【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例について比較例を挙げて具体的に説明する。
【0024】
[実施例1]
シングルモード光を伝搬する直径(コア径)10μmのコアと該コアの外周を囲む直径(クラッド径)125μmのクラッドから成るファイバ芯線1と該ファイバ芯線1の外周を囲む保護被覆部2を有するラージモードエリアファイバ(LMAファイバ)10と、該ラージモードエリアファイバ10の先端側を保持するファイバ保持部材を備える実施例1に係るピグテールファイバモジュール100は、
図1に示すように、上記ファイバ保持部材が、本体中心部に貫通孔21を有するSUS製のフェルール20と該フェルール20先端側に組み込まれかつ上記貫通孔21と連通する細孔31を中心部に有するジルコニア製のキャピラリ30とで構成され、上記キャピラリ30の細孔31内にLMAファイバ10の保護被覆部2を除去して露出したファイバ芯線1が収容され、上記フェルール20の貫通孔21内に保護被覆部2を有するLMAファイバ10が収容されると共に、上記細孔31の貫通孔21側端部にファイバ芯線1と細孔31との隙間を閉止して貫通孔21と細孔31とを遮断する封止部40が設けられ、かつ、貫通孔21内に収容されたLMAファイバ10の保護被覆部2が熱硬化型接着剤50により貫通孔21に固定された構造を有している。
【0025】
尚、キャピラリ30の細孔31内に収容されたファイバ芯線1の先端に斜め加工されたエンドキャップ4が融着されている。また、実施例1および下記比較例1においては、熱硬化型接着剤に、Epoxy Technology 社製の熱硬化型エポキシ樹脂EPOTEK 353ND(ショアA強度:100)を使用した。
【0026】
ところで、ピグテールファイバモジュールにおいては、モジュールからファイバを引っ張った際にある程度の引っ張り強度を有すること(すなわち、モジュールからファイバを引っ張って抜こうとしたとき、どの程度の引っ張り力に耐え得るか)が、通常、求められる。そして、所望とする引っ張り強度を得るには、熱硬化型接着剤のような硬化後における硬度が強いものが必要とされるため、貫通孔21内に収容されたLMAファイバ10の保護被覆部2が熱硬化型接着剤50により貫通孔21に固定された構造となっている。
【0027】
[ピグテールファイバモジュールの製造工程]
実施例1に係る上記ピグテールファイバモジュール100は以下の工程を経て製造されたものである。
【0028】
まず、保護被覆部2の先端側が除去されて露出したファイバ芯線1の先端にエンドキャップ用ファイバ13を融着し、かつ、所望長さのエンドキャップ用ファイバ13を残してカットし、
図4(a)〜(b)に示すエンドキャップ付きファイバ11を製造した。尚、符号12はファイバ芯線1とエンドキャップ用ファイバ13の融着部を示す。
【0029】
次に、得られたエンドキャップ付きファイバ11の外周に硬質ゴム等で構成されたルーズチューブ14を被覆し、かつ、エンドキャップ付きファイバ11の保護被覆部2が所望の長さ露出する位置で上記ルーズチューブ14を固定して
図5(a)〜(b)に示すルーズチューブで被覆されたエンドキャップ付きファイバを製造した。
【0030】
次に、貫通孔21を有するSUS製フェルール20と細孔31を有するジルコニア製キャピラリ30とで構成された
図6に示すファイバ保持部材に、ルーズチューブ14で被覆された
図5(a)〜(b)に示すエンドキャップ付きファイバを挿入すると共に、上記エンドキャップ付きファイバの融着部12がジルコニア製キャピラリ30の細孔31に対して所望とする位置に挿入されるように挿入位置を調整した後、固定用樹脂を用いて
図7(a)〜(b)に示すようにルーズチューブ固定部18とファイバ固定部19の位置において上記ファイバ保持部材とエンドキャップ付きファイバ11を固定した。
【0031】
次に、エンドキャップ付きファイバ11が挿入かつ固定されたファイバ保持部材のキャピラリ30先端を研磨加工し、エンドキャップ用ファイバの長さと先端角度を所望の値に設定させた後、SUS製フェルール20の接着剤充填用横穴25から弾性接着剤[ショアA硬度43のセメダイン社製 商品名セメダイン スーパーX No.8008(アクリル変成シリコーン樹脂)]を注入しかつ該接着剤を硬化させてフェルール20の貫通孔21とキャピラリ30の細孔31とを遮断する封止部40を形成し、更に、上記接着剤充填用横穴25から熱硬化型接着剤を注入しかつ該接着剤50を熱硬化させて
図8(a)〜(b)に示すような実施例1に係るピグテールファイバモジュール100を製造した。
【0032】
[実施例2]
弾性接着剤にショアA硬度58のセメダイン社製 商品名スーパーXG777(アクリル変成シリコーン樹脂)が適用された以外は実施例1と同様にして実施例2に係るピグテールファイバモジュールを製造した。
【0033】
[比較例1]
シングルモード光を伝搬するコアとその外周を囲むクラッドから成るファイバ芯線と該ファイバ芯線の外周を囲む保護被覆部を有するピグテールファイバ(ラージモードエリアファイバ)とファイバ保持部材とで構成され、かつ、保護被覆部を除去して露出させたファイバ芯線をファイバ保持部材の貫通孔内に挿入させた後、熱硬化型接着剤を用いて上記貫通孔にファイバ芯線を固定して比較例1に係るピグテールファイバモジュールを製造した。
【0034】
尚、貫通孔内の接着剤で固定されている部分とファイバ芯線(クラッド)との平均的隙間[(貫通孔の内径−クラッド径)/2]が1μm未満に設定される特許文献1の条件を満たすように製造し、かつ、ファイバ保持部材に組み込まれるピグテールファイバ(ラージモードエリアファイバ)は実施例1に係るエンドキャップ付きファイバの構成と同一に設定している。
【0035】
[評 価]
(1)
図2はファイバ保持部材の貫通孔内にファイバ芯線(保護被覆部を除去して露出させたファイバ芯線)が熱硬化型接着剤により固定された比較例1(特許文献1)に係るピグテールファイバモジュールにおいて、そのエンドキャップ端面から出力されたビームをビームプロファイラー(ビームの強度分布と形状を測定する装置)に映し出した画像の写真図であり、
図2(a)は熱硬化型接着剤の硬化前における写真図、
図2(b)は熱硬化型接着剤の硬化後における写真図である。
【0036】
ファイバからの出力光は、本来、シングルモード光となるため、理想の形状は真円となり、その強度分布はガウシアン分布で表されたガウシアンビームとなる。
【0037】
そして、熱硬化型接着剤硬化前の状態においては、
図2(a)の写真図に示されているように真円度(1が理想)、ガウシアンフィッティング値(X成分とY成分が理想とするガウシアン分布にどれだけ近いものかを示す指標で1が理想)がそれぞれ高い値を示しているのに対し、上記接着剤硬化後の状態においては、
図2(b)の写真図に示されているように真円度には大きな変化は無いが、ガウシアンフィッティング値に大きな変化(硬化前0.95、硬化後0.89)が生じていることが確認できる。このように出力光の強度分布にバラツキが生じると、ファイバからの出力光を集光させて再度光ファイバに入光させる際に大きな損失が生じることになってしまう。
【0038】
(2)
図3はフェルール先端側に組み込まれたキャピラリの細孔内にファイバ芯線(保護被覆部を除去して露出させたファイバ芯線)が収容されかつ細孔の貫通孔側に貫通孔と細孔とを遮断する弾性接着剤から成る封止部が設けられていると共に上記貫通孔内に収容されたラージモードエリアファイバの保護被覆部が熱硬化型接着剤により固定された実施例1に係るピグテールファイバモジュールにおいて、そのエンドキャップ端面から出力されたビームをビームプロファイラーに映し出した画像の写真図であり、
図3(a)は弾性接着剤の硬化前における写真図、
図3(b)は弾性接着剤の硬化後における写真図、および、
図3(c)は熱硬化型接着剤の硬化後における写真図である。
【0039】
そして、下記表1に示されているように、封止部を構成する弾性接着剤の硬化前、弾性接着剤の硬化後、および、封止部を形成した後に接着剤充填用横穴25から注入された熱硬化型接着剤の硬化後において、上記真円度(0.99)およびガウシアンフィッティング値(0.97)に変化がないことが確認される。
【0040】
【表1】
【0041】
尚、実施例2に係るピグテールファイバモジュールにおいても、実施例1と同様、封止部を構成する弾性接着剤の硬化前、弾性接着剤の硬化後、および、封止部を形成した後に接着剤充填用横穴25から注入された熱硬化型接着剤の硬化後において、真円度およびガウシアンフィッティング値に変化がないことが確認されている。すなわち、実施例1および実施例2に係るピグテールファイバモジュールを適用した場合、出力光の強度分布が殆ど変らない結果となっており、実施例1および実施例2に係るピグテールファイバモジュールの優位性が確認される。