【実施例】
【0050】
例1
この例は、アミノシラン化合物を用いて処理されたコロイドシリカ粒子を含む研磨組成物のpHによる酸化ケイ素および窒化ケイ素の除去速度への効果を示す。
【0051】
TEOSウェハー、BPSGウェハー、および窒化ケイ素ウェハーを、10種の異なる研磨組成物を用いて研磨した。それぞれの研磨組成物は、300ppmのアミノプロピルトリエトキシシランを用いて処理した1wt%のコロイドシリカを含んだ。研磨組成物1A〜1Jでは、アミノプロピルトリエトキシシランを30分間水と混合し、次にシリカを加え、そして生じた分散体を2時間攪拌した。研磨組成物1G〜1Jでは、シランの添加の前にpHを4に調整した。なんら追加の硝酸を含まない研磨組成物1Aおよび1Gを除いて、それぞれの研磨組成物のpHを、次に硝酸を用いてターゲットpHに調整した。それぞれの研磨組成物のpHを表1に示す。
【0052】
TEOSおよびBPSGウェハーの両者での酸化ケイ素の除去速度(Å/分)、ならびに窒化ケイ素の除去速度(Å/分)を、それぞれの研磨組成物で決定し、そして結果を表1に示す。
表1
【表1】
【0053】
表1に示されたデータから明らかなように、研磨組成物のpHは、酸化ケイ素および窒化ケイ素の両方の研磨速度を変えるように調整できる。
【0054】
例2
この例は、酸およびアミノシラン化合物を用いて処理されたコロイドシリカ粒子を含む研磨組成物のpHによる酸化ケイ素および窒化ケイ素の除去速度への効果を示す。
【0055】
TEOSウェハーおよび窒化ケイ素ウェハーを、22種の異なる研磨組成物を用いて研磨した。研磨組成物2A〜2Mは、300ppmのアミノプロピルトリエトキシシランを用いて処理した1wt%のコロイドシリカ(50nm)を含んだ。研磨組成物2N〜2Qは、1wt%の未処理のコロイドシリカを含んだ。研磨組成物2R〜2Vは、250ppmのビス(トリアルコキシシリルプロピル)アミンを用いて処理された1wt%のコロイドシリカ(35nm)、1%過酸化水素、および下記表2中に示されたpHを調整するために使用された硝酸を含んだ。それぞれの研磨組成物のpHおよびそれぞれの組成物に加えられた酸のタイプおよび量を表2に示す。
【0056】
酸化ケイ素の除去速度(Å/分)および窒化ケイ素の除去速度(Å/分)を、それぞれの研磨組成物で決定し、そして結果を表2に示す。
表2
【表2】
【0057】
表2に示されたデータから明らかなように、研磨組成物のpHは、酸化ケイ素または窒化ケイ素のいずれかを選択的に除去するように、幾つかの異なる酸を使用して調整できる。
【0058】
例3
この例は、アミノシラン化合物を用いて処理されたコロイドシリカ粒子を含む研磨組成物のpHおよび酸濃度による、酸化ケイ素および窒化ケイ素の除去速度への効果を示す。
【0059】
TEOSウェハーおよび窒化ケイ素ウェハーを、15種の異なる研磨組成物を用いて研磨した。研磨組成物のそれぞれは、300ppmのアミノプロピルトリエトキシシランを用いて処理した1wt%のコロイドシリカを含んだ。研磨組成物3A〜3DのpHを、シランの添加の前に9に調整し、そして研磨組成物3E〜3OのpHを、シランの添加の前に、7.5に調整した。それぞれの研磨組成物の最終のpHおよびそれぞれの組成物に加えられた1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(DEQUEST2010)の量を表3に示す。
【0060】
酸化ケイ素の除去速度(Å/分)および窒化ケイ素の除去速度(Å/分)を、それぞれの研磨組成物で決定し、そして結果を表3に示す。
表3
【表3】
【0061】
表3に示されたデータから明らかなように、発明の研磨組成物のpHは、酸化ケイ素または窒化ケイ素のいずれかを選択的に除去するように、異なる濃度の酸を使用して調整できる。
【0062】
例4
この例は、アミノシラン化合物を用いて処理されたコロイドシリカ粒子およびリンを含む酸を含む研磨組成物による酸化ケイ素および窒化ケイ素の除去速度への効果を示す。
【0063】
TEOSウェハーおよび窒化ケイ素ウェハーを、4種の異なる研磨組成物を用いて研磨した。研磨組成物のそれぞれは、800ppmのアミノアルキルシロキサンを用いて処理した3wt%のコロイドシリカを含んだ。pHを2.2に調整するために研磨組成物4Aおよび4Cに硝酸を加えた。それぞれの研磨組成物のpHおよびそれぞれの組成物に加えられた酸のタイプおよび量を表4に示す。
【0064】
酸化ケイ素の除去速度(Å/分)および窒化ケイ素の除去速度(Å/分)を、それぞれの研磨組成物で決定し、そして結果を表4に示す。
表4
【表4】
【0065】
表4に示されたデータから明らかなように、研磨組成物中で使用されるpHおよび酸のタイプは、酸化ケイ素または窒化ケイ素のいずれかを選択的に除去するように、調整できる。
【0066】
例5
この例は、アミノシラン化合物を用いて処理されたコロイドシリカ粒子を含む研磨組成物による、酸化ケイ素および窒化ケイ素の除去速度への効果を示す。
【0067】
TEOSウェハーおよび窒化ケイ素ウェハーを、12種の異なる研磨組成物を用いて研磨した。研磨組成物のそれぞれは、アミノプロピルトリエトキシシランを用いて処理したコロイドシリカおよび1000ppmの1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(DEQUEST2010)を含んだ。それぞれの組成物に加えられたアミノプロピルトリエトキシシランおよびコロイドシリカの量およびそれぞれの組成物のpHを表5に示す。
【0068】
酸化ケイ素の除去速度(Å/分)および窒化ケイ素の除去速度(Å/分)を、それぞれの研磨組成物で決定し、そして結果を表5に示す。
表5
【表5】
【0069】
表5に示されたデータから明らかなように、アミノプロピルトリエトキシシランの量が少なくとも500ppmの濃度まで増加するにつれて、酸化ケイ素の除去速度は増加した。アミノプロピルトリエトキシシランの濃度は、窒化ケイ素の除去速度に比較的ほとんど影響しなかった。研磨組成物中でコロイドシリカの濃度が増加するにつれて、酸化ケイ素の除去速度および窒化ケイ素の除去速度の両者は増加した。
【0070】
例6
この例は、アミノシラン化合物を用いて処理されたシリカ粒子を含む研磨組成物による酸化ケイ素および窒化ケイ素の除去速度への効果を示す。
【0071】
TEOSウェハーおよび窒化ケイ素ウェハーを、18種の異なる研磨組成物を用いて研磨した。研磨組成物のそれぞれは、アミノプロピルトリエトキシシランを用いて処理した3wt%シリカおよび1500ppmの1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(DEQUEST2010)を含んだ。粒子のゼータ電位に加えて、それぞれの組成物に加えられたシリカ粒子のタイプおよびアミノプロピルトリエトキシシランの量を表6に示す。
【0072】
酸化ケイ素の除去速度(Å/分)および窒化ケイ素の除去速度(Å/分)を、それぞれの研磨組成物で決定し、そして結果を表6に示す。
表6
【表6】
【0073】
表6に示されたデータから明らかなように、ゾルゲル法を使用して合成されたコロイドシリカ粒子およびシリケートイオン交換を使用して合成された46nm、50nm、および80nmのコロイドシリカ粒子の処理は、酸化ケイ素基材の研磨において効果的であったが、一方、フュームドシリカ粒子は、酸化ケイ素基材の研磨においてあまり効果的でなかった。充分な濃度のアミノシランが粒子を処理するために使用された場合、32nmのコロイドシリカ粒子は、酸化ケイ素基材の研磨において効果的であった。
【0074】
例7
この例は、アミノシラン化合物を用いて処理されたシリカ粒子を含む研磨組成物による酸化ケイ素の除去速度への効果を示す。
【0075】
TEOSウェハーを、7種の異なる研磨組成物を用いて研磨した。研磨組成物のそれぞれは、硝酸を用いて5.1のpHに調整され、そして、アミノプロピルトリエトキシシランを用いて処理したコロイドシリカを含んだ。それぞれの組成物に加えられたコロイドシリカの量を表7に示す。
【0076】
酸化ケイ素の除去速度(Å/分)を、それぞれの研磨組成物について決定し、そして結果を表7に示す。
表7
【表7】
【0077】
表7に示されたデータから明らかなように、コロイドシリカの量が2wt%のコロイドシリカに増加するまで、酸化ケイ素の除去速度は、増加した。
【0078】
例8
この例は、種々の量のアミノシラン化合物を用いて処理されたコロイドシリカ粒子を含む研磨組成物における平均粒径および処理された粒子上の利用できるシラノールの表面被覆率を示す。
【0079】
研磨組成物のそれぞれを、例5に記載されたように調製した。それぞれの組成物に加えられたアミノプロピルトリエトキシシランおよびコロイドシリカの量およびそれぞれの組成物のpHを表8に示す。処理された粒子のサイズを、5日後にMalvern HS3000を使用して測定した。スラリーを遠心分離し、そしてアミノシラン上の第1級アミンを、6−アミノキノリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバミン酸(6−aminoquinoly−N−hydroxysuccinimidyl carbamate)(水により作られたAccQ Tag)を用いて誘導し、そして逆相HPLCを使用して定量化することにより、分離物(centrate)を分析することによって、溶液中に残されたシランを5日後に測定した。研磨組成物に加えられたシランの量から処理後の溶液中に残ったシランの量を引いた差として、処理された粒子上のシランの量を計算した。表面被覆率を、処理された粒子の表面上のシランの量を粒子表面のシラノールで割り、そしてパーセンテージとして表わした。シリカのBET表面積(117m
2/g)を測定すること、および1nm
2当り5シラノールのコロイドシリカの典型的なシラノール密度を使用することによって、粒子の表面上のシラノールの数を決定した。
【0080】
平均粒径、粒子上のシランの量、および粒子の表面被覆率を、それぞれの研磨組成物で決定し、そして結果を表8に示す。
表8
【表8】
【0081】
表8に示されたデータから明らかなように、アミノプロピルトリエトキシシランの量がシリカの量に対して増加するにつれて、粒子上の表面被覆率パーセントは増加した。粒径は、より低いシラン濃度において比較的安定なままであったが、しかしシリカの量に対してより高いシランレベルで増加した。
【0082】
例9
この例は、種々の量のアミノシラン化合物を用いて処理されたコロイドシリカ粒子を含む研磨組成物における、処理された粒径および粒子の表面上のシラノールの数で割った加えられたシランの値による、酸化ケイ素の除去速度への影響を示す。
【0083】
研磨組成物のそれぞれは、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンを用いて処理した0.3%のコロイドシリカ(45nm)、100ppmのホウ酸を含み、そして硝酸を用いて3.5のpHに調整された。それぞれの組成物に加えられたビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンの量を表9に示す。ゼータ電位および処理された粒子のサイズをMalvern HS3000を使用して測定した。組成物を遠心分離し、そして陽イオンモードでLCマス分析法を使用して分離物を分析することによって、溶液中に残ったシランの量を、2ヵ月後に測定した。処理された粒子上のシランの量を、研磨組成物に加えられたシランの量から処理後に溶液中に残ったシランの量を差し引いた差として計算した。表面被覆率は、粒子表面上のシラノールで割った処理された粒子の表面上のシランの量であり、そしてパーセンテージで表わされる。シリカ(87m
2/g)のBET表面積を測定することおよびコロイドシリカで、1nm
2当り5シラノールの典型的なシラノール密度を使用することによって、粒子の表面上のシラノールの数を決定した。
【0084】
ゼータ電位、平均粒径、表面被覆率、および酸化ケイ素の除去速度を、それぞれの研磨組成物で決定し、そして結果を表9に示す。
表9
【表9】
【0085】
表9に示されたデータから明らかなように、粒子上の表面被覆率のパーセントが5%に増加するにつれて、酸化ケイ素の除去速度は、急速に増加し、そして次に、表面被覆率のパーセントが5%から32%に増加した場合に、比較的高いレベルで実質的に変化しないままであり、次に粒子上の表面被覆率のパーセントが増加するにつれて、低下し始めた。平均粒径は、200ppm以下のシラン濃度において、比較的安定(例えば、45%の表面被覆率のパーセント)であったが、より高いシラン濃度においては、増加し始めた。
(態様)
(態様1)
基材を化学的機械的に研磨する方法であって、
(i)(a)液体キャリアーと、
(b)該液体キャリアー中に懸濁された研削剤であって、アミノシラン化合物、ホスホニウムシラン化合物、およびスルホニウムシラン化合物から成る群から選択された化合物を用いて処理された表面を有する金属酸化物粒子を含む、研削剤と、
(c)ホスホン酸およびホウ素を含む酸からなる群から選択された酸と、
を含む化学的機械的研磨組成物と、基材とを接触させる工程、
(ii)該基材に対して該研磨組成物を動かす工程、ならびに、
(iii)該基材を磨くために、該基材の少なくとも一部分を摩耗させる工程、
を含んで成る、方法。
(態様2)
該研削剤が、コロイドシリカ粒子である、態様1の方法。
(態様3)
該研削剤の表面が、アミノプロピル基を含むアミノシラン化合物を用いて処理されている、態様1の方法。
(態様4)
該基材が、該基材を磨くために、該基材から除去される窒化ケイ素の少なくとも1つの層を含む、態様1の方法。
(態様5)
該研磨組成物が、1.5〜5のpHを有する。態様4の方法。
(態様6)
該酸が、アミノトリ(メチレンホスホン酸)および1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸から成る群から選択される、態様4の方法。
(態様7)
該基材が、該基材を磨くために該基材から除去される酸化ケイ素の少なくとも1つの層を含む、態様1の方法。
(態様8)
該基材が、窒化ケイ素をさらに含み、そして該酸化ケイ素が、該窒化ケイ素に比較して、該基材から選択的に除去される、態様7の方法。
(態様9)
該研磨組成物が、3.5〜6のpHを有する、態様7の方法。
(態様10)
基材を化学的機械的に研磨する方法であって、
(i)(a)液体キャリアーと、
(b)該液体キャリアー中に懸濁された研削剤であって、第四級アミノシラン化合物、ダイポーダルアミノシラン化合物、およびそれらの組み合わせから成る群から選択された化合物を用いて処理された表面を有する金属酸化物粒子を含む、研削剤と、
を含む化学的機械的研磨組成物と、基材とを接触させる工程と、
(ii)該基材に対して該研磨組成物を動かす工程と、
(iii)該基材を磨くために、該基材の少なくとも一部分を摩耗させる工程と、
を含んで成る、方法。
(態様11)
該研削剤が、コロイドシリカ粒子である、態様10の方法。
(態様12)
該研磨組成物が、7〜9のpHを有する、態様10の方法。
(態様13)
該基材が、該基材を磨くために該基材から除去される酸化ケイ素の少なくとも1つの層を含む、態様10の方法。
(態様14)
(i)液体キャリアー、
(ii)該液体キャリアー中に懸濁された研削剤であって、アミノシラン化合物、ホスホニウムシラン化合物、およびスルホニウムシラン化合物から成る群から選択された化合物を用いて処理された表面を有する金属酸化物粒子を含む、研削剤と、
(iii)ホスホン酸およびホウ素を含む酸からなる群から選択された酸と、
を含んで成る、基材を研磨するための化学的機械的研磨組成物。
(態様15)
該研削剤の表面が、アミノプロピル基を含むアミノシラン化合物を用いて処理されている、態様14の研磨組成物。
(態様16)
該研磨組成物が、4〜7のpHを有する、態様14の研磨組成物。
(態様17)
該ホスホン酸が、アミノトリ(メチレンホスホン酸)および1−ヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸からなる群から選択される、態様14の研磨組成物。
(態様18)
該研磨組成物が、1.5〜5のpHを有する、態様14の研磨組成物。
(態様19)
(i)液体キャリアーと
(ii)該液体キャリアー中に懸濁された研削剤であって、第四級アミノシラン化合物、ダイポーダルアミノシラン化合物、およびそれらの組み合わせから成る群から選択された化合物を用いて処理された表面を有する金属酸化物粒子を含む、研削剤と、
を含んで成る、基材を研磨するための化学的機械的研磨組成物。
(態様20)
該研削剤が、コロイドシリカである、態様19の研磨組成物。
(態様21)
該研磨組成物が、1500μS/cm以下の伝導度を有する、態様19の研磨組成物。
(態様22)
(i)液体キャリアーと、
(ii)該液体キャリアー中に懸濁された研削剤であって、アミノシラン化合物、ホスホニウムシラン化合物、およびスルホニウムシラン化合物から成る群から選択された化合物を用いて処理された表面を有する金属酸化物を含み、そして該処理された研削剤粒子は、2%〜50%である利用可能なシラノールの表面被覆率を有する、研削剤と、
を含んで成る、基材を研磨するための化学的機械的研磨組成物。
(態様23)
該研磨組成物が、4〜7のpHを有する、態様22の研磨組成物。
(態様24)
該研磨組成物のpHを緩衝できる化合物をさらに含む、態様22の研磨組成物。
(態様25)
該金属酸化物粒子が、コロイドシリカ粒子である、態様22の研磨組成物。