特許第6392753号(P6392753)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392753
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】フッ素化界面活性剤
(51)【国際特許分類】
   C07C 309/17 20060101AFI20180910BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20180910BHJP
   C09D 11/03 20140101ALI20180910BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20180910BHJP
   C11D 1/12 20060101ALI20180910BHJP
   A01N 25/30 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   C07C309/17CSP
   C09D7/63
   C09D11/03
   G03F7/004 504
   C11D1/12
   A01N25/30
【請求項の数】12
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2015-521993(P2015-521993)
(86)(22)【出願日】2013年7月16日
(65)【公表番号】特表2015-522593(P2015-522593A)
(43)【公表日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】EP2013002112
(87)【国際公開番号】WO2014012661
(87)【国際公開日】20140123
【審査請求日】2016年7月15日
(31)【優先権主張番号】12005257.6
(32)【優先日】2012年7月18日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】フレデリッヒ,ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ジョンシュカー,ゲアハルト
(72)【発明者】
【氏名】ショーレン,ファニー
(72)【発明者】
【氏名】デプナー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】シェレンベルガー,ステフェン
【審査官】 高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/116222(WO,A1)
【文献】 特開平02−000123(JP,A)
【文献】 特開2010−195937(JP,A)
【文献】 ソ連国特許発明第00618367(SU,A)
【文献】 特開昭63−068542(JP,A)
【文献】 特開平03−072549(JP,A)
【文献】 特表2011−510160(JP,A)
【文献】 特表2011−510159(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0324834(US,A1)
【文献】 特開2006−008517(JP,A)
【文献】 特表2004−502719(JP,A)
【文献】 特開2004−018394(JP,A)
【文献】 特開2004−085689(JP,A)
【文献】 特開2004−157231(JP,A)
【文献】 特開昭64−000536(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/149262(WO,A1)
【文献】 特表2011−526904(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/084118(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 309/17
A01N 25/30
C09D 4/00
C09D 11/02
C11D 1/12
G03F 7/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
(R−A−C−(spacer)−Xo (I)
式中
Rf = CF−CF−CF−O−CF(CF)−CH−、
A = −O−CH−CHR’−、
R’ = Hまたはアルキル、
C = アルキレン、Oまたは−OCO−、
(spacer)−Xo=

【化1】
であり、
Xは、親水性基であって、アニオン性、カチオン性、非イオン性または両性基であり、
= 水素または−CH−COO−(A)−Rf、
= 水素、−CH−COO−(A)−RfまたはX、
a =1、
n =2または3、
c =1、
で表される化合物。
【請求項2】
Rf = CF−CF−CF−O−CF(CF)−CH−、
A = −O−CH−CHR’−、
R’ = HまたはCH
C = C1〜C4アルキレン、Oまたは−OCO−、
(spacer)−Xo=
【化2】
であり、
Xが、親水性基であって、アニオン性、カチオン性、非イオン性または両性の基であり、
= 水素または−CH−COO−(A)−Rf、
= 水素、−CH−COO−(A)−RfまたはX、
a =1、
n =2または3、
c = 1、
を特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(II)
【化3】
式中
Rf = CF−CF−CF−O−CF(CF)−CH−、
A = −O−CH−CHR’−、
R’ = H、CH、C
a =1、
Xは、親水性基であって、アニオン性、カチオン性、非イオン性または両性の基であり、
R’ = H、CH、C5、
= 水素または−CH−COO−(A)−Rf、
= 水素、−CH−COO−(A)−RfまたはX
に適合することを特徴とする、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
式(II−a)
【化4】
式中
Rf = CF−CF−CF−O−CF(CF)−CH−、
A = −O−CH−CHR’−、
R’ = H、CH、C
a =1
Xは、親水性基であって、アニオン性、カチオン性、非イオン性または両性の基である
に適合することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
式(II−b)
【化5】
式中
Rf = CF−CF−CF−O−CF(CF)−CH−、
A = −O−CH−CHR’−、
R’ = H、CH、C
a =1
Xは、親水性基であって、アニオン性、カチオン性、非イオン性または両性の基である
に適合することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
式(II−c)
【化6】
式中
Rf = CF−CF−CF−O−CF(CF)−CH−、
A = −O−CH−CHR’−、
R’ = H、CH、C
a =1
Xは、親水性基であって、アニオン性、カチオン性、非イオン性または両性の基である
に適合することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
式(II−d)
【化7】
式中
Rf = CF−CF−CF−O−CF(CF)−CH−、
A = −O−CH−CHR’−、
R’ = H、CH、C
a =1
Xは、親水性基であって、アニオン性、カチオン性、非イオン性または両性の基である
に適合することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
Xが−SO、−OSO、−PO2−、−OPO2−、−CH(OH)−CH−NH−Sachに等しく、ここでSach = さまざまな糖類または−Y−(CH−CH−O)−R、ここでY = S、OまたはNHおよびR =HまたはCHおよびn = 1〜15を特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
Xが−CH(OH)−CH−NH−Sachに等しく、ここでSach = さまざまな糖類または基−Y−(CH−CH−O)−R、ここでY = S、OまたはNHおよびR = HまたはCHおよびn = 1〜15を特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物の、塗料、コーティング、印刷インク、保護コーティング、電子的用途または光学的用途における特殊コーティング、フォトレジスト、上面反射防止コーティングまたは底面反射防止コーティング、フォトリソグラフィ加工のための現像溶液および洗浄溶液およびフォトレジスト、コスメティック製品、農薬、床磨き剤、フォトグラフィックコーティングまたは光学素子のコーティングにおける添加剤としての、使用。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物およびそれぞれの用途に好適であるビヒクル、および任意にさらなる特定の活性物質を含む、組成物。
【請求項12】
組成物が塗料、コーティング調製物、消火剤組成物、潤滑剤、洗浄組成物および洗剤、除氷剤、フォトリソグラフィ加工のための現像溶液および洗浄溶液およびフォトレジスト、コスメティック製品、農薬、床磨き剤あるいは繊維仕上げまたはガラス処理のための疎水化剤であることを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素化末端基を含有する新規化合物に、その界面活性物質としての使用に、およびこれらの化合物を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素化界面活性剤(fluorosurfactant)は、その静的表面張力が非常に低く(16〜18mN/m)、非常に広汎な種類の用途において用いることができ、例えば表面のぬれを改善するのに、貢献する。それゆえ、例えば、それらは塗料、ラッカーまたは接着剤における界面促進剤または乳化剤または粘性低下剤として用いられる。
【0003】
WO 03/010128は、C3〜20−パーフッ素化アルキル基を含有する、パーフッ素化アルキル置換アミン、酸、アミノ酸およびチオエーテル酸を記載する。JP-A-2001/133984は、反射防止コーティングにおける使用に好適な、パーフッ素化アルコキシ鎖を含有する表面活性化合物を開示する。JP-A-09/111286は、乳化剤におけるパーフッ素化ポリエーテル表面活性剤の使用を開示する。WO 2006/072401およびWO 2010/003567は、トリフルオロメトキシ基を含有する表面活性化合物を記載する。特定のフルオロアルキル基を含有する化合物が、US 7,635,789、US 2008/0093582、JP 2004-18394およびWO 2010/002623に記載されている。加えて、化合物CF−CF−CF−O−CH−CH−OHが公知であり(CAS 1313023−37−8)、水溶液におけるCOおよびパーフッ素化アルキル界面活性剤の混合物に対する理論的調査が、J. of Supercritical Fluids 55 (2010) 802-816に記載されている。
【0004】
さまざまなフッ素化側鎖を含有するスルホスクシナートおよび/またはスルホトリカルバリラートの特定の用途が、US 4,968,599およびUS 4,988,610およびUS 6,890,608において、ならびにA.R. Pitt et al., Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects, 1996, 114, 321-335;A.R. Pitt, Progr. Colloid Polym. Sci, 1997, 103, 307-317およびZ.-T. Liu et al., Ind. Eng. Chem. Res. 2007, 46, 22-28において記載されている。さらなるフッ素化界面活性剤、特にはフッ素化アルキル基を含有するスクシナートおよびトリカルバリラートが、WO 2009/149807, WO 2010/003567, WO 2010/149262, WO 2011/082770およびWO 2012/084118において記載されている。
【発明の概要】
【0005】
好ましくは古典的なフッ素化界面活性剤に匹敵する特性プロファイルを有する、好ましくは劣化に際し分解しても長鎖の残存性化合物を形成せず、または好ましくは低用量においても慣用のフッ素化界面活性剤と同等に効果的である、代替の表面活性物質に対する要求が継続して存在する。
【0006】
表面活性物質として好適であり、好ましくは1つまたは2つ以上の上述の不利を有しない新規化合物が、今、見出された。
【0007】
本発明は第1に、式(I)
(R−A−C−(spacer)−X (I)
式中
Rf = CF−CF−CF−O−CF(CF)−CH−、CF−CF−CF−またはCF−CF−CF−O−CF(CF)−CO−、
A = −O−CH−CHR’−、
R’ = Hまたはアルキル、
C = アルキレン、O、−OCO−または−NR’’−、ここでR’’ = H、アルキルまたは−(CHCHR’’’)m’−R’’’’、ここでm’ = 1〜100の範囲からの整数、ならびにR’’’およびR’’’’、互いに独立して、= Hまたはアルキル、ここで1つまたは2つ以上の非隣接C原子はOまたはN、好ましくはOにより置き換えられていてもよい、
spacer = 任意にヘテロ原子を含有する、飽和または不飽和、分枝または非分枝炭化水素単位、
Xは、親水性基であり、
a = 0または1、
n = 1、2、3、4、5または6、
c = 0または1、
m = 0または1、
o = 1、2、3または4、およびR’’ = −(CHCHR’’’)m’−R’’’’である場合o = 0、ここでR’’’および/またはR’’’’ = アルキル、ここで1つまたは2つ以上の非隣接のC原子はOまたはNにより置き換えられている、
【0008】
ここで、Rf = CF−CF−CF−O−CF(CF)−CO−である場合n≧2
ならびに化合物CF−CF−CF−O−CH−CH−OH、
Rf’−O−CHCH(OSONa)−CH−O−CH−CH−(C)−C
Rf’−O−CHCH(OSOH)−(CH−CH
Rf’−O−CO−CH−CH(OSONa)−CO−O−Rf’、
Rf’’−CH−CH(SONa)−Rf’’、
Rf’’−CH−CH(CHSONa)−Rf’’および
Rf’’−CH−(CH)CH(SONa)−Rf’’、
ここでRf’ = CFCFCF−O−CF(CF)−CH
およびRf’’ = CFCFCF−O−CF(CF)−CO−NHCHCH−O−CO−、は除外される
で表される化合物に関する。
【0009】
式(I)で表される化合物のスペーサーの炭化水素単位は、任意にヘテロ原子を備える、脂肪族または芳香族単位であることができる。表面活性化合物における基(R−A−Cは、好ましくは、飽和、分枝または非分枝炭化水素単位に、好ましくは飽和、分枝または非分枝アルキレン基に結合し、ここで1つまたは2つ以上の非隣接C原子はOまたはN、好ましくはOにより置き換えられていてもよい。本発明の変形において、用いられるヘテロ原子を含有する好ましい炭化水素単位は、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコール単位である。
【0010】
本発明の変形において、基(R−A−Cは、表面活性化合物において、複数回、好ましくは2回または3回生じる。本発明のもう1つの変形において、基(R−A−Cは、表面活性化合物において1回のみ生じる。
R’’’は好ましくはHまたはアルキル、特にC1〜C4アルキルに等しい。R’’’’は好ましくはアルキルに等しく、ここで1つまたは2つ以上の非隣接のC原子はOにより置き換えられていてもよい。
【0011】
好ましいのは、式(I)で表される化合物であって、式中:
Rf = CF−CF−CF−O−CF(CF)−CH−、
A = −O−CH−CHR’−、
R’ = HまたはC1〜C4アルキル、好ましくはH、CHまたはC、特にH、
C = C1〜C4、好ましくはC1〜C2、アルキレン、Oまたは−OCO−
spacer = 任意にヘテロ原子を備える、直鎖または分枝炭化水素単位、
Xは、アニオン性またはカチオン性、非イオン性または両性基であり、
a = 0または1、好ましくは1、
n = 1、2、または3、
c = 1、
m = 0または1、好ましくは1、
o = 1または2
である該化合物である。
【0012】
式(I)で表されるさらに好ましい化合物は、式中:
Rf = CF−CF−CF−O−CF(CF)−CO−、
C = −NR’’−、ここでR’’ = H、アルキル、または−(CHCHR’’’)m’−R’’’’、ここでm’ = 1〜100の範囲からの整数およびR’’’ = HまたはC1〜C4−アルキル、およびR’’’’ = アルキル、ここで1つまたは2つ以上の非隣接のC原子はOにより置き換えられていてもよい、
spacer = 直鎖または分枝アルキレン、
Xは、アニオン性、カチオン性、非イオン性または両性基であり、
a = 0、
n = 2または3、好ましくは2、
c = 1、
m = 1、
o = 1または2、かつR’’ = −(CHCHR’’’)m’−R’’’’である場合o = 0
のものである。
【0013】
R’’は好ましくは、HまたはC1〜C4アルキル、好ましくはC1〜C2アルキルに等しい。本発明の変形において、R’’は好ましくは−(CHCHR’’’)m’−R’’’’に等しく、好ましくはここでm’ = 1〜30、特に1〜15、およびR’’’ = HまたはCHおよびR’’’’= アルキル、ここで1つまたは2つ以上の非隣接のC原子はOにより置き換えられている。
【0014】
式(I)で表される化合物において、RfはまたCF−CF−CF−に等しくてもよい。ここで好ましくは、a = 1および/またはc = 1および/またはm =1。そして好ましくは、C = O。
式(I)で表される化合物は好ましくは、2つまたは3つのRf基を含有する。
【0015】
特に好ましいのは、式(II):
【化1】
式中
Rf = CF−CF−CF−O−CF(CF)−CH−−、
A = −O−CH−CHR’−、
R’ = H、CH、C
Xはアニオン性、カチオン性、非イオン性または両性基、
= 水素または−CH−COO−(A)−Rf、
= 水素、−CH−COO−(A)−RfまたはX
a = 0または1、好ましくは1
で表される化合物である。
【0016】
本発明のさらに好ましい変形は、式(III):
【化2】
式中
Rf = CF−CF−CF−O−CF(CF)−CO− または = Rf’、ここでRf’ =
CF−CF−CF−O−CF(CF)−CH−O−CH−CHR’−、
p = 1〜10、
q = 1〜10および
R’およびR’’は式(I)に関して記載される意味、特には記載される好ましい意味を有する、
で表される化合物である。
【0017】
Dおよび/またはD’はHまたはXに等しく、ここでR’’=Hまたはアルキルである場合少なくとも1つの基はXに等しくなければならない。Xは好ましくは、アニオン性、カチオン性、非イオン性または両性基である。pおよびqは好ましくは、互いに独立して、1〜4、特に1〜2である。pおよびqは好ましくは、同一である。式(III)におけるRfは好ましくは、CF−CF−CF−O−CF(CF)−CO−に等しい。
【0018】
本発明の変形において、式(III)におけるR’’’’は、親水性基Xの例として以下に記載される、非イオン性基−Y−(CH−CH−O)−Rに等しく、ここでY =O、R = Hまたはアルキル、好ましくはHまたはCH、およびv = 1〜100、好ましくは1〜20、特に1〜15。
【0019】
また好ましいのは、式(IV)
−A−C−(spacer)−X (IV)
式中
Rf = CF−CF−CF−O−CF(CF)−CH−、
A = −O−CH−CHR’−、
R’ = H またはアルキル、好ましくはCHまたはC
C = アルキレン、好ましくはC1アルキル、またはO、
Xは、アニオン性、カチオン性、非イオン性または両性基であり、
spacerは、式(I)に関して記載される意味、特には好ましい意味を有し、
a = 0または1、好ましくは1、および
m = 0または1
で表される化合物である。
【0020】
式(II)〜(IV)、特に(II)および(III)で表される化合物において、Rfはまた、CF−CF−CF−に等しくてもよい。
本発明による化合物において、Xは親水性基、好ましくはアニオン性、カチオン性、非イオン性または両性基である。
【0021】
好ましいアニオン性基は、−COO、−SO、−OSO、−PO2−、−OPO2−、−(OCHCH−O−(CH−COO、−(OCHCH−O−(CH−SO、−(OCHCH−O−(CH−OSO、−(OCHCH−O−(CH−PO2−、−(OCHCH−O−(CH−OPO2−から、または式A〜C
【化3】
式中sは1〜1000の範囲からの整数を表し、tは1、2、3または4から選択される整数を表し、およびwは1、2または3から選択される整数を表す、
から選択することができる。
【0022】
ここで好ましいアニオン性基は、特に、−COO、−SO、−OSO、−PO2−、−OPO2−、副次式A、および−(OCHCH−O−(CH−COO、−(OCHCH−O−(CH−SOおよび−(OCHCH−O−(CH−OSOを含み、ここでこれらの基のそれぞれの個々の1つはそれ自体、好ましいものであり得る。
【0023】
ここで非常に特に好ましいアニオン性基は、−SO、−OSO、−PO2−またはOPO2−である。特に好ましいのは、スルホナート基−SO3−である。
【0024】
アニオン性基Xに対する好ましい対イオンは、一価のカチオン、特にH、アルカリ金属カチオンまたはNRであり、ここでRはHまたはC1〜C6−アルキルであり、および全てのRは同一であってもまたは異なっていてもよい。特に好ましいのは、Na、K、LiおよびNH、特に好ましくはNaである。
【0025】
好ましいカチオン性基Xは、−NR3+、−PR3+
【化4】
ここで、Rは任意の所望の位置におけるHまたはC1〜4−アルキルを表し、
は、Cl、Br、I、CHSO、CFSO、CHPhSO、PhSOを表し、
、RおよびRはそれぞれ、互いに独立して、H、C1〜30−アルキル、Arまたは−CHArを表し、
Arは、6〜18個のC原子を有する非置換のもしくは単置換または多置換の芳香族環または縮合環系を表し、ここで、加えて、1つまたは2つのCH基はNにより置き換えられていてもよい、
から選択することができる。
【0026】
ここで好ましいカチオン性基は、特に−NR3+ Zおよび
【化5】
ここで、これらの基のそれぞれの個々の1つはそれ自体、好ましいものであり得る。
を含む。
【0027】
好ましい非イオン性基は、直鎖または分枝アルキルから選択することができ、ここで、1つまたは2つ以上の非隣接のC原子はO、S、および/またはNにより置き換えられていてもよく、−OH、−SH、 −O−(glycoside)o’、−S−(glycoside)o’、−OCH−CHOH−CH−OH、−OCHAr(−NCO)p’、−OAr(−NCO)p’、アミン酸化物、
【化6】
【0028】
uは、1〜6、好ましくは1〜4の範囲からの整数を表し、
o’は、1〜10の範囲からの整数を表し、
p’は、1または2を表し、
Arは、6〜18個のC原子を有する非置換、単置換または多置換の芳香族基または縮合環系を表し、ここで、加えて、1つまたは2つのCH基はC=Oにより置き換えられいてもよく、および、
glycosideは、エーテル化された炭化水素、好ましくはモノグルコシド、ジグルコシド、トリグルコシドまたはオリゴグルコシドを表す
から選択されることができる。
【0029】
ここで好ましい非イオン性基は、特に、直鎖または分枝アルキル、ここで1つまたは2つ以上の非隣接のC原子はO、Sおよび/Nにより置き換えられている、−OHおよび−O−(glucoside)o’である。
【0030】
x=アルキル、ここで1つまたは2つ以上の非隣接のC原子はO、Sおよび/またはNにより置き換えられている、である場合、それはそのとき好ましくはR−(B−A)m‘‘−に等しく、ここでR = HまたはC1〜4−アルキル、特にHまたはCH、A = 好ましくは1〜10個の炭素原子を、特には1〜4個の炭素原子を有する、直鎖または分枝アルキレン、B = OまたはS、好ましくはO、およびm‘‘ = 好ましくは1〜100、特に好ましくは1〜30の範囲からの、整数。
【0031】
非イオン性基Xは、特に好ましくは基R−(O−CHCHRm‘‘−であり、ここでm‘‘ = 1〜100、好ましくは1〜30、特に1〜15の範囲からの整数、ならびにRおよびR = HまたはC1〜4−アルキル、特にHまたはCH。R−(B−A)m‘‘−は特に好ましくは、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコール単位である。
【0032】
非イオン性基Xは特に好ましくは、基−CH(OH)−CH−NH−Sach、ここでSach =さまざまな糖類、および基−Y−(CH−CH−O)−R、ここでY=S、OまたはNH、好ましくはO、R=Hまたはアルキル、好ましくはHまたはCH、ならびにv=1〜100、好ましくは1〜20、特に1〜15、である。
【0033】
好ましい両性基は、アセチルアミン、N−アルキルアミノ酸、N−アルキルアミノスルホン酸、ベタイン、スルホベタイン、または対応する誘導体、特に以下から選択され、ここでMはHまたはアルカリ金属イオン、好ましくはLi、NaまたはKを表す:
【0034】
【化7】
【0035】
本発明による特に好ましい化合物は、親水性基Xとして、好ましいアニオン性基、好ましい非イオン性基、または好ましい両性イオン基の1つを含有するものである。
特に好ましいのは、基−SO、−OSO、−PO2−またはOPO2−、ポリエチレングリコールまたはプリプロピレングリコール、−CH(OH)−CH−NH−Sach、−Y−(CH−CH−O)−R、ベタイン、またはスルホベタイン、特に−SOを含有する化合物である。ここで好ましい対イオンは、Na、KおよびNH、特にNaである。特に好ましいのは以下のものである:−SO、ポリエチレングリコールまたはプロピレングリコール、スルホベタイン、基−CH(OH)−CH−NH−Sachおよび基−Y−(CH−CH−O)−R。ここで、Sach = さまざまな糖類、およびY = S、OまたはNH、好ましくはO、R = Hまたはアルキル、好ましくはHまたはCH、およびv = 1〜100、好ましくは1〜20、特に1〜15。式中X = −SO3−である化合物が、特に有利である。
【0036】
式(I)で表される化合物であって、式中1つまたは2つ以上の可変部(variables)が好ましい意味を有する該化合物が、特に有利である。式(I)で表される化合物であって、式中全ての前記可変部が好ましい意味を有する該化合物が特に有利である。
【0037】
特に好ましいのは、式(II)、(III)および(IV)で表される化合物であって、式中1つまたは2つ以上の可変部が好ましい意味を有する該化合物である。特に好ましいのは、式(II)〜(IV)の変形(variant)であって、式中全ての可変部が好ましい意味、特には特に好ましい意味を有する該変形である。式(II)で表される化合物であって、式中全ての可変部が好ましい意味を有する該化合物が、特に有利である。
【0038】
特に好ましいのは、式(II−a)、(II−b)、(II−c)および(II−d)で表される化合物であって、式中可変部が式(II)に対して示された意味、特には好ましい意味を有する該化合物である。
【化8】
【0039】
特に有利な化合物の例は、式(II−a/1)、(II−a/2)、(II−a/3)および(II−a/4)で表されるスクシナートおよび対応するカルバリラートであり、式中R’は、上に記載される意味、特には好ましい意味を有する:
【化9】
【0040】
好ましいのはまた、式(III−1)〜(III−9)で表される、特には式(III−6)〜(III−9)で表される化合物であって、式中p、q、R’およびR’’は式(III)により記載される意味を、特には好ましい意味を有する該化合物である:
【化10】
【0041】
【化11】
【0042】
【化12】
【0043】
式(IV)の好ましい例は、式(IV−1)〜(IV−8)で表される化合物であって、式中R’は式(IV)により記載された意味、特には好ましい意味を有する該化合物である:
【化13】
【0044】
【化14】
式(II−a/1)および(II−a/2)で表される好ましい化合物が、特に有利である。ここで好ましい対イオンは、Naである。
【0045】
本発明による式(II)で表される化合物は、好ましくは、式(V)で表される1種または2種以上のアルコールを用いるマレイン酸およびアコニット酸またはその無水物または酸塩化物のエステル化、式中Rf、Aおよびaは式(II)に関して記載される意味または好ましい意味を有する
Rf−(A)−OH (V)
および引き続く二重結合への付加により基Xを導入することにより製造することができる。
【0046】
それゆえ本発明はさらに、式(VI)および(VII)で表される対応するマレイン酸およびアコニット酸エステルに関する:
【化15】
【0047】
式(VI)および(VII)における可変部は、式(II)に関して記載される意味、また特には好ましい意味を有する。式(VII)は、Z/E二重結合異性体の存在を示す。
【0048】
本発明による化合物はまた、好ましくは、式(V)で表される1種または2種以上のアルコールを用いるヒドロキシスクシン酸およびクエン酸のエステル化、および引き続き水酸基を官能基化して基Xを導入することにより、製造することができる。
【0049】
用いられるアルコールは、商業的に利用可能であるか、および/または当業者によく知られた商業的に利用可能な出発材料から出発したそれらの調製物であるか、もしくは公知の合成プロセスと類似して、例えばパーフッ素化(2−メチル−3−オキサヘキサン酸メチルの還元(例えばLiAlHを用いて)および任意には当業者に公知の条件下での炭酸エチレンを用いる鎖延長により、製造することができる。
【0050】
本発明によるスクシナートおよびトリカルバリラートの合成は、好ましくは、対応するマレアートまたはヒドロキシスクシナートもしくは対応するアコニット酸エステルまたはクエン酸エステルを介する2ステップ合成で実行される。以下のスキームは、これを例示の様式で示す:
【化16】
【0051】
【化17】
【0052】
そして第2ステップにおいて、基Xを当業者によく知られた方法により二重結合への付加またはOH基の誘導体化により導入する。
【0053】
以下のスキームは、当業者に公知の条件下で実行できる、亜硫酸水素ナトリウムの付加によるスルホトリカルバリラートの合成を、例示の様式で示す。
【化18】
【0054】
クエン酸/アコニット酸からの非イオン性界面活性剤の合成に関するさらなる可能性を、以下のスキームにおいて例示の様式で示し、ここで好ましくはn = 1〜30。
【化19】
【0055】
【化20】
【0056】
本発明による式(II)で表されるさらなる化合物の製造は、上に示される説明的な反応に類似して実行できる。本発明による式(II)で表されるさらなる化合物の製造もまた、文献から当業者にそれ自体公知の他の方法により実行することができる。特に、他のエステル化触媒を用いることができる。
【0057】
これらのかかる合成は、WO 2010/149262、WO 2011/082770およびWO 2012/084118に記載されている。該引用文献における開示内容は、ここに明示的にまた、本願の開示内容に属する。
【0058】
式IV−1または−2で表される化合物は、例えば、発煙硫酸との反応により対応するフッ素化アルコールから、得ることができる。IV−3またはIV−4などの化合物は、例えば、対応するフッ素化オレフィンエーテルの亜硫酸水素塩との反応により、得られる。
【化21】
【0059】
構造IV−5〜IV−8で表される化合物は、例えば、クロロ酢酸との反応により、または1−クロロ−2−ヒドロキシアルキル−ω−スルホン酸との反応により対応するジメチルアミノフルオロ化合物から、得ることができる。
【化22】
【0060】
式(III)で表される化合物であって、式中Rf = CF−CF−CF−O−CF(CF)−CO−の該化合物は好ましくは、ジアミノオレフィンの対応するフッ素化エステル、酸または酸塩化物との反応、および二重結合へ付加して当業者に公知の方法により基Xに導入することにより、製造することができる。
【0061】
式(III)で表される化合物であって、式中Rf = Rf’ = CF−CF−CF−O−CF(CF)−CH−O−CH−CHR’−である該化合物は、ジアミノオレフィンの対応するフッ素化エステル、酸または酸塩化物との反応、二重結合へ付加して基Xを導入すること、および当業者に公知の方法により還元することにより、製造することができる。
【0062】
ジアミノオレフィンは、例えば、Gabriel合成によって対応するハロゲン化物から、入手可能である。
【化23】
【0063】
アミノ分解および引き続く還元により好適な出発材料へと変換することができる、対称または非対称ジカルボン酸エステルオレフィンは、メタセシスにより製造することができる。
【化24】
【0064】
式III−5で表される化合物は、例えば、以下の合成スキームにより、製造することができる:
【化25】
【0065】
本発明によるさらなる化合物の合成は、上に示す説明的な反応と同様にして、または文献から当業者にそれ自体公知の他の方法により、実行することができる。
【0066】
本発明による化合物の利点は、特に以下のものであり得る:
− 効率および/または効果に関して、慣用の炭化水素界面活性剤のものに等しいまたは優れた、表面活性、
− 難分解性(persistent)パーフッ素化分解産物、例えばPFOA(パーフッ素化オクタン酸)またはPFOS(パーフッ素化オクタンスルホナート)などを形成しない、物質の生物学的および/または非生物分解性、
− 弱い発泡作用および/または低い泡安定化、
− 配合物における良好な加工性、ならびに/もしくは
− 貯蔵安定性。
【0067】
本発明による化合物は好ましくは、特別な表面活性を有する。本発明による式(I)で表される化合物、特に式(II)で表される化合物は、化学的にまたは生物学的にのいずれかで分解しても長鎖PFCAまたはPFASを形成しないため、先行技術のフッ素化界面活性剤と比較して、顕著に改善された環境特性を有し得る。
【0068】
本発明は第2に、本発明および上に記載される好ましい態様による化合物の、表面活性剤としての、例えば塗料配合物の流動挙動およびぬれ性(wetting capability)を改善するための使用に関する。好ましいのは、式(II)、(III)および(IV)で表されるフッ素化界面活性剤、特には言及される特に好ましい化合物の使用である。
【0069】
式(I)で表される化合物に加えて、本発明による化合物はまた、溶媒、添加剤助剤および充填剤ならびに非フッ素化界面活性剤を含み得る。例示の様式により、シリコーン粒子、可塑化剤および表面改変顔料についての言及がなされ得る。
【0070】
使用の好ましい領域は、例えば、表面コーティング、例えば塗料、ラッカー、保護コーティング、特殊コーティングにおける添加剤として、電子的または半導体用途(例えばフォトレジスト、上面反射防止コーティング、底面反射防止コーティング)においてまたは光学的用途(例えばフォトグラフィックコーティング、光学素子のコーティング)において、農薬において、例えば家具、床材および自動車のための研磨剤およびワックスにおける、特に床磨き剤における、消火剤組成物、潤滑剤における、またはフォトリソグラフィ加工における、特に浸漬フォトリソグラフィ加工における、例えば現像溶液、リンス溶液、浸漬油におけるおよび/または特にプリント回路の製造のための、フォトレジスト自体における、または対応する調製物の添加調製物における、本発明によるフッ素化界面活性剤の使用である。
【0071】
加えて、界面活性剤として本発明によって使用できる化合物は、洗浄(washing)およびクリーニング用途に、およびコスメティック製品、例えば、ヘアプロダクトおよびボディーケア製品など(例えばシャンプー、ヘアリンスおよびヘアコンディショナー)、フォームバス、クリームまたはローションであって以下の機能の1つまたは2つ以上を有するもの:乳化剤、湿潤剤、発泡剤、潤滑剤、帯電防止、耐皮脂性増強剤、に好適である。
【0072】
本発明によるフッ素化界面活性剤は、使用のために、通常は相応して設計された調製物に取り入れられる。通常の使用濃度は、全体の調製物に基づき、0.01〜1.0重量%の本発明による界面活性剤である。本発明は同様に、本発明によるフッ素化界面活性剤を含む対応する組成物に関する。かかる組成物は好ましくは、それぞれの用途に好適なビヒクル、および任意にさらなる活性物質および/または任意に助剤を含む。好ましい組成物は、塗料およびコーティング調製物、消火剤、潤滑剤、洗浄剤(washing agents)および洗剤(detergents)および除氷剤またはフォトリソグラフィ加工のための、特に浸漬フォトリソグラフィ加工のためのおよび特にプリント回路の製造のための現像溶液、リンス溶液、浸漬油およびフォトレジスト、農薬、床磨き剤、コスメティック製品、コスメティック製品または、繊維仕上げまたはガラス処理のための疎水化剤である。塗料およびコーティング調製物および印刷インクが、ここで好ましい組成物である。
【0073】
加えて、本発明はまた、本発明によるフッ素化界面活性剤を、単独でまたは添加剤と混合して含む、水性表面コーティング配合物に関する。好ましいのは、以下の合成成膜剤である:重縮合樹脂、例えばアルキド樹脂、飽和/不飽和ポリエステル、ポリアミド/イミド、シリコーン樹脂;フェノール樹脂;尿素樹脂およびメラミン樹脂、重付加樹脂、例えばポリウレタンおよびエポキシ樹脂、重合樹脂、例えばポリオレフィン、ポリビニル化合物およびポリアクリラート。
【0074】
加えて、本発明によるフッ素化界面活性剤はまた、天然産物または改質(modified)天然産物に基づく表面コーティングにおける使用に好適である。好ましいのは、オイル、多糖類、例えばデンプンおよびセルロースに基づく、およびまた天然樹脂、例えば環状オリゴレルペン、ポリテルペンおよび/またはセラックに基づく、表面コーティングである。
【0075】
本発明によるフッ素化界面活性剤は、物理的硬化(熱可塑性物質)水性表面コーティング系において、および架橋性(エラストマーおよび熱硬化性樹脂)水性表面コーティング系においての両方で、用いることができる。本発明によるフッ素化界面活性剤は好ましくは、表面コーティング系の流動性およびぬれ性を改善する。
【0076】
本発明は、本発明により用いられるフッ素化界面活性剤の、ここで言及される全ての使用に関する。前記目的のためのフッ素化界面活性剤のそれぞれの使用は当業者に公知であり、従って本発明により用いられるフッ素化界面活性剤の使用は、問題を呈しない。
【0077】
言及される全ての出願および刊行物の完全な開示内容が、参照の様式により本願に組み入れられる。本発明に関し、複数形の用語ならびに単数形の用語の両方が、他に明示的に指示されなければ、それぞれの他方の形もまた意味する。本発明の全ての特徴は、ある特徴が互いに排他的でなければ、任意の様式で互いに組み合わせることができる。これは、特に、好ましいおよび特に好ましい特徴に適用する。本発明のさらなる特徴、利点および変化形もまた、特許請求の範囲および実施例から生じる。以下の実施例は、保護範囲を制限することなく、より詳細に、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1図1は例4によるスルホコハク酸塩の静的表面張力γを示すグラフである。
図2図2は例4によるスルホコハク酸塩の動的表面張力γを示すグラフである。
【0079】

略号
CaCl 塩化カルシウム
EtO ジエチルエーテル
LiAlH 水素化アルミニウムリチウム
EtOAc 酢酸エチルまたはエタン酸エチル
NaSO 硫酸ナトリウム
O 水
MTBE tert−ブチルメチルエーテル
NaCl 塩化ナトリウム
【0080】
例1:1H,1H−パーフルオロ(2−メチル−3−オキサヘキサン−1−オール)(CAS 2101−3−71)の合成
【化26】
30mlの無水エーテルをまず、金属冷却器、CaCl乾燥管、滴下漏斗および温度計を備えた乾燥500ml四つ首フラスコに導入し、EtO中の70mlの1M LiAlH溶液を中隔を介して導入する。50mlの無水EtO中の44.30g(0.12mol)のパーフッ素化(2−メチル−3−オキサヘキサン酸)メチル(ABCR、Karlsruhe Germany)を滴下漏斗に導入する。
【0081】
反応物の発熱性がジエチルエーテルを沸騰に維持するような速度で攪拌しながら、エステルを滴下で添加する。添加が完了したとき、反応混合物を還流下でさらに1.5時間攪拌する。反応の過程で、濁った分散物が形成される。バッチを氷浴中で冷却する。過剰のLiAlHは、10mlのEtOAcの添加により、わずかに熱を発生しながら分解する。次いで10gのHOを添加し、その後、綿状の水酸化アルミニウム沈殿が生じる。78gの25%硫酸を30分をかけて懸濁液に滴下で添加し、その間にクリアな2相混合物が形成される。有機相を分別し、水相を3×40mlのEtOで洗浄する。有機相を混ぜ合わせ、3×40mlのHOで洗浄し、NaSO上で乾燥させる。エーテルを留去し、残渣を分留に付す。生成物:31.8g(b.p. 57℃/100mbar);純度 91%(GC−MS);収率 73% 理論上
【0082】
例2:2−(2,3,3,3−テトラフルオロ−2−ヘプタフルオロプロピルオキシ−プロピル)エタノールの合成
【化27】
8.34g(20mmol)の1H,1H−パーフルオロ(2−メチル−3−オキサヘキサン−1−オール)を還流下で48時間、2.33g(30mmol)の炭酸エチレンおよび0.33g(2.4mmol)の炭酸カリウムとともに攪拌する。25mlの準濃(semi-concentrated)塩酸および25mlのMTBEを反応混合物に添加し、相を分離する。
【0083】
水相を2×25mlのMTBEで抽出し、混ぜ合わせた有機相を1×30mlの水および1×30mlの飽和NaCl溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させる。溶媒を400mbarおよび40℃で、真空で除去し、残渣を分留に付す。
生成物:6.5g(b.p. 37℃/0.5mbar);純度 85.3%(GC−MS);収率 64% 理論上
【0084】
例3:鎖延長フルオロアルコールとのマレイン酸エステルの合成
【化28】
0.47molのトルエン中の21mmolの鎖延長フルオロアルコール、10mmolの無水マレイン酸および2mmolのp−トルエンスルホン酸を還流下で攪拌する。反応の間に、分離された水を水分離器を用いて除去する。
【0085】
次いでLTCコントロールにより反応させる(反応時間 24〜48h)。DI水を添加し、相を分離する。
次いで水相を3×100mlのMTBEで抽出し、混ぜ合わせた有機相を1×200mlの水および1×200mlの飽和NaCl溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過する。溶媒をロータリーエバポレーターで留去する。粗生成物を分留により精製する。(Z)−ブタ−2−エン酸ビス[2−(2,3,3,3−テトラフルオロ−2−ヘプタフルオロプロピルオキシプロポキシ)エチル]エステルに関する収率 = 98%
【0086】
例4:2−スルホコハク酸ナトリウム ビス[2−(2,3,3,3−テトラフルオロ−2−ヘプタフルオロプロピルオキシ−プロポキシ)−エチル]エステルの例のためのスルホコハク酸塩の合成
【化29】
亜硫酸水素ナトリウム溶液(5モル当量)を滴下で50℃で2−プロパノール(100モル当量)中のマレイン酸エステル(1モル当量)の溶液に添加し、次いで混合物を還流下でさらに72時間攪拌する。70mlの水を添加し、混合物を3×50mlのMTBEで抽出する。混ぜ合わせた有機相を1×50mlの水および飽和NaCl溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させる。溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。収率:94%
【0087】
例5:静的表面張力の決定
さまざまな濃度c(グラム、リットルあたり)を有する水性界面活性剤溶液の静的表面張力γを決定する。
機器:Dataphysics張力系(モデル DCAT 11)
測定溶液の温度:20°±0.2℃
用いた測定方法:DIN EN 14370によるWhilhelmyプレート法を用いた表面張力測定。
プレート:プラチナ、長さ=19.9mm
【0088】
プレート法において、界面活性剤溶液の表面張力または界面張力を、プレートのぬれ長さに作用する力から、以下の式により計算する:
【数1】
γ = 界面張力または表面張力;F = 天秤に作用する力;L = ぬれ長さ(19.9mm);θ = 接触角。
【0089】
プレートは粗面の白金からなり、それゆえ最適に浸潤し、そのため接触角θは0°に近くなる。それゆえ項cosθは近似的に値1に達し、そのため測定された力およびプレートの長さのみが考慮されなければならない。
【0090】
例4によるスルホコハクサン塩に対する測定値を、表1に表す。図1は、例4によるスルホコハクサン塩に関する濃度の関数としての静的表面張力を表す。

【表1】
【0091】
例6:動的表面張力の決定
調査する化合物の0.1%(重量%)水溶液の動的表面張力γを決定する。
用いる測定方法:泡圧法を用いる表面張力の測定
器具:SITA張力計(モデル t60)
測定溶液の温度:20℃±0.2℃
【0092】
動的表面張力の測定において、気泡が毛細管を通じて界面活性剤溶液へと異なる速度で押し出される。表面張力は、得られた圧力変化から、泡ライフタイムの関数として、以下の式を用いて決定することができる:
【数2】
max = 最大圧力、ρ = 液体の密度、h = 浸漬深さ、r = 毛細管の半径
【0093】
例4によるスルホコハク酸塩に関する測定値を表2に表す。図2は例4によるスルホコハク酸塩に関する泡ライフタイムの関数としての動的表面張力を示す。

【表2】
図1
図2