(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記重合体が、前記式[1−1]又は[1−2]で示される構造の側鎖を有するジアミン化合物を原料の一部に用いて得られるポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体である請求項1に記載の液晶表示素子。
前記液晶配向処理剤中に、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル及びジプロピレングリコールジメチルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒を含有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明は、電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、前記一対の基板の間に活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方により重合する重合性化合物を含む液晶組成物を配置し、さらに、基板の少なくとも一方が液晶を垂直に配向させるような液晶配向膜を有し、液晶組成物の一部又は全体が液晶性を示す状態で前記液晶組成物の硬化を行い、液晶と重合性化合物の硬化物複合体を形成させる工程を経て製造される液晶表示素子である。
【0020】
前記液晶配向膜は、下記の式[1−1]又は式[1−2]で示される構造(特定側鎖構造の基ともいう)を有するポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(特定ポリイミド系重合体ともいう)を含み、かつ沸点が180℃未満の溶媒(特定溶媒ともいう)を溶媒全体の50質量%以上含む液晶配向処理剤から得られる。
【化14】
(Y
1は単結合、−(CH
2)
a−(aは1〜15の整数である)、−O−、−CH
2O−、−COO−又は−OCO−を示す。Y
2は単結合又は−(CH
2)
b−(bは1〜15の整数である)を示す。Y
3は単結合、−(CH
2)
c−(cは1〜15の整数である)、−O−、−CH
2O−、−COO−又は−OCO−を示す。Y
4はベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる2価の環状基、又はステロイド骨格を有する炭素数17〜51の2価の有機基を示し、前記環状基上の任意の水素原子は、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシル基又はフッ素原子で置換されていてもよい。Y
5はベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる2価の環状基を示し、これらの環状基上の任意の水素原子は、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシル基又はフッ素原子で置換されていてもよい。nは0〜4の整数を示す。Y
6は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基又は炭素数1〜18のフッ素含有アルコキシル基を示す。)
【0021】
【化15】
(Y
7は単結合、−O−、−CH
2O−、−CONH−、−NHCO−、−CON(CH
3)−、−N(CH
3)CO−、−COO−又は−OCO−を示す。Y
8は炭素数8〜22のアルキル基又は炭素数6〜18のフッ素含有アルキル基を示す。)
【0022】
本発明の液晶表示素子は主に、電圧無印加時に透過状態となり、電圧印加時には散乱状態になるリバース型素子に、好適に用いることができる。
また、本発明の液晶配向処理剤に用いられる、特定ポリイミド系重合体は、この重合体の溶媒への溶解性が高いため、沸点が180℃未満の低極性な溶媒を液晶配向処理剤の溶媒として多く含有することができる。
さらに、本発明の液晶配向処理剤に用いられる、特定ポリイミド系重合体に含まれる特定側鎖構造の基の中で、式[1−1]は、側鎖部位にベンゼン環、シクロヘキシル環若しくは複素環、又はステロイド骨格を有する炭素数17〜51の2価の有機基を有する。これら環及び有機基の側鎖構造は、剛直な構造を示すため、式[1−1]を有する垂直液晶配向膜を用いたリバース型素子は、高くて安定な液晶の垂直配向性を得ることができる。
【0023】
本発明の特定側鎖構造を有する特定ポリイミド系重合体及び特定溶媒を含む液晶配向処理剤から得られる液晶配向膜を用いた液晶表示素子は、液晶配向処理剤がポリイミド系重合体を用いたものであっても、液晶配向膜を作製する焼成を低温で行うことができる。また、液晶の垂直配向性が高く、良好な光学特性、すなわち、電圧無印加時の透明性と電圧印加時の散乱特性が良好で、液晶層と液晶配向膜との密着性が高い。
【0024】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、前記一対の基板の間に活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方により重合する重合性化合物を含む液晶組成物を配置し、さらに、基板の少なくとも一方が液晶を垂直に配向させるような液晶配向膜を有し、液晶組成物の一部又は全体が液晶性を示す状態で前記液晶組成物の硬化を行い、液晶と重合性化合物の硬化物複合体を形成させる工程を経て製造され、電圧無印加時に透過状態となり、電圧印加時には散乱状態になるリバース型素子に、好適に用いることができる。
<液晶>
本発明の液晶表示素子に用いる液晶組成物中の液晶には、ネマチック液晶やスメクチック液晶を用いることができる。なかでも、負の誘電異方性を有するものが好ましい。また、低電圧駆動及び散乱特性の点からは、誘電率の異方性が大きく、屈折率の異方性が大きいものが好ましい。
さらに、液晶表示素子をTFT(Thin Film Transistor)などの能動素子として駆動させるためには、液晶の電気抵抗が高く、電圧保持率(VHRともいう)が高いことが求められる。そのため、液晶には、電気抵抗が高く、紫外線などの活性エネルギー線によりVHRが低下しないフッ素系や塩素系の液晶を用いることが好ましい。
【0025】
本発明の液晶表示素子は、液晶組成物中に二色性染料を溶解させてゲストホスト型の素子とすることもできる。この場合には、電圧無印加時は透明で、電圧印加時に吸収(散乱)となる素子が得られる。
また、本発明の液晶表示素子は、液晶の配向方向は電圧印加の有無により90度変化する。そのため、この二色性染料の吸光特性の違いを利用することで、ランダム配向と垂直配向でスイッチングを行う従来のゲストホスト型の素子に比べて、高いコントラストを持つ液晶表示素子を得ることができる。
また、二色性染料を溶解させたゲストホスト型の素子では、液晶が水平方向に配向した場合に有色になり、散乱状態においてのみ、不透明となる。そのため、電圧を印加するにつれ、電圧無印加時の無色透明から有色不透明、有色透明の状態に切り替わる素子を得ることもできる。
【0026】
<重合性化合物>
本発明の液晶表示素子における液晶組成物中には、紫外線などの活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方により重合する重合性化合物が含まれる。その際、どのような反応形式で重合が進み、液晶と重合性化合物の硬化物複合体を形成させても良い。具体的な重合の反応形式としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合又は重付加反応が挙げられる。
ここで、硬化物複合体とは、重合性化合物により形成される高分子量体(ポリマ)中に液晶が存在しているような状態を意味するものである。
重合性化合物は、液晶に溶解すれば、どのような化合物であってもよい。ただし、重合性化合物を液晶に溶解した際に、液晶組成物の一部又は全体が液晶相を示す温度が存在することが必要となる。液晶組成物の一部が液晶相を示す場合であっても、液晶表示素子を肉眼で確認して、素子内全体がほぼ一様な透明性と散乱特性が得られていれば良い。
【0027】
重合性化合物の反応形式がラジカル重合の場合、下記のラジカル型の重合性化合物を用いることができる。
例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、モルホリンアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ブチルエチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、2−シアノエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、イソボニルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、モルホリンメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシジエチレングリコールメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレート、4,4’−ビフェニルジアクリレート、ジエチルスチルべストロールジアクリレート、1,4−ビスアクリロイルオキシベンゼン、4,4’−ビスアクリロイルオキシジフェニルエーテル、4,4’−ビスアクリロイルオキシジフェニルメタン、3,9−[1,1−ジメチル−2−アクリロイルオキシエチル]−2,4,8,10−テトラスピロ[5,5]ウンデカン、α,α’−ビス[4−アクリロイルオキシフェニル]−1,4−ジイソプロピルベンゼン、1,4−ビスアクリロイルオキシテトラフルオロベンゼン、4,4’−ビスアクリロイルオキシオクタフルオロビフェニル、ジエチレングリコールアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、グリセロールジアクリレート、1,6−へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、4,4’−ジアクリロイルオキシスチルベン、4,4’−ジアクリロイルオキシジメチルスチルベン、4,4’−ジアクリロイルオキシジエチルスチルベン、4,4’−ジアクリロイルオキシジプロピルスチルベン、4,4’−ジアクリロイルオキシジブチルスチルベン、4,4’−ジアクリロイルオキシジペンチルスチルベン、4,4’−ジアクリロイルオキシジヘキシルスチルベン、4,4’−ジアクリロイルオキシジフルオロスチルベン、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタンジオール−1,5−ジアクリレート、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロプロピル−1,3−ジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−へキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタメタクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタンジオール−1,5−ジメタクリレートなどのモノマー及びこれらのオリゴマーが挙げられる。
【0028】
なかでも、本発明においては、電圧印加時の散乱特性を高くすることを目的に、3個以上の官能基を有する多官能性型のラジカル型の重合性化合物を用いることが好ましい。
具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリストリトールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタメタクリレートなどのモノマー及びこれらのオリゴマーが挙げられる。
ラジカル型の重合性化合物は、液晶表示素子の光学特性や液晶層と垂直液晶配向膜との密着性の特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用することもできる。
【0029】
さらに、重合性化合物の反応形式がラジカル重合の場合、液晶組成物中に、紫外線によりラジカルを発生するラジカル開始剤を導入することもできる。
具体的には、tert−ブチルペルオキシ−iso−ブタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルジオキシ)へキサン、1,4−ビス[α−(tert−ブチルジオキシ)−iso−プロポキシ]ベンゼン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルジオキシ)へキセンヒドロペルオキシド、α−(iso−プロピルフェニル)−iso−プロピルヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルへキサン、tert−ブチルヒドロペルオキシド、1,1−ビス(tert−ブチルジオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロへキサン、ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルジオキシ)バレレート、シクロへキサノンペルオキシド、2,2’,5,5’−テトラ(tert−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−アミルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ビス(tert−ブチルペルオキシカルボニル)−4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−tert−ブチルジペルオキシイソフタレートなどの有機過酸化物、9,10−アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノンなどのキノン類、ベンゾインメチル、ベンゾインエチルエーテル、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾインなどのベンゾイン誘導体などが挙げられる。
【0030】
重合性化合物の反応形式がカチオン重合又はアニオン重合の場合、下記のイオン型の重合性化合物を用いることができる。
具体的には、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、及び低級アルコキシアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の架橋形成基を有する化合物である。例えば、アミノ基の水素原子がメチロール基、アルコキシメチル基又はその両方で置換されたメラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体又はグリコールウリルを用いることができる。このメラミン誘導体やベンゾグアナミン誘導体はオリゴマーであっても良い。これらはトリアジン環1個当たり、メチルール基又はアルコキシメチル基を平均3個以上6個未満有するものが好ましい。
【0031】
このようなメラミン誘導体やベンゾグアナミン誘導体の例としては、市販品のトリアジン環1個当たりメトキシメチル基が平均3.7個置換されているMX−750、トリアジン環1個当たりメトキシメチル基が平均5.8個置換されているMW−30(以上、三和ケミカル社製)や、サイメル300、301、303、350、370、771、325、327、703、712などのメトキシメチル化メラミン、サイメル235、236、238、212、253、254などのメトキシメチル化ブトキシメチル化メラミン、サイメル506、508などのブトキシメチル化メラミン、サイメル1141のようなカルボキシル基含有メトキシメチル化イソブトキシメチル化メラミン、サイメル1123のようなメトキシメチル化エトキシメチル化ベンゾグアナミン、サイメル1123−10のようなメトキシメチル化ブトキシメチル化ベンゾグアナミン、サイメル1128のようなブトキシメチル化ベンゾグアナミン、サイメル1125−80のようなカルボキシル基含有メトキシメチル化エトキシメチル化ベンゾグアナミン(以上、三井サイテック社製)が挙げられる。また、グリコールウリルの例として、サイメル1170のようなブトキシメチル化グリコールウリル、サイメル1172のようなメチロール化グリコールウリルなどが挙げられる。
【0032】
ヒドロキシル基又はアルコキシル基を有するベンゼン、又はフェノール性化合物としては、例えば、1,3,5−トリス(メトキシメトキシ)ベンゼン、1,2,4−トリス(イソプロポキシメトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(sec−ブトキシメトキシ)ベンゼン、2,6−ジヒドロキシメチル−p−tert−ブチルフェノールなどが挙げられる。
【0033】
また、イオン型の重合性化合物としては、エポキシ基、イソシアネート基などの基を含み架橋形成基を有する化合物を用いることもできる。具体的には、ビスフェノールアセトングリシジルエーテル、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルアミノジフェニレン、テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビス(アミノエチル)シクロヘキサン、テトラフェニルグリシジルエーテルエタン、トリフェニルグリシジルエーテルエタン、ビスフェノールヘキサフルオロアセトジグリシジルエーテル、1,3−ビス(1−(2,3−エポキシプロポキシ)−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロメチル)ベンゼン、4,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)オクタフルオロビフェニル、トリグリシジル−p−アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、2−(4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)−2−(4−(1,1−ビス(4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)エチル)フェニル)プロパン、1,3−ビス(4−(1−(4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)−1−(4−(1−(4−(2,3−エポキシプロポキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチル)フェノキシ)−2−プロパノールなどが挙げられる。
イオン型の重合性化合物は、液晶表示素子の光学特性や液晶層と垂直液晶配向膜との密着性の特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用することもできる。
【0034】
さらに、重合性化合物の反応形式がカチオン重合又はアニオン重合の場合、液晶組成物中に、紫外線により酸又は塩基を発生するイオン開始剤を導入することもできる。
具体的には、トリアジン系化合物、アセトフェノン誘導体化合物、ジスルホン系化合物、ジアゾメタン系化合物、スルホン酸誘導体化合物、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールホスホニウム塩、鉄アレーン錯体などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。より具体的には、例えば、ジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムメシレート、ジフェニルヨードニウムトシレート、ジフェニルヨードニウムブロミド、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムメシレート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトシレート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムクロリド、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウムクロライド、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムクロリド、トリフェニルスルホニウムブロミド、トリ(p−メトキシフェニル)スルホニウムテトラフルオロボレート、トリ(p−メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリ(p−エトキシフェニル)スルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルホスホニウムクロリド、トリフェニルホスホニウムブロミド、トリ(p−メトキシフェニル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、トリ(p−メトキシフェニル)ホスホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリ(p−エトキシフェニル)ホスホニウムテトラフルオロボレートなどが挙げられる。また、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニルへキサン−1,6−ジアミン]、ニトロベンジルシクロへキシルカルバメート、ジ(メトキシベンジル)ヘキサメチレンジカルバメート、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニルへキサン−1,6−ジアミン]、ニトロベンジルシクロへキシルカルバメート、ジ(メトキシベンジル)ヘキサメチレンジカルバメートなどが挙げられる。
本発明においては、液晶表示素子の光学特性の点から、前記の重合性化合物の中でもラジカル型の重合性化合物を用いることが好ましい。
【0035】
液晶組成物中における重合性化合物の導入量には特に制限は無いが、重合性化合物の導入量が多い場合、液晶中に重合性化合物が溶解しなかったり、液晶組成物が液晶相を示す温度がなかったり、液晶表示素子の透明状態と散乱状態との変化が小さくなり光学特性が悪くなる。
また、重合性化合物の導入量が少ない場合、液晶層の硬化性が低くなり、さらには、液晶層と垂直液晶配向膜との密着性が低下し、機械的な外圧に対して液晶の配向性が乱れやすくなる。そのため、重合性化合物の導入量は、液晶100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましく、なかでも、5〜40質量部が好ましい。特に好ましいのは、11〜30質量部である。
また、重合性化合物の反応を促進するラジカル開始剤及びイオン開始剤の導入量には特に制限は無いが、好ましくは、液晶100質量部に対して、0.01〜10質量部であり、なかでも、0.05〜5質量部が好ましい。特に好ましいのは、0.05〜3質量部である。
【0036】
<特定側鎖構造>
本発明の液晶表示素子は、基板の少なくとも一方に液晶を垂直に配向させるような垂直液晶配向膜を有する素子である。その際の垂直液晶配向膜は、下記の式[1−1]又は式[1−2]で示される構造の基を有する特定ポリイミド系重合体を含む液晶配向処理剤を用いて形成される垂直液晶配向膜である。
【化16】
式[1−1]中、Y
1は単結合、−(CH
2)
a−(aは1〜15の整数である)、−O−、−CH
2O−、−COO−又は−OCO−を示す。なかでも、原料の入手性や合成の容易さの点から、単結合、−(CH
2)
a−(aは1〜15の整数である)、−O−、−CH
2O−又は−COO−が好ましい。より好ましいのは、単結合、−(CH
2)
a−(aは1〜10の整数である)、−O−、−CH
2O−又は−COO−である。
【0037】
Y
2は単結合又は−(CH
2)
b−(bは1〜15の整数である)を示す。なかでも、単結合又は−(CH
2)
b−(bは1〜10の整数である)が好ましい。
Y
3は単結合、−(CH
2)
c−(cは1〜15の整数である)、−O−、−CH
2O−、−COO−又は−OCO−を示す。なかでも、合成の容易さの点から、単結合、−(CH
2)
c−(cは1〜15の整数である)、−O−、−CH
2O−又は−COO−が好ましい。より好ましいのは、単結合、−(CH
2)
c−(cは1〜10の整数である)、−O−、−CH
2O−又は−COO−である。
Y
4はベンゼン環、シクロヘキサン環又は複素環から選ばれる2価の環状基であり、これらの環状基上の任意の水素原子は、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシル基又はフッ素原子で置換されていてもよい。さらに、Y
4は、ステロイド骨格を有する炭素数17〜51の有機基から選ばれる2価の有機基であってもよい。なかでも、合成の容易さの点から、ベンゼン環、シクロへキサン環又はステロイド骨格を有する炭素数17〜51の有機基が好ましい。
【0038】
Y
5はベンゼン環、シクロヘキサン環又は複素環から選ばれる2価の環状基を示し、これらの環状基上の任意の水素原子は、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシル基又はフッ素原子で置換されていてもよい。なかでも、ベンゼン環又はシクロへキサン環が好ましい。
nは0〜4の整数を示す。なかでも、原料の入手性や合成の容易さの点から、0〜3が好ましい。より好ましいのは、0〜2である。
【0039】
Y
6は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基又は炭素数1〜18のフッ素含有アルコキシル基を示す。なかでも、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜10のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基又は炭素数1〜10のフッ素含有アルコキシル基が好ましい。より好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシル基である。特に好ましくは、炭素数1〜9のアルキル基又は炭素数1〜9のアルコキシル基である。
【0040】
式[1−1]におけるY
1、Y
2、Y
3、Y
4、Y
5、Y
6及びnの好ましい組み合わせとしては、国際公開公報WO2011/132751(2011.10.27公開)の13項〜34項の表6〜47に掲載される(2−1)〜(2−629)と同じ組み合わせが挙げられる。なお、国際公開公報の各表では、本発明におけるY
1〜Y
6が、Y1〜Y6として示されているが、Y1〜Y6は、Y
1〜Y
6と読み替えるものとする。また、国際公開公報の各表に掲載される(2−605)〜(2−629)では、本発明におけるステロイド骨格を有する炭素数17〜51の有機基が、ステロイド骨格を有する炭素数12〜25の有機基と示されているが、ステロイド骨格を有する炭素数12〜25の有機基は、ステロイド骨格を有する炭素数17〜51の有機基と読み替えるものとする。
【0041】
【化17】
式[1−2]中、Y
7は単結合、−O−、−CH
2O−、−CONH−、−NHCO−、−CON(CH
3)−、−N(CH
3)CO−、−COO−又は−OCO−を示す。なかでも、単結合、−O−、−CH
2O−、−CONH−、−CON(CH
3)−又は−COO−が好ましい。より好ましくは、単結合、−O−、−CONH−又は−COO−である。
Y
8は炭素数8〜22のアルキル基又は炭素数6〜18のフッ素含有アルキル基を示す。なかでも、炭素数8〜18のアルキル基が好ましい。
本発明における特定側鎖構造の基としては、高くて安定な液晶の垂直配向性を得ることができる点から、式[1−1]で示される構造を用いることが好ましい。
【0042】
特定側鎖構造を特定ポリイミド系重合体に導入する方法としては、特定側鎖構造の基を有するジアミン化合物を原料の一部に用いることが好ましい。特に下記の式[1a]で示されるジアミン化合物(特定側鎖型ジアミン化合物ともいう)を用いることが好ましい。
【化18】
式[1a]中、Yは前記式[1−1]又は式[1−2]で示される構造を示す。
nは1〜4の整数を示す。なかでも、1が好ましい。
【0043】
特定側鎖型ジアミン化合物としては、高くて安定な液晶の垂直配向性を得ることができる点から、下記の式[1−1a]で示される構造のジアミン化合物を用いることが好ましい。
【化19】
式[1−1a]中、Y
1は単結合、−(CH
2)
a−(aは1〜15の整数である)、−O−、−CH
2O−、−COO−又は−OCO−を示す。なかでも、原料の入手性や合成の容易さの点から、単結合、−(CH
2)
a−(aは1〜15の整数である)、−O−、−CH
2O−又は−COO−が好ましい。より好ましいのは、単結合、−(CH
2)
a−(aは1〜10の整数である)、−O−、−CH
2O−又は−COO−である。
【0044】
Y
2は単結合又は−(CH
2)
b−(bは1〜15の整数である)を示す。なかでも、単結合又は−(CH
2)
b−(bは1〜10の整数である)が好ましい。
Y
3は単結合、−(CH
2)
c−(cは1〜15の整数である)、−O−、−CH
2O−、−COO−又は−OCO−を示す。なかでも、合成の容易さの点から、単結合、−(CH
2)
c−(cは1〜15の整数である)、−O−、−CH
2O−又は−COO−が好ましい。より好ましいのは、単結合、−(CH
2)
c−(cは1〜10の整数である)、−O−、−CH
2O−又は−COO−である。
【0045】
Y
4はベンゼン環、シクロヘキサン環又は複素環から選ばれる2価の環状基であり、これらの環状基条の任意の水素原子は、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシル基又はフッ素原子で置換されていてもよい。さらに、Y
4は、ステロイド骨格を有する炭素数17〜51の有機基から選ばれる2価の有機基であってもよい。なかでも、合成の容易さの点から、ベンゼン環、シクロへキサン環又はステロイド骨格を有する炭素数17〜51の有機基が好ましい。
【0046】
Y
5はベンゼン環、シクロヘキサン環又は複素環から選ばれる2価の環状基を示し、これらの環状基上の任意の水素原子は、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシル基又はフッ素原子で置換されていてもよい。なかでも、ベンゼン環又はシクロへキサン環が好ましい。
nは0〜4の整数を示す。なかでも、原料の入手性や合成の容易さの点から、0〜3が好ましい。より好ましいのは、0〜2である。
【0047】
Y
6は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基又は炭素数1〜18のフッ素含有アルコキシル基を示す。なかでも、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜10のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基又は炭素数1〜10のフッ素含有アルコキシル基が好ましい。より好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシル基である。特に好ましくは、炭素数1〜9のアルキル基又は炭素数1〜9のアルコキシル基である。
【0048】
式[1−1a]におけるY
1、Y
2、Y
3、Y
4、Y
5、Y
6及びnの好ましい組み合わせとしては、国際公開公報WO2011/132751(2011.10.27公開)の13項〜34項の表6〜47に掲載される(2−1)〜(2−629)と同じ組み合わせが挙げられる。なお、国際公開公報の各表では、本発明におけるY
1〜Y
6が、Y1〜Y6として示されているが、Y1〜Y6は、Y
1〜Y
6と読み替えるものとする。また、国際公開公報の各表に掲載される(2−605)〜(2−629)では、本発明におけるステロイド骨格を有する炭素数17〜51の有機基が、ステロイド骨格を有する炭素数12〜25の有機基と示されているが、ステロイド骨格を有する炭素数12〜25の有機基は、ステロイド骨格を有する炭素数17〜51の有機基と読み替えるものとする。
【0049】
なかでも、(2−25)〜(2−96)、(2−145)〜(2−168)、(2−217)〜(2−240)、(2−268)〜(2−315)、(2−364)〜(2−387)、(2−436)〜(2−483)、(2−603)〜(2−615)等の組み合わせが好ましい。特に好ましい組み合わせは、(2−49)〜(2−96)、(2−145)〜(2−168)、(2−217)〜(2−240)、(2−603)〜(2−606)、(2−607)〜(2−609)、(2−611)、(2−612)、(2−624)等である。
式[1−1a]中、mは1〜4の整数である。好ましくは1である。
【0050】
具体的には、例えば下記の式[1a−1]〜[1a−31]で示される構造の化合物が挙げられる。
【化20】
(R
1は−O−、−OCH
2−、−CH
2O−、−COOCH
2−又は−CH
2OCO−を示す。R
2は炭素数1〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数1〜22の直鎖状若しくは分岐状のフッ素含有アルキル基、又は炭素数1〜22の直鎖状若しくは分岐状のフッ素含有アルコキシル基である。)
【0051】
【化21】
(R
3は、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−COOCH
2−、−CH
2OCO−、−CH
2O−、−OCH
2−又は−CH
2−を示す。R
4は炭素数1〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数1〜22の直鎖状若しくは分岐状のフッ素含有アルキル基、又は炭素数1〜22の直鎖状若しくは分岐状のフッ素含有アルコキシル基である。)
【0052】
【化22】
(R
5は、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−COOCH
2−、−CH
2OCO−、−CH
2O−、−OCH
2−、−CH
2−、−O−又は−NH−を示す。R
6はフッ素原子、シアノ基、トリフルオロメタン基、ニトロ基、アゾ基、ホルミル基、アセチル基、アセトキシ基又は水酸基である。)
【0054】
(R
7は炭素数3〜12の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、1,4-シクロヘキシレンのシス−トランス異性は、それぞれトランス異性体である。)
【化24】
(R
8は炭素数3〜12の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、1,4-シクロヘキシレンのシス−トランス異性は、それぞれトランス異性体である。)
【0055】
【化25】
(A
4はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数3〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。A
3は1,4−シクロへキシレン基又は1,4−フェニレン基である。A
2は酸素原子又は−COO−*(ただし、「*」を付した結合手がA
3と結合する)である。A
1は酸素原子又は−COO−*(ただし、「*」を付した結合手が(CH
2)a
2)と結合する)である。また、a
1は0又は1の整数であり、a
2は2〜10の整数であり、a
3は0又は1の整数である。)
【0060】
【化30】
前記式[1a−1]〜[1a−31]中、特に好ましい構造のジアミン化合物は、式[1a−1]〜[1a−6]、式[1a−9]〜[1a−13]、式[1a−22]〜[1a−31]である。
【0061】
特定側鎖型ジアミン化合物は、液晶表示素子における液晶の垂直配向性と、液晶層と垂直液晶配向膜との密着性の点から、ジアミン成分全体の10モル%以上80モル%以下であることが好ましい。より好ましくは、10モル%以上70モル%以下である。
特定側鎖型ジアミン化合物は、特定ポリイミド系重合体の溶媒への溶解性、垂直液晶配向膜にした際の液晶の垂直配向性、さらには、液晶表示素子の光学特性などの特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用することができる。
【0062】
特定ポリイミド系重合体を作製するためのジアミン成分としては、下記の式[2]で示される第2のジアミン化合物(第2のジアミン化合物ともいう)を用いることも好ましい。
【化31】
【0063】
式[2]中、Xは下記の式[2a]、式[2b]、式[2c]又は式[2d]から選ばれる構造の置換基を示す。
【化32】
式[2a]中、aは0〜4の整数を示す。なかでも、原料の入手性や合成の容易さの点から、0又は1の整数が好ましい。式[2b]中、bは0〜4の整数を示す。なかでも、原料の入手性や合成の容易さの点から、0又は1の整数が好ましい。
式[2c]中、X
1及びX
2はそれぞれ独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を示す。式[2d]中、X
3は炭素数1〜5のアルキル基を示す。式[2]中、mは1〜4の整数を示す。なかでも、1が好ましい。
【0064】
下記に、式[2]で示されるジアミン化合物の具体的な例を挙げるが、これらの例に限定されるものではない。
式[2]で示されるジアミン化合物としては、2,4−ジメチル−m−フェニレンジアミン、2,6−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノベンジルアルコール、2,4−ジアミノベンジルアルコール、4,6−ジアミノレゾルシノール、2,4−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸の他に、下記の式[2−1]〜[2−6]で示される構造のジアミン化合物を挙げることができる。
【0066】
なかでも、2,4−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノベンジルアルコール、2,4−ジアミノベンジルアルコール、4,6−ジアミノレゾルシノール、2,4−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、式[2−1]、式[2−2]又は式[2−3]で示されるジアミン化合物が好ましい。特に好ましくは、2,4−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノベンジルアルコール、3,5−ジアミノ安息香酸、式[2−1]又は式[2−2]で示されるジアミン化合物である。
【0067】
式[2]で示されるジアミン化合物は、特定ポリイミド系重合体の溶媒への溶解性、垂直液晶配向膜にした際の液晶の垂直配向性、さらには、液晶表示素子の光学特性などの特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用することができる。
特定ポリイミド系重合体を作製するためジアミン成分としては、式[1−1]、式[1−2]又は式[2]で示されるジアミン化合物以外のジアミン化合物(その他ジアミン化合物ともいう)をジアミン化合物として用いることもできる。下記に、その他ジアミン化合物の具体例を挙げるが、これらの例に限定されるものではない。
【0068】
例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジフルオロ−4,4’− ジアミノビフェニル、3,3’−トリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジアミノビフェニル、2,3’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノジフェニルメタン、2,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ジアミノジフェニルエーテル、2,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−スルホニルジアニリン、3,3’−スルホニルジアニリン、ビス(4−アミノフェニル)シラン、ビス(3−アミノフェニル)シラン、ジメチル−ビス(4−アミノフェニル)シラン、ジメチル−ビス(3−アミノフェニル)シラン、4,4’−チオジアニリン、3,3’−チオジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルアミン、3,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2’−ジアミノジフェニルアミン、2,3’−ジアミノジフェニルアミン、N−メチル(4,4’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(3,3’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(3,4’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(2,2’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(2,3’−ジアミノジフェニル)アミン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,4−ジアミノナフタレン、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、2,3’−ジアミノベンゾフェノン、1,5−ジアミノナフタレン、1,6−ジアミノナフタレン、1,7−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,5−ジアミノナフタレン、2,6ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、2,8−ジアミノナフタレン、1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタン、1,2−ビス(3−アミノフェニル)エタン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、1,4−ビス(4アミノフェニル)ブタン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ブタン、ビス(3,5−ジエチル−4−アミノフェニル)メタン、1,4−ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4-アミノベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,4’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,4’−[1,3−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,3’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,3’−[1,3−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、1,4−フェニレンビス[(4−アミノフェニル)メタノン]、1,4−フェニレンビス[(3−アミノフェニル)メタノン]、1,3−フェニレンビス[(4−アミノフェニル)メタノン]、1,3−フェニレンビス[(3−アミノフェニル)メタノン]、1,4−フェニレンビス(4−アミノベンゾエート)、1,4−フェニレンビス(3−アミノベンゾエート)、1,3−フェニレンビス(4−アミノベンゾエート)、1,3−フェニレンビス(3−アミノベンゾエート)、ビス(4−アミノフェニル)テレフタレート、ビス(3−アミノフェニル)テレフタレート、ビス(4−アミノフェニル)イソフタレート、ビス(3−アミノフェニル)イソフタレート、N,N’−(1,4−フェニレン)ビス(4−アミノベンズアミド)、N,N’−(1,3−フェニレン)ビス(4−アミノベンズアミド)、N,N’−(1,4−フェニレン)ビス(3−アミノベンズアミド)、N,N’−(1,3−フェニレン)ビス(3−アミノベンズアミド)、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(3−アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)イソフタルアミド、N,N’−ビス(3−アミノフェニル)イソフタルアミド、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,5−ビス(3−アミノフェノキシ)ペンタン、1,6−ビス(4−アミノフェノキシ)へキサン、1,6−ビス(3−アミノフェノキシ)へキサン、1,7−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘプタン、1,7−(3−アミノフェノキシ)ヘプタン、1,8−ビス(4−アミノフェノキシ)オクタン、1,8−ビス(3−アミノフェノキシ)オクタン、1,9−ビス(4−アミノフェノキシ)ノナン、1,9−ビス(3−アミノフェノキシ)ノナン、1,10−ビス(4−アミノフェノキシ)デカン、1,10−ビス(3−アミノフェノキシ)デカン、1,11−ビス(4−アミノフェノキシ)ウンデカン、1,11−ビス(3−アミノフェノキシ)ウンデカン、1,12−ビス(4−アミノフェノキシ)ドデカン、1,12−ビス(3−アミノフェノキシ)ドデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノへキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカンなどが挙げられる。
【0069】
また、その他ジアミン化合物として、ジアミン化合物の側鎖にアルキル基、フッ素含有アルキル基又は複素環を有するものなどを挙げることもできる。
具体的には、下記の式[DA1]〜[DA13]で示されるジアミン化合物を例示することができる。
【化35】
(pは1〜10の整数を示す。)
【0070】
本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他ジアミン化合物として、下記の式[DA2]〜[DA7]で示されるジアミン化合物を用いることもできる。
【化36】
【0071】
【化37】
(式[DA4]中、mは0〜3の整数を示す。式[DA7]中、nは1〜5の整数を示す。)
【0072】
また、本発明の効果を損なわない限りにおいて、下記の式[DA8]〜[DA11]で示されるジアミン化合物を用いることもできる。
【化38】
【0073】
(A
1は単結合、−CH
2−、−C
2H
4−、−C(CH
3)
2−、−CF
2−、−C(CF
3)
2−、−O−、−CO−、−NH−、−N(CH
3)−、−CONH−、−NHCO−、−CH
2O−、−OCH
2−、−COO−、−OCO−、−CON(CH
3)−又は−N(CH
3)CO−を示し、m
1及びm
2はそれぞれ0〜4の整数を示し、かつm
1+m
2は1〜4の整数を示す。m
3及びm
4はそれぞれ1〜5の整数を示す。A
2は炭素数1〜5の直鎖又は分岐アルキル基を示し、m
5は1〜5の整数を示す。A
3は単結合、−CH
2−、−C
2H
4−、−C(CH
3)
2−、−CF
2−、−C(CF
3)
2−、−O−、−CO−、−NH−、−N(CH
3)−、−CONH−、−NHCO−、−CH
2O−、−OCH
2−、−COO−、−OCO−、−CON(CH
3)−又は−N(CH
3)CO−を示し、同一でも異なってもよい。また、m
6は1〜4の整数を示す。)
【0074】
さらに、本発明の効果を損なわない限りにおいて、下記の式[DA12]で示されるジアミン化合物を用いることもできる。
【化39】
(A
1は−O−、−NH−、−N(CH
3)−、−CONH−、−NHCO−、−CH
2O−、−OCO−、−CON(CH
3)−又は−N(CH
3)CO−である。A
2は単結合、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、非芳香族環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基の2価の有機基である。A
3は単結合、−O−、−NH−、−N(CH
3)−、−CONH−、−NHCO−、−COO−、−OCO−、−CON(CH
3)−、−N(CH
3)CO−又は−O(CH
2)
m−(mは1〜5の整数である)である。A
4は窒素含有芳香族複素環であり、nは1〜4の整数である。)
【0075】
さらに、その他ジアミン化合物として、下記の式[DA13]又は式[DA14]で示されるジアミン化合物を用いることもできる。
【化40】
その他ジアミン化合物は、特定ポリイミド系重合体の溶媒への溶解性、垂直液晶配向膜にした際の液晶の垂直配向性、さらには、液晶表示素子の光学特性などの特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用することができる。
【0076】
特定ポリイミド系重合体を作製するためのテトラカルボン酸成分としては、下記の式[3]で示されるテトラカルボン酸二無水物、該テトラカルボン酸の誘導体としてのテトラカルボン酸、テトラカルボン酸ジハライド化合物、テトラカルボン酸ジアルキルエステル化合物又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライド化合物(すべてを総称して特定テトラカルボン酸成分ともいう)を用いることが好ましい。
【化41】
【0077】
式[3]中、Z
1は下記の式[3a]〜[3j]から選ばれる構造の基である。
【化42】
式[3a]中、Z
2〜Z
5は水素原子、メチル基、塩素原子又はベンゼン環を示し、それぞれ同じであっても異なってもよい。
式[3g]中、Z
6及びZ
7は水素原子又はメチル基を示し、それぞれ同じであっても異なってもよい。
【0078】
特定テトラカルボン酸成分である式[3]に示される構造の化合物中、Z
1は、合成の容易さやポリマーを製造する際の重合反応性のし易さの点から、式[3a]、式[3c]、式[3d]、式[3e]、式[3f]又は式[3g]で示される構造の基が好ましい。より好ましいのは、式[3a]、式[3e]、式[3f]又は式[3g]で示される構造の基であり、特に好ましいのは、式[3e]、式[3f]又は式[3g]で示される構造の基である。
特定テトラカルボン酸成分は、全テトラカルボン酸成分中の1モル%以上であることが好ましい。より好ましいのは、5モル%以上であり、さらに好ましいのは、10モル%以上である。特に好ましくは、15〜100モル%である。
【0079】
また、式[3e]、式[3f]又は式[3g]の構造の特定テトラカルボン酸成分を用いる場合、その使用量は、テトラカルボン酸成分全体の20モル%以上とすることで、所望の効果が得られる。好ましくは、30モル%以上である。さらに、テトラカルボン酸成分のすべてが式[3e]、式[3f]又は式[3g]の構造のテトラカルボン酸成分であってもよい。
【0080】
特定ポリイミド系重合体には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、特定テトラカルボン酸成分以外のその他のテトラカルボン酸成分を用いることができる。
その他のテトラカルボン酸成分としては、以下に示すテトラカルボン酸化合物、テトラカルボン酸二無水物、ジカルボン酸ジハライド化合物、ジカルボン酸ジアルキルエステル化合物又はジアルキルエステルジハライド化合物が挙げられる。
【0081】
具体的には、ピロメリット酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸、1,2,5,6−アントラセンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン、2,3,4,5−ピリジンテトラカルボン酸、2,6−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ピリジン、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸、1,3−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸などが挙げられる。
特定テトラカルボン酸成分及びその他のテトラカルボン酸成分は、特定ポリイミド系重合体の溶媒への溶解性、垂直液晶配向膜にした際の液晶の垂直配向性、さらには、液晶表示素子の光学特性などの特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用することができる。
【0082】
<特定ポリイミド系重合体>
本発明の特定ポリイミド系重合体は、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られるポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
ポリイミド前駆体とは、下記の式[A]で示される構造である。
【化43】
(R
1は4価の有機基であり、R
2は2価の有機基である。A
1及びA
2は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、それぞれ同じであっても異なってもよい。A
3及びA
4は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はアセチル基を示し、それぞれ同じであっても異なってもよい。nは正の整数を示す。)
前記ジアミン成分としては、分子内に1級又は2級のアミノ基を2個有するジアミン化合物であり、テトラカルボン酸成分としては、テトラカルボン酸化合物、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジハライド化合物、テトラカルボン酸ジアルキルエステル化合物又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライド化合物が挙げられる。
【0083】
特定ポリイミド系重合体は、下記の式[B]で示されるテトラカルボン酸二無水物と下記の式[C]で示されるジアミン化合物とを原料とすることで、比較的簡便に得られるという理由から、下記の式[D]で示される繰り返し単位の構造式からなるポリアミド酸又は該ポリアミド酸をイミド化させたポリイミドが好ましい。なかでも、特定ポリイミド系重合体には、垂直液晶配向膜の物理的及び化学的安定性の点から、ポリイミドを用いることが好ましい。
【化44】
(R
1及びR
2は式[A]で定義したものと同意義である。)
【0084】
【化45】
(R
1及びR
2は式[A]で定義したものと同意義である。)
また、通常の合成手法で、上記で得られた式[D]の重合体に、式[A]で示されるA
1及びA
2の炭素数1〜8のアルキル基、及び式[A]で示されるA
3及びA
4の炭素数1〜5のアルキル基又はアセチル基を導入することもできる。
【0085】
<特定ポリイミド系重合体の製造方法>
本発明において、特定ポリイミド系重合体を合成する方法は特に限定されない。通常、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られる。一般的には、テトラカルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種のテトラカルボン酸成分と、1種又は複数種のジアミン化合物からなるジアミン成分とを反応させて、ポリアミド酸を得る。具体的には、テトラカルボン酸二無水物と1級又は2級のジアミン化合物とを重縮合させてポリアミド酸を得る方法、テトラカルボン酸と1級又は2級のジアミン化合物とを脱水重縮合反応させてポリアミド酸を得る方法、又はジカルボン酸ジハライドと1級又は2級のジアミン化合物とを重縮合させてポリアミド酸を得る方法が用いられる。
【0086】
ポリアミド酸アルキルエステルを得るには、カルボン酸基をジアルキルエステル化したテトラカルボン酸と1級又は2級のジアミン化合物とを重縮合させる方法、カルボン酸基をジアルキルエステル化したジカルボン酸ジハライドと1級又は2級のジアミン化合物とを重縮合させる方法、又はポリアミド酸のカルボキシル基をエステルに変換する方法が用いられる。
ポリイミドを得るには、前記のポリアミド酸又はポリアミド酸アルキルエステルを閉環させてポリイミドとする方法が用いられる。
ジアミン成分とテトラカルボン酸成分との反応は、通常、溶媒中で行う。その際に用いる溶媒としては、本発明の沸点が180℃未満の特定溶媒や、生成したポリイミド前駆体が溶解するものであれば特に限定されない。特に、特定ポリイミド系重合体を製造する場合には、沸点が高い溶媒を用いても良い。
【0087】
沸点が180℃未満の特定溶媒としては、例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、下記の式[A1]及び式[A2]で示される溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒が挙げられる。
【化46】
(式[A1]中、A
1は炭素数1〜3のアルキル基を示す。式[A2]中、A
2は炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
また、沸点が高い溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノンなどが挙げられる。
これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、ポリイミド前駆体を溶解させない溶媒であっても、生成したポリイミド前駆体が析出しない範囲で、上記溶媒に混合して使用してもよい。
また、溶媒中の水分は重合反応を阻害し、さらには生成したポリイミド前駆体を加水分解させる原因となるので、溶媒は脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0088】
ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを溶媒中で反応させる際には、ジアミン成分を溶媒に分散あるいは溶解させた溶液を攪拌させ、テトラカルボン酸成分をそのまま、又は溶媒に分散あるいは溶解させて添加する方法、逆にテトラカルボン酸成分を溶媒に分散、あるいは溶解させた溶液にジアミン成分を添加する方法、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを交互に添加する方法などが挙げられ、これらのいずれの方法を用いてもよい。
また、ジアミン成分又はテトラカルボン酸成分を、それぞれ複数種用いて反応させる場合は、あらかじめ混合した状態で反応させてもよく、個別に順次反応させてもよく、さらに個別に反応させた低分子量体を混合反応させ重合体としてもよい。その際の重合温度は−20〜150℃の任意の温度を選択することができるが、好ましくは−5〜100℃の範囲である。
【0089】
また、反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な攪拌が困難となる。そのため、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、溶媒を追加することができる。
ポリイミド前駆体の重合反応においては、ジアミン成分の合計モル数とテトラカルボン酸成分の合計モル数の比は0.8〜1.2であることが好ましい。通常の重縮合反応同様、このモル比が1.0に近いほど生成するポリイミド前駆体の分子量は大きくなる。
ポリイミドは前記のポリイミド前駆体を閉環させて得られるポリイミドであり、このポリイミドにおいては、アミド酸基の閉環率(イミド化率ともいう)は必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調整することができる。
【0090】
ポリイミド前駆体をイミド化させる方法としては、ポリイミド前駆体の溶液をそのまま加熱する熱イミド化又はポリイミド前駆体の溶液に触媒を添加する触媒イミド化が挙げられる。
ポリイミド前駆体を溶液中で熱イミド化させる場合の温度は、100〜400℃、好ましくは120〜250℃であり、イミド化反応により生成する水を系外に除きながら行う方が好ましい。
ポリイミド前駆体の触媒イミド化は、ポリイミド前駆体の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、−20〜250℃、好ましくは0〜180℃で攪拌することにより行うことができる。塩基性触媒の量はアミド酸基の0.5〜30モル倍、好ましくは2〜20モル倍であり、酸無水物の量はアミド酸基の1〜50モル倍、好ましくは3〜30モル倍である。
【0091】
塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミンなどを挙げることができる。中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。
酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などを挙げることができる。中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
ポリイミド前駆体又はポリイミドの反応溶液から、生成したポリイミド前駆体又はポリイミドを回収する場合には、反応溶液を溶媒に投入して沈殿させればよい。
【0092】
沈殿に用いる溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、ベンゼン、水などを挙げることができる。溶媒に投入して沈殿させたポリマは濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2〜10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類、炭化水素などが挙げられ、これらの内から選ばれる3種類以上の溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
ポリイミド系重合体の分子量は、そこから得られる垂直液晶配向膜の強度、垂直膜形成時の作業性及び塗膜性を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量で5,000〜1,000,000とするのが好ましく、より好ましくは、10,000〜150,000である。
【0093】
<液晶配向処理剤>
本発明における液晶配向処理剤は、液晶配向膜を形成するための塗布溶液であり、前記式[1−1]又は式[1−2]で示される特定側鎖構造の基を有する特定ポリイミド系重合体及び特定溶媒を含有する塗布溶液である。
液晶配向処理剤におけるすべての重合体成分は、すべてが特定ポリイミド系重合体であってもよく、それ以外の他の重合体が混合されていても良い。その際、それ以外の他の重合体の含有量は、特定ポリイミド系重合体100質量部に対して、0.5〜15質量部、好ましくは、1〜10質量部である。
それ以外の他の重合体としては、前記式[1−1]又は式[1−2]で示される特定側鎖構造の基を有していないポリイミド系重合体が挙げられる。さらには、ポリアミド、ポリエステル、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、セルロース、ポリシロキサンなどの重合体も挙げられる。
液晶配向処理剤中の全ての重合体の含有量は、液晶配向処理剤の塗布方法や目的とする膜厚を得るという点から、適宜選択することができる。なかでも、塗布により均一な垂直液晶配向膜を形成するとい観点から、液晶配向処理剤中のすべての重合体の含有量は0.1〜50質量%であることが好ましい。なかでも、1〜40質量%が好ましく、特に好ましくは、1〜35質量%である。
【0094】
液晶配向処理剤中の溶媒の含有量は、液晶配向処理剤の塗布方法や目的とする膜厚を得るという観点から、適宜選択することができる。なかでも、塗布により均一な垂直液晶配向膜を形成するとい観点から、液晶配向処理剤中の溶媒の含有量は40〜99.9質量%であることが好ましい。なかでも、50〜99質量%が好ましく、特に好ましくは、55〜99質量%である。
本発明における液晶配向処理剤には、沸点が180℃未満の特定溶媒を溶媒全体の50質量%以上含む。この特定溶媒としては、特に限定は無いが、上述した溶媒であるシクロペンタノン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、前記式[A1]及び式[A2]で示される溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒が好ましい。
特定溶媒は、液晶配向処理剤に含まれる溶媒全体の50質量%以上であり、55質量%以上であることが好ましい。さらに好ましいのは、垂直液晶配向膜の作製時の焼成を低温で行うことができる点から、60質量%以上である。特に好ましくは、70〜100質量%である。
【0095】
また、液晶配向処理剤の溶媒として、溶媒全体の50質量%未満であれば、特定溶媒以外の高沸点の溶媒(特定高沸点溶媒ともいう)を用いることができる。具体的には、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、下記の式[A3]で示される溶媒などが挙げられる。
【化47】
式[A3]中、A
3は炭素数1〜4のアルキル基を示す。なかでも、炭素数1又は2のアルキル基が好ましい。
【0096】
特定高沸点溶媒のなかで、液晶配向処理剤の溶媒には、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン又は前記式[A3]で示される溶媒を用いることが好ましい。
これら特定高沸点溶媒は、液晶配向処理剤に含まれる溶媒全体の1〜49質量%であることが好ましい。なかでも、1〜40質量%であることが好ましく、特に好ましいのは、5〜25質量%である。
本発明における液晶配向処理剤には、液晶配向処理剤を塗布した際の垂直液晶配向膜の塗膜性や表面平滑性を向上させる有機溶媒(貧溶媒ともいう)として、特定溶媒以外の溶媒を用いることができる。下記に、貧溶媒の具体例を挙げるが、これらの例に限定されるものではない。
【0097】
例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2−ブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、3−エトキシブチルアセタート、1−メチルペンチルアセタート、2−エチルブチルアセタート、2−エチルヘキシルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、2−(メトキシメトキシ)エタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、フルフリルアルコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1−(ブトキシエトキシ)プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアセタート、ジエチレングリコールアセタート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチルエチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステルなどを挙げることができる。
なかでも、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル又はジプロピレングリコールジメチルエーテルを用いることが好ましい。
【0098】
これら貧溶媒の中で、沸点が180℃以上である貧溶媒は、液晶配向処理剤に含まれる溶媒全体の1〜49質量%であることが好ましい。なかでも、1〜40質量%が好ましく、特に好ましいのは、1〜25質量%である。
また、沸点が180℃未満である貧溶媒は、液晶配向処理剤に含まれる溶媒全体の1〜90質量%であることが好ましい。なかでも、1〜80質量%が好ましく、特に好ましいのは、5〜60質量%である。
【0099】
本発明における液晶配向処理剤には、液晶層と垂直液晶配向膜との密着性を高める目的で、下記の式[B1]〜[B7]で示される構造の基を有する化合物(密着性化合物ともいう)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を導入することが好ましい。その際、これら式[B1]〜[B7]で示される構造の基は、化合物中に2個以上有することが好ましい。
【化48】
式[B4]中、W
1は、水素原子又はベンゼン環を示す。
式[B7]中、W
2は、ベンゼン環、シクロへキサン環及び複素環よりなる群から選ばれる少なくとも1種の環状基を示し、W
3は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基又は炭素数1〜18のフッ素含有アルコキシル基を示す。
【0100】
具体的には、下記の式[6]で示される化合物を用いることが好ましい。
【化49】
式[6]中、X
1は下記の式[6a−1]〜[6a−7]で示される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を示す。なかでも、本発明の密着性化合物の製造の容易さの点から、式[6a−1]、式[6a−2]、式[6a−3]、式[6a−5]又は式[6a−6]で示される構造が好ましい。より好ましくは、式[6a−1]、式[6a−3]、式[6a−5]又は式[6a−6]で示される構造である。
【化50】
【0101】
式[6a−2]中、A
1は水素原子又は炭素数1〜5のアルキレン基を示す。なかでも、密着性化合物の製造の容易さの点から、水素原子又は炭素数1〜2のアルキレン基が好ましい。より好ましくは、水素原子又はメチル基である。
式[6a−3]中、A
2は水素原子又は炭素数1〜3のアルキレン基を示す。なかでも、密着性化合物の製造の容易さの点から、水素原子又は炭素数1〜2のアルキレン基が好ましい。より好ましくは、水素原子又はメチル基である。
式[6a−5]中、A
3及びA
5はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜3のアルキレン基を示す。なかでも、密着性化合物の製造の容易さの点から、水素原子又は炭素数1〜2のアルキレン基が好ましい。より好ましくは、水素原子又はメチル基である。
式[6a−5]中、A
4は炭素数1〜3のアルキレン基を示す。なかでも、密着性化合物の製造の容易さの点から、炭素数1〜2のアルキレン基が好ましい。
式[6a−6]中、A
6及びA
9はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜3のアルキレン基を示す。なかでも、密着性化合物の製造の容易さの点から、水素原子又は炭素数1〜2のアルキレン基が好ましい。より好ましくは、水素原子又は炭素数1のアルキレン基(メチル基)である。
式[6a−6]中、A
7及びA
8はそれぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキレン基を示す。なかでも、密着性化合物の製造の容易さの点から、炭素数1〜2のアルキレン基が好ましい。
【0102】
式[6]中、X
2は単結合、−CH
2−、−O−、−NH−、−N(CH
3)−、−CONH−、−NHCO−、−CH
2O−、−OCH
2−、−COO−、−OCO−、−CON(CH
3)−及び−N(CH
3)CO−からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合基を示す。なかでも、密着性化合物の合成の容易さの点から、単結合、−CH
2−、−O−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−CH
2O−、−OCH
2−、−COO−、−OCO−、−CON(CH
3)−又は−N(CH
3)CO−が好ましい。より好ましくは、単結合、−CH
2−、−O−、−NH−、−CONH−、−CH
2O−、−OCH
2−、−COO−又は−OCO−である。特に好ましくは、単結合、−O−、−CONH−、−OCH
2−、−COO−又は−OCO−である。
【0103】
式[6]中、X
3は炭素数1〜20のアルキレン基、−(CH
2−CH
2−O)
p−(pは1〜10の整数を示す)、−(CH
2−O−)
q−(qは1〜10の整数を示す)、及び炭素数6〜20のベンゼン環又はシクロヘキサン環を有する有機基からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。その際、前記アルキレン基の任意の−CH
2−基は、−COO−、−OCO−、−CONH−、NHCO−、−CO−、−S−、−SO
2−、−CF
2−、−C(CF
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−OSi(CH
3)
2−又は−Si(CH
3)
2O−で置き換えられていても良く、任意の炭素原子に結合している水素原子は、水酸基(OH基)、カルボキシル基(COOH基)又はハロゲン原子で置き換えられていても良い。なかでも、密着性化合物の製造の容易さの点から、炭素数1〜20のアルキレン基、−(CH
2−CH
2−O)
p−(pは1〜10の整数を示す)、−(CH
2−O−)
q−(qは1〜10の整数を示す)又は下記の式[6c−1]〜式[6c−5]で示される構造が好ましい。より好ましくは、炭素数1〜15のアルキレン基、−(CH
2−CH
2−O)
p−(pは1〜10の整数を示す)、−(CH
2−O−)
q−(qは1〜10の整数を示す)、下記の式[6c−1]、式[6c−3]、式[6c−4]又は式[6c−5]で示される構造である。特に好ましくは、炭素数1〜15のアルキレン基、−(CH
2−CH
2−O)
p−(pは1〜10の整数を示す)、式[6c−1]、式[6c−4]又は式[6c−5]で示される構造である。
【化51】
【0104】
式[6]中、X
4は単結合、−CH
2−、−OCH
2−及びO−CH
2−CH
2−からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合基を示す。なかでも、密着性化合物の合成の容易さの点から、単結合、−CH
2−又は−OCH
2−で示される構造が好ましい。
式[6]中、X
5は下記の式[6b−1]〜[6b−8]で示される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を示す。なかでも、密着性化合物の合成の容易さの点から、式[6b−1]、式[6b−2]又は式[6b−6]で示される構造が好ましい。より好ましくは、式[6b−1]又は式[6b−2]で示される構造である。
【化52】
式[6b−4]中、B
1は水素原子又はベンゼン環を示す。
式[6b−8]中、B
2はベンゼン環、シクロへキサン環及び複素環からなる群から選ばれる少なくとも1種の環状基を示す。
式[6b−8]中、B
3は炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のフッ素含有アルキレン基、炭素数1〜12のアルコキシル基及び炭素数1〜12のフッ素含有アルコキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。
【0105】
式[6]中、nは1〜3の整数を示す。なかでも、密着性化合物の合成の容易さの点から、1又は2が好ましい。より好ましいのは、1である。
式[6]中、mは1〜3の整数を示す。なかでも、密着性化合物の合成の容易さの点から、1又は2が好ましい。
密着性化合物のより具体的な構造としては、下記の式[6−1a]〜[6−3a]、式[6−1b]〜[6−3b]、式[6−1c]〜[6−3c]及び式[6−1d]〜[6−3d]で示される化合物が挙げられる。
【化53】
【0106】
式[6−1a]中のX
a、式[6−2a]中のX
d及び式[6−3a]中のX
gはそれぞれ独立して、単結合、−O−、−CONH−、−OCH
2−、−COO−及び−OCO−からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合基を示す。なかでも、密着性化合物の製造の容易さの点から、単結合、−O−、−OCH
2−又は−OCO−が好ましい。より好ましくは、単結合、−O−又は−OCH
2−である。
式[6−1a]中のX
b、式[6−2a]中のX
e及び式[6−3a]中のX
hはそれぞれ独立して、炭素数1〜15のアルキレン基、−(CH
2−CH
2−O)
p−(pは1〜10の整数を示す)、式[6c−1]、式[6c−4]及び式[6c−5]で示される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。その際、前記アルキレン基の任意の−CH
2−基は、−COO−、−OCO−、−CONH−、NHCO−、−CO−、−S−、−SO
2−、−CF
2−、−C(CF
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−OSi(CH
3)
2−又は−Si(CH
3)
2O−で置き換えられていても良く、任意の炭素原子に結合している水素原子は、水酸基(OH基)、カルボキシル基(COOH基)又はハロゲン原子で置き換えられていても良い。
【0107】
式[6−1a]中のX
c、式[6−2a]中のX
f及び式[6−3a]中のX
iはそれぞれ独立して、単結合、−CH
2−及び−OCH
2−からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合基を示す。
式[6−1a]中のn1、式[6−2a]中のn2及び式[6−3a]中のn3はそれぞれ独立して、1又は2の整数を示す。なかでも、1が好ましい。
式[6−1a]中のm1、式[6−2a]中のm2及び式[6−3a]中のm3はそれぞれ独立して、1又は2の整数を示す。なかでも、1が好ましい。
【化54】
【0108】
式[6−1b]中のX
a、式[6−2b]中のX
d及び式[6−3b]中のX
gはそれぞれ独立して、単結合、−O−、−CONH−、−OCH
2−、−COO−及び−OCO−からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合基を示す。なかでも、密着性化合物の製造の容易さの点から、単結合、−O−、−OCH
2−又は−OCO−が好ましい。より好ましくは、単結合、−O−又は−OCH
2−である。
式[6−1b]中のX
b、式[6−2b]中のX
e及び式[6−3b]中のX
hはそれぞれ独立して、炭素数1〜15のアルキレン基、−(CH
2−CH
2−O)
p−(pは1〜10の整数を示す)、式[6c−1]、式[6c−4]及び式[6c−5]で示される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。その際、前記アルキレン基の任意の−CH
2−基は、−COO−、−OCO−、−CONH−、NHCO−、−CO−、−S−、−SO
2−、−CF
2−、−C(CF
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−OSi(CH
3)
2−又は−Si(CH
3)
2O−で置き換えられていても良く、任意の炭素原子に結合している水素原子は、水酸基(OH基)、カルボキシル基(COOH基)又はハロゲン原子で置き換えられていても良い。
【0109】
式[6−1b]中のX
c、式[6−2b]中のX
f及び式[6−3b]中のX
iはそれぞれ独立して、単結合、−CH
2−及び−OCH
2−から選ばれる少なくとも1種の結合基を示す。
式[6−1b]中のA
1、式[6−2b]中のA
2及び式[6−3b]中のA
3はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜2のアルキレン基を示す。なかでも、水素原子又はメチル基が好ましい。
式[6−1b]中のn1、式[6−2b]中のn2及び式[6−3b]中のn3はそれぞれ独立して、1又は2の整数を示す。なかでも、1が好ましい。
式[6−1b]中のm1、式[6−2b]中のm2及び式[6−3b]中のm3はそれぞれ独立して、1又は2の整数を示す。なかでも、1が好ましい。
【化55】
【0110】
式[6−1c]中のX
a、式[6−2c]中のX
d及び式[6−3c]中のX
gはそれぞれ独立して、単結合、−O−、−CONH−、−OCH
2−、−COO−及び−OCO−からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合基を示す。なかでも、密着性化合物の製造の容易さの点から、単結合、−O−、−OCH
2−又は−OCO−が好ましい。より好ましくは、単結合、−O−又は−OCH
2−である。
式[6−1c]中のX
b、式[6−2c]中のX
e及び式[6−3c]中のX
hはそれぞれ独立して、炭素数1〜15のアルキレン基、−(CH
2−CH
2−O)
p−(pは1〜10の整数を示す)、式[6c−1]、式[6c−4]及び式[6c−5]で示される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。その際、前記アルキレン基の任意の−CH
2−基は、−COO−、−OCO−、−CONH−、NHCO−、−CO−、−S−、−SO
2−、−CF
2−、−C(CF
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−OSi(CH
3)
2−又は−Si(CH
3)
2O−で置き換えられていても良く、任意の炭素原子に結合している水素原子は、水酸基(OH基)、カルボキシル基(COOH基)又はハロゲン原子で置き換えられていても良い。
【0111】
式[6−1c]中のX
c、式[6−2c]中のX
f及び式[6−3c]中のX
iはそれぞれ独立して、単結合、−CH
2−及び−OCH
2−からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合基を示す。
式[6−1c]中のA
1、式[6−2c]中のA
4及び式[6−3c]中のA
7はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜2のアルキレン基を示す。なかでも、水素原子又はメチル基が好ましい。
式[6−1c]中のA
2、式[6−2c]中のA
5及び式[6−3c]中のA
8はそれぞれ独立して、炭素数1〜2のアルキレン基を示す。
式[6−1c]中のA
3、式[6−2c]中のA
6及び式[6−3c]中のA
9はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜2のアルキレン基を示す。なかでも、水素原子又はメチル基が好ましい。
式[6−1c]中のn1、式[6−2c]中のn2及び式[6−3c]中のn3はそれぞれ独立して、1又は2の整数を示す。なかでも、1が好ましい。
式[6−1c]中のm1、式[6−2c]中のm2及び式[6−3c]中のm3はそれぞれ独立して、1又は2の整数を示す。なかでも、1が好ましい。
【0112】
【化56】
式[6−1d]中のX
a、式[6−2d]中のX
d及び式[6−3d]中のX
gはそれぞれ独立して、単結合、−O−、−CONH−、−OCH
2−、−COO−及び−OCO−からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合基を示す。なかでも、密着性化合物の製造の容易さの点から、単結合、−O−、−OCH
2−又は−OCO−が好ましい。より好ましくは、単結合、−O−又は−OCH
2−である。
式[6−1d]中のX
b、式[6−2d]中のX
e及び式[6−3d]中のX
hはそれぞれ独立して、炭素数1〜15のアルキレン基、−(CH
2−CH
2−O)
p−(pは1〜10の整数を示す)、式[6c−1]、式[6c−4]及び式[6c−5]で示される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。その際、前記アルキレン基の任意の−CH
2−基は、−COO−、−OCO−、−CONH−、NHCO−、−CO−、−S−、−SO
2−、−CF
2−、−C(CF
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−OSi(CH
3)
2−又は−Si(CH
3)
2O−で置き換えられていても良く、任意の炭素原子に結合している水素原子は、水酸基(OH基)、カルボキシル基(COOH基)又はハロゲン原子で置き換えられていても良い。
【0113】
式[6−1d]中のX
c、式[6−2d]中のX
f及び式[6−3d]中のX
iはそれぞれ独立して、単結合、−CH
2−及び−OCH
2−から選ばれる少なくとも1種の結合基を示す。
式[6−1d]中のA
1、式[6−2d]中のA
5及び式[6−3d]中のA
8はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜2のアルキレン基を示す。なかでも、水素原子又はメチル基が好ましい。
式[6−1d]中のA
2、式[6−2d]中のA
6及び式[6−3d]中のA
9はそれぞれ独立して、炭素数1〜2のアルキレン基を示す。
式[6−1d]中のA
3、式[6−2d]中のA
7及び式[6−3d]中のA
10はそれぞれ独立して、炭素数1〜2のアルキレン基を示す。
式[6−1d]中のA
4、式[6−2d]中のA
8及び式[6−3d]中のA
11はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜2のアルキレン基を示す。なかでも、水素原子又はメチル基が好ましい。
式[6−1d]中のn1、式[6−2d]中のn2及び式[6−3d]中のn3はそれぞれ独立して、1又は2の整数を示す。なかでも、1が好ましい。
式[6−1d]中のm1、式[6−2d]中のm2及び式[6−3d]中のm3はそれぞれ独立して、1又は2の整数を示す。なかでも、1が好ましい。
【0114】
密着性化合物としては、下記の式[6−1]及び式[6−5]で示される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。
【化57】
【化58】
(式[6−4]中、nは1〜10の整数を示し、式[6−5]中、mは1〜10の整数を示す)。
【0115】
さらに具体的には、下記に示す化合物が挙げられる。
例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を分子内に3個有する化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイドビスフェノール型ジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどの重合性不飽和基を分子内に2個有する化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルリン酸エステル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の重合性不飽和基を分子内に1個有する化合物;などが挙げられる。
前記密着性化合物は一例であり、これらに限定されるものではない。また、液晶配向処理剤に用いる密着性化合物は、1種類であってもよく、2種類以上を組み合わせてもよい。
液晶配向処理剤における、密着性化合物の含有量は、すべての重合体成分100質量部に対して、0.1〜150質量部であることが好ましい。架橋反応が進行し目的の効果を発現させるためには、すべての重合体成分100質量部に対して0.1〜100質量部がより好ましく、特に、1〜50質量部が最も好ましい。
【0116】
本発明における液晶配向処理剤には、本発明の効果を損なわない限り、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基又はシクロカーボネート基を有する化合物や、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基及び低級アルコキシアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を有する化合物(総称して架橋性化合物ともいう)を導入することもできる。その際、これら置換基は、架橋性化合物中に2個以上有する必要がある。
【0117】
エポキシ基又はイソシアネート基を有する架橋性化合物としては、例えば、ビスフェノールアセトングリシジルエーテル、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルアミノジフェニレン、テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビス(アミノエチル)シクロヘキサン、テトラフェニルグリシジルエーテルエタン、トリフェニルグリシジルエーテルエタン、ビスフェノールヘキサフルオロアセトジグリシジルエーテル、1,3−ビス(1−(2,3−エポキシプロポキシ)−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロメチル)ベンゼン、4,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)オクタフルオロビフェニル、トリグリシジル−p−アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、2−(4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)−2−(4−(1,1−ビス(4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)エチル)フェニル)プロパン、1,3−ビス(4−(1−(4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)−1−(4−(1−(4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチル)フェノキシ)−2−プロパノールなどが挙げられる。
【0118】
オキセタン基を有する架橋性化合物は、下記の式[4]で示すオキセタン基を少なくとも2個有する架橋性化合物である。
【化59】
具体的には、国際公開公報WO2011/132751(2011.10.27公開)の58項〜59項に掲載される式[4a]〜[4k]で示される架橋性化合物が挙げられる。
【0119】
シクロカーボネート基を有する架橋性化合物としては、下記の式[5]で示されるシクロカーボネート基を少なくとも2個有する架橋性化合物である。
【化60】
具体的には、国際公開公報WO2012/014898(2012.2.2公開)の76項〜82項に掲載される式[5−1]〜[5−42]で示される架橋性化合物が挙げられる。
【0120】
ヒドロキシル基及びアルコキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を有する架橋性化合物としては、例えば、ヒドロキシル基又はアルコキシル基を有するアミノ樹脂、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂、グリコールウリル−ホルムアルデヒド樹脂、スクシニルアミド−ホルムアルデヒド樹脂又はエチレン尿素−ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。具体的には、アミノ基の水素原子がメチロール基又はアルコキシメチル基又はその両方で置換されたメラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体、又はグリコールウリルを用いることができる。このメラミン誘導体又はベンゾグアナミン誘導体は、2量体又は3量体として存在することも可能である。これらはトリアジン環1個当たり、メチロール基又はアルコキシメチル基を平均3個以上6個以下有するものが好ましい。
【0121】
このようなメラミン誘導体又はベンゾグアナミン誘導体の例としては、市販品のトリアジン環1個当たりメトキシメチル基が平均3.7個置換されているMX−750、トリアジン環1個当たりメトキシメチル基が平均5.8個置換されているMW−30(以上、三和ケミカル社製)やサイメル300、301、303、350、370、771、325、327、703、712などのメトキシメチル化メラミン、サイメル235、236、238、212、253、254などのメトキシメチル化ブトキシメチル化メラミン、サイメル506、508などのブトキシメチル化メラミン、サイメル1141のようなカルボキシル基含有メトキシメチル化イソブトキシメチル化メラミン、サイメル1123のようなメトキシメチル化エトキシメチル化ベンゾグアナミン、サイメル1123−10のようなメトキシメチル化ブトキシメチル化ベンゾグアナミン、サイメル1128のようなブトキシメチル化ベンゾグアナミン、サイメル1125−80のようなカルボキシル基含有メトキシメチル化エトキシメチル化ベンゾグアナミン(以上、三井サイアナミド社製)が挙げられる。また、グリコールウリルの例として、サイメル1170のようなブトキシメチル化グリコールウリル、サイメル1172のようなメチロール化グリコールウリル、パウダーリンク1174のようなメトキシメチロール化グリコールウリルなどが挙げられる。
【0122】
ヒドロキシル基若しくはアルコキシル基を有するベンゼン、フェノール性化合物などの架橋性化合物としては、例えば、1,3,5−トリス(メトキシメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(イソプロポキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(sec−ブトキシメチル)ベンゼン、2,6−ジヒドロキシメチル−p−tert−ブチルフェノールなどが挙げられる。
より具体的には、国際公開公報WO2011/132751(2011.10.27公開)の62頁〜66頁に掲載される、式[6−1]〜[6−48]で示される架橋性化合物が挙げられる。
【0123】
液晶配向処理剤における、架橋性化合物の含有量は、すべての重合体成分100質量部に対して、0.1〜100質量部であることが好ましい。架橋反応が進行し目的の効果を発現させるためには、すべての重合体成分100質量部に対して0.1〜50質量部がより好ましく、特に、1〜30質量部が最も好ましい。
本発明における液晶配向処理剤には、垂直液晶配向膜中の電荷移動を促進して、素子の電荷抜けを促進させる化合物として、国際公開公報WO2011/132751(2011.10.27公開)の69頁〜73頁に掲載される、式[M1]〜[M156]で示される窒素含有複素環アミン化合物を添加することもできる。これらのアミン化合物は、液晶配向処理剤に直接添加しても構わないが、適当な溶媒で濃度が0.1〜10質量%、好ましくは1〜7質量%の溶液にしてから添加することが好ましい。この溶媒としては、上述した特定ポリイミド系重合体を溶解させる有機溶媒であれば特に限定されない。
【0124】
本発明における液晶配向処理剤は、本発明の効果を損なわない限り、液晶配向処理剤を塗布した際の垂直液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物を用いることができる。さらに、垂直液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物などを用いることもできる。
垂直液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノ二オン系界面活性剤などが挙げられる。
より具体的には、例えば、エフトップEF301、EF303、EF352(以上、トーケムプロダクツ社製)、メガファックF171、F173、R−30(以上、大日本インキ社製)、フロラードFC430、FC431(以上、住友スリーエム社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(以上、旭硝子社製)などが挙げられる。これらの界面活性剤の使用割合は、液晶配向処理剤に含有されるすべての重合体成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜2質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
【0125】
垂直液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例としては、以下に示す官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物が挙げられる。
例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−4、4’−ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0126】
これら基板との密着させる化合物を使用する場合は、液晶配向処理剤に含有されるすべての重合体成分100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量部である。0.1質量部未満であると密着性向上の効果は期待できず、30質量部よりも多くなると液晶配向処理剤の保存安定性が悪くなる場合がある。
本発明における液晶配向処理剤には、上記以外の化合物の他に、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、垂直液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体や導電物質を添加してもよい。
【0127】
<垂直液晶配向膜・液晶表示素子の作製方法>
本発明の液晶表示素子に用いる基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板の他、アクリル基板、ポリカーボネート基板、PET(ポリエチレンテレフタレート)基板などのプラスチック基板などを用いることができる。
液晶表示素子をリバース型素子として、調光窓などに用いる場合には、プラスチック基板であることが好ましい。また、プロセスの簡素化の観点からは、液晶駆動のためのITO(Indium Tin Oxide)電極などが形成された基板を用いることが好ましい。また、反射型のリバース型素子とする場合には、片側の基板のみにならば、シリコンウエハやアルミニウムなどの金属や誘電体多層膜が形成された基板を使用することができる。
本発明の液晶表示素子は、基板の少なくとも一方が、液晶分子を垂直に配向させるような垂直液晶配向膜を有する。この垂直液晶配向膜は、液晶配向処理剤を基板上に塗布し、焼成した後、ラビング処理や光照射などで配向処理をして得ることができる。また、本発明における垂直液晶配向膜の場合は、これらの配向処理無しでも垂直液晶配向膜として用いることができる。
【0128】
液晶配向処理剤の塗布方法は、特に限定されないが、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット法、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法、スプレー法などがあり、基板の種類や目的とする垂直液晶配向膜の膜厚に応じて、適宜選択することができる。
液晶配向処理剤を基板上に塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブン、IR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により、液晶配向処理剤に用いる溶媒に応じて、30〜300℃、好ましくは30〜250℃の温度で溶媒を蒸発させて焼成し、垂直液晶配向膜を得ることができる。
焼成後の垂直液晶配向膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると本素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましくは5〜300nm、より好ましくは10〜200nmである。
【0129】
液晶表示素子に用いる液晶組成物は、少なくとも液晶と重合性化合物を有する液晶組成物である。液晶と重合性化合物以外のものとしては、前記開始剤や液晶表示素子の電極間隙(ギャップともいう)を制御するためのスペーサが挙げられる。
液晶組成物の注入方法は、特に限定されないが、例えば、次の方法が挙げられる。すなわち、基板にガラス基板を用いる場合、垂直液晶配向膜が形成された一対の基板を用意し、片側の基板の4片を、一部分を除いてシール剤を塗布し、その後、垂直液晶配向膜の面が内側になるようにして、もう片側の基板を貼り合わせた空セルを作製する。その後、シール剤が塗布されていない場所から、液晶組成物を減圧注入して、液晶組成物注入セルを得る方法が挙げられる。
【0130】
さらに、基板にプラスチック基板を用いる場合には、垂直液晶配向膜が形成された一対の基板を用意し、片側の基板の上にODF(One Drop Filling)法やインクジェット法などで、液晶組成物を滴下し、その後、もう片側の基板を貼り合わせて、液晶組成物注入セルを得る方法が挙げられる。この場合、本発明の液晶表示素子では、液晶層と垂直液晶配向膜との密着性が高いため、基板の4片にシール剤を塗布しなくても良い。
【0131】
液晶表示素子のギャップは、スペーサなどで制御することができる。その方法は、上述した液晶組成物中に、目的とする大きさのスペーサを導入する方法や、目的とする大きさのカラムスペーサを有する基板を用いる方法が挙げられる。また、ギャップの大きさは、1〜100μmが好ましく、より好ましくは、2〜50μmである。特に好ましくは、3〜30μmである。ギャップが小さすぎると液晶表示素子のコントラストが低下し、大きすぎると本素子の駆動電圧が高くなる。
本発明の液晶表示素子は、液晶組成物の一部又は全体が液晶性を示す状態で、液晶組成物の硬化を行い、液晶と重合性化合物の硬化物複合体を形成させて得られる。
【0132】
液晶組成物の硬化は、前記で得られた液晶組成物注入セルに、活性エネルギー線の照射又は加熱の少なくとも一方の処理によって行う。ここで、活性エネルギー線としては、紫外線が好適である。紫外線としては、波長が250〜400nm、好ましくは、310〜370nmである。また、加熱処理の場合、その温度は、40〜120℃、好ましくは60〜80℃である。また、紫外線処理と加熱処理とを両方同時に行っても、紫外線処理をした後に加熱処理を行っても良い。本発明においては、液晶組成物の硬化は、紫外線処理のみが好ましい。
以上のようにして、本発明において、特定重合体を含む液晶配向処理剤から得られる垂直液晶配向膜を用いた液晶表示素子は、液晶の垂直配向性が高く、良好な光学特性、すなわち、電圧無印加時の透明性と電圧印加時の散乱特性が良好で、さらには液晶層と垂直液晶配向膜との密着性が高い。そのため、本発明の液晶表示素子は、自動車、鉄道および航空機などの輸送機器および輸送機械に用いる液晶表示素子、具体的には、光の透過と遮断を制御する調光窓やルームミラーに用いる光シャッター素子などに好適に用いることができる。
特に、前記の通り、電圧無印加時の透明性と電圧印加時の散乱特性が良好であることから、本素子を乗り物のガラス窓に使用した場合は、従来のリバース型素子を使用した場合に比べて、夜間時における光の取り入れ効率が高く、さらに、外光からの眩しさを防ぐ効果も高くなる。そのため、乗り物を運転する際の安全性や乗車時の快適性を、より改善することが可能となる。また、液晶表示素子をフィルム基板で作製し、それを乗り物のガラス窓に貼って使用する場合、従来のリバース型素子に比べて、本素子の信頼性が高くなる。すなわち、液晶層と垂直配向膜との密着性が低いことが要因の不良や劣化が起こりにくくなる。
加えて、本発明の液晶表示素子は、LCD(Liquid Crystal Display)やOLED(Organic Light-Emitting Diode)ディスプレイなどのディスプレイ装置の導光板やこれらディスプレイを用いた透明ディスプレイの裏板に用いることもできる。具体的には、透明ディスプレイの裏板に用いる場合は、透明ディスプレイと液晶表示素子とを合わせ、透明ディスプレイ上で画面表示を行う際に、その背面からの光の入り込みを液晶表示素子で抑制するために用いることができる。これにより、液晶表示素子は、透明ディスプレイ上で画面表示を行う際に電圧印加された散乱状態となり、画面表示を鮮明にすることができ、画面表示が終わった後には、電圧が無印加の透明状態となる。
【実施例】
【0133】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、これらに限定して解釈されるものではない。
【0134】
「合成例、実施例及び比較例で用いる化合物の略号」
(液晶)
L1:MLC−6608(メルク社製)
(重合性化合物)
R1:下記の式[R1]で示される化合物
(光開始剤)
P1:下記の式[P1]で示される化合物
【化61】
【0135】
(特定側鎖型ジアミン化合物)
A1:1,3−ジアミノ−4−〔4−(トランス−4−n−ヘプチルシクロへキシル)フェノキシ〕ベンゼン(式[1−1]に相当)
A2:1,3−ジアミノ−4−〔4−(トランス−4−n−ヘプチルシクロへキシル)フェノキシメチル〕ベンゼン(式[1−1]に相当)
A3:1,3−ジアミノ−4−{4−〔トランス−4−(トランス−4−n−ペンチルシクロへキシル)シクロへキシル〕フェノキシ}ベンゼン(式[1−1]に相当)
A4:式[A4]で示されるジアミン化合物(式[1−1]に相当)
A5:1,3−ジアミノ−4−オクタデシルオキシベンゼン(式[1−2]に相当)
【0136】
【化62】
【化63】
【化64】
【0137】
(第2のジアミン化合物)
B1:3,5−ジアミノ安息香酸
B2:式[B2]で示されるジアミン
【化65】
(その他のジアミン化合物)
C1:p−フェニレンジアミン
C2:m−フェニレンジアミン
【化66】
【0138】
(テトラカルボン酸成分
D1:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
D2:ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物
D3:下記の式[D3]で示されるテトラカルボン酸二無水物
D4:下記の式[D4]で示されるテトラカルボン酸二無水物
【化67】
【0139】
<密着性化合物>
M1:下記の式[M1]で示される化合物
M2:下記の式[M2]で示される化合物
M3:下記の式[M3]で示される化合物
【化68】
【0140】
<架橋性化合物>
K1:下記の式[K1]で示される化合物
【化69】
【0141】
<溶媒>
(沸点が180℃未満の溶媒)
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
MCS:エチレングリコールモノメチルエーテル
ECS:エチレングリコールモノエチルエーテル
PCS:エチレングリコールモノプロピルエーテル
BCS:エチレングリコールモノブチルエーテル
PB:プロピレングリコールモノブチルエーテル
【化70】
(沸点が180℃以上の溶媒)
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
NEP:N−エチル−2−ピロリドン
γ−BL:γ−ブチロラクトン
【0142】
「ポリイミド系重合体の分子量測定」
ポリイミド前駆体及びポリイミドの分子量は、常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC−101)(昭和電工社製)、カラム(KD−803,KD−805)(Shodex社製)を用いて、以下のようにして測定した。
カラム温度:50℃
溶離液:N,N’−ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・H
2O)が30mmol/L(リットル)、リン酸・無水結晶(o−リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量;約900,000、150,000、100,000及び30,000)(東ソー社製)及びポリエチレングリコール(分子量;約12,000、4,000及び1,000)(ポリマーラボラトリー社製)。
【0143】
「ポリイミドのイミド化率の測定」
ポリイミド粉末20mgをNMR(核磁気共鳴)サンプル管(NMRサンプリングチューブスタンダード,φ5(草野科学社製))に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d6,0.05質量%TMS(テトラメチルシラン)混合品)(0.53ml)を添加し、超音波をかけて完全に溶解させた。この溶液をNMR測定機(JNW−ECA500)(日本電子データム社製)にて500MHzのプロトンNMRを測定した。イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5〜10.0ppm付近に現れるアミド酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い以下の式によって求めた。
イミド化率(%)=(1−α・x/y)×100
上記式において、xはアミド酸のNH基由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミド酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミド酸のNH基プロトン1個に対する基準プロトンの個数割合である。
【0144】
「特定ポリイミド系重合体の合成」
<合成例1>
D1(2.96g,15.1mmol)、A1(2.91g,7.65mmol)、B1(0.93g,6.11mmol)及びC2(0.17g,1.57mmol)をMCS(20.9g)中で混合し、40℃で8時間反応させ、樹脂固形分濃度25質量%のポリアミド酸溶液(1)を得た。このポリアミド酸の数平均分子量は24,600であり、重量平均分子量は、73,900であった。
【0145】
<合成例2>
D2(3.83g,15.3mmol)、A2(6.04g,15.3mmol)及びB1(2.33g,15.3mmol)をMCS(26.4g)中で混合し、50℃で2時間反応させた後、D1(2.94g,15.0mmol)とMCS(23.8g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(2)を得た。このポリアミド酸の数平均分子量は16,800であり、重量平均分子量は、55,900であった。
【0146】
<合成例3>
D2(3.83g,15.3mmol)、A2(6.04g,15.3mmol)及びB1(2.33g,15.3mmol)をNMP(26.4g)中で混合し、50℃で2時間反応させた後、D1(2.94g,15.0mmol)とNMP(23.8g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)に、NMPを加えて6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(3.90g)及びピリジン(2.40g)を加え、70℃で2時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥して、イミド粉末(3)を得た。このポリイミドのイミド化率は60%であり、数平均分子量は21,500であり、重量平均分子量は59,400であった。
【0147】
<合成例4>
D2(2.64g,10.6mmol)、A3(4.56g,10.5mmol)、B1(1.60g,10.5mmol)及びB2(1.07g,5.26mmol)をNMP(21.9g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、D1(3.02g,15.8mmol)とNMP(17.2g)を加え、40℃で8時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)に、NMPを加えて6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(3.88g)及びピリジン(2.40g)を加え、50℃で2時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥して、ポリイミド粉末(4)を得た。このポリイミドのイミド化率は56%であり、数平均分子量は19,100であり、重量平均分子量は53,100であった。
【0148】
<合成例5>
D2(2.50g,10.0mmol)、A4(2.96g,6.00mmol)、B1(1.52g,10.0mmol)、B2(0.41g,2.00mmol)及びC1(0.22g,2.00mmol)をNMP(19.0g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、D1(1.92g,9.80mmol)とNMP(9.50g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)に、NMPを加えて6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.01g)及びピリジン(2.50g)を加え、50℃で2時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥して、ポリイミド粉末(5)を得た。このポリイミドのイミド化率は49%であり、数平均分子量は14,900であり、重量平均分子量は46,200であった。
【0149】
<合成例6>
D3(5.45g,24.3mmol)、A2(5.81g,14.7mmol)、B1(1.12g,7.36mmol)及びB2(0.50g,2.46mmol)をNMP(38.6g)中で混合し、40℃で10時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)にNMPを加えて、6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.00g)及びピリジン(2.48g)を加え、70℃で2時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥して、ポリイミド粉末(6)を得た。このポリイミドのイミド化率は63%であり、数平均分子量は16,900であり、重量平均分子量は47,900であった。
【0150】
<合成例7>
D3(5.45g,24.3mmol)、A4(3.63g,7.37mmol)及びB1(2.61g,17.2mmol)をNMP(35.1g)中で混合し、40℃で5時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)にNMPを加えて、6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(8.00g)及びピリジン(2.48g)を加え、50℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥して、ポリイミド粉末(7)を得た。このポリイミドのイミド化率は54%であり、数平均分子量は18,100であり、重量平均分子量は48,800であった。
【0151】
<合成例8>
D4(4.59g,15.3mmol)、A3(6.62g,15.3mmol)、B1(1.86g,12.2mmol)及びB2(0.62g,3.05mmol)をNMP(27.6g)中で混合し、40℃で8時間反応させた後、D1(2.94g,15.0mmol)とNMP(22.3g)を加え、25℃で10時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)に、NMPを加えて6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(7.24g)及びピリジン(2.24g)を加え、40℃で1.5時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥して、ポリイミド粉末(8)を得た。このポリイミドのイミド化率は71%であり、数平均分子量は16,400であり、重量平均分子量は36,900であった。
【0152】
<合成例9>
D2(3.83g,15.3mmol)、A5(5.76g,15.3mmol)及びB1(2.33g,15.3mmol)をNMP(26.4g)中で混合し、50℃で2時間反応させた後、D1(2.94g,15.0mmol)とNMP(23.8g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)に、NMPを加えて6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(3.88g)及びピリジン(2.42g)を加え、70℃で2時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥して、ポリイミド粉末(9)を得た。このポリイミドのイミド化率は61%であり、数平均分子量は19,200であり、重量平均分子量は56,200であった。
【0153】
<合成例10>
D2(3.83g,15.3mmol)及びB1(4.66g,30.6mmol)をNMP(37.7g)中で混合し、50℃で2時間反応させた後、D1(2.94g,15.0mmol)とNMP(12.6g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(10)を得た。このポリアミド酸の数平均分子量は24,500であり、重量平均分子量は、77,500であった。
【0154】
<合成例11>
合成例10の合成手法で得られたポリアミド酸溶液(10)(30.0g)に、NMPを加えて6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(3.85g)及びピリジン(2.40g)を加え、70℃で2時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥して、ポリイミド粉末(11)を得た。このポリイミドのイミド化率は59%であり、数平均分子量は22,200であり、重量平均分子量は61,500であった。
【0155】
<合成例12>
D2(3.83g,15.3mmol)、A2(6.04g,15.3mmol)及びB1(2.33g,15.3mmol)をNMP(26.4g)中で混合し、50℃で2時間反応させた後、D1(2.94g,15.0mmol)とNMP(23.8g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(12)を得た。このポリアミド酸の数平均分子量は18,700であり、重量平均分子量は、62,100であった。
合成例1〜12で得られた特定ポリイミド系重合体のイミド化率、該重合体の合成に用いたテトラカルボン酸成分とジアミン成分等を表1に、まとめて示す。
【0156】
【表1】
*1:ポリアミド酸。
【0157】
「液晶配向処理剤の製造」
実施例1〜21、比較例1〜6では、液晶配向処理剤の製造例を記載した。得られた液晶配向処理剤は、液晶表示素子の作製及びその評価のためにも使用される。
実施例1、2、4、6〜21及び比較例1〜3、5で得られた液晶配向処理剤を、用いた特定ポリイミド系重合体、溶媒、密着性化合物、架橋性化合物及びそれらの使用量とあわせて、表2〜4に示す。
実施例及び比較例で得られた液晶配向処理剤を用い、「液晶表示素子の作製(ガラス基板及びプラスチック基板)」、「液晶配向性の評価(ガラス基板及びプラスチック基板)」、「光学特性(透過率と散乱特性)の評価(ガラス基板及びプラスチック基板)」、及び「液晶層と垂直液晶配向膜との密着性の評価(ガラス基板及びプラスチック基板)」を行った。
【0158】
「液晶組成物の作製」
(液晶組成物(1)の作製)
L1(11.5g)、R1(1.73g)及びP1(0.12g)を混合し、加熱した後、25℃まで冷却すると液晶性を示す均一な液晶組成物(1)を得た。
(液晶組成物(2)の作製)
L1(12.0g)、R1(2.40g)及びP1(0.12g)を混合し、加熱した後、25℃まで冷却すると液晶性を示す均一な液晶組成物(2)を得た。
【0159】
「液晶表示素子の作製(ガラス基板)」
実施例および比較例で得られた液晶配向処理剤を細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、その溶液を純水及びIPA(イソプロピルアルコール)で洗浄した、100×100mmのITO電極付きガラス基板(縦:100mm、横:100mm、厚さ:0.7mm)のITO面上にスピンコートし、ホットプレート上にて100℃で2分間加熱処理をして、膜厚が100nmの垂直液晶配向膜付きのITO基板を得た。
【0160】
得られた垂直液晶配向膜付きのITO基板を2枚用意し、その一方の基板の垂直液晶配向膜面に、6μmのスペーサを塗布した。その後、その基板のスペーサを塗布した垂直液晶配向膜面に、ODF法にて前記液晶組成物を滴下し、次いで、他方の基板の垂直液晶配向膜界面が向き合うように貼り合わせを行い、処理前の素子を得た。
次いで、処理前の素子に、照度60mWのメタルハライドランプを用いて、350nm以下の波長をカットし、365nm換算で7J/cm
2の紫外線照射を行い、液晶表示素子(ガラス基板)を得た。液晶セルに紫外線を照射している際の照射装置内の温度は、25℃に制御した。
【0161】
「液晶表示素子の作製(プラスチック基板)」
実施例で得られた液晶配向処理剤を細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、この溶液を純水で洗浄した150×150mmのITO電極付きPET(ポリエチレンテレフタレート)基板(縦:150mm、横:150mm、厚さ:0.2mm)のITO面上にバーコーターにて塗布し、ホットプレート上にて100℃で2分間加熱処理をして、膜厚が100nmの垂直液晶配向膜付きのITO基板を得た。得られた垂直液晶配向膜付きのITO基板を2枚用意し、その一方の基板の垂直液晶配向膜面に、6μmのスペーサを塗布した。その後、その基板のスペーサを塗布した垂直液晶配向膜面に、ODF法にて前記液晶組成物を滴下し、次いで、他方の基板の垂直液晶配向膜界面が向き合うように貼り合わせを行い、処理前の素子を得た。
得られた処理前の素子に、照度60mWのメタルハライドランプを用いて、350nm以下の波長をカットし、365nm換算で7J/cm
2の紫外線照射を行い、液晶表示素子(プラスチック基板)を得た。液晶セルに紫外線を照射している際の照射装置内の温度は、25℃に制御した。
表5〜7には、液晶表示素子(ガラス基板及びプラスチック基板)の作製に用いた液晶配向処理剤及び液晶組成物についてまとめて示した。
【0162】
「液晶配向性の評価(ガラス基板及びプラスチック基板)」
前記と同様の条件で作製した液晶表示素子(ガラス基板及びプラスチック基板)を用いて、液晶配向性の評価を行った。具体的には、本素子を偏光顕微鏡(ECLIPSE E600WPOL)(ニコン社製)で観察し、液晶が垂直に配向しているかどうかを確認し、液晶が垂直に配向しているものを本評価に優れるとした(表5〜7中に、「良好」と示した。)。
【0163】
その後、液晶配向性の評価が終了した液晶表示素子(ガラス基板及びプラスチック基板)を、温度100℃の高温槽内に144時間保管した。保管後、前記と同様の条件で、液晶配向性の評価を行った。具体的には、液晶配向性に乱れが見られず、均一に液晶が配向しているものを本評価に優れるとした(表5〜7中に、「良好」と示した。)。
表5〜7には、液晶表示素子(ガラス基板及びプラスチック基板)の液晶配向性の評価結果をまとめて示した。
【0164】
「光学特性(透明性と散乱特性)の評価(ガラス基板及びプラスチック基板)」
前記と同様の条件で作製した液晶表示素子(ガラス基板及びプラスチック基板)を用いて、光学特性(透明性と散乱特性)の評価を行った。
電圧無印加時の透明性に関しては、電圧無印加状態での液晶表示素子(ガラス基板及びプラスチック基板)の透過率を測定することで行った。具体的には、測定装置にUV−3600(島津製作所社製)、温度25℃で、リファレンス(参照例)に前記ITO電極付きガラス基板(又はPET基板)を用い、スキャン波長を300〜800nmの条件で透過率を測定した。評価は、450nmの波長の透過率で行い、透過率が高いものほど、本評価に優れるとした(表8〜10中に、透過率の値を示した。)。
【0165】
電圧印加時の散乱特性は、液晶表示素子(ガラス基板及びプラスチック基板)に、交流駆動で40Vを印加し、液晶の配向状態を目視観察することで行った。具体的には、本素子が白濁したもの、すなわち、散乱特性が得られたものを、本評価に優れるとした(表8〜10中に、「良好」と示した。)。
表8〜10には、液晶表示素子(ガラス基板及びプラスチック基板)の光学特性(透明性と散乱特性)の評価結果をまとめて示した。
【0166】
「液晶層と垂直液晶配向膜との密着性の評価(ガラス基板及びプラスチック基板)」
前記と同様の条件で作製した液晶表示素子(ガラス基板及びプラスチック基板)を用いて、液晶層と垂直液晶配向膜との密着性の評価を行った。具体的には、液晶表示素子(ガラス基板及びプラスチック基板)を、温度80℃で、湿度90%RHの高温高湿槽内に24時間保管し、本素子内の気泡の有無及び素子の剥離を確認した。その際、本素子内に気泡が見られず、素子の剥離(液晶層と垂直液晶配向膜とが剥がれている状態)が起こっていないものを、本評価に優れるとした(表8〜10中に、「良好」と示した。)。
表8〜10には、液晶表示素子(ガラス基板及びプラスチック基板)の液晶層と垂直液晶配向膜との密着性の評価結果をまとめて示した。
【0167】
<実施例1>
合成例1で得られた樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(1)(10.0g)に、MCS(16.0g)、NMP(3.90g)、BCS(11.8g)、M2(0.25g)及びK1(0.13g)を加え、25℃で5時間攪拌して、液晶配向処理剤(1)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(1)と液晶組成物(1)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板)し、上記評価を行った。
【0168】
<実施例2>
合成例2で得られた樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(2)(10.5g)に、MCS(18.9g)及びPB(14.4g)を加え、25℃で5時間攪拌して、液晶配向処理剤(2)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(2)と液晶組成物(1)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板及びプラスチック基板)し、上記評価を行った。
【0169】
<実施例3>
実施例2で得られた液晶配向処理剤(2)と液晶組成物(2)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板)し、上記評価を行った。
【0170】
<実施例4>
合成例3で得られたポリイミド粉末(3)(1.50g)に、PGME(21.2g)及びγ−BL(2.40g)を加え、70℃にて24時間攪拌して、液晶配向処理剤(3)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(3)と液晶組成物(1)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板)し、上記評価を行った。
【0171】
<実施例5>
実施例4で得られた液晶配向処理剤(3)と液晶組成物(2)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板)し、上記評価を行った。
【0172】
<実施例6>
合成例3で得られたポリイミド粉末(3)(1.50g)に、PGME(21.2g)及びγ−BL(2.40g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、M2(0.45g)及びK1(0.15g)を加え、25℃で2時間攪拌して、液晶配向処理剤(4)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(4)と液晶組成物(1)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板及びプラスチック基板)し、上記評価を行った。
【0173】
<実施例7>
合成例3で得られたポリイミド粉末(3)(1.60g)に、PGME(12.5g)、ECS(10.0g)及びγ−BL(2.50g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、M1(0.56g)を加え、25℃で2時間攪拌して、液晶配向処理剤(5)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(5)と液晶組成物(2)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板)し、上記評価を行った。
【0174】
<実施例8>
合成例4で得られたポリイミド粉末(4)(1.55g)に、ECS(8.50g)、PCS(14.6g)及びNEP(1.20g)を加え、70℃にて24時間攪拌して、液晶配向処理剤(6)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(6)と液晶組成物(2)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板)し、上記評価を行った。
【0175】
<実施例9>
合成例4で得られたポリイミド粉末(4)(1.60g)に、PGME(20.1g)、PB(2.50g)及びγ−BL(2.50g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、M2(0.56g)及びK1(0.16g)を加え、25℃で2時間攪拌して、液晶配向処理剤(7)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(7)と液晶組成物(1)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板)し、上記評価を行った。
【0176】
<実施例10>
合成例4で得られたポリイミド粉末(4)(1.50g)に、ECS(16.5g)、BCS(2.40g)及びNEP(4.70g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、M3(0.23g)を加え、25℃で2時間攪拌して、液晶配向処理剤(8)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(8)と液晶組成物(1)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板)し、上記評価を行った。
【0177】
<実施例11>
合成例5で得られたポリイミド粉末(5)(1.50g)に、ECS(20.0g)及びγ−BL(3.50g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、K1(0.23g)を加え、25℃で2時間攪拌して、液晶配向処理剤(9)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(9)と液晶組成物(2)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板及びプラスチック基板)し、上記評価を行った。
【0178】
<実施例12>
合成例5で得られたポリイミド粉末(5)(1.52g)に、PGME(13.1g)、PB(9.50g)及びγ−BL(1.20g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、M3(0.08g)を加え、25℃で2時間攪拌して、液晶配向処理剤(10)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(10)と液晶組成物(1)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板)し、上記評価を行った。
【0179】
<実施例13>
合成例5で得られたポリイミド粉末(5)(1.50g)に、PGME(20.0g)、PB(1.20g)及びγ−BL(2.40g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、M2(0.95g)及びK1(0.08g)を加え、25℃で2時間攪拌して、液晶配向処理剤(11)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(11)と液晶組成物(1)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板及びプラスチック基板)し、上記評価を行った。
【0180】
<実施例14>
合成例5で得られたポリイミド粉末(5)(1.50g)に、ECS(11.8g)及びPCS(11.8g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、M1(0.60g)を加え、25℃で2時間攪拌して、液晶配向処理剤(12)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(12)と液晶組成物(2)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板)し、上記評価を行った。
【0181】
<実施例15>
合成例6で得られたポリイミド粉末(6)(1.60g)に、PGME(23.8g)及びγ−BL(1.30g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、M2(0.48g)及びK1(0.08g)を加え、25℃で2時間攪拌して、液晶配向処理剤(13)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(13)と液晶組成物(1)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板)し、上記評価を行った。
【0182】
<実施例16>
合成例6で得られたポリイミド粉末(6)(1.50g)に、PGME(23.5g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、K1(0.16g)を加え、25℃で2時間攪拌して、液晶配向処理剤(14)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(14)と液晶組成物(2)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板)し、上記評価を行った。
【0183】
<実施例17>
合成例7で得られたポリイミド粉末(7)(1.55g)に、PGME(24.3g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、M2(0.39g)及びK1(0.16g)を加え、25℃で2時間攪拌して、液晶配向処理剤(15)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(15)と液晶組成物(1)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板及びプラスチック基板)し、上記評価を行った。
【0184】
<実施例18>
合成例7で得られたポリイミド粉末(7)(1.50g)に、PGME(20.0g)及びγ−BL(3.50g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、M3(0.15g)及びK1(0.08g)を加え、25℃で2時間攪拌して、液晶配向処理剤(16)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(16)と液晶組成物(1)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板)し、上記評価を行った。
【0185】
<実施例19>
合成例8で得られたポリイミド粉末(8)(1.50g)にMCS(9.40g)、BCS(11.8g)及びNMP(2.40g)を加え、70℃にて24時間攪拌して、液晶配向処理剤(17)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(17)と液晶組成物(2)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板)し、上記評価を行った。
【0186】
<実施例20>
合成例8で得られたポリイミド粉末(8)(1.55g)に、PGME(19.4g)、PB(2.40g)及びγ−BL(2.40g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、M2(0.47g)及びK1(0.16g)を加え、25℃で2時間攪拌して、液晶配向処理剤(18)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(18)と液晶組成物(1)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板)し、上記評価を行った。
【0187】
<実施例21>
合成例9で得られたポリイミド粉末(9)(1.50g)に、PGME(16.5g)、PB(2.40g)及びγ−BL(4.70g)を加え、70℃にて24時間攪拌して、液晶配向処理剤(19)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(19)と液晶組成物(1)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板)し、上記評価を行った。
【0188】
<比較例1>
合成例10で得られた樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(10)(10.5g)に、NMP(25.0g)及びBCS(8.20g)を加え、25℃で5時間攪拌して、液晶配向処理剤(20)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(20)と液晶組成物(1)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板)し、上記評価を行った。
【0189】
<比較例2>
合成例11で得られたポリイミド粉末(11)(1.50g)に、NMP(18.8g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(4.70g)を加え、25℃で5時間攪拌して、液晶配向処理剤(21)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(21)と液晶組成物(1)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板)し、上記評価を行った。
【0190】
<比較例3>
合成例12で得られた樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(12)(10.0g)に、NMP(23.8g)及びBCS(7.80g)を加え、25℃で5時間攪拌して、液晶配向処理剤(22)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(22)と液晶組成物(1)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板)し、上記評価を行った。
【0191】
<比較例4>
比較例3で得られた液晶配向処理剤(22)と液晶組成物(2)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板)し、上記評価を行った。
【0192】
<比較例5>
合成例3で得られたポリイミド粉末(3)(1.60g)に、NMP(20.1g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(5.00g)を加え、25℃で5時間攪拌して、液晶配向処理剤(23)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(23)と液晶組成物(1)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板)し、上記評価を行った。
【0193】
<比較例6>
比較例5で得られた液晶配向処理剤(23)と液晶組成物(2)を用いて、液晶表示素子を作製(ガラス基板)し、上記評価を行った。
【0194】
【表2】
【0195】
【表3】
【0196】
【表4】
【0197】
【表5】
【0198】
【表6】
【0199】
【表7】
【0200】
【表8】
【0201】
【表9】
【0202】
【表10】
*1:液晶が垂直に配向していなかった。
*2:液晶配向性に乱れが見られた。
*3:液晶が垂直配向していないため、測定できなかった。
*4:素子内に、気泡が見られた。
*5:素子が、液晶層と垂直液晶配向膜との間で剥離した。
【0203】
前記結果からわかるように、実施例においては、ポリイミド系重合体を用いた液晶配向処理剤であっても、液晶配向膜を作製する焼成を低温で行うことができる液晶表示素子を得ることができた。
さらに、実施例の液晶配向処理剤から得られる垂直液晶配向膜を用いた液晶表示素子は、比較例の液晶配向処理剤から得られる垂直液晶配向膜を用いた液晶表示素子に比べて、液晶の垂直配向性が高く、良好な光学特性、すなわち、電圧無印加時の透明性と電圧印加時の散乱特性が良好で、さらには液晶層と垂直液晶配向膜との密着性が高かった。
特に、比較例の液晶配向処理剤は、従来技術の材料と同様に、高沸点の溶媒を多く用いているため、液晶配向膜を作製する焼成を低温にした場合、液晶表示素子を高温槽に保管した後に、液晶配向性に乱れが見られた。また、当該素子を高温高湿槽内に保管した後では、素子内に気泡が見られたり、液晶層と垂直液晶配向膜との間で剥離が起こっていた。これに比べて、実施例の液晶配向処理剤を用いた場合は、これら問題は起こらなかった。
【0204】
すなわち、重合体が同一で、液晶配向処理剤の溶媒に、本発明の特定溶媒を溶媒全体の50質量%以上含む液晶配向処理剤を用いた実施例と、高沸点の溶媒を多く含む比較例、具体的には、実施例2と比較例3、実施例3と比較例4、実施例4と比較例5、及び実施例5と比較例6との比較において、比較例の液晶表示素子では、素子を高温槽に保管した後に、液晶配向性に乱れが見られた。また、当該素子を高温高湿槽内に保管した後に、液晶層と垂直液晶配向膜との密着性が低下した。
特に、液晶組成物中の重合性化合物の含有量が多い液晶組成物(2)を用いた場合、当該素子の液晶層と垂直液晶配向膜との間で剥離した。