特許第6391373号(P6391373)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391373
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】マスター・スレーブネットワーク装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
   H04L12/28 200M
   H04L12/28 400
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-178687(P2014-178687)
(22)【出願日】2014年9月3日
(65)【公開番号】特開2016-54367(P2016-54367A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】吉川 徹
【審査官】 宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−063750(JP,A)
【文献】 特開平05−314036(JP,A)
【文献】 特開2007−148540(JP,A)
【文献】 特開2007−082077(JP,A)
【文献】 特開2010−147688(JP,A)
【文献】 特開2007−235349(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0204082(US,A1)
【文献】 特開2011−155356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00−12/955,29/00
H04B7/24−7/26,H04W4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスターとなる1の機器に対してスレーブとなる1または2以上の機器を配置して構成されたマスター・スレーブネットワーク装置であって、
前記マスターとなる機器及び前記スレーブとなる機器は、ハードウェア、ソフトウェア及びパラメータの設定値が同じ同一品番の機器であり、それぞれマスターまたはスレーブを自動認識するマスター/スレーブ判定部を有し
前記機器はそれぞれ2つのポートを有し、
情報を伝達するバスとして、システム全体を統括する基幹バスであり前記マスターとなる機器の一方のポートが接続されるメインバスと、前記マスターとなる機器の他方のポートと前記スレーブとなる機器の一方のポートとが接続されるローカルバスとを有し、
前記マスター/スレーブ判定部は、
所定の処理により前記一方のポートが前記メインバスに接続されているか否かを判定し、前記メインバスに接続されていると判定すると当該の前記機器が前記マスターとなることを自動認識するとともに、前記他方のポートにスレーブ認識信号を出力し、
前記一方のポートから前記スレーブ認識信号を入力すると当該の前記機器が前記スレーブとなることを自動認識する
ことを特徴とするマスター・スレーブネットワーク装置。
【請求項2】
前記マスター/スレーブ判定部は、前記所定の処理として、前記一方のポートから前記メインバスに伝達される情報を入力したときに前記メインバスに接続されていると判定する
ことを特徴とする請求項に記載のマスター・スレーブネットワーク装置。
【請求項3】
前記マスター/スレーブ判定部は、前記所定の処理として、前記メインバスに接続されている別の機器と所定の通信を行ったときに前記メインバスに接続されていると判定する
ことを特徴とする請求項に記載のマスター・スレーブネットワーク装置。
【請求項4】
前記機器はそれぞれ不揮発性のメモリを有し、
前記マスター/スレーブ判定部は、当該の前記機器が前記マスターまたは前記スレーブと自動認識した結果を前記メモリに保存し、前記自動認識した結果が前記メモリに保存されているときは、前記メモリから前記自動認識した結果を読み込んで当該の前記機器が前記マスターまたは前記スレーブとなることを自動認識する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のマスター・スレーブネットワーク装置。
【請求項5】
前記機器は、前記2つのポートのいずれか一方から入力した信号を他方の前記ポートに出力するゲートウェイ部をそれぞれ有しており、
前記マスターとなる機器の前記ゲートウェイ部は、前記メインバスに接続されている別の機器と前記スレーブとなる機器との間の信号を送受信させ、
前記スレーブとなる機器の前記ゲートウェイ部は、不動作に処理されている
ことを特徴とする請求項に記載のマスター・スレーブネットワーク装置。
【請求項6】
前記スレーブとなる機器の前記2つのポートに前記マスターとなる機器または別の前記スレーブとなる機器が接続されて前記スレーブとなる機器が2以上デイジーチェーン状に接続されており、
前記2つのポートの一方から前記スレーブ認識信号を入力すると、当該の前記機器が前記スレーブとなることを自動認識するとともに、前記2つのポートの他方に前記スレーブ認識信号を出力する
ことを特徴とする請求項に記載のマスター・スレーブネットワーク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスター・スレーブの構成を有するネットワーク装置に関し、特にマスター・スレーブが同一品番の機器で構成されるマスター・スレーブネットワーク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マスター・スレーブの構成を有するネットワーク装置に関する従来の技術として、例えば特許文献1〜3に記載されたものが知られている。特許文献1ではマスター装置とスレーブ装置とがあらかじめ区別されており、複数あるスレーブ装置にIDを設定するための技術が記載されている。複数のスレーブ装置にIDを設定するために電源線とスイッチが設けられており、高コストな構成となっている。また特許文献2では、スイッチを設けずにスレーブ装置にIDを設定するための技術が記載されている。さらに特許文献3でも、複数のスレーブLAN機器にIDを設定するための技術が記載されており、ID設定のために管理用データ線が設けられている。
【0003】
マスター・スレーブ構成のネットワーク装置として、たとえば車両に搭載された複数のECU(Electric Control Unit)が車両のCAN(Controller Area Network)バスに接続されて構成されたものが知られている。車両に搭載されたネットワーク装置の一例を図4に示す。同図では、上位ECU91が接続された車両バス92に、さらに2つのECU93、94が接続されたネットワーク装置90が示されている。ここでは、ECU93をマスターECUとし、ECU94をスレーブECUとしている。また、車両バス92はCANバスを形成している。
【0004】
マスターECU93は、車両バス92を介してスレーブECU94から情報を受信し、これと自身の情報とを統合して所定の処理を行う。またマスターECU93は、処理結果を車両バス92を介して上位ECU91に出力する等、上位ECU91との間で情報の授受を行う。スレーブECU94は、制御等により得られた情報を車両バス92を介してマスターECU93に伝達する。
【0005】
図4に例示するようなマスター・スレーブネットワーク装置90において、2つのECU93、94にハードウェア、ソフトウェア及び設定パラメータが同じ機器を用いるとき、それぞれにマスターまたはスレーブであることを認識させる必要がある。各ECUにマスターかスレーブかを認識させる方法として、以下の4つの方法が考えられる。
【0006】
方法1:出荷前に各ECUの所定のパラメータにマスターまたはスレーブの設定値を書き込み、当該パラメータへの書き込み後に出荷する。各ECUを車両に取り付けるとき、当該パラメータにマスターの設定値が書き込まれたECUをマスターECU93として車両に取り付け、スレーブの設定値が書き込まれたECUをスレーブECU94として取り付ける。
【0007】
方法2:各ECUの出荷後車両への取り付け前に、ディーラーが各ECUにマスターまたはスレーブの設定を行い、マスターの設定が行われたECUをマスターECU93として車両に取り付け、スレーブの設定が行われたECUをスレーブECU94として取り付ける。この方法では、2つのECUは出荷時にマスターとスレーブの区別がなく、同じ製品のECUとして出荷することができる点で方法1と異なっている。
【0008】
方法3:各ECUにマスターまたはスレーブを選択するスイッチを出荷前に設置しておき、車両への取り付け時に当該スイッチでマスターかスレーブかを選択する。これにより、各ECUはスイッチからの電気信号によりマスターであるかあるいはスレーブであるかを認識することができる。この方法でも、2つのECUが出荷時にマスターとスレーブの区別がないという点で方法2に類似しているが、本方法ではスイッチからの電気信号を用いてマスターかスレーブかを電気的に区別している。
【0009】
方法4:車両バス92にマスターECU93を接続するためのインターフェースコネクタとスレーブECU94を接続するためのインターフェースコネクタの少なくともいずれか一方に、マスター/スレーブを識別するためのピンを設けておく。一例として、マスターECU93を接続するインターフェースコネクタのみにピンを設けたものを図5に示す。同図では、マスターECU93を接続するインターフェースコネクタ95のみにピン97を設け、スレーブECU94を接続するインターフェースコネクタ96にはピンを設けていない。インターフェースコネクタ95に接続されたECUは、ピン97の情報を読み取ることでマスターECUであることを認識し、インターフェースコネクタ96に接続されたECUは、ピン情報が得られないことでスレーブであることを認識することができる。
【0010】
上記の方法1〜4のうち方法1では、出荷時にマスターECU93に用いるECUとスレーブECU94に用いるECUとで、パラメータの設定値が異なっている。そのため、出荷後各ECUをマスターとスレーブに区別して管理する必要があり、各ECUを区別して車両に取り付ける必要がある。これに対し方法2〜4では、出荷時には各ECUにマスターとスレーブの区別がなく、ハードウェア、ソフトウェア及び設定されているパラメータがすべて同じとなっている。以下では、ハードウェア、ソフトウェア及び設定パラメータがすべて同じECUを同一品番ECUと称することとする。方法2〜4で各ECUにマスターとスレーブの区別が付加されるのは、各ECUが車両に取り付けられる直前あるいは取り付けられた後である。
【0011】
上記の方法2〜4では、マスターECU93とスレーブECU94に同一品番ECUを用いることから、ECUのメーカ側及びユーザ側とも各ECUを区別することなく同一種類の機器として管理することができ、ECUの管理コストを下げることができるといった利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−152741号公報
【特許文献2】特許第4957813号公報
【特許文献3】特許第2959403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の従来技術では、マスターの機器とスレーブの機器とがあらかじめ区別されており、同一品番の機器を用いてそれぞれをマスターとスレーブに認識させるための技術については何ら記載がない。マスターの機器とスレーブの機器とをあらかじめ区別してネットワーク装置に用いる場合には、それぞれを別々に管理する必要があることから、管理コストが上昇するといった問題がある。なお、特許文献1では電源線とスイッチが必要となり、特許文献3では管理用データ線が必要となることから、高コストになるといった問題も有している。
【0014】
また、複数のECUを備えたマスター・スレーブネットワーク装置において、各ECUがマスターかスレーブかを認識させる上記4つの方法では、それぞれ以下のような課題がある。方法1では、あらかじめマスターECUとスレーブECUとに区別されて異なる品番として出荷されることから、特許文献1〜3と同様にそれぞれを別々に管理する必要があり、高コストになるといった問題がある。
【0015】
方法2〜4では、マスターECUとスレーブECUに同一品番ECUを用いることから管理コストを下げることができるといった利点があるが、それぞれ以下のような問題を有している。まず方法2では、ディーラーが各ECUにマスターまたはスレーブの設定を行う必要があることから、ディーラーで新たな工数が発生する。また、各ECUにマスターかスレーブの設定を行ために、新たにCAN通信ツールが必要になる、といった問題もある。
【0016】
方法3では、ディーラーがスイッチを操作してマスターかスレーブかの選択を行う必要があり、やはりディーラーで新たな工数が発生する。また、各ECUにあらかじめスイッチを設置しておく必要があるため、コストの上昇につながる。
【0017】
さらに方法4では、同一品番ECUを接続するインターフェースコネクタに、マスター/スレーブを識別するためのピンをあらかじめ設けておき、マスターとスレーブとで所定の差分(例えば所定の電圧印加の有無)を与えるようにする必要がある。このように、マスターに用いるECUとスレーブに用いるECUとで異なるコネクタを用いる必要が生じる。また、この用途のためにインターフェースコネクタに専用ピンを1ピン分用意する必要があり、コネクタのピン数が増加してコストの上昇につながる。
【0018】
さらに、マスターECUとスレーブECUをともに車両バスに接続する従来のネットワーク装置では、スレーブECUからマスターECUへの情報伝達を車両バスを介して行うことから、車両バスに伝達される情報量が増大して通信負荷が大きくなるといった問題もある。
【0019】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、同一品番の機器を用いてそれぞれがマスターかスレーブかを自動認識することが可能なマスター・スレーブネットワーク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明のマスター・スレーブネットワーク装置の第1の態様は、マスターとなる1の機器に対してスレーブとなる1または2以上の機器を配置して構成されたマスター・スレーブネットワーク装置であって、前記マスターとなる機器及び前記スレーブとなる機器は、ハードウェア、ソフトウェア及びパラメータの設定値が同じ同一品番の機器であり、それぞれマスターまたはスレーブを自動認識するマスター/スレーブ判定部を有し、前記機器はそれぞれ2つのポートを有し、情報を伝達するバスとして、システム全体を統括する基幹バスであり前記マスターとなる機器の一方のポートが接続されるメインバスと、前記マスターとなる機器の他方のポートと前記スレーブとなる機器の一方のポートとが接続されるローカルバスとを有し、前記マスター/スレーブ判定部は、所定の処理により前記一方のポートが前記メインバスに接続されているか否かを判定し、前記メインバスに接続されていると判定すると当該の前記機器が前記マスターとなることを自動認識するとともに、前記他方のポートにスレーブ認識信号を出力し、前記一方のポートから前記スレーブ認識信号を入力すると当該の前記機器が前記スレーブとなることを自動認識することを特徴とする。
【0022】
本発明のマスター・スレーブネットワーク装置の他の態様は、前記マスター/スレーブ判定部は、前記所定の処理として、前記一方のポートから前記メインバスに伝達される情報を入力したときに前記メインバスに接続されていると判定することを特徴とする。
【0023】
本発明のマスター・スレーブネットワーク装置の他の態様は、前記マスター/スレーブ判定部は、前記所定の処理として、前記メインバスに接続されている別の機器と所定の通信を行ったときに前記メインバスに接続されていると判定することを特徴とする。
【0024】
本発明のマスター・スレーブネットワーク装置の他の態様は、前記機器はそれぞれ不揮発性のメモリを有し、前記マスター/スレーブ判定部は、当該の前記機器が前記マスターまたは前記スレーブと自動認識した結果を前記メモリに保存し、前記自動認識した結果が前記メモリに保存されているときは、前記メモリから前記自動認識した結果を読み込んで当該の前記機器が前記マスターまたは前記スレーブとなることを自動認識することを特徴とする。
【0025】
本発明のマスター・スレーブネットワーク装置の他の態様は、前記機器は、前記2つのポートのいずれか一方から入力した信号を他方の前記ポートに出力するゲートウェイ部をそれぞれ有しており、前記マスターとなる機器の前記ゲートウェイ部は、前記メインバスに接続されている別の機器と前記スレーブとなる機器との間の信号を送受信させ、前記スレーブとなる機器の前記ゲートウェイ部は、不動作に処理されていることを特徴とする。
【0026】
本発明のマスター・スレーブネットワーク装置の他の態様は、前記スレーブとなる機器の前記2つのポートに前記マスターとなる機器または別の前記スレーブとなる機器が接続されて前記スレーブとなる機器が2以上デイジーチェーン状に接続されており、前記2つのポートの一方から前記スレーブ認識信号を入力すると、当該の前記機器が前記スレーブとなることを自動認識するとともに、前記2つのポートの他方に前記スレーブ認識信号を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、同一品番の機器を用いてそれぞれがマスターかスレーブかを自動認識することが可能なマスター・スレーブネットワーク装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施形態のマスター・スレーブネットワーク装置の構成を示すブロック図である。
図2】第2実施形態のマスター・スレーブネットワーク装置の構成を示すブロック図である。
図3】第3実施形態のマスター・スレーブネットワーク装置の構成を示すブロック図である。
図4】車両に搭載された従来のネットワーク装置の一例を示すブロック図である。
図5】マスターECUを接続するインターフェースコネクタにピンが設けられた従来のネットワーク装置の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の好ましい実施の形態におけるマスター・スレーブネットワーク装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。以下では、車両に搭載された複数のECUが車両のCANバスに接続されて構成されたマスター・スレーブネットワーク装置を例に説明するが、これに限定されるものではない。
【0030】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るマスター・スレーブネットワーク装置を、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態のマスター・スレーブネットワーク装置100の構成を示すブロック図である。本実施形態のマスター・スレーブネットワーク装置100は、メインバスである車両バス110と、車両バス110に接続されたマスターECU120と、ローカルバス140を介してマスターECU120に接続されたスレーブECU130とを備えている。また車両バス110には、マスターECU120及びスレーブECU130の上位に位置付けられる上位ECU10が接続されている。
【0031】
マスターECU120とスレーブECU130は、ハードウェア、ソフトウェア及び設定されているパラメータがすべて同じ同一品番ECUである。また、車両バス110とローカルバス140は、ともにCANバスを形成している。マスターECU120及びスレーブECU130は、それぞれCANポートを2つ有しているものとする。図1では、マスターECU120がCANポート121、122を有し、スレーブECU130がCANポート131、132を有している。
【0032】
本実施形態のマスター・スレーブネットワーク装置100では、マスターECU120の1つのCANポート121が車両バス110に接続され、スレーブECU130の1つのCANポート131がローカルバス140を介してマスターECU120の別の1つのCANポート122に接続されることを特徴としている。
【0033】
マスターECU120及びスレーブECU130をそれぞれ車両バス110及びローカルバス140に接続することで、本実施形態ではECU120がマスターでありECU130がスレーブであることを、下記のようにして自動認識させることが可能となる。
【0034】
まずECU120は、CANポート121が車両バス110に接続されていることから、車両バス110に伝達される情報をCANポート121から入力することができ、上位ECU10との通信を行うことも可能である。これに対しECU130は、CANポート131、132とも車両バス110に接続されていないことから、車両バス110に伝達される情報を入力することができず、上位ECU10との通信もできない。本実施形態のマスター・スレーブネットワーク装置100では、このような車両バス110を介した処理が可能か否かによってマスターか否かを判定するようにしている。
【0035】
マスターか否かを判定するために、ECU120,130はそれぞれマスター/スレーブ判定部101を備えている。マスター/スレーブ判定部101は、車両バス110を介した所定の処理が行えるか否かにより、当該のECUがマスターか否かを判定するものである。所定の処理として上記のように、車両バス110に伝達される情報の入力、あるいは上位ECU10との通信、があり、これらの処理が可能か否かを判定することでマスターか否かを判定することができる。
【0036】
ECU120は、CANポート121が車両バス110に接続されていることから、CANポート121から車両バス110に伝達される情報を入力することができ、該情報を入力したと判定することで、当該のECU120がマスターであると自動認識することができる。これに対しECU130は、CANポート131、132とも車両バス110に接続されていないことから、車両バス110に伝達される情報を入力することができず、マスターであるとの自動認識は行われない。
【0037】
車両バス110に伝達される情報として、例えば車速、ブレーキ状態、等の情報をあらかじめ選択しておき、この情報を入力したときにマスターであると判定するようにすることができる。あるいは、何らかの情報を入力するとマスターであると判定するようにしてもよい。起動時はローカルバス140に何の情報も伝達されていないことから、ECU130が何らかの情報を入力してマスターであると判定することはない。
【0038】
マスター/スレーブ判定部101による車両バス110を介した所定の処理として、上位ECU10との通信が可能か否かを判定するものであってもよい。一例として、上位ECU10が所定の周期で出力する所定のパケットを受信したか否かを判定し、受信したと判定したときに当該のECU120がマスターであると自動認識させる。
【0039】
あるいは、ECU120、130のそれぞれのマスター/スレーブ判定部101がそれぞれのCANポートに所定の確認信号を出力し、これに対する上位ECU10からの応答信号を受信したときに、当該のECU120がマスターであると自動認識させるようにしてもよい。ECU120のマスター/スレーブ判定部101から出力された確認信号は、CANポート121から車両バス110を介して上位ECU10に伝達されることから、上位ECU10から応答信号が送信され、ECU120のマスター/スレーブ判定部101がCANポート121から該応答信号を入力することができる。
【0040】
これに対しECU130のマスター/スレーブ判定部101から出力された確認信号は、CANポート131、132のいずれからも車両バス110に出力することができない。また、ECU120からの確認信号に応じて上位ECU10が応答信号を車両バス110に出力しても、ECU130のマスター/スレーブ判定部101はこれを入力することができない。よって、ECU130がマスターであると自動認識されることはない。
【0041】
ECU120がマスターであると自動認識されると、ECU120のマスター/スレーブ判定部101は、車両バス110に接続されたCANポート121とは別のCANポート122にスレーブ認識信号を出力するものとする。CANポート122はローカルバス140に接続され、ローカルバス140はECU130のCANポート131に接続されていることから、ECU120のCANポート122に出力されたスレーブ認識信号は、ローカルバス140を介してECU130に伝達される。ECU130のマスター/スレーブ判定部101は、CANポート131からスレーブ認識信号を入力すると、当該のECU130がスレーブであると自動認識する。
【0042】
ECU120、130に設けられたマスター/スレーブ判定部101は、車両の電源が投入されてECU120、130がそれぞれ起動したときに上記の処理を開始する。そして、それぞれがマスターまたはスレーブに自動認識されたときにマスター/スレーブ判定部101の処理を終了する。ECU120、130がそれぞれマスター、スレーブに自動認識されると、その結果をそれぞれのメモリ102に記憶させておくことができる。メモリ102として、例えばNVM(Non−Volatile Memory)を用いるのがよい。これにより、以降のECU120、130の起動時には、メモリ102に記憶された自動認識結果を読み込んでそれぞれをマスター、スレーブに設定することができる。
【0043】
これに対し、自動認識結果をメモリ102に記憶させず、ECU120、130の起動毎に、マスター/スレーブ判定部101によるマスター/スレーブの自動認識を行わせるようにしてもよい。この場合には、例えばECUの不具合等のため車両から一旦取り外されたとき、修理・調整等の後再び車両に取り付けるにあたって、各ECUが取り外し前にマスターであったかスレーブであったかを確認する必要がない、といった効果が得られる。例えば、ECU130をマスターの位置に取り付けECU120をスレーブの位置に取り付けたとしても、起動後にマスター/スレーブ判定部101によってECU130、120がそれぞれマスター、スレーブであると自動認識される。
【0044】
上記説明のように、本実施形態のマスター・スレーブネットワーク装置100では、マスター用のECU及びスレーブ用のECUに同一品番のものを用いることができ、ECUの出荷時や出荷後の管理コストを低減させることができる。また、車両バス110及びローカルバス140に接続された各ECUに対し、マスターかスレーブかをマスター/スレーブ判定部101を用いて自動認識させることができる。その結果、ディーラー等による作業や特別なハードウェア等が不要となり、コストの増加を抑制することができる。
【0045】
さらに、本実施形態のマスター・スレーブネットワーク装置100では、マスターECU120とスレーブECU130との間のデータ送受信を、車両バス110を用いずローカルバス140を用いて行っていることから、車両バス110の通信負荷を増大させないといった効果も得られる。とくに、CANバスは低速のバスであることから、ローカルバスを用いることで車両バスの負荷を増大させないようにすることは大きな利点となる。
【0046】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係るマスター・スレーブネットワーク装置を、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態のマスター・スレーブネットワーク装置200の構成を示すブロック図である。第1実施形態のマスター・スレーブネットワーク装置100では、上位ECU10との間で直接通信可能なのはマスターECU120のみであり、スレーブECU130は上位ECU10と直接通信を行うことはできない。これに対し、スレーブECU130も上位ECU10との直接通信が必要になることが考えられる。例えば、上位ECU10からECU120、130のそれぞれにソフトウェアをダウンロードするとき、あるいは故障情報を送信するとき等には、上位ECU10とECU120、130のそれぞれとの間で直接通信が必要になることがある。
【0047】
そこで、本実施形態のマスター・スレーブネットワーク装置200では、マスターECU220及びスレーブECU230のそれぞれにゲートウェイ部202が設けられている。マスターECU220のゲートウェイ部202は、2つのCANポート221、222の一方から入力したパケットを他方のCANポートに転送して出力する。これにより、上位ECU10とスレーブECU230との間の直接通信は、マスターECU220のゲートウェイ202を用いて行われる。
【0048】
より具体的には、上位ECU10からスレーブECU230に直接送信されるパケットは、上位ECU10からマスターECU220のCANポート221に送信され、マスターECU220のゲートウェイ202によりCANポート221からCANポート222に転送され、CANポート222からスレーブECU230のCANポート231に送信される。また、スレーブECU230から上位ECU10に直接送信されるパケットは、スレーブECU230のCANポート231からマスターECU220のCANポート222に送信され、マスターECU220のゲートウェイ202によりCANポート222からCANポート221に転送され、CANポート221から上位ECU10に送信される。
【0049】
マスターECU220とスレーブECU230は同一品番であることから、スレーブECU230にもゲートウェイ部202が設けられている。しかし、スレーブECU230のCANポート232には別のECUが接続されていないことから、スレーブECU230のゲートウェイ部202が動作しないように処理しておく必要がある。
【0050】
上位ECU10とECU220、230との間で直接通信が適切に行えるようにするには、通信パケットがECU220に送信されるものなのか、あるいはECU230に送信されるものなのか、を識別できるようにしておく必要がある。そこで、ECU220、230に対応する固有のIDを通信パケットに付加させるものとする。これにより、上位ECU10から送信されたパケットにマスターECU220のIDが付加されているときは、マスターECU220がこれを受信する。また、上位ECU10から送信されたパケットにスレーブECU230のIDが付加されているときは、マスターECU220のゲートウェイ部202を経由してスレーブECU230がこれを受信する。
【0051】
本実施形態のマスター・スレーブネットワーク装置200によれば、マスターECU220だけでなくスレーブECU230でも、上位ECU10との間で直接通信が可能となる。
【0052】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係るマスター・スレーブネットワーク装置を、図3を用いて説明する。図3は、本実施形態のマスター・スレーブネットワーク装置300の構成を示すブロック図である。本実施形態のマスター・スレーブネットワーク装置300は、複数のスレーブECU330がマスターECU320にデイジーチェーン状に接続されて構成されており、図3では3つのスレーブECU330が接続されている。以下では、3つのスレーブECU330をそれぞれ330(1)〜330(3)で表す。
【0053】
スレーブECU330(1)は、CANポート331(1)がローカルバス341でマスターECU320のCANポート322に接続され、CANポート332(1)はローカルバス342に接続されている。また、スレーブECU330(2)は、CANポート331(2)がローカルバス342でスレーブECU330(1)のCANポート332(1)に接続され、CANポート332(2)はローカルバス343に接続されている。さらに、スレーブECU330(3)は、CANポート331(3)がローカルバス343でスレーブECU330(2)のCANポート332(2)に接続され、CANポート332(3)には何も接続されていない。
【0054】
本実施形態でも、マスターECU320及びスレーブECU330(1)〜330(3)は、すべて同一品番のECUを用いており、それぞれマスターかスレーブかをそれぞれのマスター/スレーブ判定部301を用いて自動認識する。ここで、マスターECU320に接続されたスレーブECU330(1)では、マスター/スレーブ判定部301がマスターECU320から出力されたスレーブ認識信号をCANポート331(1)から入力してスレーブであることを自動認識すると、つぎにスレーブ認識信号をCANポート332(1)に出力する。
【0055】
ローカルバス342でスレーブECU330(1)に接続されたスレーブECU330(2)では、マスター/スレーブ判定部301がCANポート331(2)からスレーブ認識信号を入力してスレーブであることを自動認識する。その後、スレーブ認識信号をCANポート332(2)に出力する。さらに、ローカルバス343でスレーブECU330(2)に接続されたスレーブECU330(3)では、マスター/スレーブ判定部301がCANポート331(3)からスレーブ認識信号を入力してスレーブであることを自動認識する。その後、スレーブ認識信号をCANポート332(3)に出力するが、CANポート332(3)には別のスレーブECUが接続されていないため、スレーブ自動認識の処理が終了する。
【0056】
上記のように本実施形態のマスター・スレーブネットワーク装置300では、スレーブECU330のマスター/スレーブ判定部301がスレーブ認識信号をCANポート331から入力すると、スレーブであることを自動認識した後スレーブ認識信号をCANポート332に出力するように構成されている。これにより、スレーブECUが複数(以下ではn(自然数)個とする)デイジーチェーン状に接続されている場合でも、n個すべてのスレーブECUに対してスレーブであることを自動認識させることが可能となっている。
【0057】
本実施形態のマスター・スレーブネットワーク装置300においても、各スレーブECU330が上位ECU10と直接通信可能となるようにゲートウェイ部202を有する構成とすることができる。この場合、マスターECU320及びn個のスレーブECU330(1)〜330(n)はすべて同一品番のECUを用いていることから、マスターECU320及びn個のスレーブECU330(1)〜330(n)のすべてがゲートウェイ部202を有することになる。
【0058】
n個のスレーブECU330(1)〜330(n)は、順次デイジーチェーン接続されていることから、n番目のスレーブECU330(n)のCANポート332(n)には別のスレーブECU330が接続されていない。そのため、n番目のスレーブECU330(n)のゲートウェイ部202が動作しないように処理しておく必要がある。そこで、n番目のスレーブECU330(n)が最終端に接続されていることを、以下のようにして自動認識できるようにすることで、スレーブECU330(n)のゲートウェイ部202を自動で不動作にすることができる。
【0059】
各スレーブECU330のマスター/スレーブ判定部301がCANポート331からスレーブ認識信号を入力したとき、所定の応答信号をCANポート331に出力するようにする。応答信号は、CANポート331からローカルバスを経由してスレーブ認識信号の送信元であるスレーブECU330のCANポート332に伝達される。そこで、各スレーブECU330のマスター/スレーブ判定部301は、スレーブ認識信号をCANポート332に出力した後、送信先からの応答信号がCANポート332に返されるのを待つ。このとき、スレーブ認識信号を出力してから所定時間経過しても応答信号が返されないときは、マスター/スレーブ判定部301は当該のスレーブECU330が最終端のスレーブECU330であると判定する。最終端のスレーブECU330であると判定したときは、当該のスレーブECU330のゲートウェイ部202が動作しないように処理する。
【0060】
本実施形態のマスター・スレーブネットワーク装置300では、マスターECU320及びn個のスレーブECU330に同一品番のものを用いることができ、それぞれマスターかスレーブかを自動認識させることが可能となっている。これにより、ECUの出荷時や出荷後の管理コストを低減させることができるとともに、ディーラー等による作業や特別なハードウェア等が不要となり、コストの増加を抑制することができる。
【0061】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係るマスター・スレーブネットワーク装置の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態におけるマスター・スレーブネットワーク装置の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 上位ECU
100、200、300 マスター・スレーブネットワーク装置
101、301 マスター/スレーブ判定部
102 メモリ
110 車両バス
120、220、320 マスターECU
130、230、330 スレーブECU
121、122、131、132、221、222、231、232、321、322、331、332 CANポート
140,341〜343 ローカルバス
202 ゲートウェイ部
図1
図2
図3
図4
図5