(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
[ルテニウム錯体色素]
本発明のルテニウム錯体色素は、八面体型6配位錯体である。本発明のルテニウム錯体色素は、その含水率が0.2〜4.0質量%であればその構造に特に制限はなく、光電変換素子ないし色素増感太陽電池の増感色素として機能しうる任意のルテニウム錯体色素を広く用いることができる。例えば、特開2013−72080号公報の段落[0037]〜[0040]および[0075]〜[0078]、特開2013−84594号公報の段落[0077]〜[0084]、特表2008−507570号公報の段落[0026]、国際公開第2009/020098号の段落[0060]〜[0062]、米国特許出願公開第2012/0111410号明細書の段落[0025]〜[0036]、特開2009−200028号公報の段落[0024]〜[0052]、特開2014−209588号公報の段落[0105]〜[0106]、特開2007−302879号公報の段落[0043]〜[0045]、国際公開第2007/091525号の段落[0067]および[0084]、Journal of Materials Chemistry A,2014年,2巻,17618〜17627頁および同文献のElectronic supplementary information、Journal of the American Chemical Society,2001年,123巻,1613〜1624頁、Inorganic Chemistry,1999年,38巻,6298〜6305頁、Inorganic Chemistry,2004年,43巻,4216〜4226頁、Journal of the American Chemical Society,2008年,130巻,10720〜10728頁、ACS nano,2009年,3巻,3103〜3109頁、Journal of the Physical Chemistry C,2009年,113巻,6290〜6297頁に記載のルテニウム錯体色素を用いることができる。
【0016】
本発明で規定する、ルテニウム錯体色素の含水率には、ルテニウム錯体色素の表面に単に付着して存在する水分(付着水)は含まれない。すなわち、ルテニウム錯体色素の結晶構造において、結晶水ないし水和水等として存在する水分量に基づき、本発明で規定する含水率が算出される。
ルテニウム錯体色素の付着水は、1g以下のルテニウム錯体色素を直径10cmのシャーレ全体に広げ、25℃の乾燥空気(湿度20%以下)による送風乾燥を1時間継続することにより蒸発させることができる。このようにして付着水を蒸発させたサンプルは、熱重量分析(TG)測定において、結晶水ないし水和水の蒸発による色素重量の明確な減少が生じる温度より低い温度では、重量減少が観測されない。つまり、上記乾燥条件により付着水を十分に蒸発させることができる。本発明においてルテニウム錯体色素の含水率は、ルテニウム錯体色素を上記乾燥条件下で乾燥した直後に水分量を測定し、求めた値とする。ルテニウム錯体色素の水分量の測定は、後述する実施例に記載の方法により実施することができる。
本発明のルテニウム錯体色素の含水率は、例えば、ルテニウム錯体色素の結晶化の際に用いる溶媒の種類ないし含水率、結晶化の条件(晶析方法、濃度、温度、時間、撹拌効率等)、得られた結晶の乾燥条件(時間、温度、湿度、減圧乾燥においては減圧条件、送風乾燥においては風量ないし湿度、デシケーターを用いた乾燥においては乾燥剤の種類)等を適宜調節することによって、所望のレベルに調節することができる。
【0017】
光電変換素子ないし色素増感太陽電池の製造において、増感色素を半導体微粒子表面に担持(吸着)させる際には、色素を有機溶媒に溶解して色素溶液を調製し、この色素溶液を半導体微粒子表面に塗布する方法が一般的である。その際、色素溶液中への水分の混入を極力少なくするために、脱水した溶媒を用いたり、十分に乾燥させた増感色素を用いたりして色素溶液を調製する。これは、溶液中の水分が増感色素の凝集を誘発すること等が懸念されるためである。
【0018】
これに対し本発明のルテニウム錯体色素は、一定量以上の水分(付着水を除く)を含有する色素である。本発明者らは上述した状況下で、光電変換素子ないし色素増感太陽電池の製造において、敢えて一定量の水分を含有するルテニウム錯体色素を増感色素として用いることにより、半導体微粒子表面への色素の吸着速度を高度に高めることができ、この色素を増感色素として用いた光電変換素子が優れた光電変換効率を示すことを見い出した。
含水率を特定の範囲とすることにより吸着速度を高めることができる理由は定かではないが、ルテニウム錯体色素が水を介した会合状態を形成し、半導体微粒子表面(親水性表面)への吸着速度が高められたことが一因と考えられる。
また、光電変換効率が向上する理由としては、水分の存在によりルテニウム錯体色素の分子内における親疎水バランスが変化し、半導体微粒子表面に吸着する際の配向や密度に違いが生じたことが一因と推定される。これは、ルテニウム錯体色素の構造によって含水率の影響が異なることにも合致する。すなわち、分子内における親疎水性の偏りが大きいほど、含水率を本発明の規定内とすることによる吸着速度が向上ないしは光電変換効率の向上作用が大きくなる。例えば、ターピリジントリカルボン酸型のルテニウム錯体色素(好ましくはターピリジンの各ピリジン環がカルボキシ基を1つずつ有する構造の3座配位子を有するルテニウム錯体色素)は水分子との相互作用性が大きく、また半導体微粒子表面への吸着後も水分子と相互作用しうるカルボキシ基(吸着に寄与しないカルボキシ基)を有し、含水率を本発明の規定内とすることにより吸着速度および光電変換効率が大きく向上する。
【0019】
ここで、含水率が0.2質量%未満のルテニウム錯体色素を、水分を含有した溶媒に溶解することにより、溶液中の水分量を、含水率0.2〜4.0質量%のルテニウム錯体色素を溶媒に溶解した際の溶液中の水分量と同じになるように色素溶液を調製し、この色素溶液を用いて半導体微粒子表面に色素を吸着させた場合には、本発明の効果は得られない。つまり、本発明のルテニウム錯体色素に含まれる水分は付着水のように溶媒中に拡散してしまうものではなく、結晶水や水和水等のように、溶媒に溶解後においても、ルテニウム錯体色素との相互作用状態を維持できる水分であることが必要である。
【0020】
本発明のルテニウム錯体色素の含水率は、好ましくは0.5〜4.0質量%であり、より好ましくは0.5〜3.5質量%であり、さらに好ましくは1.0〜3.0質量%であり、さらに好ましくは1.2〜2.7質量%であり、特に好ましくは1.5〜2.5質量%である。
ルテニウム錯体色素の含水率は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0021】
本発明のルテニウム錯体色素は、含水率を本発明の規定内とすることによる吸着速度の向上作用と光電変換効率の向上作用を効果的に享受する観点から、下記式(L)で表される3座配位子を有することが好ましく、より好ましくは下記式(1)で表されるルテニウム錯体色素である。
【0023】
式(L)中、Mは水素イオンまたは陽イオンを表す。Mが採りうる陽イオンとしては、特に限定されないが、例えば、下記対イオンCIにおける正の対イオン(プロトンを除く)が挙げられる。なかでも、アルカリ金属イオンまたはアンモニウムイオンが好ましい。
【0025】
式中、Mは式(L)におけるMと同義である。X
1は窒素原子またはCR
2を表す。X
2は、X
1が窒素原子の場合、窒素原子を表し、X
1がCR
2の場合、窒素原子またはCR
3を表す。R
1〜R
3は、水素原子、アルキル基、ヘテロアリール基、アリール基またはハロゲン原子を表す。G
1は、アルケニル基または下記式(G1)で表される基を示す。
【0026】
R
1〜R
3におけるアルキル基、ヘテロアリール基、アリール基およびハロゲン原子の好ましい形態は、後述の置換基群Z
Rにおける対応する基の好ましい形態と同じである。
【0027】
R
1〜R
3として採りうるアルキル基は、電子求引性基が置換したアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、特にフッ素原子が置換したアルキル基がさらに好ましい。ハロゲン原子が置換したアルキル基において、置換するハロゲン原子の数は、特に限定されず、1個以上で、置換される前のアルキル基が有する水素原子数以下であることが好ましく、1〜6個がより好ましく、1〜3個がさらに好ましい。なかでも、ハロゲン原子が置換したアルキル基は、アルキル基が有するすべての水素原子が置換されたパーハロゲン化アルキル基が好ましく、パーフルオロアルキル基がより好ましく、トリフルオロメチルがさらに好ましい。
【0028】
R
1〜R
3が採りうるアリール基は、電子求引性基が置換したアリール基がより好ましく、ハロゲン原子、特にフッ素原子が置換したアリール基がさらに好ましい。ハロゲン原子が置換したアリール基において、置換するハロゲン原子の数は、特に限定されず、1個以上で、置換される前のアリール基が有する水素原子数以下であることが好ましく、2〜5個がより好ましく、3〜5個がさらに好ましい。なかでも、ハロゲン原子が置換したアリール基は、ハロゲン原子が置換したフェニル基が好ましく、例えば、2,3,4,5−テトラフルオロフェニル、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニルが挙げられる。
【0029】
R
1〜R
3が採りうるヘテロアリール基は、窒素原子、酸素原子および硫黄原子のいずれかを環構成原子として有し、環員数が5または6のヘテロアリール基がより好ましく、窒素原子および硫黄原子のいずれかを環構成原子として有するヘテロアリール基がさらに好ましい。なお、ヘテロアリール基は置換基を有していてもよく、この置換基としては後述の置換基群Z
Rから選ばれる基が挙げられ、アルキル基が好ましい。具体的には、例えば、3−ピリジニル、5−メチル−2−チオフェニル、2−チアゾリルが挙げられる。
【0030】
R
1は、上記のなかでも、アルキル基、ヘテロアリール基、アリール基またはハロゲン原子が好ましく、フッ素原子が置換したアルキル基、またはフッ素原子が置換したアリール基もしくはヘテロアリール基がより好ましく、フッ素原子が置換したアルキル基がさらに好ましい。
【0031】
R
2は、上記の各基のなかでも、水素原子またはアルキル基が好ましく、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。
R
3は水素原子が好ましい。
【0032】
X
1は、CR
2が好ましい。
X
1とX
2の組み合わせ(以下、(X
1、X
2)の順で記載)は、(窒素原子、窒素原子)または(CR
2、窒素原子)が好ましく、(窒素原子、窒素原子)または(CH、窒素原子)がより好ましく、(CH、窒素原子)がさらに好ましい。
【0033】
G
1は、アルケニル基または下記式(G1)で表される基である。G
1がアルケニル基の場合、その炭素数は2〜30が好ましく、2〜20がより好ましく、2〜15がさらに好ましい。このアルケニル基は置換基を有する形態が好ましく、置換基としてアリール基またはヘテロアリール基を有する形態がより好ましい。このアリール基およびヘテロアリール基の好ましい形態は後述の置換基群Z
Rにおけるアリール基およびヘテロアリール基の好ましい形態と同じである。このアリール基およびヘテロアリール基は単環構造であることが好ましい。このアリール基およびヘテロアリール基はさらにアルキル基で置換されていてもよく、その好ましい形態は後述の置換基群Z
Rにおけるアルキル基の好ましい形態と同じである。
【0035】
式中、R
4は、アルキル基、アルキニル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、ヘテロアリール基またはアリール基を表す。R
5は、水素原子、アルキル基、アルキニル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、ヘテロアリール基またはアリール基を表す。
mは1〜3の整数を表す。nは0〜2の整数を表す。
Y
1は、酸素原子、硫黄原子、NR
f、セレン原子、CR
f2またはSiR
f2を表す。ここで、R
fは水素原子またはアルキル基を表す。*は式(1)中のピリジン環との結合部を表す。
【0036】
R
4、R
5およびR
fとして採りうる各基の好ましい形態は、後述の置換基群Z
Rにおける対応する基の好ましい形態と同じである。
【0037】
R
4は、上記の各基のなかでも、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、アリール基またはヘテロアリール基が好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基またはヘテロアリール基がより好ましく、アルキル基、アルコキシ基またはアルキルチオ基がさらに好ましい。
nは、0または1が好ましく、R
5が水素原子である場合は1が好ましく、R
5が水素原子でない場合は0が好ましい。
nが2である場合、2つのR
4が互いに結合して環を形成していてもよく、隣接するR
4とR
5が結合して環を形成していてもよい。形成される環としては、ベンゼン環等のアリール環や、ピラジン環、ピロール環、チオフェン環等のヘテロアリール環、シクロペンタジエン環等の芳香属性を示さない不飽和炭化水素環、1,4−ジオキサン環、2,3−ジヒドロピラジン環等の芳香属性を示さないヘテロ環、これらの環が縮合してなる環(例えばベンゾチオフェン環)等が挙げられる。
【0038】
R
5は、上記の各基のなかでも、水素原子、アルキル基、アルキニル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基またはアミノ基が好ましく、アルキル基、アルキニル基、アルケニル基、アルコキシ基またはアルキルチオ基がより好ましく、アルキル基、アルキニル基またはアルキルチオ基がさらに好ましく、アルキル基が特に好ましい。R
5が採りうるヘテロアリール基は、上記式(G1)で表される、Y
1を含む環を含まない。
【0039】
Y
1は、酸素原子、硫黄原子またはNR
fが好ましく、酸素原子または硫黄原子がより好ましく、硫黄原子がさらに好ましい。
mは、1または2が好ましく、1がより好ましい。
mが2または3である場合、隣接するY
1を含む環が有するR
4のうち、一方のY
1を含む環が有するR
4が他方のY
1を含む環に結合して環を形成してもよく、また隣接する2つのY
1を含む環が有するR
4同士が結合して環を形成していてもよい。形成される環としては、上記R
4が形成する環と同義である。
【0040】
式(G1)で表される基は、下記式(G1−1a)〜(G1−7a)のいずれかで表される基が好ましく、式(G1−1a)または式(G1−5a)で表される基がより好ましく、式(G1−1a)で表される基がさらに好ましい。
【0042】
式(G1−1a)〜(G1−7a)において、R
5、Y
1およびmは、それぞれ式(G1)における、R
5、Y
1およびmと同義であり、好ましい範囲も同じである。
R
6は水素原子、アルキル基、アルキニル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、ヘテロアリール基またはアリール基を表す。
R
7は、水素原子または置換基(好ましくはアルキル基、アルキニル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、ヘテロアリール基またはアリール基)を表す。
R
6およびR
7として採りうるアルキル基、アルキニル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、ヘテロアリール基およびアリール基は、それぞれ式(G1)のR
4として採りうるアルキル基、アルキニル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、ヘテロアリール基およびアリール基と同義であり、好ましい範囲も同じである。R
6およびR
7は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、アリール基またはヘテロアリール基が好ましく、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基またはヘテロアリール基がより好ましく、水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはアルキルチオ基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0043】
Z
1は、窒素原子またはCR
aを表し、窒素原子が好ましい。
Z
2〜Z
5は、酸素原子、硫黄原子、NR
b、CR
b2、セレン原子またはSiR
b2を表す。Z
2はNR
bまたはCR
b2が好ましく、Z
3〜Z
5は酸素原子または硫黄原子が好ましい。
R
aおよびR
bは、水素原子またはアルキル基を表す。R
aおよびR
bとして採りうるアルキル基の好ましい形態は後述の置換基群Z
Rにおけるアルキル基の好ましい形態と同じである。
【0044】
また、本発明のルテニウム錯体色素として、下記式(2)で表されるルテニウム錯体色素を使用することもできる。
【0046】
式(2)中、R
10〜R
13は各々独立にアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表す。この場合において、R
10とR
11およびR
12とR
13は各々互いに結合して含窒素環を形成してもよい。
R
14およびR
15はアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、またはハロゲン原子を表す。
n
1およびn
2は各々独立に0〜4の整数を表す。
L
1およびL
2は単結合または共役鎖からなる2価の連結基を表す。
X
11およびX
12はチオシアナト基、イソチオシアナト基、シアノ基、イソニトリル基またはハロゲン原子を表す。
Mは水素イオンまたは陽イオンを表す。
【0047】
R
10〜R
13におけるアルキル基、アリール基、およびヘテロアリール基の好ましい形態は、後述の置換基群Z
Rにおける対応する基の好ましい形態と同じである。
【0048】
R
10〜R
13として採りうるアルキル基は、炭素数1〜15であるのが好ましく、1〜10であるのがさらに好ましい。R
10〜R
13として採りうるアルキル基は、直鎖でも分岐鎖でもよい。具体例としては、メチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、デシルが挙げられる。
R
10〜R
13として採りうるアルキル基は、置換基を有してもよい。置換基としては、後述の置換基群Z
Rから選ばれる基が挙げられる。
【0049】
R
10〜R
13として採りうるアリール基は、炭素数6〜24であるのが好ましく、6〜12であるのがさらに好ましい。具体例としては、フェニル、ナフチル、アントリル、ピレニル、ビフェニル、フルオレニルが挙げられる。なかでも、フェニルまたはナフチルが好ましい。
R
10〜R
13として採りうるアリール基は、置換基を有してもよい。置換基としては、後述の置換基群Z
Rから選ばれる基が挙げられ、アルキル基(より好ましくはメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、t−ブチル)、アルコキシ基(より好ましくはメトキシ、ヘキシルオキシ)、またはアミノ基(より好ましくはジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基)が好ましい。
【0050】
R
10〜R
13として採りうるヘテロアリール基は、炭素数5〜16であるのが好ましく、8〜12であるのがさらに好ましい。具体例としては、ベンゾジチオフェニル、ジベンゾチオフェニル、カルバゾリル、フェノチアジニルが挙げられる。
R
10〜R
13として採りうるヘテロアリール基は、置換基を有してもよい。置換基としては、後述の置換基Z
Rから選ばれる基が挙げられる。
【0051】
R
10とR
11およびR
12とR
13は各々互いに結合して含窒素環基を形成してもよい。R
10とR
11およびR
12とR
13が形成する含窒素環基は、特に限定されず、芳香族環基でも脂肪族環基でもよい。このような含窒素環としては、フェノチアジン環、アクリダン環、カルバゾール環、ジヒドロアゼピン環等が挙げられる。
上記各含窒素環基は、さらに置換基を有してもよい。置換基としては、後述の置換基群Z
Rから選ばれる基が挙げられ、アルキル基が好ましい。具体的には、例えば、メチル、t−ブチルが挙げられる。
【0052】
R
14およびR
15におけるアルキル基、アルコキシ基、アミノ基およびハロゲン原子の好ましい形態は、後述の置換基群Z
Rにおける対応する基の好ましい形態と同じである。
【0053】
R
14およびR
15として採りうるアルキル基は、炭素数1〜10であるのが好ましく、2〜6であるのがさらに好ましい。R
14およびR
15として採りうるアルキル基は、直鎖でも分岐鎖でもよい。具体例としては、メチル、エチル、2−エチルヘキシルが挙げられる。
【0054】
R
14およびR
15として採りうるアルコキシ基は、炭素数1〜10であるのが好ましく、1〜6であるのがさらに好ましい。このアルコキシ基を構成するアルキル基は、直鎖でも分岐鎖でもよい。具体例としては、メトキシ、ヘキシルオキシ、2−エチルヘキシルオキシが挙げられる。
【0055】
R
14およびR
15として採りうるアミノ基は、炭素数0〜16であるのが好ましく、4〜12であるのがさらに好ましい。具体例としては、ジエチルアミノ、ジヘキシルアミノ、ジフェニルアミノが挙げられる。
【0056】
R
14およびR
15として採りうるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0057】
n
1およびn
2は各々独立に0〜4の整数を表し、好ましくは0または1であり、特に好ましくは0である。
【0058】
L
1およびL
2は単結合または共役鎖からなる2価の連結基を表す。
共役鎖からなる2価の連結基としては、例えば、エテニレン基、エチニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、およびこれらを組み合わせてなる基が挙げられる。
【0059】
L
1およびL
2におけるアリーレン基としてはフェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、ピレニレン基等の炭素数6〜16のアリーレン基が挙げられる。
L
1およびL
2におけるヘテロアリーレン基としては、2価の5または6員環であることが好ましく、環構成原子として、酸素原子、硫黄原子、窒素原子を含むものがより好ましい。この2価の5または6員環のヘテロアリーレン基は、ベンゼン環やヘテロ環と縮環していてもよい。ヘテロアリーレン基を構成するヘテロ環としては、例えば、チオフェン環、チエノ[3,2−b]チオフェン環が好ましい。
【0060】
2価の連結基は置換基を有してもよい。置換基としては、後述の置換基群Z
Rが挙げられる。なかでも、アルキル基、アルコキシ基、アリール基であることが好ましい。アルキル基としては、R
1〜R
3として採りうるアルキル基で説明した、ハロゲン原子(特にフッ素原子)が置換したアルキル基であることが好ましい。
【0061】
L
1およびL
2は、下記のL−1〜L−26で表される連結基であることが好ましく、エテニレン基(L−1)またはエチニレン基(L−5)であることがより好ましい。下記のL−1〜L−26はさらに置換基を有していてもよく、具体的には下記置換基群Z
Rから選ばれる基が挙げられる。
以下、Meはメチル基、nは2〜4の整数を表す。*は連結位置を示す。
【0063】
X
11およびX
12はチオシアナト基、イソチオシアナト基、シアノ基、イソニトリル基またはハロゲン原子を表し、好ましくはチオシアナト基またはイソチオシアナト基であり、より好ましくはイソチオシアナト基である。
X
11およびX
12が採りうるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、さらに好ましくは塩素原子またはヨウ素原子であり、特に塩素原子が好ましい。
【0064】
M
aは、式(L)におけるMと同義である。M
aの好ましい形態は、式(L)におけるMの好ましい形態と同じである。
【0065】
本明細書において、上記式(1)または式(2)で表されるルテニウム錯体色素には、ルテニウム錯体色素の電荷を中和するための対イオン(CI)が含まれる形態も包含される。
【0066】
対イオンCIが正の対イオンの場合、例えば、対イオンCIは、無機もしくは有機のアンモニウムイオン(例えばテトラアルキルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン)、ホスホニウムイオン(例えばテトラアルキルホスホニウムイオン、アルキルトリフェニルホスホニウムイオン)、アルカリ金属イオン(Liイオン、Naイオン、Kイオン等)、アルカリ土類金属イオン、金属錯体イオンまたはプロトンである。正の対イオンとしては、無機もしくは有機のアンモニウムイオン(テトラエチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン等)、またはプロトンが好ましい。
【0067】
対イオンCIが負の対イオンの場合、対イオンCIは、無機陰イオンでも有機陰イオンでもよい。例えば、水酸化物イオン、ハロゲン陰イオン(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、置換もしくは無置換のアルキルカルボン酸イオン(酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン等)、置換もしくは無置換のアリールカルボン酸イオン(安息香酸イオン等)、置換もしくは無置換のアルキルスルホン酸イオン(メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等)、置換もしくは無置換のアリールスルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン)、アリールジスルホン酸イオン(例えば1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン)、アルキル硫酸イオン(例えばメチル硫酸イオン)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ピクリン酸イオンが挙げられる。さらに電荷均衡対イオンとして、イオン性ポリマーあるいは色素と逆電荷を有する他の色素を用いてもよく、金属錯イオン(例えばビスベンゼン−1,2−ジチオラトニッケル(III))も使用可能である。負の対イオンとしては、ハロゲン陰イオン、置換もしくは無置換のアルキルカルボン酸イオン、置換もしくは無置換のアルキルスルホン酸イオン、置換もしくは無置換のアリールスルホン酸イオン、アリールジスルホン酸イオン、過塩素酸イオンまたはヘキサフルオロホスフェートイオンが好ましく、ハロゲン陰イオンまたはヘキサフルオロホスフェートイオンがより好ましい。
【0068】
上記式(1)または式(2)で表されるルテニウム錯体色素は、例えば、特開2013−084594号公報に記載の方法、特許第4298799号公報に記載の方法、特開2001−291534号公報に記載の方法、米国特許出願公開第2013/0018189A1、米国特許出願公開第2012/0073660A1、米国特許出願公開第2012/0111410A1および米国特許出願公開第2010/0258175A1号の各明細書に記載の方法、Angew.Chem.Int.Ed.,2011,50,2054−2058に記載の方法、Chem.Commun.,2014,50,6379−6381に記載の方法、Chemical Communications,2009,5844−5846に記載の方法、Journal of Materials Chemistry A,2014,2,17618−17627に記載の方法、これらの文献で挙げられている参照文献に記載の方法、太陽電池に関する上記特許文献、公知の方法、または、これらに準じた方法を参照し、調製することができる。
【0069】
本発明のルテニウム錯体色素は、溶液における極大吸収波長が、好ましくは300〜900nmの範囲であり、より好ましくは350〜850nmの範囲であり、特に好ましくは370〜800nmの範囲である。また、吸収波長領域は300〜900nmの全体にわたっていることが好ましい。
【0070】
以下の記載(実施例を含む)において、本発明のルテニウム錯体色素の具体例
及び参考例のルテニウム錯体色素を示す。また、下記具体例および実施例の具体例に対して、−COOHの少なくとも1つをカルボキシ基の塩とした金属錯体色素も挙げられる。この金属錯体色素において、カルボキシ基の塩を形成する対カチオンとしては、上記CIで説明する正のイオンが挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0086】
<置換基群Z
R>
本発明における置換基としては、下記置換基群Z
Rから選ばれる置換基が挙げられる。
本明細書において、単に置換基としてしか記載されていない場合は、この置換基群Z
Rを参照するものである。また、各々の基(例えばアルキル基、アリール基)が記載されているのみの場合は、この置換基群Z
R中の対応する基(例えばZ
R中のアルキル基、アリール基)における好ましい範囲、具体例が適用される。
【0087】
置換基群Z
Rに含まれる基としては、下記の基、または、下記の基を複数組み合わせてなる基を含む。
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜12で、例えばメチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、1−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、ベンジル、2−エトキシエチルまたはトリフルオロメチル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜12で、例えば、ビニル、アリル、ブテニルまたはオレイル)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜12で、例えば、エチニル、ブチニル、オクチニルまたはフェニルエチニル)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)、シクロアルケニル基(好ましくは炭素数5〜20)、アリール基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル、ジフルオロフェニルまたはテトラフルオロフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数2〜20で、少なくとも1つの酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有する5員環または6員環のヘテロ環基がより好ましい。ヘテロ環には芳香族環および脂肪族環を含む。芳香族ヘテロ環基(例えばヘテロアリール基)として次の基が挙げられる。例えば、2−ピリジル、2−チエニル、2−フラニル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリルまたは2−オキサゾリル)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜12で、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシまたはベンジルオキシ)、アルケニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜12)、アルキニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜12)、シクロアルキルオキシ基(好ましくは炭素数3〜20)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜26)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数2〜20)、
【0088】
アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20)、シクロアルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数4〜20)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数6〜20)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20で、アルキルアミノ基、アルケニルアミノ基、アルキニルアミノ基、シクロアルキルアミノ基、シクロアルケニルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、N−アリルアミノ、N−(2−プロピニル)アミノ、N−シクロヘキシルアミノ、N−シクロヘキセニルアミノ、N,N−ジフェニルアミノ、アニリノ、ピリジルアミノ、イミダゾリルアミノ、ベンゾイミダゾリルアミノ、チアゾリルアミノ、ベンゾチアゾリルアミノまたはトリアジニルアミノ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20で、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールのスルファモイル基が好ましい)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20で、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールのカルバモイル基が好ましい)、
【0089】
アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数0〜20で、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールのスルホンアミド基が好ましい)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜12で、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ、オクチルチオまたはベンジルチオ)、シクロアルキルチオ基(好ましくは炭素数3〜20)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜26)、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1〜20)、
【0090】
シリル基(好ましくは炭素数1〜20で、アルキル、アリール、アルコキシおよびアリールオキシが置換したシリル基が好ましい)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、アルキル、アリール、アルコキシおよびアリールオキシが置換したシリルオキシ基が好ましい)、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)が挙げられる。
【0091】
置換基群Z
Rから選ばれる基は、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、シクロアルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、シアノ基またはハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基、アルケニル基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基またはシアノ基である。
【0092】
化合物ないし置換基等がアルキル基、アルケニル基等を含むとき、これらは直鎖状でも分岐状でもよく、置換されていても無置換でもよい。また、アリール基、ヘテロ環基等を含むとき、それらは単環でも縮環でもよく、置換されていても無置換でもよい。
【0093】
続いて、本発明のルテニウム錯体色素を増感色素として用いた光電変換素子および色素増感太陽電池について説明する。
【0094】
[光電変換素子および色素増感太陽電池]
本発明のルテニウム錯体色素を用いた光電変換素子は、導電性支持体と、電解質を含む感光体層と、電解質を含む電荷移動体層と、対極(対向電極)とを有する。感光体層と電荷移動体層と対極とがこの順で導電性支持体上に設けられている。
【0095】
本発明のルテニウム錯体色素を用いた光電変換素子において、その感光体層を形成する半導体微粒子の少なくとも一部は、増感色素として本発明のルテニウム錯体色素を担持している。ここで、ルテニウム錯体色素が半導体微粒子の表面に担持される態様は、半導体微粒子の表面に吸着する態様、半導体微粒子の表面に堆積する態様、および、これらが混在した態様等を包含する。吸着は、化学吸着と物理吸着とを含み、化学吸着が好ましい。
半導体微粒子は、本発明のルテニウム錯体色素と併せて、他の金属錯体色素を担持していてもよい。
【0096】
また、感光体層は電解質を含む。感光体層に含まれる電解質は、電荷移動体層が有する電解質と同種でも異種であってもよいが、同種であることが好ましい。
【0097】
本発明のルテニウム錯体色素を用いた光電変換素子は、その構成は特に限定されず、光電変換素子に関する公知の構成を採用できる。本発明のルテニウム錯体色素を用いた光電変換素子を構成する上記各層は、目的に応じて設計され、例えば、単層に形成されても、複層に形成されてもよい。また、必要により上記各層以外の層を有してもよい。
【0098】
以下、本発明のルテニウム錯体色素を増感色素として用いた光電変換素子および色素増感太陽電池の好ましい実施形態について説明する。
【0099】
図1に示されるシステム100は、本発明のルテニウム錯体色素を用いた第1態様の光電変換素子10を、外部回路6で動作手段M(例えば電動モーター)に仕事をさせる電池用途に応用したものである。
光電変換素子10は、導電性支持体1と、色素(本発明のルテニウム錯体色素)21が担持されることにより増感された半導体微粒子22、および、半導体微粒子22間に電解質を含む感光体層2と、正孔輸送層である電荷移動体層3と、対極4とからなる。
光電変換素子10において、受光電極5は、導電性支持体1および感光体層2を有し、作用電極として機能する。
【0100】
光電変換素子10を応用したシステム100において、感光体層2に入射した光は、ルテニウム錯体色素21を励起する。励起されたルテニウム錯体色素21はエネルギーの高い電子を有しており、この電子がルテニウム錯体色素21から半導体微粒子22の伝導帯に渡され、さらに拡散によって導電性支持体1に到達する。このときルテニウム錯体色素21は酸化体(カチオン)となっている。導電性支持体1に到達した電子が外部回路6で仕事をしながら、対極4、電荷移動体層3を経由してルテニウム錯体色素21の酸化体に到達し、この酸化体を還元することで、システム100が太陽電池として機能する。
【0101】
図2に示される色素増感太陽電池20は、本発明のルテニウム錯体色素を用いた第2態様の光電変換素子により構成されている。
色素増感太陽電池20となる光電変換素子は、
図1に示す光電変換素子に対して、導電性支持体41および感光体層42の構成、および、スペーサーを有する点で異なるが、それらの点以外は
図1に示す光電変換素子10と同様に構成されている。すなわち、導電性支持体41は、基板44と、基板44の表面に成膜された透明導電膜43とからなる2層構造を有している。また、感光体層42は、半導体層45と、半導体層45に隣接して成膜された光散乱層46とからなる2層構造を有している。導電性支持体41と対極48との間にはスペーサーSが設けられている。色素増感太陽電池20において、40は受光電極であり、47は電荷移動体層である。
【0102】
色素増感太陽電池20は、光電変換素子10を応用したシステム100と同様に、感光体層42に光が入射することにより、太陽電池として機能する。
【0103】
本発明のルテニウム錯体色素を用いた光電変換素子および色素増感太陽電池は、上記の好ましい態様に限定されず、各態様の構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各態様間で適宜組み合わせることができる。
【0104】
本発明において、光電変換素子または色素増感太陽電池に用いられる材料および各部材は常法により調製することができる。例えば、米国特許第4,927,721号明細書、米国特許第4,684,537号明細書、米国特許第5,084,365号明細書、米国特許第5,350,644号明細書、米国特許第5,463,057号明細書、米国特許第5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2001−185244号公報、特開2001−210390号公報、特開2003−217688号公報、特開2004−220974号公報、特開2008−135197号公報を参照することができる。
【0105】
次に、光電変換素子および色素増感太陽電池の主たる部材の好ましい態様についてより詳細に説明する。
【0106】
<導電性支持体>
導電性支持体は、導電性を有し、感光体層2等を支持できるものであれば特に限定されない。導電性支持体は、導電性を有する材料、例えば金属で形成された導電性支持体1、または、ガラスもしくはプラスチックの基板44とこの基板44の表面に成膜された透明導電膜43とを有する導電性支持体41が好ましい。
【0107】
なかでも、基板44の表面に、金属酸化物の透明導電膜43を有する導電性支持体41が好ましい。このような導電性支持体41は、基板44の表面に導電性の金属酸化物を塗布して透明導電膜43を成膜することにより、得られる。プラスチックで形成された基板44としては、例えば、特開2001−291534号公報の段落番号0153に記載の透明ポリマーフィルムが挙げられる。また、基板44を形成する材料は、ガラスおよびプラスチックの他にも、セラミック(特開2005−135902号公報)、導電性樹脂(特開2001−160425号公報)を用いることができる。金属酸化物としては、スズ酸化物(TO)が好ましく、インジウム−スズ酸化物(スズドープ酸化インジウム;ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)等のフッ素ドープスズ酸化物が特に好ましい。このときの金属酸化物の塗布量は、基板44の表面積1m
2当たり0.1〜100gが好ましい。導電性支持体41を用いる場合、光は基板44側から入射させることが好ましい。
【0108】
導電性支持体1および41は、実質的に透明であることが好ましい。「実質的に透明である」とは、光(波長300〜1200nm)の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることが好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
導電性支持体1および41の厚みは、特に限定されないが、0.05μm〜10mmであることが好ましく、0.1μm〜5mmであることがさらに好ましく、0.3μm〜4mmであることが特に好ましい。
透明導電膜43を有する場合、透明導電膜43の厚みは、0.01〜30μmであることが好ましく、0.03〜25μmであることがさらに好ましく、0.05〜20μmであることが特に好ましい。
【0109】
導電性支持体1および41は、表面に光マネージメント機能を有してもよい。例えば、表面に、特開2003−123859号公報に記載の高屈折膜および低屈折率の酸化物膜を交互に積層した反射防止膜を有してもよく、特開2002−260746号公報に記載のライトガイド機能を有してもよい。
【0110】
<感光体層>
感光体層は、本発明のルテニウム錯体色素21が担持された半導体微粒子22および電解質を有していれば、その他の構成は特に限定されない。好ましくは、上記感光体層2および上記感光体層42が挙げられる。
【0111】
− 半導体微粒子(半導体微粒子が形成する層) −
半導体微粒子22は、好ましくは金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物)またはペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の微粒子である。金属のカルコゲニドとしては、好ましくはチタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブもしくはタンタルの酸化物、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等が挙げられる。ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物としては、好ましくはチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム等が挙げられる。これらのうち酸化チタン(チタニア)、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステンが特に好ましい。
【0112】
チタニアの結晶構造としては、アナターゼ型、ブルッカイト型、またはルチル型が挙げられ、アナターゼ型、ブルッカイト型が好ましい。チタニアナノチューブ・ナノワイヤー・ナノロッドは、単独で、または、チタニア微粒子に混合して、用いることができる。
【0113】
半導体微粒子22の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径を用いた平均粒径で1次粒子として0.001〜1μm、分散物の平均粒径として0.01〜100μmであることが好ましい。半導体微粒子22を導電性支持体1または41上に塗設する方法として、湿式法、乾式法、その他の方法が挙げられる。
【0114】
半導体微粒子22は多くの色素21を吸着することができるように表面積の大きいものが好ましい。例えば半導体微粒子22を導電性支持体1または41上に塗設した状態で、その表面積が投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。この上限には特に制限はないが、通常5000倍程度である。
【0115】
半導体微粒子が形成する層の好ましい厚みは、光電変換素子の用途によって一義的なものではないが、典型的には0.1〜100μmである。色素増感太陽電池として用いる場合は、1〜50μmがより好ましく、3〜30μmがさらに好ましい。
【0116】
半導体微粒子22は、導電性支持体1または41に塗布した後に、100〜800℃の温度で10分〜10時間焼成して、粒子同士を密着させることが好ましい。成膜温度は、導電性支持体1または基板44の材料としてガラスを用いる場合、60〜600℃が好ましい。
【0117】
半導体微粒子22の、導電性支持体1または41の表面積1m
2当たりの塗布量は0.5〜500g、さらには5〜100gが好ましい。
【0118】
導電性支持体1または41と、感光体層2または42との間には、感光体層2または42が含む電解質と導電性支持体1または41が直接接触することによる逆電流を防止するため、短絡防止層を形成することが好ましい。
また、受光電極5または40と対極4または48の接触を防ぐために、スペーサーS(
図2参照)やセパレータを用いることが好ましい。
【0119】
− 色素 −
光電変換素子10および色素増感太陽電池20においては、増感色素として、上述した本発明のルテニウム錯体色素の少なくとも1種を使用する。
【0120】
本発明において、本発明のルテニウム錯体色素と併用できる色素としては、スクアリリウムシアニン色素、有機色素、ポルフィリン色素、フタロシアニン色素等が挙げられる。
併用できる色素としては、スクアリリウムシアニン色素、または有機色素が好ましい。
【0121】
色素の使用量は、全体で、導電性支持体1または41の表面積1m
2当たり0.01〜100ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜50ミリモル、特に好ましくは0.1〜10ミリモルである。また、色素21の半導体微粒子22に対する吸着量は1gの半導体微粒子22に対して0.001〜1ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5ミリモルである。このような色素量とすることによって、半導体微粒子22における増感効果が十分に得られる。
【0122】
本発明のルテニウム錯体色素と他の色素を併用する場合、本発明のルテニウム錯体色素の質量/他の色素の質量の比は、95/5〜10/90が好ましく、95/5〜50/50がより好ましく、95/5〜60/40がさらに好ましく、95/5〜65/35が特に好ましく、95/5〜70/30が最も好ましい。
【0123】
本発明のルテニウム錯体色素を半導体微粒子22に担持させた後に、アミン化合物を用いて半導体微粒子22の表面を処理してもよい。好ましいアミン化合物としてピリジン化合物(例えば4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン)等が挙げられる。これらは液体の場合はそのまま用いてもよいし、有機溶媒に溶解して用いてもよい。
【0124】
− 共吸着剤 −
本発明のルテニウム錯体色素を用いた光電変換素子においては、本発明のルテニウム錯体色素または必要により併用する色素とともに共吸着剤を使用することが好ましい。このような共吸着剤としては酸性基(好ましくは、カルボキシ基またはその塩)を1つ以上有する共吸着剤が好ましく、脂肪酸やステロイド骨格を有する化合物が挙げられる。
脂肪酸は、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよく、例えば、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ヘキサデカン酸、ドデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が挙げられる。
ステロイド骨格を有する化合物として、コール酸、グリココール酸、ケノデオキシコール酸、ヒオコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、ウルソデオキシコール酸等が挙げられる。好ましくはコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸であり、さらに好ましくはデオキシコール酸である。
上記共吸着剤は、特開2014−82187号公報の段落番号0125〜0129に記載の式(CA)で表される共吸着剤が好ましく、特開2014−82187号公報の段落番号0125〜0129の記載が、そのまま本明細書に好ましく取り込まれる。
【0125】
上記共吸着剤は、半導体微粒子22に吸着させることにより、金属錯体色素の非効率な会合を抑制する効果および半導体微粒子表面から電解質中のレドックス系への逆電子移動を防止する効果がある。共吸着剤の使用量は、特に限定されないが、上記の作用を効果的に発現させる観点から、上記ルテニウム錯体色素1モルに対して、好ましくは1〜200モル、さらに好ましくは10〜150モル、特に好ましくは20〜50モルである。
【0126】
− 光散乱層 −
本発明のルテニウム錯体色素を用いた光電変換素子において、光散乱層は、入射光を散乱させる機能を有する点で、半導体層と異なる。
色素増感太陽電池20において、光散乱層46は、好ましくは、棒状または板状の金属酸化物微粒子を含有する。光散乱層46に用いられる金属酸化物としては、例えば、上記半導体微粒子を形成する化合物として説明した上記金属のカルコゲニド(酸化物)が挙げられる。光散乱層46を設ける場合、光散乱層の厚みは感光体層42の厚みの10〜50%とすることが好ましい。
光散乱層46は、特開2002−289274号公報に記載されている光散乱層が好ましく、特開2002−289274号公報の記載が、そのまま本明細書に好ましく取り込まれる。
【0127】
<電荷移動体層>
本発明のルテニウム錯体色素を用いた光電変換素子に用いられる電荷移動体層3および47は、色素21の酸化体に電子を補充する機能を有する層であり、受光電極5または40と、対極4または48との間に設けられる。
電荷移動体層3および47は電解質を含む。ここで、「電荷移動体層が電解質を含む」とは、電荷移動体層が電解質のみからなる態様、および、電解質と電解質以外の物質を含有する態様の、両態様を含む意味である。
電荷移動体層3および47は、固体状、液体状、ゲル状またはこれらの混合状態のいずれであってもよい。
【0128】
− 電解質 −
電解質の例としては、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体電解質、酸化還元対を含有する溶融塩および酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体をポリマーマトリクスに含浸したいわゆるゲル電解質が挙げられる。なかでも、液体電解質が光電変換効率の点で好ましい。
【0129】
酸化還元対として、例えばヨウ素とヨウ化物(ヨウ化物塩、ヨウ化イオン性液体が好ましく、ヨウ化リチウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム、ヨウ化メチルプロピルイミダゾリウムが好ましい)との組み合わせ、アルキルビオローゲン(例えばメチルビオローゲンクロリド、ヘキシルビオローゲンブロミド、ベンジルビオローゲンテトラフルオロボレート)とその還元体との組み合わせ、ポリヒドロキシベンゼン(例えばハイドロキノン、ナフトハイドロキノン等)とその酸化体との組み合わせ、2価と3価の鉄錯体の組み合わせ(例えば赤血塩と黄血塩の組み合わせ)、2価と3価のコバルト錯体の組み合わせが挙げられる。これらのうち、ヨウ素とヨウ化物との組み合わせ、または2価と3価のコバルト錯体の組み合わせが好ましく、ヨウ素とヨウ化物との組み合わせが特に好ましい。
【0130】
上記コバルト錯体は、特開2014−82189号公報の段落番号0144〜0156に記載の式(CC)で表される錯体が好ましく、特開2014−82189号公報の段落番号0144〜0156の記載が、そのまま本明細書に好ましく取り込まれる。
【0131】
電解質として、ヨウ素とヨウ化物との組み合わせを用いる場合、5員環または6員環の含窒素芳香族カチオンのヨウ素塩をさらに併用するのが好ましい。
【0132】
液体電解質およびゲル電解質に用いる有機溶媒としては、特に限定されないが、非プロトン性の極性溶媒(例えばアセトニトリル、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチルイミダゾリノン、3−メチルオキサゾリジノン)が好ましい。
特に、液体電解質に用いる有機溶媒としては、ニトリル化合物、エーテル化合物、エステル化合物等が好ましく、ニトリル化合物がより好ましく、アセトニトリル、メトキシプロピオニトリルが特に好ましい。
【0133】
溶融塩やゲル電解質としては、特開2014−139931号公報の段落番号0205および段落番号0208〜0213に記載のものが好ましく、特開2014−139931号公報の段落番号0205および段落番号0208〜0213の記載が、そのまま本明細書に好ましく取り込まれる。
【0134】
電解質は、添加物として、4−t−ブチルピリジン等のピリジン化合物のほか、アミノピリジン化合物、ベンズイミダゾール化合物、アミノトリアゾール化合物およびアミノチアゾール化合物、イミダゾール化合物、アミノトリアジン化合物、尿素化合物、アミド化合物、ピリミジン化合物または窒素を含まない複素環を含有していてもよい。
【0135】
また、光電変換効率を向上させるために、電解液の水分を制御する方法をとってもよい。水分を制御する好ましい方法としては、濃度を制御する方法や脱水剤を共存させる方法を挙げることができる。電解液の水分含有量(含有率)を0〜0.1質量%に調整することが好ましい。
ヨウ素は、ヨウ素とシクロデキストリンとの包接化合物として使用することもできる。また環状アミジンを用いてもよく、酸化防止剤、加水分解防止剤、分解防止剤、ヨウ化亜鉛を加えてもよい。
【0136】
以上の液体電解質および擬固体電解質の代わりに、p型半導体あるいはホール輸送材料等の固体電荷輸送層、例えば、CuI、CuNCSを用いることができる。また、Nature,vol.486,p.487(2012)等に記載の電解質を用いてもよい。固体電荷輸送層として有機ホール輸送材料を用いてもよい。有機ホール輸送材料としては、特開2014−139931号公報の段落番号0214に記載のものが好ましい。
【0137】
酸化還元対は、電子のキャリアになるので、ある程度の濃度で含有するのが好ましい。好ましい濃度としては合計で0.01モル/L以上であり、より好ましくは0.1モル/L以上であり、特に好ましくは0.3モル/L以上である。この場合の上限は特に制限はないが、通常5モル/L程度である。
【0138】
<対極>
対極4および48は、色素増感太陽電池の正極として働くものであることが好ましい。対極4および48は、通常、上記導電性支持体1または41と同じ構成とすることもできるが、強度が十分に保たれるような構成では基板44は必ずしも必要でない。対極4および48の構造としては、集電効果が高い構造が好ましい。感光体層2および42に光が到達するためには、上記導電性支持体1または41と対極4または48との少なくとも一方は実質的に透明でなければならない。本発明の色素増感太陽電池においては、導電性支持体1または41が透明であって太陽光を導電性支持体1または41側から入射させるのが好ましい。この場合、対極4および48は光を反射する性質を有することがさらに好ましい。色素増感太陽電池の対極4および48としては、金属もしくは導電性の酸化物を蒸着したガラスまたはプラスチックが好ましく、白金を蒸着したガラスが特に好ましい。色素増感太陽電池では、構成物の蒸散を防止するために、電池の側面をポリマーや接着剤等で密封することが好ましい。
【0139】
[光電変換素子および色素増感太陽電池の製造方法]
本発明の光電変換素子および色素増感太陽電池は、本発明のルテニウム錯体色素および溶媒を含有する色素溶液(本発明の色素溶液)を用いて、製造することができる。
【0140】
このような色素溶液には、本発明のルテニウム錯体色素が溶媒に溶解されてなり、必要により上記共吸着剤等の他の成分を含んでもよい。
【0141】
使用する溶媒としては、特開2001−291534号公報に記載の溶媒を挙げることができるが、特にこれに限定されない。本発明においては有機溶媒が好ましく、さらにアルコール溶媒、アミド溶媒、ニトリル溶媒、炭化水素溶媒、および、これらの2種以上の混合溶媒がより好ましい。混合溶媒としては、アルコール溶媒と、アミド溶媒、ニトリル溶媒または炭化水素溶媒から選ばれる溶媒との混合溶媒が好ましい。さらに好ましくはアルコール溶媒とアミド溶媒の混合溶媒、アルコール溶媒と炭化水素溶媒の混合溶媒、アルコール溶媒とニトリル溶媒の混合溶媒、特に好ましくはアルコール溶媒とアミド溶媒の混合溶媒、アルコール溶媒とニトリル溶媒の混合溶媒である。具体的にはメタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールの少なくとも1種と、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドの少なくとも1種との混合溶媒、メタノール、エタノール、プロパノールおよびt−ブタノールの少なくとも1種と、アセトニトリルとの混合溶媒が好ましい。
【0142】
色素溶液は共吸着剤を含有することが好ましく、共吸着剤としては、上記の共吸着剤が好ましい。
ここで、本発明の色素溶液は、光電変換素子や色素増感太陽電池を製造する際に、この溶液をこのまま使用できるように、ルテニウム錯体色素や共吸着剤の濃度が調整されている色素溶液が好ましい。本発明において、本発明の色素溶液は本発明のルテニウム錯体色素を0.001〜0.1質量%含有することが好ましい。共吸着剤の使用量は上記した通りである。
【0143】
色素溶液は、水分含有量を調整することが好ましく、本発明では水分含有量を0〜0.1質量%に調整することが好ましい。
【0144】
上記色素溶液を用いて、半導体微粒子表面にルテニウム錯体色素またはこれを含む色素を担持させることにより、感光体層を作製することが好ましい。すなわち、感光体層は、導電性支持体上に設けた半導体微粒子に上記色素溶液を塗布(ディップ法を含む)し、乾燥または硬化させて、形成することが好ましい。
このようにして作製した感光体層を備えた受光電極に、さらに電荷移動体層や対極等を設けることで、本発明の光電変換素子を得ることができる。
【0145】
色素増感太陽電池は、上記のようにして作製した光電変換素子の導電性支持体1および対極4に外部回路6を接続して、製造される。
【実施例】
【0146】
以下に実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明がこれに限定されない。
【0147】
[調製例1] ルテニウム錯体色素の調製
下記に示す構造のDye−1〜Dye−4について、結晶化の際に用いる溶媒の含水率、結晶乾燥の条件(時間、温度、減圧乾燥においては減圧度、送風乾燥においては風量と湿度)を調整することにより、目的の含水率のルテニウム錯体色素を調製した。
【0148】
【化26】
【0149】
<Dye−1の調製>
Dye−1は下記スキームにより調製した。下記スキーム中、Phはフェニルを、Etはエチルを示す。
【0150】
【化27】
【0151】
すなわちDye−1は、Journal of Materials Chemistry A,2014年,2巻,17618〜17627頁および同文献のElectronic supplementary informationに記載のPRT−21の調製方法を参照して調製した。上記スキームにより得られたDye−1の乾燥は、40℃、減圧(0.001気圧)下で実施し、この乾燥を5時間継続しても重量減少が観測できなくなるまで乾燥を続けることで、含水率0.11質量%のDye−1を得た。また、上記乾燥における温度(25〜40℃)、圧力(常圧〜0.001気圧)、時間を調節することによって、下記表2に示す含水率のDye−1を調製した。
【0152】
<含水率の測定>
ルテニウム錯体色素の含水率は、測定対象のルテニウム錯体色素100mgを直径10cmのシャーレに広げた状態で25℃の乾燥空気(湿度20%以下)による送風乾燥を1時間継続して付着水を除去(段落[0017]の乾燥処理)し、超脱水DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)(和光純薬工業製)5gに溶解して、JIS規格K0113に準じて、カールフィッシャー法(電量滴定法)により水分量を測定した。超脱水DMFのみで測定したものをブランクとして水分量を測定し、その差分に基づき含水率(質量%)を決定した。
【0153】
Dye−2は米国特許出願公開2012/0111410A1号公報記載のPRT4であり、同公報に記載の調製方法を参照して調製した。またDye−3も、PRT4の調製方法に準じて調製した。
Dye−4は特開2014−209578号公報記載のDye1の調製方法を参照して調製した。
Dye−2〜Dye−4についてもDye−1と同様にして、下記表2に示す含水率のルテニウム錯体色素とした。
【0154】
上記で調製したDye−1〜4の質量分析結果をまとめて下記表1に示す。
【0155】
【表1】
【0156】
[試験例1] 吸着速度
上記調製例で調製した特定の含水率のルテニウム錯体色素を用いて、半導体微粒子表面への吸着速度を評価した。この吸着速度の評価では、半導体微粒子として二酸化チタンを使用し、この二酸化チタン表面へのルテニウム錯体色素の吸着速度を指標とした。
ルテニウム錯体色素の吸着速度はQuartz Crystal microbalance with Dissipation monitoring(QCM−D)分子間相互作用測定装置E1(メイワフォーシス株式会社製)を用いて算出した。
QCM−Dに用いる金センサー(メイワフォーシス株式会社製)にチタニアペースト「18NR−T」をスクリーン印刷により印刷した(膜厚:20μm)。印刷後の金センサーを空気中、450℃で1時間焼成することにより半導体層が吸着した金センサーを作製した。
作製したセンサーをQCM−D分子間相互作用測定装置にセットし、0.2mMのルテニウム錯体色素溶液(N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)/t−BuOH=1/1)を流すことにより、半導体層へ色素を所定値(200μg/cm
2)となるように吸着させ、この所定値になるまでの時間を測定した。なお、色素吸着量は水晶振動子の共振周波数シフト(△F)から、下記のSauerbreyの式により算出した。
【0157】
△F=−2×F
02×△m/A(μ×P)
1/2【0158】
ここで、F
0は水晶振動子の単独の周波数、△mは質量変化、AはAu電極(金センサー)の圧電活性面積、μとPはそれぞれ水晶の密度と剛性率を表す。
【0159】
各構造のルテニウム錯体色素ごとに、含水率が0.2質量%未満であるルテニウム錯体色素を用いた場合の所要時間を基準として、吸着速度を下記評価基準により評価した。結果を下記表2に示す。A〜Dの範囲であれば基準より吸着速度が高められている。
【0160】
− 評価基準 −
A:所要時間が基準の0.8倍未満
B:所要時間が基準の0.8倍以上0.9倍未満
C:所要時間が基準の0.9倍以上0.95倍未満
D:所要時間が基準の0.95倍以上1.00倍未満
E:所要時間が基準の1.00倍以上
【0161】
[試験例2] 色素増感太陽電池の光電変換効率
上記調製例で調製した特定の含水率のルテニウム錯体色素を用いて、
図2に示す色素増感太陽電池20(5mm×5mmのスケール)を製造した。この製造方法は以下の通りである。製造した各色素増感太陽電池20について、光電変換性能を評価した。
【0162】
(受光電極前駆体[A]の作製)
ガラス基板(基板44、厚み4mm)上にフッ素ドープされたSnO
2導電膜(透明導電膜43、膜厚;500nm)を形成し、導電性支持体41を作製した。そして、このSnO
2導電膜上に、チタニアペースト「18NR−T」(DyeSol社製)をスクリーン印刷し、120℃で乾燥させた。次いで、チタニアペースト「18NR−T」を再度スクリーン印刷し、120℃で1時間乾燥させた。その後、乾燥させたチタニアペーストを、空気中、500℃で焼成し、半導体層45(層厚;10μm)を成膜した。さらに、この半導体層45上に、チタニアペースト「18NR−AO」(DyeSol社製)をスクリーン印刷し、120℃で1時間乾燥させた。その後、乾燥させたチタニアペーストを500℃で焼成し、半導体層45上に光散乱層46(層厚;5μm)を成膜した。
このようにして、SnO
2導電膜上に、感光体層42(受光面の面積;5mm×5mm、層厚;15μm、ルテニウム錯体色素は未担持)を形成し、ルテニウム錯体色素を担持していない受光電極前駆体[A]を作製した。
【0163】
(色素吸着)
次に、ルテニウム錯体色素を担持していない感光体層42に、上記調製例で調製したルテニウム錯体色素を以下のようにして担持させた。先ず、マグネシウムエトキシドで脱水したt−ブタノールとアセトニトリルとの1:1(体積比)の混合溶媒に、ルテニウム錯体色素濃度が2×10
−4モル/Lとなるように溶解し、さらにそこへ共吸着剤としてデオキシコール酸を上記ルテニウム錯体色素1モルに対して30モル加え、各色素溶液を調製した。次に、各色素溶液に受光電極前駆体[A]を25℃で45時間浸漬し、引き上げ後に乾燥させた。
このようにして、受光電極前駆体[A]にルテニウム錯体色素を担持させた受光電極40を作製した。
【0164】
(色素増感太陽電池の組み立て)
対極48として、上記の導電性支持体41と同様の形状と大きさを有する白金電極(Pt薄膜の厚み;100nm)を作製した。また、電解液として、ヨウ素0.1M(モル/L)、ヨウ化リチウム0.1M、4−t−ブチルピリジン0.5Mおよび1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド0.6Mをアセトニトリルに溶解して、液体電解質を調製した。さらに、感光体層42の大きさに合わせた形状を有するスペーサーS「サーリン」(商品名、デュポン社製)を準備した。
上記のようにして作製した受光電極40それぞれと対極48とを、上記スペーサーSを介して、対向させて熱圧着させた後に、感光体層42と対極48との間に電解液注入口から上記液体電解質を充填して電荷移動体層47を形成した。こうして作製した電池の外周および電解液注入口を、レジンXNR−5516(ナガセケムテック製)を用いて、封止、硬化し、色素増感太陽電池を製造した。
【0165】
<光電変換効率(η/%)の測定>
電池特性試験を行い、色素増感太陽電池について、光電変換効率(η/%)を測定した。電池特性試験は、ソーラーシミュレーター(WACOM製、WXS 85H)を用い、AM1.5フィルタを通したキセノンランプから1000W/m
2の擬似太陽光を照射することにより行った。I−Vテスターを用いて電流−電圧特性を測定し、光電変換効率(η/%)を求めた。
【0166】
各構造のルテニウム錯体色素において、含水率が0.2質量%未満であるルテニウム錯体色素を用いた場合の光電変換効率を基準として評価した。結果を下記表2に示す。A〜Dの範囲であれば光電変換効率が基準より優れ、Eは基準と同等、Fは悪化したことを表す。
【0167】
− 評価基準 −
A:光電変換効率が基準の1.20倍以上
B:光電変換効率が基準の1.20倍未満1.10倍以上
C:光電変換効率が基準の1.10倍未満1.05倍以上
D:光電変換効率が基準の1.05倍未満1.01倍以上
E:光電変換効率が基準の1.01倍未満0.99倍以上
F:光電変換効率が基準の0.99倍未満
【0168】
[比較例]
含水率が本発明で規定するよりも少ないルテニウム錯体色素を、水分を含む溶媒に溶解し、含水率が本発明で規定する範囲内にあるルテニウム錯体色素を、水分を含まない溶媒に溶解した際の溶液と同等の水分量となる色素溶液を調製し、この色素溶液を用いて吸着速度と光電変換効率の試験を実施した。詳細を以下に説明する。
【0169】
<吸着速度>
DMFに水を加えて含水率1質量%のDMFを調製した。この溶液とDMFとt−ブタノールを組み合わせることで、所定の含水量の(DMF/t−BuOH=1/1)混合溶媒を作製した。この溶媒に試験番号100で用いたルテニウム錯体色素を溶解し、色素濃度が0.2mM、溶液の水分量については、含水率2.01質量%のルテニウム錯体色素を、水分を加えていないDMFを用いたDMF/t−BuOH=1/1溶媒に0.2mM濃度で溶解した際の溶液中の水分量と同じになるようにして、色素溶液を調製した。この色素溶液を用いて、上記と同様にして吸着速度を測定した(試験番号P−1)。同様にして、下記表2に示す色素溶液を用いて吸着速度を測定した(試験番号P−2〜P−4)。結果を下記表2に示す。
【0170】
<変換効率>
アセトニトリルに水を加えて含水率0.1質量%のアセトニトリルを調製した。この溶液とt−ブタノールとアセトニトリルを組み合わせることで、所定の含水量のt−ブタノールとアセトニトリルとの1:1(体積比)の含水混合溶媒を作製した。この溶媒に試験番号100で用いたルテニウム錯体色素を溶解し、色素濃度が2×10
−4モル/L、溶媒の水分量が、含水率2.01質量%のルテニウム錯体色素を水分を加えていないアセトニトリルを用いたt−ブタノールとアセトニトリルとの1:1(体積比)溶媒に2×10
−4モル/L濃度で溶解した際の溶液中の水分量と同じになるようにして、色素溶液を調製した。この色素溶液を用いて、上記と同様にして色素増感太陽電池を製造し、上記と同様にして光電変換効率を測定した(試験番号P−1)。同様にして、下記表2に示す色素溶液を用いて製造した色素増感太陽電池を用いて光電変換効率を測定した(試験番号P−2〜P−4)。結果を下記表2に示す。
なお、試験番号P−1〜P−4の吸着速度および光電変換効率の評価においては、それぞれ試験番号100、200、300、400を基準とした。
【0171】
【表2】
【0172】
上記表2に示されるように、ルテニウム錯体色素の含水率と水の含有量が同じ色素溶液であっても、本発明で規定する含水率のルテニウム錯体色素を用いない場合には、吸着速度と光電変換効率のいずれにおいても劣る結果となった(P−1〜P−4)。
これに対し、本発明で規定する含水率のルテニウム錯体色素は、半導体微粒子表面への吸着速度が高められており、光電変換効率も向上することがわかった。
【0173】
[調製例2] ルテニウム錯体色素の調製
下記構造のDye−11〜19を調製した。
【0174】
【化28】
【0175】
【化29】
【0176】
Dye−11はJournal of the American Chemical Society,2001年,123巻,1613〜1624ページに記載のComplex 4で、Black DyeあるいはN749と呼ばれる化合物である。
Dye−11は特開2013−133294号公報に記載の方法と全く同様にして合成した。この公報に乾燥時間の記載は無いが、Dye−1と同様に乾燥を行い、その乾燥条件を5時間継続しても重量減少が観測できなくなるまで継続した。上記と同様にして含水率を測定したところ、乾燥後のDye−11の含水率は0.11質量%であった。乾燥温度と時間を変えることで、下表に示す含水率の異なるDye−11を調製した。
【0177】
Dye−12はInorganic Chemistry,1999年,38巻,6298〜6305ページに記載の4で、N719と呼ばれる化合物である。
Dye−12はInorganic Chemistry,1999年,38巻,6298〜6305ページに記載の方法と全く同様にして合成した。この文献に乾燥時間の記載は無いが、Dye−1と同様に乾燥を行い、その乾燥条件を5時間継続しても重量減少が観測できなくなるまで継続した。上記と同様にして含水率を測定したところ、乾燥後のDye−12の含水率は0.18質量%であった。乾燥温度と時間を変えることで、下表に示す含水率の異なるDye−12を調製した。
【0178】
Dye−13は特表2008−507570号公報に記載のK−19である。
Dye−13は特表2008−507570号公報に記載の方法と全く同様にして合成した。この公報に乾燥時間の記載は無いが、Dye−1と同様に乾燥を行い、その乾燥条件を5時間継続しても重量減少が観測できなくなるまで継続した。上記と同様にして含水率を測定したところ、乾燥後のDye−13の含水率は0.12質量%であった。乾燥温度と時間を変えることで、下表に示す含水率の異なるDye−13を調製した。
【0179】
Dye−14はInorganic Chemistry,2004年,43巻,4216〜4226ページに記載の2で、Z907と呼ばれる化合物である。
Dye−14はInorganic Chemistry,2004年,43巻,4216〜4226ページに記載の方法と全く同様にして合成した。この文献に乾燥時間の記載は無いが、Dye−1と同様に乾燥を行い、その乾燥条件を5時間継続しても重量減少が観測できなくなるまで継続した。上記と同様にして含水率を測定したところ、乾燥後のDye−14の含水率は0.08質量%であった。乾燥温度と時間を変えることで、下表に示す含水率の異なるDye−14を調製した。
【0180】
Dye−15はJournal of the American Chemical Society,2008年,130巻,10720〜10728ページに記載のC101である。
Dye−15はJournal of the American Chemical Society,2008年,130巻,10720〜10728ページに記載の方法と全く同様にして合成した。この文献に乾燥時間の記載は無いが、Dye−1と同様に乾燥を行い、その乾燥条件を5時間継続しても重量減少が観測できなくなるまで継続した。上記と同様にして含水率を測定したところ、乾燥後のDye−15の含水率は0.10質量%であった。最終工程における溶媒の残存量と含水率および乾燥温度と時間を変えることで、下表に示す含水率の異なるDye−15を調製した。
【0181】
Dye−16は特開2007−302879号公報に記載のCYC−B1である。
Dye−16は特開2007−302879号公報に記載の方法と全く同様にして合成した。この公報に乾燥時間の記載は無いが、Dye−1と同様に乾燥を行い、その乾燥条件を5時間継続しても重量減少が観測できなくなるまで継続した。上記と同様にして含水率を測定したところ、乾燥後のDye−16の含水率は0.07質量%であった。最終工程における溶媒の残存量と含水率および乾燥温度と時間を変えることで、下表に示す含水率の異なるDye−16を調製した。
【0182】
Dye−17はACS nano,2009年,3巻,3103〜3109ページに記載のCYC−B11である。
Dye−17はACS nano,2009年,3巻,3103〜3109ページに記載の方法と全く同様にして合成した。この文献に乾燥時間の記載は無いが、Dye−1と同様に乾燥を行い、その乾燥条件を5時間継続しても重量減少が観測できなくなるまで継続した。上記と同様にして含水率を測定したところ、乾燥後のDye−17の含水率は0.07質量%であった。最終工程における溶媒の残存量と含水率および乾燥温度と時間を変えることで、下表に示す含水率の異なるDye−17を調製した。
【0183】
Dye−18は国際公開第2007/091525号に記載のJ2である。
Dye−18は国際公開第2007/091525号に記載の方法と全く同様にして合成した。この公報に乾燥時間の記載は無いが、Dye−1と同様に乾燥を行い、その乾燥条件を5時間継続しても重量減少が観測できなくなるまで継続した。上記と同様にして含水率を測定したところ、乾燥後のDye−18の含水率は0.05質量%であった。最終工程における溶媒の残存量と含水率および乾燥温度と時間を変えることで、下表に示す含水率の異なるDye−18を調製した。
【0184】
Dye−19はJournal of the Physical Chemistry C,2009年,113巻,6290〜6297ページに記載のC106である。
Dye−19はJournal of the Physical Chemistry C,2009年,113巻,6290〜6297ページに記載の方法と全く同様にして合成した。この文献に乾燥時間の記載は無いが、Dye−1と同様に乾燥を行い、その乾燥条件を5時間継続しても重量減少が観測できなくなるまで継続した。上記と同様にして含水率を測定したところ、乾燥後のDye−19の含水率は0.06質量%であった。最終工程における溶媒の含水率および乾燥温度と時間を変えることで、下表に示す含水率の異なるDye−19を調製した。
【0185】
上記調製例2で得られたルテニウム錯体色素を用いて、上記試験例1と同様にして吸着速度を、上記試験例2と同様にして色素増感太陽電池を製造してその光電変換効率を、それぞれ測定した。結果を下表に示す。
【0186】
【表3】
【0187】
上記表3に示されるように、本発明で規定する含水率のルテニウム錯体色素は、半導体微粒子表面への吸着速度が高められており、光電変換効率も向上することがわかった。
【0188】
[調製例3] ルテニウム錯体色素の調製
下記構造のDye−20〜32を調製した。
【0189】
【化30】
【0190】
【化31】
【0191】
【化32】
【0192】
【化33】
【0193】
Dye−20はWO2013/047384に記載のD−1−14aである。同公報に記載の方法と同様にして合成した。この公報に乾燥時間の記載は無いが、Dye−1と同様に乾燥を行い、その乾燥条件を5時間継続しても重量減少が観測できなくなるまで継続した。上記と同様にして含水率を測定したところ、乾燥後のDye−20の含水率は0.11質量%であった。最終工程における溶媒の含水率および乾燥温度と時間を変えることで、下表に示す含水率の異なるDye−20を調製した。
Dye−21〜32についてもDye−20と同様にして、表4に示す含水率のルテニウム錯体色素を調製した。
【0194】
上記調製例3で得られたルテニウム錯体色素を用いて、下記試験例3により吸着速度を、上記試験例2と同様にして色素増感太陽電池を製造してその光電変換効率を、それぞれ測定した。結果を表4に示す。
【0195】
[試験例3] 吸着速度
試験例2と同様にして、上記で得られたルテニウム錯体色素を含む色素溶液をそれぞれ調製した。
上記の試験例2で作製した受光電極前駆体[A](受光面0.25cm
2)を、暗所、25℃で1時間、各色素溶液に浸漬し、引き上げ後に乾燥させた。このようにして、受光電極前駆体[A]にルテニウム錯体色素を担持させた受光電極40を作製した。
得られた受光電極40を、3mlの10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAOH)メタノール溶液に室温で15時間浸漬し色素を脱着した。このようにして得られた溶液中の色素量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定し各色素の吸着量を定量した。
各構造のルテニウム錯体色素ごとに、含水率が0.2質量%未満であるルテニウム錯体色素を用いた場合の吸着量を基準として、吸着量を下記評価基準により評価した。結果を下記表4に示す。A〜Dの範囲であれば一定時間内の吸着量が多く、基準より吸着速度が高められている。
【0196】
− 評価基準 −
A:吸着量が基準の1.20倍以上
B:吸着量が基準の1.15倍以上1.20倍未満
C:吸着量が基準の1.10倍以上1.15倍未満
D:吸着量が基準の1.05倍以上1.10倍未満
E:吸着量が基準の1.05倍未満
【0197】
【表4】
【0198】
上記表4に示されるように、本発明で規定する含水率のルテニウム錯体色素は、半導体微粒子表面への吸着速度が高められており、光電変換効率も向上することがわかった。
【0199】
本発明をその実施態様および図面とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0200】
本願は、2015年3月17日に日本国で特許出願された特願2015−054036、および2015年6月11日に日本国で特許出願された特願2015−118147に基づく優先権を主張するものであり、これらをここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。