【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、末端に(メタ)アクリレート系化合物が40モル%〜70モル%導入されたラクトン系化合物が結合された環状化合物、前記環状化合物を貫通する線状分子、および前記線状分子の両末端に配置されて前記環状化合物の離脱を防止する封鎖基、を含むポリロタキサン化合物(a)とバインダー樹脂(b)との間の架橋物を含むハードコーティング層を含む、ハードコーティングフィルムを提供する。
【0016】
以下、発明の具体的な実施形態に係るハードコーティングフィルムについてより詳細に説明する。
【0017】
発明の一実施形態によれば、末端に(メタ)アクリレート系化合物が40モル%〜70モル%導入されたラクトン系化合物が結合された環状化合物、前記環状化合物を貫通する線状分子、および前記線状分子の両末端に配置されて前記環状化合物の離脱を防止する封鎖基、を含むポリロタキサン化合物(a)とバインダー樹脂(b)との間の架橋物を含むハードコーティング層を含む、ハードコーティングフィルムが提供され得る。
【0018】
本発明者らは、自己治癒能力を有するコーティング材料に使用可能な化合物に関する研究を進行して、前記特定構造を有するポリロタキサン化合物を含む光硬化性コーティング組成物を用いると、優れた耐スクラッチ性、耐薬品性および耐摩耗性などの機械的物性を確保できると共に、スクラッチまたは外部損傷に対して高い自己治癒能力を発揮でき、高強度を有しながらフィルムのカール(curl)を最少化できるハードコーティングフィルムを提供できるという点を実験を通じて確認して発明を完成した。
【0019】
具体的に、上述した光硬化性組成物が光硬化過程を経ながら上述したハードコーティングフィルムが形成され得るが、このようなハードコーティングフィルムで前記ポリロタキサン化合物と前記バインダー樹脂とは架橋結合を形成することができ、このような架橋結合により網状構造が形成され得る。
【0020】
そのために、前記ハードコーティングフィルムは、より高い架橋度を有することができるため、高強度または耐スクラッチ性などの物性を維持しながらも高い弾性または弾性回復力を有することができるため、スクラッチまたは外部損傷に対して高い自己治癒能力を実現でき、最終製品への実際適用の時に曲がる現象(curl)も最少化することができる。
【0021】
前記ポリロタキサン(Poly−rotaxane)は、ダンベル形状の分子(dumbbell shaped molecule)と環状化合物(macrocycle)が構造的に組み合わされている化合物を意味し、前記ダンベル形状の分子は一定の線状分子およびこのような線状分子の両末端に配置された封鎖基を含み、前記線状分子が前記環状化合物の内部を貫通し、前記環状化合物が前記線状分子に沿って移動することができ、前記封鎖基により離脱が防止される。
【0022】
前記ポリロタキサン化合物は、前記環状化合物にラクトン系化合物が結合されており、前記環状化合物に結合されたラクトン系化合物の末端には、(メタ)アクリレート系化合物が結合したことを特徴とする。また、前記ラクトン系化合物の末端には(メタ)アクリレート系化合物が導入され得る。
【0023】
特に、前記ポリロタキサン化合物に含まれている環状化合物の末端には、架橋反応または重合反応に使用可能な二重結合を含み、そのために、前記ポリロタキサン化合物を含む光硬化性コーティング組成物を使用して製造されるハードコーティングフィルムは、より高い耐スクラッチ性、耐薬品性および耐摩耗性などの機械的物性を確保しながらも、使用されるバインダー樹脂とより容易に結合または架橋できるため、高い弾性または弾性回復力を確保でき、スクラッチまたは外部損傷に対して優れた自己治癒能力を実現でき、最終製品への実際適用の時に曲がる現象(curl)も最少化することができる。
【0024】
前記ポリロタキサン化合物で、前記ラクトン系化合物の末端に導入される(メタ)アクリレート系化合物の比率は、40モル%〜70モル%、好ましくは45モル%〜65モル%でありうる。
【0025】
前記ラクトン系化合物の末端に導入される(メタ)アクリレート系化合物の比率が40モル%未満であれば、前記一実施形態のハードコーティングフィルム製造時に十分な架橋反応が起こらず、前記ハードコーティング層が十分な耐スクラッチ性、耐薬品性または耐摩耗性などの機械的物性を確保できないことがあり、またラクトン系化合物の末端に残留しているヒドロキシ作用基が多くなって前記ポリロタキサン化合物の極性(polarity)が高くなることがあり、前記ハードコーティングフィルムの製造過程で使用可能な非極性溶媒(non polar solvent)との相溶性が低くなって最終製品の品質や外観特性が低下することがある。
【0026】
また、前記ラクトン系化合物の末端に導入される(メタ)アクリレート系化合物の比率が70モル%超過であれば、前記一実施形態のハードコーティングフィルム製造時に過度な架橋反応が起こり、前記ハードコーティング層が十分な弾性や自己治癒能力を確保し難いことがあり、前記ポリロタキサン化合物に導入される(メタ)アクリレート系作用基の比率が高くなって前記ハードコーティングフィルムが十分な自己治癒能力を持ち難いことがあり、前記ハードコーティングフィルムの架橋度が非常に高くなって弾性が低下することがあり[脆性(brittleness)大幅増加]、前記ハードコーティングフィルムの製造過程でコーティング液の安定性も低下することがある。
【0027】
本明細書で、(メタ)アクリレート系化合物は、アクリレート系化合物および(メタ)クリルレート系化合物を通称する意味で使用された。
【0028】
前記環状化合物は、前記線状分子を貫通または包囲できる程度の大きさを持つものであれば特別な制限なしに用いることができ、他の重合体や化合物と反応できる水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基またはアルデヒド基などの作用基を含むこともできる。このような環状化合物の具体的な例としてα−シクロデキストリンおよびβ−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンまたはこれらの混合物が挙げられる。
【0029】
前記環状化合物に結合されたラクトン系化合物は、前記環状化合物に直接結合されたり、炭素数1〜10の直鎖または分枝鎖のオキシアルキレン基を介して結合され得る。このような結合を介する作用基は、前記環状化合物または前記ラクトン系化合物に置換された作用基の種類や、前記環状化合物およびラクトン系化合物の反応に使用される化合物の種類によって決定され得る。
【0030】
前記ラクトン系化合物は、炭素数3〜12のラクトン系化合物または炭素数3〜12のラクトン系繰り返し単位を含むポリラクトン系化合物を含むことができる。そのために、前記ラクトン系化合物が前記環状化合物および前記(メタ)アクリレート系化合物と結合すると、つまり、前記ポリロタキサン化合物で前記ラクトン系化合物の残基は下記化学式1の作用基を含むことができる。
【0031】
【化1】
【0032】
前記化学式1中、mは、2〜11の整数であり、好ましくは3〜7の整数であり、前記nは、1〜20の整数であり、好ましくは1〜10の整数である。
【0033】
前記環状化合物に結合されたラクトン系化合物の末端には、(メタ)アクリレート系化合物が導入され得る。前記「導入」は、置換または結合された状態を意味する。
【0034】
具体的に、前記(メタ)アクリレート系化合物は、前記ラクトン系化合物の末端に直接結合されたり、ウレタン結合(−NH−CO−O−)、エーテル結合(−O−)、チオエステル(thioester、−S−CO−O−)結合またはエステル結合(−CO−O−)を通じて結合され得る。前記(メタ)アクリレート系化合物と前記ラクトン系化合物の結合を介する作用基の種類は、前記(メタ)アクリレート系化合物と前記ラクトン系化合物のそれぞれに置換された作用基の種類や、前記(メタ)アクリレート系化合物と前記ラクトン系化合物の反応に使用される化合物の種類によって決定され得る。
【0035】
例えば、イソシアネート基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、チオエート基(thioate)またはハロゲン基を1以上含む(メタ)アクリレート系化合物をラクトン系化合物が結合された環状化合物と反応させる場合、直接結合、ウレタン結合(−NH−CO−O−)、エーテル結合(−O−)、チオエステル(thioester、−S−CO−O−)結合またはエステル結合(−CO−O−)が生成され得る。また、ラクトン系化合物が結合された環状化合物にイソシアネート基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、チオエート基(thioate)またはハロゲン基を2以上含む化合物と反応させた結果物を、1以上のヒドロキシ基またはカルボキシル基を含む(メタ)アクリレート系化合物と反応させると、ウレタン結合(−NH−CO−O−)、エーテル結合(−O−)、チオエステル(thioester、−S−CO−O−)結合またはエステル結合(−CO−O−)が1以上形成され得る。
【0036】
前記(メタ)アクリレート系化合物は、イソシアネート基、カルボキシル基、チオエート基(thioate)、ヒドロキシ基またはハロゲン基が1以上が末端に結合された(メタ)アクリロイルアルキル化合物[(meth)acryloylakyl compound]、(メタ)アクリロイルシクロアルキル化合物[(meth)acryloylcycloakyl compound]または(メタ)アクリロイルアリール化合物[(meth)acryloylaryl compound]でありうる。
【0037】
この時、前記(メタ)アクリロイルアルキル化合物には、炭素数1〜12の直鎖または分枝鎖のアルキレン基が含まれ、前記(メタ)アクリロイルシクロアルキル化合物[(meth)acryloylcycloakyl compound]には、炭素数4〜20のシクロアルキレン基(cycloalkylene)が含まれ、前記(メタ)アクリロイルアリール化合物[(meth)acryloylaryl compound]には、炭素数6〜20のアリーレン基(arylene)が含まれ得る。
【0038】
そのために、前記(メタ)アクリレート系化合物が前記ラクトン系化合物の末端に結合すると、つまり、前記ポリロタキサン化合物で前記(メタ)アクリレート系化合物の残基は下記化学式2の作用基を含むことができる。
【0039】
【化2】
【0040】
前記化学式2中、R
1は、水素またはメチルであり、R
2は、炭素数1〜12の直鎖または分枝鎖のアルキレン基、炭素数4〜20のシクロアルキレン基(cycloalkylene)または炭素数6〜20のアリーレン基(arylene)でありうる。前記*は、結合地点を意味する。
【0041】
一方、前記線状分子としては、一定以上の分子量を有すると共に、直鎖形態を有する化合物は大きな制限なしに使用することができるが、ポリアルキレン系化合物またはポリラクトン系化合物を使用することが好ましい。具体的に、炭素数1〜8のオキシアルキレン繰り返し単位を含むポリオキシアルキレン系化合物または炭素数3〜10のラクトン系繰り返し単位を有するポリラクトン系化合物を使用することができる。
【0042】
そして、このような線状分子は、1,000〜50,000の重量平均分子量を有することができる。前記線状分子の重量平均分子量が過度に小さい場合、これを使用して製造されるコーティング材料の機械的物性または自己治癒能力が十分でないことがあり、前記重量平均分子量が過度に大きい場合、製造されるコーティング材料の相溶性が低下したり外観特性や材料の均一性が大きく低下することがある。
【0043】
一方、前記封鎖基は、製造されるポリロタキサン化合物の特性により適切に調節することができ、例えばジニトロフェニル基、シクロデキストリン基、アダマンタン基、トリチル基、フルオレセイン基およびピレン基からなる群より選ばれた1種または2種以上を使用することができる。
【0044】
上述した特定構造を有するポリロタキサン化合物は、100,000〜800,000 の重量平均分子量を有することができる。前記ポリロタキサン化合物の重量平均分子量が過度に小さい場合、これを使用して製造されるコーティング材料の機械的物性または自己治癒能力が十分でないことがあり、前記重量平均分子量が過度に大きい場合、製造されるコーティング材料の相溶性が低下したり外観特性や材料の均一性が大きく低下することがある。
【0045】
上述した特定構造を有するポリロタキサン化合物は、100,000〜800,000、好ましくは200,000〜700,000、より好ましくは350,000〜650,000の重量平均分子量を有することができる。前記ポリロタキサン化合物の重量平均分子量が過度に小さい場合、これを使用して製造されるコーティング材料の機械的物性または自己治癒能力が十分でないことがあり、前記重量平均分子量が過度に大きい場合、製造されるコーティング材料の相溶性が低下したり外観特性や材料の均一性が大きく低下することがある。
【0046】
また、前記ポリロタキサン化合物は、前記(メタ)アクリレート系化合物が環状化合物の末端に導入されて相対的に低いOH価(OH value)を有することができる。つまり、前記環状化合物にラクトン系化合物のみが結合している場合、多数のヒドロキシ(−OH)が前記ポリロタキサン分子内に存在するようになるが、このようなラクトン系化合物の末端に(メタ)アクリレート系化合物導入されながら前記ポリロタキサン化合物のOH価が低くなり得る。
【0047】
一方、前記ハードコーティングフィルムは、上述したポリロタキサン化合物と架橋物を形成するバインダー樹脂を含むことができる。
【0048】
前記バインダー樹脂の具体的な例としては、ポリシロキサン系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂、これらの混合物またはこれらの共重合体が挙げられ、好ましくはウレタン(メタ)アクリレート系樹脂を使用することができる。
【0049】
前記バインダー樹脂は、20,000〜800,000の重量平均分子量、好ましくは50,000〜700,000の重量平均分子量を有することができる。前記バインダー樹脂の重量平均分子量が過度に小さい場合、前記ハードコーティング層が十分な機械的物性や自己治癒能力を持ち難いことがある。また、前記バインダー樹脂の重量平均分子量が過度に大きい場合、前記ハードコーティング層の形態や物性の均質度が低下することがある。
【0050】
前記バインダー樹脂は、バインダー樹脂自体で使用されて前記ハードコーティング層を形成することもでき、前記バインダー樹脂の前駆体、例えば前記バインダー樹脂合成用単量体またはオリゴマーからも形成され得る。
【0051】
前記バインダー樹脂の前駆体は、光硬化過程、つまり、一定の紫外線または可視光線が照射されると、一定の高分子樹脂を形成することができ、バインダー樹脂の前駆体間に架橋反応を起こしたり前記ポリロタキサン化合物と架橋反応を起こして上述した架橋物を形成することもできる。
【0052】
前記バインダー樹脂の前駆体の具体的な例としては、(メタ)アクリレート基、ビニル基、シロキサン基、エポキシ基およびウレタン基からなる群より選ばれた1種以上の作用基を含む単量体またはオリゴマーを含むことができる。
【0053】
そして、前記バインダー樹脂の前駆体として、上述した単量体またはオリゴマー1種を使用してバインダー樹脂を形成することもできるが、上述した単量体またはオリゴマー2種以上を使用してバインダー樹脂を形成することもできる。
【0054】
前記(メタ)アクリレート基を含む単量体の例として、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチレンプロピルトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、またはこれらの2以上の混合物が挙げられる。
【0055】
前記(メタ)アクリレート基を含むオリゴマーの具体的な例としては、(メタ)アクリレート基を2〜10個を含むウレタン変性アクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、エーテルアクリレートオリゴマーなどが挙げられる。このようなオリゴマーの重量平均分子量は、1,000〜10,000でありうる。
【0056】
前記ビニル基を含む単量体の具体的な例としては、ジビニルベンゼン、スチレンパラメチルスチレンなどがある。
【0057】
前記ウレタン基を含む単量体の具体的な例として、(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性(メタ)アクリレートおよびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレートとポリイソシアネートが反応して得られたウレタンアクリレートなどが挙げられる。
【0058】
一方、前記ハードコーティングフィルムは、前記ポリロタキサン化合物(a)とバインダー樹脂(b)との間の架橋物に分散している無機微細粒子をさらに含むことができる。
【0059】
前記無機微細粒子は、ナノスケールである無機微細粒子、例えば粒径が約100nm以下、または約10〜約100nm、または約10〜約50nmのナノ微細粒子を含むことができる。前記無機微細粒子の具体的な例としては、シリカ微粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0060】
前記ハードコーティングフィルム、より具体的に前記ハードコーティング層が上述した無機微細粒子を含むすることによって、ハードコーティングフィルムの硬度がより向上することができる。
【0061】
前記ハードコーティング層には、前記無機微細粒子が1〜40重量%含まれ得る。
【0062】
前記ハードコーティング層は、上述した無機微細粒子以外にも、界面活性剤、黄変防止剤、レーベリング剤、防汚剤などの通常使用される添加剤を追加的に含むことができる。
【0063】
前記ハードコーティング層は、1〜300μmの厚さを有することができる。
【0064】
前記ハードコーティング層は、1kg荷重下で5H以上、6H以上、または7H以上の鉛筆硬度を有することができる。
【0065】
前記ハードコーティングフィルムは、前記ハードコーティング層と結合した高分子樹脂基材層をさらに含むことができる。また、前記前記ハードコーティングフィルムは、前記高分子樹脂基材層と前記高分子樹脂基材層の一面または両面に結合されたハードコーティング層とを含むことができる。
【0066】
前記高分子樹脂基材層は、通常使用される透明性高分子樹脂を特別な制限なしに使用することができる。このような高分子樹脂基材層の例としては、ポチエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate、PET)のようなポリエステル(polyester)、環状オレフィンコポリマー(cyclic olefin copolymer、COC)、ポリアクリレート(polyacrylate、PAC)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate、PMMA)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketon、PEEK)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate、PEN)、ポリエーテルイミド(polyetherimide、PEI)、ポリイミド(polyimide、PI)またはトリアセチルセルロース(triacetylcellulose、TAC)などが挙げられる。
【0067】
前記高分子樹脂基材層は、単層または必要に応じて互いに同一または異なる物質からなる2つ以上の基材を含む多層構造でありうる。具体的に、前記高分子樹脂基材層は、ポチエチレンテレフタレート(PET)の多層構造である基材、ポリメチルメタクリレート(PMMA)/ポリカーボネート(PC)の共押出で形成した2層以上の構造である基材でありうる。
【0068】
前記高分子樹脂基材層の厚さは、特に制限されないが、約5〜約1,200μm、または約50〜約800μmの厚さを有することができる。
【0069】
一方、前記ハードコーティング層は、前記ポリロタキサン化合物(a)、前記バインダー樹脂(b)またはその前駆体、および光開始剤、を含む光硬化性コーティング組成物から製造され得る。
【0070】
具体的に、前記光硬化性コーティング組成物に一定の紫外線または可視光線、例えば200〜400nm波長の紫外線または可視光線を照射することによって光硬化が起こり、ハードコーティングフィルムが提供され得る。このような紫外線または可視光線の露光量は、大きく限定されるのではなく、例えば50〜4,000mJ/cm
2が好ましい。また、前記光硬化段階の露光時間も特に限定されるのではなく、使用される露光装置、照射光線の波長または露光量により適切に変化させることができる。
【0071】
前記光硬化性コーティング組成物は、一定の基材上に塗布された以降に光硬化され得る。このような光硬化性コーティング組成物の塗布に使用される方法は、大きく限定されるのではなく、例えばバーコーティング方式、ナイフコーティング方式、ロールコーティング方式、ブレードコーティング方式、ダイコーティング方式、マイクログラビアコーティング方式、コンマコーティング方式、スロットダイコーティング方式、またはリップコーティング方式などを用いることができる。
【0072】
前記光硬化性コーティング組成物の塗布に使用される基材は、大きく限定されるのではないが、前記ハードコーティング層と結合する高分子樹脂基材層で提示した高分子樹脂の基材を使用することができる。このような高分子樹脂基材上に上述した光硬化性コーティング組成物を塗布し光硬化することによって、前記一実施形態のハードコーティングフィルムが提供され得る。
【0073】
前記光硬化性コーティング組成物は、光開始剤を含むことができるが、このような光開始剤としては、当業界で通常使用されると知られている化合物を特別な制限なしに使用することができ、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、オキシム系化合物またはこれらの混合物を使用することができる。
【0074】
そして、このような光開始剤の具体的な例としては、ベンゾフェノン(Benzophenone)、ベンゾイルメチルベンゾエート(Benzoyl methyl benzoate)、アセトフェノン(acetophenone)、2,4−ジエチルチオキサントン(2、4−diehtyl thioxanthone)、2−クロロチオキサントン(2−chloro thioxanthone)、エチルアントラキノン(ethyl anthraquinone)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(1−Hydroxy−cyclohexyl−phenyl−ketone、市販製品としてはCiba社のIrgacure184)または2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(2−Hydroxy−2−methyl−1−phenyl−propan−1−one)などがある。
【0075】
このような光開始剤は、前記ハードコーティングフィルムを製造するための光硬化過程以降に微量で前記ハードコーティングフィルム上に存在することができる。
【0076】
前記光硬化性コーティング組成物は、無機微細粒子をさらに含むことができる。前述のように、前記無機微細粒子は、製造されるハードコーティングフィルムの硬度を高めるために使用される。前記無機微細粒子に関する具体的な内容は、上述したとおりである。
【0077】
一方、前記光硬化性コーティング組成物は、有機溶媒をさらに含むことができる。前記有機溶媒としては、コーティング組成物に使用可能なものと当業界に知られたものであれば特別な制限なしに使用可能である。
【0078】
例えば、メチルイソブチルケトン(methyl isobutyl ketone)、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone)、ジメチルケトン(dimethyl ketone)などのケトン系有機溶媒;イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、イソブチルアルコール(isobutyl alcohol)またはノーマルブチルアルコール(normal butyl alcohol)などのアルコール有機溶媒;エチルアセテート(ethyl acetate)またはノーマルブチルアセテート(normal butyl acetate)などのアセテート有機溶媒;エチルセルソルブ(ethyl cellusolve)またはブチルセルソルブ(butyl cellusolve)などのセルソルブ有機溶媒などを使用することができるが、前記有機溶媒は上述した例に限定されるのではない。
【0079】
前記有機溶媒の使用量は、前記光硬化性コーティング組成物の物性、コーティング方法、または最終製造される製品の具体的な物性を考慮して調節することができ、例えば前記バインダー樹脂またはその前駆体100重量部に対して5〜500重量部使用することができる。このような有機溶媒は、上述した光硬化過程以降に続く乾燥過程を通じて95%以上除去され得る。