(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(C−1)成分の水の使用量が、高圧を用いてエマルション粒子を小粒径化する乳化機を用いて工程(I)のエマルション組成物を調製する場合、(A)成分100質量部に対して1〜10,000質量部である請求項1記載の製造方法。
(C−1)成分の水の使用量が、せん断力を用いてエマルション粒子を小粒径化する乳化機を用いて工程(I)のエマルション組成物を調製する場合、(A)成分100質量部に対して1〜10質量部である請求項1記載の製造方法。
(D)成分の酸触媒の存在量((B)成分の界面活性剤が触媒作用を有し、(D)成分の酸触媒に包含する場合は、この(B)成分の界面活性剤の存在量を含む)が、(A)成分100質量部に対し0.1質量部以上である請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。
目的のオルガノポリシロキサンエマルション組成物のエマルション粒子の平均粒径が200nm以下である請求項1〜8のいずれか1項記載のオルガノポリシロキサンエマルション組成物の製造方法。
目的のオルガノポリシロキサンエマルション組成物中のオルガノポリシロキサンの25℃における粘度が100万mPa・s以上である請求項1〜9のいずれか1項記載のオルガノポリシロキサンエマルション組成物の製造方法。
目的のオルガノポリシロキサンエマルション組成物中のオルガノポリシロキサンに含まれるオクタメチルシクロテトラシロキサンの含有量が2,000ppm以下である請求項1〜10のいずれか1項記載のオルガノポリシロキサンエマルション組成物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
化粧料、パーソナルケア組成物、ホームケア組成物、離型剤、滑り剤、コーティング剤、繊維処理剤、樹脂改質剤等の製品に用いる高粘度オルガノポリシロキサンを小粒径、かつ、経時安定性良好なエマルションとする要求がある。しかしながら、高粘度オルガノポリシロキサンを直接乳化すると、エマルション粒子の粒径は数ミクロン程度が限界で、それより小粒径なものは得難く、また、得られたエマルションの経時安定性が悪い。そこで、小粒径、かつ、経時安定性良好なエマルション粒子を得るべく、乳化重合によるエマルションの製造方法が種々検討されてきた。
【0003】
例えば、環状シロキサンオリゴマーを乳化した状態で強酸あるいは強塩基によって乳化重合を行う方法が知られている(特許文献1:特公昭34−2041号公報、特許文献2:特公昭41−13995号公報)。これらの手法を用いるとエマルション粒子の粒径が300nm以下であるエマルションを得ることができる。
【0004】
ところで、近年は、オクタメチルシクロテトラシロキサンの含有量を抑制した製品が求められるようになっている。特許文献1及び2に記載の方法では、得られるエマルションに含まれるオルガノポリシロキサンに40,000ppm以上ものオクタメチルシクロテトラシロキサンが含有されていることが知られており、その含有量を減らす方法が検討されている。
【0005】
例えば、オルガノポリシロキサンの25℃における粘度が3,000〜100,000mm
2/sで、オクタメチルシクロテトラシロキサンの含有量が1,000ppm以下である分子鎖末端がシラノール基で封鎖されたオルガノポリシロキサンを乳化した後、40℃未満の温度で酸触媒の存在下、乳化重合を行う方法が知られており(特許文献3:特許第5382273号公報)、これらの手法を用いると該オルガノポリシロキサンに含まれるオクタメチルシクロテトラシロキサンの量が3,000ppm以下であるエマルションを得ることができるとされている。しかしながら上記の方法では、重合モノマーの粘度が3,000〜100,000mm
2/sと高粘度であるため、本重合モノマーからなるエマルション組成物を小粒径化するために強い機械的シェアを必要とし、その結果、得られたエマルションの経時安定性が悪い場合がある。
【0006】
また、25℃における粘度が2,000〜150,000mm
2/sである分子末端鎖がシラノール基で封鎖されたオルガノポリシロキサン、水、及び界面活性剤を乳化した後、16℃以下の温度で酸触媒の存在下、乳化重合を行う方法が知られており(特許文献4:特表2014−512418号公報)、これらの手法により該オルガノポリシロキサンに含まれるオクタメチルシクロテトラシロキサンの副生を抑制することができる。しかしながら、上記の方法では重合モノマーが2,000〜150,000mm
2/sと高粘度であるため、1μm未満の平均粒径を有するエマルション組成物を得るには多量の界面活性剤を必要とする問題がある。
【0007】
そのため、オルガノポリシロキサンに含まれるオクタメチルシクロテトラシロキサンの副生を抑制し、多量の界面活性剤を用いることなく、小粒径、かつ、経時安定性良好なエマルション組成物の製造方法を確立する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、オルガノポリシロキサンに含まれるオクタメチルシクロテトラシロキサンの副生を抑制し、多量の界面活性剤を用いることなく、微細、かつ、経時安定性が良好なオルガノポリシロキサンエマルション組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、(1)原料として25℃における粘度が200mm
2/s以上2,000mm
2/s未満の分子鎖末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンを用いること、(2)(A)成分のオルガノポリシロキサンを乳化するために用いる界面活性剤として一般式(2)で表される化合物を用いることで、該オルガノポリシロキサンに含まれるオクタメチルシクロテトラシロキサンの副生を抑え、多量の界面活性剤を用いることなく、得られたエマルション組成物の粒径を500nm以下という非常に小粒径のものとすることができ、しかも従来よりも経時安定性が良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。なお、本発明において、単位がmm
2/sである粘度はオストワルド粘度計により測定した25℃の値である。
【0011】
従って、本発明は下記オルガノポリシロキサンエマルション組成物の製造方法、及びエマルション組成物を提供する。
〔1〕
(I)(A)下記一般式(1)で表され、オクタメチルシクロテトラシロキサンの含有量が1,000ppm以下であるオルガノポリシロキサン 100質量部、
HO(R
12SiO)
nH (1)
(式中、R
1は独立に、水素原子又は置換もしくは非置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基であり、nはオルガノポリシロキサンの25℃における粘度が200mm
2/s以上2,000mm
2/s未満となる数である。)
(B)下記一般式(2)で表され、アルキルナフタレン骨格を有する界面活性剤 1〜8質量部、
R
2a−C
10H
(7-a)−SO
3M (2)
(式中、R
2は炭素原子数1〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、又は第3級アンモニウムイオンである。aは1〜3の整数である。)
及び(C−1)水 1〜10,000質量部
を含む混合物を乳化してエマルション組成物を調製し、
(II)得られたエマルション組成物に、必要により、
(C−2)水 0〜10,000質量部
を加えた後、40℃未満の温度で、(D)酸触媒の存在下(但し、(B)界面活性剤が触媒作用を有する場合には、該酸触媒の添加は省略することができる。)、乳化重合して、生成するオルガノポリシロキサンの25℃における粘度が30万mPa・s以上であり、該オルガノポリシロキサンに含まれるオクタメチルシクロテトラシロキサンの量が3,000ppm以下であり、かつ、得られたエマルション粒子の粒径が500nm以下であるオルガノポリシロキサンエマルション組成物を得ることを特徴とするオルガノポリシロキサンエマルション組成物の製造方法。
〔2〕
(C−1)成分の水の使用量が、高圧を用いてエマルション粒子を小粒径化する乳化機を用いて工程(I)のエマルション組成物を調製する場合、(A)成分100質量部に対して1〜10,000質量部である〔1〕記載の製造方法。
〔3〕
(C−1)成分の水の使用量が、せん断力を用いてエマルション粒子を小粒径化する乳化機を用いて工程(I)のエマルション組成物を調製する場合、(A)成分100質量部に対して1〜10質量部である〔1〕記載の製造方法。
〔4〕
(D)成分の酸触媒の存在量((B)成分の界面活性剤が触媒作用を有し、(D)成分の酸触媒に包含する場合は、この(B)成分の界面活性剤の存在量を含む)が、(A)成分100質量部に対し0.1質量部以上である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の製造方法。
〔5〕
(B)界面活性剤が、非イオン性界面活性剤を含む〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の製造方法。
〔6〕
工程(I)において、エマルション組成物のエマルション粒径を500nm以下にする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の製造方法。
〔7〕
前記乳化重合工程が、25℃未満の温度で行われる〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の製造方法。
〔8〕
前記乳化重合工程における重合時間が48時間以内である〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の製造方法。
〔9〕
目的のオルガノポリシロキサンエマルション組成物のエマルション粒子の平均粒径が200nm以下である〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載のオルガノポリシロキサンエマルション組成物の製造方法。
〔10〕
目的のオルガノポリシロキサンエマルション組成物中のオルガノポリシロキサンの25℃における粘度が100万mPa・s以上である〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のオルガノポリシロキサンエマルション組成物の製造方法。
〔11〕
目的のオルガノポリシロキサンエマルション組成物中のオルガノポリシロキサンに含まれるオクタメチルシクロテトラシロキサンの含有量が2,000ppm以下である〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載のオルガノポリシロキサンエマルション組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、経時安定性が良好で、かつ、25℃における粘度が30万mPa・s以上のオルガノポリシロキサンを含有する、オルガノポリシロキサンに含まれるオクタメチルシクロテトラシロキサンの量が3,000ppm以下で、エマルジョン粒子の粒径が500nm以下のエマルション組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の製造方法に用いる原料について説明する。
<(A)オルガノポリシロキサン>
本発明の(A)成分のオルガノポリシロキサンは、下記一般式(1)で表され、オクタメチルシクロテトラシロキサンの含有量が1,000ppm以下であるオルガノポリシロキサンである。
HO(R
12SiO)
nH (1)
(式中、R
1は独立に、水素原子又は置換もしくは非置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基であり、nはオルガノポリシロキサンの25℃における粘度が200mm
2/s以上2,000mm
2/s未満となる数である。)
【0014】
R
1は独立に、水素原子又は置換もしくは非置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である。非置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアラルキル基等が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。置換された炭素原子数1〜20の1価炭化水素基としては、上記に例示した炭素原子数1〜20の1価炭化水素基中の水素原子の一部をハロゲン原子、アミノ基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、エポキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等で置換したものが例示される。好ましくは、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基である。全R
1の80%以上がメチル基のものが更に好ましい。
【0015】
nは、オルガノポリシロキサンの25℃における粘度が200mm
2/s以上2,000mm
2/s未満となる数であり、400〜1,800mm
2/sとなる数が好ましく、600〜1,600mm
2/sとなる数がより好ましい。粘度が200mm
2/s未満であると、目的とするエマルション中に含まれるオルガノポリシロキサンを所望の粘度にするために、乳化重合の時間を長くする必要が生じたり、乳化重合中に副生するオクタメチルシクロテトラシロキサンの量が多くなったりする。一方で、粘度が2,000mm
2/s以上であると、得られる目的エマルションの粒径を小さくするのに多量の乳化剤を必要とする。
【0016】
(A)成分のオルガノポリシロキサン中のオクタメチルシクロテトラシロキサンの含有量は1,000ppm(質量、以下同様)以下、特に500ppm以下が好ましい。下限は特に限定されず、0ppmでもよい。
【0017】
<(B)界面活性剤>
下記一般式(2)で表され、アルキルナフタレン骨格を有する界面活性剤であり、これらは1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【化1】
(式中、R
2は炭素原子数1〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Mは水素イオン、カリウム,ナトリウム等のアルカリ金属イオン、マグネシウム,カルシウム等のアルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、又はトリエタノールアンモニウム等の第3級アンモニウムイオンである。aは1〜3の整数である。なお、−SO
3Mは、通常、ナフタレン環の1位又は2位に結合する。また、R
2の結合位置は3位又は4位又は5位又は6位又は7位又は8位である。)
【0018】
一般式(2)において、R
2は好ましくは炭素原子数1〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Mは、乳化効果から、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオンが好ましい。
【0019】
一般式(2)で表されるアルキルナフタレンスルホン酸又はその塩の具体例としては、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、デシルナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、テトラデシルナフタレンスルホン酸、ヘキサデシルナフタレンスルホン酸、イソプロピルナフタレンスルホン酸、ビスイソプロピルナフタレン
スルホン酸、トリスイソプロピルナフタレン
スルホン酸及びその塩等が例示される。
【0020】
(B)成分の使用量は、(A)成分100質量部に対して、1〜8質量部用いることができ、好ましくは2〜7質量部であり、より好ましくは3〜6質量部である。
【0021】
(B)成分は、非イオン性界面活性剤を含んでもよく、これらは1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。非イオン性界面活性剤を用いる場合、その配合量は(A)成分100質量部に対して、0.1〜8質量部であることが好ましい。
【0022】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンソルビタンアルキルエステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジエチレングリコール等が例示され、1種単独で又は2種以上を適宜選択して用いることができる。中でも、一般式(3):
R
3O(EO)
p(PO)
qH (3)
(式中、R
3は炭素原子数8〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、EOはエチレンオキシド基、POはプロピレンオキシド基を示し、それらの配列はブロック状でもランダム状でもよい。p及びqは独立に0〜100の整数であり、但し、p+q>0、特に50≧p+q≧1である。)
で表されるものが好ましい。特には、一般式(3)において、R
3は炭素原子数8〜13の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、p,qは独立に0〜25、0<p+q≦50が好ましい。
【0023】
一般式(3)の具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどが挙げられる。また、官能基を有する反応性の界面活性剤を使用することも可能である。これらの界面活性剤は、1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なお、アルキル基は直鎖でも分岐鎖でも可能である。
【0024】
<(C)水>
(C)成分の水は、工程(I)で使用する(C−1)と、必要により工程(II)で使用する(C−2)とである。
工程(I)において、(C−1)成分の水の使用量は、(A)100質量部に対して1〜10,000質量部であり、エマルション粒子を小粒径化する際に用いる乳化機の種類によって異なる。
【0025】
例えば、高圧を用いてエマルション粒子を小粒径化する高圧ホモジナイザー(処理液を高圧もしくは超高圧に加圧し、スリットを通過させてせん断力を得る乳化機や、加圧した処理液同士を超高速で斜向衝突させて微粒化する乳化機等)を用いる場合は、(C−1)成分の使用量は、(A)成分100質量部に対して、1〜10,000質量部が好ましく、より好ましくは4〜6,000質量部、更に好ましくは6〜4,000質量部である。
【0026】
また、せん断力を用いてエマルション粒子を小粒径化するホモディスパー(外周にノコギリ状の歯を持つ円形状ディスクを高速回転させてせん断力を得る乳化機)、ホモミキサー(ステーターを外周に設置し、内部に設置したローターを高速回転させてせん断力を発生させる乳化機)、コロイドミル(高速回転するディスクと固定されたディスクの間隙に各成分を送り込み、せん断力を発生させて乳化する乳化機)等の乳化機を用いる場合の(C−1)成分の使用量は、(A)成分100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、より好ましくは2〜8質量部であり、更に好ましくは4〜6質量部である。ここで10質量部を超えて添加すると、エマルション粒子の粒径が1μm以下と小粒径であるエマルション組成物を得ることが困難となるおそれがあり、1質量部未満であるとO/W型のエマルションとなりにくくなるおそれがある。
【0027】
工程(II)において、(C−2)成分は加えなくてもよいし、加えてもよく、(A)100質量部に対して、10,000質量部以下(0〜10,000質量部)が好ましい。(C−2)成分は加える場合には、0.1〜1,000質量部、特に1〜500質量部が好ましい。なお、(C−2)成分の水は、通常ホモディスパー、ホモミキサー及びコロイドミル等の乳化機を用いる場合は添加することが好ましい。
【0028】
<(D)酸触媒>
(B)成分が触媒作用を有する場合、(D)成分が不要な場合がある。また(D)成分を用いる場合、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0029】
(D)成分としては、下記成分が挙げられる。
(1)一般式(4)で表されるアルキル硫酸、一般式(5)で表されるアルキルベンゼンスルホン酸が挙げられる。
R
4OSO
3H (4)
(式中、R
4は炭素原子数6〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。)
R
4−C
6H
4−SO
3H (5)
(式中、R
4は、一般式(4)で定義の通り、炭素原子数6〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。)
【0030】
一般式(4)及び(5)において、R
4は炭素原子数6〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましい。
【0031】
一般式(4)で表されるアルキル硫酸の具体例としては、ヘキシル硫酸、オクチル硫酸、デシル硫酸、ドデシル硫酸、テトラデシル硫酸、ヘキサデシル硫酸、オクタデシル硫酸、イコシル硫酸等が挙げられる。
【0032】
一般式(5)で表されるアルキルベンゼンスルホン酸の具体例としては、ヘキシルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸等が例示される。
【0033】
(2)高級脂肪酸
具体例としては、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸等が挙げられる。
【0034】
(3)一般式(6)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸
R
4O(EO)
s(PO)
tSO
3H (6)
(式中、R
4は、一般式(4)で定義の通りで、炭素原子数6〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。EOはエチレンオキシド基、POはプロピレンオキシド基を示し、それらの配列はブロック状でもランダム状でもよい。s及びtは独立に0〜100の整数であり、但し、s+t>0、特に50≧s+t≧1である。)
【0035】
具体例としては、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンオクチルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンデシルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンイコシルエーテル硫酸等が挙げられる。
【0036】
(4)一般式(7)で表されるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸
R
4−C
6H
4−O(EO)
s(PO)
tSO
3H (7)
(式中、R
4は、一般式(4)で定義の通りで、炭素原子数6〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。EO、PO、s及びtは、一般式(6)で定義の通りで、EOはエチレンオキシド基、POはプロピレンオキシド基を示し、それらの配列はブロック状でもランダム状でもよい。s及びtは独立に0〜100の整数であり、但し、s+t>0、特に50≧s+t≧1である。)
【0037】
具体例としては、ポリオキシエチレンヘキシルフェニルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンデシルフェニルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンテトラデシルフェニルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンヘキサデシルフェニルエーテル硫酸等が挙げられる。
【0038】
(5)ブレンステッド酸
例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、クロロスルホン酸、リン酸、オルトリン酸、メタリン酸、及びポリリン酸、ホウ酸、硝酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、カルボン酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、酢酸、アクリル酸、安息香酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、クロトン酸、ギ酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、タンニン酸、イタコン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、フタル酸、及びコハク酸、陽イオン交換樹脂、酸性ゼオライト、酸活性フィラー土、及び酸活性カーボンブラック等が例示される。
【0039】
(D)成分の使用量(但し、(B)成分の界面活性剤がMが水素原子である酸であり、触媒作用を有し、(D)成分の酸触媒に包含される場合は、この(B)成分の使用量を含んだ合計量である)としては、(A)成分100質量部に対して、少なくとも0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上である。0.1質量部より少ない場合、重合速度が極めて遅くなるおそれがある。なお、上限は特に限定されないが、125質量部以下である。
【0040】
以下、本発明の製造方法について説明する。
<工程(I)>
(A)、(B)及び(C)成分を含む混合物を乳化してエマルション組成物を調製する。ここでの乳化は、ホモディスパー、ホモミキサー、コロイドミル、ラインミキサー、万能混合機、ウルトラミキサー、プラネタリーミキサー、コンビミックス、高圧ホモジナイザー等の乳化機を用いることができ、好ましくは、ホモディスパー、ホモミキサー、コロイドミル等のせん断力を用いてエマルション粒子を小粒径化する乳化機、より好ましくはホモディスパーである。
【0041】
この工程で、乳化温度は1〜80℃が好ましい。なお、(B)成分に触媒作用がある場合は、環化反応も同時に進行するため、40℃未満の温度で乳化を行うのが好ましい。もし、40℃以上の温度で乳化を行うと、オクタメチルシクロテトラシロキサンの生成が多くなるおそれがある。そのため、好ましくは30℃未満であり、特に25℃未満がより好ましい。
【0042】
この工程(I)において、エマルション組成物のエマルション粒径が好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは200nm以下になるまで、上記混合物に高せん断力をかけて混合する。工程(I)で得られるエマルション粒子の粒径が小さければ小さいほど、工程(II)における重合速度が上昇するため、重合時間の短縮につながる。また、工程(I)で得られるエマルション組成物のエマルション粒子の粒径が500nm以下になる結果、次の工程で得られる最終的なエマルション粒子の粒径も500nm以下になる。なお、本発明において、エマルション粒子の粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置LA−920(株式会社堀場製作所製)により測定した、メジアン径の値である。
【0043】
<工程(II)>
得られたエマルション組成物に、必要に応じて(C−2)水を加えて分散させた後、40℃未満の温度で(D)成分を加えて、オルガノポリシロキサンの25℃における粘度が回転粘度計による測定で30万mPa・s以上になるまで乳化重合する。
【0044】
このように、エマルション組成物に(C−2)成分を添加した場合にはその後に、高圧ホモジナイザー等の乳化機により、更に乳化分散することもできる。
【0045】
エマルション組成物を乳化重合する場合、重合工程は、40℃未満の温度で、48時間以内で行うことが推奨される。40℃より高い温度で重合を行うと、オクタメチルシクロテトラシロキサンの生成が多くなってしまうおそれがある。そのため、25℃未満が好ましく、15℃未満がより好ましい。また、重合時間が48時間を超えると、オクタメチルシクロテトラシロキサンの副生量が多くなってしまうおそれがあるため、1〜40時間が好ましく、5〜30時間がより好ましい。
【0046】
工程(II)の乳化重合により生成したオルガノポリシロキサンの25℃における粘度は、回転粘度計による測定で30万mPa・s以上であり、好ましくは45万mPa・s以上、より好ましくは60万mPa・s以上、特に好ましくは100万mPa・s以上である。上限は特に限定されないが、2,000万mPa・s以下である。
【0047】
<その他の処理>
重合が終了したら、通常、得られたエマルション組成物を塩基性物質で中和する。塩基性物質としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン化合物等が挙げられる。
【0048】
この時に水を添加しシリコーン濃度を調整することができ、エマルション組成物の保存性を高めるために防腐剤、防黴剤等を添加することができる。
【0049】
ウエザーストリップ、繊維処理剤、樹脂改質用途に、乳化を行う工程(I)や乳化重合する工程(II)、あるいは中和を行った後のエマルション組成物に、R
53Si(OR
6)、R
52Si(OR
6)
2、R
5Si(OR
6)
3のようなアルコキシシランを添加することで、得られるオルガノポリシロキサン鎖に分岐単位の導入、各種官能基の導入も可能である。なお、ここで、R
5は、水素原子又は置換もしくは非置換の炭素原子数1〜20、好ましくは1〜6の1価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基である。R
6は、同一又は異種の炭素原子数1〜20のアルキル基又は水素原子である。
【0050】
本発明の製造方法により得られた25℃における粘度が30万mPa・s以上のオルガノポリシロキサンを含有する、エマルション組成物において、エマルション組成物中のオルガノポリシロキサンの粘度は、30万mPa・s以上であり、45万mPa・s以上が好ましく、60万mPa・s以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、1,000万mPa・s以下程度である。
【0051】
エマルション組成物のエマルション粒子の平均粒径は、500nm以下であり、200nm以下が好ましい。下限は特に限定されないが、30nm以上程度である。本発明によれば、エマルション組成物のエマルション粒子の平均粒径は300nm以下であり、非常に微細なものが得られる。なお、エマルション粒子の平均粒径は、レーザー回折・散乱法によるメジアン径の値である。
【0052】
オルガノポリシロキサンに含まれるオクタメチルシクロテトラシロキサンの含有量は3,000ppm以下であり、2,000ppm以下が好ましく、1,000ppm以下がより好ましい。下限は特に限定されないが、0ppm以上である。
【0053】
オルガノポリシロキサンに含まれるデカメチルシクロペンタシロキサンの含有量は、3,000ppm以下が好ましく、2,000ppm以下がより好ましく、1,000ppm以下が更に好ましい。下限は特に限定されないが、0ppm以上である。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。「部」は質量部を意味する。粘度はオストワルド粘度計により測定した25℃の値である。なお、下記例でナフタレンスルホン酸塩において、−SO
3Mはナフタレン環の1位又は2位に結合したものの混合物である。
【0055】
[実施例1]
(A)粘度が700mm
2/sの分子鎖末端にシラノール基を持つオルガノポリシロキサン(一般式(1)中、R
1=メチル基、オクタメチルシクロテトラシロキサン含有量50ppm以下)100部に、(B)ペンチルナフタレンスルホン酸ナトリウム(一般式(2)中、R
2=メチル基、M=ナトリウムイオン、a=1)5部と、(C−1)水6部をホモディスパーにより乳化させた。得られた第1のエマルションに(C−2)水85.4部を添加し、ホモミキサーにより希釈分散した。次に、(D)濃塩酸1.2部を加えた後、10℃にて22時間乳化重合した。その後、得られたエマルションにトリエタノールアミン2.4部を添加し、ホモミキサーにより希釈分散することにより、エマルション組成物を得た。結果は表1の通りである。
【0056】
[実施例2]
(A)粘度が700mm
2/sの分子鎖末端にシラノール基を持つオルガノポリシロキサン(一般式(1)中、R
1=メチル基、オクタメチルシクロテトラシロキサン含有量50ppm以下)100部に、(B)トリスイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(一般式(2)中、R
2=イソプロピル基、M=ナトリウムイオン、a=3)5部と、(C−1)水6部をホモディスパーにより乳化させた。得られた第1のエマルションに(C−2)水86部を添加し、ホモミキサーにより希釈分散した。次に、(D)濃硫酸0.6部を加えた後、10℃にて22時間乳化重合した。その後、得られたエマルションにトリエタノールアミン2.4部を添加し、ホモミキサーにより希釈分散することにより、エマルション組成物を得た。結果は表1の通りである。
【0057】
[実施例3]
(A)粘度が1,500mm
2/sの分子鎖末端にシラノール基を持つオルガノポリシロキサン(一般式(1)中、R
1=メチル基、オクタメチルシクロテトラシロキサン含有量50ppm以下)100部に、(B)ペンチルナフタレンスルホン酸(一般式(2)中、R
2=メチル基、M=水素原子、a=1)5部と、(C−1)水6部をホモディスパーにより乳化させた。得られた第1のエマルションに(C−2)水85.8部を添加し、ホモミキサーにより希釈分散させた後、10℃にて17時間乳化重合した。その後、得られたエマルションにトリエタノールアミン3.2部を添加し、ホモミキサーにより希釈分散することにより、エマルション組成物を得た。結果は表1の通りである。
【0058】
[比較例1]
粘度が5,000mm
2/sの分子鎖末端にシラノール基を持つオルガノポリシロキサン(一般式(1)中、R
1=メチル基、オクタメチルシクロテトラシロキサン含有量50ppm以下)100部に、(B)ポリオキシエチレントリデシルエーテル(EO10モル)4部と、ドデシルベンゼンスルホン酸4部と、(C−1)水6部を、ホモディスパーにより乳化させた。得られた第1のエマルションに、(C−2)水83.6部を添加し、ホモミキサーにより希釈分散させた後、0℃にて15時間乳化重合した。次に、得られたエマルションにトリエタノールアミン2.4部を添加し、ホモミキサーにより希釈分散することにより、エマルション組成物を得た。結果は表1の通りである。
【0059】
[比較例2]
トリエタノールアミン9.1部とMarlon AS 3(アルキルベンゼンスルホン酸)10.5部の混合物を事前に調製し、このものに粘度が2,500mm
2/sの分子鎖末端にシラノール基を持つオルガノポリシロキサン100部と水4.1部を添加し、チェンジカンミキサーにより乳化させた。次に、得られたエマルションに水57.3部を添加し、チェンジカンミキサーにより希釈分散させてマスターバッチエマルションを調製した。
上記のマスターバッチエマルション100部を温度を21℃まで下げ、乳化重合反応を開始するために10質量%硫酸を15.2部加えた。続いて反応温度を4時間かけて10℃まで下げた後、10℃で10時間乳化重合した。次に得られたエマルションにトリエタノールアミン4部を加え、希釈分散することによりエマルション組成物を得た。結果は表1の通りである。
【0060】
[比較例3]
(A)粘度が150mm
2/sの分子鎖末端にシラノール基を持つオルガノポリシロキサン(一般式(1)中、R
1=メチル基、オクタメチルシクロテトラシロキサン含有量50ppm以下)100部に、(B)ポリオキシエチレントリデシルエーテル(EO10モル)2部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3.5部と、(C−1)水6部をホモディスパーにより乳化させた。得られた第1のエマルションに(C−2)水84.9部を添加し、ホモミキサーにより希釈分散した。次に、(D)濃塩酸1.2部を加えた後、10℃にて32時間乳化重合した。その後、得られたエマルションにトリエタノールアミン2.4部を添加し、ホモミキサーにより希釈分散することにより、エマルション組成物を得た。結果は表1の通りである。
【0061】
上記例で得られたエマルション組成物の下記特性を、以下に示す方法で測定又は評価した。結果を表1に示す。
[エマルションの平均粒径]
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置LA−920(株式会社堀場製作所製)により測定した、メジアン径の値である。
[オルガノポリシロキサンの粘度]
調製したエマルション組成物300gにイソプロピルアルコール300gを攪拌しながら添加し、析出したオルガノポリシロキサンのみを分取し、105℃で3時間乾燥した後、25℃において回転粘度計により測定した、25℃における粘度である。
[オルガノポリシロキサン中のオクタメチルシクロテトラシロキサン含有量]
エマルション組成物0.1gを、テトラデカンを内部標準として20ppm(質量)含有するアセトン10mLで抽出(3時間振とう)した後、一晩放置した後にアセトン層を採取してガスクロマトグラフィー分析により、オクタメチルシクロテトラシロキサンを定量した。
[エマルションの安定性]
100mLガラス瓶に、エマルション組成物100gを入れ、50℃で3ヶ月放置した後に外観を観察した。エマルションが均一な一相を形成し分離が認められない場合に安定性良好と評価し、「○」で示し、二相への分離が認められた場合に安定性「不良」と評価し、「×」で示した。
【0062】
【表1】