(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
これより説明する実施形態では、先ず、血圧測定装置を構成する信号雑音除去装置を説明し、次に生体信号検出装置を説明する。
信号雑音除去装置は、特許文献2に開示される技術の改良である。
心音に混入するノイズを除去するために、本実施形態の信号雑音除去装置は、強力なノイズフィルタリング機能を有する直交変換と直交逆変換を用いる。
周知のように、直交変換は周期的信号の乗算処理を含む。この乗算処理により、特定の周波数以外の周波数成分は大幅に減衰される。この特徴はノイズフィルタとして極めて有用である。
【0010】
ところで、心音は血流の音を含む。血流の音とは、血液が血管を流れる際に、血管内壁と血液との摩擦で生じる音である。したがって、心拍の周期と強い相関性(心拍周期の周波数の整数倍の周波数成分)を有する。
そこで、心音から、心拍周期と強い相関性を有する周波数成分だけを取り出すことができれば、心拍周期と無関係のノイズを除去できる。
しかし、心拍の周期には生体特有のゆらぎを含むため、心拍の周期は微妙に一定ではない。
そこで、心拍を脈拍センサで別途検出し、心拍のピークを検出して、心拍周期の平均値を算出し、心拍に同期する心音の信号波形を強制的にその平均値周期に当てはめる(リサンプル)。当てはめを行ってから直交変換、そして直交逆変換を施すことで、心音からノイズ成分の除去が可能になる。
直交逆変換後は、心拍のピークを検出した際に記憶しておいたバッファ内のアドレスに基づき、直交逆変換で取り出した波形を元の心拍周期に戻す。こうして、心音からノイズ除去を実現できる。
【0011】
更に、特許文献1には、心音の振幅と血圧との相関性を利用して、血圧を推定する技術内容が開示されている。
上述の信号雑音除去装置が出力する、ノイズを除去した心音の信号をそのまま特許文献1に開示される血圧測定装置に入力すれば、マイクを用いた血圧測定装置を実現することができる。
更に、心音の周波数成分と血圧との相関性を利用すれば、信号雑音除去装置の直交変換から、直接的に血圧の推定も可能になる。
【0012】
生体信号検出装置は、心拍センサや心電検出装置の代わりに、電波を用いて非接触にて生体信号を検出する。人体のインピーダンスは心拍に応じて変動する。そこで、人体に電波を通過させ、そのインピーダンスの変化を検出する。しかし、人体に電波を通過させる際、人体が少しでも動いただけで電波の伝搬状態が大きく変動する。そこで、二つの受信モジュールを設け、同期検波と差動増幅を用いて、変動成分を打ち消すようにする。
【0013】
[第一実施形態:血圧測定システムの全体構成]
図1は、血圧測定システム101の全体構成を示す概略図である。
センサ駆動装置102には、被測定者103の外耳103aに装着される心拍センサ104と、被測定者103の胸に装着される心音マイク105が接続される。センサ駆動装置102は、心拍センサ104から心拍信号を、心音マイク105から心音信号を検出し、BlueTooth(登録商標)等の近距離無線通信を用いて、スマートフォン等の携帯型無線端末106aや、パソコン106b等の情報処理装置106とデータ通信を行う。そして、心音から血圧を算出し、情報処理装置106の表示部に表示する。データ通信の詳細等については
図3にて後述する。
【0014】
[第一実施形態:センサ駆動装置102と情報処理装置106のハードウェア構成]
図2Aは、センサ駆動装置102のハードウェア構成を示すブロック図である。
マイコンを含むセンサ駆動装置102は、CPU201、ROM202、RAM203、第一A/D変換器204、第二A/D変換器205、シリアルポートを構成する第一バッファ206及び第二バッファ207がバス208に接続されている。
心拍センサ104は、例えば緑色のLED209と、フォトダイオード210の組で構成される。LED209のアノードには抵抗R211を通じて電源電圧が印加されている。フォトダイオード210のカソードには抵抗R212を通じて電源電圧が印加されている。
【0015】
LED209のカソードは第一バッファ206に接続されている。周知のCMOSインバータである第一バッファ206はバス208を通じてオンオフ制御される、LED209のカソードと接地ノードとの接続を制御するスイッチとして機能する。フォトダイオード210のアノードには電流電圧変換と電圧増幅を行う第一オペアンプ213を通じて第一A/D変換器204が接続され、被験者の外耳103aにおける血流の変化がデジタルデータに変換される。
心音マイク105には電圧増幅を行う第二オペアンプ214を通じて第二A/D変換器205が接続され、被験者の胸から検出される心音がデジタルデータに変換される。
近距離無線通信部215は第二バッファ207に接続され、センサ駆動装置102が出力するデータを情報処理装置106(
図1参照)へ送信する。
【0016】
図2Bは、情報処理装置106のハードウェア構成を示すブロック図である。
情報処理装置106は、CPU221、ROM222、RAM223、不揮発性ストレージ224、表示部225、操作部226、そして近距離無線通信部227から構成され、これらの部材がバス228に接続されている。
ここで情報処理装置106がスマートフォン等の携帯型無線端末106aの場合、表示部225は液晶ディスプレイであり、操作部226は静電型位置検出装置である。そして、表示部225と操作部226は、重なりあってタッチパネルディスプレイ229を構成する。
【0017】
[第一実施形態:センサ駆動装置102と情報処理装置106のソフトウェア機能]
図3A及び
図3Bは、血圧測定システム101のソフトウェア機能を示すブロック図であり、
図3Aは血圧測定のための演算処理を情報処理装置106で行う場合の例を示し、
図3Bは血圧測定のための演算処理をセンサ駆動装置102で行う場合の例を示す。
図3Aの例では、LED209は、センサ駆動装置102の発光制御部301によって間歇発光駆動される。このLED209が発する光は、被測定者103の外耳103aを透過してフォトダイオード210によって検出され、第一A/D変換器204によって心拍データに変換される。
【0018】
被験者の胸から検出される心音は心音マイク105によって検出され、第二A/D変換器205によって心音データに変換される。
心拍データと心音データは、センサ駆動装置102の近距離無線通信部215によって情報処理装置106に送信される。
情報処理装置106は、センサ駆動装置102から近距離無線通信部227を通じて心拍データと心音データを受信する。すると、情報処理装置106の信号処理部302によって心拍パルスとノイズが除去された心音データ(以下「ノイズ除去心音データ」と略す)が出力される。血圧算出部303は、信号処理部302で得られるノイズ除去心音データを解析し、血圧データを出力する。そして、心拍パルスと血圧データは入出力制御部304に入力され、心拍値と血圧値として表示部225に表示される。
【0019】
図3Bの例でも、LED209は、センサ駆動装置102の発光制御部301によって間歇発光駆動される。そしてLED209が発する光は、被測定者103の外耳103aを透過してフォトダイオード210によって検出され、第一A/D変換器204によって心拍データに変換される。
被験者の胸から検出される心音は心音マイク105によって検出され、第二A/D変換器205によって心音データに変換される。
信号処理部302は、心拍データと心音データを受けて、心拍パルスとノイズ除去心音データを出力する。血圧算出部303はノイズ除去心音データを解析し、血圧データを出力する。心拍パルスと血圧データは、センサ駆動装置102の近距離無線通信部227によって情報処理装置106に送信される。
情報処理装置106は、センサ駆動装置102から近距離無線通信部227を通じて心拍パルスと血圧データを受信する。心拍パルスと血圧データは入出力制御部304に入力され、心拍値と血圧値として表示部225に表示される。
【0020】
すなわち、信号処理部302と血圧算出部303の機能は、情報処理装置106側と、センサ駆動装置102側のどちらに実装してもよい。
信号処理部302は、心拍データと心音データを基に、心音データからノイズを除去する、生体信号処理装置ということもできる。
【0021】
[第一実施形態:信号処理部302のソフトウェア機能]
図4は、信号処理部302のソフトウェア機能を示すブロック図である。
図5A及び
図5Bは、ノイズ除去処理部411の一例を示すソフトウェア機能のブロック図である。
心拍センサ104を構成するフォトダイオード210が出力する心拍信号は、第一A/D変換器204によって心拍データに変換され、心拍バッファ401に格納される。一方、心音マイク105が出力する心音信号は、第二A/D変換器205によって心音データに変換され、ディレイ402を通じて心音バッファ403に格納される。第一A/D変換器204と第二A/D変換器205のサンプリング周波数、そして心拍バッファ401と心音バッファ403の格納サンプル数は等しく構成されている。
【0022】
ここで、一旦、
図6を参照して、心拍バッファ401と心音バッファ403とディレイ402の作用を説明する。
図6は、心音データと心拍データと、ディレイ402により遅延された心音データの波形図である。
図6中、一番上の波形図は、
図4の検出点P404における、心音データの波形図である。
図6中、上から二番目の波形図は、
図4の検出点P405における、心拍データの波形図である。
図6中、一番下の波形図は、
図4の検出点P406における、ディレイ402によって遅延された心音データの波形図である。
人体の心臓付近から発される心音と、外耳103aから検出される心拍には、心臓と外耳103aとの距離に基づく時間軸上の遅延D601が存在する。ディレイ402はこの遅延D601を打ち消し、心拍バッファ401に格納される心拍データと、心音バッファ403に格納される心音データとの位相を時間軸上で一致させる。
【0023】
再度
図4に戻って、信号処理部302の説明を続ける。
心拍バッファ401内の心拍データは、心拍検出部407によって心拍のピークのアドレス情報と、心拍の範囲のアドレス情報が検出される。
ここで、一旦
図7を参照して、心拍データと心音データとを比較して、心拍検出部407が検出するアドレス情報について説明する。
図7は、心拍バッファ401に格納されている心拍データと、心音バッファ403に格納されている心音データの波形図である。
図6の下二つの波形図を拡大したものと等価である。
心拍検出部407は、心拍バッファ401に格納されている心拍データを見て、R波アドレス情報P701と、切り出しアドレス情報A702を出力する。
一般に、健常者の心拍波形は、P波、Q波、R波、S波、そしてT波よりなる。この波形の出現順序は決まっている。
先ず、心拍検出部407は心拍バッファ401内における心拍データから、DCオフセット成分を除去するべく、仮想的なゼロ電位を演算処理にて算出する。そして、心拍バッファ401内におけるR波のピークのアドレスを検出する。これがR波アドレス情報P701である。
次に、心拍検出部407は仮想的なゼロ電位に基づいて、R波アドレス情報P701の前後に存在する、P波の始まりのアドレスと、T波の終わりのアドレスを検出する。これが切り出しアドレス情報A702である。
心拍バッファ401内のR波アドレス情報P701を取得すると、心拍間隔、すなわちRR間隔(RR Interval)を得ることができる。
なお、心拍検出部407はR波アドレス情報P701を取得すると共に、心拍パルスも出力する。この心拍パルスは入出力制御部304(
図3参照)に供給され、入出力制御部304は心拍パルスの間隔から心拍値を計測する。
【0024】
再度
図4に戻って、信号処理部302の説明を続ける。
再配置処理部408は、心拍検出部407から得られたR波アドレス情報P701と切り出しアドレス情報A702に基いて、心音バッファ403内の心音データの再配置処理を行う。そして、再配置を施したデータを再配置心音データとして再配置バッファ409に出力し、これを格納する。
ここで、一旦
図8を参照して、心拍データを用いて、再配置処理部408の再配置処理について説明する。
図8は、再配置処理前の心拍波形と、再配置処理を施した心拍波形を示す波形図である。実際に再配置処理を行う対象は心音データであるが、理解を容易にするために、心拍波形で再配置処理部408による処理を行う例について説明する。
【0025】
健常者のRR間隔は、周期的に増減を繰り返すことが知られている。すなわち、RR間隔は常に一定ではなく、変動し続けている。心音データをこのままの状態で離散フーリエ変換等の直交変換を施すと、周期的な変動によってノイズ成分の除去が困難になる。そこで、後段の直交変換によるノイズ除去処理部411に心音データを投入する前に、心音データの波形を強制的に等間隔に並べる。
先に、心拍検出部407でR波アドレス情報P701を検出していた。したがって、RR間隔を得ている。再配置処理部408は先ず、心拍バッファ401から検出される全てのRR間隔(R波アドレス情報P701同士の距離)を取り出し、その平均値を算出する。これがRR平均値である。次に、再配置処理部408はRR平均値に基づいて、心拍検出部407が検出したR波アドレス情報P701をRR平均値の間隔に並べ直す。これが再配置R波アドレス情報P801である。
【0026】
そして、再配置処理部408は心音バッファ403内の心音データを切り出しアドレス情報A702に基いて切り出し、切り出した心音データを、R波アドレス情報P701と再配置R波アドレス情報P801との差であるアドレス移動量G802だけ移動させ、再配置バッファ409に格納する。単純に心音データを切り出すと、切り出した心音データの縁の部分でノイズが発生してしまうので、再配置処理部408の中に設けられる補間処理部410によって、再配置バッファ409内の再配置心音データの補間処理が行われる。この補間処理は周知の直線補間、ラグランジェ補間、スプライン補間等が利用可能であり、特にラグランジェ補間が良い演算結果を得る。
【0027】
こうして再配置処理部408は、再配置心音データと、再配置R波アドレス情報P801を出力する。再配置心音データは再配置バッファ409に格納される。再配置R波アドレス情報P801は、後述する配置復帰処理部413に供給され、心拍検出部407が出力するR波アドレス情報P701と切り出しアドレス情報A702と共に、ノイズ除去済再配置心音データの心音波形の時間軸上の位置を元に戻す処理に使用される。
【0028】
再配置バッファ409に格納される再配置心音データは、ノイズ除去処理部411によってノイズが除去される。ノイズ除去処理部411は直交変換と直交逆変換を用いて、ノイズの除去を行う。直交変換には様々な手法が知られているが、代表的な3つの直交変換を用いたノイズ除去について、
図5A、
図5B及び
図5Cにて説明する。
図5Aは、離散コサイン変換を用いたノイズ除去処理部411のソフトウェア機能を示すブロック図の例である。
離散データ列である再配置バッファ409に格納される再配置心音データは、DCT変換処理部501によって、離散データ列のサンプル数と同数の係数データ列に変換される。係数データ列は係数フィルタ502によって、高次係数データの間引き処理が行われる。高次係数データの間引き処理が施された係数データ列は、DCT逆変換処理部503によって、離散データ列と同数の復号離散データ列に変換され、処理済バッファ412に格納される。
この復号離散データ列が、ノイズ除去済再配置心音データとなる。
【0029】
図5Bは、離散フーリエ変換を用いたノイズ除去処理部411のソフトウェア機能を示すブロック図の例である。
離散データ列である再配置バッファ409に格納される再配置心音データは、FFT変換処理部511によって、離散データ列のサンプル数と同数の複素数データ列に変換される。複素数データ列の実部データ列と虚部データ列はベクトル演算処理部512によって、離散データ列のサンプル数と同数の振幅データ列と周波数・位相データ列に変換される。振幅データ列はローパスフィルタ(以下「LPF」と略)513によって高周波成分が捨象される。高周波成分が捨象された振幅データ列と周波数・位相データ列は逆ベクトル演算処理部514によって複素数データ列に変換される。そして、この複素数データ列はFFT逆変換処理部515によって復号離散データ列に変換され、処理済バッファ412に格納される。
この復号離散データ列が、ノイズ除去済再配置心音データとなる。
【0030】
図5Cは、離散ウォルシュ・アダマール変換を用いたノイズ除去処理部411のソフトウェア機能を示すブロック図の例である。
離散データ列である再配置バッファ409に格納される再配置心音データは、WHT変換処理部521によって、離散データ列のサンプル数と同数の係数データ列に変換される。係数データ列は係数フィルタ522によって、高次係数データの間引き処理が行われる。高次係数データの間引き処理が施された係数データ列は、WHT逆変換処理部523によって、離散データ列と同数の復号離散データ列に変換され、処理済バッファ412に格納される。
この復号離散データ列が、ノイズ除去済再配置心音データとなる。
機能ブロック単位で見ると、
図5Cに示した離散ウォルシュ・アダマール変換によるノイズ除去処理は、
図5Aの離散コサイン変換によるノイズ除去処理と全く変わらないように見える。しかし、周知のように離散ウォルシュ・アダマール変換は加減算の行列演算で実現できるため、圧倒的に計算量が少ない。したがって、低消費電力で演算能力が低いワンチップマイコンでも比較的容易に実装が可能である。
【0031】
処理済バッファ412内のノイズ除去済再配置心音データは、配置復帰処理部413によって、心音波形の時間軸上の位置が再配置処理部408によって移動される前の状態に戻される。すなわち、切り出しアドレス情報A702を再配置R波アドレス情報P801とR波アドレス情報P701との差に基いてずらしたアドレス情報を基に、処理済みバッファ内のノイズ除去済再配置心音データから心音波形を切り出す。そして、再配置R波アドレス情報P801とR波アドレス情報P701との差に基いて配置の復帰を行い、ノイズ除去済心音データとして出力する。
【0032】
心音は血流の音を含む。血流の音とは、血液が血管を流れる際に、血管内壁と血液との摩擦で生じる音である。したがって、心拍の周期と強い相関性を有する。
そこで、心音から、心拍周期と強い相関性を有する周波数成分だけを取り出すことができれば、心拍周期と無関係のノイズを除去できる。
しかし、心拍の周期には生体特有のゆらぎを含むため、心拍の周期は微妙に一定ではない。
そこで、心拍データから心拍検出部407を用いてR波アドレス情報P701と切り出しアドレス情報A702を取り出す。次に、再配置処理部408はR波アドレス情報P701からRR間隔の平均値を算出し、再配置R波アドレス情報P801を導き出す。そして、心拍データに同期する心音データを強制的にその平均値周期に当てはめる。切り出した心音波形を等間隔に当てはめを行ってから直交変換、そして直交逆変換を施すことで、心音から心拍の周期と無関係なノイズ成分の除去が可能になる。
直交逆変換後は、R波アドレス情報P701と再配置R波アドレス情報P801と切り出しアドレス情報A702に基づき、直交逆変換で取り出した波形を基の心拍周期に戻す。こうして、心音からのノイズ除去を実現することができる。
【0033】
ノイズ除去済心音データは、
図3A及び
図3Bに示されるように、血圧算出部303に入力される。血圧算出部303は、ノイズ除去済心音データの振幅を血圧算出部303内部のテーブルを参照して、血圧を算出する。
【0034】
[第二実施形態:心拍パルス検出部901のソフトウェア機能]
発明者は、本発明を実現するに際し、心拍検出部407が心拍ピークデータの出力に誤ったパルスが含まれる場合がある事に気付いた。この原因を調査したところ、被測定者103の個人差により、T波のピーク値が高い場合に、T波をR波と誤検出する場合があることが判明した。そこで、心拍検出部407における、R波を検出する機能に関する改善について、以下に説明する。
図9は、心拍検出部407の一部の機能である、心拍パルス検出部901のソフトウェア機能を示すブロック図である。なお、心拍パルス検出部901はソフトウェアによって実現されているが、説明を簡単にするために擬似的なアナログ回路機能に代えて説明する。
【0035】
心拍バッファ401、あるいは第一A/D変換器204から出力される心拍データは、ディレイ902とピークホールド部903に供給される。ピークホールド部903は周知のアナログ回路におけるピークホールド回路と同様に、時定数を伴って減衰するピークホールド信号を出力する。ディレイ902は、ピークホールド部903の信号処理によって生じる遅延(latency: レイテンシ)と同じ遅延時間を入力データに与えて、後続する第一加算器904においてデータの時間軸を揃えるために設けられている。
第一加算器904はピークホールド部903のデータに対し、ディレイ902のデータを減算する。第一加算器904から出力されるデータは、第一コンパレータ906によって基準信号レベル値907と比較され、第一加算器904から出力されるデータが基準信号レベル値907以下の場合に論理の真を出力する。このようにして、第一コンパレータ906は入力されるデータから心拍のR波に相当するパルスを出力する。
【0036】
第一コンパレータ906の出力論理信号は、カウンタ908に入力される。周期測定部ともいえるカウンタ908はシステムクロック909で第一コンパレータ906の出力論理信号の間隔を計数し、その値を出力する。
また、第一コンパレータ906の出力論理信号は、ラッチ910のリセット端子にもに入力される。ラッチ910はカウンタ908の出力データを記憶する。
カウンタ908の出力データとラッチ910の出力データは第二加算器911に入力される。第二加算器911はカウンタ908の出力データからラッチ910の出力データを減算する。
第二加算器911の出力データは、第二コンパレータ912に供給される。第二コンパレータ912は第二加算器911の出力データを基準差分値913と比較され、第二加算器911から出力されるデータが基準差分値913以上の場合に論理の真を出力する。このようにして、第二コンパレータ912は第二加算器911が出力する差分値が基準差分値913以上の値になった場合に、後続する時定数制御部914に論理の真を与える。
時定数制御部914は、第二コンパレータ912の出力論理値が真である場合に、ピークホールド部903の時定数を増加させる方向に制御する。
【0037】
[第二実施形態:心拍パルス検出部901の動作]
図10は、心拍パルス検出部901が正常にR波を検出した場合における、心拍パルス検出部901の各箇所におけるデータを模式的に示す波形図である。そして
図11は、心拍パルス検出部901がR波の検出に失敗した場合における、心拍パルス検出部901の各箇所におけるデータを模式的に示す波形図である。なお、
図10及び
図11では、説明を簡単にするため、心拍波形のうちR波とT波のみを示し、且つこれらを三角波と仮定し、波形の負方向の成分を捨象して説明する。
測定点P921における波形図は、ディレイ902によって時間軸がピークホールド部903の出力データと揃えられた心拍データである。一方、測定点P922における波形図は、ピークホールド部903の出力データである。すなわち、R波のピークから時定数を伴って減衰する波形のデータである。
測定点P923における波形図は、測定点P921における心拍データの反転値である。
測定点P924における波形図は、第一加算器904が出力するデータである。
測定点P925における波形図は、第一コンパレータ906が出力する論理値である。
【0038】
先ず、
図10を参照して、心拍パルス検出部901の正常時における動作を説明する。
ピークホールド部903は、ピーク値を取得した時点から時定数を伴って減衰するデータを出力する。そして、減衰したデータが入力されるデータよりも小さくなると、ピークの検出が始まる。これが
図10における時点T1001である。次に、入力されるデータがピークを過ぎて減衰を始めると、ピークホールド部903は時定数を伴って減衰するデータを出力する。これが
図10における時点T1002である。そして、再度減衰したデータが入力されるデータよりも小さくなるまで、ピークホールド部903が形成するデータが出力される。これが時点T1003である。
すなわち、時点T1001から時点T1002の間は、ピークホールド部903が形成するデータから入力されるデータが現れている状態である。逆に、時点T1002から時点T1003の間は、ピークホールド部903が形成するデータによって入力されるデータが隠れている(マスキングされている)状態である。
【0039】
マスキングから現れている箇所のデータに対し、入力データを減算すると、仮にその部分の値がそれぞれ同じ絶対値であれば、ゼロになる。これが、測定点P924における時点T1001から時点T1002の間である。この、時点T1001から時点T1002を第一コンパレータ906で検出すれば、R波のピークを検出できる。
このようにして検出されたR波のピークによって検出されるRR間隔である、間隔R1004と間隔R1005は近い値になる。間隔R1004と間隔R1005の差は、人間の心拍のゆらぎに基づく、小さい値である。
実際には、入力データに含まれるオフセットや第一コンパレータ906に印加される基準信号レベル値907の誤差等の要因で、第一コンパレータ906による時点T1001と時点T1002の捕捉には誤差が生じるが、実用上は問題ない。
【0040】
以上を踏まえて、
図11を参照して、心拍パルス検出部901の異常時における動作を説明する。
図11中、時点T1101は
図10の時点T1001と同じである。同様に、時点T1102は
図10の時点T1002と同じであり、時点T1105は
図10の時点T1003と同じである。
T波のピーク値がR波に近い位大きいか、及び/又はピークホールド部903の時定数が小さい場合は、T波もマスキングから現れてしまう。これが
図11における時点T1103からT1104の間である。すると、本来検出されるべきでないT波もR波と間違って第一コンパレータ906から出力されてしまう。
このようにして検出されたR波のピークによって検出されるRR間隔である、間隔R1106と間隔R1107は大幅に異なる値になる。
【0041】
このように、R波の検出が正常であるか否かは、現在のRR間隔と直前のRR間隔とを比較することで判定できる。これが、カウンタ908、ラッチ910、第二加算器911と第二コンパレータ912の役割である。
ピークホールド部903の時定数が常時最適な値であれば理想的ではあるが、そのような値を割り出すことは困難である。そこで、本実施形態の心拍パルス検出部901は、ピークホールド部903の時定数を適応的に制御する。すなわち、R波の検出が異常状態であると判断した場合には、ピークホールド部903の時定数を増加させる。これが、時定数制御部914の役割である。
【0042】
[第三実施形態:生体信号検出装置の全体構成]
第一実施形態では、血圧測定システム101を開示した。第一実施形態の血圧測定システム101は、心音信号と心拍信号を与えることで、心音信号からノイズを除去し、血圧を算出できる。血圧測定システム101では、心音信号を音響マイクで、心拍信号をLED209とフォトダイオード210よりなる光電センサで検出していた。これらセンサは人体と接触する必要がある。もし、これらのセンサを人体に非接触で実現できれば、乗用車等に組み込む車載用血圧測定システム1201を実現できる。
【0043】
図12は車載用血圧測定システム1201の全体構成を示す概略図である。
車載用血圧測定システム1201は、生体信号検出装置1202と、心音検出装置1203と、血圧測定装置1204よりなる。このうち血圧測定装置1204は、第一実施形態で説明した血圧測定システム101の、信号処理部302及び血圧算出部303と等価である。
心音検出装置1203は、ヘリカルアンテナ1205から凡そ60MHz程度の微弱な電波を運転者1206に照射して、その反射波から心音信号を検出する。
【0044】
生体信号検出装置1202には、3つのアンテナが接続されている。
第一アンテナ1207は凡そ5〜10cm四方の金属板であり、ドライバーシート1208の背もたれ1208aに埋め込まれている。
第二アンテナ1209も第一アンテナ1207と同様、凡そ5〜20cm四方の金属板であり、ドライバーシート1208のシート1208bに埋め込まれている。
第三アンテナ1210は自動車のステアリング1211に金属線として埋め込まれる。また、第三アンテナ1210はステアリング1211に埋め込む代わりに、ステアリング1211近傍のダッシュボードに埋め込んでもよい。その際、第三アンテナ1210の形状は第一アンテナ1207及び第二アンテナ1209と同様の、凡そ5〜10cm四方の金属板で形成される。
【0045】
生体信号検出装置1202の交流抵抗検出部1212は、第一アンテナ1207から数MHz〜数十MHz程度の、HF帯の微弱な無変調電波を発する。そして、第二アンテナ1209と第三アンテナ1210からそれぞれ電波を受信する。交流抵抗検出部1212は、生体信号を含む信号を出力するので、バンドパスフィルタ(以下「BPF」と略)1213でDCオフセット成分と高周波ノイズ成分を除去し、心電信号に略等しい生体信号を出力する。
こうして、生体信号検出装置1202から得られる生体信号と、心音検出装置1203から得られる心音信号は、それぞれ血圧測定装置1204に入力され、被測定者103の血圧が測定される。
【0046】
図13は、生体信号検出装置1202の機能ブロック図である。
発振源1301は数MHz〜数十MHz程度の、HF帯の無変調高周波信号を生成する。この無変調高周波信号は第一アンテナ1207から無変調電波として送信される。
第二アンテナ1209には、コイルL1302とコンデンサC1303よりなる同調回路が接続されている。第三アンテナ1210にも、コイルL1304とコンデンサC1305よりなる同調回路が接続されている。
第二アンテナ1209が接続されている同調回路の出力信号は、第一ミキサ1306に印加される。第一ミキサ1306には発振源1301の無変調高周波信号も入力される。
第三アンテナ1210が接続されている同調回路の出力信号は、第二ミキサ1307に印加される。第二ミキサ1307には、発振源1301の無変調高周波信号が、第一π/2移相回路1308を通じて入力される。すなわち、第二ミキサ1307には発振源1301の無変調高周波信号がπ/2だけ位相が遅れた信号が入力される。なお、第一ミキサ1306と第二ミキサ1307は、例えばデュアルゲートFET等が利用可能である。
【0047】
第一ミキサ1306には、第二アンテナ1209が接続されている同調回路の出力信号と、発振源1301の無変調高周波信号とが供給され、これらの周波数成分の和信号と差信号が第一ミキサ1306の出力信号として、第一LPF1309に供給される。第一LPF1309は、入力された周波数成分の和信号と差信号のうち、差信号のみを出力する。そして、第一LPF1309の出力信号は、第二π/2移相回路1310によってπ/2だけ位相が遅延される。
第二ミキサ1307には、第三アンテナ1210が接続されている同調回路の出力信号と、発振源1301の無変調高周波信号がπ/2移相された信号とが供給され、これらのの周波数成分の和信号と差信号が第二ミキサ1307の出力信号として、第二LPF1311に供給される。第二LPF1311は、入力された周波数成分の和信号と差信号のうち、差信号のみを出力する。
第二π/2移相回路1310の出力信号と、第二LPF1311の出力信号は、それぞれ差動増幅器1312に入力される。差動増幅器1312は、第二π/2移相回路1310の出力信号と、第二LPF1311の出力信号の同相成分を打ち消し、逆相成分のみを出力する。そして、差動増幅器1312の出力信号はBPF1213に入力される。
二つの同調回路を除けば、第一ミキサ1306、第二ミキサ1307、第一π/2移相回路1308、第一LPF1309、第二π/2移相回路1310、第二LPF1311は、周知の同期検波回路と変わらない。
【0048】
心拍、すなわち血流の圧力変化は、人体のインピーダンス変化という現象をもたらす。心拍信号に略等しい心電信号は、人体の複数箇所に電極を接続して、微弱な交流信号を流して、人体のインピーダンス変化を検出する。本実施形態の生体信号検出装置1202は、電波を用いて、この人体のインピーダンス変化を非接触で検出する。
しかし、電波の伝搬は送信側と受信側との間に介在する物体の存在により、受信側の検出信号のゲインが大幅に変動する。
図12の場合、被測定者である運転者1206が少しでも動いただけで、受信側の信号レベルが大幅に変動する。
そこで、本実施形態の生体信号検出装置1202は、同期検波回路を応用した。受信側にアンテナと同調回路を二つ設けることで、人体の動きに基づく信号レベルの変動は、差動増幅器1312で同相成分として打ち消され、人体のインピーダンス変化に基づく信号レベルの変動は、差動増幅器1312で逆相成分として検出される。すなわち、人体のインピーダンス変化は、無変調高周波信号に対し、振幅変調を生じさせることと等価となる。
【0049】
図14は、心音検出装置1203の機能ブロック図である。この心音検出装置1203は、本願の発明者が「脈拍センサ」として出願済(特願2013−217093号)の技術内容である。
心音検出装置1203は、以下に記す、二つの要素に分けられる。
第一は、対象物に進行波である電波を送信し、対象物から反射される反射波を受信して抽出する要素である。この第一の要素には、パルス波生成部1402、BPF1403、第一RF増幅器1404、方向性結合器1405及びヘリカルアンテナ1205(第四アンテナ)が含まれる。
第二は、進行波と反射波から周波数差信号を生成し、更に脈拍の信号を抽出する要素である。この第二の要素としては、第二RF増幅器1408、第三RF増幅器1409、第三ミキサ1410、第四ミキサ1412、第三LPF1414、第四LPF1415、差動増幅器1416及び第五LPF1417が含まれる。
【0050】
信号生成部ともいえるパルス波生成部1402は、比較的低い周波数のパルスを生成する。このパルス波生成部1402で生成されるパルスの周波数は、例えば1MHzである。
BPF1403は、パルス波生成部1402が生成したパルスから高調波成分を取り出す。BPF1403の中心周波数と帯域幅は、例えば60MHz±3MHzである。BPF1403は例えばLC共振回路を多段接続した回路構成が利用可能である。
第一RF増幅器1404は、BPF1403を通過した高調波成分の信号を増幅する。
【0051】
第一RF増幅器1404によって増幅された高調波成分の信号は、方向性結合器1405の入力端子(
図14中「IN」)に入力される。そして、この高調波成分の信号は方向性結合器1405の出力端子(
図14中「OUT」)に接続されたヘリカルアンテナ1205に供給される。
方向性結合器1405は、コイル、コンデンサ及び抵抗で形成され、VSWR計(電圧定在波比:Voltage Standing Wave Ratio)等に用いられる周知の回路素子である。方向性結合器1405は、第一の伝送路に含まれる進行波と反射波に基づいて、進行波に比例した出力信号と、反射波に比例した出力信号とをそれぞれ出力することができる。
【0052】
ヘリカルアンテナ1205は、高調波成分の信号に基づく、複数の周波数の電波を発する。そして、人体等の対象物によって反射された電波は、ヘリカルアンテナ1205によって受信され、方向性結合器1405の内部で定在波を生じる。
方向性結合器1405の分離端子(
図14中「Isolated」)には、ヘリカルアンテナ1205を通じて出力端子から入力される電波の信号(反射波)に比例した信号が出力される。
方向性結合器1405の結合端子(
図14中「Coupled」)には、入力端子に入力される高調波成分の信号(進行波)に比例した信号が出力される。
結合端子は、抵抗R1407を介して接地ノードに接続されている。抵抗R1407としては方向性結合器1405及びヘリカルアンテナ1205のインピーダンスに等しい抵抗値が設定される。多くの場合、50Ωか75Ωである。
【0053】
第二RF増幅器1408は、BPF1403を通過した高調波成分の信号(進行波)を増幅する。
第三RF増幅器1409は、方向性結合器1405の分離端子から出力される、ヘリカルアンテナ1205を通じて出力端子から入力される電波の信号(反射波)を増幅する。
第二RF増幅器1408の出力信号は、第三ミキサ1410に供給されると共に、反転増幅器1411を介して第四ミキサ1412に供給される。
第三RF増幅器1409の出力信号は、第四ミキサ1412に供給されると共に、バッファ1413を介して第三ミキサ1410に供給される。なお、第二RF増幅器1408の出力信号と第三RF増幅器1409の出力信号は、位相が異なっていても所望の信号を第三ミキサ1410及び第四ミキサ1412から得られる。したがって、反転増幅器1411の代わりにバッファ(非反転増幅器)を用いてもよい。
こうして、第三ミキサ1410と第四ミキサ1412は、それぞれ進行波と反射波の乗算信号を出力する。ここで、第三ミキサ1410と第四ミキサ1412としては、例えばデュアルゲートFET等が利用可能である。
【0054】
第三ミキサ1410の出力信号は、第三LPF1414に供給される。第三LPF1414は、第三ミキサ1410から出力される進行波と反射波の乗算信号のうち、進行波と反射波の、それぞれの周波数の差の信号を出力する。
同様に、第四ミキサ1412の出力信号は、第四LPF1415に供給される。第四LPF1415は、第四ミキサ1412から出力される進行波と反射波の乗算信号のうち、進行波と反射波の周波数の差の信号を出力する。
第三LPF1414の出力信号と、第四LPF1415の出力信号は、それぞれ差動増幅器1416に入力される。オペアンプよりなる差動増幅器1416は、第三LPF1414の出力信号と、第四LPF1415の出力信号からノイズ成分を除去した信号を出力する。
差動増幅器1416の出力信号は、第五LPF1417に供給される。第五LPF1417は、差動増幅器1416の出力信号から比較的高い周波数の交流成分を除去して、人体の心音を示す低周波信号を通過させる。
【0055】
以上説明したように、第一実施形態で説明した技術内容に基づく血圧測定装置1204に、本実施形態で説明した生体信号検出装置1202が出力する心拍信号と、心音検出装置1203が出力する心音信号を与えることで、人体に非接触でかつ連続的に血圧を測定できる血圧測定システム101を実現することができる。
【0056】
以上説明した実施形態には、以下に記す応用例が可能である。
(1)
図13に示した生体信号検出装置1202の、第一LPF1309の後段に接続されている第二π/2移相回路1310は、第二LPF1311の後段に接続してもよい。この時、第一LPF1309の出力信号は、同期検波回路における「USB+LSB」(Upper Side Band, Lower Side Band)であり、第二LPF1311の後段に接続される第二π/2移相回路1310の出力信号は、同期検波回路における「USB−LSB」である。そして差動増幅器1312は、USBの信号を出力することとなる。
【0057】
(2)第一実施形態における血圧測定システム101と、第三実施形態における車載用血圧測定システム1201は、
被測定者103の心拍信号を出力する生体信号検出装置1202と、
前記被測定者103の心音信号を出力する心音検出装置1203と、
前記生体信号検出装置1202から出力される心拍信号と、前記心音検出装置1203から出力される心音信号を用いて、被測定者103の血圧を測定する血圧測定装置1204と
という構成において等しい。
第一実施形態における生体信号検出装置1202は、被測定者103の外耳103aに装着する心拍センサ104である。
第一実施形態における心音検出装置1203は、被測定者103の胸に貼付する心音マイク105である。
【0058】
(3)特許文献1に開示される血圧測定方法は、心音の振幅と血圧に相関性があることを利用して、心音の振幅と血圧との対応関係をデータにしたテーブルを参照して、心音の振幅を血圧のデータに変換する技術を基礎としている。この技術内容を応用し、心音の振幅の代わりに、心音を構成する信号の周波数と血圧の対応関係をデータにしたテーブルを用意して、心音の周波数成分から血圧のデータに変換することが可能である。この場合、ノイズ除去処理部411の内部から、心音を構成する周波数に関する情報を取り出すことで、心音の周波数成分から血液データへの変換が実現できるので、
図5AのDCT逆変換処理部503又は
図5BのFFT逆変換処理部515又は
図5CのWHT逆変換処理部523、そして
図4の配置復帰処理部413が不要になる。
【0059】
(4)第二実施形態における心拍パルス検出部901は、単独で心拍検出装置として実施可能である。心拍信号を扱う様々な装置やアプリケーションに、容易に心拍パルス検出部901を組み込むことが可能である。
【0060】
本実施形態では、血圧測定システムについて説明した。
第一実施形態の血圧測定システム101では、特に心音信号と心拍信号を用いて心音信号に混入するノイズを除去することが可能な信号処理部302について説明した。この信号処理装置306は、周期的変動を伴う心拍信号のR波を検出して、RR間隔の平均値を求める。そして、心拍信号と同期して周期的変動を伴う心音信号の波形を、強制的にRR間隔の平均値の間隔に再配置する。再配置後、直交変換、直交逆変換を用いたノイズ除去を行い、得られた波形の配置を元に戻す。このように再配置処理をノイズ除去の前後に行うことで、心拍の周期と無関係なノイズ成分を効果的に除去することができる。
【0061】
第二実施形態の心拍パルス検出部901では、心拍信号のR波の検出に機能するピークホールド部903の時定数を適応的に制御することで、R波の誤検出の可能性を極力減らすことができる。この技術は、本明細書で開示する血圧測定システムのみならず、心拍を検出する機器全般で信頼性の向上に寄与する。
【0062】
第三実施形態の車載用血圧測定システム1201では、電波を用いて被測定者に対し非接触にて心拍信号を検出する、生体信号検出装置1202について説明した。発振源1301から第一アンテナ1207を通じて送信する電波を、第二アンテナ1209と第三アンテナ1210とでそれぞれ受信し、同期検波を行う。被測定者、すなわち人体のインピーダンス変化は、無変調電波に対し振幅変調と同等の効果を生じさせ、人体の存在によって生じる受信電波のゲイン変動は、差動増幅器1312によって打ち消される。このように同期検波を用いることにより、被測定者に対し非接触にて心拍信号を検出できる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
例えば、上記した実施形態は本発明をわかりやすく説明するために装置及びシステムの構成を詳細にかつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることは可能であり、更にはある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行するためのソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の揮発性あるいは不揮発性のストレージ、または、ICカード、光ディスク等の記録媒体に保持することができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。