(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6390624
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01G 11/78 20130101AFI20180910BHJP
H01G 11/74 20130101ALI20180910BHJP
H01M 2/34 20060101ALI20180910BHJP
H01M 2/22 20060101ALI20180910BHJP
H01M 2/02 20060101ALI20180910BHJP
H01M 2/04 20060101ALI20180910BHJP
H01M 2/06 20060101ALI20180910BHJP
H01G 11/82 20130101ALI20180910BHJP
【FI】
H01G11/78
H01G11/74
H01M2/34 B
H01M2/22 A
H01M2/02 F
H01M2/04 F
H01M2/06 F
H01G11/82
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-554891(P2015-554891)
(86)(22)【出願日】2014年12月22日
(86)【国際出願番号】JP2014083956
(87)【国際公開番号】WO2015098866
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2017年8月1日
(31)【優先権主張番号】特願2013-270463(P2013-270463)
(32)【優先日】2013年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】関谷 雅彰
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 淳
(72)【発明者】
【氏名】江口 徳孝
(72)【発明者】
【氏名】増井 貴史
(72)【発明者】
【氏名】若松 喜美
【審査官】
田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/039497(WO,A1)
【文献】
特開平11−283588(JP,A)
【文献】
特開2000−357495(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/036249(WO,A1)
【文献】
特開2009−302019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/78
H01G 11/74
H01G 11/82
H01M 2/02
H01M 2/04
H01M 2/06
H01M 2/22
H01M 2/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向の一端側に被溶接部を残すように帯状の集電板に活物質層が形成されてなる一方の極性の極板と、セパレータと、幅方向の他端側に被溶接部を残すように帯状の集電板に活物質層が形成されてなる他方の極性の極板とを積層してなる積層体が管状の軸芯の周りに捲回されて構成された捲回極板群と、
一方の端部に開口部を有して内部に前記捲回極板群が収納される有底筒状の導電性を有する容器と、
前記容器と電気的に絶縁された状態で、前記容器の前記開口部を塞ぐ導電性を有する蓋部材と、
前記軸芯の一端に支持されて前記捲回極板群の前記一方の極性の極板の前記被溶接部に溶接された第1の集電部材と、
前記軸芯の他端に支持されて前記捲回極板群の前記他方の極性の極板の前記被溶接部に溶接された第2の集電部材と、
前記第2の集電部材よりも前記蓋部材側に位置する前記容器の周壁の周壁部分が前記軸芯の径方向内側に向かって凸となるように変形されて形成された環状凸部と、
前記環状凸部と前記第2の集電部材との間に配置されて前記第2の集電部材と前記容器とを電気的に絶縁する絶縁リング部材とを有し、
前記第1の集電部材が前記容器と電気的に接続され、
前記第2の集電部材が前記蓋部材と電気的に接続されてなる蓄電デバイスであって、
前記絶縁リング部材は、前記捲回極板群の前記第2の集電部材側の端部の外周部を囲む筒部と該筒部と一体に形成されて該筒部から前記径方向内側に向かって延びて前記第2の集電部材と接触する板状部とからなり、
前記板状部の前記環状凸部と対向する面には、前記環状凸部と接触する複数の突起部が、前記軸芯の周方向に一定の間隔をあけて一体に設けられており、
前記複数の突起部は、それぞれ前記軸芯の径方向に延びる形状を有しており、
前記複数の突起部は、前記環状凸部と接触した状態で、前記環状凸部よりも前記径方向内側に突出する長さを有しており、
前記複数の突起部は、3個以上であり、
前記第2の集電部材には、ガス抜き用の複数の貫通孔が形成されており、前記絶縁リング部材の前記板状部は、前記複数の貫通孔を塞がない大きさを有していることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項2】
幅方向の一端側に被溶接部を残すように帯状の集電板に活物質層が形成されてなる一方の極性の極板と、セパレータと、幅方向の他端側に被溶接部を残すように帯状の集電板に活物質層が形成されてなる他方の極性の極板とを積層してなる積層体が管状の軸芯の周りに捲回されて構成された捲回極板群と、
一方の端部に開口部を有して内部に前記捲回極板群が収納される有底筒状の導電性を有する容器と、
前記容器と電気的に絶縁された状態で、前記容器の前記開口部を塞ぐ導電性を有する蓋部材と、
前記軸芯の一端に支持されて前記捲回極板群の前記一方の極性の極板の前記被溶接部に溶接された第1の集電部材と、
前記軸芯の他端に支持されて前記捲回極板群の前記他方の極性の極板の前記被溶接部に溶接された第2の集電部材と、
前記第2の集電部材よりも前記蓋部材側に位置する前記容器の周壁の周壁部分が前記軸芯の径方向内側に向かって凸となるように変形されて形成された環状凸部と、
前記環状凸部と前記第2の集電部材との間に配置されて前記第2の集電部材と前記容器とを電気的に絶縁する絶縁リング部材とを有し、
前記第1の集電部材が前記容器と電気的に接続され、
前記第2の集電部材が前記蓋部材と電気的に接続されてなる蓄電デバイスであって、
前記絶縁リング部材は、前記捲回極板群の前記第2の集電部材側の端部の外周部を囲む筒部と該筒部と一体に形成されて該筒部から前記径方向内側に向かって延びて前記第2の集電部材と接触する板状部とからなり、
前記板状部の前記環状凸部と対向する面には、前記環状凸部と接触する複数の突起部が、前記軸芯の周方向に一定の間隔をあけて一体に設けられていることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項3】
前記複数の突起部は、それぞれ前記軸芯の径方向に延びる形状を有している請求項2に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記複数の突起部は、前記環状凸部と接触した状態で、前記環状凸部よりも前記径方向内側に突出する長さを有している請求項3に記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
前記複数の突起部は、3個以上あることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
【請求項6】
前記第2の集電部材には、ガス抜き用の複数の貫通孔が形成されており、前記絶縁リング部材の前記板状部は、前記複数の貫通孔を塞がない大きさを有している請求項2に記載の蓄電デバイス。
【請求項7】
捲回極板群に溶接された一方の極性の集電部材に嵌められて前記集電部材と前記捲回極板群が収納される容器とを電気的に絶縁する蓄電デバイス用の絶縁リング部材であって、
前記捲回極板群の前記集電部材側の端部の外周部を囲む筒部と該筒部と一体に形成されて該筒部から該筒部の径方向内側に向かって延びて前記集電部材と接触する板状部とからなり、
前記板状部の前記捲回極板群と対向しない面には、複数の突起部が前記筒部の周方向に一定の間隔をあけて一体に設けられていることを特徴とする蓄電デバイス用の絶縁リング。
【請求項8】
前記複数の突起部は、それぞれ前記径方向に延びる形状を有している請求項7に記載の蓄電デバイス用の絶縁リング。
【請求項9】
前記複数の突起部は、3個以上あることを特徴とする請求項7または8に記載の蓄電デバイス用の絶縁リング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオンキャパシタ及びリチウムイオン電池等の蓄電デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンキャパシタ及びリチウムイオン電池等の蓄電デバイスは、エネルギー密度が高く、かつ自己放電が少なくてサイクル性能が良いという利点がある。そのため近年では、蓄電デバイスを大型または大容量化することにより、ハイブリッド自動車や電気自動車等の自動車の電源として使用することが期待されている。自動車の電源として使用される蓄電デバイスの中には、有底筒状の容器内に、軸芯を中心に正負極板がセパレータを介して捲回された捲回極板群を電解液とともに収容した捲回タイプの蓄電デバイスがある。
【0003】
従来のこの種の蓄電デバイスでは、蓋部材側の集電部材の外周縁部に、集電部材と容器とを電気的に絶縁するための絶縁リング部材が取り付けられている。そして容器の周壁には、絶縁リング部材の上方位置で絞り加工が施されて環状凸部が形成され、この環状凸部と絶縁リング部材とにより、極板群ユニットは容器内で固定される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2012/039497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示された絶縁リング部材では、容器に環状凸部を形成する際に絶縁リング部材に加わる押し付け力が、絶縁リング部材の各部の位置により異なって、捲回極板群を変形させる問題がある。また捲回極板群が変形すると、電池性能に影響を与えることは勿論のこと、捲回極板群に対して軸芯の軸線方向に振動が加わったときに、極板群が軸線方向に振動し、活物質の剥離や溶接個所の分離などを生じさせるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、絶縁リング部材の各部に加わる押し付け力のバラツキを小さくすることができる蓄電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、幅方向の一端側に被溶接部を残すように帯状の集電板に活物質層が形成されてなる一方の極性の極板と、セパレータと、幅方向の一端側に被溶接部を残すように帯状の集電板に活物質層が形成されてなる他方の極性の極板とを積層してなる積層体が管状の軸芯の周りに捲回されて構成された捲回極板群と、一方の端部に開口部を有して内部に捲回極板群が収納される有底筒状の導電性を有する容器と、容器と電気的に絶縁された状態で、容器の開口部を塞ぐ導電性を有する蓋部材と、軸芯の一端に支持されて捲回極板群の一方の極性の極板の被溶接部に溶接された第1の集電部材と、軸芯の他端に支持されて捲回極板群の他方の極性の極板の被溶接部に溶接された第2の集電部材と、第2の集電部材よりも蓋部材側に位置する容器の周壁の周壁部分が軸芯の径方向内側に向かって凸となるように変形されて形成された環状凸部と、環状凸部と第2の集電部材との間に配置されて第2の集電部材と容器とを電気的に絶縁する絶縁リング部材とを有し、第1の集電部材が容器と電気的に接続され、第2の集電部材が蓋部材と電気的に接続されてなる蓄電デバイスを改良の対象とする。本発明では、絶縁リング部材は、捲回極板群の第2の集電部材側の端部の外周部を囲む筒部と該筒部と一体に形成されて該筒部から径方向内側に向かって延びて第2の集電部材と接触する板状部とからなり、板状部の環状凸部と対向する面には、環状凸部と接触する複数の突起部が、軸芯の周方向に一定の間隔をあけて一体に設けられている。このような複数の突起部を設けると、容器に絞り加工を補施して環状凸部を形成する際に、この複数の突起部に重点的に押し付け力が加わるため、絶縁リング部材の各部に加わる押し付け力のバラツキが小さくなる。その結果、捲回極板群の変形を抑制して、しかも捲回極板群に対して軸芯の軸線方向に振動が加わったときに、極板群が軸線方向に振動することを阻止することができる。
【0008】
また、複数の突起部は、それぞれ軸芯の径方向に延びる形状としてもよい。この場合、複数の突起部は、環状凸部と接触した状態で、環状凸部よりも径方向内側に突出する長さを有していることが好ましい。これにより、各突起部が環状凸部と接触する面の面積のバラツキを小さくして、各突起部を介して伝わる押し付け力のバラツキを小さくすることができる。
【0009】
また、複数の突起部は、3個以上あることが好ましい。3個以上の突起部を構成することにより、突起部を介して絶縁リング部材の各部に加わる押し付け力はより均等になる。
【0010】
第2の集電部材には、ガス抜き用の複数の貫通孔が形成されており、絶縁リング部材の板状部は、複数の貫通孔を塞がない大きさであることが好ましい。このように構成することにより、ガス抜きを良好にして、電解液の注入をスムーズに行うことができる。
【0011】
なお、容器の底部と第1の集電部材との間にも、絶縁材料からなり、第1の集電部材を固定する固定用リング部材を設けてもよい。固定用リング部材は、捲回極板群の第1の集電部材側の端部の外周部を囲む筒部と該筒部と一体に形成されて該筒部から径方向内側に向かって延びて第1の集電部材と接触する板状部とからなり、板状部の底部と対向する面には、底部と接触する複数の突起部が、軸芯の周方向に所定(一定)の間隔をあけて一体に設けられている。このような構成にすると、容器内の底部側において、極板群ユニットが固定される部分が増えるため、より蓄電デバイスの上下方向の振動に対する耐性が高くなる。
【0012】
本発明は、捲回極板群に溶接された一方の極性の集電部材に嵌められて集電部材と容器とを電気的に絶縁する蓄電デバイスの絶縁リング部材として、把握することができる。この絶縁リング部材は、捲回極板群の集電部材側の端部の外周部を囲む筒部と該筒部と一体に形成されて該筒部から該筒部の径方向内側に向かって延びて集電部材と接触する板状部とから構成される。そして板状部の捲回極板群と対向しない面には、複数の突起部が筒部の周方向に一定の間隔をあけて一体に設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態の蓄電デバイスの一種である円筒状リチウムイオンキャパシタの半部を断面にして模式的に示す半部断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態における蓄電デバイスの正極側の部分を拡大した断面図である。
【
図3】(A)は、本発明の実施の形態で使用する正極集電部材の平面図であり、(B)は正極集電部材の正面図、(C)は
図3(A)のC−C線断面図である。
【
図4】(A)は、本発明の実施の形態で使用する負極集電部材の平面図であり、(B)は負極集電部材の側面図であり、(C)は軸芯と負極集電部材との嵌合状態を示すための断面図である。
【
図5】(A)は、本発明の実施の形態で使用する絶縁リング部材の平面図であり、(B)は
図5(A)のB−B線断面図であり、(C)は
図5(B)のC部分拡大図である。
【
図6】(A)は、正極集電部材に絶縁リング部材を装着させた状態を示す平面図であり、(B)は正極集電部材に絶縁リング部材を装着させた状態の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明を蓄電デバイスの一種である円筒状リチウムイオンキャパシタに適用した実施の形態について説明する。
【0015】
(実施の形態の構成)
<全体構成>
図1は正極端子Tを上にした状態の本発明の実施の形態の円筒状リチウムイオンキャパシタ1(以下、キャパシタ1と略称する。)の半部を断面にして模式的に示す半部断面図である。
図2はキャパシタ1の正極側の部分を拡大した断面図である。なお
図2には、捲回極板群5の断面形状は図示を省略してある。また蓋部材31の内部構造の図示を省略してある。キャパシタ1は、ニッケルメッキが施されたスチール製の有底円筒状の容器3を有している。容器3は周壁3Aと底壁3Bとを備えており、正極集電部材(第2の集電部材)7よりも蓋部材31側に位置する周壁3Aの周壁部分には後述する軸芯11の径方向内側に向かって凸となるように変形されて形成された環状凸部15を有している。容器3内には、捲回極板群5と正極集電部材7及び負極集電部材(第1の集電部材)9の組み合わせからなる極板群ユニット2が収納されている。捲回極板群5は、中空円筒状のPPS(ポリ・フェニレン・サルファイド)製の軸芯11に帯状の正極板および負極板がセパレータを介して捲回されて構成されている。
【0016】
捲回極板群5中の正極板は、幅方向の一端側に被溶接部を残すように帯状の集電板に正極活物質層が形成されて構成されている。同様に、負極板は、幅方向の一端側に被溶接部を残すように帯状の集電板に負極活物質層が形成されて構成されている。そして正極板の被溶接部4[
図2参照]と負極板の被溶接部6[
図1参照]が捲回極板群5の両端部に位置するように、正極板と負極板とをセパレータを介して積層してなる積層体を軸芯11の周りに捲回して、捲回極板群5が構成されている。セパレータとしては、クラフト紙等の多孔質基材を用いることができる。
【0017】
また、
図2に示すように、正極集電部材7の外周部分13は、環状凸部15の頂部15aを越える位置まで延びる形状寸法を有している。正極集電部材7と環状凸部15及び該環状凸部に連続する周壁3Aの環状壁部分17の間には、後に詳しく説明する絶縁リング部材19の板状部19bが圧縮状態で配置されている。本実施の形態では、正極集電部材7及び絶縁リング部材19により固定手段が構成されている。
【0018】
また、
図1に示すように、容器3の底壁3Bは、容器3の強度を高めるために、環状底壁部分21と膨出部23とを備えている。そして負極集電部材9は、環状底壁部分21の内縁部よりも容器3の周壁3A側に外周部分25が位置する形状寸法を有している。
【0019】
<正極集電部材>
図3(A)は正極集電部材7の平面図である。
図3(B)は正極集電部材7の正面図であり、
図3(C)は
図3(A)のC−C線断面図である。正極集電部材7は、軸芯11の端部11A[
図2参照]が嵌合される貫通孔27と、軸芯11の径方向外側に延びるように貫通孔27の外側に位置して正極板の被溶接部4[
図2参照]に溶接される溶接部を構成する正極集電部材本体37と、一端が正極集電部材本体37と一体に設けられ他端が蓋部材31に電気的に接続されるタブ33とを備えている。正極集電部材7は、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)板をプレス加工して形成されており、
図3に示す通り、中心部分に貫通孔27が形成されたリング形状の正極集電部材本体37を有している。
図3(A)に示すように、貫通孔27は、正極集電部材7が捲回極板群5の中心からずれないようにするために、軸芯11の端部11Aに嵌る形状を有している。また、貫通孔27の輪郭形状は、一対の平行な直線状の縁部27a,27bと直線状の縁部27a,27bの両端をそれぞれつなぐ一対の円弧状縁部27c,27dとによって囲まれた形状をしている。軸芯11の端部11Aに形成された段部11Bの輪郭形状は、貫通孔27の形状と相似形になっている。また軸芯11の端部11Aには、一対の円弧状縁部27c,27dと対向する位置に一対の凹部11Cが形成されている。貫通孔27及び軸芯11の端部11Aをこのような形状にすることにより、貫通孔27に軸芯11の端部11Aを挿入する際の位置決めが容易になる。
【0020】
正極集電部材7は、捲回極板群5に含まれる正極板の幅方向の一端側の被溶接部4に溶接される。そこで、捲回極板群5の正極板の被溶接部4が位置する側から正極集電部材7を捲回極板群5に向かって近付け、正極板の被溶接部4の上に、正極集電部材7を載せる。そして後述するレーザ溶接により、正極板の被溶接部4と正極集電部材7とを溶接する。レーザ溶接のために、正極集電部材7には、捲回極板群5と接する方向に向かって突出し、捲回極板群5から離れる方向に向かって開くように形成された溝29a〜29gが7本設けられている。本実施の形態では、これらの溝29a〜29gが、溶接用突条部を構成する。7本の溝29a〜29gは、貫通孔27を中心として周方向に間隔をあけて放射状に形成されている。また、これらの溝29a〜29gの長さは等しい。本実施例では、貫通孔27を間にしてタブ33と対向する位置に形成された溝29cを中心にして、隣り合う2つの溝29との間が周方向に等間隔を開けるように形成されている。
【0021】
また、溝29a〜29gは、貫通孔27と貫通孔27の外側に位置して正極板の被溶接部4に溶接される正極集電部材本体(溶接部)37の外周部45との間にそれぞれ形成されている。本実施の形態では、溝29a〜29gは正極集電部材本体37の最外周部の手前で終端している。このようにすると溶接ビードが、正極集電部材本体37の最外周部を越えて飛び出すことがなく、飛び出した溶接ビードによる無用な短絡を防止することができる。
【0022】
蓋部材31と電気的に接続されるタブ33の一端35は正極集電部材本体37と一体に設けられている。そして、タブ33の一端35の近傍には、タブ33の幅方向に延び、捲回極板群5側に突出し且つ蓋部材31側に開口する1本の突条部39が形成されている。さらに、正極集電部材本体37には、その最外周部から貫通孔27に向かって延び且つ厚み方向に貫通する2つの凹部41を備えており、タブ33の一端35は、凹部41の底部43と一体に形成されている。このような突条部39を設けることにより、
図6(B)に示すように、タブ33を蓋部材31側に折り曲げた際に、突条部39に沿ってタブ33を簡単に曲げることができる。その結果、正極集電部材本体37とタブ33の境界部の機械的強度の低下を防いで、境界部に亀裂が入ることを防止することができる。また、タブ33の両側に2つの凹部41を設けることにより、タブ33の長さを長くすることができるので、蓋部材31とタブ33との間の溶接作業が容易になる。
【0023】
なお、正極集電部材本体37には、溝29に挟まれた位置に円形のガス抜き孔61が形成されている。
【0024】
<負極集電部材>
図4(A)は負極集電部材9の平面図であり、
図4(B)は負極集電部材9の側面図であり、
図4(C)は軸芯11と負極集電部材9との嵌合状態を示すための断面図である。これらの図において、負極集電部材9は、ニッケルまたは銅にニッケルメッキを施した金属材料のいずれかで形成されている。本実施の形態では、銅にニッケルメッキを施した金属材料で負極集電部材9を形成した。
図4に示す通り、負極集電部材9は、中心部分に軸芯11から離れる方向に膨出して軸芯11の他方の端部47が嵌合される膨出部49と、この膨出部49の外側に位置して負極板の被溶接部6に溶接される負極集電部材本体53とを備えた円盤形状を有している。本実施の形態では、負極集電部材本体53が溶接部を構成している。
【0025】
負極集電部材9は、捲回極板群5に含まれる負極板の幅方向の一端側の被溶接部6(
図2参照)に溶接される。そこで、捲回極板群5の負極板の被溶接部6が位置する側から負極集電部材9を捲回極板群5に向かって近付け、負極板の被溶接部6の上に、負極集電部材9を載せる。そして後述するレーザ溶接により、負極板の被溶接部6と負極集電部材9とを溶接する。レーザ溶接のために、負極集電部材9には、捲回極板群5と接する方向に向かって突出し、捲回極板群5から離れる方向に向かって開く溝51a〜51hが8本設けられている。本実施の形態では、これらの溝51a〜51hが溶接用突条部を構成している。溝51a〜51hは、プレス加工によって形成されており、負極集電部材9の膨出部49を中心として、放射状に直線的に延びている。また、溝51a〜51hは、負極集電部材本体53の外周部55との間にそれぞれ形成され、溝51a〜51hは負極集電部材本体53の最外周部の手前で終端している。このようにすると溶接ビードが、負極集電部材本体53の最外周部を越えて飛び出すことがなく、飛び出した溶接ビードによる無用な短絡を防止することができる。
【0026】
8本の溝51a〜51hは、膨出部49を中心として周方向に間隔をあけて形成されている。本実施の形態では、スリット57の延長線上に位置する溝51a,51eの長さは、他の溝51b,51c,51d,51f,51g,51hの長さよりも短い。この構造により、スリット57の長さを長くすることが可能になっている。
【0027】
負極集電部材9は、膨出部49と負極集電部材本体(溶接部)53とに跨がって延び且つ膨出部49及び負極集電部材本体53を厚み方向に貫通する1本のスリット57を備えている。スリット57は、膨出部49の中心を通り、膨出部49を完全に横切って且つその両端が負極集電部材本体53まで延びている。軸芯11を通して電解液を注入する際に、このスリット57から電解液が容器内に広がるため、捲回極板群5内に従来よりも速く電解液が浸潤する。本実施の形態では、スリット57が負極集電部材本体53まで延びているため、容器の底部側から満たされていく電解液が、負極集電部材本体53まで延びたスリット57の部分を通り、直接的に捲回極板群5内に浸潤する。
【0028】
なお、スリット57の本数は任意であるが、膨出部49の強度を考慮すると、本実施例のように、膨出部49の中心を通り、膨出部49を完全に横切って且つその両端が負極集電部材本体53まで延びている1本のスリットを設けるだけでも十分である。
【0029】
また、本実施の形態では、軸芯11の端部47に、軸芯11の径方向に貫通し且つ膨出部49に向かって開口し、径方向に対向する一対の凹部63を設けている。そして軸芯11の端部47が膨出部49に嵌合された状態で、一対の凹部63がスリット57と整合するようになっている。このようにすると、軸芯11を通る電解液の流れがスムーズになる。また負極集電部材本体53には、溝51に挟まれた位置に円形のガス抜き孔59が形成されている。
【0030】
なお、本実施の形態では、負極集電部材本体53は正極集電部材本体37よりも大きく構成されている。これにより、負極板の被溶接部と負極集電部材9の溶接点が、正極板の被溶接部と正極集電部材7の溶接点よりも多くなり、キャパシタ1の性能を高めることができる。
【0031】
<絶縁リング部材>
図5(A)乃至(C)に示すように、絶縁リング部材19は、捲回極板群5の正極集電部材7側の端部の外周部を囲む筒部19aとこの筒部19aと一体に形成されて筒部19aから径方向内側に向かって延びて正極集電部材7と接触する板状部19bを備えている。また、板状部19bの環状凸部15と対向する面には、環状凸部15と接触する8つの突起部19cが、軸芯11の周方向に一定の間隔をあけて一体に設けられている。これら突起部19cは、軸芯11の径方向に延びる形状を有しており、環状凸部15と接触した状態で、環状凸部15の頂部15aよりも軸芯11の径方向内側に突出する長さを有している。このような突起部19cを周方向に一定の間隔をあけて設けると、容器3に絞り加工を施して環状凸部15を形成する際に、複数の突起部19cに重点的に圧力が加わる。そのため、絶縁リング部材19には一定の間隔あけて設けた複数の突起部19cからほぼ等しい押し付け力が加わることになる。その結果、ほぼ均等な押し付け力が極板群ユニット2に加わることにより、捲回極板群5の偏った変形を防止して、キャパシタ1に対して軸芯11の軸線方向に加わる振動に対する耐性を高めることができる。突起部19cを、環状凸部15の頂部15aよりも軸芯11の径方向内側に突出する長さにすることにより、個々の突起部19cが環状凸部15と接触する面の面積が常にほぼ等しくなる。その結果、各突起部19cを介して極板群ユニット2に加わる押し付け力のバラツキを最小にすることができる。
【0032】
図6(A)及び(B)は、正極集電部材7に絶縁リング部材19を装着させた状態を示す平面図及び部分断面図である。なお、
図6(A)では、タブ33は垂直に立っているものとして示してある。
図6(A)に示すように、ガス抜きの機能を最大限発揮させるためには、板状部19bの大きさは、正極集電部材7のガス抜き孔61を塞がない大きさにするのが好ましい。
【0033】
<捲回極板群と集電部材の溶接>
捲回極板群5の被溶接部と集電部材(正極集電部材7及び負極集電部材9)の溶接には、レーザ光を用いる。本実施の形態では、レーザ溶接装置として、レーザ光を連続的に発生する直接集光型半導体レーザ装置(DLL・図示せず)を用いた。正極集電部材7を溶接する場合を例にして説明すると、直接集光型半導体レーザ装置を用いて、レーザ光を正極集電部材7の溝29に沿って正極集電部材7の中心部から外周側に向かって連続照射して正極集電部材7を局部的に溶融し、溶融金属により正極板の被溶接部4と正極集電部材7とを溶接する。本実施の形態のように、直接集光型半導体レーザ装置を用いてレーザ溶接を行うと、正極集電部材を効率的に溶融させることができて、確実に溶接を行うことが可能になり、溶接部の抵抗が大きくなることを確実に防止できる。なお、直接集光型半導体レーザ装置の代わりに、ファイバ導光型半導体レーザ装置等を用いても同様に良好な溶接結果を得ることができる。
【0034】
負極集電部材9と負極板の被溶接部6の溶接も同様に行われる。すなわち、負極集電部材9が溶融し、溶融金属により負極板の被溶接部と負極集電部材9とが溶接される。
【0035】
<捲回極板群の容器への収納>
図1に示すように集電部材7及び9を溶接した捲回極板群5からなる極板群ユニット2は、容器3へ収納される。極板群ユニット2を収納した状態で、負極集電部材9の膨出部49と、容器の底部(膨出部23)は軸芯11の内部に挿入された溶接用電極を用いてスポット溶接により溶接され、電気的に接続されている。
【0036】
正極集電部材7の外周縁部には、正極集電部材7と容器3とを電気的に絶縁するための絶縁リング部材19が取り付けられている。容器3には、開口部近傍において、環状凸部15を形成するために絞り加工が施され、
図1に示すように、極板群ユニット2は容器3内で固定される。
【0037】
図1に示すように、正極集電部材7の上方には、正極端子を構成する蓋部材31が配置される。蓋部材31は、アルミニウムにより形成された蓋本体31Aと、容器3と同様にニッケルメッキが施されたスチールにより形成された蓋キャップ31Bとから構成されている。
図2に示すように、蓋本体31Aには、細長い板状のタブ32の一端が溶接されており、このタブの32の他端には折り返し部32Aが形成されている。折り返し部32Aには、正極集電部材7のタブ33の自由端部が溶接されている。これにより、蓋部材31は、捲回極板群5の正極集電部材7と電気的に接続される。
【0038】
蓋部材31は、容器3に形成された環状凸部15の上に蓋部材31と容器3とを電気的に絶縁するための電気絶縁部材65を介して配置される。電気絶縁部材65は、例えばゴム等の弾性絶縁材料からなり、蓋部材31の蓋本体31Aの外周部を全体に囲む形状を有している。環状凸部15よりも容器3の開口部側に位置する環状壁部分67は、蓋部材31に近づくようにカーリング加工(かしめ加工)されている。その結果、カーリング加工された環状壁部分67と環状凸部15との間に、蓋部材31が絶縁部材65を介して挟まれた状態で固定される。これにより、キャパシタ1の内部は密封される。
【0039】
容器3内には、極板群ユニット2全体を浸潤可能な量の非水電解液(不図示)が注液されている。非水電解液には、例えば、ポリカーボネート(PC)の溶媒中にリチウム塩として6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解した溶液を用いることができる。
【0040】
上記実施の形態においては、蓋部材に正極集電部材を電気的に接続し、容器の底部に負極集電部材を電気的に接続した例について説明したが、蓋部材に負極集電部材を電気的に接続し、容器の底部に正極集電部材を電気的に接続してもよいのは勿論である。
【0041】
また上記実施の形態においては、円筒形のリチウムイオンキャパシタについて説明をしたが、本発明は、リチウムイオン電池等の他の非水電解液蓄電デバイスに適用することができるのは勿論である。
【0042】
なお、容器の底部と負極集電部材との間にも、負極集電部材を固定する絶縁リング部材を設けてもよい。絶縁リング部材は、捲回極板群の負極集電部材側の端部の外周部を囲む筒部と該筒部と一体に形成されて該筒部から径方向内側に向かって延びて負極集電部材と接触する板状部とからなり、板状部の底部と対向する面には、容器の底部と接触する複数の突起部が、軸芯の周方向に一定の間隔をあけて一体に設けられている。このような構成にすると、容器内の底部側において、極板群ユニットが固定される部分が増えるため、より蓄電デバイスの上下方向の振動に対する耐性が高くなる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、絶縁リング部材の各部に加わる押し付け力のバラツキを小さくすることができる蓄電デバイスを提供することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 キャパシタ
2 極板群ユニット
3 容器
5 捲回極板群
7 正極集電部材
9 負極集電部材
11 軸芯
13 外周部分
15 環状凸部
17 環状壁部分
19 絶縁リング部材
19a 筒部
19b 板状部
19c 突起部
21 環状底壁部分
23 膨出部
25 外周部分
27 貫通孔
29 溝
31 蓋部材
33 タブ
37 正極集電部材本体
39 突条部
41 凹部
49 膨出部
51 溝
53 負極集電部材本体
55 外周部
57 スリット
59,61 ガス抜き孔
63 凹部
65 電気絶縁部材
67 環状壁部分