(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに同一周波数および同一時刻に無線通信を行う複数組の送信局と受信局があり、各送受信局間の伝搬路情報に応じてそれぞれ送信ウェイトおよび受信ウェイトを設定し、各受信局が受信する所望信号以外の干渉信号を消去する無線通信システムにおいて、
前記各送信局に接続される中央処理局と、
前記送信局または前記受信局の少なくとも一方で、前記各送受信局間の伝搬路情報を推定し、その推定した伝搬路情報を前記中央処理局に通知する伝搬路情報推定手段と、
前記中央処理局で、前記推定した伝搬路情報と保存してある過去の伝搬路情報に基づき、伝送開始時刻における伝搬路情報を予測する伝搬路情報予測手段と、
前記中央処理局で、前記伝送開始時刻の伝搬路情報に基づき前記送信ウェイトおよび前記受信ウェイトを生成し、さらに生成した送受信ウェイトを保存するとともに、過去の送受信ウェイトを初期値として反復ウェイト計算を行って前記送信ウェイトおよび前記受信ウェイトを生成する送受信ウェイト生成手段と
を備え、
前記送受信ウェイト生成手段は、前記伝送開始時刻を設定し、その伝送開始時刻に合わせて予測した前記伝搬路情報について、前記反復ウェイト計算の終了がその設定時間を超えていれば前記伝送開始時刻を再設定し、その伝送開始時刻に合わせて再予測した伝搬路情報に基づき、前記反復ウェイト計算を再度行って前記送信ウェイトおよび前記受信ウェイトを更新する構成である
ことを特徴とする無線通信システム。
互いに同一周波数および同一時刻に無線通信を行う複数組の送信局と受信局があり、各送受信局間の伝搬路情報に応じてそれぞれ送信ウェイトおよび受信ウェイトを設定し、各受信局が受信する所望信号以外の干渉信号を消去する無線通信方法において、
前記各送信局に接続される中央処理局を備え、
前記送信局または前記受信局の少なくとも一方で、前記各送受信局間の伝搬路情報を推定し、その推定した伝搬路情報を前記中央処理局に通知する第1のステップと、
前記中央処理局で、前記推定した伝搬路情報と保存してある過去の伝搬路情報に基づき、伝送開始時刻における伝搬路情報を予測する第2のステップと、
前記中央処理局で、前記伝送開始時刻の伝搬路情報に基づき前記送信ウェイトおよび前記受信ウェイトを生成し、さらに生成した送受信ウェイトを保存するとともに、過去の送受信ウェイトを初期値として反復ウェイト計算を行って前記送信ウェイトおよび前記受信ウェイトを生成する第3のステップと
を有し、
前記第3のステップは、前記伝送開始時刻を設定し、その伝送開始時刻に合わせて予測した前記伝搬路情報について、前記反復ウェイト計算の終了がその設定時間を超えていれば前記伝送開始時刻を再設定し、その伝送開始時刻に合わせて再予測した伝搬路情報に基づき、前記反復ウェイト計算を再度行って前記送信ウェイトおよび前記受信ウェイトを更新する
ことを特徴とする無線通信方法。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】V. Cadambe and S. Jafar,“Interference alignment and degrees of freedom of the K-user interference channel, ”IEEE Trans. Infomation Theory, vol.54, no.8, pp.3425-3441, Aug. 2008
【非特許文献2】K. Gomadam, V. R. Cadambe and S. A. Jafar,“A Distributed Numerical Approach to Interference Alignment and Applications to Wireless Interference Networks,”IEEE Trans. Inf. Theory, vol.57, no.6, pp.3309-3322, June 2011
【非特許文献3】I. Santamaria, O. Gonzalez, R.W. Heath Jr., and S.W. Peters,“Maximum sum-rate interference alignment algorithms for MIMO channels, ” IEEE Global Communications Conference (GLOBECOM 2010), Miami, FL, USA, Dec. 2010
【非特許文献4】M. Rezaee and M. Guillaud,“Interference channel sum rate optimization on the Grassmann manifold, ”in Proc. of International Symposium on Wireless Communication Systems (ISWCS), 2012
【非特許文献5】M. Guillaud, M. Rezaee and G. Matz, “Interference Alignment via Message-Passing, ”IEEE ICC, pp.5741-5746, June 2012
【非特許文献6】D. Anming, Z. Haixia and Y. Dongfeng, “Achievable rate improvement through channel prediction for interference alignment,” in Proc. Asia-Pacic Conference on Communications (APCC), pp.293-298, Aug. 2013
【非特許文献7】T. Al-Naffouri, “An em-based forward-backward kalman filter for the estimation of time-variant channels in ofdm, ”IEEE Trans. Signal Processing, vol.55, no.7, pp.3924-3930, 2007
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の無線通信システムの構成例を示す。
図1において、互いに同一周波数および同一時刻に無線通信を行うK組(Kは2以上の整数)の送信局1−1〜1−Kと受信局2−1〜2−Kが存在する。その場合、受信局2−i(iは1〜Kの整数)は、無線通信を行う送信局1−iからの所望信号以外に、その他の送信局からK−1個の干渉信号も受信する。
図1では、所望信号を実線矢印で示し、干渉信号を点線矢印で示す。その干渉信号を各受信局で消去できるように、各送信局1−1〜1−Kに送信ウェイトV
1 〜V
K を設定し、各受信局2−1〜2−Kに受信ウェイトU
1 〜U
K を設定する。
【0018】
本発明の無線通信システムでは、各送信局1−1〜1−Kに接続される中央処理局3において、各送信局1−1〜1−Kから送受信ウェイトの生成に必要な伝搬路情報H
1,1 〜H
K,K を有線あるいは無線経路を介して収集し、それに基づいて送受信ウェイトを生成する処理を行い、生成した送受信ウェイトを有線あるいは無線経路を介して各送信局1−1〜1−Kおよび各受信局2−1〜2−Kに通知する。
【0019】
なお、中央処理局3は、一部あるいは全部の送信局の内部に配備することも可能であり、その場合には
図1に示す一部の経路を省くことができる。
【0020】
以下、送信局または受信局の少なくとも一方がトレーニング信号を用いて伝搬路情報を推定し、推定した伝搬路情報に基づいて伝送開始時刻における伝搬路情報を予測し、予測した伝搬路情報に基づいて送受信ウェイトを生成するまでの手順について説明する。伝搬路情報の推定は、送信局1、受信局2、双方で行う3パターンがあり、伝送開始時刻における伝搬路情報の予測は、送信局1、受信局2、中央処理局3のいずれかが行う3パターンがあり、送受信ウェイトの生成は中央処理局3が行うが、それぞれの有効な組合せによる各実施例について以下に説明する。
【0021】
(実施例1)
実施例1は、伝搬路情報の推定と、推定した伝搬路情報に基づき伝送開始時刻における伝搬路情報の予測を受信局が行い、予測した伝搬路情報に基づく送受信ウェイトの生成を中央処理局が行う手順を示す。なお、本発明の実施範囲は、伝搬路情報の予測に用いる方式やアルゴリズムに限定されるものではない。
【0022】
図2は、本発明の実施例1における処理手順を示す。
図2において、送信局は、受信局に向けて伝搬路情報推定に必要なトレーニング信号を含むパケットを送信する(S11)。
【0023】
受信局は、トレーニング信号を含むパケットを受信し、このトレーニング信号に基づき伝搬路情報を推定する(S12)。受信局は、推定した伝搬路情報と保存してある過去の伝搬路情報に基づき、伝送開始時刻における伝搬路情報を予測する(S13)。受信局は、送信局に向けて予測した伝送開始時刻の伝搬路情報を含むパケットを送信する(S14)。
【0024】
送信局は、伝送開始時刻の伝搬路情報を含むパケットを受信し、中央処理局へ通知する(S15)。
【0025】
中央処理局は、伝送開始時刻の伝搬路情報に基づき、保存してある過去のウェイト情報を初期値として送受信ウェイトを生成する(S16)。なお、過去のウェイト情報がなければ初期値設定を行う。
【0026】
ただし、受信局がトレーニング信号を受信する時刻から伝送開始時刻までには、受信局の伝搬路情報推定所要時間、受信局の伝搬路情報予測所要時間、受信局から送信局へフィードバック所要時間、中央処理局の反復ウェイト計算所要時間、送信局の通信チャネル獲得所要時間などがすべて含まれるものとする。
【0027】
実施例1において、受信局が伝搬路情報の予測を行うメリットは次の通りである。
(1) 送信局と受信局との間のやり取りが時分割複信(TDD:Time Division Duplex)モード、あるいは周波数分割複信(FDD:Frequency Division Duplex )モードのいずれにも対応できるので、適用できる通信シナリオの幅が広い。
(2) 受信局で推定した伝搬路情報を送信局へフィードバックし、送信局でその推定した伝搬路情報に基づき伝搬路情報の予測を行う手法に比べて、フィードバックをせずに早いタイミングで伝搬路情報の予測が開始できることと、フィードバックエラーが回避できることから、保存してある過去に推定した伝搬路情報の回数が少ないあるいは予測アルゴリズムの次数が制限される場合では、比較的に有効な予測が期待できる。
【0028】
(実施例2)
実施例2は、伝搬路情報の推定を受信局が行い、推定した伝搬路情報に基づき伝送開始時刻における伝搬路情報の予測を送信局が行い、予測した伝搬路情報に基づく送受信ウェイトの生成を中央処理局が行う手順を示す。なお、本発明の実施範囲は、伝搬路情報の予測に用いる方式やアルゴリズムに限定されるものではない。
【0029】
図3は、本発明の実施例2における処理手順を示す。
図3において、送信局は、受信局に向けて伝搬路情報推定に必要なトレーニング信号を含むパケットを送信する(S21)。
【0030】
受信局は、トレーニング信号を含むパケットを受信し、このトレーニング信号に基づき伝搬路情報を推定する(S22)。受信局は、送信局に向けて推定した伝搬路情報を含むパケットを送信する(S23)。
【0031】
送信局は、推定した伝搬路情報を含むパケットを受信し、その伝搬路情報と保存してある過去の伝搬路情報に基づき、伝送開始時刻における伝搬路情報を予測し、中央処理局へ通知する(S24)。
【0032】
中央処理局は、伝送開始時刻の伝搬路情報に基づき、保存してある過去のウェイト情報を初期値として送信受信ウェイトを生成する(S25)。なお、過去のウェイト情報がなければ初期値設定を行う。
【0033】
ただし、受信局がトレーニング信号を受信する時刻から伝送開始時刻までには、受信局の伝搬路情報推定所要時間、受信局から送信局へフィードバック所要時間、送信局の伝搬路情報予測所要時間、中央処理局の反復ウェイト計算所要時間、送信局の通信チャネル獲得所要時間などがすべて含まれるものとする。
【0034】
実施例2において、送信局が伝搬路情報の予測を行うメリットは次の通りである。
(1) 伝搬路情報の予測に必要な過去の伝搬路情報を受信局で保存する必要はなくなる。例えば、送信局は無線セルの基地局、受信局は無線セルの端末である場合では、端末に比べ基地局の方が高いハードウェアの調整幅があるため、受信局の記録負荷および計算負荷を軽減できる。
(2) 送信局は無線セルの基地局、受信局は無線セルの端末である場合では、端末に比べ基地局の方が高い記録能力および計算能力がある。従って、過去の伝搬路情報の量を増やしたり、予測アルゴリズムの次数を増やしたりすることで、受信局より高い精度の伝搬路情報の予測が可能である。
【0035】
(実施例3)
実施例3は、伝搬路情報の推定を送信局が行い、推定した伝搬路情報に基づき伝送開始時刻における伝搬路情報の予測を送信局が行い、予測した伝搬路情報に基づく送受信ウェイトの生成を中央処理局が行う手順を示す。なお、本発明の実施範囲は、伝搬路情報の予測に用いる方式やアルゴリズムに限定されるものではない。
【0036】
図4は、本発明の実施例3における処理手順を示す。
図4において、受信局は、送信局に向けて伝搬路情報推定に必要なトレーニング信号を含むパケットを送信する(S31)。
【0037】
送信局は、トレーニング信号を含むパケットを受信し、このトレーニング信号に基づき伝搬路情報を推定する(S32)。送信局は、推定した伝搬路情報と保存してある過去の伝搬路情報に基づき、伝送開始時刻における伝搬路情報を予測し、中央処理局へ通知する(S33)。
【0038】
中央処理局は、伝送開始時刻の伝搬路情報に基づき、保存してある過去のウェイト情報を初期値として送受信ウェイトを生成する(S34)。なお、過去のウェイト情報がなければ初期値設定を行う。
【0039】
ただし、送信局がトレーニング信号を受信する時刻から伝送開始時刻までには、送信局の伝搬路情報推定所要時間、送信局の伝搬路情報予測所要時間、中央処理局の反復ウェイト計算所要時間、送信局の通信チャネル獲得所要時間などがすべて含まれるものとする。
【0040】
実施例3は、送信局と受信局との間のやり取りが時分割複信(TDD)モードで行うことを想定して、送信局から受信局へ向かう伝搬路情報と受信局から送信局へ向かう伝搬路情報の交換性を利用し、送信局において送信局から受信局へ向かう伝搬路情報を推定している。また、実施例2に比べて、送信局がトレーニング信号を受信する時刻から伝送開始時刻までの前処理が少ないことから、より早いタイミングで伝搬路情報の予測を開始することができる。
【0041】
(実施例4)
実施例4は、伝搬路情報の推定を受信局および送信局が行い、推定した伝搬路情報に基づき伝送開始時刻における伝搬路情報の予測を送信局が行い、予測した伝搬路情報に基づく送受信ウェイトの生成を中央処理局が行う手順を示す。なお、本発明の実施範囲は、伝搬路情報の予測に用いる方式やアルゴリズムに限定されるものではない。
【0042】
図5は、本発明の実施例4における処理手順を示す。
図5において、送信局は、受信局に向けて伝搬路情報推定に必要なトレーニング信号を含むパケットを送信する(S41)。
【0043】
受信局は、トレーニング信号を含むパケットを受信し、このトレーニング信号に基づき伝搬路情報を推定する(S42)。受信局は、送信局に向けて推定した伝搬路情報およびトレーニング信号を含むパケットを送信する(S43)。
【0044】
送信局は、受信局で推定した伝搬路情報およびトレーニング信号を含むパケットを受信し、このトレーニング信号に基づき伝搬路情報を推定する(S44)。送信局は、受信局と送信局の一方または双方で推定した伝搬路情報と、保存してある過去の伝搬路情報に基づき、伝送開始時刻における伝搬路情報を予測し、中央処理局へ通知する(S45)。
【0045】
中央処理局は、伝送開始時刻の伝搬路情報に基づき、保存してある過去のウェイト情報を初期値として送受信ウェイトを生成する(S46)。なお、過去のウェイト情報がなければ初期値設定を行う。
【0046】
ただし、受信局がトレーニング信号を受信する時刻から伝送開始時刻までには、受信局の伝搬路情報推定所要時間、受信局から送信局へフィードバック所要時間、送信局の伝搬路情報推定所要時間、送信局の伝搬路情報予測所要時間、中央処理局の反復ウェイト計算所要時間、送信局の通信チャネル獲得所要時間などがすべて含まれるものとする。
【0047】
実施例4は、送信局と受信局との間のやり取りが時分割複信(TDD)モードで行うことを想定して、送信局から受信局へ向かう伝搬路情報と受信局から送信局へ向かう伝搬路情報の交換性を利用している。また、受信局と送信局の双方で推定した伝搬路情報を利用することにより、伝搬路推定の精度を高めて伝送開始時刻における伝搬路情報の予測に用いることができる。
【0048】
ところで、実施例1〜4では、トレーニング信号を受信する時刻から伝送開始時刻までには、伝搬路情報推定の所要時間、推定した伝搬路情報のフィードバックの所要時間、伝搬路情報予測の所要時間、反復ウェイト計算の所要時間などをすべて含む必要がある。その中で、反復ウェイト計算の所要時間は他の所要時間と違って、確定的な時間ではなく確率的な時間である。すなわち、反復ウェイト計算は確率的な振る舞いをする伝搬路情報や反復計算の初期値設定などによって終了までの所要時間(所要反復回数)が確率的に変動する。
【0049】
この特徴を踏まえて、実施例1〜4では、確率的に変動する反復ウェイト計算の所要時間の上限値を使って、伝送開始時刻を設定している。その場合、反復ウェイト計算が予定より早く収束して計算が完了した場合では、すぐにIA伝送を開始できずに伝送開始時刻までに待つ必要がある。さらに、ウェイト計算の所要時間の上限値を使って伝送開始時刻を設定すると、より遠い将来の伝搬路情報を予測しなければならないため、予測した伝搬路情報の正確さおよびその予測した伝搬路情報に基づく送受信ウェイトの正確さも劣化するおそれがある。
【0050】
したがって、以下に示す実施例5〜7では、実施例2〜4において送信局が行っていた伝送開始時刻における伝搬路情報の予測を中央処理局が行うようにし、反復ウェイト計算の所要時間の確率的な振る舞いに対して、伝送開始時刻の設定および伝搬路情報の予測を動的に行うことを特徴とする。
【0051】
具体的には、まず反復ウェイト計算の所要時間を短く見積もって、対応する伝送開始時刻の設定および伝搬路情報の予測を行う。ここで、見積もった所要時間内で(予測した伝搬路情報に基づく)送受信ウェイト更新が収束して計算が完了できれば、直ちに設定した伝送開始時刻からIA伝送を始める。一方、見積もった所要時間内で(予測した伝搬路情報に基づく)送受信ウェイト更新が収束せず計算が完了できなければ、反復ウェイト計算の所要時間をより長い時間に見直し、対応する伝送開始時刻を更新した上で、伝搬路情報の再予測を行う。そして、再予測した伝搬路情報に基づき、反復ウェイト計算を続けていく。
【0052】
(実施例5)
実施例5は、伝搬路情報の推定を受信局が行い、推定した伝搬路情報に基づき伝送開始時刻における伝搬路情報の予測および予測した伝搬路情報に基づく送受信ウェイトの生成を中央処理局が行う手順を示す。なお、本発明の実施範囲は、伝搬路情報の予測に用いる方式やアルゴリズムに限定されるものではない。
【0053】
図6は、本発明の実施例5における処理手順を示す。実施例5は、実施例2における送信局と中央処理局の処理手順を変更するものである。
図6において、送信局は、受信局に向けて伝搬路情報推定に必要なトレーニング信号を含むパケットを送信する(S51)。
【0054】
受信局は、トレーニング信号を含むパケットを受信し、このトレーニング信号に基づき伝搬路情報を推定する(S52)。受信局は、送信局に向けて推定した伝搬路情報を含むパケットを送信する(S53)。
【0055】
送信局は、推定した伝搬路情報を含むパケットを受信し、中央処理局へ通知する(S54)。
中央処理局は、伝送開始時刻を設定し、推定した伝搬路情報と保存してある過去の伝搬路情報に基づき、設定した伝送開始時刻における伝搬路情報を予測する。さらに、予測した伝搬路情報に基づき、保存してある過去のウェイト情報を初期値として送受信ウェイトを生成する。なお、過去のウェイト情報がなければ初期値設定を行う。そして、反復ウェイト計算時間が設定時間を超えた場合には伝搬路情報の再予測を行い、さらに終了条件を満たすまで送受信ウェイトの更新を繰り返す(S55)。
【0056】
終了条件の設定としては、残留干渉成分の制限値や最大伝送開始時刻や最大送受信ウェイト更新回数など実システムの要求に合せて多様なものが考えられる。本発明の実施範囲は終了条件の設定によって制限されるものではない。
【0057】
ただし、受信局がトレーニング信号を受信する時刻から伝送開始時刻までには、受信局の伝搬路情報推定所要時間、受信局から送信局へフィードバック所要時間、送信局から中央処理局への情報通知時間、中央処理局の伝搬路情報予測所要時間および反復ウェイト計算所要時間、送信局の通信チャネル獲得所要時間などがすべて含まれるものとする。
【0058】
図7は、実施例5における中央処理局のステップS55の処理手順を示す。
図7(a) において、伝送開始時刻を設定し、その伝送開始時刻に合わせて伝搬路情報を予測する(S101 )。次に、以下の手順で送受信ウェイトの更新を行う。送信ウェイトと予測した伝搬路情報に基づき、受信局における干渉行列を更新する(S102 )。受信局における干渉行列に基づき、受信ウェイトを更新する(S103 )。受信ウェイトと予測した伝搬路情報に基づき、送信局における干渉行列を更新する(S104 )。送信局における干渉行列に基づき、送信ウェイトを更新する(S105 )。
【0059】
次に、反復ウェイト計算が終わった時点で、ステップS101 で設定した伝送開始時刻の設定時間を超えたか否かをチェックする(S106 )。反復ウェイト計算が終わった時点で設定時間を超えていれば、設定した伝送開始時刻に合わせて予測した伝搬路情報が陳腐化しているので、ステップS101 に戻り、再設定した伝送開始時刻に合せて伝搬路情報を再予測する。これにより、反復ウェイト計算の収束スピードに応じて伝搬路情報の予測回数を制御することができる。
【0060】
一方、反復ウェイト計算が終わった時点で設定時間を超えていなければ、更新された送受信ウェイトが上記の終了条件を満たすか否かを判定する(S107 )。ここで、終了条件を満たしていれば処理を終了し、終了条件を満たしていなければ、ステップS102 に戻って送受信ウェイトの更新を繰り返す。
【0061】
図7(b) に示す処理手順は、
図7(a) に示す受信ウェイトを更新するステップS102 ,S103 と、送信ウェイトを更新するステップS104 ,S105 の順番を逆にし、先に送信ウェイトを更新するステップS104 ,S105 を行い、次に受信ウェイトを更新するステップS102 ,S103 を行う。
【0062】
また、
図7の処理手順で用いる受信局における干渉行列および送信局における干渉行列は、例えば非特許文献2〜5に示されるような公知の多様な定義が可能である。なお、本発明の実施範囲は干渉行列の定義によって制限されるものではない。
【0063】
実施例5において、中央処理局が伝搬路情報の予測を行うメリットは次の通りである。(1) 伝搬路情報の予測に必要な過去の伝搬路情報は、受信局または送信局で保存する必要がなく、送信局や受信局の記録負荷および計算負荷を軽減できる。
(2) 中央処理局は、送信局および受信局から独立してより高いハードウェアの調整幅があるため、高度な記録能力と計算能力を備えることで過去の伝搬路情報の回数を増やしたり、予測アルゴリズムの次数を増やしたりすることで、受信局または送信局より高い精度の伝搬路情報の予測が可能である。
(3) 受信局または送信局が単独で個別の伝搬路情報を予測する場合に比べ、中央処理局では統合的に全部の伝搬路情報の予測を行うため、単独予測より高い予測精度が得られる。
【0064】
(実施例6)
実施例6は、伝搬路情報の推定を送信局が行い、推定した伝搬路情報に基づき伝送開始時刻における伝搬路情報の予測および予測した伝搬路情報に基づく送受信ウェイトの生成を中央処理局が行う手順を示す。なお、本発明の実施範囲は、伝搬路情報の予測に用いる方式やアルゴリズムに限定されるものではない。
【0065】
図8は、本発明の実施例6における処理手順を示す。実施例6は、実施例3における送信局と中央処理局の処理手順を変更するものである。
図8において、受信局は、送信局に向けて伝搬路情報推定に必要なトレーニング信号を含むパケットを送信する(S61)。
【0066】
送信局は、トレーニング信号を含むパケットを受信し、このトレーニング信号に基づき伝搬路情報を推定し、中央処理局へ通知する(S62)。
中央処理局は、伝送開始時刻を設定し、推定した伝搬路情報と保存してある過去の伝搬路情報に基づき、設定した伝送開始時刻における伝搬路情報を予測する。さらに、予測した伝搬路情報に基づき、保存してある過去のウェイト情報を初期値として送受信ウェイトを生成する。なお、過去のウェイト情報がなければ初期値設定を行う。そして、反復ウェイト計算時間が設定時間を超えた場合には伝搬路情報の再予測を行い、さらに終了条件を満たすまで送受信ウェイトの更新を繰り返す(S63)。
【0067】
このステップS63は、実施例5のステップS55と同じであり、
図7(a),(b) に示す送受信ウェイトの更新処理が行われる。
終了条件の設定としては、残留干渉成分の制限値や最大伝送開始時刻や最大送受信ウェイト更新回数など実システムの要求に合せて多様なものが考えられる。本発明の実施範囲は終了条件の設定によって制限されるものではない。
【0068】
ただし、上記の送信局がトレーニング信号を受信する時刻から伝送開始時刻までには、送信局の伝搬路情報推定所要時間、送信局から中央処理局への情報通知時間、中央処理局の伝搬路情報予測所要時間および反復ウェイト計算所要時間、送信局の通信チャネル獲得所要時間などがすべて含まれるものとする。
【0069】
(実施例7)
実施例7は、伝搬路情報の推定を受信局および送信局が行い、推定した伝搬路情報に基づき伝送開始時刻における伝搬路情報の予測および予測した伝搬路情報に基づく送受信ウェイトの生成を中央処理局が行う手順を示す。なお、本発明の実施範囲は、伝搬路情報の予測に用いる方式やアルゴリズムに限定されるものではない。
【0070】
図10は、本発明の実施例7における処理手順を示す。実施例7は、実施例4における送信局と中央処理局の処理手順を変更するものである。
図10において、送信局は、受信局に向けて伝搬路情報推定に必要なトレーニング信号を含むパケットを送信する(S71)。
【0071】
受信局は、トレーニング信号を含むパケットを受信し、このトレーニング信号に基づき伝搬路情報を推定する(S72)。受信局は、送信局に向けて推定した伝搬路情報およびトレーニング信号を含むパケットを送信する(S73)。
【0072】
送信局は、受信局で推定した伝搬路情報およびトレーニング信号を含むパケットを受信し、このトレーニング信号に基づき伝搬路情報を推定し、受信局と送信局の一方または双方で推定した伝搬路情報を中央処理局へ通知する(S74)。
【0073】
中央処理局は、伝送開始時刻を設定し、推定した伝搬路情報と保存してある過去の伝搬路情報に基づき、設定した伝送開始時刻における伝搬路情報を予測する。さらに、予測した伝搬路情報に基づき、保存してある過去のウェイト情報を初期値として送受信ウェイトを生成する。なお、過去のウェイト情報がなければ初期値設定を行う。そして、反復ウェイト計算時間が設定時間を超えた場合には伝搬路情報の再予測を行い、さらに終了条件を満たすまで送受信ウェイトの更新を繰り返す(S75)。
【0074】
このステップS75は、実施例5のステップS55と同じであり、
図7(a),(b) に示す送受信ウェイトの更新処理が行われる。
終了条件の設定としては、残留干渉成分の制限値や最大伝送開始時刻や最大送受信ウェイト更新回数など実システムの要求に合せて多様なものが考えられる。本発明の実施範囲は終了条件の設定によって制限されるものではない。
【0075】
ただし、上記の受信局がトレーニング信号を受信する時刻から伝送開始時刻までには、受信局および送信局の伝搬路情報推定所要時間、受信局から送信局へフィードバック所要時間、送信局から中央処理局への情報通知時間、中央処理局の伝搬路情報予測所要時間および反復ウェイト計算所要時間、送信局の通信チャネル獲得所要時間などがすべて含まれるものとする。
【0076】
(評価例)
図10は、本発明を評価するシミュレーション結果を示す。
図10(a) において、定量数値評価に使用した諸元を示し、3つの送受信局ペアがあって、ここの送受信局は2本のアンテナを備えている。また、無線伝搬路の時変動として最大ドプラー周波数を8.8Hz とする。
【0077】
ここでは、
図1に示す無線通信システムの構成において、理想IA技術、従来のIA技術、本発明の実施例1によるIA技術を適用した場合の伝送容量特性を示す。理想IA技術とは、送信局が常に伝送開始時刻の伝搬路情報が完璧に把握でき、それに基づいてIA送受信ウェイトを生成することを意味している。
図10(b) から本発明技術によって生成した送受信ウェイトによる伝送容量は、理想IA技術とほぼ同じであることが確認できる。一方、従来IA技術(非特許文献2)では、無線伝搬路の時変動を送受信ウェイト生成の中に十分反映していないため、本発明IA技術に比べて大幅の容量特性の劣化が確認できる。
【0078】
本発明の無線通信システムの送信局、受信局、中央処理局において、伝搬路情報の推定処理および予測処理と、送受信ウェイトの生成処理は、コンピュータと上記の処理を行うコンピュータプログラムにより実現することができる。このコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶することも、ネットワークを介して提供することも可能なものである。