特許第6390434号(P6390434)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立化成株式会社の特許一覧

特許6390434電子部品埋め込み用樹脂フィルムの製造方法、電子部品装置の製造方法
<>
  • 特許6390434-電子部品埋め込み用樹脂フィルムの製造方法、電子部品装置の製造方法 図000002
  • 特許6390434-電子部品埋め込み用樹脂フィルムの製造方法、電子部品装置の製造方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6390434
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】電子部品埋め込み用樹脂フィルムの製造方法、電子部品装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20180910BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20180910BHJP
   B32B 27/08 20060101ALI20180910BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   H01L23/30
   B32B27/08
   H01L21/56 R
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-4205(P2015-4205)
(22)【出願日】2015年1月13日
(65)【公開番号】特開2016-131185(P2016-131185A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2017年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】野村 豊
(72)【発明者】
【氏名】渡瀬 裕介
(72)【発明者】
【氏名】荻原 弘邦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】藤本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】金子 知世
【審査官】 木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−244211(JP,A)
【文献】 特開2006−73683(JP,A)
【文献】 特開平4−340258(JP,A)
【文献】 特開2009−144010(JP,A)
【文献】 特開昭58−87051(JP,A)
【文献】 特開昭60−110068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/28−23/31
H01L 21/56
B32B 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の支持体及び該支持体の一方の面側に設けられた熱硬化性樹脂組成物層を有する積層体を、前記熱硬化性樹脂組成物層を内側にして折りたたみ、対向する2枚の前記支持体とそれらの間で貼り合わせられた2層の前記熱硬化性樹脂組成物層により形成された埋め込み用樹脂層とを有する両面被覆部を形成する工程を備え、
前記熱硬化性樹脂組成物層が、未硬化である又は部分的に硬化している層である、電子部品埋め込み用樹脂フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂組成物層の温度を25℃以上140℃以下としながら前記積層体を折りたたむ、請求項1に記載の電子部品埋め込み用樹脂フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂組成物層が、エポキシ樹脂及び硬化剤を含有する、請求項1又は2に記載の電子部品埋め込み用樹脂フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂及び前記硬化剤のうち少なくとも一方が、25℃で液状である化合物を含み、
前記25℃で液状である化合物の合計の含有率が、前記熱硬化性樹脂組成物層中の前記エポキシ樹脂及び前記硬化剤の総質量を基準として30質量%以上80質量%以下であり、
前記熱硬化性樹脂組成物層が有機溶剤を更に含有し、
揮発成分の含有率が、前記熱硬化性樹脂組成物層の総質量を基準として0.2質量%以上1.5質量%以下であり、
前記熱硬化性樹脂組成物層の温度を25℃から200℃まで昇温しながら前記熱硬化性樹脂組成物層の溶融粘度を測定したときの最低溶融粘度が1600MPa・s以下である、請求項3に記載の電子部品埋め込み用樹脂フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂組成物層の厚みが10μm以上500μm以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子部品埋め込み用樹脂フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記支持体がポリエチレンテレフタレートフィルムである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子部品埋め込み用樹脂フィルムの製造方法。
【請求項7】
折りたたまれた前記積層体の折り目側の端部を除去する工程を更に備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電子部品埋め込み用樹脂フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子部品埋め込み用樹脂フィルムの製造方法により製造された電子部品埋め込み用樹脂フィルムの支持体を剥がして露出した埋め込み用樹脂層の面を被埋め込み部材と対向するように配置し、前記埋め込み用樹脂層を加熱溶融させて、前記埋め込み用樹脂層によって前記被埋め込み部材を埋め込む工程と、
前記被埋め込み部材を埋め込んでいる前記埋め込み用樹脂層を加熱により硬化して、前記埋め込み用樹脂層の硬化物を前記被埋め込み部材を封止する封止部材として形成させる工程と、を備える電子部品装置の製造方法。
【請求項9】
前記被埋め込み部材が半導体素子であり、前記電子部品装置が半導体装置である、請求項8に記載の電子部品装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品埋め込み用樹脂フィルムの製造方法、電子部品装置の製造方法に関する。本発明は、より詳細には、半導体素子の封止、プリント配線板に配置された電子部品の埋め込み等を可能とする電子部品埋め込み用樹脂フィルムの製造方法並びにそれを用いた電子部品装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年増加しているスマートフォン及びタブレットPC等の携帯電子機器は、軽薄短小化及び低価格化が著しい。このような携帯電子機器で使用される半導体装置及び電子部品装置には、小型薄型化とともに低コスト化が求められている。
【0003】
半導体装置の小型薄型化及び低コスト化を実現するために、新たな実装方法が多々提案されている。例えば、半導体ウエハで作製した半導体素子を個片化し、適度な間隔を有するように再配置した後、コンプレッションモールド装置を用いて半導体素子を封止樹脂で封止し、半導体素子の外側となる封止部分にも外部接続用の端子を設ける実装方法及びこの実装方法により作製される半導体装置の開発が進められている。この実装方法ではパッケージ基板を必要としないことから半導体装置の薄型化が可能であり、半導体素子を再配置する数を増やし、一度に封止することで低コスト化も可能である(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0004】
電子機器で使用される半導体素子の封止は、液状又は固形の樹脂封止材を用いてモールド成形により行われるが、上述のような実装方法では少量の樹脂封止材を均一かつ大面積に供給する必要がある。液状の樹脂封止材は粘性が高く、少量の樹脂封止材を均一かつ大面積に迅速に供給することが難しい。また、粉末状又は顆粒状の固形の樹脂封止材は、前述の課題に加えて樹脂封止材から生じる発塵による装置の汚染等が生じる場合がある。
【0005】
そこで、フィルム状の絶縁材料が樹脂封止材として新たに用いられ始めている。フィルム状の樹脂封止材は、フィルム厚みを調整することで少量の樹脂封止材を均一かつ大面積に供給することが可能であり、予めフィルム状の樹脂封止材を所望の寸法に裁断しておくことで迅速な供給も可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3616615号明細書
【特許文献2】特開2001−244372号公報
【特許文献3】特開2001−127095号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/205513号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体素子等の埋め込みが可能な熱硬化性樹脂組成物からなるフィルム状の絶縁材料は、ビルドアップ多層プリント配線板のセミアディティブ工法等で使用される材料として知られている。熱硬化性樹脂組成物は、樹脂成分及びフィラー等を溶剤に溶解又は分散させたワニスを作製し、このワニスをフィルム状の支持体に塗布した後、乾燥させて溶剤を除くことでフィルム化される。フィルム化された熱硬化性樹脂組成物は、硬化反応が進んでいない又は一部が硬化しているBステージの状態である。そのため、タックが生じたり、タックがない場合でも他の材料と長時間接触した場合に貼り付いたりしてしまう。そこで、通常は、フィルム化された熱硬化性樹脂組成物の表面に、その表面の保護を目的とした保護フィルムを貼り合わせて、フィルム状の絶縁材料の取り扱い性を確保している。
【0008】
フィルム化された熱硬化性樹脂組成物の表面に保護フィルムを常温で貼り合わせた場合、十分な貼り付き性が得られず、フィルムの裁断時等に剥がれてしまう場合がある。そのため、フィルム化された熱硬化性樹脂組成物を加熱し、軟化させてから保護フィルムの貼り合わせを行う。フィルム状の支持体としては、熱硬化性樹脂組成物の溶剤乾燥時の熱による伸びを防ぐ為に比較的伸び難いフィルムが用いられる。一方、保護フィルムとしては、フィルム化された熱硬化性樹脂組成物と貼り合わせる際のしわ等の発生を防ぐ為に、支持体よりも伸び易く柔らかい材質のフィルムが選ばれる。
【0009】
しかしながら、フィルム状の支持体と保護フィルムの材質が異なる場合、貼り合わせる際に両者の加熱時の伸びの違いによってフィルム状の絶縁材料がカールしてしまい、取り扱い性が悪化する場合がある。また、加熱によるカールを抑制しようと、保護フィルムにフィルム状の支持体と同じ材質のものを使用したとしても、保護フィルムが伸び難いために、貼り合わせ時にフィルム状の絶縁材料にしわが発生してしまう場合がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、カール及びしわの発生が抑制され、取り扱い性に優れる電子部品埋め込み用樹脂フィルムを製造可能な方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、フィルム状の支持体及び該支持体の一方の面側に設けられた熱硬化性樹脂組成物層を有する積層体を、熱硬化性樹脂組成物層を内側にして折りたたみ、対向する2枚の支持体とそれらの間で貼り合わせられた2層の熱硬化性樹脂組成物層により形成された埋め込み用樹脂層とを有する両面被覆部を形成する工程を備え、熱硬化性樹脂組成物層が、未硬化である又は部分的に硬化している層である、電子部品埋め込み用樹脂フィルムの製造方法を提供する。
【0012】
本発明の製造方法は、熱硬化性樹脂組成物層が同一素材の2枚のフィルム状の支持体間に挟まれているため、加熱した場合でもフィルム状の支持体と保護フィルムとの熱収縮量の違いに起因したカールの発生が抑制される。また、予めフィルム状の支持体上に熱硬化性樹脂組成物層が形成されているため、新たに保護フィルムを貼り合わせる必要がなく、しわの発生が抑制される。更に、熱硬化性樹脂組成物層が、未硬化である又は部分的に硬化している層であることで、積層体を折りたたんだ際に、2層の熱硬化性樹脂組成物層同士を熱硬化性樹脂組成物層のタックを利用して貼り付けることができる。また、対向する2枚の支持体とそれらの間で貼り合わせられた2層の熱硬化性樹脂組成物層により形成された埋め込み用樹脂層には、2層の熱硬化性樹脂組成物層が貼り合わせられた際に生じる界面が含まれなくてもよい。
【0013】
上記電子部品埋め込み用樹脂フィルムの製造方法では、熱硬化性樹脂組成物層の温度を25℃以上140℃以下としながら積層体を折りたたんでもよい。これにより、タックが少なく、融着し難い熱硬化性樹脂組成物層同士でもより容易に貼り合わせることができる。
【0014】
上記熱硬化性樹脂組成物層は、エポキシ樹脂及び硬化剤を含有していてもよい。これにより、熱硬化性樹脂組成物層のタックを利用して熱硬化性樹脂組成物層同士を貼り付け易くなるとともに、長時間の接触により融着し易くなる。
【0015】
上記エポキシ樹脂及び上記硬化剤のうち少なくとも一方は、25℃で液状である化合物を含んでいてもよい。25℃で液状である化合物の合計の含有率は、熱硬化性樹脂組成物層中のエポキシ樹脂及び硬化剤の総質量を基準として30質量%以上80質量%以下であってもよい。上記熱硬化性樹脂組成物層は有機溶剤を更に含有していてもよい。また、熱硬化性樹脂組成物層の揮発成分(主に有機溶剤)の含有率は、熱硬化性樹脂組成物層の総質量を基準として0.2質量%以上1.5質量%以下であってもよい。上記電子部品埋め込み用樹脂フィルムの製造方法は、熱硬化性樹脂組成物層の温度を25℃から200℃まで昇温しながら熱硬化性樹脂組成物層の溶融粘度を測定したときの最低溶融粘度が1600MPa・s以下であってもよい。上記構成により、製造される電子部品埋め込み用樹脂フィルムの埋め込み性を向上することができる。
【0016】
上記熱硬化性樹脂組成物層の厚みは10μm以上500μm以下であってもよい。これにより、積層体を折りたたんだ際に、2層の熱硬化性樹脂組成物層同士が貼り付き易くなるとともに、支持体から熱硬化性樹脂組成物層が過度にはみ出すことを抑制することができる。
【0017】
上記支持体はポリエチレンテレフタレートフィルムであってもよい。これにより、熱硬化性樹脂組成物層の溶剤乾燥時に、熱による支持体の伸びを抑制することができる。
【0018】
上記電子部品埋め込み用樹脂フィルムの製造方法は、折りたたまれた積層体の折り目側の端部を除去する工程を更に備えていてもよい。これにより、製造される電子部品埋め込み用樹脂フィルムの取扱い性を向上することができる。
【0019】
本発明はまた、上記電子部品埋め込み用樹脂フィルムの製造方法により製造された電子部品埋め込み用樹脂フィルムの支持体を剥がして露出した埋め込み用樹脂層の面を被埋め込み部材と対向するように配置し、埋め込み用樹脂層を加熱溶融させて、埋め込み用樹脂層によって被埋め込み部材を埋め込む工程と、被埋め込み部材を埋め込んでいる埋め込み用樹脂層を加熱により硬化して、埋め込み用樹脂層の硬化物を被埋め込み部材を封止する封止部材として形成させる工程と、を備える電子部品装置の製造方法を提供する。
【0020】
上記被埋め込み部材は半導体素子であってもよい。上記電子部品装置は半導体装置であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、カール及びしわの発生が抑制され、取り扱い性に優れる電子部品埋め込み用樹脂フィルムを製造可能な電子部品埋め込み用樹脂フィルムの製造方法並びにそれを用いた電子部品装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】電子部品埋め込み用樹脂フィルムの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
図2】積層体を折りたたむ方法の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0024】
図1は、本実施形態に係る電子部品埋め込み用樹脂フィルムの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【0025】
まず、図1の(a)に示されるように、フィルム状の支持体2及び該支持体2の一方の面側に設けられた熱硬化性樹脂組成物層4を有する積層体6を用意する。熱硬化性樹脂組成物層4は、未硬化である又は部分的に硬化している熱硬化性樹脂組成物の層である。
【0026】
ここで、「未硬化である又は部分的に硬化している」とは、熱硬化性樹脂組成物層中の熱硬化性樹脂組成物の硬化反応が、実質的に進行していない、又は部分的にのみ進行している状態をいう。熱硬化性樹脂組成物層が未硬化又は部分的に硬化していることは、例えば、示差走査熱量測定(DSC)で硬化に伴う発熱が観測されることにより、確認することができる。「部分的に硬化している」とは、Bステージの状態であるともいえる。未硬化である又は部分的に硬化している状態の熱硬化性樹脂組成物層は、熱硬化性樹脂組成物層の温度を25℃以上140℃以下とした場合に熱硬化性樹脂組成物層同士を貼り合わせることが可能なタックを有する状態であってもよい。
【0027】
より具体的には、熱硬化性樹脂組成物層4の硬化率が30%以下であってもよい。硬化率を30%以下とすることで、積層体を折りたたんだ際に、熱硬化性樹脂組成物層のタックを利用して2層の熱硬化性樹脂組成物層同士を貼り付け易くなるとともに、長時間の接触により融着し易くなる。
【0028】
熱硬化性樹脂組成物層4の硬化率は、示差走査熱量測定(DSC)で測定される硬化反応に伴う発熱量に基づいて算出できる。まず、フィルム状の支持体上に塗布されたワニス状の熱硬化性樹脂組成物から、25℃で真空乾燥機を用いて乾燥することで溶剤を除去し、残存する溶剤の割合が熱硬化性樹脂組成物層の総質量を基準として1質量%以下である熱硬化性樹脂組成物層を作製し、その硬化反応に伴う発熱面積をDSCで求め、これを基準値とする。次いで、硬化率を算出する試料の熱硬化性樹脂組成物層について、同様にDSCで発熱面積を求め、基準値に対する試料の発熱面積の割合を熱硬化性樹脂組成物層の硬化率として求めることができる。
【0029】
熱硬化性樹脂組成物層4の温度を25℃から200℃まで昇温しながら熱硬化性樹脂組成物層4の溶融粘度を測定したときの最低溶融粘度は1600MPa・s以下であってもよい。埋め込み性等の観点から、この最低溶融粘度は、1000MPa・s以下であってもよい。また、最低溶融粘度は、50MPa・s以上であってもよい。
【0030】
熱硬化性樹脂組成物層4の厚みは、10μm以上500μm以下が好ましい。熱硬化性樹脂組成物層4の厚みが上記範囲内であると、積層体を折りたたんだ際に、2層の熱硬化性樹脂組成物層同士が貼り付き易くなるとともに、支持体から熱硬化性樹脂組成物層が過度にはみ出し難くなる傾向がある。
【0031】
支持体2としては、例えば、高分子フィルムを用いることができる。高分子フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、アセチルセルロースフィルム、テトラフルオロエチレンフィルム及びポリイミドフィルムなどが挙げられる。
【0032】
支持体2には、離型処理を行ってもよい。離型処理は、例えば、離型剤を支持体2の表面に塗布し、乾燥して行うことができる。離型剤としては、例えば、シロキサン系、フッ素系及びオレフィン系を使用することができる。
【0033】
支持体2の厚みは特に制限されないが、作業性及び乾燥性の観点から、2μm以上、200μm以下が好ましい。厚みが2μm以上であると、塗工時に切れたり、ワニスの重さでたわんだりし難くなる。また、厚みが200μm以下であると、主に、塗工面及び裏面の両面から熱風を吹きつけて乾燥する乾燥機を用いる場合でも、ワニス中の溶剤乾燥が妨げられ難くなる。
【0034】
熱硬化性樹脂組成物層4は、例えば、支持体2上にワニス状の熱硬化性樹脂組成物を塗布した後、熱風吹き付け等により加熱乾燥させることによって形成することができる。熱硬化性樹脂組成物の塗布は、ダイコーター、コンマコーター等のコーティング方法で行うことができる。ワニス状の熱硬化性樹脂組成物は、例えば、後述する(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)無機充填剤、(E)有機溶剤等を混合することで作製することができる。混合方法は特に制限されないが、ミル、ミキサー、撹拌羽等を用いて混合することができる。熱硬化性樹脂組成物の塗布及び乾燥は、例えば、ロール状に巻かれた支持体2を用い、ロールを回転させながら引き出された支持体2上において、連続的に行ってもよい。
【0035】
続いて、図1の(a)及び(b)に示されるように、支持体2及び該支持体2の一方の面側に設けられた熱硬化性樹脂組成物層4を有する積層体6を、熱硬化性樹脂組成物層4を内側にして折りたたみ、対向する2枚の支持体2とそれらの間で貼り合わせられた2層の熱硬化性樹脂組成物層4により形成された埋め込み用樹脂層8とを有する両面被覆部10を形成する。
【0036】
積層体6を折りたたむ際の圧力は特に制限されず、常圧(例えば、0.1MPa)で行うことができる。また、圧力を加える場合には、0.3MPa〜0.8MPaが好ましい。
【0037】
積層体6は、熱硬化性樹脂組成物層4の温度を25℃以上140℃以下としながら折りたたまれてもよい。これにより、タックが少なく、融着し難い熱硬化性樹脂組成物層同士でも容易に貼り合わせることができる。同様の観点から、この温度は60℃以上120℃以下であってもよい。
【0038】
図2は、積層体を折りたたむ方法の一例を示す概略図である。図2に示されるロールラミネーター20は、上流側から下流側にかけて並べられた複数のガイドロール20a、20c、20e及び20gと、これら複数のガイドロールのそれぞれと対向するように上流側から下流側にかけて並べられた別の複数のガイドロール20b、20d、20f及び20hを有する。各ガイドロールは、上流側から下流側にかけて、対向して配置されたガイドロール(例えば、ガイドロール20a,20b)同士の間隔が狭くなっていくとともに、対向して配置されたガイドロールのロール軸のなす角度が小さくなっていき、最も下流側で対向して配置された一対のガイドロール20g,20hのロール軸がほぼ平行になるように、配置されている。例えば、最も上流側で対向して配置された一対のガイドロール20a,20bのロール軸がなす角度は120°であり、その下流側で対向して配置された一対のガイドロール20c,20dのロール軸がなす角度は90°であり、さらにその下流側で対向して配置された一対のガイドロール20e,20fのロール軸がなす角度は30°であり、最も下流側の一対のガイドロール20g,20hのロール軸は平行になっている。拡げられた状態の積層体6を、ロールラミネーター20の上流側から下流側へ各ガイドロールに沿わせながら搬送することで、積層体6は熱硬化性樹脂組成物層4を内側にして連続的に徐々に折りたたまれる。積層体6がガイドロール20g及び20hの間を通過するときに、熱硬化性樹脂組成物層4同士が貼り合わされて、両面被覆部10を有する樹脂フィルム12(図1の(b))が形成される。
【0039】
ガイドロールの数、ガイドロールがなす角度、ロール軸の角度等は、積層体6が適切に折りたたまれるように適宜変更することができる。各ガイドロール(特にガイドロール20g及び/又は20h)の温度を設定することで、熱硬化性樹脂組成物層4を所望の温度(例えば、25℃以上140℃以下)としながら熱硬化性樹脂組成物層4同士を貼り合わせることができる。ガイドロール20g及び20hにより積層体6に圧力を加えてもよい。積層体6が折りたたまれた後、長時間の接触により、熱硬化性樹脂組成物層4同士を融着させることもできる。
【0040】
樹脂フィルム12は、折り目14を有する。折り目14は、支持体2が樹脂フィルム12の一方の主面から他方の主面にかけて折り返されている部分の樹脂フィルム12の端である。本実施形態の樹脂フィルムでは、一辺のみが折り目となっているが、2辺以上の折り目が形成されていてもよい。
【0041】
図1の実施形態では、折り目14と反対側の端部において、対向する支持体2及び熱硬化性樹脂組成物層4の端面の位置が揃うように、積層体6が折りたたまれる。対向する支持体2及び熱硬化性樹脂組成物層4の端面の位置がずれるように積層体6を折りたたんで、両面被覆部10の他に、熱硬化性樹脂組成物層4の支持体2とは反対側の面の一部が露出している部分を有する樹脂フィルムを形成してもよい。例えば、樹脂フィルム12全体の主面に対する、両面被覆部10の主面の割合は、面積比で90%以上であってもよい。
【0042】
続いて、図1の(b)及び(c)に示されるように、樹脂フィルム12の折り目14側の端部16を除去することで、電子部品埋め込み用樹脂フィルム18を得ることができる。端部16は、例えば、樹脂フィルム12を切断面S1に沿ってスリッター等により切断することで除去することができる。端部16は必ずしも除去する必要はなく、樹脂フィルム12をそのまま電子部品埋め込み用樹脂フィルムとして用いることもできる。
【0043】
対向する支持体2及び熱硬化性樹脂組成物層4の端面の位置がずれるように積層体6を折りたたんで、両面被覆部10の他に、熱硬化性樹脂組成物層4の支持体2とは反対側の面の一部が露出している部分を有する樹脂フィルムの場合、反対側の面の一部が露出している部分をスリッター等により切断することで除去してもよい。
【0044】
熱硬化性樹脂組成物層4は、(A)エポキシ樹脂を含有していてもよい。エポキシ樹脂としては、2個以上のグリシジル基を有するものであれば特に制限されない。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールBP型エポキシ樹脂、ビスフェノールC型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールG型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールPH型エポキシ樹脂、ビスフェノールTMC型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂、ヘキサンジオールビスフェノールSジグリシジルエーテル等のビスフェノールS型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビキシレノールジグリシジルエーテル等のビキシレノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールAグリシジルエーテル等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、並びに、これらの二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂及びこれらの脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
また、(A)エポキシ樹脂としては市販品を用いてもよい。市販のエポキシ樹脂としては、DIC株式会社製EXA4700(4官能ナフタレン型エポキシ樹脂)、日本化薬株式会社製NC−7000(ナフタレン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のナフタレン型エポキシ樹脂;日本化薬株式会社EPPN−502H(トリスフェノールエポキシ樹脂)等のフェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物(トリスフェノール型エポキシ樹脂);DIC株式会社製エピクロンHP−7200H(ジシクロペンタジエン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のジシクロペンタジエンアラルキル型エポキシ樹脂;日本化薬株式会社製NC−3000H(ビフェニル骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;DIC株式会社製エピクロンN660、エピクロンN690、日本化薬株式会社製EOCN−104S等のノボラック型エポキシ樹脂;日産化学工業株式会社製TEPIC等のトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、DIC株式会社製エピクロン860、エピクロン900−IM、エピクロンEXA―4816、エピクロンEXA−4822、旭チバ株式会社製アラルダイトAER280、東都化成株式会社製エポトートYD−134、三菱化学株式会社製JER834、JER872、住友化学株式会社製ELA−134、三菱化学株式会社製エピコート807、815、825、827、828、834、1001、1004、1007、1009、ダウケミカル社製DER−330、301、361、東都化成株式会社製YD8125、YDF8170等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱化学株式会社製JER806等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;DIC株式会社製エピクロンHP−4032等のナフタレン型エポキシ樹脂;DIC株式会社製エピクロンHP−4032等のナフタレン型エポキシ樹脂;DIC株式会社製エピクロンN−740等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナガセケムテックス株式会社製ナデコールDLC301等の脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0046】
熱硬化性樹脂組成物層4は、(B)硬化剤を含有していてもよい。硬化剤としては、(A)エポキシ樹脂と反応して、エポキシ樹脂ととともに架橋構造体を形成する化合物であれば特に制限されないが、例えば、フェノール樹脂、酸無水物、イミダゾール化合物、脂肪族アミン及び脂環族アミン等が挙げられる。硬化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
フェノール樹脂としては、2個以上のフェノール性水酸基を有するものであれば特に制限されず、公知のフェノール樹脂を用いることができる。フェノール樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるフェノール樹脂、ビフェニル骨格型フェノール樹脂、パラキシリレン変性フェノール樹脂、メタキシリレン・パラキシリレン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂及びキシリレン変性ナフトール樹脂などが挙げられる。
【0048】
フェノール樹脂としては、市販品を用いてもよい。市販のフェノール樹脂としては、DIC株式会社製フェノライトLF2882、フェノライトLF2822、フェノライトTD−2090、フェノライトTD−2149、フェノライトVH−4150、フェノライトVH4170;三井化学株式会社製XLC−LL、XLC−4L;新日鉄住金化学株式会社製SN−100、SN−300、SN−400;エア・ウォーター株式会社製SKレジンHE910等が挙げられる。
【0049】
(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤のうち少なくとも一方は、25℃で液状である化合物を含むことが好ましい。ここで、「25℃で液状である化合物」とは、25℃に保持された当該化合物の粘度をE型粘度計又はB型粘度計を用いて測定した値が400Pa・s以下である化合物を示す。
【0050】
25℃で液状であるエポキシ樹脂は、2個以上のグリシジル基を有するものであれば特に制限されないが、ビスフェノール骨格を含むものが好ましい。25℃で液状であるエポキシ樹脂としては、特に、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG又はビスフェノールZ骨格を含むものがより好ましい。25℃で液状であるエポキシ樹脂は、低分子量である場合が多く、耐熱性の観点では不利となる場合がある。上記エポキシ樹脂は熱安定性に優れるビスフェノール骨格を含むことから、耐熱性が期待できる。
【0051】
25℃で液状である硬化剤としては、グリシジル基と反応する官能基を2個以上有するものであれば特に制限されない。
【0052】
25℃で液状であるフェノール樹脂は、ビスフェノール骨格を含むものが好ましい。25℃で液状であるフェノール樹脂は、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS等のビスフェノール類、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のジヒドロキシフェニルエーテル類、並びに、これらのフェノール骨格の芳香環に直鎖アルキル基、分岐アルキル基、アリール基、ヒドロキシアルキル基、アリル基、環状脂肪族基等を導入したもの、及び、これらのビスフェノール骨格の中央にある炭素原子に直鎖アルキル基、分岐アルキル基、アリル基、置換基のついたアリル基、環状脂肪族基、アルコキシカルボニル基等を導入した多環二官能フェノール類などが挙げられる。
【0053】
25℃で液状である化合物の合計の含有率は、埋め込み性等の観点から、熱硬化性樹脂組成物層中の(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤の総質量を基準として、30質量%以上80質量%以下であってもよく、40質量%以上70質量%以下であってもよく、45質量%以上60質量%以下であってもよい。
【0054】
熱硬化性樹脂組成物層4中、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との配合量の比率は、(A)エポキシ樹脂のグリシジル基の当量と、(B)硬化剤のグリシジル基と反応する官能基の当量との比率(エポキシ樹脂のグリシジル基の当量/硬化剤のグリシジル基と反応する官能基の当量)にて、0.7〜2.0でであってもよく、0.8〜1.8であってもよく、0.9〜1.7であってもよい。比率が0.7〜2.0であると、未反応の(A)エポキシ樹脂及び/又は(B)硬化剤が残存し難くなり、所望の硬化膜物性が得られ易くなる。
【0055】
熱硬化性樹脂組成物層4は、(C)硬化促進剤を更に含有していてもよい。硬化促進剤としては、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との反応を促進するものであれば特に制限されないが、アミン系及びリン系であってもよい。また、誘導体が豊富であり、所望の活性温度が得られ易い点から、硬化促進剤はイミダゾール類であってもよい。
【0056】
熱硬化性樹脂組成物層4中の(C)硬化促進剤の配合量は、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤の総質量を基準として、0.01質量%以上、5質量%以下であってもよく、0.1質量%以上、3質量%以下であってもよく、0.3質量%以上、1.5質量%以下であってもよい。配合量が0.01質量%以上であると、十分な硬化促進効果が得られ易くなる。また、配合量が5質量%以下であると、塗工時の乾燥工程、又は保管中に熱硬化性樹脂組成物層の硬化反応が進行し難く、熱硬化性樹脂組成物層の割れ及び溶融粘度の上昇に伴う成形不良が生じ難くなる。
【0057】
熱硬化性樹脂組成物層4は、(D)無機充填剤を更に含有していてもよい。無機充填剤としては、特に制限されず、従来公知の無機充填剤が使用できる。無機充填剤としては、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素及び窒化アルミニウムが挙げられる。中でも、表面改質等により樹脂中への分散性の向上及びワニス中での沈降を抑制し易い点、並びに、比較的小さい熱膨張率を有して所望の硬化膜特性が得られ易いこと点から、シリカであってもよい。無機充填剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
無機充填剤には、表面改質を行ってもよい。表面改質の手法は特に制限されないが、簡便であり、官能基の種類が豊富であり、所望の特性を付与し易いことから、シランカップリング剤を用いることが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、アルキルシラン、アルコキシシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、アミノシラン、アクリルシラン、メタクリルシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン、サルファーシラン、スチリルシラン及びアルキルクロロシラン等が挙げられる。
【0059】
シランカップリング剤の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−ドデシルメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリフェニルシラノール、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、n−オクチルジメチルクロロシラン、テトラエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノシラン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
熱硬化性樹脂組成物層4中の無機充填剤の配合量は、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤の総質量を基準として、30質量%以上、95質量%以下であってもよく、50質量%以上、90質量%以下であってもよい。配合量が30質量%以上であると、半導体素子、電子部品等の被埋め込み部材としての被封止体との熱膨張率の差に起因する半導体装置又は電子部品装置の反りが大きくなり難い。また、配合量が95質量%以下であると、塗工時の乾燥工程にて熱硬化性樹脂組成物層が割れ難くなるとともに、支持体2上に形成された熱硬化性樹組成物脂層の溶融粘度の上昇が抑制され、被封止体を充分に封止できなくなる不具合が生じ難くなる。
【0061】
無機充填剤の平均粒子径は、0.01μm以上、50μm以下であってもよく、0.1μm以上、25μm以下であってもよく、0.3μm以上、10μm以下であってもよい。平均粒子径が0.01μm以上であると、無機充填剤が凝集し難くなり、熱硬化性樹脂組成物層中での無機充填剤の分散が容易となる。また、平均粒子径が50μm以下であると、ワニス中で沈降し難くなり、均質な熱硬化性樹脂組成物層を作製し易くなる。
【0062】
熱硬化性樹脂組成物層4は、(E)有機溶剤を更に含有していてもよい。熱硬化性樹脂組成物層4に含まれる有機溶剤は、ワニス状の熱硬化性樹脂組成物に含まれ、熱硬化性樹脂組成物を乾燥した後に残留したものであることが多い。有機溶剤としては、特に制限されず、従来公知の有機溶剤を使用することができる。有機溶剤は、無機充填剤以外の成分を溶解できるものが好ましく、例えば、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、テルペン類、ハロゲン類、エステル類、ケトン類、アルコール類及びアルデヒド類が挙げられる。有機溶剤は、熱硬化性樹脂組成物を溶解しワニス状とする、又はワニス状とすることを補助する。このワニス状の熱硬化性樹脂組成物は、塗工の乾燥工程で有機溶剤が除去されることで熱硬化性樹脂組成物層となる。
【0063】
支持体2上に形成された熱硬化性樹脂組成物層4の揮発成分(主に有機溶剤)の含有率は、熱硬化性樹脂組成物層4の総質量を基準として、0.2質量%以上1.5質量%以下であってもよく、0.3質量%以上1.0質量%以下であってもよい。揮発成分の含有率が0.2質量%以上であると、熱硬化性樹脂組成物層が脆くなり難く、フィルム割れ等の不具合が生じ難くなるとともに、最低溶融粘度が高くなり難く、埋め込み性が低下し難くなる。また、揮発成分の含有率が1.5質量%以下であると、熱硬化性樹脂組成物層の粘着性が強くなりすぎず、取扱い性が向上するとともに、熱硬化時に揮発成分(主に有機溶剤)の揮発に伴う発泡等の不具合が生じ難くなる。
【0064】
有機溶剤としては、環境負荷が小さく、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を溶解し易い点から、エステル類、ケトン類及びアルコール類であってもよい。中でも、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を特に溶解し易い点から、ケトン類であってもよい。ケトン類としては、室温での揮発が少なく、乾燥時に除去し易い点から、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンであってもよい。
【0065】
熱硬化性樹脂組成物層4は、応力緩和剤として、エラストマー成分を更に含有していてもよい。エラストマー成分としては、例えば、スチレンブタジエン粒子、シリコーンパウダ、シリコーンオイル及びシリコーンオリゴマーが挙げられる。
【0066】
熱硬化性樹脂組成物層4は、本発明の効果を損なわない範囲内で他の添加剤を更に含有していてもよい。添加剤の具体例としては、顔料、染料、離型剤、酸化防止剤、表面張力調整剤等を挙げることができる。
【0067】
本実施形態に係る電子部品装置は、例えば、以下の製造方法により製造することができる。まず、上記実施形態に係る電子部品埋め込み用樹脂フィルム18の支持体2を剥がし、露出した埋め込み用樹脂層8の面を被埋め込み部材と対向するように配置する。次いで、埋め込み用樹脂層8を加熱溶融させて、埋め込み用樹脂層8によって被埋め込み部材を埋め込む。そして、被埋め込み部材を埋め込んでいる埋め込み用樹脂層8を加熱により硬化して、埋め込み用樹脂層8の硬化物を被埋め込み部材を封止する封止部材として形成させる。被埋め込み部材を埋め込み用樹脂層8に埋め込む際、圧力を加えてもよい。この製造方法によれば、カール及びしわが抑制された取扱い性に優れる電子部品埋め込み用樹脂フィルムを用いているため、電子部品装置を簡便かつ迅速に製造することができる。
【0068】
上記被埋め込み部材は半導体素子であってもよい。上記電子部品装置は半導体装置であってもよい。
【0069】
以上、本発明に係る電子部品埋め込み用樹脂フィルムの製造方法並びにそれを用いた電子部品装置の製造方法、電子部品装置及び半導体装置の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。
【実施例】
【0070】
(実施例1)
<積層体の作製>
10L容量のポリ容器にメチルイソブチルケトン497.5gを入れ、これにシリカ(株式会社アドマテックス製、製品名:SX−E2フェニルアミノシラン処理、平均粒径:5.8μm)3495g及びシリコーンパウダ(信越化学工業株式会社製、製品名:KMP−605)5gを加え、撹拌羽を用いてメチルイソブチルケトンにシリカ及びシリコーンパウダを分散させた分散液を調製した。この分散液に、25℃で液状であるビスフェノールF型エポキシ樹脂(グリシジル基当量:160、粘度:2Pa・s)500g及び25℃で液状でないフェノールノボラック(旭有機材工業株式会社製、製品名:PAPS−PK2、フェノール性水酸基当量:104)500gを加えて撹拌した。ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びフェノールノボラックが溶解した後、イミダゾール(四国化成工業株式会社製、製品名:2PHZ−PW)2.5gを加えて1時間撹拌して混合液を調製した。この混合液をナイロン製♯200メッシュ(開口75μm)でろ過し、ろ液を採取してワニス状の熱硬化性樹脂組成物を得た。このワニス状の熱硬化性樹脂組成物を、塗工機を使用して以下の条件で厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布及び乾燥して、厚みが100μmの熱硬化性樹脂組成物層を形成し、フィルム状の支持体の一方の面側に設けられた熱硬化性樹脂組成物層を有する積層体を得た。
・塗布ヘッド方式:コンマ
・塗布及び乾燥速度:4m/分
・乾燥条件(温度/炉長):110℃/3.3m、130℃/3.3m、140℃/3.3m
【0071】
<樹脂フィルムの製造>
図2に示すようなガイドロール付きのロールラミネーターを用いて、以下の条件で上記積層体を熱硬化性樹脂組成物層を内側にして折りたたみ、樹脂フィルムを製造した。
・ロールラミネーター圧力:0.4MPa
・ロールラミネーター温度:25℃
【0072】
(比較例1)
実施例1と同様に作製した積層体の熱硬化性樹脂組成物層に、厚みが25μmのポリエチレンフィルムを以下の条件で貼り合わせて、樹脂フィルムを製造した。
・貼り合わせ圧力:0.4MPa
・貼り合わせ温度:25℃
【0073】
(比較例2)
実施例1と同様に作製した積層体の熱硬化性樹脂組成物層に、厚みが25μmのポリエチレンフィルムを以下の条件で貼り合わせて、樹脂フィルムを製造した。
・貼り合わせ圧力:0.4MPa
・貼り合わせ温度:80℃
【0074】
(比較例3)
実施例1と同様に作製した積層体の熱硬化性樹脂組成物層に、実施例1と同じポリエチレンテレフタレートフィルムを以下の条件で貼り合わせて、樹脂フィルムを製造した。
・貼り合わせ圧力:0.4MPa
・貼り合わせ温度:80℃
【0075】
(比較例4)
実施例1と同様に作製した積層体をそのまま樹脂フィルムとした。
【0076】
<測定方法>
(1)エポキシ樹脂の粘度
広口蓋つきの250ml容量のポリビンに、エポキシ樹脂200mlを入れた。このポリビンを蓋をした状態で25℃の恒温槽に入れ、60分間保持した。その後、ポリビンを恒温槽から取り出し、B型粘度計(東機産業株式会社製、製品名:VISCOMETER_BH型)を用いて以下の条件でローターを回転させ始めてから1分後の粘度を測定し、25℃のエポキシ樹脂の粘度とした。
・回転数:20rpm
・ローター:No.2(1〜4Pa・s)
【0077】
(2)熱硬化性樹脂組成物層の膜厚
フィルム状の支持体上に形成された熱硬化性樹脂組成物層の膜厚は、デジタルインジケータ(株式会社ミツトヨ製、製品名:ID−C125B)を用いて以下の条件で樹脂フィルムの厚みを測定し、その樹脂フィルムの厚みから別途測定した支持体の厚みを差し引いて求めた。
・測定子:フラットタイプ
・スタンド:コンパレートスタンドBSG−20
【0078】
(3)熱硬化性樹脂組成物層に含まれる揮発成分の量
フィルム状の支持体上に形成された熱硬化性樹脂組成物層に含まれる揮発成分の量は、以下の手順により算出した。まず、積層体から5cm角の試料を切り出した。この試料を予め質量を測定したアルミカップに入れて、試料が入ったアルミカップの質量を測定した。次いで、試料をアルミカップに入れたまま、180℃のオーブンで10分間加熱し、室温にて10分間放置した後、試料が入ったアルミカップの質量を再度測定した。次いで、それぞれ加熱前及び加熱後の質量の測定値から、別途測定した5cm角にカットした支持体の質量及びアルミカップの質量を差し引いて、加熱前及び加熱後の熱硬化性樹脂組成物層の質量を求めた。そして、加熱前の熱硬化性樹脂組成物層の質量から加熱後の熱硬化性樹脂組成物層の質量を差し引いた値を熱硬化性樹脂組成物層に含まれる揮発成分の量とした。そして、加熱前の熱硬化性樹脂組成物層の質量に対する揮発成分の量の割合を揮発成分の含有率として求めた。
【0079】
(4)熱硬化性樹脂組成物層の最低溶融粘度
フィルム状の支持体上に形成された熱硬化性樹脂組成物層の最低溶融粘度は、以下の手順により測定した。まず、支持体から熱硬化性樹脂組成物層0.6gを剥がし取り、圧縮成型機を用いて直径2cmのタブレットを成形した。このタブレットをレオメーター(Rheometric Scientific社製、製品名:ARES−2KSTD)を用いて以下の条件で25℃から200℃まで昇温しながら粘度を測定し、最も低い粘度を最低溶融粘度とした。
・測定モード:Dynamic Frequency Sweep Test
・周波数:0.03Hz〜30Hz
・温度範囲:25℃〜200℃
・昇温速度:5℃/分
【0080】
(5)熱硬化性樹脂組成物層の硬化率
フィルム状の支持体上に形成された熱硬化性樹脂組成物層の硬化率は、示差走査熱量測定(DSC)により、以下の手順に従って算出した。まず、フィルム状の支持体上に塗布されたワニス状の熱硬化性樹脂組成物から、25℃で真空乾燥機を用いて乾燥させることで溶剤を除去し、揮発成分の含有率を1質量%以下とした熱硬化性樹脂組成物層を作製し、示差走査熱量測定装置(TA Instruments社製、製品名:Q200)を用いて下記の条件でDSCで発熱面積を求めて基準値とした。次いで、硬化率を算出する試料の熱硬化性樹脂組成物層について、同様にDSCで発熱面積を求め、基準値に対する試料の発熱面積の割合を熱硬化性樹脂組成物層の硬化率とした。DSCの測定条件を以下に示す。
・測定範囲温度:50℃〜250℃
・昇温速度:10℃/分
・測定雰囲気:窒素
【0081】
<評価結果>
実施例1及び比較例1〜3で用いた積層体における熱硬化性樹脂組成物層の揮発成分の含有率は、いずれも0.6質量%であった。最低溶融粘度は、いずれも20Pa・sであった。硬化率は、いずれも10%であった。
支持体が熱硬化性樹脂組成物層の両面にある実施例1の樹脂フィルムは、支持体のいずれの面においても剥がれ及びしわが認められず、カールも生じなかった。一方、比較例1の樹脂フィルムは、25μm厚のポリエチレンフィルムが熱硬化性樹脂組成物層に密着せずに剥がれてしまった。比較例2の樹脂フィルムは、25μm厚のポリエチレンフィルムが熱硬化性樹脂組成物層に密着していたが、ポリエチレンフィルム側にカールした。比較例3の樹脂フィルムは、38μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムを熱硬化性樹脂組成物層に剥がれなく貼り合わせることができたが、ポリエチレンテレフタレートフィルムに無数のしわが発生した。熱硬化性樹脂組成物層の表面に保護フィルムを貼り合わせていない比較例4の樹脂フィルムは、ロールに巻き取って保管したところ、熱硬化性樹脂組成物層が巻き取りによって重なったフィルム状の支持体に貼り付いてしまい、使用することができず、取扱い性があまり良好ではなかった。
【符号の説明】
【0082】
2…支持体、4…熱硬化性樹脂組成物層、6…積層体、8…埋め込み用樹脂層、10…両面被覆部、12…樹脂フィルム(折りたたまれた積層体)、14…折り目、16…折り目側の端部、S1…切断面、18…電子部品埋め込み用樹脂フィルム、20…ロールラミネーター、20a,20b,20c,20d,20e,20f,20g,20h…ガイドロール。
図1
図2