(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391804
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】光学効果を有する吸水性(メタ)アクリル樹脂、及び関連する組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20180910BHJP
A61K 8/896 20060101ALI20180910BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20180910BHJP
C08F 220/20 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
C08F290/06
A61K8/896
A61Q19/00
C08F220/20
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-505841(P2017-505841)
(86)(22)【出願日】2015年7月29日
(65)【公表番号】特表2017-523981(P2017-523981A)
(43)【公表日】2017年8月24日
(86)【国際出願番号】US2015042608
(87)【国際公開番号】WO2016022348
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2017年3月8日
(31)【優先権主張番号】14/450,557
(32)【優先日】2014年8月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513161449
【氏名又は名称】イーエルシー マネージメント エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100187481
【弁理士】
【氏名又は名称】小原 淳史
(72)【発明者】
【氏名】モハマディ,フェイトメー
(72)【発明者】
【氏名】クー,リサ
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 絵美
【審査官】
藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭56−161414(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/099164(WO,A1)
【文献】
特表2009−535407(JP,A)
【文献】
特表2009−535488(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0220743(US,A1)
【文献】
国際公開第2014/033442(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 283/01
C08F 290/00 − 290/14
C08F 299/00 − 299/08
C08G 77/00 − 77/62
C08F 220/00 − 220/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)
ポリプロピレングリコールモノメタクリレートのリン酸エステル、(B)
メタクリル酸及び/又はその塩、並びに(C)以下の一般式(1):
【化1】
[式中、
R
1は、それぞれ独立に、1〜8個の炭素原子を有する脂肪族
一価炭化水素基であり、
R
2は、以下の一般式(2):
【化2】
(式中、R
4は、それぞれ独立に、2〜15個の炭素原子を有する二価有機基であり、x及びyは、それぞれ、1≦x+y≦50を満たす0〜30の整数である)
を有するポリオキシアルキレン基を含有する基であり、
R
3は、(メタ)アクリル基を有する置換基であり、aは、0を含む整数であり、bは、少なくとも1の整数である]
によって表される、両端に(メタ)アクリル基を有するオルガノポリシロキサン
から得られる吸水性ポリマー。
【請求項2】
ポリプロピレングリコールモノメタクリレートのリン酸エステル(A)が、含有量30〜95重量%で存在する、請求項1に記載の吸水性ポリマー。
【請求項3】
50〜95重量%のポリプロピレングリコールモノメタクリレートのリン酸エステル(A)、4〜50重量%のメタクリル酸モノマー及び/又は塩(B)、並びに0.01〜20重量%のオルガノポリシロキサン(C)を使用して得られる、請求項1又は2に記載の吸水性ポリマー。
【請求項4】
請求項1に記載の吸水性ポリマーを0.1〜60重量%含む化粧品組成物。
【請求項5】
請求項3に記載の吸水性ポリマーを0.1〜60重量%含む化粧品組成物。
【請求項6】
吸水性ポリマーが
、
(A)ポリプロピレングリコールモノメタクリレートのリン酸エステル
(B)メタクリル酸及び/又はその塩、及び
(C)以下の式(3):
【化3】
で表される、末端がメタクリル基であるシロキサン
の反応生成物である、請求項5に記載の化粧品組成物。
【請求項7】
化粧品がエマルションの形態である、請求項5に記載の化粧品組成物。
【請求項8】
エマルションが油中水型のエマルションである、請求項7に記載の化粧品組成物。
【請求項9】
エマルションが水中油型のエマルションである、請求項7に記載の化粧品組成物。
【請求項10】
皮膚トリートメントクリーム又はローションである、請求項5に記載の化粧品組成物。
【請求項11】
基礎メーキャップである、請求項5に記載の化粧品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性(メタ)アクリル樹脂、及び化粧品として適したこの樹脂を含む皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品及び皮膚外用薬を含めた皮膚外用剤の分野において、吸水性ポリマーは、系を安定させるための増粘剤/ゲル化剤として水性化粧品及び水性皮膚外用薬に使用されている。しかし、吸水性ポリマーには、使用時に不快なぬるぬるとした感触をもたらす欠点がある。これは、ポリマーが、使用時に破壊するのが困難な安定したゲルネットワーク構造を形成するためである。その不快な感触によって、ときには化粧品又は薬品の使用が妨げられることがあるに違いない。この問題を解決することが望ましいが、非シリコーンの吸水性ポリマーでは、不十分である。特許文献1を参照されたい。
【0003】
吸水性ポリマーを使用して水性皮膚外用剤の欠点を解決するために、特許文献2及び3は、シリコーン構造が組み込まれた吸水性ポリマー及びこれを含む化粧品組成物を提案している。これらの吸水性ポリマーには、制御が困難なエポキシ基の架橋による三次元構造及び吸水能の経時的な変化を含めた問題が、依然として存在する。
【0004】
したがって、最適な美しさをもたらす吸水性ポリマーを作製すること、及びその他の望ましい美容特性をもたらすことが望ましい。化粧製品を配合するために使用される材料が複数の機能を有し得る場合、このことは、配合物に使用する材料をより少なくすることによって、費用及び材料間の有害な相互作用の可能性を低減できることを意味する。
【0005】
詳細には、化粧品の塗布において、小じわ、しわ又は皮膚の微細な欠陥等の皮膚の欠点をぼかす薄膜を皮膚上に生成することが非常に望ましい。審美的に満足のいく増粘特性をもたらすことに加えて、同様のポリマーが、皮膚表面の外見を光学的に改善する等のその他の利益をもたらす場合、これは、さらなる利点をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−327516号公報
【特許文献2】国際公開第2007/130412号
【特許文献3】国際公開第2007/130460号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、水性溶媒中で高い増粘効果を発揮し、不十分な展着性や、湿り気のあるべたつく感触を除去し、チクソ性を有し、乾燥した軽い感触を与えるペースト状形態である、化粧品組成物を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、皮膚の欠陥の外見をぼかすこと、及び滑らかで均一に着色された皮膚の外観をもたらすこと等、皮膚上に光学効果ももたらすこのようなポリマーを含有する化粧品組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、本明細書で定義した吸水性ポリマーを使用し、皮膚外用組成物を配合して、上記の目標及びその他の目的を達成できることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例2の手順に従って本発明の組成物及び比較組成物を塗布して2分で撮影した、スライドガラスの写真を示す。
【
図2】実施例2の手順に従って本発明の組成物及び比較組成物を塗布して2時間で撮影した、スライドガラスの写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
成分(A)は、リン酸含有(メタ)アクリルモノマーである。モノマーがリン酸基及び(メタ)アクリル基を有する限り、これらの2つの基を連結するための結合の構造は、特に限定されない。例示的な結合として、メチレン、エチレン及びプロピレン等のアルキレン基、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン、オキシペンタメチレン等のオキシアルキレン基、及びこれらの混合物が挙げられる。これらのうち、ポリオキシアルキレン基が好ましく、ポリオキシプロピレンが最も好ましい。モノマーは、例えば、RhodiaからSipomer PAM-200という商品名で市販されている。
【0012】
アルカリ水溶液をリン酸含有(メタ)アクリルモノマーに添加することによって形成し得るリン酸含有(メタ)アクリルモノマーの塩も、挙げられる。
【0013】
成分(B)は、成分(A)以外の、分子内に1つの(メタ)アクリル基を有するモノマーである。適した(メタ)アクリルモノマーとして、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びアクリル酸ステアリルが挙げられる。(メタ)アクリルモノマーの塩は、アルカリ水溶液を(メタ)アクリルモノマーに添加することによって形成することができる。
【0014】
「塩」として、ナトリウム、カリウム及びリチウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム及びバリウム等のアルカリ土類金属塩、並びに第四級アンモニウム及び第四級アルキルアンモニウム等のアンモニウム塩が挙げられる。とりわけ、ナトリウム塩が、最も一般的で好ましい。中和処理は、好ましくは10〜100℃、より好ましくは20〜90℃の温度で実行される。アクリル酸又は重合後のポリアクリル酸は、塩基によって中和することができる。重合後の未中和又は低中和(具体的には中和度が30モル%未満)のポリアクリル酸を事後中和するには時間がかかるので、重合の前に中和することが好ましい。本発明の吸水性ポリマーの中和度は、ポリマー中の酸基のモル数に対して、好ましくは0.01〜100%、より好ましくは1〜90%、さらにより好ましくは20〜80%である。
【0015】
成分(C)は、以下の一般式(1)で表される、両端に(メタ)アクリル基を有するオルガノポリシロキサンである。
【0016】
【化1】
ここで、R
1は、それぞれ独立に、1〜8個の炭素原子を有する脂肪族不飽和非含有一価炭化水素基である。R
2は、一般式(2):
【0017】
【化2】
(式中、R
4は、それぞれ独立に、2〜15個の炭素原子を有する二価有機基であり、x及びyは、それぞれ、1≦x+y≦50を満たす0〜30の整数である)
を有するポリオキシアルキレン基を含有する基である。R
3は、(メタ)アクリル基を有する置換基であり、aは、0を含めた整数であり、bは、少なくとも1の整数である。
【0018】
R
1で表される一価の炭化水素基の例として、メチル、エチル及びブチル等のアルキル基、シクロペンチル及びシクロヘキシル等のシクロアルキル基、フェニル及びトリル等のアリール基、並びにベンジル及びフェネチル等のアラルキル基が挙げられる。とりわけ、1〜4個の炭素原子のアルキル基及びフェニルが好ましく、メチルが最も好ましい。
【0019】
式(2)において、R
4は、それぞれ独立に、2〜15個の炭素原子を有する二価有機基、例えば-(CH
2)
2-、-(CH
2)
3-、-(CH
2)
4-、-CH
2CH(CH
3)CH
2-、-(CH
2)
8-及び-(CH
2)
11-から選択される。とりわけ、-(CH
2)
2-、-(CH
2)
3-及び-(CH
2)
4-が好ましい。x及びyのそれぞれは、1≦x+y≦50を満たす0〜30の整数である。好ましくは、x及びyのそれぞれは、5〜25、より好ましくは10〜20の整数であり、x+yの合計は10〜45、より好ましくは20〜40である。
【0020】
吸水性ポリマーにおいて、リン酸含有(メタ)アクリルモノマー及び/又は塩(A)は、含有量30〜95重量%で存在することが好ましい。30重量%未満のモノマー(A)を含有するポリマーは、水の吸収性が低くなることがある一方、95重量%を超えるモノマー(A)を含有するポリマーは、水を吸収した後にペースト状にならないことがある。モノマー(A)の含有量は、より好ましくは40〜95重量%、さらにより好ましくは50〜80重量%である。さらに好ましくは、(メタ)アクリルモノマー及び/又は塩(B)は、含有量4〜50重量%、より好ましくは15〜50重量%で存在し、オルガノポリシロキサン(C)は、含有量0.01〜20重量%、より好ましくは2〜20重量%で存在する。
【0021】
吸水性ポリマーは、典型的にはラジカル重合反応によって調製することができる。手順は特に限定されないが、ポリマーは、例えば、モノマー(A)及び(B)を溶媒で希釈すること、任意選択で、アルカリを添加すること、及び(D)ラジカル開始剤の存在下で、モノマーをシロキサン(C)と重合させることによって調製することができる。
【0022】
吸水性ポリマーを調製するためのラジカル重合手段は、特に限定されない。バルク重合及び沈殿重合が許容できるが、逆相懸濁重合、スプレー又は滴下重合、及び水溶液重合、具体的には連続水溶液重合が、ポリマーの性能及び重合制御の容易さから好ましい。
【0023】
分散剤は、重合中に使用することができる。適した分散剤として、ソルビタン脂肪酸エステル及びカルボキシメチルジメチルセチルアンモニウム等の陽イオン及び両性の界面活性剤、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸水素のナトリウム塩等の陰イオン界面活性剤、セルロースエステル、マレインポリブタジエン等のポリマー分散剤、及びイソプロピルメタクリレート-ジメチルアミノエチルメタクリレートの第四級塩が挙げられる。これらの分散剤は、単独で又は2つ以上の混合物の状態で使用することができる。使用される分散剤の量は、好ましくはモノマー仕込み量100重量部当たり0.01〜5重量部である。逆相懸濁重合の場合、イオン性界面活性剤は、高吸水性の樹脂粒子の凝集を防ぐのにも効果的であるので、モノマーを分散するために使用されることが好ましい。
【0024】
吸水性ポリマーの合成で使用できる重合開始剤は、重合手段にしたがって選択することができる。重合開始剤の例として、光分解開始剤、熱分解開始剤及びレドックス開始剤が挙げられる。使用される重合開始剤の量は、モノマー仕込み量に基づいて、典型的には0.001〜10モル%、好ましくは0.001〜5モル%である。範囲外で、過剰の開始剤は、着色又は不快な臭いを生じさせ得る一方、量が少ないと、残留モノマーの量の増加につながり得る。
【0025】
光分解重合開始剤の例として、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体及びアゾ化合物が挙げられる。熱分解重合開始剤の例として、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、過酸化t-ブチル及びメチルエチルケトンペルオキシド等の過酸化物、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩及び2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)二塩酸塩等のアゾ化合物、過塩素酸カリウム及び過塩素酸ナトリウム等の過塩素酸塩が挙げられる。レドックス重合開始剤の例として、上記の過硫酸塩又は過酸化物の、亜硫酸塩、L-アスコルビン酸又は第一鉄塩等の還元剤との組合せが挙げられる。光分解開始剤及び熱分解開始剤を組み合わせて使用することも可能である。とりわけ、本発明の目的を達成するためには、過酸化物が好ましい。
【0026】
重合開始剤は、溶液の形態で、すべてを一度に又は滴下して添加することができる。開始剤は、部分に分割して、反応の間に添加してもよい。
【0027】
重合によって、水和ゲル形態の吸水性ポリマーがもたらされ、ここから、必要な後処理、例えばすべての残留モノマー及び開始剤を除去するための洗浄、及び乾燥を介して、所望の吸水性樹脂を回収することができる。洗浄ステップのために、水、アセトン、アルコール、イソパラフィン又は揮発性シリコーン等の任意の溶媒を使用することができるが、この溶媒は、特に限定されない。洗浄を実行するための溶媒は、単独でもしくは組み合わせて、又は段階的に使用することができる。
【0028】
乾燥ステップは、それが慣例的であれば、特に限定されない。好ましい乾燥の手段として、熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥、IR乾燥、マイクロ波乾燥、凍結乾燥法、噴霧乾燥、疎水性有機溶媒を使用した共沸乾燥、及び熱蒸気を使用した高湿度乾燥が挙げられる。熱風乾燥が、より好ましい。乾燥温度及び時間は特に限定されないが、150℃を超える高温での乾燥又は5時間を超える長時間の乾燥は、樹脂の交代、吸水係数の低下及び着色のような問題が生じる恐れがある。
【0029】
必要であれば、乾燥ステップに続いて、粒径の調整又は表面架橋を介した粒径分布の狭化を行うことができる。粒径は、重合、粉砕、分類、造粒又は細粒の回収を介して調整することができる。
【0030】
表面架橋のために、表面架橋剤が使用される。様々な有機及び無機の表面架橋剤が知られており、有機架橋剤が好ましい。適した架橋剤は、多価アルコール、エポキシ化合物、多官能アミン化合物又はハロ-エポキシ化合物、オキサゾリン化合物及び(モノ、ジ又はポリ)オキサゾリジノン化合物とのそれらの濃縮物を含めた脱水エステル化架橋剤である。
【0031】
シリコーン架橋吸水性ポリマーは、球状、塊、薄片、板状、楕円、繊維状、不整形、団結粒子の圧縮粉及びその他の形状を含めた任意の形状をとることができる。
【0032】
シリコーン架橋吸水性ポリマーの平均粒径は、吸水前の状態で、好ましくは100nm〜1mm、より好ましくは500nm〜500μmである(即ち、150℃/3時間の加熱で最大5%の喪失)が、この平均粒径は必須ではない。
【0033】
シリコーン架橋吸水性ポリマーは、水溶媒をゲルに変換する機能を有する。用語「ゲル」は、吸水性ポリマーが低粘度の液体を吸収するので、その液体が、流動性を全く又は実質的に示さなくなり得ることを意味する。水溶媒は、水単独、又は水及び有機溶媒の混合物とすることができる。水と混合される有機溶媒は、特に限定されない。とりわけ、両親媒性溶媒、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール及び2-プロパノール等のアルコール、アセトン等のケトン、並びにテトラヒドロフラン及びジオキサン等のエーテルが好ましい。
【0034】
本発明の別の実施形態は、(調製物の総重量に基づいて)0.01〜60重量%、好ましくは約0.1〜20重量%、より好ましくは約0.1〜10重量%の、上で定義した吸水性ポリマーを含む化粧品又は皮膚外用剤である。
【0035】
本明細書で使用する、「皮膚外用剤」は、皮膚に外部から塗布される任意の調製物、例えば化粧品、皮膚外用薬、皮膚外用消毒剤及び殺菌剤を指す。用語「化粧品組成物」は、トリートメント、美化、又は彩色する目的のために、ケラチンの表面に塗布される組成物を意味する。本発明が、使用時の感触が効果に大きな影響をもたらす化粧品、及び長期間の継続的な塗布を必要とする皮膚外用薬、具体的には化粧品に適用される場合に、より良好な結果が得られる。
【0036】
調製物又は組成物は、ローション、ゲル、エマルション、クリーム、粉末分散、粉末分散エマルション等の形態を取ることができる。組成物がエマルションの形態である場合、エマルションは、油中水型又は水中油型とすることができる。このような場合、組成物は、約2〜99%の水及び約1〜98%の油を含むことができる。
【0037】
様々なタイプの化粧品組成物、例えば、スキンケア製品、基礎メーキャップ化粧品及びヘアケア化粧品が挙げられる。
【実施例】
【0038】
吸水性ポリマーの合成、及びそれらを使用した化粧品組成物を例示するための実施例を以下に示すが、本発明は、これらに限定されない。
【0039】
合成例1
撹拌器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、メタクリル酸24g、Sipomer PMA-200(Rhodia)60g及び脱イオン水100gを装入した。撹拌しながら、25%の水酸化ナトリウム水溶液52gを20〜30℃で滴下した。溶液に、以下の式(3)を有するメタクリル酸末端シロキサン12gを添加した。撹拌しながら、窒素バブリングを30分間続け、そこで4%のペルオキソ二硫酸カリウム水溶液100gを25℃で添加した。その後、フラスコを60℃で加熱し、10時間反応させた。得られたゲルを、過剰のアセトン/水の混合物で洗浄し、濾過し、真空乾燥機中で10時間乾燥させ、ミルで粉砕して、白色の粉末粒子形態の所望の吸水性ポリマーを得た。
【0040】
【化3】
【0041】
合成例2
撹拌器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、メタクリル酸24g、Sipomer PMA-200(Rohdia)60g及び脱イオン水110gを装入した。撹拌しながら、25%の水酸化ナトリウム水溶液52gを20〜30℃で滴下した。溶液に、以下の式(3)を有するメタクリル酸末端シロキサン6gを添加した。撹拌しながら、窒素バブリングを30分間続け、そこで4%のペルオキソ二硫酸カリウム水溶液50g及び4%の亜硫酸水素ナトリウム水溶液25gを、25℃で添加した。その後、フラスコを50℃で加熱し、5時間反応させた。得られたゲルを、過剰のアセトン/水の混合物で3回洗浄し、濾過し、真空乾燥機中で10時間乾燥させ、ミルで粉砕して、白色の粉末粒子形態の所望の吸水性ポリマーを得た。
【0042】
実施例:化粧品組成物
実施例1のポリマーを含有する化粧品組成物を、以下に記載したとおりに、比較配合物と一緒に調製した。
【0043】
【表1】
【0044】
最初に使用されるポリマーの量を、発明配合物及び比較配合物の最終粘度が、対比評価を容易にするために本質的に同じになるように、例えば、25℃で24,000〜36,000cpsの範囲になるように、調整した。
【0045】
皮膚等の表面の外見を光学的に向上させる能力に対して、組成物をテストした。各組成物6milを、スクエアアプリケーターを使用して顕微鏡のスライドガラスに塗布した。スライドを、25℃の空気調和室内で乾燥させた。スライドを、Canon PowerShot SD1400 ISカメラで撮影したが、この画像は、スライドを黒い背景上に配置して撮影され、45°の角度で撮影された写真である。写真を、2分、2時間及び24時間で撮影した。結果を
図1及び
図2に示す。本発明の組成物が塗布されたスライドは、目視検証した場合に、下にあるスライドガラスをぼかすように見える、均一な光保護をもたらす均質な薄膜を示す。このことは、皮膚への塗布によって、目視で確認される。