(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
分析対象の検体が収容された検体容器と、試薬が収容された試薬容器と、前記検体と試薬とを混合して反応させる反応セルと、前記検体容器から前記反応セルに前記検体を分注する検体分注機構と、前記試薬容器から前記反応セルに前記試薬を分注する試薬分注機構と、前記反応セルに収容された検体と試薬の混合液の分析を行う分析部とを備えた自動分析装置において、
前記自動分析装置の振動を検出する振動検出部と、
前記振動検出部により検出された振動の周波数解析を行う周波数解析部と、
前記周波数解析部による解析結果に基づいて、前記振動の発生要因を、地震、地震以外であって前記分析部による分析結果に悪影響を及ぼすおそれのある分析影響振動、地震及び分析影響振動以外の振動、のいずれであるかを判定する振動要因判定部と、
振動要因判定部での判定結果に基づいて、前記自動分析装置の状態遷移を制御する制御部と
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図である。
【0012】
図1において、自動分析装置は、分析対象の検体を収容した検体容器110と、複数の検体容器110を搭載する検体ラック111と、検体ラック111に搭載された検体容器110を搬送する複数の搬送ライン101と、検体ラック111を搭載した状態で回転することにより複数の搬送ライン101間での検体ラック111の授受を行うローター102と、検体の分析に用いる試薬を収容した試薬容器113と、複数の試薬容器113を搭載する試薬ディスク103と、検体と試薬とを反応させる複数の反応セル112を設けた反応ディスク104と、搬送ライン101上に設けられた検体分注位置121において、検体容器110の検体を反応セル112に分注する検体分注機構105aと、検体分注機構105aのノズル116aを洗浄するノズル洗浄機構109aと、試薬容器113の試薬を反応セル112に分注する試薬分注機構105bと、試薬分注機構105bのノズル116bを洗浄するノズル洗浄機構109bと、反応セル112に収容された検体と試薬との混合液(反応液)を攪拌する攪拌機構106と、反応セル112の反応液を光学的に測定する光学測定部130と、反応セル112の洗浄を行う反応セル洗浄機構108と、自動分析装置の少なくとも可動部を覆ってユーザーの可動部へのアクセスを制限するカバー部150と、自動分析装置の全体の動作を制御する全体制御装置115と、各種情報を記憶するデータ格納部122及び外部データ格納部307と、各種情報を表示する表示部や、入力操作等を行うためのマウスやキーボード等により構成されるユーザーインタフェース308とから概略構成されている。
【0013】
検体分注機構105aは、アーム118aと、アーム118aに設けられたノズル116aと、アーム118a及びノズル116aを駆動するための分注機構駆動モータ119aと、ノズル116aの先端と分注対象の液面と間の静電容量の変化に基づいて液面の位置を検出する液面センサ117とを備えている。検体分注機構105aにより検体容器110に収容された検体が分注される検体分注位置121には、検体の飛び散り等を抑制するシールド部114が設けられている。なお、試薬分注機構105bは、検体分注機構105aと同様の構成を有している。
【0014】
光学測定部130は、反応セル112に収容された反応液に測定光を照射するための光源ランプ120と、反応セル112に収容された反応液等を透過した測定光を検出する分光器107とを備えている。光学測定部130の分光器107には、分光器107の振動を検出する振動センサ123が備えられており、振動センサ123で検出された検出結果は、全体制御装置115に送られる。
【0015】
全体制御装置115は、自動分析装置を構成する各機構の動作を制御するものであり、
外部データ格納部
307に予め格納された各種設定や各種プログラムに基づいて、検体の分析を行う分析処理や、自動分析装置に生じる振動の種類や程度を判別し、その結果に応じて自動分析装置の状態遷移を制御する振動対応処理(後述)などの動作を制御する。
【0016】
図2は、反応ディスクにおける反応セルと光学測定部との関係を模式的に示す断面図である。
【0017】
図2において、反応ディスク104には、反応セル112内における反応液112aの温度を制御して化学反応を促進させるための反応槽201が設けられている。反応槽201には、図示しない温度制御部によって温度制御された恒温水202が循環されており、反応セル112が恒温水202に浸漬されることで反応液112aの温度が制御される。反応槽201には、反応槽201内の恒温水202を建物排水設備209に排出する排水路208が設けられており、排水路208には、恒温水202の建物排水設備209への流通を制限する電磁弁208aが設けられている。
【0018】
光学測定部
130において、光学測定部130の光源ランプ120から反応セル203に照射された測定光120aは、恒温水202に浸漬された反応セル112の反応液112aを透過し、分光器107の回折格子205を経て波長毎に分光され、光検出器206によって検出されて、微小な(例えば、小さい場合には数pAの)電気信号に変換される。光検出器206での検出信号206aは、全体制御装置115の吸光度測定部207に送られて、吸光度の測定(比色分析)が行われる。吸光度測定部207における測定結果(すなわち吸光度)は、データ格納部122に送られて格納される。
【0019】
反応セル112の反応液112a内では、試料における測定項目成分と試薬とが反応し、その測定項目成分の濃度に比例して測光対象物質が生成又は消費されており、反応液112aを透過した測定光120aでは、測光対象物質の吸収領域の波長の光が吸収されている。このように、反応液112aを透過し回折格子205を介して光検出器206で検出された測定光120aの測光対象物質の吸収領域の波長の光の吸光度に基づいて、測定項目成分の濃度を得ることができる。
【0020】
電磁弁208aの動作は、全体制御装置115により制御されており、電磁弁208aが閉状態に制御されている場合には恒温水202が反応槽201内に貯留され、電磁弁208aが開状態に制御されると反応槽201内の恒温水202が建物排水設備209に排出される。
【0021】
図3は、全体制御装置の処理機能を関連する周辺機能とともに抜き出して概略的に示す機能ブロック図である。
【0022】
図3に示すように、全体制御装置115は、振動検出部である振動センサ123により検出された振動の検出信号を用いて周波数解析を行う周波数解析部としての電気信号変換部115aと、電気信号変換部115aでの解析結果に基づいて、振動の発生要因を判定する振動要因判定部としての比較部115bと、比較部115bでの判定結果に基づいて、自動分析装置の状態遷移を制御する制御部115cと、光検出器206での検出信号206aから吸光度の測定を行い、測定結果を制御部115cを介してデータ格納部122に格納する吸光度測定部207とから構成されている。
【0023】
自動分析装置に外乱等に起因して振動が生じると、振動センサ123により検知されて検出信号が電気信号変換部115aに送られる。電気信号変換部115aは、振動センサ123からの検出信号に対して高速フーリエ変換(FFT: Fast Fourier Transform)等の周波数解析処理を実施し、処理結果を比較部115bに送る。比較部115bは、電気信号変換部115aでの処理結果において、振動センサ123により検出された振動の周波数や加速度、継続時間などを、それぞれ予め定めた閾値と比較し、その比較結果に基づいて振動の要因を判定して、判定結果を制御部115cに送る。制御部115cは、比較部115bでの判定結果に基づいて、その振動が自動分析装置の安全性に影響を及ぼすか、或いは、分析結果の信頼性に影響を及ぼすかを考慮して自動分析装置の状態遷移を制御する。例えば、制御部115cは、停電等が生じてデータが損失してしまう恐れがある場合には、データ格納部122や外部データ格納部307に必要な情報を書き込んでシャットダウン処理を行うことで、データ損失を抑制する。また、制御部115cは、分析データの信頼性に影響する恐れがある場合には、ユーザーインタフェース308等に、振動の生じた時間帯に測定を行った検体の分析データが振動による影響を受けている恐れがある旨を表示する。
【0024】
ここで、本実施の形態に係る自動分析装置の振動対応処理の詳細について説明する。
【0025】
図4は、振動対応処理の処理内容を示すフローチャートである。
【0026】
図4において、全体制御装置115は、振動センサ123により振動が検出されると(ステップS100)、電気信号変換部115aで周波数解析処理を実施し(ステップS110)、比較部115bで振動の周波数帯の判定を行う(ステップS120)。ステップS120において、振動が10Hz付近の帯域(すなわち、10Hzを含む予め定めた周波数範囲)であると判定された場合には、危険振動であるとして、振動の大きさ(例えば、加速度)が予め定めた閾値Aよりも大きいかどうかを判定する(ステップS200)。ステップS200での判定結果がNOの場合には、自動分析装置の動作状態を維持する(分析中であれば分析動作を継続する)ように状態遷移を実施し(ステップS201)、処理を終了する。
【0027】
また、ステップS200での判定結果がYESの場合には、振動時間が予め定めた閾値Bよりも長いかどうかを判定し(ステップS210)、判定結果がNOの場合には、アラームを出力して(ステップS211)、処理を終了する。また、ステップS210での判定結果がYESの場合には、危険度が高い振動である(すなわち、比較的大きな地震である)と判断し(ステップS220)、装置カバー(カバー部150)に設けられたロック機能を作動させる(開動作ができないようにロックする)、又は、自動分析装置においてオペレータが接触可能な可動部を停止する、又は、その両方の状態遷移を行う(ステップS230)。
【0028】
続いて、予め反応槽水(恒温水202)を捨てる設定となっているかどうかを判定し(ステップS240)、判定結果がYESの場合には、電磁弁208aを開状態として反応槽201から恒温水202を建物排水設備209に排水し(ステップS250)、判定結果がNOの場合には、電磁弁208aを閉状態として反応槽201の恒温水202を保持する(ステップS241)。ステップS250又はS241の処理が終了すると、続いて自動シャットダウンの設定がなされているかどうかを判定し(ステップS260)、判定結果がYESの場合には、自動分析装置のシャットダウンを実行し(ステップS270)、また、判定結果がNOの場合には、自動分析装置を停止して(ステップS261)、処理を終了する。
【0029】
また、ステップS120において、振動が100Hz付近の帯域(すなわち、100Hzを含む予め定めた周波数範囲)であると判定された場合には、分析結果に影響を及ぼす振動であるとして、振動の大きさ(例えば、加速度)が予め定めた閾値Cよりも大きいかどうかを判定する(ステップS300)。ステップS300での判定結果がNOの場合には、自動分析装置の動作状態を維持する(分析中であれば分析動作を継続する)ように状態遷移を実施し(ステップS301)、処理を終了する。また、ステップS300での判定結果がYESの場合には、反応過程にジャンプがあるかどうかを判定し(ステップS310)、判定結果がNOの場合には、装置状態を維持する(データ格納部にログを残す)ように状態遷移を実施し(ステップS311)、処理を終了する。また、ステップS310での判定結果がYESの場合には、データフラグ出力を行い(ステップS320)、処理を終了する。
【0030】
また、全体制御装置115は、地震発生情報(すなわち、緊急地震速報など、
地震発生による揺れの到達を予め報知する情報)が発報されると(ステップS400)、地震発生情報を自動分析装置の動作の状態遷移に反映させる設定になっているかどうかを判定し(ステップS410)、判定結果がYESの場合には、ステップS220に進む。また、ステップS410での判定結果がNOの場合には、自動分析装置の動作状態を維持する(分析中であれば分析動作を継続する)ように状態遷移を実施し(ステップS201)、処理を終了する。
【0031】
以上のように構成した本実施の形態の動作を説明する。
【0032】
本実施の形態の自動分析装置において、振動センサ123により振動が検出された場合には、その信号を高速フーリエ変換等により周波数解析処理し、その周波数がどのような周波数帯域にあるかを判定する(
図4のS100〜S120)。ここで、自動分析装置に影響を及ぼす種類の振動は大きく2種類ある。一方の振動は、地震などにより自動分析装置に生じる振動で発生する振動で、ユーザーや装置の安全性を害するリスクがある10Hz帯域の比較的低い周波数の振動(危険振動)であり、他方の振動は、光検
出器206から吸光度
測定部207に微小電流で出力される検出信号206aに影響を及ぼすことで分析結果の信頼性を欠如する可能性がある100Hz帯域の振動である。周波数解析処理した振動の信号は、周波数毎の振動の大きさ、すなわち周波数特性であり、特定の周波数成分の振動の大きさを判別可能である。
【0033】
ここで、
図5は、10Hz帯域における振動の大きさと危険度との関係を模式的に示す図であり、
図6は
図5において振動の大きさが閾値Aを超えた時間と危険度との関係を模式的に示す図である。また、
図7は、100Hz帯域における振動の大きさと分析結果の信頼性の欠如の程度との関係を模式的に示す図である。
【0034】
図5は、ユーザーや装置が危険状態になり得る10Hz帯域の振動の大きさを表しており、振動が大きくなるほどリスク(危険)が大きくなることを示している。また、
図6は、
図5において振動が閾値Aを超えた時間が長くなるほどリスク(危険)が大きくなることを示している。さらに、
図7は、分析性能に影響を及ぼす100Hz帯域の振動の大きさが大きくなるほど分析結果の信頼性が欠如する可能性が大きくなることを示している。
【0035】
周波数解析処理した振動信号の10Hz帯域のみの振動成分を抜きだし、この振動成分の大きさが、予め定めた閾値Aを超えるか否かで自動分析装置の動作状態の遷移を決定する。ここで、閾値Aは、例えば、短時間の振動では安全を害することのない振動の大きさとして設定する。閾値Aを超えない場合は、安全性に影響のない振動のため、装置状態は維持し、また、分析中であれば分析を継続する(
図4のS201)。
【0036】
また、閾値Aを超えた場合は、さらに、閾値Bを超えるか否かで自動分析装置の動作状態の遷移を決定する。ここで、閾値Bは、例えば、安全性を害するリスクがある振動の継続時間の境目を示すものとして設定する。閾値Bを超えない場合は、10Hz帯域の振動があったが継続時間が短いため、弱い地震が発生した場合、装置にユーザーが接触した場合、或いは、装置に物がぶつかった場合の何れかであると判断し、アラームを出力する(
図4のS211)。閾値Aをどの程度の振動の大きさで設定するかによって、装置動作を継続させるかどうかの基準を設定し、また、閾値Bをどの程度の振動の大きさで設定するかによって、アラームにより装置を停止させるか、注意喚起のみのアラームとして装置動作を継続させるかの基準を設定する。つまり、閾値Bを超えるような場合は、ユーザーや装置に危険があるレベルの地震であると判断する(
図4のS220)。なお、例えば、Jアラート等の緊急警報システムの情報のような地震発生情報が発報されている場合には、その情報を自動分析装置が受け取った際に、ユーザーや装置に危険があるレベルの地震が発生したと判定する(
図4のS400,S401)。ただし、自動分析装置が置かれている地域の地盤や階数等の条件によって揺れ方は大きく異なるため、地震発生情報を自動分析装置の動作状態遷移の処理に反映させるか否かは、オペレータがUI(ユーザーインタフェース308)上から設定できるようにする。
【0037】
また、ユーザーや装置に危険があるレベルの地震であると判定した場合、自動分析装置を停止させると同時に、エンクロージャー等の危険部位を保護するためのカバー(カバー部150)が供えられた装置で、カバー部150をロックする機能があるものに関してはロックしてカバーが開かないようにする(
図4のS230)。このように、地震発生時にカバー部150をロックすることで、例えば、バランスを崩したユーザーが自動分析装置の機構に接触し、怪我や感染等が発生するリスクを従来よりもさらに軽減することができる。また、カバー部150が開いた状態でユーザーや自動分析装置に危険があるレベルの地震を検知した場合には、ユーザーが接触可能な可動部のモータの励磁をOFFにすることで同様の効果が得られ、万が一可動部に接触した場合でも、怪我や感染等の発生のリスクをさらに軽減することが可能となる(
図4のS230)。なお、手動で開閉するカバーの場合は、カバーのロックとモータの励磁をOFFすることは、カバーの開閉状態に関わらず、実施してもよい。そして、これと並行して、制御部115cが持つ地震の情報や分析データ等の情報をデータ格納部112、或いは外部データ格納部307に保管する。
【0038】
また、自動分析装置を停止させると同時に、反応槽201に満たされた恒温水202がこぼれることで装置の故障やユーザーの感電等が生じてしまうことを抑制するために、電磁弁208
aをオープン状態に固定して、急激に恒温水202を排水408する(
図4のS250)。この時、恒温水202をすべて排水する必要はなく、地震等の振動でもこぼれない程度の液量になるまで排水を行う。なお、停電等により自動分析装置への電源供給が失われた場合において、オープン状態に固定できない電磁弁を使用する場合は、この場合にも排水できるように、ノーマルオープンの電磁弁を使用することも考えられる。ただし、恒温水202を排水した状態から、分析可能な状態にするためには、30分程度の時間を要することがあるため、大型病院のように複数台の分析装置を所有し、例えば災害時においても一部の分析装置は常に分析可能な状態を維持したい場合もあるため、排水しない場合(
図4のS241)が適切な場合もある。従って、排水するか否かについて、オペレータがUI(ユーザーインタフェース308)上から設定できるようにする。
【0039】
反応槽201の恒温水202の排水処理(排水した場合、又は排水しない場合、
図4のS250,S241)の後、自動分析装置の自動シャットダウンを行うか否かを判定する。自動シャットダウンが必要な理由は、地震後の停電による分析データの損失を防ぐ目的であるため、自動シャットダウンの実行時は、自動でデータを保存する。加えて、自動シャットダウンの有無にかかわらず、外部のHOSTコンピュータ(図示せず)と通信手段を有する装置構成の場合は、データをHOSTコンピュータにコピーし、データ損出を防ぐことも考えられる。なお、データは例えばハードディスクなどに保管されるが、停電により正常終了できない場合は、データが破損してしまうことがあり得るため、自動分析装置に無停電電源装置(UPS : Uninterruptible Power System)を取り付ける場合もある。また、自動分析装置の設置場所の多くは病院であるため、自家発電や大容量のUPSが供えられていることもり、数日分の電気を賄える設備も存在する。つまり、自動分析装置が設置されている設備によって、自動分析装置に電源が供給される時間が異なるため、自動シャットダウンの要否や、自動シャットダウンまでの時間の設定は、自動分析装置の設置状況に合わせてオペレータがUI(ユーザーインタフェース308)上から設定できるようにする。なお、自動シャットダウンが選択されていた場合でも、地震発生後にユーザーが装置を操作すれば自動シャットダウンの処理は解除する。
【0040】
また、周波数解析処理した振動信号の100Hz帯域のみの振動成分を抜きだし、この振動成分の大きさが、予め定めた閾値Cを超えるか否かで自動分析装置の動作状態の遷移を決定する。ここで、閾値Cは、例えば、光検出器206から出力される検出信号としての微小電流に影響を及ぼすことで分析結果の信頼性を欠如する可能性がある振動の大きさとして設定する。閾値Cを超えない場合は、分析結果に影響が無いと判断できるため、自動分析状態の動作状態を維持し、また、分析中であれば分析を継続する(
図4のS301)。また、閾値Cを超えた場合には、反応過程にジャンプがあるか否かを判定する(
図4のS310)。
【0041】
自動分析装置では、1つの検体に対して数十回の測光を実施し、最後に時間に対する吸光度の傾きや疑似曲線などから最終結果を得る測定方法が一般的である。この傾きや疑似曲線から、ある測定値が例えば数パーセントずれている状態をここではジャンプと定義する。ジャンプは試薬ごとに定義することが好ましい。このジャンプがあったタイミングと閾値Cを超えたタイミングとが一致する場合は、自動分析装置に生じた振動によって分析データに影響があったと判断可能となる。この時、その分析データに該当する検体にデータフラグを立て、再検査するようにユーザーに通知する(
図4のS320)。また、振動の大きさが閾値Cを超えるが、ジャンプがない、またはジャンプと振動発生のタイミングとが一致しない場合は、UI上には特に表示はしない。ただし、閾値Cを超えた時点で、データ格納部にログを残す(
図4のS311)。なお、自動分析装置は、長年使用されることが多く、例えば、ネジの緩み等の経年劣化によって外乱に対する耐性が悪化してしまう可能性がある。従って、定期点検の際にログを確認し、ログが残っていればネジの緩み等を確認し対策することで、分析結果の信頼性をより向上させることができる。
【0042】
以上のように構成した本実施の形態の効果を説明する。
【0043】
自動分析装置において、分析結果に影響を与える恐れのある振動は、上記従来技術のような分注プローブの軸周り方向の回転停止に起因するものの他に、地震、大型車両や鉄道などの走行、建設機械等の動作などに起因するものが考えられる。例えば、自動分析装置における分注プローブは、サンプルや試薬を1マイクロリットル以下の微少量で分注するために先端が非常に細く形成されており、地震のように周波数が低く振動が大きい揺れによって周囲の構成に接触すると、他の構成を損傷させたり、分注プローブ自身が破損したりする恐れがある。また、自動分析装置において分析に用いる光学系は微少電流を用いており、大型車両や鉄道、建設機械などに起因する振動によってその微少電流の値が変動してしまい、分析結果の精度が低下してしまう恐れがあった。
【0044】
このような問題に対して、本実施の形態においては、振動センサ123により検出された振動の周波数解析を行い、その解析結果に基づいて、振動の発生要因を判定し、その判定結果に基づいて、自動分析装置の状態遷移を制御するように構成したので、振動によって分析装置や分析結果、オペレータなどに生じる悪影響を抑制することができる。
【0045】
なお、本実施の形態に示した構成は種々の変更が可能である。
【0046】
例えば、振動を検出する振動センサ123は、分析データが振動の影響を受けやすい部位の近くに設置することが好ましいが、スペースの都合上設置が難しい場合に設置場所を変更することは可能である。
【0047】
また、自動分析装置の使用方法はユーザーによって異なるものであるため、閾値A、閾値B、及び閾値Cについて、それぞれ複数の値を用意し、ユーザーがUI上から選択的に各式位置を設定できるようにしてもよい。
【0048】
さらに、振動発生時には必要に応じて反応槽201内の恒温水202を排水するように構成したが、その他にこぼれる恐れのある液体がある箇所を持つ装置においては、同様に排水する手段を有する構成としても良い。
【0049】
また、分析結果に影響する周波数帯域が複数存在する場合は、それぞれの周波数帯域で振動の大きさや時間に対する閾値を設定する手段を設けても良い。