特許第6392647号(P6392647)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392647
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】袋入り冷凍卵とじ
(51)【国際特許分類】
   A23L 15/00 20160101AFI20180910BHJP
   A23L 3/37 20060101ALI20180910BHJP
   A23L 29/20 20160101ALI20180910BHJP
【FI】
   A23L15/00 D
   A23L3/37 A
   A23L29/20
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-240787(P2014-240787)
(22)【出願日】2014年11月28日
(65)【公開番号】特開2016-101114(P2016-101114A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2017年4月27日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年7月1日にhttp://www.kewpie.co.jp/prouse/products/detail.php?p_cd=0030480のホームページに掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年7月1日にhttp://www.kewpie.co.jp/prouse/products/detail.php?p_cd=0030520のホームページに掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年8月20日にミヤコフーズ株式会社に販売
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木下 雄一朗
【審査官】 福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−220502(JP,A)
【文献】 特開2010−220504(JP,A)
【文献】 特開2010−220501(JP,A)
【文献】 特開2013−118863(JP,A)
【文献】 特開2002−000232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 15/00−15/10
A23L 3/00− 3/54
A23L 29/00−29/30
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱凝固卵、調味液、及び卵白様ゲルを含有する袋入り冷凍卵とじであって、
前記卵白様ゲルが乳化液のゲル化物であり、かつアルギン酸カルシウムを含有し、
前記丼物用冷凍卵とじを解凍した際に、最長辺が3cm超の卵白様ゲルを含む、
袋入り丼物用冷凍卵とじ。
【請求項2】
請求項1に記載の袋入り冷凍卵とじにおいて、
加熱凝固卵の20%以上100%以下が最長辺1cm以上3cm以下の小片であることを
特徴とする、
袋入り丼物用冷凍卵とじ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の袋入り冷凍卵とじにおいて、
卵黄様ソースをさらに含有することを特徴とする、
袋入り丼物用冷凍卵とじ。
【請求項4】
加熱凝固卵、調味液、及び卵白様ゲルを含有する袋入り冷凍卵とじの製造方法であって、
加熱凝固卵及び調味液を充填する工程1、
水溶性カルシウム塩含有組成物とアルギン酸ナトリウムを含有した乳化液を接触させなが
ら袋に充填する工程2、
袋詰め後冷凍処理を施す工程3、
を含む、
袋入り冷凍卵とじの製造方法。
【請求項5】
請求項4の袋入り冷凍卵とじの製造方法において、
工程1の充填工程を行った後に、工程2の充填工程を行う、
袋入り丼物用冷凍卵とじの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋入り冷凍卵とじに関する。より具体的には、解凍後ご飯やうどん等にかけるだけで、卵とじ部分が手作りに近い食感と外観の丼物等が得られる袋入り冷凍卵とじに関する。
【背景技術】
【0002】
かつ丼や親子丼等の卵を使った丼は、例えば、肉や玉ネギ等の具材を割り下で煮た後、卵でとじ、得られた丼物の具をご飯の上に載せて作る。家庭で丼物を手作りする場合、卵の状態を確認しながら適宜調整し加熱調理を施す。その場合、卵の凝固物に加え、半熟状の卵白部や卵黄部が存在すると、より一層美味しそうに見えるため、消費者から好まれている。
【0003】
一方、レストラン等の外食で提供する場合、素早くかつ大量に提供する必要があるため、あらかじめ一食分毎に袋詰めされた調理済みの冷凍卵とじを、袋のまま解凍し、それをご飯等に載せて提供することがある。
【0004】
ただし、その場合、殺菌や解凍時の加熱により、卵黄部、卵白部が凝固してしまい、半熟状の外観を有する卵とじを得ることが困難であった。
そのような問題を解決するため、卵白様ゲル及び卵黄様ゲルを用いることで卵白の半熟感を出す方法が提案されている。
しかし、ゲルを充填する場合、個包装毎に一定量充填することが難しい問題や、食感や外観が手作りの半熟卵白及び卵黄とは異なる問題があり、さらなる改良が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−118863
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、袋詰めされた冷凍卵とじにおいて、加熱凝固卵、調味液、及び卵白様ゲルを含有し、手作りに近い食感と外観の冷凍卵とじを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、
水溶性カルシウム塩含有組成物と水溶性アルギン酸ナトリウムを含有する乳化液を接触させながら袋に充填することにより、手作りに近い食感と外観の冷凍卵とじを調製できることを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0008】
すなわち本発明は、
(1)加熱凝固卵、調味液、及び卵白様ゲルを含有する袋入り冷凍卵とじであって、
前記卵白様ゲルがアルギン酸カルシウムを含有し、
前記丼物用冷凍卵とじを解凍した際に、最長辺が3cm超の卵白様ゲルを含む、
袋入り丼物用冷凍卵とじ、
(2)(1)に記載の袋入り冷凍卵とじにおいて、
加熱凝固卵の20%以上100%以下が最長辺1cm以上3cm以下の小片であることを特徴とする、
袋入り冷凍卵とじ、
(3)(1)又は(2)に記載の袋入り冷凍卵とじにおいて、
卵黄様ソースをさらに含有することを特徴とする、
袋入り冷凍卵とじ、
(4)加熱凝固卵、調味液、及び卵白様ゲルを含有する袋入り冷凍卵とじの製造方法であって、
加熱凝固卵及び調味液を充填する工程1、
水溶性カルシウム塩含有組成物とアルギン酸ナトリウムを含有した乳化液を接触させながら袋に充填する工程2、
袋詰め後冷凍処理を施す工程3、
を含む、
袋入り冷凍卵とじの製造方法、
(5)(4)の袋入り冷凍卵とじの製造方法において、
工程1の充填工程を行った後に、工程2の充填工程を行う、
袋入り冷凍卵とじの製造方法、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、手作りに近い外観の冷凍卵とじを提供できる。
より具体的には、加熱凝固卵、調味液、及び卵白様ゲルを含有する袋入り丼物用冷凍卵とじであって、前記卵白様ゲルがアルギン酸カルシウムを含有し、前記丼物用冷凍卵とじを解凍した際に、最長辺が3cm超の卵白様ゲルを含む、冷凍卵とじを提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の袋入り冷凍卵とじを詳述する。なお、本発明において「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
【0011】
<本発明の特徴>
本発明の冷凍卵とじは、加熱凝固卵、調味液、及び卵白様ゲルを含有する袋入り丼物用冷凍卵とじであって、前記卵白様ゲルがアルギン酸カルシウムを含有し、前記丼物用冷凍卵とじを解凍した際に、最長辺が3cm超の卵白様ゲルを含む、特徴を有する。
なお、本発明の冷凍卵とじは、解凍するだけで、かつ丼や親子丼等の卵とじを手軽に調理することができるものであるが、前記加熱凝固卵、調味液、及び卵白様ゲルの他、肉や野菜等の具材を含んだものも含まれる。
【0012】
<加熱凝固卵>
本発明の袋入り冷凍卵とじに含有される加熱凝固卵は、卵液を加熱等により凝固させたものであればいずれのものでもよい。
前記卵液を構成する卵としては、鶏、鶉、アヒルの卵など、一般に食用に供されるものであればいずれのものでもよいが、入手しやすい点から鶏卵を用いるとよい。
【0013】
また、前記卵液は、卵黄を含有していればいずれのものでもよく、例えば、生全卵液、生卵黄液をはじめ、それらを殺菌処理、冷凍処理、ホスフォリパーゼA1、ホスフォリパーゼA2、ホスフォリパーゼC、ホスフォリパーゼD又はプロテアーゼ等による酵素処理、酵母又はグルコースオキシダーゼ等による脱糖処理、超臨界二酸化炭素処理等の脱コレステロール処理、食塩又は糖類等の混合処理、有機溶媒等による抽出処理等の1種又は2種以上の処理、前記各種処理物をスプレードライ又はフリーズドライ等の乾燥処理を施した後に水戻ししたもの等が挙げられる。
【0014】
また、前記卵液には、必要に応じて他の成分を含有させることができる。例えば、スクロース、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、ラクトース、マルトース、トレハロース、糖アルコール、澱粉を加水分解して製したデキストリン、サイクロデキストリン、還元デキストリン、イヌリン等の糖類、小麦粉、米粉等の穀粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉等の生澱粉、物理的及び/又は酵素的及び/又は化学的処理を施した澱粉、大豆油、胡麻油等の油脂類、キサンタンガム、ネイティブジェランガム、グアーガム、タマリンドガム、ペクチン、カラギーナン、寒天、コンニャクマンナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の増粘多糖類、β―カロテン、クチナシ色素、アトナー色素などの着色成分等が挙げられる。
【0015】
前記加熱凝固卵の大きさは特に限定されないが、手作りに近い食感と外観の冷凍卵とじが得られやすいことから、加熱凝固卵の20%以上100%以下が最長辺1cm以上3m以下の小片であるとよく、さらに加熱凝固卵の30%以上100%以下が、最長辺1cm以上3cm以下の小片であるとよい。
【0016】
また、本発明の冷凍卵とじに含まれる加熱凝固卵の含有量は特に限定されないが、手作りに近い食感と外観の冷凍卵とじが得られやすいことから、20%以上60%以下であるとよく、さらに25%以上50%以下であるとよい。
【0017】
<調味液>
本発明の冷凍卵とじに含まれる調味液は、塩、砂糖、みりん、醤油、魚介エキス等を含有し、調味した液状物であればいずれのものでもよい。
冷凍卵とじに含まれる調味液の含有量は特に限定されないが、手作りに近い食感と外観の卵とじが得られやすいことから、20%以上60%以下であるとよく、30%以上50%以下であるとよい。
【0018】
<水溶性カルシウム含有組成物>
本発明の袋入り冷凍卵とじに用いる水溶性カルシウム含有組成物は、水溶性カルシウム塩を含有する組成物であればいずれのものでもよいが、後述の乳化液と配管中で接触させながら充填するために、液状物であるとよく、さらに、手作りに近い食感と外観の冷凍卵とじが得られやすいことから、卵黄様ソースであるとよい。
また、前記水溶性カルシウム塩の種類は特に限定されないが、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化カルシウム及びそれらの水和物等が挙げられる。中でも卵黄様ソースの風味に影響しにくい点から、乳酸カルシウムを用いるとよい。
【0019】
前記水溶性カルシウム含有組成物に含まれる水溶性カルシウム塩の濃度は特に限定されないが、後述の乳化液と接触させながら充填したときに、乳化液に含まれるアルギン酸ナトリウムと反応しやすく、最長辺が3cm超の卵白様ゲルが得られやすいことから、0.1%以上3%以下であるとよく、さらに0.5%以上1.5%以下であるとよい。
【0020】
前記水溶性カルシウム含有組成物が卵黄様ソースである場合、生全卵、生卵黄、又はそれらの処理物を含有するとよく、卵黄を生卵黄換算で0.5%以上20%以下含有するとよく、さらに1%以上10%以下含有するとよい。卵黄様ソースに含まれる卵黄の含有量が前記範囲であることにより、手作りに近い食感と外観の冷凍卵とじが得られやすくなる。
【0021】
さらに、前記卵黄様ソースは、前記加熱凝固卵の色調よりも黄色味を濃くし、半熟様の外観を有するために、β―カロテン、クチナシ色素、アトナー色素などの着色成分を含有させるとよい。
【0022】
また、前記水溶性カルシウム含有組成物には、前述の水溶性カルシウム、全卵又は卵黄、着色成分の他、本発明の効果を損なわない範囲でその他原料を適宜配合することができる。例えば、食塩、グルタミン酸ナトリウム、スクロース、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、ラクトース、マルトース、トレハロース、糖アルコール、澱粉を加水分解して製したデキストリン、サイクロデキストリン、還元デキストリン、イヌリン等の糖類、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉等の生澱粉、物理的及び/又は酵素的及び/又は化学的処理を施した澱粉、大豆油、胡麻油等の油脂類、キサンタンガム、ネイティブジェランガム、グアーガム、タマリンドガム、ペクチン、カラギーナン、寒天、コンニャクマンナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の増粘多糖類等が挙げられる。
【0023】
本発明の冷凍卵とじに含まれる水溶性カルシウム含有組成物の含有量は特に限定されないが、手作りに近い食感と外観の冷凍卵とじが得られやすいことから、3%以上20%以下であるとよく、さらに5%以上15%以下であるとよい。
【0024】
<卵白様ゲル>
本発明の卵白様ゲルは、アルギン酸ナトリウムを含有する乳化液と上述の水溶性カルシウム含有組成物とを接触させながら袋に充填することにより得ることができ、アルギン酸カルシウムを含有している。アルギン酸カルシウムを含有することにより、半熟卵白に近い食感と外観の卵白様ゲルを得ることができる。
【0025】
また、前記卵白様ゲルは、静置して解凍した際に、最長辺が3cm超の卵白様ゲルを含むものであり、さらに4cm以上の卵白様ゲルを含むとよい。最長辺が前記範囲より小さい場合、小さなゲルの分散物が卵とじ全体に広がり、加熱凝固卵や卵黄様ソースと混合してしまうことにより、卵白特有の色調が損なわれ、手作りに近い美味しそうな外観の卵とじが得られない。また、卵白様ゲルの最長辺の上限は特に限定していないが、より手作りに近い食感と外観の冷凍卵とじが得られやすい点から15cm以下であるとよく、さらに10cm以下であるとよい。
【0026】
本発明の冷凍卵とじに含まれる卵白様ゲルの含有量は特に限定されないが、手作りに近い食感と外観の冷凍卵とじが得られやすいことから、5%以上30%以下であるとよく、さらに10%以上20%以下であるとよい。
【0027】
また、前記卵白様ゲルには、前述のアルギン酸カルシウムの他、本発明の効果を損なわない範囲でその他原料を適宜配合することができる。例えば、食塩、グルタミン酸ナトリウム、スクロース、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、ラクトース、マルトース、トレハロース、糖アルコール、澱粉を加水分解して製したデキストリン、サイクロデキストリン、還元デキストリン、イヌリン等の糖類、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉等の生澱粉、物理的及び/又は酵素的及び/又は化学的処理を施した澱粉、大豆油、胡麻油等の油脂類、キサンタンガム、ネイティブジェランガム、グアーガム、タマリンドガム、ペクチン、カラギーナン、寒天、コンニャクマンナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の増粘多糖類等が挙げられる。
【0028】
<卵白様ゲルに用いる乳化液>
前記卵白様ゲルに用いる乳化液は、清水等の水系原料と食用油を乳化剤等で乳化したものであり、かつアルギン酸ナトリウムを含有していればいずれのものでもよい。
前記乳化液に含まれるアルギン酸ナトリウムの量は特に限定されないが、0.1%以上2%以下であるとよく、0.2%以上1.0%以下であるとよい。乳化液に含まれるアルギン酸ナトリウムの含有量が前記範囲であることにより、手作りに近い食感と外観の卵白様ゲルが得られやすくなる
【0029】
<その他原料>
本発明の冷凍卵とじは、加熱凝固卵及び調味液、卵黄様ソース、並びに卵白様ゲルの他に、牛肉、鶏肉、豚肉等の肉類、イカ、エビ等の魚介類、玉ネギ、人参等の野菜類、椎茸、しめじ等のキノコ類などの原料を適宜用いることができる。
【0030】
<冷凍卵とじの製造方法>
本発明の冷凍卵とじは、加熱凝固卵を袋に充填する工程1と、水溶性カルシウム含有組成物とアルギン酸ナトリウムを含有した乳化液を接触させながら袋に充填する工程2と、袋を密封後冷凍処理を施す工程3とを含む。
工程1及び2を行う順序は特に限定していないが、水溶性カルシウム含有組成物及び卵白様ゲルが袋全体に拡散しにくいため、工程1を行った後に工程2を行うとよい。
【0031】
前記工程2において、水溶性カルシウム含有組成物と乳化液を接触させながら袋に充填する方法としては、特に限定されないが、タンク等で混合後、ゲル化する前に速やかに充填する方法や、スタティックミキサー等を用いて配管中で接触させながら充填する方法等が挙げられるが、手作りに近い食感と外観の冷凍卵とじを調製しやすいことから、スタティックミキサーで接触させながら充填する方法がよい。
【0032】
前記工程2において、水溶性カルシウム含有組成物と乳化液を接触させることなく別々に充填した場合、水溶性カルシウム含有組成物に含まれる水溶性カルシウム塩と乳化液に含まれるアルギン酸ナトリウムの反応が不十分になり、半熟様の卵白に近い食感と外観の卵白様ゲルを得ることができない。
【実施例】
【0033】
以下に本発明の冷凍卵とじを実施例に基づき詳述する。なお、本発明はこれに限定するものではない。
【0034】
[実施例1]
配合表1の割合で混合した卵液を、流速2m/分程度の速さで流動させた80℃以上の熱水に滴下し、比較的最長辺の長い薄膜状の加熱凝固卵を調製した後、攪拌機等で切断し、最長辺1cm以上3cm以下の小片を50%含有する加熱凝固卵を得た。
得られた加熱凝固卵45g及び配合表2の割合で調製した調味液35gを袋に充填した。
【0035】
次に配合表3の割合で調製した水溶性カルシウム含有組成物8gと配合表4の割合で調製した乳化液12gをスタティックミキサーで接触させながら、前記袋に充填した。袋を密封後、−20℃で冷凍し、実施例1の冷凍卵とじを得た。
得られた実施例1の冷凍卵とじを、静置して解凍した際に、最長辺5cmの卵白様ゲルを含み、且つアルギン酸カルシウムを含有していた。
【0036】
[配合表1]加熱凝固卵
液全卵 80%
食用油 15%
澱粉 3%
清水で 100%
【0037】
[配合表2]調味液
醤油 15%
発酵調味料 10%
かつおだし 5%
砂糖 5%
清水で 100%
【0038】
[配合表3]水溶性カルシウム含有組成物(卵黄様ソース)
液全卵 5%
澱粉 5%
トレハロース 3%
乳酸カルシウム 1%
アトナー色素 0.3%
清水で 100%
【0039】
[配合表4]乳化液
食用油 10%
トレハロース 4%
澱粉 3%
アルギン酸ナトリウム 0.5%
食塩 0.5%
かつおだし 0.5%
乳化剤 0.2%
清水で 100%
【0040】
[実施例2]
原料の配合量を加熱凝固卵30g、調味液40g、水溶性カルシウム含有組成物13g、乳化液17gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施例2の冷凍卵とじを調製した。
得られた実施例2の冷凍卵とじは、解凍した際に、最長辺が8cmの卵白様ゲルを含み、且つアルギン酸カルシウムを含有していた。
【0041】
[実施例3]
最長辺1cm以上3cm以下の小片が加熱凝固卵全体の25%である以外は実施例1と同様の方法で実施例3の冷凍卵とじを調製した。
得られた実施例3の冷凍卵とじは、解凍した際に、最長辺が5cmの卵白様ゲルを含み、且つアルギン酸カルシウムを含有していた。
【0042】
[比較例1]
卵黄様ソースと乳化液を接触させることなく、別々に充填した以外は実施例1と同様の方法で、比較例1の冷凍卵とじを調製した。
得られた比較例1の冷凍卵とじは解凍した際に、最長辺が3cm超の卵白様ゲルを含んでいなかった。
【0043】
[比較例2]
乳化液に水溶性カルシウム塩を添加し、事前に卵白様ゲルを調製した後、袋に充填した以外は実施例1と同様の方法で、比較例2の冷凍卵とじを調製した。
得られた比較例2の冷凍卵とじは、解凍した際に、最長辺が3cm超の卵白様ゲルを含んでいた。
【0044】
[比較例3]
卵白様ゲルを篩で粉砕した後、袋に充填した以外は比較例2と同様の方法で、比較例3の冷凍卵とじを調製した。
得られた比較例3の冷凍卵とじは、解凍した際に、最長辺が3cm超の卵白様ゲルを含んでいなかった。
【0045】
[試験例1]
実施例1乃至3、比較例1乃至3の冷凍卵とじを95℃の熱水で5分間温めて解凍した後、丼飯にかけ、下記の基準で評価した。その結果を表1に示した。
【0046】
<外観の評価基準>
○ 手作りの外観に近く、大変美味しそうである。
△ 手作りの外観にやや近く、美味しそうでる。
× 手作りとは異なる外観であり、美味しそうでない。
【0047】
<食感の評価基準>
○ 手作りの食感に近く、大変美味しい。
△ 手作りの食感にやや近く、美味しい。
× 手作りとは異なる食感であり、美味しくない。
【0048】
表1
【0049】
表1の結果から、水溶性カルシウム塩を含有する水溶性カルシウム含有組成物とアルギン酸ナトリウムを含有する乳化液を、配管中で接触させながら充填することにより、手作りに近い外観と食感を有する卵とじが得られることが分かる。