(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ネジ部材のうち、ネジ溝を有するネジ部の幅方向が中心線となるように形成されている貫通孔と、前記ネジ部の先端側の頂面から前記貫通孔と連なるように形成されているスリットとに嵌め込まれるICタグであって、
前記ICチップ体を内蔵するタグ収納体を備え、このタグ収納体は、誘電性樹脂材料を材質として形成されていて、
前記チップ収納体は、外観が円筒状または円柱状であり前記貫通孔に嵌め込まれる孔嵌合部と、前記孔嵌合部から突出すると共に前記スリットに嵌め込まれるスリット嵌合部とを備えている、
ことを特徴とするICタグ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係る、ICタグ組み込みネジ10Aについて、図面に基づいて説明する。
【0018】
<ICタグ組み込みネジ10Aの構成について>
図1は、ICタグ組み込みネジ10Aの構成を示す斜視図である。また、
図2は、ICタグ組み込みネジ10Aの構成を示す斜視図であり、ICタグ組み込みネジ10Aにナット80を取り付けた状態を示す図である。また、
図3は、ネジ部材20Aの構成を示す斜視図であり、ICタグ組み込みネジ10AからICタグ50Aを取り除いた状態を示している。
【0019】
図1に示すように、ICタグ組み込みネジ10Aは、ネジ部材20Aと、ICタグ50Aとを有している。ネジ部材20Aは、通常のネジと同様に、頭部30と、ネジ部40Aとを有している。そのうち、頭部30は、ネジ部40Aよりも大径に設けられている部分であり、ネジ山およびネジ谷が形成されていない部分である。また、ネジ部40Aは、ネジ山およびネジ谷が形成されている部分であり、ナット80が捻じ込まれる部分である。
【0020】
なお、
図1および
図2には、平面視したときの形状が六角形状の頭部30が図示されている。しかしながら、平面視したときの頭部30の形状は、たとえば三角形状や矩形状といった多角形状、円形状や楕円形状といった曲線を有する形状、その他の規則的または不規則な輪郭を有する形状等、種々の形状を採用可能である。
【0021】
また、ネジ部40Aには、貫通孔41が形成されている。貫通孔41は、ネジ部40Aを貫くように形成されている孔部分である。また、ネジ部40Aのうち、頭部30から離間する頂面40tには、貫通孔41に向かうようにスリット42が設けられている。このスリット42の幅は、貫通孔41の直径よりも小さく設けられている。なお、本実施の形態では、スリット42も、貫通孔41と同様に、ネジ部40Aを突っ切るように形成されている。なお、これらの貫通孔41およびスリット42には、後述するICタグ50Aが取り付けられる。
【0022】
<ICタグ50Aの構成について>
続いて、ICタグ50Aについて説明する。
図4は、ICタグ50Aの構成を示す斜視図であり、ICインレット70を取り付ける前の様子を示す分解斜視図である。
図5は、ICインレット70が取り付けられた状態のICタグ50Aの構成を示す側面図である。
図4および
図5に示すように、ICタグ50Aは、タグ収納体60Aと、ICインレット70(単にインレットともいう;ICチップ体に対応)とを有している。タグ収納体60Aは、誘電性樹脂材料で形成された樹脂を材質として形成されている。ただし、タグ収納体60Aは、例えば、磁路の流れを良くするために、誘電性樹脂材料以外に、磁性体の粉末、または誘電体と磁性体の粉末の混合体などを用いるようにしても良い。
【0023】
このタグ収納体60Aは、孔嵌合部61とスリット嵌合部62とを有している。孔嵌合部61は、貫通孔41に嵌合する部分であり、その外観が円柱状または円筒状に設けられている。また、スリット嵌合部62は、スリット42に嵌合する部分であり、その外観は矩形の突起状に設けられている。
【0024】
また、孔嵌合部61には、凹嵌部61aが設けられている。凹嵌部61aは、ICインレット70が入り込むための窪み部分であり、
図3および
図4に示すように、孔嵌合部61のうちスリット嵌合部62とは反対側の外周面から窪むように設けられている。本実施の形態では、ICインレット70は、矩形の板状に設けられている。そのため、凹嵌部61aは、スリット状の窪み部分となっている。
【0025】
なお、凹嵌部61aの幅は、ICインレット70の幅よりも若干狭くして、ICインレット70を凹嵌部61aに圧入する構成としても良い。その場合には、ICインレット70の保持性が向上する。しかしながら、凹嵌部61aの幅は、ICインレット70の幅と同等か、若干広く設けられていても良い。その場合には、接着剤や凹嵌部61aの開口側を封止する部材を用いて、ICインレット70を凹嵌部61aの内部に固定する。なお、ICインレット70を凹嵌部61aに圧入する場合においても、接着剤や凹嵌部61aの開口側を封止する部材を用いて固定するようにしても良い。
【0026】
次に、ICインレット70について説明する。
図6は、ICインレット70の構成を示すと共に当該ICインレット70がネジ部40Aに取り付けられた状態の断面形状を部分的に示す斜視図である。
図6に示すように、ICインレット70は、ICタグ基板71と、ICチップ72と、コイルアンテナ73とを備えている。ICタグ基板71は、略矩形状をなす平板形状に形成されている。ICタグ基板71としては、たとえばガラスエポキシ基板あるいはPETを始めとした樹脂製のフィルムを用いることができる。ICタグ基板71は、ICチップ72と、コイルアンテナ73とを有しているが、そのうちICチップ72は、各種のデータを記憶する。
【0027】
上述のように、本実施の形態では、その幅方向が中心線となるように貫通孔41が形成されていて、さらに頂面40tから貫通孔41に向かい、その貫通孔41と連なるようにスリット42とが設けられている。そのため、
図6に示すようなICタグ50Aのうちナット80で覆われていない端面からICタグ50Aの内部に入り込むことを可能としていると共に、スリット42を通過可能としている。そのため、電磁誘導方式にてコイルアンテナ73に電流を生じさせることを可能となる。すなわち、RFIDリーダ/ライタ装置は、ICタグ50A(ICインレット70)との間で、無線通信を行うことが可能となり、ICチップ72に対して情報の読み出しおよび書き込みが可能となる。なお、ここでは、幅方向とはネジ部40Aの径方向のうち貫通孔41の延伸方向とする。
【0028】
特に、本実施の形態では、ネジ部40Aは、金属により形成されていて、そのネジ部40Aにナット80が捻じ込まれ、ナット80によってICタグ50Aの軸方向(頂面40tから頭部30に向かう方向;上下方向とする)とは直角の方向にあるICタグ50Aの端面が覆われた場合には、磁力線Φは、ICタグ50Aの軸方向の端面からICタグ50A内部に入り込み難くなる。しかしながら、ネジ部40Aにはスリット42が設けられている。そのため、ナット80によりICタグ50Aの軸方向の端面が覆われた場合でも、ICタグ50Aの内部に磁力線Φを入り込ませることを可能としている。
【0029】
したがって、ネジ部材20Aのうち頭部30が構造物の内側に配置され、それとは逆のネジ部40A側が作業空間側(構造物の外側)に配置され、さらにネジ部40Aの末尾(先端側)にナット80が締結されていても、ICタグ50AとRFIDリーダ/ライタ装置との間で情報の送受信が可能となる。それにより、ICタグ組み込みネジ10A毎の情報を管理することで、その個体管理が容易に行える。なお、かかるICタグ組み込みネジ10Aの個体管理としては、たとえばメンテナンスを行った日時や、ICタグ組み込みネジ10Aの締め付けトルク等の情報がある。
【0030】
また、ネジ部40A側にICタグ50Aを取り付ける構成を採用できるので、ネジ部材20Aの頭部30には、何も装着しない状態とすることが可能となる。したがって、ネジ部材20Aの頭部30に何らかの物を装着することに制限があっても、そのような制限に該当しなくなり、ICタグ組み込みネジ10Aの用途を広げることが可能となる。
【0031】
また、本実施の形態では、ICタグ50Aは、ICインレット70を内蔵するタグ収納体60Aを備えており、そのタグ収納体60Aは、誘電性樹脂材料を材質として形成されている。また、貫通孔41は、円孔形状に形成されていて、スリット42は長溝形状に設けられている。しかも、タグ収納体60Aは、外観が円形状または円柱状であり貫通孔41に嵌め込まれる孔嵌合部61と、孔嵌合部61から突出すると共にスリット42に嵌め込まれるスリット嵌合部62とを備えている。
【0032】
このため、ICタグ50Aが貫通孔41およびスリット42に嵌め込まれると、ICタグ50Aが回転するのを防止可能となる。また、スリット42にはスリット嵌合部62が位置するので、ICタグ50AとRFIDリーダ/ライタ装置との間で、より確実な情報の送受信が可能となる。
【0033】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態においては、上述した第1の実施の形態における構成と共通の構成については、その構成と同じ数字を用いて説明する。また、本実施の形態における特有の構成については、符号の後にアルファベット「A」ではなく「B」を附して説明する。また、上述した第1の実施の形態と共通の構成については、その説明を省略するものとする。
【0034】
図7は、第2の実施の形態に係るICタグ組み込みネジ10Bの構成を示す斜視図である。また、
図8は、ICタグ組み込みネジ10Bの構成を示す斜視図であり、ICタグ組み込みネジ10BからICタグ50Bを取り除いた状態を示している。
【0035】
本実施の形態のICタグ組み込みネジ10Bでは、ネジ部材20Bのネジ部40Bにおける貫通孔41付近の形状が異なっている。具体的には、貫通孔41の両端の開口側には、凹嵌部43Bが設けられている。凹嵌部43Bは、貫通孔41の直径よりも大きな直径を有しており、ネジ部40Bの外周面から所定深さだけ凹むように設けられている。
【0036】
図9は、本実施の形態におけるICタグ50Bの構成を示す斜視図であり、蓋部65が開いた状態を示す図である。また、
図10は、蓋部65が閉じたときのICタグ50Bの構成を示す側面図である。本実施の形態におけるICタグ50Bも、タグ収納体60Bと、ICインレット70とを有している。しかしながら、タグ収納体60Bの構成は、上述した第1の実施の形態におけるタグ収納体60Aとは異なっている。具体的には、タグ収納体60Bには、空洞部63と、フランジ部64と、蓋部65と、ヒンジ部66と、押さえ突起67とが設けられている。
【0037】
孔嵌合部61には、空洞部63が設けられている。空洞部63は、上述したICインレット70を挿入するための空間部分であり、孔嵌合部61に対して所定の大きさで繰り抜いた形状に設けられている。本実施の形態では、空洞部63は、孔嵌合部61の一端側で開口するように設けられているが、孔嵌合部61の他端側では開口していない。すなわち、空洞部63は、有底形状に設けられている。また、空洞部63の開口形状および断面形状は、
図9に示すように矩形状に設けられている。しかしながら、空洞部63は、矩形状以外の形状(たとえば円形状)を採用しても良い。
【0038】
フランジ部64は、外観が円形状の孔嵌合部61よりも大径に設けられている部分であり、上述した凹嵌部43Bに位置する(入り込む)部分である。そのため、フランジ部64は、ICタグ50Bが貫通孔41およびスリット42から抜けるのを防止する抜け止めとしての機能を果たすことができる。ただし、フランジ部64の半径は、孔嵌合部61の中心からスリット嵌合部62の上端面までの距離を超えないように設けられている。それにより、ネジ部40BにICタグ50Bを取り付けた場合でも、フランジ部64が突出しないようにすることができる。
【0039】
また、蓋部65は、ヒンジ部66を介して孔嵌合部61に対して開閉可能に設けられている。蓋部65は、フランジ部64と同等の直径を有している。そのため、蓋部65を閉じた場合には、蓋部65はフランジ部64と同等の機能を果たすことができる。すなわち、ネジ部40BへICタグ50Bを取り付ける場合、孔嵌合部61およびスリット嵌合部62を、貫通孔41およびスリット42に挿入した後に、蓋部65を閉じる。このとき、貫通孔41の他端側の凹嵌部43Bにはフランジ部64が入り込み、貫通孔41の一端側の凹嵌部43Bには蓋部65が位置する。そのため、ICタグ50Bは、孔嵌合部61およびスリット嵌合部62から抜け難い状態となる。
【0040】
また、蓋部65には、押さえ突起67が設けられている。押さえ突起67は、
図10に示すように、蓋部65の裏面側(蓋部65を閉じたときに空洞部63と対向する側の面)に設けられており、蓋部65を閉じたときに空洞部63に入り込む部分である。この押さえ突起67は、空洞部63に収納されているICインレット70に当接し、そのICインレット70を保持する。そのため、ICインレット70は、空洞部63の内部における配置位置がばらつくのが抑えられ、RFIDリーダ/ライタ装置との間での情報の送受信が安定的となる。
【0041】
なお、空洞部63には、ICタグ50Bを配置した後に、接着剤等を充填するようにしても良い。
【0042】
以上のような構成のICタグ組み込みネジ10Bによると、タグ収納体60Bの端部側には孔嵌合部61よりも大径のフランジ部64が設けられている。かかるフランジ部64の存在により、貫通孔41およびスリット42からICタグ50Bが抜けるのが防止される。また、ネジ部40Bのうち貫通孔41の開口部位の周囲には、そのネジ部40Bの外周面から所定深さだけ窪んだ凹嵌部43Bが設けられていて、この凹嵌部43Bには大径のフランジ部64が位置する。このため、フランジ部64がネジ部40Bの外周面側に突出するのを防止できる。それにより、ナット80をネジ部40Bに締結する際に、フランジ部64が支障となるのを防止可能となる。
【0043】
また、本実施の形態では、タグ収納体60Bは、ICタグ50Bを収納する空洞部63を備えていて、その空洞部63の端部側には、開閉可能な蓋部65が設けられている。また、蓋部65は凹嵌部43Bに入り込むと共に、蓋部65の裏面側(ICインレット70の収納後にICインレット70と対向する側)と対向する側には、押さえ突起67が設けられている。そして、この押さえ突起67は、収納後の
ICインレット70に当接する。
【0044】
このような構成を採用する場合、種々のサイズやタイプのICインレット70を空洞部63に収納することができる。また、蓋部65が開閉可能に設けられているので、貫通孔41やスリット42にタグ収納体60Bを挿入する際には蓋部65を開いた状態としておき、貫通孔41やスリット42にタグ収納体60Bを挿入した後に、蓋部65を閉じる状態とすることができる。それにより、タグ収納体60Bは、貫通孔41およびスリット42の両端側から抜けるのが防止可能となる。
【0045】
さらに、蓋部65には、空洞部63に収納されているICインレット70に当接する押さえ突起67が設けられている。このため、空洞部63の内部において、ICインレット70の配置位置がばらつくのを抑えることができる。それにより、RFIDリーダ/ライタ装置との間での情報の送受信が安定化させることができる。
【0046】
(第3の実施の形態)
以下、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態においては、上述した第1の実施の形態における構成と共通の構成については、その構成と同じ数字を用いて説明する。また、本実施の形態における特有の構成については、符号の後にアルファベット「A」ではなく「C」を附して説明する。また、上述した第1の実施の形態と共通の構成については、その説明を省略するものとする。
【0047】
図11は、第3の実施の形態に係るICタグ組み込みネジ10Cの構成を示す斜視図である。
図12は、ネジ部材20Cの構成を示す斜視図であり、ICタグ組み込みネジ10CからICタグ50Aを取り除いた状態を示す斜視図である。
【0048】
本実施の形態におけるICタグ組み込みネジ10Cでは、ネジ部材20Cのネジ部40Cの先端側の形状が上述した第1の実施の形態のネジ部40A、および第2の実施のネジ部40Bとは異なっている。具体的には、ネジ部40Cのうち貫通孔41の両端の開口側には、段差部44Cが設けられている。段差部44Cは、
図12に示すように、頂面40tから下方側に向かい、所定高さだけ平面状に切り落としたような形状に設けられている。そのため、段差部44Cには、上下方向に沿う段差平面44C1が設けられていて、その段差平面44C1は貫通孔41およびスリット42の開口部位の周囲に存在している。
【0049】
なお、本実施の形態では、ネジ部40Cには、ICタグ50Aが取り付け可能である。
図11に示すように、ネジ部40CにICタグ50Aを取り付ける場合には、タグ収納体60Aの端面が貫通孔41の開口から突出させずに、段差平面44C1と面一にすることができる。
【0050】
ただし、ネジ部40Cには、ICタグ50Bを取り付けるようにしても良い。この場合には、ネジ部40Cにナット80を捻じ込む場合に、フランジ部64および蓋部65がその捻じ込みを阻害しない必要がある。
【0051】
以上のような構成のICタグ組み込みネジ10Cによると、ネジ部40Cのうち貫通孔41の開口部位の周囲には、段差部44Cが設けられていて、この段差部44Cは、ネジ部40Cの外周面から径方向の中心側に向かい所定だけ凹むように形成されている。このため、貫通孔41およびスリット42にICタグ50AまたはICタグ50Bを取り付けた場合でも、これらのICタグ50A,50Bの端部がネジ部40Cのネジ溝に差し掛からない状態とすることができる。それにより、ネジ部40Cに対するナット80の締結は、ICタグ50A,50Bの存在によっては阻害されない状態とすることができる。
【0052】
また、段差部44Cは段差平面44C1を有している。このため、フランジ部64や蓋部65を段差平面44C1に面的に接触させることができ、ネジ部40Cに対するICタグ50A,50Bの取り付けを安定化させることができる。
【0053】
(第4の実施の形態)
以下、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態においては、上述した第1の実施の形態における構成と共通の構成については、その構成と同じ数字を用いて説明する。また、本実施の形態における特有の構成については、符号の後にアルファベット「A」ではなく「D」を附して説明する。また、上述した第1の実施の形態と共通の構成については、その説明を省略するものとする。
【0054】
図13は、第4の実施の形態に係るICタグ組み込みネジ10Dの構成を示す斜視図である。また、
図14は、ICタグ組み込みネジ10Dのネジ部材20D構成を示す斜視図であり、ICタグ組み込みネジ10DからICタグ50Bを取り除いた状態を示している。
【0055】
本実施の形態におけるICタグ組み込みネジ10Dでは、ネジ部材20Dのネジ部40Dの先端側の形状が上述した第1の実施の形態のネジ部40A、第2の実施の形態のネジ部40B、および第3の実施の形態のネジ部40Cとは異なっている。具体的には、ネジ部40Dのうち貫通孔41の両端の開口側には、上述した凹嵌部43Bと同様の凹嵌部43Dが設けられ、加えて上述した段差部44Cと同様の段差部44Dが設けられている。
【0056】
また、本実施の形態のネジ部40Dには、ICタグ50Bが取り付けられる。その取り付けにおいては、貫通孔41の他端側の凹嵌部43Dにはフランジ部64が入り込み、貫通孔41の一端側の凹嵌部43Dには蓋部65が位置する。そのため、ICタグ50Bは、孔嵌合部61およびスリット嵌合部62から抜け難い状態となる。しかも、フランジ部64は段差平面44D1と面一とすることができ、また蓋部65も段差平面44D1と面一とすることができる。
【0057】
以上のような構成のICタグ組み込みネジ10Dによると、ネジ部40Dには、凹嵌部43Dに加えて段差部44Dも設けられている。このため、フランジ部64および蓋部65を有するICタグ50Bを容易に取り付けることができる。特に、段差部44Dには段差平面44D1が存在しており、その段差平面44D1にはネジ溝部分が存在していない。このため、凹嵌部43Dにフランジ部64および蓋部65を位置させて、これらフランジ部64と蓋部65の表面が段差平面44D1から突出しない状態とすれば、ネジ部40Dに対するナット80の捻じ込みが阻害されなくなる。
【0058】
(第5の実施の形態)
以下、本発明の第5の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態においては、上述した第1の実施の形態における構成と共通の構成については、その構成と同じ数字を用いて説明する。また、本実施の形態における特有の構成については、符号の後にアルファベット「A」ではなく「E」を附して説明する。また、上述した第1の実施の形態と共通の構成については、その説明を省略するものとする。
【0059】
図15は、第5の実施の形態のICタグ組み込みネジ10Eの構成を示す斜視図である。また、
図16は、本実施の形態のICタグ50Eを示す斜視図であり、蓋部65が開放すると共にICインレット70が空洞部63に配置される前の状態を示している。
【0060】
図16に示すように、本実施の形態では、上述したICタグ50Bの一部を変更したICタグ50Eを用いている。具体的には、ICタグ50Eは、タグ収納体60Eの空洞部63に配置されるICインレット70の向きが、ICタグ50Bとは異なっている。ICタグ50Bにおいては、ICインレット70の法線は貫通孔41の中心線方向と同等となっている。しかしながら、ICタグ50Eにおいては、ICインレット70は、上下方向が法線となるように空洞部63の内部に配置されている。すなわち、ICインレット70は貫通孔41の中心線に対して平行であって、頂面41tの面と平行になる。
【0061】
その場合、電磁波のうち磁界を構成する磁力線Φは、
図6とは異なるものとなるが、その磁力線Φに直交する電流(電界)の向きも異なる状態となる。
【0062】
以上のような構成のICタグ50Eがネジ部材20Eのネジ部40Eに取り付けられる場合、貫通孔41の両端部側または両端の凹嵌部43E(
図15では凹嵌部43Eに配置)には、金属部材90が配置される構成を採用することができる。金属部材90は、貫通孔41やスリット42に嵌合させる部材であっても良い。それにより、耐衝撃性を向上させ、さらにはICタグ50Eがネジ部40Eから脱落するのを防止可能となる。なお、
図15においては、金属部材90はハッチングを付して図示されている。
【0063】
ところで、上述のような金属部材90を配置する場合、上述した第1〜第4の実施の形態におけるICタグ組み込みネジ10A〜10Dと比較して、電磁波の検出距離が短くなってしまう。これは、コイルアンテナ73が発生させる電磁波は、スリット42を通過させる(スリット42から漏れ出る)もののみとなるからである。
【0064】
たとえば、上述した第1〜第4の実施の形態におけるICタグ組み込みネジ10A〜10Dでは、ハンディタイプのRFIDリーダ/ライタ装置を最高出力とした場合には、3〜5cmの検出距離がある。そのため、仮にICタグ組み込みネジ10A〜10Dが狭い範囲内に密集して配置された場合には、隣接するICタグ組み込みネジ10A〜10Dに対して誤って通信する虞がある。
【0065】
そのため、本実施の形態のICタグ組み込みネジ10Eのように、ICインレット70の配置を変更したICタグ50Eを用い、さらに両端部に金属部材90を配置した場合、電磁波は、スリット42を通過するものが若干存在するだけとなる。たとえば、ハンディタイプのRFIDリーダ/ライタ装置を最高出力とした場合には、せいぜい5mm程度の検出距離となってしまう。したがって、本実施の形態では、隣接するICタグ組み込みネジ10Eの間で、誤った通信がなされてしまうのを防止可能となる。
【0066】
(第6の実施の形態)
以下、本発明の第6の実施の形態について説明する。本実施の形態では、上述した第1〜第5の実施の形態におけるICタグ組み込みネジ10A〜10Eとの間で、無線通信を行うことが可能な打音検査装置100に関するものである。
図17は、打音検査装置100の概略を示す図である。この打音検査装置100は、打検部110と、検出部120と、リーダ・ライタ装置本体部130とを有している。
【0067】
打検部110は、金属ロッドを所定の形状に加工したものであり、打音検査の際に、対象物に打ち付ける部分である。かかる打ち付けの際に生じる音に基づいて、ネジの緩み等を検知することができる。
【0068】
また、打音検査装置100のいずれかの部位には、検出部120が設けられている。検出部120は、
図17に示すように、ICタグ組み込みネジ10A〜10Eと通信を行う場合の検出部分として機能する部分である。そのため、検出部120は、コイルアンテナを備えている。また、リーダ・ライタ装置本体部130は、検出部120に対して伝送路を介して接続されていて、検出部120で検出された情報(信号)を受け取って処理を加えたり、検出部120から送出させるための情報(信号)を検出部120に向けて送信する部分である。また、リーダ・ライタ装置本体部130は、情報を記憶するメモリ部分や、情報の演算処理をするプロセッサ部分を有している。さらに、リーダ・ライタ装置本体部130は、外部装置との間で、通信を行うための通信部を有することが好ましい。
【0069】
以上のような構成を有する打音検査装置100では、ICタグ組み込みネジ10A〜10Eに対して、増し締め等の定期的なメンテナンスを行う際に、ICタグ50A,50B,50Eとの間で通信を行うことが可能となる。そのため、メンテナンスを行った日時をICチップ72に書き込んだり、ICチップ72から必要とされる締付トルク等の情報を読み取ったりすることが可能となる。そのため、誤ってあるICタグ組み込みネジ10A〜10Eは2度増し締めしたが、別のICタグ組み込みネジ10A〜10Eは増し締めを忘れた等のメンテナンス漏れが生じるのを防止可能となる。また、メンテナンスの管理も容易となる。
【0070】
<変形例>
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0071】
上述の実施の形態においては、RFID通信にて用いられるUHF帯の周波数として920MHzが挙げられている。しかしながら、RFID通信にて用いられるUHF帯の周波数としては、たとえば860MHzから960MHzの帯域であれば、どのような周波数であっても良い。また、RFID通信にて用いられる周波数としては、UHF帯の周波数には限られず、2.45GHzを中心とする周波数であっても良く、433MHzを中心とする周波数であっても良く、その他の周波数であっても良い。