特許第6392035号(P6392035)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京エレクトロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6392035-基板液処理装置 図000002
  • 特許6392035-基板液処理装置 図000003
  • 特許6392035-基板液処理装置 図000004
  • 特許6392035-基板液処理装置 図000005
  • 特許6392035-基板液処理装置 図000006
  • 特許6392035-基板液処理装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392035
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】基板液処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
   H01L21/304 648L
   H01L21/304 643A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-178444(P2014-178444)
(22)【出願日】2014年9月2日
(65)【公開番号】特開2016-54170(P2016-54170A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】天 野 嘉 文
(72)【発明者】
【氏名】伊 藤 優 樹
(72)【発明者】
【氏名】岡 本 英一郎
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−41269(JP,A)
【文献】 特開平9−139341(JP,A)
【文献】 特開2014−86639(JP,A)
【文献】 特開2012−84856(JP,A)
【文献】 特開2011−29593(JP,A)
【文献】 特開2008−135703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に保持する基板保持部と、
前記基板保持部を鉛直軸線周りに回転させる回転駆動機構と、
前記基板保持部により保持されて回転する基板に処理液を供給するノズルと、
前記基板に供給された処理液を受け止めて回収するカップと、
前記基板保持部の周囲を囲むとともに、前記基板保持部により保持された基板の下方に位置して基板の裏面を加熱処理する加熱部と、
を備え、
前記カップは、上部に開口を有するとともに、当該カップの内部を吸引するための排気口を有し、
前記カップは、前記開口に面するリング状の第1排気空間と、前記排気口に面するとともに前記第1排気空間に隣接するリング状の第2排気空間とを有し、
前記第1排気空間と前記第2排気空間は円周方向の全周にわたって連続的または断続的に連通し、
前記第1排気空間は、その底部に、基板に供給された処理液を受け入れるリング状の液溜まりを有し、
前記第1排気空間と第2排気空間とを隔離するとともに、基板に供給された処理液を前記液溜まりに向けて案内するリング状の案内壁が設けられ、
前記第1排気空間と第2排気空間とを隔離するとともに、前記液溜まりに受け入れられた処理液が前記第2排気空間に流入することを防止するリング状の隔離壁が設けられ、
前記カップは前記第2排気空間の内周端を画定する内周壁を有し、前記内周壁は、当該内周壁の上側部分をなして前記加熱部の外周縁に近接する位置に位置する第1壁部分と、当該内周壁の下側部分をなすとともに前記第1壁部分よりも半径方向内側であって前記加熱部の下方に位置する第2壁部分と、を有していることを特徴とする基板液処理装置。
【請求項2】
前記内周壁は、前記第1壁部分と前記第2壁部分との間に設けられ、下方向に向かうほど表面の位置が前記第1壁部分から前記第2壁部分に近づくよう形成された中間壁部分をさらに有する、請求項1に記載の基板液処理装置。
【請求項3】
前記中間壁部分は、傾斜面を有する傾斜部分である、請求項に記載の基板液処理装置。
【請求項4】
前記排気口が設けられている部位における前記第2排気空間の外周端が、前記排気口が設けられていない部位における前記第2排気空間の外周端よりも外側に位置している、請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の基板液処理装置。
【請求項5】
前記排気口の内周端が、前記第1壁部分よりも半径方向内側に位置している、請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の基板液処理装置。
【請求項6】
前記内周壁の前記第1壁部分及び前記第2壁部分は鉛直方向に延びている、請求項1からのうちのいずれか一項に記載の基板液処理装置。
【請求項7】
前記案内壁の下端と前記隔離壁の上端が連結されており、前記隔離壁または前記案内壁に、前記第1排気空間と前記第2排気空間とを連通させる連通路が、円周方向の全周にわたって断続的に形成されている、請求項1からのうちのいずれか一項に記載の基板液処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板液処理装置の排気技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造においては、半導体ウエハ等の基板に、ウエットエッチング処理、薬液洗浄処理等の様々な液処理が施される。このような液処理を行う枚葉式の基板処理ユニットは、基板を水平姿勢に保持して鉛直軸線周りに回転させるスピンチャックと、回転する基板に処理液を供給するノズルと、基板に供給された後に基板から飛散する処理液を受けとめて回収するカップとを有している。
【0003】
カップの中央上端には基板の直径よりやや大きな直径の上部開口が設けられており、また、カップの底部には排気口が設けられている。排気口からカップの内部空間を吸引すると、基板の上方の空間にあるガス(通常はクリーンエア)が、上部開口から内部空間に引き込まれ、排気口に排気される。カップには、カップ内におけるガスの流れを案内するための壁体が設けられている(例えば特許文献1を参照)。カップ内でガスを適切な方向及び流速で流すことにより、基板から飛散した処理液の基板への再付着が防止され、また、ガスから処理液のミストを除去している。
【0004】
排気口からの吸引力を低くしてカップの内部空間を吸引するようしても、良好な排気を行えることが望まれている。引用文献1の壁体の構造では、この点で改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−86639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、排気口からの低い吸引力でも良好な排気を行えるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、基板を水平に保持する基板保持部と、前記基板保持部を鉛直軸線周りに回転させる回転駆動機構と、前記基板保持部により保持されて回転する基板に処理液を供給するノズルと、前記基板に供給された処理液を受け止めて回収するカップと、を備え、前記カップは、上部に開口を有するとともに、当該カップの内部を吸引するための排気口を有し、前記カップは、前記開口に面するリング状の第1排気空間と、前記排気口に面するとともに前記第1排気空間に隣接するリング状の第2排気空間とを有し、前記第1排気空間と前記第2排気空間は円周方向の全周にわたって連続的または断続的に連通し、前記第1排気空間は、その底部に、基板に供給された処理液を受け入れるリング状の液溜まりを有し、前記第1排気空間と第2排気空間とを隔離するとともに、基板に供給された処理液を前記液溜まりに向けて案内するリング状の案内壁が設けられ、前記第1排気空間と第2排気空間とを隔離するとともに、前記液溜まりに受け入れられた処理液が前記第2排気空間に流入することを防止するリング状の隔離壁が設けられている基板液処理装置が提供される。
この基板液処理装置は、前記第2排気空間の内周端を画定する内周壁が、当該内周壁の上側部分をなす第1壁部分と、当該内周壁の下側部分をなすとともに前記第1壁部分よりも半径方向内側に位置する第2壁部分と、を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カップ内のガス流路の流路抵抗を低減することにより、排気口からの低い吸引力でも良好な排気を行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明による基板処理装置の一実施形態にかかる基板処理システムの概略構成を示す図である。
図2図1に示す処理ユニットの全体構成を示す概略図である。
図3】排気管を含まない基板保持部の中心軸を通る鉛直平面で処理ユニットを切断することにより得た処理ユニットの要部断面図である。
図4】排気管の中心軸及び基板保持部の中心軸を通る鉛直平面で処理ユニットを切断することにより得た処理ユニットの要部断面図である。
図5】回収カップの変形例を説明するための図3と同様の断面図である。
図6】回収カップの他の変形例を説明するための図3と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
【0012】
図1に示すように、基板処理システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
【0013】
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚のウエハWを水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
【0014】
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられ、内部に基板搬送装置13と、受渡部14とを備える。基板搬送装置13は、ウエハWを保持する基板保持機構を備える。また、基板搬送装置13は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、基板保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間でウエハWの搬送を行う。
【0015】
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部15と、複数の処理ユニット16とを備える。複数の処理ユニット16は、搬送部15の両側に並べて設けられる。
【0016】
搬送部15は、内部に基板搬送装置17を備える。基板搬送装置17は、ウエハWを保持する基板保持機構を備える。また、基板搬送装置17は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、基板保持機構を用いて受渡部14と処理ユニット16との間でウエハWの搬送を行う。
【0017】
処理ユニット16は、基板搬送装置17によって搬送されるウエハWに対して所定の基板処理を行う。
【0018】
また、基板処理システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部18と記憶部19とを備える。記憶部19には、基板処理システム1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部18は、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理システム1の動作を制御する。
【0019】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部19にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0020】
上記のように構成された基板処理システム1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCからウエハWを取り出し、取り出したウエハWを受渡部14に載置する。受渡部14に載置されたウエハWは、処理ステーション3の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、処理ユニット16へ搬入される。
【0021】
処理ユニット16へ搬入されたウエハWは、処理ユニット16によって処理された後、基板搬送装置17によって処理ユニット16から搬出されて、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済のウエハWは、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
【0022】
次に、処理ユニット16の概略構成について図2を参照して説明する。図2は、処理ユニット16の概略構成を示す図である。
【0023】
図2に示すように、処理ユニット16は、チャンバ20と、基板保持機構30と、処理流体供給部40と、回収カップ50とを備える。
【0024】
チャンバ20は、基板保持機構30と処理流体供給部40と回収カップ50とを収容する。チャンバ20の天井部には、FFU(Fan Filter Unit)21が設けられる。FFU21は、チャンバ20内にダウンフローを形成する。
【0025】
基板保持機構30は、保持部31と、支柱部32と、駆動部33とを備える。保持部31は、ウエハWを水平に保持する。支柱部32は、鉛直方向に延在する部材であり、基端部が駆動部33によって回転可能に支持され、先端部において保持部31を水平に支持する。駆動部33は、支柱部32を鉛直軸まわりに回転させる。かかる基板保持機構30は、駆動部33を用いて支柱部32を回転させることによって支柱部32に支持された保持部31を回転させ、これにより、保持部31に保持されたウエハWを回転させる。
【0026】
処理流体供給部40は、ウエハWに対して処理流体を供給する。処理流体供給部40は、処理流体供給源70に接続される。
【0027】
回収カップ50は、保持部31を取り囲むように配置され、保持部31の回転によってウエハWから飛散する処理液を捕集する。回収カップ50の底部には、排液口51が形成されており、回収カップ50によって捕集された処理液は、かかる排液口51から処理ユニット16の外部へ排出される。また、回収カップ50の底部には、FFU21から供給される気体を処理ユニット16の外部へ排出する排気口52が形成される。
【0028】
次に、処理ユニット16の回収カップ(以下、単に「カップ」と呼ぶ)50、基板保持機構30及びこれらの周辺の部品について、図3及び図4を参照して詳細に説明する。図3は排気口52を含まない基板保持機構30の中心軸Axを通る平面で処理ユニット16を切断することにより得た処理ユニット16の要部断面図、図4は排気口52の中心軸及び基板保持機構30の中心軸Axを通る鉛直平面で処理ユニット16を切断することにより得た処理ユニット16の要部断面図である。図3及び図4に示されている部材の多くは、中心軸Axに関して概ね回転対称に形成されている。
【0029】
基板保持機構30の保持部31はバキュームチャックとして形成されており、ウエハWの裏面(デバイスが形成されていない面)の中央部を真空吸着することにより、ウエハWを水平姿勢で保持する。駆動部33は電動モータからなり、支柱部32は電動モータ(駆動部33)の回転軸からなる。すなわち、図示された実施形態においては、バキュームチャック(保持部31)は、電動モータ(駆動部33)の回転軸(支柱部32)に直結されている。図3及び図4において、符号34は電動モータのフランジである。
【0030】
図2で概略的に示された処理流体供給部40は、図3及び図4においては、ウエハWの表面に処理液を供給する第1ノズル41と、ウエハWの裏面周縁部に処理液を供給する第2ノズル42とを有している。これらのノズル41,42には、それぞれの処理流体供給機構71,72から処理に必要な処理液(薬液、リンス液など)が供給される。第1ノズル41は、例えば旋回アーム(図示せず)の先端に保持され、ウエハWに処理液を供給するときにウエハWの中心部の上方に位置し、それ以外のときはウエハWの外方に位置する。
【0031】
保持部31の周囲には、ウエハWに向けて温調ガスを吐出してウエハWを加熱する加熱部80が設けられている。加熱部80は保持部31を包囲する円環板状の本体81を有し、 本体81内には抵抗加熱ヒータ等のヒータ82が埋設されている。本体81内には、ガス通路83が形成されている。ガス通路83には、ガス供給機構84から、図中一点鎖線で示した配管を介して、窒素ガス等の不活性ガスが供給される。ガス通路83は、様々な部分83a(円周方向に延びヒータ82に近接する凹凸部分),83b(径方向に延び部分83aを相互接続する部分),83c(部分83bの両端部に接続する部分)を有している。不活性ガスはガス通路83の部分83aに供給され、部分83aと部分83bを通過しながらヒータ82の熱により加熱され部分83cに達し、円周方向に間隔を開けて複数設けられた吐出口85a,85bからウエハWに向けて吐出される。
【0032】
円盤状の本体81は、カップ50の底壁570に固定された支持体86により支持されている。円盤状の本体81の半径方向内側端部と支柱部32の上端の半径方向外側端部との間にラビリンスシール87が形成されている。このラビリンスシール87により、回転しない本体81と回転する支柱部32との間の隙間から、吐出口85a,85bから吐出された温調ガスがリークしないようになっている。
【0033】
カップ50は、基板保持機構30及び加熱部80を包囲している。カップ50は、その上端中央部に、ウエハWの直径よりもやや大きい直径を有する円形の上部開口50Aを有している。図4に示すように、カップ50の底部には、図2にも概略的に示されている排気口52が設けられている。本実施形態では、排気口52は、1つだけ設けているが、2つ以上設けるようにしてもよい。
【0034】
カップ50及び加熱部80は、図示しない昇降機構により一体的に、図3及び図4に示す上昇位置から下降して下降位置に位置することができる。カップ50及び加熱部80が下降位置にあるときには、基板保持機構30の保持部31の上面がカップ50の上端より上方に位置し、チャンバ20(図2参照)内に進入した基板搬送装置17(図1参照)と保持部31との間で、ウエハWの受け渡しを行うことができる。ウエハWに処理が行われるときには、カップ50及び加熱部80は上昇位置に位置する。
【0035】
カップ50は、上部開口に面するリング状の第1排気空間530と、第1排気空間に隣接するリング状の第2排気空間540とを有している。第2排気空間540のある特定の円周方向位置には、図4に示すように排気口52が設けられており、その他の円周方向位置には図3に示すように排気口52は設けられていない。
【0036】
排気口52が設けられている部位を除き、第1排気空間530及び第2排気空間540の断面形状は、どの円周方向位置においても、図3に示すようになっている。但し、第1排気空間530及び第2排気空間540内には補助的な部品(カップ洗浄用ノズル及びそれに付随する配管、支持体等)が設けられることもあり、そのような部品が設けられている箇所では、断面形状が他の箇所と若干異なることもある。排気口52の近傍では、排気口52の接続に伴い第2排気空間540の断面形状が変形されている。
【0037】
第1排気空間530と第2排気空間540とは、リング状の案内壁550及びリング状の隔離壁560により分離されている。図3及び図4に示された実施形態においては、案内壁550の下端と隔離壁560の上端とが連結され、一体化された仕切壁が形成されている。隔離壁560には、円周方向に間隔を開けて断続的に複数の連通路562が形成されている。連通路562を通って、第1排気空間530から第2排気空間540にガスを流すことができる。
【0038】
案内壁550の下端(隔離壁560の上端)を図示位置よりも下方に下げ、連通路562を案内壁550に形成することもできる。
【0039】
第1排気空間530の下端部に、U字断面のリング状の液溜まり532が形成されている。図3に概略的に示すように、液溜まり532のある特定の円周方向位置に、図2にも概略的に示された排液口51が設けられている。液溜まり532の底面は、排液口51が設けられた位置に向かって低くなるように傾斜しており、液溜まり532に落ちた処理液は排液口51に流入する。
【0040】
カップ50は、第1排気空間530に面した案内面501,551を有している。案内面501は、カップ50の外周壁の一部により形成されている。案内面501は、半径方向外側にゆくに従って低くなるように斜め下方を向いて傾斜しており、回転するウエハWから飛散する処理液を受け止めて、液溜まり532に案内する。案内面551は、案内壁550の上面により形成されており、ウエハWから飛散する処理液のうち案内面551上に落ちたものを液溜まり532に案内する。
【0041】
隔離壁560は、液溜まり532に落ちた処理液が排液口51に流入する前に第2排気空間540に流入することを防止するための堰として作用する。
【0042】
第2排気空間540は、前述した案内壁550及び隔離壁560と、底壁570と、リング状の内周壁580とにより囲まれている。すなわち、第2排気空間540の上端は案内壁550により画定され、第2排気空間540の外周端は隔離壁560により画定され、第2排気空間540の下端は底壁570により画定され、そして第2排気空間540の内周端は内周壁580により画定されている。
【0043】
前述した第2ノズル42は、隔離壁560から半径方向内側に向けて張り出す支持体564により第2排気空間540内に支持されている。第2ノズル42の先端吐出口は、案内壁550に形成された貫通穴を通って案内面551の上方に位置している。
【0044】
内周壁580は、内周壁580の上側部分をなす鉛直方向に延びる第1壁部分581と、内周壁580の下側部分をなす鉛直方向に延びる第2壁部分582とを有している。内周壁580は、第1壁部分581と第2壁部分582との間に、斜め方向に延びる傾斜壁部分583と、水平方向に延びる水平壁部分584とをさらに有している。すなわち、内周壁580は、下方向に向かうほど表面の回転中心からの位置が第1壁部分581から第2壁部分582に近づくよう形成された中間壁部分としての傾斜壁部分583を有している。中間壁部分は、図3及び図4に示された傾斜壁部分583のように平面的なものに限定されない。中間壁部分は、例えば、例えば第2排気空間540に向かって凸となるように湾曲していてもよいし、第2排気空間540に向かって凹となるように湾曲していてもよい。
【0045】
第1壁部分581は、半径R1の円筒面に相当する外周表面を有している。第2壁部分582は、R1よりも大きな半径R2の円筒面に相当する外周表面を有している。第1壁部分581は、半径方向に関して、加熱部80の外周縁に近接する位置に位置している。第2壁部分582は、加熱部80の下方に位置している。すなわち、第2排気空間540は、加熱部80の下方に張り出している。第2壁部分582は、半径方向に関して、加熱部80を支持する支持体86に近接し、かつ、モータ(駆動部)33のフランジ34にも近接している。本実施形態では、第1壁部分581の内側に、加熱部80が配置されているが、これに限らず、裏面処理用のノズルや配管等が配置されていても良い。また、以上のような裏面処理部に限らずに、基板保持部を構成する部材、例えばバキューム用の吸気配管等が第1壁部分581の内側に配置されていてもよい。
【0046】
図4に示すように、排気口52が設けられている部位において、第2排気空間540の下側部分が拡大されている。これにより排気口52に大径の排気管52Aを接続することができる。図4に示す実施形態では、第2排気空間540は、液溜まり532よりも半径方向外側の位置まで拡大されている。なお、図4において、排気口52の直径を拡大するとともに排気口52の内側端(図中右端)の位置を半径方向内側に移動してもよい。つまり、図4では、排気口52の内側端の位置が第1壁部分581の位置とほぼ同じであるが、例えば第1壁部分581と第2壁部分582の中間位置に位置していてもよい。
【0047】
次に、ウエハWが回転しているときの、カップ50内の流体の流れについて説明する。流体の流れを示す矢印は図4だけに付けたが、図3でも流体の流れは同様である。
【0048】
排気口52から第2排気空間540の内部を吸引すると、カップ50の内部空間(すなわち第1排気空間530及び第2排気空間540)内に排気口52に近づくに従って低くなる傾向の圧力勾配が生じる。この圧力勾配に従い、カップ50の内部空間を排気口52に向けてガスが流れる。
【0049】
まず、ウエハW上方にあるガス(ここではFFU21から吐出されたクリーンエア)が、カップ50の上部開口50Aを画定する外周壁502の内周縁とウエハWの外周縁との間の隙間を通って第1排気空間530内に流入する(図4の矢印G1を参照)。第1排気空間530に流入したガスは、連通路562を通って第2排気空間540に流入する。
【0050】
このとき、ウエハWの表面及び裏面のうちの少なくとも一方にノズル41,42から処理液が供給されていると、処理液は遠心力によりウエハから飛散し、案内面501または案内面551に案内されて液溜まり532に落ちる。処理液の一部は、ウエハWの表裏面に衝突するとき、案内面501,551に衝突するとき等に微少液滴となり、ガスの流れG1に乗って流れる。ガスの流れG1に乗って流れる微少液滴のかなりの部分は、ガスの流れG2が連通路562に進入するときに急激に転向されときにガスの流れG2から離脱し、液溜まり532に落ちる。ガスの流れG2から離脱しない液滴は、ガスと一緒に排気口52から排出される。
【0051】
第2排気空間540に流入したガスは排気口52に向かって流れる。このとき、図4に示す排気口52の近傍で第2排気空間540に流入したガスはそのまま排気口52に流入する。一方、排気口52から離れた位置において第2排気空間540に流入したガスは、第2排気空間540内を円周方向に流れた後に、排気口52に流入する。
【0052】
流速を高めるため等の目的で流路を絞っている場所を除き、カップ内の流路抵抗を可能な限り低くすることが望ましい。流速を高めるため等の目的で流路を絞っている場所というのは、例えば、第1排気空間530の図4に矢印G1で示すガス流の通過経路などが挙げられる。例えば、ウエハWの外周縁付近でのガスの流速が低いと、ウエハWから飛散した処理液の微少液滴がウエハWに再付着してウエハWを汚染する可能性がある。
【0053】
これに対して、第2排気空間540内を円周方向に流れるガスは、ガス流G1のようなウエハWの汚染防止に関係するものではない。このため、第2排気空間540内の円周方向のガスの流れに対する抵抗は低ければ低いほど良い。
【0054】
上記の点を考慮して、本実施形態では、カップ50の第2排気空間540を画定する内周壁580の下側部分をなす第2壁部分582を、第1壁部分581よりも半径方向内側に位置させることにより、第2排気空間540の断面積を広げている。さらに、本実施形態では、第1壁部分581と第2壁部分582との間に傾斜壁部分583を設けることにより、傾斜壁部分583を設けない場合と比較して、第2排気空間540の断面積を広げている(すなわち、図3で一点鎖線で囲まれた三角形の領域585の分だけ断面積が広がる。)。これにより、第2排気空間540内におけるガスの円周方向の流れに対する抵抗が低減されるので、排気口52に印加される負圧の許容範囲(負圧の絶対値の許容下限値)が広がる。すなわち、排気口からの吸引力が低く負圧の絶対値が比較的低い場合でも、カップ50内のガスの流れに問題が生じ難くなる。また、例えば、工場排気系の吸引能力が低い半導体製造工場に基板処理システム1を設置しうる可能性を高めることができる。
【0055】
また、本実施形態では、案内壁550の下端と隔離壁560の上端とを連結して一体化して仕切壁を形成し、この仕切壁により第1排気空間530と第2排気空間540とを仕切っている。第1排気空間530’と第2排気空間540’とを連通する連通路562’は隔離壁560の上端部の一部を除去することにより形成している。このため、第2排気空間540の断面積をより大きくすることができる。例えば図5に示すように案内壁550’の下端部を隔離壁560’よりも半径方向外側に位置させるとともに、案内壁550’の下端を隔離壁560’の上端よりも下側に位置させて、案内壁550’下端部と隔離壁560’上端部との間の隙間(この隙間は円周方向に連続的に全周にわたって延びる)を、第1排気空間530’と第2排気空間540’とを連通する連通路562’として用いる構成(この構成は、先行技術文献として引用した特許文献1の構成に相当する。)が考えられる。このようにすると、隔離壁560’を半径方向内側に移動させた分だけ第2排気空間540の断面積が減少する。このため、第2排気空間540の断面積増大の観点からは、案内壁550及び隔離壁560は図3及び図4に示すように構成することが好ましい。しかしながら、図5に示す構成を採用してもかまわない。
【0056】
第2排気空間540内には、第2ノズル42の他にも、例えば第2排気空間540に面する壁面に付着しうる処理液または処理液由来の固形物を当該表面から除去するために、壁面に向けて純水等の洗浄液を吐出するノズル43(及びこれに液を供給する配管等)を配置することもある(図6を参照)。このようなノズルを設ける場合も、ノズルをカップ50に固定するための支持体が第2排気空間540内で占める容積を可能な限り小さくすることが望ましい。このような支持体を設ける場合には、例えば図6に示すように、隔離壁560から半径方向内側に張り出す片持ちの支持体565、あるいは、底壁570から上方に延びる支持体571のようなものが好ましい。例えば、隔離壁560と内周壁580との間に掛け渡された水平方向に延びる支持体590(図6に一点鎖線で示した)のような形態のものを設けることは好ましくない。特に、このような支持体590が円周方向に延びている構成は避けた方が好ましい。
【符号の説明】
【0057】
31 基板保持部(バキュームチャック)
33 回転駆動機構(モータ)
41,42 ノズル
50 カップ
52 排気口
80 加熱部
532 液溜まり
550 案内壁
560 隔離壁
562 連通
580 内周壁
581 第1壁部分
582 第2壁部分
583 中間壁部分(傾斜壁部分)
図1
図2
図3
図4
図5
図6