【実施例1】
【0024】
以下、
図1〜
図10を用いて、本発明の装置構成及び配置、主要部品構造、取り付け方法を説明する。
【0025】
図1に、本発明を適用したキャピラリ電気泳動装置の装置構成図を示す。本装置は、装置下部にあるオートサンプラーユニット150と、装置上部にある照射検出/恒温槽ユニット160の、二つのユニットに大きく分けることが出来る。
【0026】
オートサンプラーユニット150には、サンプラーベース80の上にY軸駆動体85が搭載され、Y軸に駆動を行うことが出来る。Y軸駆動体85にはZ軸駆動体90が搭載され、Z軸に駆動を行うことが出来る。Z軸駆動体90の上にはサンプルトレイ100が搭載され、サンプルトレイ100の上に、泳動媒体容器20、陽極側緩衝液容器30、陰極側緩衝液容器40、サンプル容器50をユーザがセットする。サンプル容器50は、サンプルトレイ100上に搭載されたX軸駆動体95の上にセットされ、サンプルトレイ100上でサンプル容器50のみがX軸に駆動することが出来る。Z軸駆動体90には送液機構60も搭載される。この送液機構60は泳動媒体容器20の下方に配置される。
【0027】
照射検出/恒温槽ユニット160には、恒温槽ユニット110、恒温槽ドア120があり、中を一定の温度に保つことが出来る。恒温槽ユニット110の後方には照射検出ユニット130が搭載され、電気泳動時の検出を行うことが出来る。恒温槽ユニット110の中に、キャピラリアレイ10をユーザがセットし、恒温槽ユニット110にてキャピラリアレイ10を恒温に保ちながら電気泳動を行い、照射検出ユニット130にて検出を行う。また、恒温槽ユニット110には、電気泳動のための高電圧印加時にGNDに落とすための電極115も搭載されてある。
【0028】
上記のように、キャピラリアレイ10は恒温槽ユニット110に固定される。泳動媒体容器20、陽極側緩衝液容器30、陰極側緩衝液容器40、サンプル容器50は、オートサンプラーユニット150にてYZ軸に駆動することができ、サンプル容器50のみ、さらにX軸に駆動することが出来る。固定されたキャピラリアレイ10に、泳動媒体容器20、陽極側緩衝液容器30、陰極側緩衝液容器40、サンプル容器50が、オートサンプラーユニット150の動きで任意の位置に自動で接続することが出来る。
【0029】
図2に、キャピラリ電気泳動装置を上面から見た図を示す。サンプルトレイ100上にセットされた陽極側緩衝液容器30には、陽極側洗浄
槽31、陽極側電気泳動用緩衝液
槽32、サンプル導入用緩衝液
槽33がある。また、陰極側緩衝液容器40には、廃液
槽41、陰極側洗浄
槽42、陰極側電気泳動用緩衝液
槽43がある。
【0030】
泳動媒体容器20、陽極側緩衝液容器30、陰極側緩衝液容器40、サンプル容器50は図示のような位置関係に配置される。これにより、キャピラリアレイ10との接続の際の陽極側-陰極側の位置関係は、「泳動媒体容器20−廃液
槽41」、「陽極側洗浄
槽31−陰極側洗浄
槽42」、「陽極側電気泳動用緩衝液
槽32−陰極側電気泳動用緩衝液
槽43」、「サンプル導入用緩衝液
槽33−サンプル容器50」となる。
【0031】
図3に、
図2におけるA−A断面図を示す。泳動媒体容器20はサンプルトレイ100に埋め込まれたガイド101の中に挿入してセットされる。また、送液機構60は、送液機構60に内蔵されたプランジャ61が、泳動媒体容器20の下方になるように配置される。
【0032】
電気泳動の際、キャピラリアレイ10の
図3における右側が陰極側となり、左側が陽極側となる。オートサンプラーユニット150が「陽極側電気泳動用緩衝液
槽32-陰極側電気泳動用緩衝液
槽43」の位置に移動し、陰極側のキャピラリアレイ10に高電圧がかかり、陰極側緩衝液容器40、陽極側緩衝液容器30を介し、電極115にてGNDに流すことで電気泳動を行う。
【0033】
図4に、送液機構60の詳細図を示す。送液機構ベース70に、ロータリーエンコーダー63付きのステッピングモーター62が搭載され、ステッピングモーター62に駆動プーリ67が取り付く。例えば、ステッピングモーター62は2相ステッピングモーターとし、ロータリーエンコーダー63は、1回転あたり400カウント出来るものとする。駆動プーリ67と受動プーリ68間をベルト69で繋ぎ、受動プーリ68とボールネジ65が固定される。送液機構ベース70にはリニアガイド66がボールネジ65と平行に取り付けられ、スライダー71にてリニアガイド66とボールネジ65が固定される。スライダー71には検知板72が取り付けられ、原点センサ64を検知板72で遮光することで原点検知を行う。また、スライダー71には駆動軸と同一軸方向を向いたプランジャ61が付いている。これにより、ステッピングモーター62を回転させることでプランジャ61を駆動させることが可能となる。
【0034】
図5に、キャピラリアレイ10の詳細図を示す。キャピラリアレイ10は、内径約φ50μm程度のガラス管であるキャピラリ11があり、キャピラリ11に検出部12が付いている。この検出部12を照射検出ユニット130にて検出する。キャピラリ11の陰極側端部には、ロードヘッタ16、SUSパイプ17が付いている。ロードヘッタ16の材質は、例えば絶縁特性が高く、比較トラッキング指数の高い樹脂であるPBT樹脂等が望ましい。ロードヘッタ16内部に、SUSパイプ17全ての導通を取る部品が内蔵されており、そこに高電圧をかけることで全てのSUSパイプ17に高電圧がかかる。このSUSパイプ17にキャピラリ11をそれぞれ通して固定する。陽極側は、複数本のキャピラリ11をキャピラリヘッド13にて一本に纏める。キャピラリヘッド13は、鋭角にして針状になったキャピラリヘッド先端15、キャピラリヘッド先端15より外径が太い部分であるキャピラリヘッドボス14を有する。キャピラリヘッド13の材質は、欠けにくく剛性もあり、薬品や分析に対して安定性の高い樹脂であるPEEK樹脂等が望ましい。
【0035】
図は省略するが、キャピラリアレイ10を恒温槽ユニット110に固定の際、検出部12、ロードヘッタ16、キャピラリヘッド13をそれぞれ固定する。検出部12は照射検出ユニットで検出できる位置になるように、高精度で位置決めを行う。ロードヘッタ16は、固定の際に高電圧を印加する箇所と導通が取れるように固定する。キャピラリヘッド13は、キャピラリヘッド先端15が真下を向き、荷重に耐えられるよう強固に固定する。固定の際の陰極側、陽極側の位置関係は、装置にセットした時に複数本のキャピラリ11同士が重ならないような配置とする。
【0036】
図6に、陽極側緩衝液容器30の詳細図を示す。前記した通り、陽極側緩衝液容器30には陽極側洗浄
槽31、陽極側電気泳動用緩衝液
槽32、サンプル導入用緩衝液
槽33がある。一つの容器となっており、仕切り56にて仕切られている。陽極側緩衝液容器30の材質は、中の緩衝液が目視できるような透明の樹脂であるPC樹脂等が望ましい。陽極側洗浄
槽31、陽極側電気泳動用緩衝液
槽32、サンプル導入用緩衝液
槽33の断面を、B−B断面図、C−C断面図、D−D断面図に示す。各断面図に示すように、陽極側緩衝液容器30の上面はフィルム55で封止されている。フィルム55の材質は、PC樹脂と溶着可能であり、水蒸気透過を抑えることのできるものが望ましい。また、後
述する洗浄動作において、穴を拡張させる動作がある。この穴の拡張動作を考慮すると、フィルム55は伸びにくい材質である必要があるため、アルミの層が含まれていることが望ましい。中にはそれぞれ、陽極側洗浄液35、陽極側電気泳動用緩衝液36、サンプル導入用緩衝液37が封入されている。それぞれの液体は、10RUN分の分析が出来る容量が封入される。仕切り56上部もフィルム55で封止されているため、試薬間が混ざることは無い。また、陽極側電気泳動用緩衝液
槽32、サンプル導入用緩衝液
槽33に対し、陽極側洗浄
槽31は容器底が深くなっている。図は省略するが、装置へ陽極側緩衝液容器30
をセットする際は、フィルム55を剥がしたりせず、そのまま装置にセットし、浮き上がらないようにロックをかける。
【0037】
図7に、陰極側緩衝液容器40の詳細図を示す。前記した通り、陰極側緩衝液容器40には廃液
槽41、陰極側洗浄
槽42、陰極側電気泳動用緩衝液
槽43がある。一つの容器となっており、仕切り56にて仕切られている。陰極側緩衝液容器40
の材質は、陽極側緩衝液容器30の材質と同様に、中の緩衝液が目視できるような透明の樹脂であるPC樹脂等が望ましい。廃液
槽41、陰極側洗浄
槽42、陰極側電気泳動用緩衝液
槽43の断面を、E−E断面図、F−F断面図、G−G断面図に示す。各断面図に示すように、陰極側緩衝液容器40の上面は陽極側緩衝液容器30と同様にフィルム55で封止されている。どの
槽も形状は同じで、中にはそれぞれ廃液受け液45、陰極側洗浄液46、陰極側電気泳動用緩衝液47が封入されている。それぞれの液体は、10RUN分の分析が出来る容量が封入される。陽極側緩衝液容器30と同様に、仕切り56上部もフィルム55で封止されているため、試薬が混ざることは無い。図は省略するが、装置へ陰極側緩衝液容器40
をセットする際は、フィルム55を剥がしたりせず、そのまま装置にセットし、浮き上がらないようにロックをかける。
【0038】
図8に、サンプル容器50の詳細図を示す。H−H断面図は、サンプル容器50の断面図となり、中にサンプル51が封入される。サンプル51はユーザが準備するため、サンプル容器50は前処理工程等でも扱いやすい容器が好ましい。本装置では、サンプル容器50は、例えばエッペンドルフ社の八連チューブである。図は省略するが、装置にサンプル容器50をセットする際は、そのまま装置にセットする。
【0039】
図9に、泳導媒体容器20の詳細図を示す。泳動媒体容器20は、シリンジ21の中に凹形状のシール22が内蔵され、上からゴム栓23を乗せてからキャップ24で封止する。キャップ24の上にはさらにフィルム55にて封止されている。シリンジ21の材質は、薄肉成型が可能な樹脂であるPP樹脂等が望ましい。シール22の材質は、摺動部の流体のシール等で良く使われる、摺動特性に優れる超高分子PE樹脂等が望ましい。ゴム栓23の材質は、分析に対して安定しているシリコンゴム等が望ましい。キャップ24の材質は、各容器のフィルム55と統一するため、PC樹脂等が望ましい。中には泳動媒体26が封入され、封入の際に入ってしまう空気27は上部に溜まるように封入する。泳動媒体26は10RUN分の分析が出来る容量が封入される。シール22は、外部から荷重をかけることでシリンジ21の内部を可動できるようになっている。
【0040】
図10に、泳動媒体容器20取付け詳細図を示す。泳動媒体容器20を装置にセットする際は、まずキャップ24に付いているフィルム55を剥がす。その後、サンプルトレイ100に埋め込まれているガイド101に挿入し、浮き上がらないように上から固定する。この時、シリンジ21の外径とガイド101の内径の隙間が限りなく小さくなるようにする。隙間は小さければ小さいほど良いが、樹脂成型品のシリンジ21の外径と、機械加工品であるガイド101の内径の、加工上無理の無い隙間とする。具体的には、0.1mm程度となる。
【0041】
以下、
図11〜
図13を用いて、本発明におけるキャピラリアレイ10と泳動媒体容器20、陽極側緩衝液容器30、陰極側緩衝液容器40との接続方法を説明する。
【0042】
図11に、キャピラリアレイ10と陰極側緩衝液容器40の接続状態を示す。固定されたキャピラリアレイ10に、サンプルトレイ100にセットされた陰極側緩衝液容器40が、オートサンプラーユニット150のZ軸駆動にて接続される。接続の際、図示の位置にて、フィルム55をSUSパイプ17にて貫通させて接続させる。この接続方法は、廃液
槽41、陰極側洗浄
槽42、陰極側電気泳動用緩衝液
槽43の全て同一となる。
【0043】
図12に、キャピラリアレイ10と陽極側緩衝液容器30の接続状態を示す。固定されたキャピラリアレイ10に、サンプルトレイ100にセットされた陽極側緩衝液容器30が、オートサンプラーユニット150のZ軸駆動にて接続される。接続の際、図示の位置にて、フィルム55をキャピラリヘッド13及び電極115にて貫通させて接続させる。この接続方法は、陽極側洗浄
槽31、陽極側電気泳動用緩衝液
槽32、サンプル導入用緩衝液
槽33の全て同一だが、陽極側洗浄
槽31のみ挿入深さを変える。
【0044】
陽極側緩衝液容器30及び陰極側緩衝液容器40との接続の際、フィルム55を貫通させずに剥がしてから接続させてもよい。そうすると、SUSパイプ17やキャピラリヘッド13に対しての負荷は無くなるが、陰極側緩衝液容器40をサンプルトレイ100にセットする際、緩衝液や洗浄液をこぼしてしまう可能性があり、さらに分析の途中で緩衝液や洗浄液が蒸発してしまう。そこで、容器上面をフィルム55ではなく、切込み付きのゴムセプタとしてもよい。そうすることにより、緩衝液や洗浄液をこぼすことなく、蒸発も防ぎつつ、SUSパイプ17やキャピラリヘッド13への負荷を減らすことが出来る。
【0045】
図13に、キャピラリアレイ10と泳動媒体容器20の接続状態を示す。固定されたキャピラリアレイ10に、サンプルトレイ100にセットされた泳動媒体容器20が、オートサンプラーユニット150のZ軸駆動にて接続される。接続の際、ゴム栓23をキャピラリヘッド13にて貫通させて接続させる。キャピラリヘッド先端15が針状になっているため、ゴム栓23への貫通も可能となる。この時、電極115は泳動媒体容器20に接触しない位置関係にしておく。キャピラリヘッド13は、外径が太くなっているキャピラリヘッドボス14を有しており、キャピラリヘッドボス14にてゴム栓23の上面を上から押さえつけながら接続する。また、泳動媒体容器20内の上部には空気27も入っているが、キャピラリヘッド先端15は挿入後に空気27よりも下方に位置するように配置することとする。
【0046】
今回、泳動媒体容器20のフィルム55を剥がしてセットしているが、フィルム55を剥がさずにセットし、キャピラリヘッド13でフィルム55を貫通させてもよい。こうすることにより、キャピラリヘッド13への負荷は増えるが、フィルム55の剥がし忘れの防止も可能となり、ユーザの作業性が向上する。
【0047】
以下、
図14を用いて本実施例における分析のワークフローを説明する。
【0048】
ステップ200にて、ユーザはキャピラリアレイ10を恒温槽ユニット110にセットする。また、泳動媒体容器20、陽極側緩衝液容器30及び陰極側緩衝液容器40、サンプル容器50をサンプルトレイ100にセットする。図は省略するが、消耗品であるキャピラリアレイ10、泳動媒体容器20、陽極側緩衝液容器30、陰極側緩衝液容器40、サンプル容器50にはバーコードが貼り付けられてある。ユーザは装置に各消耗品をセットする際、装置に搭載しているバーコードリーダーにて各消耗品のバーコード情報を読み込む。これにより、各消耗品の製番や使用期限、使用回数等を管理することが出来る。
【0049】
ステップ201にて、恒温槽ユニット110により、セットされたキャピラリアレイ10を一定温度に保つ。
【0050】
ステップ202にて、オートサンプラーユニット150のY軸駆動、Z軸駆動の動きで、キャピラリアレイ10のキャピラリヘッド13、SUSパイプ17をそれぞれ陽極側洗浄
槽31、陰極側洗浄
槽42に挿入する。これにより、キャピラリヘッド13とSUSパイプ17の洗浄を行う。キャピラリヘッド13側の洗浄動作の詳細は、後ほど
図15〜
図17を用いて説明する。
【0051】
ステップ203にて、オートサンプラーユニット150のY軸駆動、Z軸駆動の動きで、キャピラリアレイ10のキャピラリヘッド13、SUSパイプ17をそれぞれ泳動媒体容器20、廃液
槽41に挿入する。この状態にて、送液機構60を駆動させ、泳動媒体容器20に封入された泳動媒体26をキャピラリ11に送液する。送液動作の詳細は、後ほど
図18〜
図24を用いて説明する。
【0052】
ステップ202にて、再度オートサンプラーユニット150のY軸駆動、Z軸駆動の動きで、キャピラリアレイ10のキャピラリヘッド13、SUSパイプ17をそれぞれ陽極側洗浄
槽31、陰極側洗浄
槽42に挿入する。これにより、キャピラリヘッド13とSUSパイプ17の洗浄を行う。
【0053】
ステップ204にて、オートサンプラーユニット150のY軸駆動、Z軸駆動の動きで、キャピラリアレイ10のキャピラリヘッド13、SUSパイプ17をそれぞれサンプル導入用緩衝液
槽33、サンプル容器50に挿入する。このとき、電極115もサンプル導入用緩衝液
槽33に挿入される。これにより、キャピラリ11の両端が導通される。この状態にて高電圧を印加させ、サンプル51をキャピラリ11に導入する。
【0054】
ステップ202にて、再度オートサンプラーユニット150のY軸駆動、Z軸駆動の動きで、キャピラリアレイ10のキャピラリヘッド13、SUSパイプ17をそれぞれ陽極側洗浄
槽31、陰極側洗浄
槽42に挿入する。これにより、キャピラリヘッド13とSUSパイプ17の洗浄を行う。
【0055】
ステップ205にて、再度オートサンプラーユニット150のY軸駆動、Z軸駆動の動きで、キャピラリアレイ10のキャピラリヘッド13、SUSパイプ17をそれぞれ陽極側電気泳動用緩衝液
槽32、陰極側電気泳動用緩衝液
槽43に挿入する。このとき、電極115もサンプル導入用緩衝液
槽33に挿入される。これにより、キャピラリ11の両端が導通される。この状態にて高電圧を印加させ、電気泳動を行う。泳動してきたサンプル51を、照射検出ユニット130にて検出を行う。
【0056】
ステップ202にて、再度オートサンプラーユニット150のY軸駆動、Z軸駆動の動きで、キャピラリアレイ10のキャピラリヘッド13、SUSパイプ17をそれぞれ陽極側洗浄
槽31、陰極側洗浄
槽42に挿入する。これにより、キャピラリヘッド13とSUSパイプ17の洗浄を行う。
【0057】
この一連の動きにて検出したデータを解析することで、一つの分析が終了となる。連続して分析を行う場合は、サンプルトレイ100上のX駆動体95を駆動させ、サンプル容器50の位置を切り替えて上記の動作を繰り返す。
【0058】
以下、
図15〜
図17を用いて、キャピラリヘッド13の洗浄動作の詳細を説明する。キャピラリヘッド13は、分析の中で泳動媒体26との接液を伴う。連続して分析を行った場合、接液の際、泳動媒体26の中に緩衝液が入ってしまう。緩衝液が混ざった泳動媒体26をそのままキャピラリ11に送液すると、分析性能が悪化してしまう。また、泳動媒体26は乾燥すると結晶化する性質がある。もし結晶化したままとなると、送液の際にキャピラリ11が詰まり、泳導媒体26を送液できなくなる恐れがある。さらに、キャピラリヘッド13と泳動媒体容器20との接続部に結晶化した泳動媒体26が挟まり、送液時に泳動媒体26がリークしてしまう恐れがある。そのため、キャピラリヘッド13の洗浄は非常に重要である。
【0059】
図15に、分析ワークフローにおける初期洗浄の詳細を示す。キャピラリヘッド13及び電極115に、陽極側緩衝液容器30の陽極側洗浄
槽31を挿入する。その際、図示のように、キャピラリヘッドボス14部分にてフィルム55に穴を空けるまで挿入する。その後、陽極側洗浄
槽31を引き抜く。キャピラリヘッドボス14の外径はキャピラリヘッド先端15の外径よりも太くなっており、フィルム55にはキャピラリヘッド先端15よりも太い拡張穴150
が空いた状態となる。
【0060】
図16に、分析ワークフローにおける緩衝液との接液状態の詳細を示す。キャピラリヘッド13及び電極115に、陽極側緩衝液容器30のサンプル導入用緩衝液
槽33もしくは陽極側電気泳動用緩衝液
槽32を挿入する。その際、図示のように、陽極側洗浄液
槽31へ挿入したときと比べて、挿入深さを浅くする。これにより、フィルム55には貫通穴151が開くが、キャピラリヘッド13に付着する緩衝液は、緩衝液付着範囲155の範囲となる。図を省略するが、泳動媒体容器20と接続した際、キャピラリヘッド13に付着する泳導媒体26の範囲も、同等になるように接続する。
【0061】
図17に、分析ワークフローにおける洗浄の詳細を示す。キャピラリヘッド13及び電極115に、一度初期洗浄を行った後の、陽極側緩衝液容器30の陽極側洗浄
槽31を挿入する。図示のように、陽極側洗浄
槽31のフィルム55には、拡張穴150が空いた状態となっている。拡張穴150は、キャピラリヘッド先端15の外径よりも太いため、キャピラリヘッド先端15はフィルム55に触れることは無い。そのため、キャピラリヘッド先端15に付着した緩衝液付着範囲155の部分は、フィルム55に触れることなく、陽極側洗浄液35にて洗浄を行うことが出来る。また、挿入深さも深いため、洗浄範囲156まで洗浄が可能となり、キャピラリヘッド13に付着した緩衝液付着範囲155の部分を全て洗浄することが出来る。
【0062】
本一連の動作により洗浄を行うが、各溶液キャピラリヘッド13を引き抜くときの速度を極端に遅くする。これにより、キャピラリヘッド13に付着するそもそもの溶液の量が減り、溶液の持ち込み量自体が減ることになる。
【0063】
洗浄効率を上げたい場合、陽極側洗浄
槽31を二箇所設けてもよい。また、上面をフィルム55ではなく切り込みつきのゴムセプタで封止し、キャピラリヘッド13に付着した溶液を拭う方式でも良い。もし連続して行う分析回数が少ない場合、泳動媒体26に混入する緩衝液の量が減る。その場合は、洗浄動作自体が不要となる。
【0064】
以下、
図18〜
図24を用いて、泳導媒体26の送液動作の詳細を説明する。
【0065】
図18に、泳動媒体26注入動作一連の動きである、初期状態の図を示す。前記した通り、泳動媒体容器20は、サンプルトレイ100に埋め込まれたガイド101内に挿入してセットされる。このとき、泳動媒体容器20の真下には、送液機構60のプランジャ61が配置され、プランジャ61の動きにて泳動媒体容器20内のシール22が可動できるようになっている。
【0066】
図19に、泳動媒体26注入動作一連の動きである、プランジャ61接触検知の状態の図を示す。まず、
図18のように、送液機構60のプランジャ61を、泳動媒体容器20内のシール22に接触させ、その位置を検知する。送液機構60のステッピングモーター62を微弱な駆動電流で駆動させ、シール22に接触した時点でステッピングモーター62を脱調させる。シール22への荷重は少なくしたいため、この時のプランジャ61の推力が10N程度となるように、ステッピングモーター62の駆動電流を調整する。この時のステッピングモーター62の脱調を、ロータリーエンコーダー63にて検知することで、プランジャ61接触検知を行う。このプランジャ61接触位置検知を行うことにより、泳動媒体容器20内の泳動媒体26の量を正確に把握し、送液量の管理やリーク検知に用いることが出来る。プランジャ61接触検知後、プランジャ61は駆動時の電流よりも大きな電流で励磁させ、シール22と接触した位置で保持させておく。励磁の際の電流値は、泳動媒体21を送液する際に発生させる圧力と同じだけの推力を保持できるだけの電流値とすることが望ましい。
【0067】
図20に、泳動媒体26注入動作一連の動きである、キャピラリヘッド13接続の状態の図を示す。オートサンプラーユニット150のZ軸駆動体90の動きにて、キャピラリヘッド13と泳動媒体容器20が接続される。前記した通り、鋭利なキャピラリヘッド先端15にて、泳動媒体容器20内のゴム栓23を貫通させて接続する。送液機構60のプランジャ61は、オートサンプラーユニット150のZ駆動体90に搭載されているため、プランジャ61はシール22に接触した状態のまま接続される。また、前記した通り、キャピラリヘッドボス14にてゴム栓23を上から押さえつけながら接続する。このとき、キャピラリヘッド13はゴム栓23により、密閉されたまま泳動媒体容器20内に挿入される。これにより、泳動媒体容器20内にて体積変化が起き、泳動媒体容器20内の圧力が上昇するが、シール22をプランジャ61で抑えているため、シール22が稼動してしまうことは無い。
【0068】
図21に、泳動媒体26注入動作一連の動きである、泳動媒体26注入状態の図を示す。キャピラリヘッド13の接続後、送液機構60にてプランジャ61を駆動させることで、シール22を稼動させ、泳動媒体容器20内の体積を変化させて送液する。このとき、泳動媒体容器20内が高圧になり、泳動媒体容器20の各部品が膨張する。今回泳動媒体容器20は剛性が低いため、膨張量は大きく、不安定となる。そのため、泳動媒体容器20の膨張により、泳動媒体26の密閉性に対して大きな影響が出てくる。
【0069】
そこで、ガイド101にてシリンジ21の膨張を押さえ込む。また、キャピラリヘッド13にてゴム栓23の膨張を押さえ込む。さらに、シール22の形状が凹形状となっているため、シール22が内圧で膨張したとき、より密閉される形状となっている。シリンジ21よりもシール22の方が膨張しやすい形状や強度にしておくことで、シリンジ21の膨張による影響も軽減することが出来る。具体的には、シリンジ21の肉厚を1mm、シール22の肉厚を0.6mm程度とし、膨張係数に差を設ける。
【0070】
これより、膨張による密閉性への影響を軽減させる。しかし、いくら膨張量を減らしても、膨張量を無くすことは出来ない。膨張量がばらつくことで、送液量管理に影響が出てくる。
【0071】
そこで、まず送液に必要な圧力となるような駆動電流でステッピングモーター62を駆動させ、プランジャ61を駆動させる。今回送液に必要な圧力は3MPaとし、その圧力を発生させるため、プランジャ61の推力が75Nとなるよう、ステッピングモーター62の駆動電流を調整する。これにより泳動媒体容器20内が膨張するが、内圧が必要な圧力分高まった時点でステッピングモーター62が脱調する。このとき、泳動媒体容器20は膨張しきったことになるので、この脱
調をロータリーエンコーダー63で検知する。脱調を検知してからも、ステッピングモーター62は脱調をしながら駆動し続ける。泳動媒体26は徐々にキャピラリ11内を送液されていくため、徐々にプランジャ61が駆動していく。そして、泳動媒体容器20が膨張しきったことを検知した後に、プランジャ61が駆動した量をロータリーエンコーダー63で検知し、必要な泳動媒体26分の量をキャピラリ11に送液する。このような送液方法とすることで、泳動媒体容器20の膨張による影響を受けずに送液量を管理することが出来る。
【0072】
図22及び
図23に、泳動媒体26注入動作一連の動きである、泳動媒体容器20内残圧除去動作の詳細の図を示す。送液完了後、
図21のように送液機構60のプランジャ61を降下させ、シール22との接触を解除する。送液完了後は、まだ泳動媒体容器20の内部は圧力が高まったままである。しかし、この動作により、
図22のように、シール22が泳動媒体容器20内部の圧力により押し戻され、泳動媒体容器20内の残圧が除去される。
【0073】
図24に、泳動媒体26注入動作一連の動きである、キャピラリヘッド13接続解除動作の詳細の図を示す。オートサンプラーユニット150のZ軸駆動体90の動きにて、キャピラリヘッド13と泳動媒体容器20の接続が解除される。このとき、前の動作で泳動媒体容器20内の残圧が除去されているため、キャピラリヘッド13と泳動媒体容器20の接続解除の際に泳動媒体26が飛び散る心配はない。以上の動作で、泳動媒体26をキャピラリ11に送液する。
【0074】
本構造、送液動作とすることで、泳動媒体容器20の膨張を抑えつつ、且つ膨張による影響を小さくして送液量の管理をすることが可能となる。また、これらを、安価な送液機能を備えた泳動媒体容器にて実現することが出来る。これにより、ランニングコストの低減、ユーザ作業性の向上の両立が可能となる。