(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の成分を含有する処理液を貯留する貯留部と、前記貯留部から供給される前記処理液を使用して基板を処理する処理部と、前記処理部から前記貯留部へ前記処理液を回収する回収部と、前記処理液中の複数の前記成分のうちの少なくともいずれかから選択される補充対象成分を前記貯留部へ補充する補充部とを備える基板液処理装置を用い、前記処理部による処理を含む一連の基板液処理を実行させる制御工程を含み、
前記制御工程は、
前記貯留部内に残存する前記処理液から揮発した前記補充対象成分の揮発量を、前記処理液の前記貯留部への未回収分のうち推定される逸失分に基づいて算出するとともに、算出した該揮発量分を前記補充部より補充させ、
前記制御工程はさらに、
前記処理部への前記処理液の供給時間を変化させた場合の該供給時間と前記貯留部内における前記未回収分との対応関係を示す検量線を生成し、該検量線の切片を前記逸失分として算出するとともに、前記検量線の傾きを前記揮発量分として算出すること
を特徴とする基板液処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する基板液処理装置、基板液処理方法および記憶媒体の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
また、以下では、処理液が、フッ酸とフッ化アンモニウム溶液との混合液であるバッファードフッ酸であり、基板のエッチング処理に使用される場合を主たる例に挙げて説明を行う。また、これに伴い、説明の便宜上、バッファードフッ酸については「BHF」と記載する場合がある。また、BHFの構成成分であるフッ化水素については「HF」と、フッ化アンモニウムについては「NH4F」と、純水については「DIW」と、それぞれ記載する場合がある。
【0015】
図1は、本実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
【0016】
図1に示すように、基板処理システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
【0017】
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚の基板、本実施形態では半導体ウェハ(以下ウェハW)を水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
【0018】
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられ、内部に基板搬送装置13と、受渡部14とを備える。基板搬送装置13は、ウェハWを保持するウェハ保持機構を備える。また、基板搬送装置13は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウェハ保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間でウェハWの搬送を行う。
【0019】
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部15と、複数の処理ユニット16とを備える。複数の処理ユニット16は、搬送部15の両側に並べて設けられる。
【0020】
搬送部15は、内部に基板搬送装置17を備える。基板搬送装置17は、ウェハWを保持するウェハ保持機構を備える。また、基板搬送装置17は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウェハ保持機構を用いて受渡部14と処理ユニット16との間でウェハWの搬送を行う。
【0021】
処理ユニット16は、基板搬送装置17によって搬送されるウェハWに対して所定の基板処理を行う。
【0022】
また、基板処理システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部18と記憶部19とを備える。記憶部19には、基板処理システム1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部18は、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理システム1の動作を制御する。
【0023】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部19にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0024】
上記のように構成された基板処理システム1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCからウェハWを取り出し、取り出したウェハWを受渡部14に載置する。受渡部14に載置されたウェハWは、処理ステーション3の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、処理ユニット16へ搬入される。
【0025】
処理ユニット16へ搬入されたウェハWは、処理ユニット16によって処理された後、基板搬送装置17によって処理ユニット16から搬出されて、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済のウェハWは、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
【0026】
次に、処理ユニット16の概略構成について
図2を参照して説明する。
図2は、処理ユニット16の概略構成を示す図である。
【0027】
図2に示すように、処理ユニット16は、チャンバ20と、基板保持機構30と、処理流体供給部40と、回収カップ50とを備える。
【0028】
チャンバ20は、基板保持機構30と処理流体供給部40と回収カップ50とを収容する。チャンバ20の天井部には、FFU(Fan Filter Unit)21が設けられる。FFU21は、チャンバ20内にダウンフローを形成する。
【0029】
基板保持機構30は、保持部31と、支柱部32と、駆動部33とを備える。保持部31は、ウェハWを水平に保持する。支柱部32は、鉛直方向に延在する部材であり、基端部が駆動部33によって回転可能に支持され、先端部において保持部31を水平に支持する。駆動部33は、支柱部32を鉛直軸まわりに回転させる。かかる基板保持機構30は、駆動部33を用いて支柱部32を回転させることによって支柱部32に支持された保持部31を回転させ、これにより、保持部31に保持されたウェハWを回転させる。
【0030】
処理流体供給部40は、ウェハWに対して処理流体を供給する。処理流体供給部40は、処理流体供給源70に接続される。
【0031】
回収カップ50は、保持部31を取り囲むように配置され、保持部31の回転によってウェハWから飛散する処理液を捕集する。回収カップ50の底部には、排液口51が形成されており、回収カップ50によって捕集された処理液は、かかる排液口51から処理ユニット16の外部へ排出される。また、回収カップ50の底部には、FFU21から供給される気体を処理ユニット16の外部へ排出する排気口52が形成される。
【0032】
次に、基板処理システム1が備える処理液供給系の概略構成について
図3を参照して説明する。
図3は、基板処理システム1が備える処理液供給系の概略構成を示す図である。
【0033】
図3に示すように、基板処理システム1が備える処理液供給系は、複数の処理ユニット16に処理液を供給する処理流体供給源70を有している。
【0034】
処理流体供給源70は、処理液を貯留するタンク102と、タンク102から出てタンク102に戻る循環ライン104とを有している。循環ライン104にはポンプ106が設けられている。ポンプ106は、タンク102から出て循環ライン104を通りタンク102に戻る循環流を形成する。ポンプ106の下流側において循環ライン104には、処理液に含まれるパーティクル等の汚染物質を除去するフィルタ108が設けられている。必要に応じて、循環ライン104に補機類(例えばヒータ等)をさらに設けてもよい。
【0035】
循環ライン104に設定された接続領域110に、1つまたは複数の分岐ライン112が接続されている。各分岐ライン112は、循環ライン104を流れる処理液を対応する処理ユニット16に供給する。各分岐ライン112には、必要に応じて、流量制御弁等の流量調整機構、フィルタ等を設けることができる。
【0036】
基板処理システム1は、タンク102に、処理液または処理液構成成分を補充するタンク液補充部116を有している。タンク102には、タンク102内の処理液を廃棄するためのドレン部118が設けられている。
【0037】
次に、上述した処理液供給系の構成について
図4を参照してより詳細に説明する。
図4は、処理液供給系の具体的な構成の一例を示す図である。
【0038】
図4に示すように、処理液供給系において、タンク液補充部116は、新液補充ライン160と、第1補充液補充ライン170と、第2補充液補充ライン180と、第3補充液補充ライン190とを備える。
【0039】
新液補充ライン160は、処理ユニット16へ供給される処理液として適切な濃度に調整された処理液の新液をタンク102へ供給するラインであり、バルブ161を介して新液供給源162に接続される。なお、新液供給源162は、たとえば処理液がBHFである場合に、HF供給源と、NH4F供給源と、DIW供給源と、混合器とを含んで構成されてもよい。
【0040】
第1補充液補充ライン170は、処理液から揮発した成分を補うための第1補充液をタンク102へ供給するラインであり、バルブ171を介して第1補充液供給源172に接続される。第1補充液は、たとえばアンモニア水(NH4OH)である。
【0041】
同じく、第2補充液補充ライン180は、第2補充液をタンク102へ供給するラインであり、バルブ181を介して第2補充液供給源182に接続される。第2補充液は、たとえばDIWである。
【0042】
同じく、第3補充液補充ライン190は、第3補充液をタンク102へ供給するラインであり、バルブ191を介して第3補充液供給源192に接続される。第3補充液は、たとえばDHFである。
【0043】
また、処理液供給系は、回収ライン113を備える。回収ライン113は、各処理ユニット16に一端が接続されるとともに、他端がタンク102に接続される。各処理ユニット16において使用された処理液は、かかる回収ライン113を通ってタンク102に戻され、再利用される。
【0044】
本実施形態に係る基板処理システム1は、かかる回収ライン113によってタンク102へ回収されなかった処理液の未回収分のうち、基板処理システム1の構造等に起因して逸失した逸失分と、揮発して失われた揮発分とを、それぞれ求める。
【0045】
そして、逸失分については、新液補充ライン160を介して処理液の新液をタンク102へ補充する。また、揮発分については、かかる揮発分中の分量の補充対象成分を、第1補充液補充ライン170、第2補充液補充ライン180および第3補充液補充ライン190の少なくともいずれかを介してタンク102へ補充する。
【0046】
基板処理システム1においてこの「補充制御処理」が制御装置4の制御部18により実行されることにより、タンク102内の処理液の濃度を適正に保つことができる。また、処理液の濃度を適正に保つことで、品質の安定した液処理を行うことが可能となる。「補充制御処理」の詳細な内容については、
図7A以降を用いて後述する。
【0047】
次に、制御装置4についてより具体的に
図5を参照して説明する。
図5は、制御装置4のブロック図である。なお、
図5では、本実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素を機能ブロックで表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0048】
換言すれば、
図5に図示される各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。たとえば、各機能ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0049】
さらに、制御装置4の各機能ブロックにて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサおよび当該プロセッサにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得るものである。
【0050】
まず、既に述べたように、制御装置4は、制御部18と記憶部19とを備える(
図1参照)。制御部18は、たとえばCPUであり、記憶部19に記憶された図示しないプログラムを読み出して実行することにより、たとえば
図5に示す各機能ブロック18aおよび18bとして機能する。つづいて、かかる各機能ブロック18aおよび18bについて説明する。
【0051】
図5に示すように、たとえば制御部18は、基板処理実行部18aと、補充制御処理実行部18bとを備える。また、記憶部19は、レシピ情報19aと、補充制御情報19bとを記憶する。
【0052】
制御部18は基板処理実行部18aとして機能する場合、記憶部19に記憶されたレシピ情報19aに従って処理ユニット16および処理液供給系を制御して、ウェハWに対して処理液を供給してエッチングを行うエッチング処理、ウェハWに対してリンス液を供給するリンス処理およびウェハWを乾燥させる乾燥処理を含む一連の基板処理を実行させる。
【0053】
なお、
図5に示す処理液供給系中、貯留部102は上述のタンク102に、回収部113は上述の回収ライン113に、補充部116は上述のタンク液補充部116に、それぞれ対応する。
【0054】
すなわち、貯留部102は処理液を貯留し、処理ユニット16は貯留部102から供給される処理液を使用してウェハWを処理し、回収部113は処理ユニット16から貯留部102へ処理液を再利用可能に回収する。補充部116は、処理液中の成分のうちの少なくともいずれかから選択される補充対象成分を、後述する補充制御処理実行部18bからの指示に基づいて貯留部102へ補充する。
【0055】
レシピ情報19aは、基板処理の内容を示す情報である。具体的には、基板処理中において処理ユニット16に対して実行させる各処理の内容が予め処理シーケンス順に登録された情報である。
【0056】
ここで、制御部18により制御され、処理ユニット16において実行される一連の基板処理の処理手順について、
図6を参照して説明しておく。
図6は、処理ユニット16において実行される一連の基板処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0057】
図6に示すように、処理ユニット16では、まず、ウェハWの搬入処理が行われる(ステップS101)。かかる搬入処理では、基板搬送装置17(
図1参照)が保持部31の支持ピン(図示略)上にウェハWを載置した後、基板保持機構30に設けられ、ウェハWを側面から保持するチャック(図示略)がウェハWを保持する。
【0058】
つづいて、処理ユニット16では、エッチング処理が行われる(ステップS102)。かかるエッチング処理ではまず、駆動部33が保持部31を回転させることにより、保持部31に保持されたウェハWを所定の回転数で回転させる。つづいて、処理流体供給部40のノズルがウェハWの中央上方に位置する。
【0059】
その後、タンク102から循環ライン104および分岐ライン112を介して供給されるBHFが、ノズルからウェハWの表面へ供給される。ウェハWへ供給されたBHFは、ウェハWの回転に伴う遠心力によってウェハWの表面の全面に広げられる。これにより、ウェハWの表面に形成された膜がBHFによってエッチングされる。
【0060】
つづいて、処理ユニット16では、ウェハWの表面をDIWですすぐリンス処理が行われる(ステップS103)。かかるリンス処理では、図示略のDIW供給源から供給されるDIWが処理流体供給部40のノズルからウェハWの表面へ供給され、ウェハWに残存するBHFを洗い流す。
【0061】
つづいて、処理ユニット16では、乾燥処理が行われる(ステップS104)。かかる乾燥処理では、ウェハWの回転速度を増速させることによってウェハW上のDIWを振り切ってウェハWを乾燥させる。
【0062】
つづいて、処理ユニット16では、搬出処理が行われる(ステップS105)。かかる搬出処理では、駆動部33によるウェハWの回転が停止した後、ウェハWが基板搬送装置17(
図1参照)によって処理ユニット16から搬出される。かかる搬出処理が完了すると、1枚のウェハWについての一連の基板処理が完了する。
【0063】
図5の説明に戻り、次に制御部18が補充制御処理実行部18bとして機能する場合について説明する。制御部18は補充制御処理実行部18bとして機能する場合、基板処理実行部18aがエージングとして実行した所定回数分の一連の基板処理の処理結果に基づいて補充制御処理に必要となる情報群を生成し、補充制御情報19bへ設定する。ここで、「処理結果」には、貯留部102内の状態変化やウェハWの状態変化(たとえばエッチングレート)等が含まれる。
【0064】
補充制御情報19bは、たとえば処理液として用いられるBHFのウェハW1枚あたりの逸失量(後述)や、補充制御処理実行部18bによって算出されるウェハW1枚あたりのHF揮発量等を含むものである。
【0065】
また、補充制御処理実行部18bは、基板処理実行部18aが実運転としての一連の基板処理を実行する場合に、補充制御情報19bの内容や動的に変化する一連の基板処理の処理結果に基づき、補充部116に補充対象成分を含む補充液(たとえばDHF)を貯留部102へ補充させる。
【0066】
具体的にはまず、処理液の成分比に基づき、処理液構成成分のうち、補充対象となる補充対象成分がたとえば人手を介して選択される。補充制御処理実行部18bは、貯留部102内に残存する処理液から揮発した補充対象成分の揮発量を算出し、算出した揮発量分の補充対象成分を含む補充液を補充部116より補充させる。
【0067】
このとき、補充制御処理実行部18bは、処理液の貯留部102への未回収分のうち逸失分を推定し、推定した逸失分に基づいて前述の揮発量を算出する。なお、補充制御処理実行部18bは、前述の逸失分をたとえば貯留部102内における処理液の状態変化に基づいて推定する。また、補充制御処理実行部18bは、逸失分の分量の処理液の新液を補充部116より補充させる。
【0068】
また、補充制御処理実行部18bは、処理液の新液を使用して基板液処理を開始してからの処理時間に基づいて前述の揮発量を算出する。また、補充制御処理実行部18bは、予め設定されたウェハW1枚あたりの逸失量へ、処理液の新液を使用して基板液処理を開始してからのウェハWの処理枚数を乗じることによって前述の逸失分を推定する。
【0069】
以下、
図7A〜
図10を参照してより具体的に補充制御処理の内容について説明する。
図7A〜
図7Cは、組成の異なるBHFごとの組成変動を示す図(その1)〜(その3)である。
【0070】
なお、
図7A〜
図7Cには、組成の異なるBHFを500gずつ準備し、1週間ビーカーに静置した場合のデータを示している。成分比「HF:NH4F」は、
図7Aでは「0.12:39.9」(HF<<<NH4F)、
図7Bでは「5.5:20.0」(HF<NH4F)、
図7Cでは「19.7:20.0」(HF≒NH4F)であるものとする。
【0071】
図7A〜
図7Cに示すように、まず濃度変化については、BHFの組成に関わらずそれぞれ濃度が上昇する。これは、それぞれDIWの蒸発量が大きいことに起因する。なお、DIWの蒸発量はそれぞれ異なる。
【0072】
つづいて、重量変化については、まず
図7Aに示すように、HF<<<NH4F、すなわちHFに対してNH4Fが過剰に存在する場合、NH4Fの重量が徐々に減少し、HFの重量が徐々に増加している。これは、HFが少ないために化学反応式「NH4F→NH3+HF」の反応が起き、NH4Fの分解とHFの生成が進行するためである。
【0073】
かかる場合、増加したHFと新たに反応させるため、アンモニア水(NH4OH)を補充することが有効となる。すなわち、
図7Aに示す例の場合、補充対象成分としてNH3が選択され、補充液としてはこれを含むNH4OHが選択される。
【0074】
また、
図7Bに示すように、HF<NH4F、すなわちHFはNH4Fより少ないものの豊富(HFリッチ)である場合、HFおよびNH4Fともに重量変化はさほど見られない。これは、HFが多いために上記化学反応式の反応が平衡状態であり、水の蒸発が進行するためである。
【0075】
したがって、かかる場合、DIWを補充することが有効となる。すなわち、
図7Bに示す例の場合、補充対象成分としてH2Oが選択され、補充液としてはDIWが選択される。
【0076】
また、
図7Cに示すように、HF≒NH4F、すなわちHFおよびNH4Fの成分比が略1:1である場合、HFの重量が減少し続けている。これは、HFが
図7Bの場合よりさらに多いために上記化学反応式の反応が進まないうえに、HFの蒸発が進行するためである。
【0077】
かかる場合、DHFを補充することが有効となる。すなわち、
図7Cに示す例の場合、補充対象成分としてHFが選択され、補充液としてはこれを含むDHFが選択される。以下では、かかる
図7Cに示したようなHFの蒸発が進行しやすい成分比のBHFが処理液として使用され、補充対象成分としてHFが選択される場合を例に挙げて説明を進める。
【0078】
つづいて、
図8A〜
図8Eは、補充制御処理の説明図(その1)〜(その5)である。なお、
図8A〜
図8Eでは、基板処理実行部18aがエージングとして実行した所定回数分の一連の基板処理を行った場合の処理結果を例に挙げて説明を行う。エージングとしては、BHFをx秒間供給するエッチング処理〜リンス処理〜乾燥処理を含む一連の基板処理を250回(ウェハW250枚分)、x=30,60,120秒のそれぞれの場合について実行したものとする。
【0079】
図8Aに示すように、本実施形態では、たとえばエージングの処理前と処理後とにおけるタンク102内液量の残量につき、処理後の未回収量は、逸失分の分量である逸失量と、揮発分の分量である揮発量とに内訳される点に着目した。
【0080】
ここで、逸失分とは、既に述べたように基板処理システム1の構造等に起因するものであり、たとえば回収カップ50が多段に設けられている場合にカップ間の隙間から抜けたり、バルブの中や配管の中に残留したりして未回収となってしまう分である。
【0081】
そこで、本実施形態では、処理液の未回収分のうち、かかる逸失分を推定することによって揮発分をより正確に求めることができるようにした。これにより、揮発分に含まれていた補充対象成分をより正確な分量で補充することが可能となるので、処理液の濃度を適正に保つのに資することができる。すなわち、品質の安定した液処理を行うのに資することができる。
【0082】
具体的には、
図8Bに示すように、補充制御処理実行部18bはまず、処理前および処理後のタンク102内のHF濃度およびタンク残量それぞれから、エージング前後で失った未回収量中に含まれるHF量を求める。HF濃度は、エージング前後におけるウェハWの状態変化、たとえばエッチングレートの変化に基づいて推定することができる。
【0083】
たとえば
図8Bに示すように、処理前のHF濃度=25.0wt%、タンク残量=81.4kgであった場合、処理前のタンク102内に含まれるHF量=81.4×0.25=20.35kgである。また、処理後のHF濃度=25.5wt%、タンク残量=75.0kgであった場合、処理後のタンク102内に含まれるHF量=75.0×0.255=19.125kgである。したがって、未回収量中のHF量=20.35−19.125、すなわち1.225kgと求めることができる。
【0084】
図8Cに示すように、この未回収量中のHF量=1.225kgのうち、逸失量分を求めることができれば、その全体からの差分から揮発量分を導くことができる。
【0085】
なお、上述したように、逸失分は、基板処理システム1の構造等に起因するものである。別の観点から言えば、逸失分は、処理回数に依存するものであり、ウェハW1枚あたりの逸失量が分かれば、この1枚あたりの逸失量にウェハWの処理枚数を乗じることで求めることができる。これに対し、揮発分は処理時間に依存するものである。処理時間は上述のノズルから処理液が供給された時間であり、かかる時間にはダミーディスペンスとしてウェハWの表面以外へ適宜処理液を吐出する場合等が含まれる。
【0086】
そこで、
図8Dに示すように、補充制御処理実行部18bはたとえば、エージングにおける処理結果から、BHF処理時間(x)、すなわち処理ユニット16のウェハWへのBHFの供給時間を変化させた場合のウェハW1枚あたりのBHF消費量(y)をプロットした検量線を生成する。ここで、BHF消費量は、タンク102内における未回収分に対応する。
【0087】
そして、かかる検量線が示す近似直線から、その切片を、処理時間に依存しない逸失分の分量(逸失量)として求める。また、その近似直線の傾きを、処理時間に依存する揮発分の分量(揮発量)として求める。なお、近似直線であるので、切片および傾きの示す値はあくまで推定値である。
【0088】
かかる近似直線の近似式が、
図8Eに示すように、一例として「y=0.1259x+11.459」として得られたものとする。かかる近似式を用いてさらに具体的に説明する。
【0089】
すなわち、上記近似式が得られた場合、
図8Eに示すように、BHFのウェハW1枚あたりの逸失量は、近似式の切片から11.459ml/wafとなる。BHFの密度が1.1g/mlであった場合、この逸失量はグラム換算で11.459×1.1≒12.605g/wafである。
【0090】
逸失分におけるHF濃度は、たとえばエージングの前後における平均値から25.25wt%とすることができる。処理枚数は上述の通り250枚(waf)である。
【0091】
これにより、逸失量中のHF量は、12.605×0.2525×250=0.795kgとして求めることができる。そして、揮発量中のHF量=未回収量中のHF量−逸失量中のHF量であるから、1.225−0.795=0.430kg、ウェハW1枚あたり換算で1.72g/wafとして求めることができる。なお、上述のように、揮発分は処理時間に依存し、処理時間はダミーディスペンスを含む、ノズルからの処理液の供給時間であるので、この揮発量中のHF量のウェハW1枚あたり換算値はあくまで推定値である。
【0092】
そして、補充制御処理実行部18bは、エージングにおける処理結果からこのようにして求めたBHFのウェハW1枚あたりの逸失量や、揮発量中のHF量(上述のHF揮発量)を含む、補充制御処理に必要となる情報群を補充制御情報19bへ予め設定する。
【0093】
そして、補充制御処理実行部18bは、基板処理実行部18aが実運転としての一連の基板処理を実行する場合に、補充制御情報19bの内容に基づき、タンク液補充部116に適正な分量のHFを含むDHFを適正なタイミングでタンク102へ補充させる。
【0094】
タイミングについては、補充制御情報19bに含まれるウェハW1枚あたりのHF揮発量に基づき、たとえば所定枚数が処理されるたびごとに、ウェハW1枚あたりのHF揮発量×所定枚数分のHFを含むDHFを補充するようにしてもよい。
【0095】
また、たとえば
図9に示すように、補充制御処理実行部18bが、処理枚数に対するエッチングレートの変化パターンを補充制御情報19bに登録しておき、かかる変化パターンの傾向に応じて適正なタイミングを判定するようにしてもよい。なお、変化パターンは、処理液の組成や装置自体の総運転時間等に応じて、複数用意されておくことが好ましい。
【0096】
たとえば、
図9に示すように、補充なしであるときにエッチングレートの傾きが大きい区間について、その区間の始まりとなるタイミング(たとえば、T1〜T3)で、補充制御処理実行部18bがタンク液補充部116に補充を指示するようにしてもよい。すなわち、エッチングレートの変化パターンの傾向から、タイミングを予測するようにしてもよい。
【0097】
また、このようなタイミングを決定するための判定条件には、
図9に示すように、たとえばDHF補充ありの場合に、所定の基準線BLを含む所定領域にエッチングレートが保たれるような条件が加味されていることが好ましい。
【0098】
また、補充制御処理実行部18bは、実運用時において動的に変化する一連の基板処理の処理結果に基づき、補充制御情報19bに含まれる情報群を適宜更新してもよい。これにより、装置自体の経年変化等による影響を抑えることが可能になる。
【0099】
次に、制御部18が補充制御処理実行部18bとして機能する場合の補充制御処理の処理手順について
図10を参照して説明する。
【0100】
図10は、補充制御処理の処理手順を示すフローチャートである。まず、処理液の成分比に基づいて補充対象成分が選択される(ステップS201)。なお、かかる補充対象成分の選択は、たとえばオペレータ等の人手を介して行われるが、たとえば処理液の成分比等を上述の補充制御情報19b等へ予め設定しておき、かかる設定に基づいて制御部18が補充対象成分を選択してもよい。
【0101】
つづいて、制御部18が、処理液の未回収分のうちの逸失分を推定する(ステップS202)。そして、制御部18は、ステップS202で推定した逸失分に基づいて揮発分を算出する(ステップS203)。
【0102】
つづいて、制御部18は、ステップS203で算出した揮発分中の分量の補充対象成分をタンク液補充部116に補充させる(ステップS204)。そして、制御部18は、ステップS202で推定した逸失分に相当する分量の処理液の新液をタンク液補充部116に補充させ(ステップS205)、処理を終了する。なお、
図10に示す補充制御処理は、エージング後を含め、実運用中に適宜繰り返し実行されてもよい。
【0103】
上述してきたように、本実施形態に係る基板処理システム1(「基板液処理装置」の一例に相当)は、タンク102(「貯留部」の一例に相当)と、処理ユニット16(「処理部」の一例に相当)と、回収ライン113(「回収部」の一例に相当)と、タンク液補充部116(「補充部」の一例に相当)と、制御部18とを備える。
【0104】
タンク102は、複数の成分を含有する処理液を貯留する。処理ユニット16は、タンク102から供給される処理液を使用してウェハWを処理する。回収ライン113は、処理ユニット16からタンク102へ処理液を回収する。
【0105】
タンク液補充部116は、処理液中の複数の成分のうちの少なくともいずれかから選択される補充対象成分をタンク102へ補充する。制御部18は、処理ユニット16による処理を含む一連の基板処理(「基板液処理」の一例に相当)を実行させる。
【0106】
また、制御部18は、タンク102内に残存する処理液から揮発した補充対象成分の揮発量を算出し、算出した揮発量分をタンク液補充部116より補充させる。
【0107】
したがって、本実施形態に係る基板処理システム1によれば、処理液の濃度を適正に保って品質の安定した液処理を行うことができる。
【0108】
なお、上述した実施形態では、タンク102内における処理液中の成分濃度をエッチングレートの変化に基づいて推定する場合を例に挙げたが、濃度計等の濃度検出部を用いて予め処理液中の成分濃度を把握しておいてもよい。
【0109】
具体的には、タンク102内における処理液中の成分濃度を検出可能に設けられた濃度検出部をたとえばタンク102や循環ライン104に配置し、制御部18は、かかる濃度検出部の検出結果に基づいてタンク102内における処理液中の補充対象成分の濃度変化を取得する。そして、制御部18は、タンク102内における処理液の残量変化および取得した濃度変化に基づいて未回収分中の補充対象成分の分量を算出する。
【0110】
かかる実施形態の別態様によれば、正確な成分濃度の変化を得ることができるので、精度よく揮発量中の補充対象成分の分量を求めるのに資することができる。また、一度測定して傾向を記憶しておけば、その濃度に対する濃度変化が把握できるので、装置毎に濃度計を設置する必要がなくなり、低コスト化にも資することができる。
【0111】
また、上述した実施形態では、処理液がBHFであり、補充液がDHFである場合を例に挙げたが、補充液を限定するものではなく、たとえば
図7Aで示したNH4OHを補充液とする場合にも適用することができる。
【0112】
また、上述した実施形態では、処理液がBHFである場合を例に挙げたが、処理液を限定するものではない。また、行われる液処理もエッチング処理に限らず、たとえば洗浄処理等、種々の液処理が行われる場合であってもよい。
【0113】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。