特許第6392914号(P6392914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392914
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】ハードコーティングフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/04 20060101AFI20180910BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20180910BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20180910BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   C08J7/04 LCEP
   C08J7/04CER
   C08J7/04CEZ
   C08F290/06
   B32B27/30 A
   C09D201/00
【請求項の数】16
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-17844(P2017-17844)
(22)【出願日】2017年2月2日
(62)【分割の表示】特願2015-506916(P2015-506916)の分割
【原出願日】2013年5月27日
(65)【公開番号】特開2017-137491(P2017-137491A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2017年2月2日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0056286
(32)【優先日】2012年5月25日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0056285
(32)【優先日】2012年5月25日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0056284
(32)【優先日】2012年5月25日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0056287
(32)【優先日】2012年5月25日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0059517
(32)【優先日】2013年5月27日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チュン、ソン−ファ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ホン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ヨン−レ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヘ−ミン
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5859170(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/04
B32B 27/30
C08F 290/06
C09D 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトン系化合物が結合された環状化合物、前記環状化合物を貫通する線状分子、および前記線状分子の両末端に配置されて前記環状化合物の離脱を防止する封鎖基、を含むポリロタキサン化合物(a)とバインダー樹脂(b)との間の架橋物を含むハードコーティング層を含み、
前記ラクトン系化合物の末端中30モル%〜60モル%が非置換され、
前記ラクトン系化合物の末端に(メタ)アクリレート系作用基が40モル%〜70モル%導入される、
ハードコーティングフィルム。
【請求項2】
前記ラクトン系化合物の末端中45モル%〜65モル%に(メタ)アクリレート系作用基が置換され、前記ラクトン系化合物の末端中35モル%〜55モル%にヒドロキシ作用基が残留する、請求項1に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項3】
前記環状化合物は、α−シクロデキストリンおよびβ−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンからなる群より選ばれた1種以上を含む、請求項1または2に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項4】
前記ラクトン系化合物は、直接結合または炭素数1〜10の直鎖または分枝鎖のオキシアルキレン基を介して前記環状化合物に結合された、請求項1〜3のいずれか一項に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項5】
前記ラクトン系化合物の残基は、下記化学式1の作用基を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のハードコーティングフィルム。
【化3】
(前記化学式1中、mは、2〜11の整数であり、nは、1〜20の整数である。)
【請求項6】
前記(メタ)アクリレート系作用基が、直接結合、ウレタン結合、エーテル結合、チオエステル結合またはエステル結合を通じて前記ラクトン系化合物の残基に結合された、請求項1〜5のいずれか一項に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項7】
前記(メタ)アクリレート系作用基は、下記化学式2の作用基を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のハードコーティングフィルム。
【化4】
(前記化学式2中、R1は、水素またはメチルであり、R2は、炭素数1〜12の直鎖または分枝鎖のアルキレン基、炭素数4〜20のシクロアルキレン基または炭素数6〜20のアリーレン基である。)
【請求項8】
前記線状分子は、ポリオキシアルキレン系化合物またはポリラクトン系化合物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項9】
前記線状分子は、1,000〜50,000の重量平均分子量を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項10】
前記封鎖基は、ジニトロフェニル基、シクロデキストリン基、アダマンタン基、トリチル基、フルオレセイン基およびピレン基からなる群より選ばれた1種以上の作用基を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項11】
前記ポリロタキサン化合物は、100,000〜800,000の重量平均分子量を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項12】
前記バインダー樹脂は、ポリシロキサン系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂およびウレタン(メタ)アクリレート系樹脂からなる群より選ばれた1種以上の高分子樹脂またはこれらの共重合体を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項13】
前記ハードコーティング層は、1kg荷重下で5H以上の鉛筆硬度を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項14】
前記ポリロタキサン化合物(a)とバインダー樹脂(b)との間の架橋物に分散している無機微細粒子をさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項15】
前記ハードコーティング層は、1〜300μmの厚さを有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項16】
前記ハードコーティング層と結合された高分子樹脂基材層をさらに含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載のハードコーティングフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己治癒能力のあるハードコーティングフィルムに関し、より詳しくは、高い耐スクラッチ性、耐薬品性および耐摩耗性などの優れた機械的物性と共に自己治癒能力を実現することができ、高強度を有しながらフィルムのカール(curl)を最少化することができるハードコーティングフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、スマートフォン、タブレットPCのようなモバイル機器の発展と共にディスプレイ用基材の薄膜化およびスリム化が要求されている。このようなモバイル機器のディスプレイ用ウィンドウまたは前面板には機械的特性に優れた素材としてガラスまたは強化ガラスが一般に使用されている。しかし、ガラスは自体の重量によりモバイル装置が高重量化する原因となり、外部衝撃による破損の問題がある。
【0003】
そこで、ガラスを代替できる素材としてプラスチック樹脂が研究されている。プラスチック樹脂フィルムは、軽量でありながらも壊れる恐れが少ないため、より軽量のモバイル機器を追求する傾向に適している。特に、高硬度および耐摩耗性の特性を有するフィルムを達成するために、樹脂基材にハードコーティング層をコーティングするフィルムが提案されている。
【0004】
しかし、以前に知られたハードコーティングフィルムは、ガラスを代替できる程度の表面硬度を確保するために厚さを増加させると、ハードコーティング層の硬化収縮によりシワやカール(curl)が大きくなると同時に、ハードコーティング層の亀裂や剥離が発生しやすくなるため、適正な物性を確保するのが困難であるか、または適用分野が制限される問題点があった。
【0005】
また、最近のディスプレイ用基材の薄膜化およびスリム化に伴ってハードコーティングフィルムの厚さを薄くすると、ハードコーティングフィルムの耐スクラッチ性や強度が十分に維持されないため、同様に適正な物性を確保することが困難であるか、または適用分野が制限された。
【0006】
一方、自己治癒能力を有するコーティング素材は、表面損傷の時にも追加的なコーティングや修理過程が不要であり、製品の外観特性および性能維持に相当有利であるため、近年活発な研究が進められている。このような研究の結果として、自己治癒能力のあるオリゴマーを用いた紫外線硬化型組成物と、耐スクラッチ性および耐汚染性を向上させるために無機粒子やフッ素系化合物を添加した組成物などが紹介されたが、このような組成物から得られたコーティング材料は、十分な表面硬度と自己治癒能力を有さない問題点があった。
【0007】
最近、ポリロタキサン化合物を含むコーティング材料を使用する場合、自己治癒能力を有するコーティング膜やコーティングフィルムを提供できるという点が紹介されており、このようなポリロタキサン化合物を自動車や電子製品などのコーティングに適用して商用化しようとする多様な方法が試みられている。
【0008】
例えば、WO2005−080469(特許文献1)には、ポリロタキサンの物性を改良するために環状分子であるα−シクロデキストリンの水酸基をヒドロキシプロピル基や高い置換率のメチル基で置換して製造されたポリロタキサンの製造方法が記載されている。
【0009】
また、WO2002−002159(特許文献2)には、ポリロタキサンの環状分子(α−シクロデキストリン)をポリエチレングリコールを用いて架橋する方法が記載されている。
【0010】
また、WO2007−026578(特許文献3)には、α−シクロデキストリンの水酸基を疎水性基であるε−カプロラクトンで置換してトルエン、酢酸エチルに溶解可能なポリロタキサンを製造する方法に関して記載されており、WO2010−092948(特許文献4)およびWO2007−040262(特許文献5)には、α−シクロデキストリンの水酸基を疎水性基であるε−カプロラクトンで置換したポリロタキサンを含む塗料が記載されている。
【0011】
また、WO2009−136618(特許文献6)には、環状分子であるα−シクロデキストリンの水酸基の一部または全部が有機ハロゲン化合物の残基で置換されてラジカル重合開示部位を形成するポリロタキサンに関して記載している。
【0012】
しかし、以前に知られたポリロタキサン化合物を使用するコーティング材料の場合、耐スクラッチ性、耐薬品性および耐摩耗性などのコーティング材料として確保しなければならない機械的物性を十分に有さないか、またはスクラッチや外部損傷に対して十分な自己治癒能力を有さないなどの問題点があるため、商用化に一定の限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO2005−080469
【特許文献2】WO2002−002159
【特許文献3】WO2007−026578
【特許文献4】WO2010−092948
【特許文献5】WO2007−040262
【特許文献6】WO2009−136618
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、高い耐スクラッチ性、耐薬品性および耐摩耗性などの優れた機械的物性と共に自己治癒能力を実現することができ、高強度を有しながらフィルムのカール(curl)を最少化することができるハードコーティングフィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、末端に(メタ)アクリレート系化合物が40モル%〜70モル%導入されたラクトン系化合物が結合された環状化合物、前記環状化合物を貫通する線状分子、および前記線状分子の両末端に配置されて前記環状化合物の離脱を防止する封鎖基、を含むポリロタキサン化合物(a)とバインダー樹脂(b)との間の架橋物を含むハードコーティング層を含む、ハードコーティングフィルムを提供する。
【0016】
以下、発明の具体的な実施形態に係るハードコーティングフィルムについてより詳細に説明する。
【0017】
発明の一実施形態によれば、末端に(メタ)アクリレート系化合物が40モル%〜70モル%導入されたラクトン系化合物が結合された環状化合物、前記環状化合物を貫通する線状分子、および前記線状分子の両末端に配置されて前記環状化合物の離脱を防止する封鎖基、を含むポリロタキサン化合物(a)とバインダー樹脂(b)との間の架橋物を含むハードコーティング層を含む、ハードコーティングフィルムが提供され得る。
【0018】
本発明者らは、自己治癒能力を有するコーティング材料に使用可能な化合物に関する研究を進行して、前記特定構造を有するポリロタキサン化合物を含む光硬化性コーティング組成物を用いると、優れた耐スクラッチ性、耐薬品性および耐摩耗性などの機械的物性を確保できると共に、スクラッチまたは外部損傷に対して高い自己治癒能力を発揮でき、高強度を有しながらフィルムのカール(curl)を最少化できるハードコーティングフィルムを提供できるという点を実験を通じて確認して発明を完成した。
【0019】
具体的に、上述した光硬化性組成物が光硬化過程を経ながら上述したハードコーティングフィルムが形成され得るが、このようなハードコーティングフィルムで前記ポリロタキサン化合物と前記バインダー樹脂とは架橋結合を形成することができ、このような架橋結合により網状構造が形成され得る。
【0020】
そのために、前記ハードコーティングフィルムは、より高い架橋度を有することができるため、高強度または耐スクラッチ性などの物性を維持しながらも高い弾性または弾性回復力を有することができるため、スクラッチまたは外部損傷に対して高い自己治癒能力を実現でき、最終製品への実際適用の時に曲がる現象(curl)も最少化することができる。
【0021】
前記ポリロタキサン(Poly−rotaxane)は、ダンベル形状の分子(dumbbell shaped molecule)と環状化合物(macrocycle)が構造的に組み合わされている化合物を意味し、前記ダンベル形状の分子は一定の線状分子およびこのような線状分子の両末端に配置された封鎖基を含み、前記線状分子が前記環状化合物の内部を貫通し、前記環状化合物が前記線状分子に沿って移動することができ、前記封鎖基により離脱が防止される。
【0022】
前記ポリロタキサン化合物は、前記環状化合物にラクトン系化合物が結合されており、前記環状化合物に結合されたラクトン系化合物の末端には、(メタ)アクリレート系化合物が結合したことを特徴とする。また、前記ラクトン系化合物の末端には(メタ)アクリレート系化合物が導入され得る。
【0023】
特に、前記ポリロタキサン化合物に含まれている環状化合物の末端には、架橋反応または重合反応に使用可能な二重結合を含み、そのために、前記ポリロタキサン化合物を含む光硬化性コーティング組成物を使用して製造されるハードコーティングフィルムは、より高い耐スクラッチ性、耐薬品性および耐摩耗性などの機械的物性を確保しながらも、使用されるバインダー樹脂とより容易に結合または架橋できるため、高い弾性または弾性回復力を確保でき、スクラッチまたは外部損傷に対して優れた自己治癒能力を実現でき、最終製品への実際適用の時に曲がる現象(curl)も最少化することができる。
【0024】
前記ポリロタキサン化合物で、前記ラクトン系化合物の末端に導入される(メタ)アクリレート系化合物の比率は、40モル%〜70モル%、好ましくは45モル%〜65モル%でありうる。
【0025】
前記ラクトン系化合物の末端に導入される(メタ)アクリレート系化合物の比率が40モル%未満であれば、前記一実施形態のハードコーティングフィルム製造時に十分な架橋反応が起こらず、前記ハードコーティング層が十分な耐スクラッチ性、耐薬品性または耐摩耗性などの機械的物性を確保できないことがあり、またラクトン系化合物の末端に残留しているヒドロキシ作用基が多くなって前記ポリロタキサン化合物の極性(polarity)が高くなることがあり、前記ハードコーティングフィルムの製造過程で使用可能な非極性溶媒(non polar solvent)との相溶性が低くなって最終製品の品質や外観特性が低下することがある。
【0026】
また、前記ラクトン系化合物の末端に導入される(メタ)アクリレート系化合物の比率が70モル%超過であれば、前記一実施形態のハードコーティングフィルム製造時に過度な架橋反応が起こり、前記ハードコーティング層が十分な弾性や自己治癒能力を確保し難いことがあり、前記ポリロタキサン化合物に導入される(メタ)アクリレート系作用基の比率が高くなって前記ハードコーティングフィルムが十分な自己治癒能力を持ち難いことがあり、前記ハードコーティングフィルムの架橋度が非常に高くなって弾性が低下することがあり[脆性(brittleness)大幅増加]、前記ハードコーティングフィルムの製造過程でコーティング液の安定性も低下することがある。
【0027】
本明細書で、(メタ)アクリレート系化合物は、アクリレート系化合物および(メタ)クリルレート系化合物を通称する意味で使用された。
【0028】
前記環状化合物は、前記線状分子を貫通または包囲できる程度の大きさを持つものであれば特別な制限なしに用いることができ、他の重合体や化合物と反応できる水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基またはアルデヒド基などの作用基を含むこともできる。このような環状化合物の具体的な例としてα−シクロデキストリンおよびβ−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンまたはこれらの混合物が挙げられる。
【0029】
前記環状化合物に結合されたラクトン系化合物は、前記環状化合物に直接結合されたり、炭素数1〜10の直鎖または分枝鎖のオキシアルキレン基を介して結合され得る。このような結合を介する作用基は、前記環状化合物または前記ラクトン系化合物に置換された作用基の種類や、前記環状化合物およびラクトン系化合物の反応に使用される化合物の種類によって決定され得る。
【0030】
前記ラクトン系化合物は、炭素数3〜12のラクトン系化合物または炭素数3〜12のラクトン系繰り返し単位を含むポリラクトン系化合物を含むことができる。そのために、前記ラクトン系化合物が前記環状化合物および前記(メタ)アクリレート系化合物と結合すると、つまり、前記ポリロタキサン化合物で前記ラクトン系化合物の残基は下記化学式1の作用基を含むことができる。
【0031】
【化1】
【0032】
前記化学式1中、mは、2〜11の整数であり、好ましくは3〜7の整数であり、前記nは、1〜20の整数であり、好ましくは1〜10の整数である。
【0033】
前記環状化合物に結合されたラクトン系化合物の末端には、(メタ)アクリレート系化合物が導入され得る。前記「導入」は、置換または結合された状態を意味する。
【0034】
具体的に、前記(メタ)アクリレート系化合物は、前記ラクトン系化合物の末端に直接結合されたり、ウレタン結合(−NH−CO−O−)、エーテル結合(−O−)、チオエステル(thioester、−S−CO−O−)結合またはエステル結合(−CO−O−)を通じて結合され得る。前記(メタ)アクリレート系化合物と前記ラクトン系化合物の結合を介する作用基の種類は、前記(メタ)アクリレート系化合物と前記ラクトン系化合物のそれぞれに置換された作用基の種類や、前記(メタ)アクリレート系化合物と前記ラクトン系化合物の反応に使用される化合物の種類によって決定され得る。
【0035】
例えば、イソシアネート基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、チオエート基(thioate)またはハロゲン基を1以上含む(メタ)アクリレート系化合物をラクトン系化合物が結合された環状化合物と反応させる場合、直接結合、ウレタン結合(−NH−CO−O−)、エーテル結合(−O−)、チオエステル(thioester、−S−CO−O−)結合またはエステル結合(−CO−O−)が生成され得る。また、ラクトン系化合物が結合された環状化合物にイソシアネート基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、チオエート基(thioate)またはハロゲン基を2以上含む化合物と反応させた結果物を、1以上のヒドロキシ基またはカルボキシル基を含む(メタ)アクリレート系化合物と反応させると、ウレタン結合(−NH−CO−O−)、エーテル結合(−O−)、チオエステル(thioester、−S−CO−O−)結合またはエステル結合(−CO−O−)が1以上形成され得る。
【0036】
前記(メタ)アクリレート系化合物は、イソシアネート基、カルボキシル基、チオエート基(thioate)、ヒドロキシ基またはハロゲン基が1以上が末端に結合された(メタ)アクリロイルアルキル化合物[(meth)acryloylakyl compound]、(メタ)アクリロイルシクロアルキル化合物[(meth)acryloylcycloakyl compound]または(メタ)アクリロイルアリール化合物[(meth)acryloylaryl compound]でありうる。
【0037】
この時、前記(メタ)アクリロイルアルキル化合物には、炭素数1〜12の直鎖または分枝鎖のアルキレン基が含まれ、前記(メタ)アクリロイルシクロアルキル化合物[(meth)acryloylcycloakyl compound]には、炭素数4〜20のシクロアルキレン基(cycloalkylene)が含まれ、前記(メタ)アクリロイルアリール化合物[(meth)acryloylaryl compound]には、炭素数6〜20のアリーレン基(arylene)が含まれ得る。
【0038】
そのために、前記(メタ)アクリレート系化合物が前記ラクトン系化合物の末端に結合すると、つまり、前記ポリロタキサン化合物で前記(メタ)アクリレート系化合物の残基は下記化学式2の作用基を含むことができる。
【0039】
【化2】
【0040】
前記化学式2中、R1は、水素またはメチルであり、R2は、炭素数1〜12の直鎖または分枝鎖のアルキレン基、炭素数4〜20のシクロアルキレン基(cycloalkylene)または炭素数6〜20のアリーレン基(arylene)でありうる。前記*は、結合地点を意味する。
【0041】
一方、前記線状分子としては、一定以上の分子量を有すると共に、直鎖形態を有する化合物は大きな制限なしに使用することができるが、ポリアルキレン系化合物またはポリラクトン系化合物を使用することが好ましい。具体的に、炭素数1〜8のオキシアルキレン繰り返し単位を含むポリオキシアルキレン系化合物または炭素数3〜10のラクトン系繰り返し単位を有するポリラクトン系化合物を使用することができる。
【0042】
そして、このような線状分子は、1,000〜50,000の重量平均分子量を有することができる。前記線状分子の重量平均分子量が過度に小さい場合、これを使用して製造されるコーティング材料の機械的物性または自己治癒能力が十分でないことがあり、前記重量平均分子量が過度に大きい場合、製造されるコーティング材料の相溶性が低下したり外観特性や材料の均一性が大きく低下することがある。
【0043】
一方、前記封鎖基は、製造されるポリロタキサン化合物の特性により適切に調節することができ、例えばジニトロフェニル基、シクロデキストリン基、アダマンタン基、トリチル基、フルオレセイン基およびピレン基からなる群より選ばれた1種または2種以上を使用することができる。
【0044】
上述した特定構造を有するポリロタキサン化合物は、100,000〜800,000 の重量平均分子量を有することができる。前記ポリロタキサン化合物の重量平均分子量が過度に小さい場合、これを使用して製造されるコーティング材料の機械的物性または自己治癒能力が十分でないことがあり、前記重量平均分子量が過度に大きい場合、製造されるコーティング材料の相溶性が低下したり外観特性や材料の均一性が大きく低下することがある。
【0045】
上述した特定構造を有するポリロタキサン化合物は、100,000〜800,000、好ましくは200,000〜700,000、より好ましくは350,000〜650,000の重量平均分子量を有することができる。前記ポリロタキサン化合物の重量平均分子量が過度に小さい場合、これを使用して製造されるコーティング材料の機械的物性または自己治癒能力が十分でないことがあり、前記重量平均分子量が過度に大きい場合、製造されるコーティング材料の相溶性が低下したり外観特性や材料の均一性が大きく低下することがある。
【0046】
また、前記ポリロタキサン化合物は、前記(メタ)アクリレート系化合物が環状化合物の末端に導入されて相対的に低いOH価(OH value)を有することができる。つまり、前記環状化合物にラクトン系化合物のみが結合している場合、多数のヒドロキシ(−OH)が前記ポリロタキサン分子内に存在するようになるが、このようなラクトン系化合物の末端に(メタ)アクリレート系化合物導入されながら前記ポリロタキサン化合物のOH価が低くなり得る。
【0047】
一方、前記ハードコーティングフィルムは、上述したポリロタキサン化合物と架橋物を形成するバインダー樹脂を含むことができる。
【0048】
前記バインダー樹脂の具体的な例としては、ポリシロキサン系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂、これらの混合物またはこれらの共重合体が挙げられ、好ましくはウレタン(メタ)アクリレート系樹脂を使用することができる。
【0049】
前記バインダー樹脂は、20,000〜800,000の重量平均分子量、好ましくは50,000〜700,000の重量平均分子量を有することができる。前記バインダー樹脂の重量平均分子量が過度に小さい場合、前記ハードコーティング層が十分な機械的物性や自己治癒能力を持ち難いことがある。また、前記バインダー樹脂の重量平均分子量が過度に大きい場合、前記ハードコーティング層の形態や物性の均質度が低下することがある。
【0050】
前記バインダー樹脂は、バインダー樹脂自体で使用されて前記ハードコーティング層を形成することもでき、前記バインダー樹脂の前駆体、例えば前記バインダー樹脂合成用単量体またはオリゴマーからも形成され得る。
【0051】
前記バインダー樹脂の前駆体は、光硬化過程、つまり、一定の紫外線または可視光線が照射されると、一定の高分子樹脂を形成することができ、バインダー樹脂の前駆体間に架橋反応を起こしたり前記ポリロタキサン化合物と架橋反応を起こして上述した架橋物を形成することもできる。
【0052】
前記バインダー樹脂の前駆体の具体的な例としては、(メタ)アクリレート基、ビニル基、シロキサン基、エポキシ基およびウレタン基からなる群より選ばれた1種以上の作用基を含む単量体またはオリゴマーを含むことができる。
【0053】
そして、前記バインダー樹脂の前駆体として、上述した単量体またはオリゴマー1種を使用してバインダー樹脂を形成することもできるが、上述した単量体またはオリゴマー2種以上を使用してバインダー樹脂を形成することもできる。
【0054】
前記(メタ)アクリレート基を含む単量体の例として、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチレンプロピルトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、またはこれらの2以上の混合物が挙げられる。
【0055】
前記(メタ)アクリレート基を含むオリゴマーの具体的な例としては、(メタ)アクリレート基を2〜10個を含むウレタン変性アクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、エーテルアクリレートオリゴマーなどが挙げられる。このようなオリゴマーの重量平均分子量は、1,000〜10,000でありうる。
【0056】
前記ビニル基を含む単量体の具体的な例としては、ジビニルベンゼン、スチレンパラメチルスチレンなどがある。
【0057】
前記ウレタン基を含む単量体の具体的な例として、(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性(メタ)アクリレートおよびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレートとポリイソシアネートが反応して得られたウレタンアクリレートなどが挙げられる。
【0058】
一方、前記ハードコーティングフィルムは、前記ポリロタキサン化合物(a)とバインダー樹脂(b)との間の架橋物に分散している無機微細粒子をさらに含むことができる。
【0059】
前記無機微細粒子は、ナノスケールである無機微細粒子、例えば粒径が約100nm以下、または約10〜約100nm、または約10〜約50nmのナノ微細粒子を含むことができる。前記無機微細粒子の具体的な例としては、シリカ微粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0060】
前記ハードコーティングフィルム、より具体的に前記ハードコーティング層が上述した無機微細粒子を含むすることによって、ハードコーティングフィルムの硬度がより向上することができる。
【0061】
前記ハードコーティング層には、前記無機微細粒子が1〜40重量%含まれ得る。
【0062】
前記ハードコーティング層は、上述した無機微細粒子以外にも、界面活性剤、黄変防止剤、レーベリング剤、防汚剤などの通常使用される添加剤を追加的に含むことができる。
【0063】
前記ハードコーティング層は、1〜300μmの厚さを有することができる。
【0064】
前記ハードコーティング層は、1kg荷重下で5H以上、6H以上、または7H以上の鉛筆硬度を有することができる。
【0065】
前記ハードコーティングフィルムは、前記ハードコーティング層と結合した高分子樹脂基材層をさらに含むことができる。また、前記前記ハードコーティングフィルムは、前記高分子樹脂基材層と前記高分子樹脂基材層の一面または両面に結合されたハードコーティング層とを含むことができる。
【0066】
前記高分子樹脂基材層は、通常使用される透明性高分子樹脂を特別な制限なしに使用することができる。このような高分子樹脂基材層の例としては、ポチエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate、PET)のようなポリエステル(polyester)、環状オレフィンコポリマー(cyclic olefin copolymer、COC)、ポリアクリレート(polyacrylate、PAC)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate、PMMA)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketon、PEEK)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate、PEN)、ポリエーテルイミド(polyetherimide、PEI)、ポリイミド(polyimide、PI)またはトリアセチルセルロース(triacetylcellulose、TAC)などが挙げられる。
【0067】
前記高分子樹脂基材層は、単層または必要に応じて互いに同一または異なる物質からなる2つ以上の基材を含む多層構造でありうる。具体的に、前記高分子樹脂基材層は、ポチエチレンテレフタレート(PET)の多層構造である基材、ポリメチルメタクリレート(PMMA)/ポリカーボネート(PC)の共押出で形成した2層以上の構造である基材でありうる。
【0068】
前記高分子樹脂基材層の厚さは、特に制限されないが、約5〜約1,200μm、または約50〜約800μmの厚さを有することができる。
【0069】
一方、前記ハードコーティング層は、前記ポリロタキサン化合物(a)、前記バインダー樹脂(b)またはその前駆体、および光開始剤、を含む光硬化性コーティング組成物から製造され得る。
【0070】
具体的に、前記光硬化性コーティング組成物に一定の紫外線または可視光線、例えば200〜400nm波長の紫外線または可視光線を照射することによって光硬化が起こり、ハードコーティングフィルムが提供され得る。このような紫外線または可視光線の露光量は、大きく限定されるのではなく、例えば50〜4,000mJ/cm2が好ましい。また、前記光硬化段階の露光時間も特に限定されるのではなく、使用される露光装置、照射光線の波長または露光量により適切に変化させることができる。
【0071】
前記光硬化性コーティング組成物は、一定の基材上に塗布された以降に光硬化され得る。このような光硬化性コーティング組成物の塗布に使用される方法は、大きく限定されるのではなく、例えばバーコーティング方式、ナイフコーティング方式、ロールコーティング方式、ブレードコーティング方式、ダイコーティング方式、マイクログラビアコーティング方式、コンマコーティング方式、スロットダイコーティング方式、またはリップコーティング方式などを用いることができる。
【0072】
前記光硬化性コーティング組成物の塗布に使用される基材は、大きく限定されるのではないが、前記ハードコーティング層と結合する高分子樹脂基材層で提示した高分子樹脂の基材を使用することができる。このような高分子樹脂基材上に上述した光硬化性コーティング組成物を塗布し光硬化することによって、前記一実施形態のハードコーティングフィルムが提供され得る。
【0073】
前記光硬化性コーティング組成物は、光開始剤を含むことができるが、このような光開始剤としては、当業界で通常使用されると知られている化合物を特別な制限なしに使用することができ、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、オキシム系化合物またはこれらの混合物を使用することができる。
【0074】
そして、このような光開始剤の具体的な例としては、ベンゾフェノン(Benzophenone)、ベンゾイルメチルベンゾエート(Benzoyl methyl benzoate)、アセトフェノン(acetophenone)、2,4−ジエチルチオキサントン(2、4−diehtyl thioxanthone)、2−クロロチオキサントン(2−chloro thioxanthone)、エチルアントラキノン(ethyl anthraquinone)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(1−Hydroxy−cyclohexyl−phenyl−ketone、市販製品としてはCiba社のIrgacure184)または2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(2−Hydroxy−2−methyl−1−phenyl−propan−1−one)などがある。
【0075】
このような光開始剤は、前記ハードコーティングフィルムを製造するための光硬化過程以降に微量で前記ハードコーティングフィルム上に存在することができる。
【0076】
前記光硬化性コーティング組成物は、無機微細粒子をさらに含むことができる。前述のように、前記無機微細粒子は、製造されるハードコーティングフィルムの硬度を高めるために使用される。前記無機微細粒子に関する具体的な内容は、上述したとおりである。
【0077】
一方、前記光硬化性コーティング組成物は、有機溶媒をさらに含むことができる。前記有機溶媒としては、コーティング組成物に使用可能なものと当業界に知られたものであれば特別な制限なしに使用可能である。
【0078】
例えば、メチルイソブチルケトン(methyl isobutyl ketone)、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone)、ジメチルケトン(dimethyl ketone)などのケトン系有機溶媒;イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、イソブチルアルコール(isobutyl alcohol)またはノーマルブチルアルコール(normal butyl alcohol)などのアルコール有機溶媒;エチルアセテート(ethyl acetate)またはノーマルブチルアセテート(normal butyl acetate)などのアセテート有機溶媒;エチルセルソルブ(ethyl cellusolve)またはブチルセルソルブ(butyl cellusolve)などのセルソルブ有機溶媒などを使用することができるが、前記有機溶媒は上述した例に限定されるのではない。
【0079】
前記有機溶媒の使用量は、前記光硬化性コーティング組成物の物性、コーティング方法、または最終製造される製品の具体的な物性を考慮して調節することができ、例えば前記バインダー樹脂またはその前駆体100重量部に対して5〜500重量部使用することができる。このような有機溶媒は、上述した光硬化過程以降に続く乾燥過程を通じて95%以上除去され得る。
【発明の効果】
【0080】
本発明によれば、高い耐スクラッチ性、耐薬品性および耐摩耗性などの優れた機械的物性と共に自己治癒能力を実現することができ、高強度を有しながらフィルムのカール(curl)を最少化することができるハードコーティングフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
図1】合成例1で反応物として使用したポリロタキサンポリマー[A1000]の1H NMRデータを示したものである。
図2】合成例1で反応物として使用したポリロタキサンポリマー[A1000]に含まれているカプロラクトンの構造を確認したgCOSY NMRスペクトルを示したものである。
図3】末端に(メタ)アクリレート系化合物が導入されたラクトン系化合物が結合された環状化合物を含むポリロタキサンの1H NMRデータの一例を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0082】
発明を下記実施例でより詳細に説明する。但し、下記実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容は下記実施例により限定されるのではない。
【0083】
<合成例:ポリロタキサンの合成>
合成例1
カプロラクトンがグラフティングされているポリロタキサンポリマー[A1000、Advanced Soft Material INC]50gを反応器に投入した後、Karenz−AOI[2−acryloylethyl isocyanate、Showadenko(株)]4.53g、ジブチル錫ジラウレート[DBTDL、Merck社]20mg、ヒドラキノンモノメチレンエテール(Hydroquinone monomethylene ether)110mgおよびメチルエチルケトン315gを添加して70℃で5時間反応させて、末端にアクリレート系化合物が導入されたポリラクトン系化合物が結合されたシクロデキストリンを環状化合物として含むポリロタキサンポリマー液(固形分15%)を得た。
【0084】
このようなポリロタキサンポリマー液をn−ヘキサン(n−Hexane)溶媒に落として高分子を沈殿させ、これを濾過して白色の固体高分子(重量平均分子量:500,000)を得ることができた。
【0085】
前記で反応物として使用したポリロタキサンポリマー[A1000]の1H NMRデータは図1のとおりであり、図2のgCOSY NMRスペクトルを通じてポリロタキサンの環状化合物に結合されたカプロラクトンの構造を確認した。
【0086】
そして、前記で最終的に得られたポリロタキサンポリマー液に含まれているポリロタキサンの1H NMRは図3のような形態を有する[ピークの強度(intensity)などは異なり得る]。
【0087】
前記図2のNMRデータを通じてポリロタキサンの環状化合物に含まれているカプロラクトン繰り返し単位の数(図1のm+N)が8.05であることを確認し、繰り返し単位数を8と想定すると、図3の7番ピークは、16.00(2H×8)の強度を有することが分かる。
【0088】
そのために、カプロラクトン繰り返し単位の末端が「OH」で100%置換されると、アクリレート作用基と関係する図3の1番ピークは、4.00(2H×2)になるべきであるため、実際測定された1H NMR値を比較してポリロタキサンの環状化合物に結合されたラクトン系化合物の末端置換率を求めることができる。
【0089】
前記で最終的に得られたポリロタキサンポリマー液(固形分15%)の置換率は46.8%であった。
【0090】
合成例2
カプロラクトンがグラフティングされているポリロタキサンポリマー[A1000、Advanced Soft Material INC]50gを反応器に投入した後、Karenz−AOI[2−acryloylethyl isocyanate、Showadenko(株)]9.06g、ジブチル錫ジラウレート[DBTDL、Merck社]20mg、ヒドラキノンモノメチレンエテール110mgおよびメチルエチルケトン315gを添加して70℃で5時間反応させて、末端にアクリレート系化合物が導入されたポリラクトン系化合物が結合されたシクロデキストリンを環状化合物として含むポリロタキサンポリマー液(固形分15%)を得た。
【0091】
このようなポリロタキサンポリマー液をn−ヘキサン溶媒に落として高分子を沈殿させ、これを濾過して白色の固体高分子(重量平均分子量:500,000)を得ることができた。
【0092】
前記で反応物として使用したポリロタキサンポリマー[A1000]の1H NMRデータは図1のとおりであり、図2のgCOSY NMRスペクトルを通じてポリロタキサンの環状化合物に結合されたカプロラクトンの構造を確認した。
【0093】
そして、前記で最終的に得られたポリロタキサンポリマー液に含まれているポリロタキサンの1H NMRは図3のような形態を有する[ピークの強度(intensity)などは異なり得る]。
【0094】
前記図2のNMRデータを通じてポリロタキサンの環状化合物に含まれているカプロラクトン繰り返し単位の数(図1のm+N)が8.05であることを確認し、繰り返し単位数を8と想定すると、図3の7番ピークは、16.00(2H×8)の強度を有することが分かる。
【0095】
そのために、カプロラクトン繰り返し単位の末端が「OH」で100%置換されると、アクリレート作用基と関係する図3の1番ピークは、4.00(2H×2)になるべきであるため、実際測定された1H NMR値を比較してポリロタキサンの環状化合物に結合されたラクトン系化合物の末端置換率を求めることができる。
【0096】
前記で最終的に得られたポリロタキサンポリマー液(固形分15%)の置換率は60.0%であった。
【0097】
合成例3
100mlのフラスコにカプロラクトンがグラフティングされているポリロタキサンポリマー[A1000、Advanced Soft Material INC]5gを投入した後、2−Isocyanatoethyl acrylate(AOI−VM、Showadenko(株))1.358g、ジブチル錫ジラウレート[DBTDL、Merck社]2mg、ヒドラキノンモノメチレンエテール11mgおよびメチルエチルケトン31.5gを添加して70℃で5時間反応させて、末端にアクリレート系化合物が導入されたポリラクトン系化合物が結合されたシクロデキストリンを環状化合物として含むポリロタキサンポリマー液(固形分14.79%)を得た。
【0098】
このようなポリロタキサンポリマー液をn−ヘキサン溶媒に落として高分子を沈殿させ、これを濾過して白色の固体高分子を得ることができた。
【0099】
合成例1および2と同様な方法で、最終的に得られたポリロタキサンポリマー液に含まれているポリロタキサンの1H NMRは図3のような形態を有することを確認した[ピークの強度(intensity)などは異なり得る]。
【0100】
また、合成例1および2と同様な方法で、ポリロタキサンの環状化合物に結合されたラクトン系化合物の末端置換率を求めた結果、最終的に得られたポリロタキサンポリマー液(固形分15%)の置換率は約100%に近接した。
【0101】
<実施例1〜2および比較例:光硬化性コーティング組成物およびハードコーティングフィルムの製造>
実施例1
(1)光硬化性コーティング組成物の製造
前記合成例1で得られたポリロタキサン100重量部に対して、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート100重量部、ペンタエリトリトールヘキサアクリレート50重量部、UA−200PA(多官能ウレタンアクリレート、新中村社)50重量部および光重合開始剤であるIrgacure−184 10重量部をメチルエチルケトン、酢酸エチルおよび酢酸ブチルを含む混合溶媒に固形分50%になるように混合して光硬化性コーティング組成物(E1)を製造した。
【0102】
(2)ハードコーティングフィルムの製造
前記で得られた光硬化性コーティング組成物をそれぞれTACフィルム(厚さ40μm)にワイヤーバー(8号)を用いてコーティングした。そして、コーティング物を90℃で2分間乾燥した後、200mJ/cm2の紫外線を5秒間照射して硬化した。そして、前記硬化物を130℃オーブンで5分間加熱処理して5μmの厚さを有するハードコーティングフィルムを製造した。
【0103】
実施例2
(1)光硬化性コーティング組成物の製造
前記合成例2で得られたポリロタキサンを用いた点を除いては、実施例1と同様な方法で光硬化性コーティング組成物(E2)を製造した
(2)ハードコーティングフィルムの製造
前記光硬化性コーティング組成物(E2)を用いた点を除いては、実施例1と同様な方法でハードコーティングフィルムを製造した。
【0104】
比較例
(1)光硬化性コーティング組成物の製造
前記合成例3で得られたポリロタキサンを用いた点を除いては、実施例1と同様な方法で光硬化性コーティング組成物(CE)を製造した
(2)ハードコーティングフィルムの製造
前記光硬化性コーティング組成物(CE)を用いた点を除いては、実施例1と同様な方法でハードコーティングフィルムを製造した。
【0105】
<実験例:コーティングフィルムの物性評価>
前記実施例で得られたコーティングフィルムの物性を下記のように評価した。
【0106】
1.光学的特性:Haze meter(村上社製のHR−10)を用いて光透過度とヘーズを測定した。
【0107】
2.耐スクラッチ特性の測定:スチールウール(steel wool)に一定の荷重をかけて10回往復でスクラッチを作った後、コーティングフィルムの表面を肉眼で観察し、コーティングフィルムの表面にスクラッチが発生しない最大荷重を測定して耐スクラッチ性を評価した。
【0108】
3.カール(Curl)発生の測定:前記製造されたハードコーティングフィルムを10cm×10cmの大きさで切断し、板ガラス上にハードコーティング層が上に向かうように配置した。そして、前記ハードコーティングフィルムの4つの角部が前記板ガラスから離れた高さを測定し、その平均値をカール特性の指標とした。
【0109】
4.硬度:荷重500gで鉛筆硬度を測定した。
【0110】
前記測定結果を下記表1に示した。
【0111】
【表1】
【0112】
前記表1に示されているように、実施例1および2の組成物をそれぞれ用いて製造されたハードコーティングフィルムは、高い透過度を有しながらも低いヘーズを示して優れた外観特性を有し、それぞれ350gfおよび400gfの荷重がかかるスチールウール(Steel wool)に対してもスクラッチがほとんど発生せず、優れた耐スクラッチ特性を有する点が確認された。
【0113】
特に、実施例1および2の組成物を用いて得られたハードコーティングフィルムは、比較例で得られたハードコーティングフィルムに比べて耐スクラッチ性が高いだけでなく、平面に対して巻かれる程度が微々であるため、カールがほとんど発生しないことが示されて、比較例に比べて硬化収縮によるシワやカール(curl)の発生程度が非常に小さいという点を確認することができた。
図1
図2
図3