(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記外蓋(10)と内蓋(20)の間において、第4剥離領域(34)に隣接し、内蓋切目(5)と蓋材の周縁とで囲まれた領域に接着層が設けられている、請求項1または2記載の湯切り孔付き蓋材。
上記複数の湯切り孔切目(4)のうち、第3剥離領域(33)に最も近接している湯切り孔切目(4)と第3剥離領域(33)との距離がほぼ4mmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の湯切り孔付き蓋材。
【背景技術】
【0002】
生麺タイプのカップ入り即席麺では、喫食の際、カップ容器に収納されている袋入りの生麺、スープ、具等をカップから取り出して、袋から出した生麺を容器に戻す。そして、容器に熱湯を注いで一定時間放置した後で(つまり、麺を湯がいた後で)、湯切りが行われる。この湯切り動作を簡便にする蓋材が、特許文献1、2に開示されている。
【0003】
これら蓋材の機能は、
図1に示す通りである。すなわち、蓋材は内蓋および外蓋の2層構造を有していて、内蓋には、
図1aに示した「剥離開始切目」、「湯切り孔切目」、「内蓋切目」が入っている。この内蓋を容器本体の外周フランジ部に接着することで、蓋材は容器本体に固定され、その結果、外蓋が容器天面に位置する(
図1b)。
図1bの状態から摘み部を摘んで、蓋材を容器本体から剥がすと、「剥離開始切目」の箇所から外蓋が内蓋から剥離し、容器側に残存する内蓋部分に湯切り孔が形成され、「内蓋切目」の箇所からは外蓋と内蓋が接着した状態で剥がされて、内容物を取り出すための大開口が形成され、その結果、カップ状容器の口部には、湯切り孔が形成された内蓋部分のみが残る(
図1c)。
図1cで外蓋の裏面に斜線で示した領域は、外蓋に残った内蓋の一部である。
図1cの状態でお湯を注いで、麺を湯がく。次いで、容器本体を傾けて湯切り孔からお湯を切り、さらに、具を入れるとともに再度湯を注いで、即席麺が出来あがる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上に説明したような蓋材においては、蓋材を容器本体から引き剥がす際に、
(i)「剥離開始切目」の位置で内蓋と外蓋の剥離がスムーズに開始し、
(ii)「湯切り孔切目」周辺領域において内蓋と外蓋が確実に剥離されるとともに、内蓋に湯切り孔が確実に形成され、
(iii)「内蓋切目」の位置からは内蓋と外蓋が剥離せず接着した状態で容器本体から剥がされる、ことが必要である。
【0006】
なお、便宜上「内蓋」と「外蓋」の2層構造と説明しているが、厳密に言うと「内蓋」および「外蓋」のそれぞれも、さらに複数の層で構成されている。ただ、「内蓋」は複数の層が集まって1つの層(内蓋)として挙動するように意図されており、「外蓋」についても同様である。
そして、上述の剥離が良好に行われない場合には、剥離不良により、「内蓋」あるいは「外蓋」が意図していない内層間で破断し、その結果、見た目や機能が低下し、商品価値が下がってしまうこととなる。
【0007】
本発明は、このような剥離不良の問題を防ぐために、「内蓋」と「外蓋」の境界における離型層のパターンについて工夫したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の湯切り孔付き蓋材は、
ア:外蓋と内蓋が離型層を介して剥離可能に積層されるとともに、外方に突出する摘み部を有しており、
イ:内蓋には、
摘み部の近傍に、径方向外側および内側(蓋材の中心から見て、相対的に「遠い側」および「近い側」)の2本の剥離開始切目が形成され、
内側の剥離開始切目よりも内側において、摘み部を中央に置いて所定の蓋材中心角範囲で第1位置から第2位置に至る領域に、内蓋の周方向に沿って複数の湯切り孔切目が形成され、
湯切り孔切目に関して、剥離開始切目とは反対側に、摘み部と蓋材の中心を結ぶ線に交差して、内蓋の一周縁から他周縁まで延在する内蓋切目が形成され、
ウ:上記離型層は、離型剤で構成されていて、外側の剥離開始切目と内蓋切目と蓋材の周縁とで囲まれた領域に形成されている。
そして、上記離型層は、離型剤の面積率が相対的に異なる4種の領域に区画されていて、当該4種の領域を離型剤の面積率の高い順に第1〜第4剥離領域としたとき、
第1剥離領域は、摘み部を中央に置いて蓋材中心角でほぼ180°の領域において、蓋材周縁に沿って延在しており、
第3剥離領域は、第1剥離領域の内側に沿って湯切り孔切目よりも外側に、上記第1位置から第2位置に渡って延在しており、
第2剥離領域は、上記第1位置から内蓋切目まで、第1剥離領域および蓋材周縁に沿って延在する領域と、上記第2位置から内蓋切目まで、第1剥離領域および蓋材周縁に沿って延在する領域との2つの領域からなり、
第3剥離領域と、第2剥離領域を構成する2つの領域と、内蓋切目とで囲まれた領域であって、かつ湯切り孔切目(4)の外側である領域が第4剥離領域とされている。
【発明の効果】
【0009】
上記構成を備えた本発明の湯切り孔付き蓋材においては、最も離型剤の面積率の高い「第1剥離領域」が、剥離開始のきっかけとなる剥離開始切目が存在する領域に位置しているので、剥離の開始がスムーズとなる。つまり、「第1剥離領域」に配置された離型層を構成する離型剤の面積率を高くする(すなわち、離型剤の単位面積当たりの濃度を濃くする)ことにより、剥離強度を低くすることが出来るので、剥離開始切目の部分に大きな力をかけなくとも容易に剥離できる。
「第2剥離領域」に配置された離型層を構成する離型剤の面積率は、「第1剥離領域」における離型剤の面積率よりも相対的に低くしているが、これは次の理由による。すなわち、剥離が始まる「第1剥離領域」では、「摘み部」に作用する剥離させるための外力は、蓋材面に対してほぼ垂直に作用するが、剥離が第2剥離領域にまで進行したときには、「摘み部」は蓋材面とほぼ平行方向に引っ張られており外力は一般的に剥離開始時よりも大きくなっている。そのため「第2剥離領域」に配置された離型層を構成する離型剤の面積率を相対的に低くすることにより、剥離強度を高めることが出来るので、良好な剥離性を維持しつつ、容器全体の強度が損なわれない。
【0010】
「第4剥離領域」に配置された離型層を構成する離型剤の面積率は一番低くしている。これは次の理由による。
「第4剥離領域」は、その他の「第1剥離領域」「第2剥離領域」「第3剥離領域」と比較して一番大きな面積を占めており、コスト面を勘案すれば、離型剤の面積率を低くして蓋材における離型剤の全体での使用量を抑えることが望ましい。一方、商品購入者による剥離作業の労力を勘案すれば、離型剤の面積率を高くして剥離強度を低くし、小さい力で剥離作業を進行させることが望ましく、これらは、一見矛盾することになる。
しかし、従来技術にて前述したのと同様に、本願発明の蓋材においても、容器本体の開口部を塞ぐようにかぶせた状態で、容器本体の開口部を囲むフランジ部にてヒートシールによる熱と圧力で接着するものであり、ヒートシールによる熱と圧力は剥離強度を高める方向に作用する傾向がある。ここで、「第1剥離領域」「第2剥離領域」「第3剥離領域」は蓋材の周縁近くに配置されているので、ヒートシールによる熱と圧力が作用するが故に、ヒートシール後の剥離強度はヒートシール前の剥離強度よりも高くなるが、「第4剥離領域」は蓋材の周縁を敢えて除いた更に内側の領域に配置されているので、ヒートシールによる熱と圧力が作用せず、ヒートシール後の剥離強度はヒートシール前の剥離強度と殆ど変わらず、剥離強度が高くなることがない。そうすると、蓋材単体つまりヒートシールしない状態における剥離強度としては、「第4剥離領域」に配置された離型層を構成する離型剤の面積率が一番低いので、本来なら剥離強度が相対的に一番大きくなってはいるが、最終製品の状態における蓋材つまりヒートシールを経た状態における剥離強度としては、他の領域だけが高くなるので、一番大きくなるとは限らず、離型剤の面積率の高低の差にもよるが、他の領域よりも剥離強度としては結果として低くなる。
したがって、「第4剥離領域」に配置された離型層を構成する離型剤の面積率を一番低くすることにより、蓋材における離型剤の全体での使用量を抑えると同時に「第4剥離領域」の剥離強度を弱くすることで、小さい力で剥離作業を進行させることが可能になる。
反対に、「第4剥離領域」に配置された離型層を構成する離型剤の面積率を高くしていくと、離型剤の使用量が増えコスト面でのデメリットが大きくなるだけでなく、剥離強度が低くなり、喫食前のカップ麺容器を搬送等する状況において、落下その他の衝撃が原因で瞬間的に容器内圧が高くなり、一番大きな面積を占める「第4剥離領域」において内蓋と外蓋の境界で剥離が生じる確率が高くなるという品質上のデメリットも大きくなってしまう。
また、「第4剥離領域」は剥離することにより、湯切り孔が形成される領域であり、外蓋と内蓋が剥離する場合でも、「湯切り孔切目」の内部領域だけは、内蓋が外蓋から剥離せずに外蓋とともに抜き取られる必要がある。したがって、「第4剥離領域」を「湯切り孔切目」の内側には配置せず、「湯切り孔切目」の内側は剥離層を介することなく外蓋と内蓋を接合させることが好ましい。更に、「湯切り孔切目」の内側において外蓋と内蓋をより強固に接合させて、より確実に内蓋が外蓋から剥離せずに外蓋とともに抜き取られるようにすべく、「湯切り孔切目」の内側にアンカーコート剤(一種の接着剤)を配置することが望ましい。
【0011】
さらに、「第1剥離領域」と「第4剥離領域」との間に「第3剥離領域」を配置している。これにより、次のような効果が得られる。
すなわち、前述したように、喫食前のカップ麺容器を搬送等する状況において、落下その他の衝撃が原因で瞬間的に容器内圧が高くなることがある。その場合、容器内に露出する「湯切り孔切目」あるいは「内蓋切目」を通して外蓋と内蓋との境界に圧力が及んで、剥離開始切目或いは内蓋切目から意図しない剥離が生じることがある。その場合、離型剤の面積率が高く設定されることで剥離強度が低くなっている「第1剥離領域」と、ヒートシールによる熱と圧力による作用が及ばないことで剥離強度の嵩上げがなく剥離硬度が低くなっている「第4剥離領域」が隣接するなら、剥離開始切目からの意図しない剥離が「第4剥離領域」にまで伝搬したり、内蓋切目からの意図しない剥離が「第1剥離領域」にまで伝搬し、湯切り孔が空いてしまって、内容物(食品)が外気に接触する事故の確率が高くなる点で好ましくない。そのため、「第1剥離領域」に配置された離型層を構成する離型剤の面積率よりも離型剤の面積率を相対的に低くすることで、「第1剥離領域」さらには「第4剥離領域」よりも剥離強度を大きくした「第3剥離領域」を間に配置することで、上記の意図しない剥離による事故が発生する可能性を低減できる。
【0012】
剥離がさらに進行して「第4剥離領域」を超えると(すなわち、内蓋切目を超えると)離型層は存在しなくなるので、内蓋および外蓋は互いに剥離することなく接着した状態で容器本体から剥がされることが確実となる。更に、内蓋切目を超えた領域において外蓋と内蓋がより接合している状態として、より確実に容器本体から剥がすべく、内蓋切目を超えた領域においてアンカーコート剤(一種の接着剤)を配置することが望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して、以下に詳細に説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る蓋材Fを示している。
図2aは内蓋20を示しており、
図2bは、
図2a中のb−b線断面図であって、蓋材Fの積層構造を示している。
蓋材Fは、
図1に示した従来の蓋材と同様に、外蓋10と内蓋20を積層して構成されている。そして、内蓋20の側がカップ容器のフランジ部に接着固定され、摘み部2を摘まんで引き剥がすことで、容器側に残った内蓋部分に湯切り孔を形成することができる。このような大略的な機能については、本発明の蓋材も従来の蓋材と同じである。本発明の蓋材は、以下に説明するように、離型層の具体的なパターンに特徴を有する。
【0015】
《内蓋20に形成される切目》
図2aは、内蓋20に形成される切目を示している。以下に説明する各切目は、内蓋20の全厚を貫通して形成される。
(ア)剥離開始切目3a、3b
剥離開始切目は、摘み部2を摘まんで蓋材を引き剥がす際に、外蓋10と内蓋20との剥離が開始するきっかけを与える。蓋材の径方向外側および内側に2つの剥離開始切目3a、3bが設けられているが、これは、蓋材をカップ容器のフランジ部に接着固定する際に生じ得る位置ズレを考慮したものである。
すなわち、本来的には、内側の剥離開始切目3bがフランジ部の外周縁に位置して、剥離開始のきっかけを与えることが意図されている。しかし、接着位置がズレて剥離開始切目3bがフランジ内方に位置した場合には、この剥離開始切目3bが接着される結果、本来の機能を失う。その場合には、外側にある剥離開始切目3aが、剥離開始のきっかけを与えることができる。
なお、2つの剥離開始切目3a、3bに関し、本件明細書では「外側」および「内側」という表現で両者を区別しているが、「外側」とは、蓋材の中心から見て、半径方向に相対的に「遠い側」を意味しており、「内側」とは、相対的に「近い側」を意味している。
(イ)湯切り孔切目4
外蓋10と内蓋20が剥離する際、内蓋に形成した湯切り孔切目4の内側領域は、外蓋10からは剥離しない。すなわち、円形の湯切り孔切目4の内側領域だけが外蓋10とともに内蓋20から抜き取られ、その結果、湯切り孔切目4の形状に対応した湯切り孔が内蓋20に形成される(
図1c参照)。
湯切り孔切目4は内蓋20の周方向に沿って複数形成されており、摘み部2を中央に置いて所定の蓋材中心角範囲で第1位置(A)から第2位置(B)に至る領域に、複数の切目群が存在している。
すなわち、本明細書において、第1位置(A)とは、周方向に複数点在する湯切り孔切目4のうちの一端に対応する位置をいう。そして、その反対側の一端に対応する位置を第2位置(B)とする。
(ウ)内蓋切目5
内蓋切目は、外蓋10と内蓋20の剥離が終了する位置として機能する。すなわち、摘み部2を摘まんで蓋材を引き剥がす際に、剥離が内蓋切目5に達する前は、外蓋10と内蓋20が剥離するが、内蓋切目5の位置からは、外蓋10と内蓋20は剥離せず、両者が一体となってカップ容器のフランジから剥がし取られ、その結果、内容物を取り出すための大開口が形成される(
図1c参照)。
内蓋切目5は、湯切り孔切目4に関して、剥離開始切目3a、3bとは反対側に形成されていて、摘み部2と蓋材の中心を結ぶ線に交差して、内蓋の一周縁から他周縁まで延在している。
【0016】
《積層構造》
図2bは、
図2a中のb−b線断面図であって、蓋材Fの積層構造を示している。蓋材は、その機能面に着目すれば「外蓋10」と「内蓋20」の2層構造と把握できるが、厳密に言うと「外蓋10」および「内蓋20」のそれぞれも、さらに複数の層で構成されている。ただ、「内蓋」は複数の層が集まって1つの層(内蓋)として挙動するように意図されており、「外蓋」についても同様である。なお
図2bでは、図示を明瞭にするため、各層を実際よりも肉厚に示している。
【0017】
外蓋10は、プラスチックフィルム層11、接着剤層12、紙層13を積層して構成されている。内蓋20は、ポリエチレン層21、アルミニウム箔22、熱接着性樹脂層23を積層して構成されている。
外蓋10と内蓋20の剥離が意図した通りに行われない場合には、剥離不良により「外蓋10」あるいは「内蓋20」が意図していない内層間で破断し、その結果、見た目や機能が低下し、商品価値が下がってしまう。そのような剥離不良を防ぐため、本発明では、外蓋10と内蓋20との間に設ける離型層に関して、当該離型層を構成する離型剤の面積率パターンについて工夫している(詳しくは、後述する)。
【0018】
《離型層の位置》
図3aは、内蓋20と離型層全体の位置関係を模式的に示している。実際には、
図2bの断面図に示したように、離型層は、外蓋10と内蓋20の間に設けられている。
図3bは、
図3a中の離型層のみを取り出して図示している。
【0019】
離型層は、外蓋10と内蓋20の境界全面に渡って設けられるのではなく、一部領域にのみ設けられる。すなわち、離型層は「外側の剥離開始切目3a」と「内蓋切目5」と「蓋材の周縁」で囲まれた領域にだけ設けられる。その結果、当該領域においてのみ、内蓋20が外蓋10から剥離して、カップ容器のフランジ部に残ることができる(ただし、湯切り孔切目4の内側領域は、外蓋10からは剥離せず、外蓋10とともに取り去られて、湯切り孔を形成する)。
以上の挙動を確実とするために、
図2bの断面図から分かるように、「内蓋切目5」と「蓋材の周縁」で囲まれる領域と、湯切り孔切目4の内側領域とにおいては、アンカーコート層(接着層)が設けられていて、これら領域においては、内蓋20と外蓋10とが剥離しないようにすることが好ましい。
【0020】
《離型層を構成する離型剤の面積率(剥離強度)》
まず、「離型剤の面積率」について、
図4を参照して説明する。
図4に模式的に示したように、一定領域に対して、離型剤をベタ塗りではなく、網点状に抜いて塗布する。
図4では、円形部が離型剤を塗布していない領域であって、その他の部分に離型剤を塗布している。したがって、「離型剤の面積率」とは、
図4中の矩形領域Rの全面積に対する「円形部を除いた部分」の面積割合である。
【0021】
後述する通り、面積率の大きさの相対関係は、下の通りである。
「第1剥離領域>第2剥離領域>第3剥離領域>第4剥離領域」
蓋材だけを単体で観察すると、面積率が大きい程、剥離強度が低くなる(剥離し易くなる)。すなわち、蓋材だけを単体で観察した場合における剥離強度の相対関係は、下の通りである。
(蓋材だけを単体で観察した場合における、剥離強度の相対関係)
「第1剥離領域<第2剥離領域<第3剥離領域<第4剥離領域」
【0022】
しかし、蓋材を容器本体フランジ部にヒートシールした後においては、ヒートシール領域内に位置する第1〜第3剥離領域は、それぞれヒートシールの影響により剥離強度が上がる。しかしながら、ヒートシール領域から唯一外れる第4剥離領域はヒートシールの熱と圧力による影響(剥離強度が高まる)を受けないので、最終的に第4剥離領域の剥離強度は一番弱くなる。つまり、容器本体フランジ部に蓋材が熱接着された最終製品の状態では、剥離強度の相対関係は、下のようになる。
(容器本体フランジ部に蓋材が熱接着された最終製品の状態での、剥離強度の相対関係)
「第4剥離領域<第1剥離領域<第2剥離領域<第3剥離領域」
【0023】
《第1〜第4剥離領域の位置関係》
本発明の蓋材においては、離型層は、離型剤の面積率が相対的に異なる4種の領域に区画されている。各領域を、面積率の大きい順に第1〜第4剥離領域とする。
【0024】
第1剥離領域31は、
図3において黒く塗りつぶした領域であって、摘み部2を中央に置いて蓋材中心角でほぼ180°の領域において、蓋材周縁に沿って延在している。2本の剥離開始切目3a、3bは、この第1剥離領域31に位置している。
第3剥離領域33は、
図3中に、直交する網目模様に示した領域であって、第1剥離領域31の内側に沿って湯切り孔切目4よりも径方向の外側に、第1位置(A)から第2位置(B)に渡って延在している。
【0025】
なお、前述の通り、第1位置(A)とは、複数点在する湯切り孔切目4の一端に対応する位置をいい、第2位置(B)とは、その反対側の一端に対応する位置をいう。すなわち、第3剥離領域33は、複数点在する湯切り孔切目4群に対向して配置されている。
【0026】
第2剥離領域32は、2つの領域に分かれているので、便宜上それらを32a、32bの参照数字で表す。第2剥離領域32aは、第1位置(A)から内蓋切目5まで、第1剥離領域31および蓋材周縁に沿って延在する。第2剥離領域32bは、第2位置(B)から内蓋切目5まで、第1剥離領域31および蓋材周縁に沿って延在する。
第4剥離領域34は、「第3剥離領域33」と「第2剥離領域を構成する2つの領域32a、32b」と「内蓋切目5」とで囲まれた領域(湯切り孔切目4の内側を除く)である。
【0027】
《剥離剤の面積率を4種に設定する意味》
(1)第1剥離領域31
第1剥離領域31は、離型層の中では、離型剤の面積率が一番大きい。第1剥離領域31は、剥離開始のきっかけとなる剥離開始切目3a、3bが存在する領域に位置するので、離型剤の面積率を大きくすることで、剥離し易い構成にされている。
【0028】
(2)第2剥離領域32a、32b
第2剥離領域32a、32bはそれぞれ、蓋材の周縁に沿って、第1剥離領域31の両サイドに延在している。剥離が始まる第1剥離領域では、摘み部2に作用する剥離させるための外力は、蓋材面に対してほぼ垂直に作用するが、剥離が第2剥離領域にまで進行したときには、摘み部2は蓋材面とほぼ平行方向に引っ張られており外力は一般的に剥離開始時よりも大きくなっている。このことを考慮して、剥離剤の面積率は、第2剥離領域32a、32bにおける面積率を、第1剥離領域における面積率よりも相対的に小さくしている。すなわち、第2剥離領域32a、32bにおける剥離強度は、第1剥離領域における剥離強度よりも相対的に大きくしている。これにより、良好な剥離性を維持しつつ、容器全体の強度の低下を防いでいる。
【0029】
(3)第3剥離領域33
第3剥離領域33は、第1剥離領域31と第4剥離領域34との間に位置している。
喫食前のカップ麺容器を搬送等する状況において、落下その他の衝撃が原因で瞬間的に容器内圧が高くなることがある。その場合、容器内に露出する湯切り孔切目4、内蓋切目5を通して外蓋10と内蓋20との境界に圧力が及んで、剥離開始切目3a、3b或いは内蓋切目5から意図しない剥離が生じることがある。その場合、離型剤の面積率が高く設定されることで剥離強度が低くなっている「第1剥離領域31」と、ヒートシールによる熱と圧力による作用が及ばないことで剥離強度の嵩上げがなく剥離硬度が低くなっている「第4剥離領域34」が隣接するなら、剥離開始切目3a、3bからの意図しない剥離が「第4剥離領域34」にまで伝搬したり、内蓋切目5からの意図しない剥離が「第1剥離領域31」にまで伝搬し、湯切り孔が空いてしまって、内容物(食品)が外気に接触する事故の確率が高くなる点で好ましくない。
そのため、「第1剥離領域31」に配置された離型層を構成する離型剤の面積率よりも離型剤の面積率を相対的に低くすることで、「第1剥離領域31」さらには「第4剥離領域34」よりも剥離強度を大きくした「第3剥離領域33」を間に配置することで、上記の意図しない剥離による事故が発生する可能性を低減できる。
【0030】
(4)第4剥離領域34
第4剥離領域34は、離型剤の面積率が一番小さい。第4剥離領域34は、湯切り孔切目4が形成される領域である。そして、前述のように、外蓋10と内蓋20が剥離する場合でも、円形の湯切り孔切目4の内部領域だけは、内蓋20が外蓋10から剥離せずに外蓋10とともに抜き取られる。これを確実とするために、離型剤の面積率を小さくして剥離強度を大きくしている。なお、
図2bに示したように、湯切り孔切目4の内部領域に接着層(アンカーコート層)を設けて、外蓋10と内蓋20の接合を強固にすることがさらに好ましい。
【0031】
第4剥離領域34は離型剤の面積率が第1〜4剥離領域の中で一番小さいが、これは次の理由による。
「第4剥離領域34」は、その他の「第1剥離領域31」「第2剥離領域32」「第3剥離領域33」と比較して一番大きな面積を占めており、コスト面を勘案すれば、離型剤の面積率を低くして蓋材における離型剤の全体での使用量を抑えることが望ましい。一方、商品購入者による剥離作業の労力を勘案すれば、離型剤の面積率を高くして剥離強度を低くし、小さい力で剥離作業を進行させることが望ましく、これらは、一見矛盾することになる。
しかし、蓋材Fを容器本体フランジ部にヒートシールによる熱と圧力で接着すると、それにより、当該部位における剥離領域は剥離強度が高くなる傾向がある。ここで、「第1剥離領域31」「第2剥離領域32」「第3剥離領域33」は蓋材Fの周縁近くに配置されているので、ヒートシールによる熱と圧力が作用するが故に、ヒートシール後の剥離強度はヒートシール前の剥離強度よりも高くなる。一方、「第4剥離領域34」は蓋材Fの周縁を敢えて除いた更に内側の領域に配置されているので、ヒートシールによる熱と圧力が作用せず、ヒートシール後の剥離強度はヒートシール前の剥離強度と殆ど変わらず、剥離強度が高くなることがない。そうすると、蓋材単体つまりヒートシールしない状態における剥離強度としては、「第4剥離領域34」に配置された離型層を構成する離型剤の面積率が一番低いので、本来なら剥離強度が相対的に一番大きくなってはいるが、最終製品の状態における蓋材つまりヒートシールを経た状態における剥離強度としては、他の領域だけが高くなるので、一番大きくなるとは限らず、離型剤の面積率の高低の差にもよるが、他の領域よりも剥離強度としては結果として低くなる。
したがって、「第4剥離領域34」に配置された離型層を構成する離型剤の面積率を一番低くすることにより、蓋材における離型剤の全体での使用量を抑えると同時に「第4剥離領域」の剥離強度を弱くすることで、小さい力で剥離作業を進行させることが可能になる。
【0032】
反対に、「第4剥離領域34」に配置された離型層を構成する離型剤の面積率を高くしていくと、離型剤の使用量が増えコスト面でのデメリットが大きくなるだけでなく、剥離強度が低くなり、喫食前のカップ麺容器を搬送等する状況において、落下その他の衝撃が原因で瞬間的に容器内圧が高くなり、一番大きな面積を占める「第4剥離領域34」において内蓋と外蓋の境界で剥離が生じる確率が高くなるという品質上のデメリットも大きくなってしまう。
【0033】
第3剥離領域33と湯切り孔切目4との距離は適宜設定することができるが、一例として、次のように設定することが好ましい。すなわち、複数の湯切り孔切目4のうち、第3剥離領域33に最も近接している湯切り孔切目4と第3剥離領域33との距離を、ほぼ4mmとする。
【0034】
剥離がさらに進行して第4剥離領域を超えると(すなわち、内蓋切目5を超えると)離型層は存在しなくなるので、内蓋20および外蓋10は互いに剥離することなく接着した状態で容器本体から剥がされることが確実となる。また、このことを更に確実とするために、剥離進行方向に見て第4剥離領域を超えた領域に接着層を設けることが好ましい(
図2b参照)。
【0035】
《剥離強度および面積率の数値例》
上述の通り、蓋材Fを容器本体フランジ部に接着した状態では、第4剥離領域34の剥離強度が一番小さく、他の3領域については、第1剥離領域31、第2剥離領域32、第3剥離領域33と順に剥離強度が高くなる。具体的な数値の一例を下表に示すが、これらの数値は一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
下表中、剥離強度の単位は(g/15mm巾)であるが、これは「内蓋と外蓋を所定の面積率の離型剤を介して接着状態とし、その上で、ヒートシールを想定した熱と圧力をかけたものから、15mm巾の短冊部分を切り出して蓋材の試料片」とし、「蓋材の試料片にほぼ平行な外力を作用させて内蓋と外蓋を剥離させる」場合における当該外力を意味している。
なお、第4剥離領域34はヒートシールされないので、表中の値とは異なり、実際には、4領域中、一番小さい8〜40g/15mm巾程度となる。
【0036】
上のように剥離強度に差を与える具体的な手法としては、離型層を構成する樹脂インキの印刷手法によって調整できる。例えば、離型剤の面積率が一番大きい第1剥離領域31は、ベタ版を使用したグラビア印刷により、当該領域全面にベタ印刷を施すことで形成する。
そして、第2〜第4剥離領域32〜34は、離型剤の非塗布部の部分を、
図4で説明したような円形の網点状に設定してエッチングされた印刷版を使用してグラビア印刷することで形成する。
このとき、網点の径寸法を変える、具体的には、第2〜第4剥離領域32〜34における離型剤非塗布部の網点径寸法を段階的に大きくすることにより、離型剤の面積率を段階的に小さくすることができる。
その結果、ヒートシールの影響下に置かれる第1〜第3剥離領域31〜33においては、この順に、離型剤非塗布部の網点径寸法が段階的に大きくなり、離型剤の面積率が段階的に小さくなり、剥離強度は段階的に大きくなるように、差を設けることができる。
【0037】
なお、離型層を形成するための樹脂としては、この種蓋材の分野で一般的に知られたものを使用する。例えば、硝化綿、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の単体ないしは混合物である。必要により少量のシリコーン等を添加してもよい。