒子、または伝導性酸化物粒子及び複合粒子は、リチウム遷移金属酸化物粒子の表面から内部に行くほど減少する濃度勾配を有し、リチウム遷移金属酸化物粒子とともに複合化されて複合体を形成することができる。この場合、前記伝導性酸化物粒子、または伝導性酸化物粒子及び複合粒子は、リチウム遷移金属酸化物粒子の表面から内部に、例えば、約500nm以上まで存在することができる。
【0099】
本発明の一実施形態によれば、前記600から1200℃の温度範囲での熱処理を行う場合も、前記リチウム遷移金属酸化物の外部表面に伝導性酸化物粒子、または伝導性酸化物粒子及び複合粒子が存在することができる。
【0100】
本発明の一実施形態に係る正極活物質の製造方法によれば、前記遷移金属酸化物粒子は、前記式(1)のリチウム遷移金属複合酸化物粒子を含み、下記s及びvは、リチウム遷移金属酸化物粒子の表面から内部に行くほど減少する濃度勾配を有することができる:
本発明の一実施形態に係る正極活物質の製造方法によれば、表面改質剤として用いられる前記伝導性酸化物粒子、または伝導性酸化物粒子及び複合粒子の平均粒径(D
50)は1nmから100nm、好ましくは5nmから80nm、さらに好ましくは10nmから60nmであるのが好ましい。
【0101】
本発明において、伝導性酸化物粒子、または伝導性酸化物粒子及び複合粒子の平均粒径(D
50)は、粒径分布の50%基準での粒径で定義することができる。本発明の一実施形態に係る前記粒子の平均粒径(D
50)は、例えば、レーザー回折法(laser diffraction method)を利用して測定することができる。前記レーザー回折法は、一般に、サブミクロン(submicron)領域から数mm程度の粒径の測定が可能であり、高再現性及び高分解性の結果を得ることができる。
【0102】
例えば、前記ATOの平均粒径(D
50)の測定方法は、ATOを溶液に分散させた後、市販されるレーザー回折粒度測定装置(例えば、Microtrac MT 3000)に導入して約28kHzの超音波を出力60Wで照射してから、測定装置における粒径分布の50%基準での平均粒径(D
50)を算出することができる。
【0103】
本発明の一実施形態によれば、前記表面改質剤は、50から30000ppmの量、好ましくは100から20000ppmの量、さらに好ましくは400から10000ppmの量で用いられてよい。
【0104】
本発明の一実施形態に係る正極活物質の製造方法によれば、前記混合のために乾式混合法または湿式混合法(具体的に、ナノゾル湿式混合法)を利用することができる。
【0105】
本発明の一実施形態に係る製造方法において、前記乾式混合法は、シェーカーによる混合法、モルタルグラインダー混合(mortar grinder mixing)法、及び機械的ミリング法を利用した混合法を利用して行うことができ、好ましくは、機械的ミリング法を利用することが均一なコーティング層の形成において好ましいといえる。
【0106】
具体的に検討してみれば、前記シェーカーによる混合法は、リチウム遷移金属酸化物粒子と表面改質剤をハンドミキシングし、数回振って混合して行われてよい。
【0107】
さらに、モルタルグラインダー混合法は、リチウム遷移金属酸化物粒子と表面改質剤をモルタルを利用して均一に混合する方法である。
【0108】
さらに、前記機械的ミリング法は、例えば、ロールミル(roll−mill)、ボールミル(ball−mill)、高エネルギーボールミル(high energy ball mill)、遊星ミル(planetary mill)、撹拌ボールミル(stirred ball mill)、振動ミル(vibrating mill)またはジェットミル(jet−mill)を利用して、リチウム遷移金属酸化物粒子と表面改質剤を機械的摩擦により混合を行うことができ、例えば、回転数100rpmから1000rpmで回転させて機械的に圧縮応力を加えることができる。
【0109】
さらに、水溶液によってリチウム遷移金属酸化物粒子にダメージ(damage)が発生する可能性を低めるため、乾式混合法またはコーティングの均一度を考慮してナノゾル湿式混合法を用いるのが好ましい。
【0110】
本発明の一実施形態に係る製造方法において、前記ナノゾル湿式混合法は、例えば、精製された無機物前駆体に溶媒及び分散剤を添加し、撹拌させてコロイド状の無機物ナノゾルを形成した後、前記ナノゾルに表面改質剤及びリチウム遷移金属酸化物粒子を添加してリチウム酸化物の表面処理を行うことができる。前記ナノゾル湿式混合法は、コーティングの均一度を向上させることができるという利点がある。
【0111】
さらに、本発明は、前記正極活物質を含む正極を提供する。
【0112】
前記正極は、当分野に知られている通常の方法で製造することができる。例えば、正極活物質に溶媒、必要に応じてバインダ、導電材、分散剤を混合及び撹拌してスラリーを製造した後、これを金属材料の集電体に塗布(コーティング)し圧縮してから、乾燥して正極を製造することができる。
【0113】
本発明の一実施形態によれば、前記正極活物質多孔性粒子はタフネス(toughness)が強いため、特に多孔性正極に含まれるのが好ましい。
【0114】
金属材料の集電体は、伝導性が高い金属として、前記正極活物質のスラリーが容易に接着することができる金属で、電池の電圧範囲で反応性がないものであればいずれも使用可能である。正極集電体の非制限的な例には、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの組み合わせによって製造されるホイルなどがある。
【0115】
前記正極を形成するための溶媒には、NMP(N−メチルピロリドン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、アセトン、ジメチルアセトアミドなどの有機溶媒または水などがあり、これら溶媒は単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。溶媒の使用量は、スラリーの塗布の厚さ、製造収率を考慮して前記正極活物質、バインダ、導電材を溶解及び分散させることができる程度であれば十分である。
【0116】
前記バインダには、ポリビニリデンフルオリド−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF−co−HFP)、ポリビニリデンフルオリド(polyvinylidenefluoride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ポリアクリル酸(poly acrylic acid)及びこれらの水素がLi、NaまたはCaなどで置換された高分子、または多様な共重合体などの多様な種類のバインダ高分子が用いられ得る。
【0117】
前記導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;炭素ナノチューブなどの導電性チューブ;フルオロカーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカ;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられ得る。
【0118】
前記分散剤は、水系分散剤またはN−メチル−2−ピロリドンなどの有機分散剤を用いることができる。
【0119】
さらに、本発明は、前記正極、負極、前記正極と負極との間に介在されているセパレーターを含む二次電池を提供する。
【0120】
本発明の一実施形態に係る前記負極に用いられる負極活物質には、通常リチウムイオンが吸蔵及び放出され得る炭素材、リチウム金属、ケイ素または錫などを用いることができる。好ましくは炭素材を用いることができるところ、炭素材には低結晶炭素及び高結晶性炭素などがいずれも用いられ得る。低結晶性炭素には軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素には天然黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso−carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0121】
さらに、負極集電体は、一般に3μmから500μmの厚さに作られる。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム−カドミウム合金などが用いられ得る。さらに、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態に用いられ得る。
【0122】
負極に用いられるバインダ及び導電材は、正極と同様に当分野に通常用いられ得るものを用いることができる。負極は、負極活物質及び前記添加剤等を混合及び撹拌して負極活物質スラリーを製造した後、これを集電体に塗布し圧縮して負極を製造することができる。
【0123】
さらに、セパレーターには、従来にセパレーターとして用いられていた通常の多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体及びエチレン−メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独でまたはこれらを積層して用いることができ、または通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0124】
本発明で用いられる電解質として含まれ得るリチウム塩は、リチウム二次電池用電解質に通常用いられるものが制限なく用いられてよく、例えば、前記リチウム塩の陰イオンには、F
−、Cl
−、Br
−、I
−、NO
3−、N(CN)
2−、BF
4−、ClO
4−、PF
6−、(CF
3)
2PF
4−、(CF
3)
3PF
3−、(CF
3)
4PF
2−、(CF
3)
5PF
−、(CF
3)
6P
−、CF
3SO
3−、CF
3CF
2SO
3−、(CF
3SO
2)
2N
−、(FSO
2)
2N
−、CF
3CF
2(CF
3)
2CO
−、(CF
3SO
2)
2CH
−、(SF
5)
3C
−、(CF
3SO
2)
3C
−、CF
3(CF
2)
7SO
3−、CF
3CO
2−、CH
3CO
2−、SCN
−及び(CF
3CF
2SO
2)
2N
−からなる群より選択されるいずれか一つであり得る。
【0125】
本発明で用いられる電解質には、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などを挙げることができ、これらに限定されるものではない。
【0126】
本発明のリチウム二次電池の外形には特別な制限がないが、缶を用いた円筒形、角形、ポーチ(pouch)型またはコイン(coin)型などになり得る。
【0127】
本発明に係るリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として用いられる電池セルに用いられ得るだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく用いられ得る。
【0128】
前記中大型デバイスの好ましい例には、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車及び電力格納用システムなどを挙げることができるが、これらだけに限定されるものではない。
【0129】
以下、本発明を具体的に説明するため、実施形態を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明に係る実施形態は、幾多の他の形態に変形されてよく、本発明の範囲が下記で詳述する実施形態に限定されるものとして解釈されてはならない。本発明の実施形態は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0130】
以下、実施例及び実験例を挙げてさらに説明するが、本発明がこれら実施例及び実験例によって制限されるものではない。
【0131】
伝導性酸化物粒子及び複合粒子の材料特性による性能評価
実施例1(単一層コーティング)
<正極活物質の製造>
LiNi
0.78Mn
0.11Co
0.11O
2 100gと40nm ATO((SnO
2)
x(Sb
2O
3)
y)ナノゾル(メトキシプロパノール90%、ATO 10%、x=0.9 y=0.05)5gをビーカーに入れて全体固形分が10%になるようエタノールを添加した。この混合溶液をMPO5(Multi−Purpose、日本コークス工業)に入れて10分間スプレーコーティング及び乾燥した後、オーブン(oven)で130℃で12時間以上乾燥した。乾燥後、焼成炉で400℃で10時間の間熱処理を進めた後、乳鉢で粉砕及び篩分けして正極活物質を得た。
【0132】
<正極の製造>
前記実施例1で製造された正極活物質94重量%、導電材としてカーボンブラック(carbon black)3重量%、バインダとしてポリビニリデンフルオリド(PVdF)3重量%を溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に添加して正極混合物スラリーを製造した。前記正極混合物スラリーを、厚さが20μm程度の正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に塗布し、乾燥して正極を製造した後、ロールプレス(roll press)を実施して正極を製造した。
【0133】
<負極の製造>
負極活物質として炭素粉末96.3重量%、導電材としてsuper−p 1.0重量%、並びにバインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)を1.5重量%及び1.2重量%で混合し、溶媒であるNMPに添加して負極活物質スラリーを製造した。前記負極活物質スラリーを厚さが10μmの負極集電体である銅(Cu)薄膜に塗布し、乾燥して負極を製造した後、ロールプレス(roll press)を実施して負極を製造した。
【0134】
<非水性電解液の製造>
一方、電解質としてエチレンカーボネート及びジエチルカーボネートを30:70の体積比で混合して製造された非水電解液溶媒にLiPF
6を添加し、1MのLiPF
6非水性電解液を製造した。
【0135】
<リチウム二次電池の製造>
このように製造された正極と負極を、ポリエチレンとポリプロピレンの混合セパレーターを介在させてから通常の方法でポリマー型電池を製作した後、製造された前記非水性電解液を注液してリチウム二次電池の製造を完成した。
【0136】
実施例2
前記実施例1でATOの代わりにITOを用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法で行って正極活物質及びリチウム二次電池を得た。
【0137】
実施例3
前記実施例1でATOの代わりに
ITO及び
ATOを1:1の重量比で混合して用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法で行って正極活物質及びリチウム二次電池を得た。
【0138】
実施例4
前記実施例1でATOの代わりにATO及びYSZを1:1の重量比で混合して用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法で行って正極活物質及びリチウム二次電池を得た。
【0139】
実施例5
前記実施例1でATOの代わりにITO及びYSZを1:1の重量比で混合して用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法で行って正極活物質及びリチウム二次電池を得た。
【0140】
実施例6
前記実施例1でLiNi
0.78Mn
0.11Co
0.11O
2の代わりにLi
1.05Ni
0.8Mn
0.1Co
0.1O
2(Li/M=1.05)を用いたことを除き、前記実施例3と同様の方法で行って正極活物質及びリチウム二次電池を得た。
【0141】
実施例7
前記実施例1でATOの代わりにATO及びYSZを1:1の重量比で混合して用いたこと
と、LiNi0.78Mn0.11Co0.11O2の代わりにLi1.05Ni0.8Mn0.1Co0.1O2(Li/M=1.05)を用いたこととを除き、前記実施例6と同様の方法で行って正極活物質及びリチウム二次電池を得た。
【0142】
実施例8
前記実施例1でATOの代わりにITO 及びYSZを1:1の重量比で混合して用いたこと
と、LiNi0.78Mn0.11Co0.11O2の代わりにLi1.05Ni0.8Mn0.1Co0.1O2(Li/M=1.05)を用いたこととを除き、前記実施例6と同様の方法で行って正極活物質及びリチウム二次電池を得た。
【0143】
実施例9(内部及び外部)
前記熱処理を900℃で6時間の間行ったことを除き、実施例1と同様の方法で行ってLiNi
0.78Mn
0.11Co
0.11O
2の内部及び外部にATOを含む正極活物質及びリチウム二次電池を得た。
【0144】
比較例1(多層コーティング)
前記実施例1で40nm ATO((SnO
2)
x(Sb
2O
3)
y、x=0.9 y=0.05)、ナノゾル(メトキシプロパノール90%、ATO 10%)50gを用いたことを除き、実施例1と同様の方法で行って多層のATOコーティング層を含む正極活物質及びリチウム二次電池を得た。
【0145】
比較例2
前記比較例1でATOの代わりにITOを用いたことを除き、前記比較例1と同様の方法で行って正極活物質及びリチウム二次電池を得た。
【0146】
比較例3
ATO((SnO
2)
x(Sb
2O
3)
y、x=0.9 y=0.05)の代わりにTiO
2を用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法で行って正極活物質及びリチウム二次電池を得た。
【0147】
比較例4
前記実施例1でATOを添加していないことを除き、前記実施例1と同様の方法で行って正極活物質を得た。
【0148】
比較例5
LiNi
0.78Mn
0.11Co
0.11O
2(Li/M=1)の代わりにLi
1.2Ni
0.8Mn
0.1Co
0.1O
2(Li/M=1.2)を用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法で行って正極活物質を得た。
【0149】
比較例6
LiNi
0.78Mn
0.11Co
0.11O
2(Li/M=1)の代わりにLi
1.2Ni
0.8Mn
0.1Co
0.1O
2(Li/M=1.2)を用いたことを除き、前記実施例9と同様の方法で行って正極活物質を得た。
【0150】
比較例7
ATO((SnO
2)
x(Sb
2O
3)
y、x=0.9 y=0.05)の代わりにTiO
2を用いたことを除き、前記実施例9と同様の方法で行って正極活物質及びリチウム二次電池を得た。
【0151】
前記実施例1から9及び比較例1から7の正極活物質の組成を纏めると、下記表1の通りである:
【0153】
実験例1:SEM顕微鏡写真
前記実施例1と2、及び比較例1から4で製造された正極活物質に対してそれぞれSEM顕微鏡写真を確認し、その結果を表2、及び
図3から7に示した。
【0155】
前記表2、及び
図3から7に示したところのように、本発明の実施例に基づいてリチウム遷移金属酸化物粒子上に伝導性酸化物コーティング層を含む場合、コーティング層の厚さが伝導性酸化物の平均粒径と類似の10nmで単一層を形成することが分かる。
【0156】
その反面、比較例1から3の場合、コーティング層の厚さが伝導性酸化物粒子の平均粒径に比べて約4倍程度になる40nmの多層を形成することが分かる。
【0157】
実験例2:X線回折分析
実施例1と2、及び比較例1から4で製造された正極活物質に対してX線回折分析を行った。その結果を
図9と
図10に示した。
【0158】
本発明の正極活物質に含まれているITO及びATOのXRD相を比較分析するため、正極活物質に対してCu(Kα線)を利用したXRD回折測定を行い、その結果を
図8に示した。
【0159】
− ターゲット: Cu(Kα線)黒鉛単色化装置
− スリット(slit):発散スリット=1度、受信スリット=0.1mm、散乱スリット=1度
− 測定区域及びステップ角度/測定時間:
− 20.0度<2θ<80度、4度/1分(=0.2度/3秒)、ここで2θ(Theta)は回折角度を表す。
【0160】
図9及び
図10を検討してみれば、正極活物質に2θが28〜35度に存在する単一相のITOピークまたはATOのピークが表れることを確認した。
【0161】
実験例3:サイクル特性評価1
実施例1と2、及び比較例1から4で得たリチウム二次電池に対してサイクル数に応じた相対効率を調べるため、次のように電気化学評価実験を行った。
【0162】
具体的に、実施例1と2、及び比較例1から4で得たリチウム二次電池を45で1Cの定電流(CC)4.2Vになるまで充電し、以後、4.2Vの定電圧(CV)で充電して充電電流が0.05mAhになるまで1回目の充電を行った。以後、20分間放置した後、2Cの定電流で3.0Vになるまで放電してから、これを1から5回のサイクルで繰り返して行った。
【0163】
前記
図8から分かるところのように、本発明の実施例1と2、及び比較例1から4に比べたサイクル数の増加に伴って容量保有率が向上することが分かる。
【0164】
例えば、実施例1と2のように、伝導性酸化物コーティング層が単一層としてリチウム遷移金属酸化物粒子の外部に形成される場合、多層に形成された比較例1と2に比べて50回目サイクルでは10%以上向上した。
【0165】
さらに、リチウム遷移金属酸化物粒子上にコーティング層が単一層に形成されるとしても、ATOまたはITOが形成される場合、TiO
2が形成された比較例3に比べて約16%まで向上することが分かる。
【0166】
一方、リチウム遷移金属酸化物上に伝導性酸化物のコーティング層が形成されていない比較例4の場合、本発明の実施例1と2に比べて約23%程度著しく減少することが分かる。
【0167】
伝導性酸化物粒子及び複合粒子の混合の割合による性能評価
実施例10
前記実施例4でATO及びYSZを1:1の重量比で混合する代わりに1:0.01の重量比で混合したことを除き、前記実施例4と同様の方法で行って正極活物質及びリチウム二次電池を得た。
【0168】
実施例11
前記実施例4でATO及びYSZを1:1の重量比で混合する代わりに1:0.1の重量比で混合したことを除き、前記実施例4と同様の方法で行って正極活物質及びリチウム二次電池を得た。
【0169】
実施例12
前記実施例4でATO及びYSZを1:1の重量比で混合する代わりに1:0.5の重量比で混合したことを除き、前記実施例4と同様の方法で行って正極活物質及びリチウム二次電池を得た。
【0170】
実施例13
前記実施例4でATO及びYSZを1:1の重量比で混合する代わりに1:1.5の重量比で混合したことを除き、前記実施例4と同様の方法で行って正極活物質及びリチウム二次電池を得た。
【0171】
参照例1
前記実施例4でATO及びYSZを1:1の重量比で混合する代わりに1:0.005の重量比で混合したことを除き、前記実施例4と同様の方法で行って正極活物質及びリチウム二次電池を得た。
【0172】
参照例2
前記実施例4でATO及びYSZを1:1の重量比で混合する代わりに1:2の重量比で混合したことを除き、前記実施例4と同様の方法で行って正極活物質及びリチウム二次電池を得た。
【0173】
実験例4:サイクル特性評価2
実施例4、10から13と、
参照例1及び2で得たリチウム二次電池に対してサイクル数に応じた相対効率を調べるため、次のように電気化学評価実験を行い、その結果を下記表3に示した。
【0175】
前記表3に示す通り、伝導性酸化物粒子(ATO)と複合粒子(YSZ)を1:0.1から1:1.5の割合で添加した実施例4、10から13の場合、初期容量に優れながらも、数十回のサイクル後にも容量維持率に優れるので、優秀なサイクル特性を表すことを確認することができたが、前記の割合範囲を外れる
参照例1及び2の場合は、サイクル特性が低下するか、初期容量が低い結果を見せていることを確認した。特に、複合粒子の割合が高い場合、コーティング層が過度に厚くなるなどの影響によって初期容量が低下することを確認することができた。
【0176】
これを介し、初期容量特性とサイクル特性を全て同時に満足するためには、伝導性酸化物粒子と複合粒子を1:0.01から1:1.5の割合で混合した方がよく、さらに、より優れた効果を得ようとする場合は、1:0.1から1:1の割合で混合した方がよいという点を確認することができた。
【0177】
混合伝導性酸化物粒子の混合の割合による性能評価
実施例14
前記実施例3で
ITO及びATOを1:1の重量比で混合する代わりに1:0.01の重量比で混合したことを除き、前記実施例3と同様の方法で行って正極活物質及びリチウム二次電池を得た。
【0178】
実施例15
前記実施例3で
ITO及びATOを1:1の重量比で混合する代わりに1:0.1の重量比で混合したことを除き、前記実施例3と同様の方法で行って正極活物質及びリチウム二次電池を得た。
【0179】
実施例16
前記実施例3で
ITO及びATOを1:1の重量比で混合する代わりに1:0.5の重量比で混合したことを除き、前記実施例4と同様の方法で行って正極活物質及びリチウム二次電池を得た。
【0180】
参照例3
前記実施例3で
ITO及びATOを1:1の重量比で混合する代わりに1:0.005の重量比で混合したことを除き、前記実施例
3と同様の方法で行って正極活物質及びリチウム二次電池を得た。
【0181】
参照例4
前記実施例3で
ITO及びATOを1:1の重量比で混合する代わりに1:2の重量比で混合したことを除き、前記実施例
3と同様の方法で行って正極活物質及びリチウム二次電池を得た。
【0182】
実験例
5:サイクル特性評価
3
実施例3、14から16と、
参照例3及び4で得たリチウム二次電池に対してサイクル数に応じた相対効率を調べるため、次のように電気化学評価実験を行い、その結果を下記表4に示した。
【0184】
前記表4に示す通り、伝導性酸化物粒子等(
ITO及びATO)を1:0.01から1:1の割合で添加した実施例3、14から16の場合、初期容量に優れながらも、数十回のサイクル後にも容量維持率に優れるので、優秀なサイクル特性を表すことを確認することができたが、前記の割合範囲を外れる
参照例3及び4の場合は、サイクル特性が低下するか、初期容量が低い結果を見せていることを確認した。特に、
ATOの割合が高い場合、コーティング層が過度に厚くなるか、混合のバラ付きが発生するなどの影響によって初期容量が低下することを確認することができた。
【0185】
これを介し、初期容量特性とサイクル特性を全て同時に満足するためには、伝導性酸化物粒子と複合粒子を1:0.01から1:1の割合で混合した方がよく、さらに、より優れた効果を得ようとする場合は、1:0.1から1:1の割合で混合した方がよいという点を確認することができた。
【0186】
以上で本発明の好ましい実施形態に対して詳しく説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるのではなく、次の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の幾多の変形及び改良形態もまた本発明の権利範囲に属するのである。