(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6390583
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】ビスシリルアミノ基を有するイミン化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/10 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
C07F7/10 HCSP
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-212011(P2015-212011)
(22)【出願日】2015年10月28日
(65)【公開番号】特開2017-81849(P2017-81849A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2017年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100157831
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】川上 雅人
(72)【発明者】
【氏名】久保田 透
(72)【発明者】
【氏名】殿村 洋一
【審査官】
西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−215716(JP,A)
【文献】
特開2009−132870(JP,A)
【文献】
Dmitry V. Gutsulyak and Georgii I. Nikonov,Chemoselective Catalytic Hydrosilylation of Nitriles,Angewandte Chemie, International Edition,2010年,49,7553-7556
【文献】
Gunda I. Georg, Ping He, Joydeep Kant, and Jeffrey Mudd,N-VINYL AND N-UNSUBSTITUTED β-LACTAMS FROM 1-SUBSTITUTED 2- AZA-1,3- BUTADIENES,Tetrahedron Letters,1990年,Vol31, No.4,451-454
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1〜R
6は炭素数1〜20の置換又は非置換の1価炭化水素基であり、R
3及びR
4は互いに結合してこれらが結合する窒素原子及びケイ素原子と共に環構造を形成しても良く、R
7は炭素数1〜10の2価炭化水素基であり、R
8及びR
9は水素原子、又は炭素数1〜20の置換又は非置換の1価炭化水素基であるが、R
8及びR
9が共に水素原子である場合を除く。また、R
8及びR
9は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成しても良い。)
で示されるビスシリルアミノ基を有するイミン化合物。
【請求項2】
下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
1〜R
7は、上記と同様である。)
で示されるビスシリルアミノ基を有するアミン化合物と、下記一般式(3)
【化3】
(式中、R
8及びR
9は、上記と同様である。)
で示されるカルボニル化合物を反応させることを特徴とする請求項1記載のビスシリルアミノ基を有するイミン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスシリルアミノ基を有するイミン化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イミノ基は、1級アミノ基とカルボニル化合物によって形成される官能基であり、窒素上に活性水素を持たない。このことから、イミノ基を有する化合物はアミノ基と反応する官能基、例えばエポキシ基やイソシアヌレート基を有する化合物と混合することができる。
【0003】
一方で、イミノ基はカルボニル基の等価体であることから、求電子性を有しており、求核試薬と容易に反応することが出来る。この性質を利用して、アニオン重合末端などの活性金属末端と反応させることにより、共有結合を形成すると共に重合末端へアミノ基を導入することが可能である(特許文献1)。この反応により、重合末端にはイミノ基に由来するアミノ基として2級アミノ基が重合末端に導入され、アミノ基を有する変性ポリマーが得られる。また、アミノ基の効果を大きくするため、複数のアミノ基を導入することで変性ポリマーの性能が向上することが一般的に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−151275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
重合末端に多くのアミノ基を導入するために用いられる化合物としては、同一分子中にイミノ基とアミノ基を有するN−ベンジリデン(ジエチルアミノエチル)アミンが例示される。しかしながら、同一分子中にイミノ基とアミノ基を有する化合物に許容されるアミノ基は、3級アミノ基に制限される。これは、アニオン重合末端が1級又は2級アミノ基の反応性に富む窒素上の活性水素と反応し、重合末端を失活させてしまうからである。
【0006】
一方で、重合末端に1級アミノ基を導入できれば、1級アミノ基の活性水素に由来する相互作用の向上が期待できるだけでなく、さらなる官能基変換も可能となる。このようなことから、活性金属末端と反応可能な官能基を有しながら、重合末端へ1級アミノ基を共存させることの出来る化合物が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、一方のアミノ基がシリル基で保護されたビスシリルアミノ基を有するイミン化合物を用いることで上述した課題を解決できることを見出した。つまり、ビスシリルアミノ基を有するイミン化合物は、イミノ基とアミノ基が共存しているが、これらの窒素上に反応性に富む活性水素が無いため、活性金属末端を失活させることなくイミノ基と反応させることが可能であり、反応後にビスシリルアミノ基のシリル基を除去することによって1級アミノ基を構築できることから、重合末端へ高活性な1級アミノ基を導入することができる。
【0008】
従って、本発明は下記に示すビスシリルアミノ基を有するイミン化合物及びその製造方法を提供する。
〔1〕
下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1〜R
6は炭素数1〜20の置換又は非置換の1価炭化水素基であり、R
3及びR
4は互いに結合してこれらが結合する窒素原子及びケイ素原子と共に環構造を形成しても良く、R
7は炭素数1〜10の2価炭化水素基であり、R
8及びR
9は水素原子、又は炭素数1〜20の置換又は非置換の1価炭化水素基であるが、R
8及びR
9が共に水素原子である場合を除く。また、R
8及びR
9は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成しても良い。)
で示されるビスシリルアミノ基を有するイミン化合物。
〔2〕
下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
1〜R
7は、上記と同様である。)
で示されるビスシリルアミノ基を有するアミン化合物と、下記一般式(3)
【化3】
(式中、R
8及びR
9は、上記と同様である。)
で示されるカルボニル化合物を反応させることを特徴とする〔1〕記載のビスシリルアミノ基を有するイミン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により提供されるビスシリルアミノ基を有するイミン化合物は、特にアニオン重合末端変性剤として使用した際に、活性金属末端を失活させることなくイミノ基と反応させることができ、且つ反応後にシリル基を除去することで、反応性に富む1級アミノ基を構築できるため、アニオン重合末端変性剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1で得られたN−ベンジリデン(ビス(トリメチルシリル)アミノエチル)アミンのIRチャートである。
【
図2】実施例1で得られたN−ベンジリデン(ビス(トリメチルシリル)アミノエチル)アミンの
1H−NMRチャートである。
【
図3】実施例2で得られたN−シンナミリデン(ビス(トリメチルシリル)アミノエチル)アミンのIRチャートである。
【
図4】実施例2で得られたN−シンナミリデン(ビス(トリメチルシリル)アミノエチル)アミンの
1H−NMRチャートである。
【
図5】実施例3で得られたN−ベンジリデン(ビス(トリメチルシリル)アミノプロピル)アミンのIRチャートである。
【
図6】実施例3で得られたN−ベンジリデン(ビス(トリメチルシリル)アミノプロピル)アミンの
1H−NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のビスシリルアミノ基を有するイミン化合物は、下記一般式(1)で示される化合物である。
【化4】
【0012】
ここで、R
1〜R
6は、炭素数1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6の置換又は非置換の1価炭化水素基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の直鎖状のアルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、テキシル基、2−エチルヘキシル基等の分岐状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基等が例示され、特にメチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が好ましい。また、炭化水素基の水素原子の一部又は全部が置換されていれていてもよく、該置換基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、(イソ)プロポキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;シアノ基;アミノ基;フェニル基、トリル基等の炭素数6〜18のアリール基、炭素数2〜10のアシル基、それぞれ各アルキル基、各アルコキシ基が炭素数1〜5であるトリアルキルシリル基、トリアルコキシシリル基、ジアルキルモノアルコキシシリル基もしくはモノアルキルジアルコキシシリル基が例示され、更にエステル基(−COO−)、エーテル基(−O−)、スルフィド基(−S−)等が介在していてもよく、これらを組み合わせて用いることもできる。
【0013】
また、R
3及びR
4で結合している場合の−R
3−R
4−基としては、メチレン基、エチレン基、メチルエチレン基、プロピレン基、メチルプロピレン基等が例示される。
【0014】
R
7は炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の2価炭化水素基であり、炭素数1〜10の2価炭化水素基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、メチルエチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、イソブチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、メチレンフェニレン基、メチレンフェニレンメチレン基等のアラルキレン基等が例示され、原料の調達容易性から、メチレン基、プロピレン基、ヘキサメチレン基が望ましい。
【0015】
R
8及びR
9は、水素原子、又は炭素数1〜20の1価炭化水素基であり、1価炭化水素基の場合、R
1〜R
6と同様の炭化水素基が例示され、生成物の有用性の点から、フェニル基が好ましい。
【0016】
上記一般式(1)で示されるビスシリルアミノ基を有するイミン化合物の具体例としては、N−ベンジリデン(ビス(トリメチルシリル)アミノエチル)アミン、N−ベンジリデン(ビス(トリメチルシリル)アミノプロピル)アミン、N−ベンジリデン(ビス(トリメチルシリル)アミノブチル)アミン、N−ベンジリデン(ビス(トリメチルシリル)アミノヘキシル)アミン、N−ベンジリデン(ビス(トリエチルシリル)アミノエチル)アミン、N−ベンジリデン(ビス(トリエチルシリル)アミノプロピル)アミン、N−ベンジリデン(ビス(トリエチルシリル)アミノブチル)アミン、N−ベンジリデン(ビス(トリエチルシリル)アミノヘキシル)アミン、N−ベンジリデン(ビス(トリイソプロピルシリル)アミノエチル)アミン、N−ベンジリデン(ビス(トリイソプロピルシリル)アミノプロピル)アミン、N−ベンジリデン(ビス(トリイソプロピルシリル)アミノブチル)アミン、N−ベンジリデン(ビス(トリイソプロピルシリル)アミノヘキシル)アミン、N−ベンジリデン(2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン−1−エチル)アミン、N−ベンジリデン(2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン−1−プロピル)アミン、N−ベンジリデン(2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン−1−ブチル)アミン、N−ベンジリデン(2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン−1−ヘキシル)アミン、N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)−(ビス(トリメチルシリル)アミノエチル)アミン、N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)−(ビス(トリメチルシリル)アミノプロピル)アミン、N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)−(ビス(トリメチルシリル)アミノブチル)アミン、N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)−(ビス(トリメチルシリル)アミノヘキシル)アミン、N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)−(ビス(トリエチルシリル)アミノエチル)アミン、N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)−(ビス(トリエチルシリル)アミノプロピル)アミン、N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)−(ビス(トリエチルシリル)アミノブチル)アミン、N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)−(ビス(トリエチルシリル)アミノヘキシル)アミン、N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)−(ビス(トリイソプロピルシリル)アミノエチル)アミン、N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)−(ビス(トリイソプロピルシリル)アミノプロピル)アミン、N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)−(ビス(トリイソプロピルシリル)アミノブチル)アミン、N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)−(ビス(トリイソプロピルシリル)アミノヘキシル)アミン、N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)−(2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン−1−エチル)アミン、N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)−(2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン−1−プロピル)アミン、N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)−(2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン−1−ブチル)アミン、N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)−(2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン−1−ヘキシル)アミン、N−シンナミリデン(ビス(トリメチルシリル)アミノエチル)アミン、N−シンナミリデン(ビス(トリメチルシリル)アミノプロピル)アミン、N−シンナミリデン(ビス(トリメチルシリル)アミノブチル)アミン、N−シンナミリデン(ビス(トリメチルシリル)アミノヘキシル)アミン、N−シンナミリデン(ビス(トリエチルシリル)アミノエチル)アミン、N−シンナミリデン(ビス(トリエチルシリル)アミノプロピル)アミン、N−シンナミリデン(ビス(トリエチルシリル)アミノブチル)アミン、N−シンナミリデン(ビス(トリエチルシリル)アミノヘキシル)アミン、N−シンナミリデン(ビス(トリイソプロピルシリル)アミノエチル)アミン、N−シンナミリデン(ビス(トリイソプロピルシリル)アミノプロピル)アミン、N−シンナミリデン(ビス(トリイソプロピルシリル)アミノブチル)アミン、N−シンナミリデン(ビス(トリイソプロピルシリル)アミノヘキシル)アミン、N−シンナミリデン(2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン−1−エチル)アミン、N−シンナミリデン(2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン−1−プロピル)アミン、N−シンナミリデン(2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン−1−ブチル)アミン、N−シンナミリデン(2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン−1−ヘキシル)アミン等が例示される。
【0017】
本発明における上記一般式(1)で示されるビスシリルアミノ基を有するイミン化合物の製造方法は、下記一般式(2)
【化5】
(式中、R
1〜R
7は、上記と同様である。)
で示されるビスシリルアミノ基を有するアミン化合物と、下記一般式(3)
【化6】
(式中、R
8及びR
9は、上記と同様である。)
で示されるカルボニル化合物を反応させる方法が例示される。
【0018】
上記一般式(2)で示されるビスシリルアミノ基を有するアミン化合物としては、具体的には、ビス(トリメチルシリル)アミノエチルアミン、ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルアミン、ビス(トリメチルシリル)アミノブチルアミン、ビス(トリメチルシリル)アミノヘキシルアミン、ビス(トリエチルシリル)アミノエチルアミン、ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルアミン、ビス(トリエチルシリル)アミノブチルアミン、ビス(トリエチルシリル)アミノヘキシルアミン、ビス(トリイソプロピルシリル)アミノエチルアミン、ビス(トリイソプロピルシリル)アミノプロピルアミン、ビス(トリイソプロピルシリル)アミノブチルアミン、ビス(トリイソプロピルシリル)アミノヘキシルアミン、(2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン−1−エチル)アミン、(2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン−1−プロピル)アミン、(2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン−1−ブチル)アミン、(2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン−1−ヘキシル)アミン等が例示される。
【0019】
上記一般式(3)で示されるカルボニル化合物としては、具体的には、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ペンタナール、3−メチルブタナール、ヘキサナール、オクタナール、デカナール、ドデカナール等の脂肪族飽和アルデヒド、アクロレイン、2−ブテナール、3−メチル−2−ブテナール、3−ブテナール、3−オクテナール等の脂肪族不飽和アルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、ジャスミンアルデヒド等の芳香族アルデヒド等のアルデヒド化合物やアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の脂肪族飽和ケトン、メチルビニルケトン等の脂肪族不飽和ケトン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロへキサノン等の脂環式ケトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、バレロフェノン、ジベンジルケトン等の芳香族ケトン等のケトン化合物が例示される。
【0020】
上記一般式(2)で示されるビスシリルアミノ基を有するアミン化合物と上記一般式(3)で示されるカルボニル化合物の配合比は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、一般式(2)で示される化合物1モルに対し一般式(3)で示される化合物を0.1〜4モル、特に0.2〜2モルの範囲が好ましい。
この場合、反応温度は0〜200℃、特に20〜120℃であることが好ましく、反応時間は通常1〜30時間、特に1〜20時間である。
上記反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることも出来る。用いられる溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロエタン等の塩素化炭化水素系溶媒等が例示される。これらの溶媒は1種を単独で使用しても良く、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
上記反応は無触媒でも進行するが、触媒を用いることも出来る。用いられる触媒としては、塩化水素、臭化水素、硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等の酸性触媒が例示される。
【0021】
上記反応において生成する水を溶媒と共に抜き出すことで、反応速度を向上させることが出来る。用いられる溶媒としては、上記反応時に用いる溶媒と同様のものが例示される。
【0022】
上記反応において生成する水を脱水剤によって捕捉することで、反応速度を向上させることが出来る。用いられる脱水剤としては、酸化カルシウム、塩化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸ナトリウム無水塩、硫酸マグネシウム無水塩、硫酸銅無水塩などの化学的乾燥剤、シリカゲル、酸化アルミニウム、モレキュラーシーブ、アロフェン、ゼオライト等の物理的乾燥剤、ヘキサメチルジシラザン等のシラザン化合物が挙げられる。特に、水を化学的に変換できる点から、ヘキサメチルジシラザンが望ましい。
【実施例】
【0023】
以下、合成例、実施例及び参考例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0024】
[合成例1]ビス(トリメチルシリル)アミノエチルアミンの合成
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、エチレンジアミン126.5g(2.105モル)とドデシルベンゼンスルホン酸7.3g(0.021モル)を仕込み、80℃に加熱した。内温が安定した後、ヘキサメチルジシラザン373.5g(2.314モル)を1.5時間かけて滴下し、その後140℃で4時間撹拌した。
得られた反応液を10kPaに減圧し、加熱還流させた後、32時間かけて生成するエチレンジアミン及びトリメチルシリルエチレンジアミンを留出除去した。この反応液に28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液を4.2g(0.022モル)加えた。次いで、室温でメタノール40.1g(1.25モル)を加えて室温で30分撹拌した。得られた反応液から、減圧蒸留により、78℃/1.0kPaの留分を分取することにより、ビス(トリメチルシリル)アミノエチルアミンを97.0g得た。
【0025】
[実施例1]N−ベンジリデン(ビス(トリメチルシリル)アミノエチル)アミンの合成
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、ベンズアルデヒド25.5g(0.240モル)とヘキサメチルジシラザン6.5g(0.040モル)、トルエン40mLを仕込み、得られた反応液に、ビス(トリメチルシリル)アミノエチルアミン40.9g(0.200モル)とトルエン40mLからなる混合溶液を室温で40℃以下を保持しながら、3時間かけて滴下した。反応混合物を分液ロートに移し、生成した水を分離した後、エバポレーターで濃縮した。得られた残渣を蒸留し、143℃/0.2kPaの留分を45.9g得た。
【0026】
得られた留分の質量スペクトル、
1H−NMRスペクトル、IRスペクトルを測定した。
質量スペクトル
m/z 293 277 174 130 100 73
IRスペクトル
図1にチャートで示す。
1H−NMRスペクトル
図2にチャートで示す。
以上の結果より、得られた化合物は、N−ベンジリデン(ビス(トリメチルシリル)アミノエチル)アミンであることが確認された。
【0027】
[実施例2]N−シンナミリデン(ビス(トリメチルシリル)アミノエチル)アミンの合成
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、トランスシンナムアルデヒド31.9g(0.241モル)とヘキサメチルジシラザン6.5g(0.041モル)、トルエン40mLを仕込み、得られた反応液に、ビス(トリメチルシリル)アミノエチルアミン40.9g(0.200モル)とトルエン40mLからなる混合溶液を室温で40℃以下を保持しながら、3時間かけて滴下した。反応混合物を分液ロートに移し、生成した水を分離した後、エバポレーターで濃縮した。得られた残渣を蒸留し、166℃/0.2kPaの留分を38.1g得た。
【0028】
得られた留分の質量スペクトル、
1H−NMRスペクトル、IRスペクトルを測定した。
質量スペクトル
m/z 319 303 174 73
IRスペクトル
図3にチャートで示す。
1H−NMRスペクトル
図4にチャートで示す。
以上の結果より、得られた化合物は、N−シンナミリデン(ビス(トリメチルシリル)アミノエチル)アミンであることが確認された。
【0029】
[実施例3]N−ベンジリデン(ビス(トリメチルシリル)アミノプロピル)アミンの合成
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、ベンズアルデヒド12.9g(0.121モル)とヘキサメチルジシラザン3.3g(0.020モル)、トルエン20mLを仕込み、得られた反応液に、ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルアミン21.9g(0.100モル)とトルエン20mLからなる混合溶液を室温で40℃以下を保持しながら、3時間かけて滴下した。反応混合物を分液ロートに移し、生成した水を分離した後、エバポレーターで濃縮した。得られた残渣を蒸留し、144℃/0.2kPaの留分を28.5g得た。
【0030】
得られた留分の質量スペクトル、
1H−NMRスペクトル、IRスペクトルを測定した。
質量スペクトル
m/z 307 291 188 119 73
IRスペクトル
図5にチャートで示す。
1H−NMRスペクトル
図6にチャートで示す。
以上の結果より、得られた化合物は、N−ベンジリデン(ビス(トリメチルシリル)アミノプロピル)アミンであることが確認された。
【0031】
[参考例]N−ベンジリデン(ビス(トリメチルシリル)アミノエチル)アミンとブチルリチウムの反応
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、実施例1で合成したN−ベンジリデン(ビス(トリメチルシリル)アミノエチル)アミン2.9g(0.0099モル)とトルエン7.5mLを仕込み、水浴に浸した。得られた反応液にn−ブチルリチウム(2.60M ヘキサン溶液)6.25mL(0.0100モル)を5分で滴下し、その後室温で撹拌した。得られた反応液にメタノール5.0mLを加えて反応を停止し、GC/MS分析を行った。その結果、2−アミノエチル(1−フェニルペンチル)アミンと2−ビス(トリメチルシリル)アミノエチル(1−フェニルペンチル)アミンが生成し、原料のN−ベンジリデン(ビス(トリメチルシリル)アミノエチル)アミンの消失が確認された。この結果から、本発明のビスシリルアミノ基を有するイミン化合物が、アニオン重合末端を失活させることなく金属末端と反応できることが確認された。