【実施例】
【0020】
図1は本発明を適用したウェーハ搬送システムの一構成例を示すブロック図である。このシステムでは、システム全体を制御する中心的処理機能を担う制御部11と、ウェーハWの加工を行うためのチャックテーブル12等を有している。
【0021】
前記制御部11は、例えばコンピュータである。その制御部11には、ウェーハ真空吸着手段13と、ウェーハ浮上手段14と、ウェーハクランプ保持手段15と、エア供給手段16と、搬送手段17と、が制御可能に接続されている。
【0022】
前記チャックテーブル12は、本実施例では
図2に示すように電子デバイスが設けられた薄い円板状のウェーハWが載せられるものである。チャックテーブル12には、その載せられたウェーハWを真空チャックして保持する前記真空吸着手段13と、前記真空チャックが解かれたウェーハWの下面に対してチャックテーブル12側から水を噴出してウェーハWをチャックテーブル12上から浮かす前記ウェーハ浮上手段14と、前記真空チャックが解かれているウェーハWの下面に対してチャックテーブル12側からエアを噴出してウェーハWとチャックテーブル12間に存在する水を除去する前記エア供給手段16と、が接続されている。したがって、チャックテーブル12のウェーハ載置面12aには、図示しないが、ウェーハWの下面を真空チャックするエア吸入口、ウェーハWの下面に向けて水を噴出する水噴出口、ウェーハWの下面に向けてエアを噴出するエア噴出口がそれぞれ設けられている。なお、これらエア吸入口、水噴出口、エア噴出口は、互いに共用するようにして設置される場合もある。
【0023】
前記ウェーハ浮上手段14は、図示しない水噴出装置(水ブロー機構)と前記チャックテーブル12の水噴出口に接続された同じく図示しない水供給管とを有している。そして、制御部11の制御により水噴出装置で圧力調整された水を、水噴出口からウェーハWの下面に向けて噴出(水ブロー)することにより、ウェーハWの全体をチャックテーブル12の載置面12a上から浮上させることができるようになっている。なお、ここでの水圧は、少なくとも前記ウェーハクランプ保持手段15における後述するクランプ爪部21の下側爪22aをウェーハWの下面側に差し込み可能な隙間ができるように、例えば0.2〜0.3Mpほどで行われる。
【0024】
前記エア供給手段16は、図示しないエアコンプレッサ(エアブロー機構)と前記チャックテーブル12のエア噴出口に接続された同じく図示しないエア供給管とを有している。そして、制御部11の制御によりエアコンプレッサで圧力調整されたエアを、水噴出口からウェーハWの下面に向けて噴出(エアブロー)することにより、ウェーハWとチャックテーブル12の載置面12aの間に存在する水を除去して、ウェーハWとウェーハ載置面間に働く表面張力を無くすことができるようになっている。なお、ここでのエア圧は、20〜30Kpaほどで行われる。
【0025】
前記搬送手段17及び前記ウェーハクランプ保持手段15は、
図2及び
図3にチャックテーブル12及びウェーハWと共に概略構成が示されている。本実施例では、チャックテーブル12は円板状に形成されており、その載置面12aも円板状に形成されている。
【0026】
前記搬送手段17は、一端側(基端側)17aが例えばロボットアーム等に固定されており、他端側(自由先端側17b)には前記ウェーハクランプ保持手段15が取り付けられている。その搬送手段17は例えばロボットアームの動きに連動して、
図2及び
図3に示す動作位置から図示しない所要の位置に前記ウェーハクランプ手段15と共に移動可能になっている。すなわち、このウェーハクランプ手段15との移動により、加工処理前のウェーハWを前工程位置からチャックテーブル12上に移動させ、加工処理後のウェーハWをチャックテーブル12上から所要の位置に設けられた後工程位置へ移動させることができるようになっている。
【0027】
前記ウェーハクランプ保持手段15は、
図2及び
図3に示すように、搬送手段17の自由先端17b側の下面側に回転可能に取り付けられた本体部15aから2方向に延ばされた状態にして水平に取り付けられている爪用の第1アーム18aと、その第1アーム18aの先端と直角に交差して水平に取り付けられている1対の爪用の第2アーム18bと、爪用の第1アーム18aと交差して本体部15aから2方向に延ばされた状態にして水平に取り付けられている高さ調整用の第1アーム19aと、その第1アーム19aの先端と直角に交差して水平に取り付けられている1対の高さ調整用の第2アーム19bと、を有している。
【0028】
前記1対の爪用の第2アーム18bの各両端部には、それぞれ下側に向かって突出されたクランプ爪部21が取り付けられている。これら4個クランプ爪部21は、前記位置決めピン20と外周方向にそれぞれ所要量ずつずらされ、かつチャックテーブル12におけるウェーハ載置面12aの後述するウェーハ配置領域SW(
図4参照)の直ぐ外側に対応して設けられている。
【0029】
また、各クランプ爪部21は、
図4に示すように、チャックテーブル12におけるウェーハ載置12a上で、かつ、ウェーハWが配置されている領域SW(以下、これを「ウェーハ配置領域SW」と言う)の外側から内側の領域に移動可能な下側爪22aと、セット時には常にウェーハ配置領域SWの内側に配置されている上側爪22bと、下側爪22aと上側爪22bとの間を接続している垂直面部22cとを一体に有している。そして、それら下側爪部22a、上側爪部22b、垂直面部22cをウェーハクランプ保持手段15の内側に向けて配置している。また、下側爪22aは、ウェーハWと対向する面が内側から外側に向かって昇るように傾斜している傾斜面として形成されており、上側爪22bは、ウェーハWと対向する面が内側から外側に向かって昇るように傾斜している傾斜面として形成されている。
【0030】
そして、これらクランプ爪部21は、爪用の第1アーム18aを移動制御させることにより、前記ウェーハ配置領域SWの外側から内側の領域内に移動したクランプ位置(
図4中に実線で示す位置)と、下側爪22aが前記ウェーハ配置領域SWの内側から外側の領域に移動した非クランプ位置(
図4中に二点鎖線で示す位置)とに、択一的に切り替え移動可能になっている。
【0031】
図5は、前記制御部11に設定されているプログラムに従って処理される、本実施例におけるウェーハ搬送システムの処理手順の一例を示す図である。以下、
図5を使用して本実施例におけるウェーハ搬送システムの作用を手順(1)〜(6)の順に説明する。
【0032】
手順(1):チャックテーブル12のウェーハ載置面12a上にセットされたウェーハWの加工が終了したら、制御部11は、ウェーハ真空吸着手段13による真空チャックを停止する。
【0033】
手順(2):次いで、制御部11は、前記非クランプ位置にクランプ爪部21を配置させた状態で、ウェーハクランプ手段15をチャックテーブル12のウェーハ載置面12aと略当接する位置、すなわちウェーハWがウェーハ載置面12aから浮上されたときに、クランプ爪部21の下側爪22がウェーハWの下面に入り込むことが可能な位置まで下降させる。この下降された後における各クランク爪部21は、
図2中に二点鎖線で示すように、それぞれ下側爪22aがウェーハ配置領域SWの外側に配置され、上側爪22bがウ
ェーハ配置領域SWの内側に配置された状態でセットされる。
【0034】
手順(3):次に、制御部11は、ウェーハ浮上手段14を動作させ、水噴出装置で圧力調整された水を、水噴出口からウェーハWの下面に向けて噴出させてウェーハWの全体をチャックテーブル12の載置面12a上から浮上させる。このとき、各クランプ爪部21の上側爪22bがウェーハ配置領域SW内に突出しているので、載置面12aから浮上されたウェーハWは、上側爪22bの傾斜面に当接し、その傾斜面によって中心側に移動される。
【0035】
手順(4):続いて、制御部11は、ウェーハクランプ手段15を動作させ、爪用の第1アーム18aを介してクランプ爪部21を前記非クランプ位置から前記クランプ位置に移動させる。この場合、ウェーハWはウェーハ浮上手段14によりチャックテーブル12の載置面12aから浮上されているので、クランプ爪部21は下側爪22aがウェーハW
の下面にスムーズに入り込む状態となって移動される。そして、クランプ爪部21の上下の爪22a、22bで上方向の移動がそれぞれ規制されるとともに、垂直面部22cが、ウェーハWの周面に当接されて、クランプ爪部21によってウェーハWの外周周縁部、すなわちエッジ部分がクランプされる。また、ウェーハWがクランプ爪部21でクランプされたら、ウェーハ浮上手段14による水の噴出を停止させる。
【0036】
手順(5):続いて、制御部11は、クランプ爪部21を前記クランプ位置に保持したままエア供給手段16を動作させ、エアコンプレッサで圧力調整されたエアを、エア噴出口からウェーハWの下面に向けて噴出する。そして、このエアの噴出により、ウェーハWとチャックテーブル12のウェーハ載置面12aの間に存在する水を除去して、ウェーハWとウェーハ載置面12a間の表面張力を無くす。
【0037】
手順(6):次いで、制御部11は、クランプ爪部21をクランプ位置に保持したまま、搬送手段17を動作させ、ウェーハクランプ保持手段15をウェーハWと共に上方に持ち上げてウェーハWをチャックテーブル12から引き剥がす。続いて、基端側17bを支点として搬送手段17を水平回転させ、ウェーハWを次工程へ搬送させる。したがって、ここでのウェーハWの引き剥がしは、手順(5)においてウェーハWとチャックテーブル12のウェーハ載置面12aとの間の水を除去して表面張力を無くしているので、小さな引き剥がし力でウェーハWをチャックテーブル12から簡単に引き剥がすことができる。これにより、引き剥がし時にウェーハWに与える不具合を無くすことができる。
【0038】
上述したように、本実施例のウェーハ搬送システムによれば、チャックテーブル12上からウェーハWをクランプする際、ウェーハ浮上手段14の水による浮上と、エア供給手段16のエアによる表面張力の除去とで、ウェーハWとチャックテーブル12間の拘束力を取り除いて小さな力でウェーハWを引き剥がすことができるので、引き剥がし時にウェーハWに与える不具合を無くすことができる。また、クランプ爪部21はウェーハWのエッジ部分をクランプし、引き剥がしから所要位置への搬送に至るまで、回路等が形成されている表面には一切接触することがないので、接触により与える汚れなど不具合を無くすことができる。
【0039】
さらに、ウェーハWのエッジ部分をクランプ可能な位置にウェーハクランプ保持手段15のクランプ爪部21を配置し、その後、ウェーハ浮上手段14により水を噴出してウェーハWをウェーハ載置面12aから浮かすと、浮いたウェーハWのエッジ部分は外周方向に所要の間隔で設けられている各クランプ爪部21における上側爪22bの傾斜面とそれぞれ当接し、その上側爪22bの傾斜面に当接したウェーハWはその傾斜面によって中心側に移動して位置決めされるので、常に同一位置にてクランプすることができる。
【0040】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。例えば、上記実施例では、クランプ爪部21を4個設けた構造を開示したが、3個以上であれば幾つであってもよい。