(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリシクロオレフィン系ポリマーが反復単位を含み、反復単位は、置換もしくは非置換マレイミド部分、エポキシド部分、ビニル部分、アセチレン部分、インデニル部分、シンナメート部分またはクマリン部分を含む、請求項2〜11のいずれか一項に記載の方法。
膨潤溶媒が、−O−、−OH、−C(=O)−、−C(=O)O−および−COOHからなる群から選択される化学基を含む有機化合物である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
有機電子デバイスにおけるバンク構造であって、前記バンク構造が、ポリシクロオレフィン系ポリマーまたは請求項9〜13のいずれか一項にさらに定義されているポリシクロオレフィン系ポリマーを含み、前記バンク構造がさらに、膨潤溶媒または請求項14〜17のいずれか一項にさらに定義されている膨潤溶媒を含む、前記バンク構造。
基板、ゲート電極、少なくとも1つの誘電体層、ソースおよびドレイン電極であって該ソースおよびドレイン電極の間に位置するチャネル領域を有するもの、少なくともチャネル領域に及ぶウェルを規定するバンク構造、半導体層、を含む有機電子デバイスであって、前記バンク構造が、ポリシクロオレフィン系ポリマーおよび膨潤溶媒を含む、前記有機電子デバイス。
バンク構造が、ポリシクロオレフィン系ポリマーまたは請求項9〜13のいずれか一項にさらに定義されているポリシクロオレフィン系ポリマーを含む誘電体層の一部から形成された、請求項22に記載の有機電子デバイス。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本発明によるボトムゲート型有機電界効果トランジスタデバイスの例示的な概略図である。
【
図2】
図2は、本発明によるトップゲート型有機電界効果トランジスタデバイスの例示的な概略図である。
【
図3】
図3は、本発明による有機電界効果トランジスタデバイスの一部分の例示的な概略図である。
【
図4】
図4は、実施例のトップゲート型有機電界効果トランジスタデバイスの伝達曲線である。
【0007】
発明の詳細な説明
本明細書で使用する用語「有機電界効果トランジスタ」(OFET)は、「有機薄膜トランジスタ」(OTFT)として知られているようなデバイスのサブクラスを含むことが理解される。
また、用語「誘電体」および「絶縁」は、本明細書において交換可能に使用されることが理解される。
さらに、本明細書中で使用する用語「有機電子デバイス」は、用語「有機半導体デバイス」および、かかるデバイスのいくつかの特定の実装、例えば上記に定義した有機電界効果トランジスタなどを含むことが理解される。
本明細書で使用する用語「直交」および「直交性」は、化学的直交性を意味すると理解される。例えば直交溶媒は、これに溶解された材料の層を、前に堆積された層の上への堆積に用いる場合、前記前に堆積された層を溶解しない溶媒を意味する。
【0008】
本明細書で使用する用語「絶縁構造(単数または複数)」および「バンク構造(単数または複数)」は、パターン化構造、例えばパターン層であって、下部の基板上に設けられ、特定の構造例えばウェルなどの、半導体や誘電体等の機能性材料を充填することができるものを前記基板上に定義する、前記パターン化構造を意味すると理解される。パターン化構造は、パターン化された構造と前記基板の間にエネルギーのコントラストが生成されるように選択された、構造規定材料を含む。通常、基板はより高い表面エネルギーを有し、一方パターン化構造はより低い表面エネルギーを有する。基板は例えば、電極、半導体層、または誘電体層などの、電子デバイスの機能層である。絶縁またはバンク構造は、例えば、電子デバイスの半導体などの溶液処理した薄膜の活性領域をより容易に規定するために、すなわち、溶液の、より高い表面エネルギーを有する領域すなわち基板に移動してこれに粘着する傾向を用いることにより、より容易に規定するために使用される。液体を所定の領域に限定することにより、薄膜を、特定のデバイス用途の必要に応じて形成することができる。これは、例えば有機電界効果トランジスタにおいて、有機半導体の限定領域はオフ電流を向上させるので、一定の利益を提供する。用語「バンク構造(単数または複数)」および「絶縁構造(単数または複数)」は、本明細書において交換可能に使用されることが理解される。したがって、バンク構造への言及は絶縁構造も包含する。
【0009】
本明細書で使用する用語「ポリマー」は、1または2種以上の異なる種類の反復単位(分子の最小構成単位)の主鎖を包含する分子を意味すると理解され、一般的に知られている用語「オリゴマー」、「共重合体」、「ホモポリマー」等を含む。さらに、ポリマーという用語は、ポリマー自体に加えて、かかるポリマーの合成に付随する開始剤、触媒および他の要素からの残基も含むと理解され、ここでかかる残基は、そこに共有的に組み込まれていないと理解される。さらに、かかる残基および他の要素は、通常は重合後の精製工程中に除去されるが、典型的にはポリマーと混合または共混合されて、これが容器間または溶媒もしくは分散媒体間で移動される場合に、一般にポリマーと共に残るものである。
【0010】
本明細書で使用する用語「ポリマー組成物」は、少なくとも1つのポリマーと、ポリマー組成物および/またはその中の少なくとも1つのポリマーに特定の特性を提供するため、またはこれを修正するために、少なくとも1つのポリマーに加えられた1または2以上の他の材料、を意味する。ポリマー組成物は、ポリマーを基板へと運んで、その上に層または構造の形成を可能にするための、ビヒクルであることが理解される。例示的な材料としては、限定はされないが、溶媒、抗酸化剤、光開始剤、光増感剤、架橋部分または剤、反応性希釈剤、酸掃去剤、レベリング剤および接着促進剤が挙げられる。さらに、ポリマー組成物は、前述の例示的な材料に加えて、2または3種以上のポリマーのブレンドも包含することが理解される。
【0011】
本発明の電子デバイスは、基板、ゲート電極、ソースおよびドレイン電極、前記ソースおよびドレイン電極の間に位置するチャネル領域、ウェルを規定するバンク構造、および半導体材料の層を含む。また、設計に応じて、前記電子デバイスは、さらなる要素を含んでよい。例えば、これはさらに、誘電体層を含んでよい。または代替的に、前記電子デバイスはさらに、平坦化層およびゲート絶縁体層を含んでもよい。
好ましくは、本発明の電子デバイスは、有機電子デバイスである。より好ましくは、これは、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機発光ダイオード(OLED)、および有機光起電装置からなる群から選択される。さらにより好ましくは、これは、有機電界効果トランジスタ(OFET)または有機発光ダイオード(OLED)である。最も好ましくは、これは、トップゲート型有機電界効果トランジスタまたはボトムゲート型有機電界効果トランジスタである。
【0012】
本発明による電子デバイスの例を、
図1および
図2に模式的に示す。
図1は、本発明によるボトムゲート型有機薄膜トランジスタの例示的な概略図を示し、これは、基板(1)、ゲート電極(2)、誘電体層(3)、ソースおよびドレイン電極(5)、チャネル領域(6)、半導体材料層(7)、バンク構造(8a、8b)およびウェルを有する。
図2は、本発明によるトップゲート型有機薄膜トランジスタの例示的な概略図を示し、これは、基板(1’)、ゲート電極(2’)、平坦化層(4’)、ソースおよびドレイン電極(5’)、チャネル領域(6’)、半導体材料層(7’)、バンク構造(8a’、8b’)およびゲート絶縁層(10’)を有する。
【0013】
図3は、本発明による有機薄膜トランジスタの一部の例示的な概略図を示し、これは、ソースおよびドレイン電極(5”)、半導体材料層(7”)およびバンク構造(8”)を有する。半導体材料層(7”)はウェルに限定され、これの境界はバンク構造(8”)によって規定され、ソースおよびドレイン電極(5”)の間のチャネル領域を包含することに、留意されたい。
基板、ゲート電極、ソースおよびドレイン電極、半導体材料、並びにゲート絶縁層は、当業者によく知られている材料から選択してよい。これらはまた、標準的な方法により製造しデバイスに統合することもできる。例示的な堆積方法としては、液体コーティング、並びにしばしば「CVD」と略記される化学蒸着法、または物理蒸着法が含まれる。これらの全ては当業者に周知であり、文献に見出すことができる。
【0014】
好ましくは、例えば誘電体層、半導体層、平坦化層、またはゲート絶縁層などの機能層の厚さは、0.001μm〜10μmの範囲である。より好ましくは、前記厚さは、0.001μm〜1μmの範囲、最も好ましくは5nm〜500nmの範囲である。しかし、他の厚さもまた同様に使用することができる。
電子デバイスの設計に依存して、本バンク構造は、一般に誘電体層または平坦化層のいずれかから誘導されるが、しかし必ずしもそうではない。したがってバンク構造、誘電体層および平坦化層は、以下に定義されるポリシクロオレフィン系ポリマーを含む。本バンク構造は、多種多様な電子デバイスにおいて、特に有機電界効果トランジスタ(OFET)および有機発光ダイオード(OLED)において、使用することができる。
好ましくは、バンク構造の厚さの、チャネル領域における誘電体層または平坦化層の厚さに対する比率は、少なくとも1.2である。
【0015】
基板
本発明の電子デバイスに用いる基板は、任意の適切な材料であってよい。かかる材料の例は、ガラスおよびポリマー材料である。好適なポリマー材料としては、限定はされないが、アルキド樹脂、アリルエステル、ベンゾシクロブテン、ブタジエン−スチレン、セルロース、セルロースアセテート、エポキシド、エポキシポリマー、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ガラス繊維強化ポリマー、フルオロカーボンポリマー、ヘキサフルオロプロピレンビニリデン−フルオリド共重合体、高密度ポリエチレン、パリレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミド、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリケトン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリシクロオレフィン、シリコーンゴム、およびシリコーンが挙げられる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィンおよびポリエチレンナフタレート材料がより好ましい。さらに、本発明のいくつかの態様について、基板は、例えばポリマー材料、金属またはガラス材料などの任意の好適な材料を、上記の1または2以上の材料でコーティングしたものであることができる。かかる基板を形成する際に、押出し、延伸、ラビングまたは光化学的技術などの方法を用いて、デバイス製造のための均一な表面を提供するだけでなく、その中でのキャリア移動度を強化するために有機半導体材料のプリアライメントを提供することができる。代替的に、基板は、1または2以上の上述のポリマー材料でコーティングされたポリマー材料、金属またはガラスであることができる。
【0016】
電極
本電子デバイスのゲート電極およびソースおよびドレイン電極は、任意の適切な電極材料のものであってよい。かかる電極材料としては、限定することなく、無機または有機材料、またはこれらの混合物が挙げられる。例示的な電極材料としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)またはドープされた共役ポリマー、さらに、黒鉛の分散物またはペースト、またはAu、Ag、Cu、Al、Ni、Moまたはそれらの混合物などの金属の粒子、ならびにCu、Cr、Pt/Pd、Ag、Auなどの金属をスパッターコーティングもしくは蒸着したもの、または酸化インジウムスズ(ITO)、FドープITOまたはAlドープZnOなどの金属酸化物が挙げられる。有機金属前駆体も使用することができ、液相から堆積することができる。ゲート電極、並びにソースおよびドレイン電極は、例えばスプレーコーティング、ディップコーティング、ウェブコーティングまたはスピンコーティングなどの液体コーティングによって、または、例えば物理蒸着法、化学蒸着法、もしくは熱蒸着法を含む真空蒸着法によって、堆積または形成することができる。好適な電極材料および電極を形成するための方法は、一般に当業者に知られており、文献に容易に見出すことができる。
【0017】
半導体
半導体材料は、任意のn型またはp型の有機半導体材料であることができる。好ましくは、前記半導体材料は、少なくとも1×10
−5cm
2V
−1s
−1の電界効果トランジスタ移動度を有する。
本発明によるOSCの態様は、OSCがアクティブチャネル材料として使用されるOFET、OSCが電荷キャリア材料として使用されるOPVデバイス、またはOSCがダイオードなどの層要素である有機整流ダイオード(ORD)のいずれかであることができる。かかる態様のためのOSCは、前述の堆積方法のいずれかによって堆積することができるが、これらは一般にブランケット層として堆積または形成されるため、例えばスプレー、ディップ、ウェブもしくはスピンコーティングなどの溶媒コーティング法、またはインクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷などの印刷法が典型的には用いられて、周囲温度での処理を可能にする。しかしOSCは、任意の液体コーティング技術、例えばインクジェット堆積、またはPVDもしくはCVD技術によって堆積することができる。
【0018】
いくつかの好ましいOFETの態様に対して、形成された半導体層は、2または3種以上の同一または異なる種類の半導体の複合材料であってもよい。例えば、p型OSC材料は、例えば層のドーピング効果を達成するためにn型材料と混合してもよい。本発明のいくつかの好ましい態様において、多層の半導体層が用いられる。例えば、真性半導体層をゲート誘電体界面近くに堆積することができ、高度にドープされた領域を、かかる真性層に隣接してさらにコーティングすることができる。
【0019】
本発明による電子デバイスの態様に使用されるOSC材料は、任意の共役分子であることができ、例えば、好ましくは2または3個以上、非常に好ましくは少なくとも3個の芳香環を含有する芳香族分子である。本発明のいくつかの好ましい態様において、OSCは、5−、6−または7員の芳香環から選択される芳香環を含有し、一方他の好ましい態様において、OSCは、5−または6員の芳香環から選択された芳香環を含有する。OSC材料は、モノマー、オリゴマーまたはポリマーであってよく、1または2以上のモノマー、オリゴマーまたはポリマーの混合物、分散物およびブレンドを含む。
【0020】
OSCの芳香環の各々は、Se、Te、P、Si、B、As、N、OまたはSから、一般にN、OまたはSからから選択される、1または2個以上のヘテロ原子を任意に含有する。さらに芳香環は、アルキル、アルコキシ、ポリアルコキシ、チオアルキル、アシル、アリールまたは置換アリール基、ハロゲンによって任意に置換されていてもよく、ここで、フッ素、シアノ、ニトロ、または−N(R
15)(R
16)で表される任意に置換された第二級もしくは第三級アルキルアミンまたはアリールアミン(式中、R
15およびR
16は、それぞれ独立して、H、任意に置換されたアルキルまたは任意に置換されたアリールである)、アルコキシまたはポリアルコキシ基が、通常用いられる。さらに、R
15およびR
16がアルキルまたはアリールである場合、これらは任意にフッ素化されていてもよい。
上記の芳香環は縮合環であることができ、または共役連結基と連結することができ、共役連結基の例としては、−C(T
1)=C(T
2)−、−C≡C−、−N(R’’’)−、−N=N−、(R’’’)=N−、−N=C(R’’’)−であり、式中、T
1およびT
2は、各々独立して、H、Cl、F、−C≡NまたはC
1−4アルキル基などの低級アルキル基を表し;R’’’は、H、任意に置換されたアルキルまたは任意に置換されたアリールを表す。さらに、R’’’がアルキルまたはアリールの場合、これはフッ素化されることができる。
【0021】
本発明のいくつかの好ましいOEデバイスの態様において、使用可能なOSC材料としては、化合物、オリゴマー、および化合物の誘導体であって、以下からなる群から選択されるものである:ポリアセン、ポリフェニレン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレンなどの共役炭化水素ポリマー、およびこれら共役炭化水素ポリマーのオリゴマー;テトラセン、クリセン、ペンタセン、ピレン、ペリレン、コロネンなどの縮合芳香族炭化水素、またはこれらの可溶性置換誘導体;p−クアテルフェニル(p−4P)、p−キンキフェニル(p−5P)、p−セクシフェニル(p−6P)などのオリゴマーパラ置換フェニレン、またはこれらの可溶性置換誘導体;ポリ(3−置換チオフェン)、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、任意に置換されたポリチエノ[2,3−b]チオフェン、任意に置換されたポリチエノ[3,2−b]チオフェン、ポリ(3−置換セレノフェン)、ポリベンゾチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリ(N−置換ピロール)、ポリ(3−置換ピロール)、ポリ(3,4−二置換ピロール)、ポリフラン、ポリピリジン、ポリ−1,3,4−オキサジアゾール、ポリイソチアナフテン、ポリ(N−置換アニリン)、ポリ(2−置換アニリン)、ポリ(3−置換アニリン)、ポリ(2,3−二置換アニリン)、ポリアズレン、ポリピレンなどの共役複素環式ポリマー;ピラゾリン化合物;ポリセレノフェン;ポリベンゾフラン;ポリインドール;ポリピリダジン;ベンジジン化合物;スチルベン化合物;トリアジン;置換メタロ−または無金属ポルフィン、フタロシアニン、フルオロフタロシアニン、ナフタロシアニンまたはフルオロナフタロシアニン;C
60およびC
70フラーレン;N,N’−ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリール、または置換ジアリール−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドおよびフルオロ誘導体;N,N’−ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリール3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド;バソフェナントロリン;ジフェノキノン;1,3,4−オキサジアゾール;11,11,12,12−テトラシアノナフト−2,6−キノジメタン;α,α’−ビス(ジチエノ[3,2−b2’,3’−d]チオフェン);2,8−ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリールアントラジチオフェン;2,2’−ビスベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン。OSCの液体堆積技術が所望される場合、上記リストからの化合物およびその誘導体は、適切な溶媒または適切な溶媒の混合物中で可溶性であるものに限定される。
【0022】
さらに、本発によるいくつかの好ましい態様において、OSC材料は、チオフェン−2,5−ジイル、3−置換チオフェン−2,5−ジイル、任意に置換されたチエノ[2,3−b]チオフェン−2,5−ジイル、任意に置換されたチエノ[3,2−b]チオフェン−2,5−ジイル、セレノフェン−2,5−ジイル、または3−置換セレノフェン−2,5−ジイルから選択される1または2以上の反復単位を含む、ポリマーまたは共重合体である。
【0023】
さらなる好ましいp型OSCは、電子受容体および電子供与体単位を含む共重合体である。この好ましい態様の好ましい共重合体は、例えば、上記で定義された1または2以上の基Rにより好ましくは4,8−二置換された、1または2以上のベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン−2,5−ジイル単位を含み、さらに基Aおよび基Bから選択される1または2以上のアリールまたはヘテロアリール単位を含み、好ましくは少なくとも1単位の基Aおよび少なくとも1単位の基Bを含む、共重合体であって、ここで基Aは電子供与性を有するアリールまたはヘテロアリール基からなり、および基Bは電子受容性を有するアリールまたはヘテロアリール基からなり、および好ましくは:
【0024】
基Aは、以下からなる:セレノフェン−2,5−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、チエノ[3,2−b]チオフェン−2,5−ジイル、チエノ[2,3−b]チオフェン−2,5−ジイル、セレノフェノ[3,2−b]セレノフェン−2,5−ジイル、セレノフェノ[2,3−b]セレノフェン−2,5−ジイル、セレノフェノ[3,2−b]チオフェン−2,5−ジイル、セレノフェノ[2,3−b]チオフェン−2,5−ジイル、ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン−2,6−ジイル、2,2−ジチオフェン、2,2−ジセレノフェン、ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]シロール−5,5−ジイル、4H−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン−2,6−ジイル、2,7−ジ−チエン−2−イル−カルバゾール、2,7−ジ−チエン−2−イル−フルオレン、インダセノ[1,2−b:5,6−b’]ジチオフェン−2,7−ジイル、ベンゾ[1’’,2’’:4,5;4’’,5’’:4’,5’]ビス(シロロ[3,2−b:3’,2’-b’]チオフェン)−2,7−ジイル、2,7−ジ−チエン−2−イル−インダセノ[1,2−b:5,6−b’]ジチオフェン、2,7−ジ−チエン−2−イル−ベンゾ[1’’,2’’:4,5;4’’,5’’:4’,5’]ビス(シロロ[3,2−b:3’,2’-b’]チオフェン)−2,7−ジイル、および2,7−ジ−チエン−2−イル−フェナントロ[1,10,9,8−c,d,e,f,g]カルバゾール;これらの全ては、1または2個以上、好ましくは1または2個の上記定義の基Rによって任意に置換されている、および
【0025】
基Bは、以下からなる:ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,7−ジイル、5,6−ジアルキルベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,7−ジイル、5,6−ジアルコキシベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,7−ジイル、ベンゾ[2,1,3]セレナジアゾール−4,7−ジイル、5,6−ジアルコキシ−ベンゾ[2,1,3]セレナジアゾール−4,7−ジイル、ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール−4,7,ジイル、ベンゾ[1,2,5]セレナジアゾール−4,7,ジイル、ベンゾ[2,1,3]オキサジアゾール−4,7−ジイル、5,6−ジアルコキシベンゾ[2,1,3]オキサジアゾール−4,7−ジイル、2H−ベンゾトリアゾール−4,7−ジイル、2,3−ジシアノ−1,4−フェニレン、2,5−ジシアノ,1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン、3,4−ジフルオロチオフェン−2,5−ジイル、チエノ[3,4−b]ピラジン−2,5−ジイル、キノキサリン−5,8−ジイル、チエノ[3,4−b]チオフェン−4,6−ジイル、チエノ[3,4−b]チオフェン−6,4−ジイル、および3,6−ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオン;これらの全ては、1または2個以上、好ましくは1または2個の上記定義の基Rによって任意に置換されている。
【0026】
本発明の別の好ましい態様において、OSC材料は、ペンタセン、テトラセン、またはアントラセンなどの置換オリゴアセン、またはその複素環誘導体である。例えばUS 6,690,029またはWO 2005/055248 A1またはUS 7,385,221に記載されているビス(トリアルキルシリルエチニル)オリゴアセンまたはビス(トリアルキルシリルエチニル)ヘテロアセンも有用である。
WO 2005/055248 A1に記載されているように、適切であってレオロジー特性を調整するために必要な場合、本発明のいくつかの態様は、1または2種以上の有機結合剤を含むOSC組成物を使用する。
典型的にはポリマーである結合剤は、絶縁性結合剤または半導体結合剤のいずれかを含んでもよく、またはそれらの混合物は、本明細書において有機結合剤、ポリマー結合剤、または単に結合剤と称されてもよい。
【0027】
本発明による好ましい結合剤は、低誘電率の材料、すなわち、3.3以下の誘電率εを有するものである。有機結合剤は、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.9以下の誘電率εを有する。好ましくは、有機結合剤は、1.7以上の誘電率εを有する。結合剤の誘電率は2.0から2.9の範囲であることが特に好ましい。任意の特定の理論に拘束されることを望まないが、3.3よりも大きい誘電率εの結合剤の使用は、例えばOFETなどの電子デバイスにおけるOSC層の移動度の低下につながる可能性があると考えられている。また、高誘電率結合剤も、デバイスの電流ヒステリシスの増加をもたらす可能性があり、これは望ましくない。
好適な有機結合剤の例としては、ポリスチレン、またはスチレンとα−メチルスチレンのポリマーもしくは共重合体;またはスチレン、α−メチルスチレンおよびブタジエンを含む共重合体を、好適に用いることができる。適切な結合剤のさらなる例は、例えばUS 2007/0102696 A1に開示されている。
【0028】
好ましい態様の1つにおいて、有機結合剤は、少なくとも95%の原子、より好ましくは少なくとも98%の原子、および特に全ての原子が、水素、フッ素および炭素原子からなるものである。
結合剤は、膜、より好ましくは可撓性膜を形成できることが好ましい。
結合剤はまた、アクリレート、エポキシ、ビニルエーテル、およびチオレンなどの架橋性結合剤であって、好ましくは十分に低い誘電率を、非常に好ましくは3.3以下を有するものから、選択することができる。結合剤はまた、メソゲン性または液晶であることができる。
【0029】
別の好ましい態様において、結合剤は、共役結合、特に共役二重結合および/または芳香環を含む、半導体結合剤ある。適切で好ましい結合剤は、例えばUS 6,630,566に開示されているポリトリアリールアミンである。
OSCに対する結合剤の割合は、典型的には重量で20:1〜1:20、好ましくは10:1〜1:10、より好ましくは5:1〜1:5、さらにより好ましくは3:1〜1:3、さらに好ましくは2:1〜1:2、および特に1:1である。式Iの化合物の結合剤中の希釈は、従来技術から予想されたであろうこととは対照的に、電荷移動度にはほとんどまたは全く有害な影響を有しないことが見出された。
【0030】
平坦化層、誘電体層およびゲート絶縁層
本電子デバイスの平坦化層、誘電体層およびゲート絶縁層は、任意の適切な誘電体材料のものであってよい。好適な誘電材料は、以下に定義されるポリシクロオレフィンである。
本電界効果トランジスタは、好ましくは、最大3.0の誘電率εを有する誘電体材料からなる誘電体層を使用する。より好ましくは、前記誘電率εは1.3〜3.0、さらにより好ましくは1.7〜3.0、さらにより好ましくは2.0〜3.0、または2.5〜3.0の範囲である。代替的に、いくつかの電界効果トランジスタにおいて、前記誘電率εは2.0〜2.6であってもよい。
【0031】
本明細書で定義される用語「ポリシクロオレフィン」、「多環式オレフィン」、および「ノルボルネン系」は交換可能に使用され、付加重合性モノマーまたは得られる繰り返し単位を意味し、これは以下の構造A1またはA2のいずれかで示されるものなどの、少なくとも1つのノルボルネン部分を包含する。最も単純なノルボルネン系または多環式オレフィンモノマーであるビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(A1)は、一般にノルボルネンと呼ばれる。
【化1】
【0032】
しかし、本明細書で使用する用語「ノルボルネン系モノマー」または「ノルボルネン系反復単位」は、ノルボルネン自体を意味するだけでなく、任意の置換されたノルボルネン、またはそれらの置換および非置換高級環状誘導体、例えば以下の構造B1およびB2であって、式中mが0より大きい整数であるものも指すことが理解される。
【化2】
【0033】
ペンダント基を有するノルボルネン系モノマーの置換によって、それから形成されるポリマーの特性を、個々の用途のニーズを満たすように調整することができる。機能化ノルボルネン系モノマーを重合するために開発された手順および方法は、モノマーの種々の部分および基に対して、優れた柔軟性および許容度を示す。特定のペンダント基を有するモノマーの重合に加えて、異なる様々な機能を有するモノマーをランダムに重合して、使用されるモノマーの種類および比率が、得られるポリマーの全体的なバルク特性を決定する、最終的な材料を形成することができる。
【0034】
本明細書で使用する「ヒドロカルビル」は、各炭素が1または2個以上の水素原子で適切に置換された炭素骨格を含む、ラジカルまたは基を意味する。用語「ハロヒドロカルビル」は、全部ではないが、1または2個以上の水素原子が、ハロゲン(F、Cl、Br、またはI)で置換されたヒドロカルビル基を指す。用語ペルハロカルビルは、各水素がハロゲンで置き換えられているヒドロカルビル基を指す。ヒドロカルビルの非限定的な例としては、限定はされないが、C
1〜C
25アルキル、C
2〜C
24アルケニル、C
2〜C
24アルキニル、C
5〜C
25シクロアルキル、C
6〜C
24アリールまたはC
7〜C
24アラルキルが挙げられる。代表的なアルキル基としては、限定はされないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、およびドデシルが挙げられる。代表的なアルケニル基としては、限定はされないが、ビニル、プロペニル、ブテニルおよびヘキセニルが挙げられる。代表的なアルキニル基としては、限定はされないが、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、および2−ブチニルが挙げられる。代表的なシクロアルキル基としては、限定はされないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロオクチル置換基が挙げられる。代表的なアリール基としては、限定はされないが、フェニル、ビフェニル、ナフチル、およびアントラセニルが挙げられる。代表的なアラルキル基としては、ベンジル、フェネチルおよびフェンブチルが挙げられる。
【0035】
本明細書で使用する用語「ハロヒドロカルビル」は、上記のヒドロカルビル部分を含むが、ここでハロゲン化の程度は、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されているもの(例えば、フルオロメチル基)から、過ハロゲン化とも称される、ヒドロカルビル基上の全ての水素原子がハロゲン原子で置換されているもの(例えば、トリフルオロメチルまたはペルフルオロメチル)までの範囲となることができる。例えば、本発明の態様において有用であり得るハロゲン化アルキル基は、部分的または完全にハロゲン化された、式C
aX
2a+1のアルキル基であって、式中Xは独立して、ハロゲンまたは水素であり、aは、1〜25の整数から選択される。いくつかの態様において、各Xは、独立して、水素、塩素、フッ素、臭素および/またはヨウ素から選択される。他の態様において、各Xは、独立して水素またはフッ素のいずれかである。したがって、代表的なハロヒドロカルビルおよびペルハロカルビルとしては、適切な数の水素原子がそれぞれハロゲン原子で置換されている、上記の例示的なヒドロカルビルが挙げられる。
【0036】
さらに、用語「ヒドロカルビル」、「ハロヒドロカルビル」、および「ペルハロヒドロカルビル」の定義には、1または2個以上の炭素原子が、O、N、P、またはSiから独立して選択されるヘテロ原子で置き換えられている部分も含む。かかるヘテロ原子含有部分は、例えば、「ヘテロ原子−ヒドロカルビル」または「ヘテロヒドロカルビル」のいずれかで称され、これにはとりわけ、エーテル、エポキシ、グリシジルエーテル、アルコール、カルボン酸、エステル、マレイミド、アミン、イミン、アミド、フェノール、アミド−フェノール、シラン、シロキサン、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスフィナイト、ホスホナイト、ホスファイト、ホスホネート、ホスフィネート、およびホスフェートを含む。
【0037】
さらなる例示的なヘテロ原子を含むヒドロカルビル、ハロヒドロカルビル、およびペルハロカルビルとしては、これらに限定されないが、以下を含む:−(CH
2)
n−Ar−(CH
2)
n−C(CF
3)
2−OH、−(CH
2)
n−Ar−(CH
2)
n−OCH
2C(CF
3)
2−OH、−(CH
2)
n−C(CF
3)
2−OH、−((CH
2)
i−O−)
k−(CH
2)−C(CF
3)
2−OH、−(CH
2)
n−C(CF
3)(CH
3)−OH、−(CH
2)
n−C(O)NHR
*、−(CH
2)
n−C(O)CI、−(CH
2)
n−C(O)OR
*、−(CH
2)
n−OR
*、−(CH
2)
n−OC(O)R
*および−(CH
2)
n−C(O)R
*;この式中、nは独立して、0〜12の整数を表し、iは2、3または4であり、kは1、2または3であり、Arはアリール、例えばフェニルであり、およびR
*は独立して、水素、C
1〜C
11アルキル、C
1〜C
11ハロゲン化もしくは過ハロゲン化アルキル、C
2〜C
10アルケニル、C
2〜C
10アルキニル、C
5〜C
12シクロアルキル、C
6〜C
14アリール、C
6〜C
14ハロゲン化もしくは過ハロゲン化アリール、C
7〜C
14アラルキルまたはハロゲン化もしくは過ハロゲン化C
7〜C
14アラルキルを表す。
【0038】
例示的な過ハロゲン化アルキル基としては、限定はされないが、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、−C
2F
5、−C
3F
7、−C
4F
9、−C
6F
13、−C
7F
15、および−C
11F
23が挙げられる。例示的なハロゲン化または過ハロゲン化アリールおよびアラルキル基としては、限定はされないが、式−(CH
2)
x−C
6F
yH
5−yおよび−(CH
2)
x−C
6F
yH
4−y−pC
zF
qH
2z+1−qを有する基が挙げられ、式中、x、y、qおよびzは独立して、それぞれ0〜5、0〜5、0〜9、および1〜4の整数から選択され、および「p」は「パラ」を意味する。具体的には、かかる例示的なハロゲン化または過ハロゲン化アリール基としては、限定はされないが、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンタフルオロベンジル、4−トリフルオロメチルベンジル、ペンタフルオロフェネチル、ペンタフルオロフェンプロピル、およびペンタフルオロフェンブチルが挙げられる。
本発明の好ましい態様において、ノルボルネン系ポリマーには、2または3種以上の異なる種類の反復単位が組み込まれる。
【0039】
本発明の別の好ましい態様において、ノルボルネン系ポリマーには、1または2種以上の異なる種類の反復単位が組み込まれ、ここでかかる種類の反復単位の少なくとも1つは、ある程度の潜状時間を有するペンダント架橋性基または部分を含む。「潜状時間」とは、かかる基が、周囲条件下またはポリマーの初期形成中には架橋せず、かかる反応が、例えば化学線または熱により具体的に開始されたときに架橋することを意味する。かかる潜状的架橋性基は、かかるペンダント架橋性基(例えば置換または非置換のマレイミドまたはマレイミド含有ペンダント基)を包含する1または2種以上のノルボルネン系モノマーを重合反応混合物に提供し、その重合反応を引き起こすことにより、ポリマー骨格中に組み込まれる。好ましい架橋性基としては、置換または非置換マレイミド部分、エポキシド部分、ビニル部分、アセチレン部分、インデニル部分、シンナメート部分またはクマリン部分を含む基が挙げられ、より具体的には、3−モノアルキルマレイミド基または3,4−ジアルキルマレイミド基、エポキシ基、ビニル基、アセチレン基、シンナメート基、インデニル基またはクマリン基から選択される基が挙げられる。
【0040】
別の好ましい態様において、ノルボルネン系ポリマーは、1または2種以上の異なる種類の式Iの反復単位を含み:
【化3】
式中、Zは−CH
2−、−CH
2−CH
2−、または−O−から選択され、mは0〜5の整数であり、R
1、R
2、R
3およびR
4の各々は独立して、H、C
1〜C
25ヒドロカルビル、C
1〜C
25ハロヒドロカルビル、またはC
1〜C
25ペルハロカルビル基から選択される。
【0041】
式Iの反復単位は、式Iaの対応するノルボルネン系モノマーから形成され、式中、Z、mおよびR
1〜4は上記定義の通りである:
【化4】
式IおよびIaの反復単位およびモノマーにおいて、好ましい態様では、Zは−CH
2−であり、mは0、1または2であり、別の好ましい態様において、Zは−CH
2−であり、mは0または1であり、さらに別の好ましい態様において、Zは−CH
2−であり、mは0である。
【0042】
別の好ましい態様において、バンク構造は、単一のノルボルネン系ポリマーまたは、2もしくは3種以上の異なるノルボルネン系ポリマーのブレンドのいずれかを含む、ポリマー組成物を含む。かかるポリマー組成物の態様が単一のノルボルネン系ポリマーを含む場合、かかるポリマーはホモポリマーであることができ、すなわち、ポリマーは1種類のみの反復単位を包含するか、または共重合体、すなわち、2もしくは3種以上の異なる種類の反復単位を包含するポリマーである。かかるポリマー組成物の態様が、異なるポリマーのブレンドを包含する場合、「異なる」とは、ブレンドされたポリマーの各々が、少なくとも1種類の反復単位を包含するか、または他のブレンドされたポリマーのいずれとも異なる反復単位の組み合わせを包含すること、を意味すると理解される。
【0043】
本発明の別の好ましい態様において、ポリマー組成物は、2または3種以上の異なるノルボルネン系ポリマーのブレンドであり、ここで各ポリマーは、式Iの1または2種以上の異なる種類の反復単位を含む:
【化5】
式中、Zは−CH
2−、−CH
2−CH
2−、または−O−から選択され、mは0〜5の整数であり、R
1、R
2、R
3およびR
4の各々は独立して、H、C
1〜C
25ヒドロカルビル基、C
1〜C
25ハロヒドロカルビル基、またはC
1〜C
25ペルハロカルビル基から選択される。
【0044】
本発明のポリマーおよびポリマー組成物の態様は、有利には、多くの具体的な用途に対して特性の異なるセットを提供するように調整することができる。すなわち、いくつかの異なる種類のペンダント基を有するノルボルネン系モノマーの異なる組み合わせを重合して、可撓性、接着性、誘電率、および有機溶媒中の溶解性などの特性の制御用に提供される特性を有するノルボルネン系ポリマーを、提供可能である。例えば、アルキルペンダント基の長さを変えて、ポリマーの弾性率およびガラス転移温度(T
g)の制御を可能にすることができる。また、マレイミド、シンナメート、クマリン、無水物、アルコール、エステル、およびエポキシ官能基から選択されるペンダント基は、架橋を促進し、溶解度特性を変更するために使用することができる。極性官能基、エポキシおよびトリエトキシシリル基を用いて、隣接するデバイス層中の金属、ケイ素、および酸化物への接着性を提供することができる。フッ素化基は、例えば、効果的に表面エネルギー、誘電率を変更し、他の材料に対する溶液の直交性に影響を与えるために使用することができる。
【0045】
したがって、本発明のさらに好ましい態様において、特に、R
1〜4の1つのみがHとは異なる場合において、R
1〜4の1または2以上は、ハロゲン化または過ハロゲン化アリール基またはアラルキル基を表し、これは限定することなく、式−(CH
2)
x−C
6F
yH
5−yおよび−(CH
2)
x−C
6F
yH
4−y−pC
zF
qH
2z+1−qのものを含み、式中、x、y、qおよびzは独立して、それぞれ0〜5、0〜5、0〜9、および1〜4の整数から選択され、および「p」は「パラ」を意味する。具体的にはかかる式は、限定はされないが、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、−C
2F
5、−C
3F
7、−C
4F
9、−C
6F
13、−C
7F
15、および−C
11F
23、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンタフルオロベンジル、4−トリフルオロメチルベンジル、ペンタフルオロフェニルエチル、ペンタフルオロフェンプロピル、およびペンタフルオロフェンブチルを含む。
【0046】
さらにまた、本発明のいくつかの好ましい態様は、特に、R
1〜4の1つのみがHとは異なるかかる態様は、Hとは異なる、端末ヒドロキシ、カルボキシまたはオリゴエチレンオキシ部分を有する極性基を包含し、これは例えば、端末ヒドロキシアルキル、アルキルカルボニルオキシ(例えば、アセチル)、ヒドロキシ−オリゴエチレンオキシ、アルキルオキシ−オリゴエチレンオキシまたはアルキルカルボニルオキシ−オリゴエチレンオキシ部分であり、ここで「オリゴエチレンオキシ」とは、−(CH
2CH
2O)
s−を意味すると理解され、式中sは1、2または3であり;例えば、1−(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル)−2,5,8,11−テトラオキサドデカン(NBTODD)(式中、sは3である)、および5−((2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)メチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(NBTON)(式中、sは2である)である。
さらにまた、本発明の別の好ましい態様は、特に、R
1〜4の1つのみがHとは異なるかかる態様は、Hとは異なる、ペンダントシリル基を有する基を包含し、これは例えば、−(CH
2)
n−SiR
93で表されるシリル基であり、式中、nは0〜12の整数であり、各R
9は独立して、塩素、フッ素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択されるハロゲン、直鎖状または分枝状(C
1〜C
20)アルキル、直鎖状または分枝状(C
1〜C
20)アルコキシ、置換または非置換(C
6〜C
20)アリールオキシ、直鎖状または分枝状(C
1〜C
20)アルキルカルボニルオキシ;直鎖状または分枝状(C
1〜C
20)ジアルキルアミド;置換または非置換(C
6〜C
20)ジアリールアミド;置換または非置換(C
6〜C
20)アルキルアリールアミドを表す。
【0047】
さらにまた、R
1〜4の1つのみがHとは異なるかかる態様について、好ましい態様は、光反応性または架橋性基のいずれかである基を包含する。好ましい光反応性または架橋性基は、連結部分Lおよび機能部分Fを包含する。好ましくは、Lは、C
1〜C
12アルキル、アラルキル、アリール、またはヘテロ原子類似体から選択される基を表すか、またはこれを含む。さらに好ましくは、機能部分Fは、1または2以上のマレイミド部分、3−モノアルキルマレイミド部分または3,4−ジアルキルマレイミド部分、エポキシ部分、ビニル部分、アセチレン部分、シンナメート部分、インデニル部分またはクマリン部分であって、架橋または2+2架橋反応が可能であるものを表すか、またはこれを含む。
本明細書で使用する用語「光反応性および/または架橋性」は、特定のペンダント基を記述するために用いる場合、化学線に反応性であり、その結果反応が架橋反応に入る基、または化学線に非反応性であるが、架橋活性化剤の存在下で架橋反応に入ることができる基、を意味すると理解される。
【0048】
式Iで表される、ペンダント光反応性または架橋性基を含む好ましい反復単位は、以下の式から選択されるものを含むがこれには限定されないノルボルネン系モノマーからの、重合中に形成される:
【化6】
式中、nは1〜8の整数であり、Q
1およびQ
2は、各々互いに独立して、−Hまたは−CH
3であり、およびR’は、−Hまたは−OCH
3である。
【0049】
上述したような式Iのさらに好ましい反復単位は、次の構造式(N−1)〜(N−5)により表される1または2以上のノルボルネン系モノマーから誘導される:
【化7】
【0050】
上記構造式(N−1)〜(N−5)について、mは0〜3の整数であり、Aは、(CZ
2)
n、(CH
2)
n−(CH=CH)
p−(CH
2)
n、(CH
2)
n−O−(CH
2)
n、(CH
2)
n−C
6Q
4−(CH
2)
nから選択される連結、スペーサーまたは架橋基であり、構造1についてはさらに(CH
2)
n−OおよびC(O)−Oから選択され;Rは、H、CZ
3、(CZ
2)
nCZ
3、OH、O−(O)CCH
3、(CH
2CH
2O)
nCH
3、(CH
2)
n−C
6Q
5、p−メトキシ−シンナメート、クマリン、フェニル−3−インデン、エポキシド、C≡C−Si(C
2H
5)
3またはC≡C−Si(i−C
2H
5)
3から選択され、各nは、独立して0〜12の整数であり、pは1〜6までの整数であり、C
6Q
4とC
6Q
5は、Qで置換されたベンゼンを表し、Qは、独立して、H、F、CH
3、CF
3またはOCH
3であり、Zは、独立して、−A−Rが−O−O−(ペルオキシ)結合を含まないという条件のもとで、HまたはFであり、およびR’’は、独立してHまたはCH
3である。
【0051】
上述したような式Iのさらに好ましい反復単位は、限定はされないが、次の式からなる群から選択されるものを含む1または2以上のノルボルネン系モノマーによって形成される:
【化8】
【0052】
【化9】
【0053】
【化10】
【0054】
【化11】
【0055】
【化12】
【0056】
【化13】
【0057】
【化14】
式中、「Me」はメチルを意味し、「Et」はエチルを意味し、「OMe−p」はパラ−メトキシを意味し、「Ph」および「C
6H
5」はフェニルを意味し、「C
6H
4」はフェニレンを意味し、「C
6F
5」はペンタフルオロフェニルを意味し、従属式9および11において「OAc」はアセテートを意味し、従属式25において「PFAc」は−OC(O)−C
7F
15を意味し、メチレン架橋基(ノルボルネン環および官能基の両方に共有結合するCH
2)を有する上記従属式の各々について、これには限定することなく従属式11〜14、16、18、19および55を含むが、メチレン架橋基は、式20におけるように共有結合または−(CH
2)
bによって置き換えられてもよく、およびbは、1〜6の整数である。
【0058】
55の具体的な例が上記で提供されているが、本発明の態様による他のモノマーとしては、式Iaで表されるモノマーであって、R
1、R
2、R
3およびR
4の少なくとも1つが、ヘテロ原子を含むヒドロカルビル、ハロヒドロカルビル、およびペンタハロカルビルであるものを含み、これには、−(CH
2)
n−Ar−(CH
2)
n−C(CF
3)
2−OH、−(CH
2)
n−Ar−(CH
2)
n−OCH
2C(CF
3)
2−OH、−(CH
2)
n−C(CF
3)
2−OH、−((CH
2)
i−O−)
k−(CH
2)−C(CF
3)
2−OH、−(CH
2)
n−C(CF
3)(CH
3)−OH、(CH
2)
n−C(O)NHR
*、(CH
2)
n−C(O)Cl、−(CH
2)
n−(O)OR
*、(CH
2)
n−OR
*、−(CH
2)
n−OC(O)R
*および−(CH
2)
n−C(O)R
*が挙げられ、式中、nは独立して0〜12の整数を表し、iは2、3または4であり、kは1、2または3であり、Arはアリール、例えばフェニルであり、そしてR
*は、独立して、ハロゲン、C
1〜C
11アルキル、C
1〜C
11ハロゲン化または過ハロゲン化アルキル、C
2〜C
10アルケニル、C
2〜C
10アルキニル、C
5〜C
12シクロアルキル、C
6〜C
14アリール、C
6〜C
14ハロゲン化または過ハロゲン化アリール、C
7〜C
14アラルキルまたはハロゲン化もしくは過ハロゲン化アラルキルである。代表的な過ハロゲン化アルキル基としては、限定はされないが、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、−C
2F
5、−C
3F
7、−C
4F
9、−C
7F
15、およびC
11F
23が挙げられる。例示のハロゲン化または過ハロゲン化アリールおよびアラルキル基としては、限定はされないが、式−(CH
2)
x−C
6F
yH
5−yおよび−(CH
2)
x−C
6F
yH
4−y−pC
zF
qH
2z+1−qを有する基を含み、式中、x、y、およびzは、独立して、それぞれ0〜5、0〜5、0〜9、および1〜4の整数から選択される。具体的には、かかる例示のハロゲン化または過ハロゲン化アリール基としては、限定はされないが、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンタフルオロベンジル、4−トリフルオロメチルベンジル、ペンタフルオロフェニルエチル、ペンタフルオロフェンプロピル、およびペンタフルオロフェンブチルが挙げられる。
【0059】
式IおよびIa、ならびに上記の従属式および一般式のそれぞれは、任意の立体化学を示すことなく描かれているが、一般にモノマーの各々は、特に断らない限り、反復単位に変換された場合にそれらの構造を維持するジアステレオマー混合物として得られることに留意すべきである。かかるジアステレオマー混合物のエキソ−およびエンド−異性体はわずかに異なる特性を有し得るため、本発明の好適な態様は、エキソ−またはエンド−異性体どちらかが豊富な異性体の混合物、または本質的に純粋な有利な異性体、のいずれかであるモノマーを用いることにより、かかる差を利用するようになっていることを、さらに理解すべきである。
【0060】
本発明の別の好ましい態様は、反復単位を含む式Iのポリマーであって、式中、R
1〜4の1つ、例えばR
1は、上述のフッ素化または過フッ素化アルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、R
1〜4のその他のものはHである、前記ポリマーに向けられる。好ましくは、かかる反復単位は、上記の従属式15〜26(NBC
4F
9、NBCH
2C
6F
5、NBC
6F
5、NBCH
2C
6H
3F
2、NBCH
2C
6H
4CF
3、NBalkylC
6F
5、FPCNB、FHCNB、FOCHNB、FPCHNB、C
8PFAcNB、PPVENB)からなる群から選択される。より好ましくは、かかる反復単位は、従属式16、17、18、19、20または26(NBCH
2C
6F
5、NBC
6F
5、NBCH
2C
6H
3F
2、NBCH
2C
6H
4CF
3、NBalkylC
6F
5またはPPVENB)からなる群から選択される。
本発明の別の好ましい態様は、反復単位を有する式Iのポリマーであって、式中、R
1〜4の1つ、例えばR
1は、上述の光反応性または架橋性基であり、R
1〜4のその他のものはHである、前記ポリマーに向けられる。好ましくは、かかる反復単位は、上記の従属式27〜50からなる群から選択される。より好ましくは、かかる反復単位は、従属式34、35、36、37、38(DMMIMeNB、DMMIEtNB、DMMIPrNB、DMMIBuNBおよびDMMIHxNB)からなる群から選択される。最も好ましくは、かかる反復単位は、従属式37(DMMIBuNB)のものである。
【0061】
本発明の別の好ましい態様は、反復単位を有する式Iのポリマーであって、式中、R
1〜4の1つ、例えばR
1は、上述のヒドロキシ、カルボキシ、アセトキシまたはオリゴエチレンオキシ部分を有する極性基であり、R
1〜4のその他のものはHである、前記ポリマーに向けられる。好ましくは、かかる反復単位は、上記の従属式9〜14からなる群から選択される。より好ましくは、かかる反復単位は、従属式9(MeOAcNB)のものである。
本発明の別の好ましい態様は、上述のフッ素化反復単位から選択される第1のタイプの反復単位、および、これも上述の架橋性反復単位から選択される第2のタイプの反復単位を有する、ポリマーに向けられる。この態様の好ましいポリマーとしては、従属式15〜26、より好ましくは15、16、17、18、19、20および26(NBC
4F
9、NBCH
2C
6F
5、NBC
6F
5、NBCH
2C
6H
3F
2、NBCH
2C
6H
4CF
3、NBalkylC
6F
5、およびPPVENB)から選択される第1のタイプの反復単位、および従属式34、35、36、37、38(DMMIMeNB、DMMIEtNB、DMMIPrNB、DMMIBuNBおよびDMMIHxNB)から選択される第2のタイプの反復単位を有するポリマーを含む。
【0062】
本発明の別の好ましい態様は、上述のフッ素化反復単位から選択される第1のタイプの反復単位、および、これも上述の架橋性反復単位から選択される第2のタイプの反復単位、および、これも上述の極性反復単位から選択される第3のタイプの反復単位を有する、ポリマーに向けられる。この態様の好ましいポリマーとしては、従属式9(MeOAcNB)の第1のタイプの反復単位、従属式34、35、36、37、または38(DMMIMeNB、DMMIEtNB、DMMIPrNB、DMMIBuNBおよびDMMIHxNB)から選択される第2のタイプの反復単位、および従属式16(NBCH
2C
6F
5)の第3のタイプの反復単位を有するポリマーを含む。
【0063】
本発明の別の好ましい態様は、3種より多くの異なるタイプの式Iの反復単位を有するポリマーに向けられる。本発明の別の好ましい態様は、式Iによる第1のタイプの反復単位を有する第1のポリマーと、少なくとも第1のタイプの反復単位および第1のタイプとは異なる式Iによる第2のタイプの反復単位を有する第2のポリマーの、ポリマーブレンドに向けられる。代替的に、かかるポリマーブレンドは、前述の第2のポリマーを、式Iによる2または3種以上の異なるタイプの反復単位を有する、代替的第1のポリマーと混合して包含することができる。さらに好ましくは、かかるポリマーブレンドは、前述の代替的第1のポリマーを、式Iによる3種の異なるタイプの反復単位を有する代替的第2のポリマーと混合して、包含することができる。
【0064】
本発明の別の好ましい態様は、式Iによる第1および第2の異なるタイプの反復単位を有するポリマーであって、ここでかかる第1および第2タイプの反復単位の割合が、95:5〜5:95である前記ポリマーに向けられる。別の好ましい態様において、かかる第1および第2タイプの反復単位の割合は、80:20〜20:80である。さらに別の好ましい態様において、かかる第1および第2タイプの反復単位の割合は、60:40〜40:60である。さらに別の好ましい態様において、かかる第1および第2タイプの反復単位の割合は、55:45〜45:55である。
適切で好ましいノルボルネンモノマー、ポリマー、およびそれらの合成方法は本明細書に提供され、またUS 5,468,819、US 6,538,087、US 2006/0020068 A1、US 2007/0066775 A1、US 2008/0194740 A1、PCT/EP2011/004281、US Ser.No.13/223,784、PCT/EP2011/004282およびUS Ser.No.13/223,884にも見出すことができ、これらは参照によって本出願に組み込まれる。例えば第VIII族遷移金属触媒を用いた例示的な重合プロセスは、前述のUS 2006/0020068 A1に記載されている。
【0065】
本発明のポリマーの態様は、それらの使用に適切である重量平均分子量(M
w)を有するように形成される。一般に、5,000〜500,000のM
wがいくつかの態様に適することが見出され、一方他の態様については、別のM
wの範囲が有利となり得る。例えば、好ましい態様において、ポリマーは少なくとも30,000のM
wを有し、別の好ましい態様において、ポリマーは少なくとも60,000のM
wを有する。別の好ましい態様において、ポリマーのM
wの上限は400,000までであるが、別の好ましい態様において、ポリマーのM
wの上限は250,000までである。適切なM
wは、それから誘導される硬化ポリマー、膜、層または構造における所望の物理的特性の関数であるので、設計上の選択であり、したがって上記の範囲内の任意のM
wが、本発明の範囲内であることが理解される。
【0066】
本発明の好ましい態様において、架橋性または架橋ポリシクロオレフィン系ポリマーを、バンク構造材料として、またはその成分として使用する。かかる架橋性または架橋ポリマーが、ゲート誘電体層および電子デバイスの構造的完全性、耐久性、機械的抵抗性、および溶媒抵抗性から選択される1または2以上の特性を改善するのに役立つことが見出された。非常に適切で好ましい架橋性ポリマーは、例えば、式Iの1または2種以上の反復単位を有し(式中、R
1〜4の1つまたは2つ以上は架橋性基を示す)、非常に好ましくは、従属式27〜50のいずれか1つから選択されるモノマーにより形成された単位を有するものである。
【0067】
架橋のために、ポリマーは、一般にその堆積後に電子ビームまたは電磁(化学)線、例えばX線、UVまたは可視光などの照射に露光されるか、または熱架橋性基が含まれる場合は加熱される。例えば、化学線を用いて、11nm〜700nm、例えば200〜700nmの波長を用いてポリマーを画像化することができる。露光用の化学線の線量は、一般に25〜15000mJ/cm
2である。適切な放射線源としては、水銀、水銀/キセノン、水銀/ハロゲン、およびキセノンランプ、アルゴンまたはキセノンレーザー光源、X線が含まれる。化学線へのかかる露光は、露光領域に架橋を引き起こすためのものである。架橋する別の反復単位ペンダント基も提供可能であるが、一般にかかる架橋は、マレイミドペンダント基を含む反復単位により提供され、すなわちR
1〜R
4の1つは置換もしくは非置換のマレイミド部分である。マレイミド基の光吸収帯の外側の波長を有する光源を使用することが望ましい場合、放射線感受性光増感剤を加えることができる。ポリマーが熱架橋性基を含む場合、例えば架橋反応が熱的に開始されていなければ、任意に開始剤を加えて架橋反応を開始させてもよい。架橋のための例示的な条件は、88mJの線量で365nmの波長を有するUV照射である。
【0068】
好ましい態様において、バンク構造は、70℃〜130℃の温度で、例えば30秒から10分の間、露光後ベークされる。露光後ベークを用いて、ポリマーの露光部分内の架橋性部分の架橋をさらに促進することができる。
別の好ましい態様において、架橋性ポリマー組成物は、自発的な架橋を防止し、ポリマー組成物の貯蔵寿命を改善するための安定化物質または部分を含む。好適な安定剤は、1または2以上の嵩高いアルキル基、例えばt−ブチル基を、フェノール性OH基に対してオルト位に任意に含有する、カテコールまたはフェノール誘導体などの抗酸化剤である。
【0069】
機能層およびバンク構造を含む個々のデバイス要素の処理、および電子デバイスの完全性を向上させるために、処理に必要な時間を短縮し、一方で形成される要素の物理的特性を維持または向上させることが望ましい。これは、かかる要素の形成に使用する後続の要素および溶媒が直交性であり、したがって互いに溶解しない場合に、維持することができる。かかる直交性を得るのが困難な場合、第1要素を架橋、典型的にはUV架橋してかかる第1要素を第2要素のポリマー組成物に対して不溶性とすることは、いずれかの要素特性の他の要素に対する任意の影響を防止する。
処理に要する時間の短縮は、例えばコーティングプロセスを調整することにより可能であり、一方、UV架橋に必要な時間を減らすことは、ポリマーの化学的調整、またはプロセスの変化の両方によって達成することができる。
【0070】
しかし、ポリマーの化学的修飾は、UV感度がポリマーの特定の性質に関連しているために制限され、例えば、UV感度の増加に向かう変化は、溶解性を減少させ得る。例えば高出力UVの使用による処理の変更は、オゾン雰囲気を作り出す可能性を増加させ、したがって、ポリマー誘電体の表面における望ましくない変化を引き起こす可能性がある。
したがって、本発明の好ましい態様において、ポリマー組成物は、1または2以上の架橋添加剤を含む。かかる添加剤は、バンク構造を形成するために使用されるポリシクロオレフィン系ポリマーのペンダント架橋性基と反応することができる、2または3以上の官能基を含む。かかる架橋添加剤の使用はまた、前述のポリマーの架橋を強化し得ることが理解されるであろう。
UV照射への露光による架橋が好ましい。
【0071】
架橋剤の架橋性基は、好ましくは、マレイミド基、3−モノアルキル−マレイミド基、3,4−ジアルキルマレイミド基、エポキシ基、ビニル基、アセチレン基、インデニル基、シンナメート基またはクマリン基、または、置換もしくは非置換マレイミド部分、エポキシド部分、ビニル部分、アセチレン部分、インデニル部分、シンナメート部分またはクマリン部分を含む基から選択される。
非常に好ましくは、架橋剤は、式III1またはIII2から選択される:
P−A’’X’−A’’−P III1
H
4−cC(A’’−P)
c III2
式中、X’は、O、S、NHまたは単結合であり、A’’は、単結合または連結、スペーサーもしくは架橋基であり、これは、(CZ
2)
n、(CH
2)
n−(CH=CH)
p−(CH
2)
n、(CH
2)
n−O−(CH
2)
n、(CH
2)
n−C
6Q
10−(CH
2)
n、およびC(O)から選択され、式中、各nは、独立して0〜12の整数であり、pは1〜6の整数であり、Zは、独立して、HまたはFであり、C
6Q
10はQで置換されたシクロヘキシルであり、Qは、独立して、H、F、CH
3、CF
3、またはOCH
3であり、Pは架橋性基であり、およびcは、2、3または4であり、および式III1において、X’および2つのA’’基の少なくとも1つは単結合ではない。
【0072】
Pは、好ましくは、マレイミド基、3−モノアルキルマレイミド基、3,4−ジアルキルマレイミド基、エポキシ基、ビニル基、アセチレン基、インデニル基、シンナメート基またはクマリン基から選択されるか、または、置換もしくは非置換マレイミド部分、エポキシド部分、ビニル部分、アセチレン部分、インデニル部分、シンナメート部分またはクマリン部分を含む。
式III1の適切で好ましい化合物は、式C1から選択される:
【化15】
式中、R
10およびR
11は、互いに独立して、HまたはC
1〜C
6アルキル基であり、およびA’’は、式III1で定義される通りである。本発明の好ましい一態様において、架橋剤は、DMMI−ブチル−DMMI、DMMI−ペンチル−DMMI、およびDMMI−ヘキシル−DMMIから選択され、式中「DMMI」は、3,4−ジメチルマレイミドを意味する。
【0073】
スペーサー基A’’は、好ましくは、直鎖状C
1〜C
30アルキレンまたは分枝状C
3〜C
30アルキレンまたは環状C
5〜C
30アルキレンを示し、これらの各々は、非置換またはF、Cl、Br、IもしくはCNにより単置換もしくは多置換されており、ここで任意に、1または2個以上の隣接していないCH
2基は、各々の場合に互いに独立して、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないような様式で、−O−、−S−、−NH−、−NR
18−、−SiR
18R
19−、−C(O)−、−C(O)O−、−OC(O)−、−OC(O)−O−、−S−C(O)−、−C(O)−S−、−CH=CH−または−C≡C−により置き換えられており、R
18およびR
19は、互いに独立して、H、メチル、エチル、またはC
3〜C
12の直鎖もしくは分枝状アルキル基である。
好ましい基A’’は、−(CH
2)
r−、−(CH
2CH
2O)
s−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2−S−CH
2CH
2−または−CH
2CH
2−NH−CH
2CH
2−または−(SiR
18R
19−O)
r−であり、ここでrは、2〜12の整数であり、sは、1、2、または3であり、およびR
18およびR
19は、上記の意味を有する。
【0074】
さらに好ましい基A’’は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、オクタデシレン、エチレンオキシエチレン、メチレンオキシブチレン、エチレン−チオエチレン、エチレン−N−メチル−イミノエチレン、1−メチルアルキレン、エテニレン、プロペニレンおよびブテニレンから選択される。
式C1のものなどの架橋剤の合成は、例えばUS 3,622,321に開示されている。
別の好ましい態様において、ポリマー組成物は、架橋性ポリシクロオレフィン系ポリマーおよび反応性接着促進剤を含む。反応性接着促進剤は、バンク構造が設けられた基板との、例えば化学結合などの相互作用が可能な表面活性基である第1の官能基、および、ポリシクロオレフィン系ポリマーとの、化学結合の形成ありまたは無しのどちらかでの相互作用、例えばポリシクロオレフィン系ポリマー中のペンダント架橋性基と架橋することによる相互作用が可能な、第2の官能基を含む。接着促進剤は特に、バンク構造またはさらなる機能層を設けるためにフォトリソグラフィプロセスが使用される場合に、用いてもよい。
【0075】
好ましくは、接着促進剤は、式IVの化合物である:
G
1−A’’−G
2 IV
式中、G
1は、表面活性基、好ましくはシランまたはシラザン基であり、A’’は、好ましくは上の式III1で定義された、単結合または連結、スペーサーもしくは架橋基であり、G
2は、好ましくは上の式III1で定義された、架橋性基であり、またはG
2は、ポリシクロオレフィン系ポリマーに対する非反応性相溶化基である。本明細書で使用する場合、用語「相溶化」は、通常は非混和性のポリマーの均一なブレンドの形成を促進する、界面剤または基を意味すると理解される。例えば、ポリシクロオレフィン系ポリマーが、例えばモノマー15〜26におけるようにハロゲン化または過ハロゲン化部分を含む場合、相溶化基G
2は、ハロゲン化または過ハロゲン化アルキル基、アリール基またはアラルキル基から選択してよい。
【0076】
G
1は好ましくは、式−SiR
12R
13R
14の基、または式−NH−SiR
12R
13R
14の基であり、式中、R
12、R
13、およびR
14は、それぞれ独立して、ハロゲン、シラザン、C
1〜C
12−アルコキシ、C
1〜C
12−アルキルアミノ、任意に置換されたC
5〜C
20−アリールオキシおよび任意に置換されたC
2〜C
20−ヘテロアリールオキシから選択され、および式中、R
12、R
13、およびR
14の1つまたは2つはまた、C
1〜C
12−アルキル、任意に置換されたC
5〜C
20−アリール、または任意に置換されたC
2〜C
20−ヘテロアリールを示してもよい。
G
2は好ましくは、マレイミド基、3−モノアルキルマレイミド基、3,4−ジアルキルマレイミド基、エポキシ基、ビニル基、アセチル基、インデニル基、シンナメート基またはクマリン基から選択される架橋性基であるか、または、置換もしくは非置換マレイミド部分、エポキシド部分、ビニル部分、アセチル部分、インデニル部分、シンナメート部分またはクマリン部分を含む。
【0077】
別の好ましい態様において、G
2は、非反応性相溶化基であって、C
1〜C
11ハロゲン化もしくは過ハロゲン化アルキル、C
6〜C
14ハロゲン化もしくは過ハロゲン化アリール、またはハロゲン化もしくは過ハロゲン化C
7〜C
14アラルキルから、より好ましくはそれぞれがフッ素化もしくはペルフッ素化されたC
1〜C
11アルキル、C
6〜C
14アリール、またはC
7〜C
14アラルキルから、最も好ましくは−C
4F
9、−(CH
2)
b−C
6F
5、−CH
2C
6F
2、−CH
2−C
2F
5、−CH
2CH
2−C
4F
9、−CH
2−(CF
2)
3−CF
2H、−CH
2CF
2CF
2H、−C
7F
15または−CF
2CFHOC
3F
7、この式中bは1〜6の整数である、から選択されるものである。
A’’は好ましくは、(CZ
2)
n、(CH
2)
n−(CH=CH)
p−(CH
2)
n、(CH
2)
n−O、(CH
2)
n−O−(CH
2)
n、(CH
2)
n−C
6Q
4−(CH
2)
n、(CH
2)
n−C
6Q
10−(CH
2)
nおよびC(O)−Oから選択され、式中、各nは、独立して0〜12の整数であり、pは、1〜6の整数であり、Zは、独立して、HまたはFであり、C
6Q
4は、Qで置換されたフェニルであり、C
6Q
10は、Qで置換されたシクロヘキシルであり、Qは、独立して、H、F、CH
3、CF
3、またはOCH
3である。
【0078】
式IVの適切で好ましい化合物は、式A1から選択される:
【化16】
式中、R
12、R
13、R
14およびA’’は、上記定義の通りであり、およびR
10およびR
11は、各々独立して、HまたはC
1〜C
6アルキルである。特に好ましいのは、DMMI−プロピル−Si(OEt)
3、DMMI−ブチル−Si(OEt)
3、DMMI−ブチル−Si(OMe)
3、DMMI−ヘキシル−Si(OMe)
3であり、式中「DMMI」は、3,4−ジメチルマレイミドを意味する。
【0079】
製造方法
本出願はまた、先に本出願において定義されている電子デバイスの製造方法を提供する。
したがって、一般的な側面において、本出願は、層を膨潤溶媒で選択的に膨潤させ、これによりウェルを規定するバンク構造を形成する、電子デバイスの製造方法を提供する。
より具体的な側面において、前記方法は以下のステップを含む:
a)ポリシクロオレフィン系ポリマーを含む材料を基板上に堆積して、層を形成すること;
b)前記層を膨潤溶媒で選択的に膨潤させ、これによりウェルを規定するバンク構造を形成すること。
【0080】
別のより具体的な側面において、本出願は、以下のステップを含む方法を提供する:
a’)ポリシクロオレフィン系ポリマーを含む材料を基板上に堆積して、層を形成すること;
b’)前記層の表面の一部を化学線に露光すること;および
c’)前記層を膨潤溶媒で選択的に膨潤させ、これによりウェルを規定するバンク構造を形成すること。
第一の選択肢において、本出願は好ましくは、例えば
図1に示すようなボトムゲート型電子デバイスの製造方法を提供する。
【0081】
好ましくは、電子デバイスのかかる製造方法は、次のステップを含む:
I−a)基板(1)を提供すること;
I−b)前記基板(1)上にゲート電極(2)を形成すること;
I−c)ポリシクロオレフィン系ポリマーを含む誘電体材料を、前記ゲート電極(2)および前記基板(1)上に堆積して、誘電体層(3)を形成すること;
I−d)ソースおよびドレイン電極(5)を、前記誘電体層(3)上に、前記ソースおよびドレイン電極(5)が前記ソースおよびドレイン電極(5)の間に位置するチャネル領域(6)によって離れて配置されるようにして、形成すること;
I−e)前記誘電体層(3)の表面の一部を化学線に露光すること、この時露光部分が、少なくともチャネル領域(6)に及ぶようにすること;
I−f)続いて前記誘電体層(3)を膨潤溶媒で膨潤させ、これにより、少なくともチャネル領域に及ぶウェルを規定するバンク構造(8a、8b)を形成すること;および
I−g)半導体材料の層(7)を、前記バンク構造(8a、8b)で規定された前記ウェル内に堆積すること。
【0082】
電子デバイスの別のかかる好ましい製造方法は、次のステップを含む:
II−a)基板(1)を提供すること;
II−b)前記基板(1)上にゲート電極(2)を形成すること;
II−c)ポリシクロオレフィン系ポリマーを含む誘電体材料を、前記ゲート電極(2)および前記基板(1)上に堆積して、誘電体層(3)を形成すること;
II−d)前記誘電体層(3)の表面の一部を化学線に露光すること;
II−e)続いて前記誘電体層(3)を膨潤溶媒で膨潤させ、これによりウェルを規定するバンク構造(8a、8b)を形成すること;
II−f)ソースおよびドレイン電極(5)を前記誘電体層(3)上のウェルに、前記ソースおよびドレイン電極(5)が前記ソースおよびドレイン電極(5)の間に位置するチャネル領域(6)によって離れて配置されるようにして形成すること;
II−g)半導体材料の層(7)を、前記バンク構造(8a、8b)で規定された前記ウェル内に堆積すること。
【0083】
代替的に、本出願は好ましくは、例えば
図2に示すようなトップゲート型電子デバイスの製造方法を提供する。
電子デバイスのかかる製造方法は、次のステップを含む:
III−a)基板(1’)を提供すること;
III−b)ポリシクロオレフィン系ポリマーを含む誘電体材料を前記基板(1’)上に堆積して、平坦化層(4’)を形成すること;
III−c)ソースおよびドレイン電極(5’)を、前記平坦化層(4’)上に、前記ソースおよびドレイン電極(5’)が前記ソースおよびドレイン電極(5’)の間に位置するチャネル領域(6’)によって離れて配置されるようにして、形成すること;
III−d)前記平坦化層(4’)の表面の一部を化学線に露光すること、この時露光部分が、少なくともチャネル領域(6’)に及ぶようにすること;
III−e)続いて前記平坦化層(4’)を膨潤溶媒で膨潤させ、これにより、少なくともチャネル領域(6’)に及ぶウェルを規定するバンク構造(8a’、8b’)を形成すること;
III−f)半導体材料の層(7’)を、前記バンク構造(8a’、8b’)で規定されたウェル内に堆積すること;
III−g)続いてさらなる誘電体材料を堆積して、ゲート絶縁層(10’)を形成すること;および
III−h)ゲート電極(2’)を前記ゲート絶縁層(10’)上に形成すること。
【0084】
電子デバイスの別のかかる代替的な好ましい製造方法は、次のステップを含む:
IV−a)基板(1’)を提供すること;
IV−b)ポリシクロオレフィン系ポリマーを含む誘電体材料を前記基板(1’)上に堆積して、平坦化層(4’)を形成すること;
IV−c)前記平坦化層(4’)の表面の一部を化学線に露光すること;
IV−d)続いて前記平坦化層(4’)を膨潤溶媒で膨潤させ、これによりウェルを規定するバンク構造(8a’、8b’)を形成すること;
IV−e)ソースおよびドレイン電極(5’)を、前記平坦化層(4’)上に、前記ソースおよびドレイン電極が前記ソースおよびドレイン電極(5’)の間に位置するチャネル領域(6’)によって離れて配置されるようにして、形成すること;
IV−f)半導体材料の層(7’)を、前記バンク構造(8a’、8b’)で規定されたウェル内に堆積すること;
IV−g)続いてさらなる誘電体材料を堆積して、ゲート絶縁材料(10’)を形成すること;および
IV−h)ゲート電極(2’)を前記ゲート絶縁層(10’)上に形成すること。
【0085】
好ましくは、ステップII−fおよびIV−eにおいて、ソースおよびドレイン電極を、アライメントマーカーを使用してウェル中に配置する。
基板、ゲート電極、ソースおよびドレイン電極、誘電体層、平坦化層、半導体層およびゲート絶縁体層は、本出願に先に定義された通りであり、本出願に前に示されたようにして製造される。
ステップI−e、II−dおよびIII−dにおいて、誘電体層および平坦化層はそれぞれ、先に本出願に記載したように化学線に露光される。露光される部分は、少なくともチャネル領域に及ぶ。好ましくは、露光部または得られたウェル、または両方が、少なくともチャネル領域およびソースまたはドレイン電極のいずれかまたは両方の少なくとも一部に及ぶ。最も好ましくは、露光部およびウェルは、少なくともチャネル領域およびソースおよびドレイン電極全体に及ぶ。化学線は、露光された領域において誘電体層と平坦化層それぞれの架橋をもたらす。
【0086】
化学線への露光に続いて、誘電体層または平坦化層を膨潤溶媒中で膨潤させる。用語「膨潤溶媒」は、化学線に露光されなかった領域における誘電体層または平坦化層を膨潤させることが可能な溶媒を示すために使用される。膨潤溶媒は、好ましくは、使用条件下で液体であるように選択されることに留意されたい。しかし膨潤溶媒はまた、誘電体または平坦化層を膨潤することが可能であれば、気体であってもよい。用語「膨潤」は、膨潤溶媒の影響による、厚さの増加を示すために使用される。
好ましくは、前記膨潤溶媒は、−O−、−OH、−C(=O)−、−C(=O)O−および−COOHからなる群から選択される化学基を含む有機化合物である。より好ましくは、前記膨潤溶媒は、−OHおよび−C(=O)O−から選択される化学基を含む有機化合物である。さらにより好ましくは、前記膨潤溶媒は、−OHおよび−C(=O)O−両方を含む有機化合物である。さらにより好ましくは、膨潤溶媒は、式HO−(CR
xR
y−)
sCOOR
zのものであり、この式中、R
xおよびR
yは、互いに独立して水素および1〜10個の炭素原子を有するアルキル基から選択され、およびsは、1、2または3である。最も好ましくは、膨潤溶媒は乳酸エチル(H
5C
2−O−C(=O)−C(OH)−CH
3)である。
【0087】
適切な膨潤溶媒の例としては、限定はされないが、エーテル(R
x−O−R
y)、アルデヒド(R
x−C(=O)H)、アルコール(R
x−OH)、ケトン(R
x−C(=O)−R
y)、カルボン酸(R
x−C(=O)OH)、カルボン酸エステル(R
x−C(=O)O−R
y)、ヒドロキシ酸(HO−(CR
xR
y−)
sCOOH)、およびヒドロキシ酸エステル(HO−(CR
xR
y−)
sCOOR
Z)が挙げられ、式中、R
xおよびR
yは、互いに独立して水素および1〜10個の炭素原子を有するアルキル基であり、ただしR
xまたはR
yのどちらかは、水素とは異なる。前記アルキル基は、直鎖状または分枝状であってよい。また水素は、例えば−OHなどの化学基で置き換えられていてもよい。
1〜10個の炭素原子を有するアルキルの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルまたはデシルである。これらのうち、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルが好ましい。
【0088】
エーテルの好ましい例は、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルブチルエーテル、ジイソプロピルエーテルおよびジブチルエーテルである。エーテルのより好ましい例は、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、およびジエチルエーテルである。エーテルの最も好ましい例は、ジエチルエーテルですある。
アルデヒドの好ましい例は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロパナール、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナールおよびデカナールである。より好ましい例は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロパナールおよびブタナールである。最も好ましい例は、ホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドである。
アルコールの好ましい例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノールである。最も好ましいアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノールおよびイソプロパノールである。
【0089】
ケトンの好ましい例は、アセトン、2−ブタノン(エチルメチルケトン)、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、4−ヘキサノン、2−オクタノン、3−オクタノンおよび4−オクタノンである。ケトンの最も好ましい例は、アセトンである。
カルボン酸の好ましい例は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、2−メチルプロピオン酸(イソ酪酸)、吉草酸、2−メチル酪酸および3−メチル酪酸(イソ吉草酸)である。
カルボン酸エステルの好ましい例は、上記カルボン酸のメチル、エチル、プロピルおよびブチルエステルであり、例えばメチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、またはブチルアセテートである。
ヒドロキシ酸の好ましい例は、グリコール酸(HO−CH
2−COOH)、乳酸(H
3C−CH(OH)−COOH)、リンゴ酸(HOOC−CH
2−CH(OH)−COOH)、クエン酸および酒石酸(HOOC−CH(OH)−CH(OH)−COOH)である。ヒドロキシ酸の最も好ましい例は、乳酸である。
【0090】
ヒドロキシ酸エステルの好ましい例は、上記ヒドロキシ酸のメチル、エチル、プロピルおよびブチルエステルである。ヒドロキシ酸エステルの最も好ましい例は、乳酸エチル(H
5C
2−OC(=O)−C(OH)−CH
3)である。
膨潤ステップの後、本方法は好ましくは膨潤後アニーリングステップを含み、ここではバンク構造を、少なくとも60℃から最高で140℃まで膨潤後アニーリング温度にて、1秒から10分の間アニーリングする。前記膨潤後アニーリング温度は、好ましくは少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも80℃、および最も好ましくは少なくとも90℃である。前記膨潤後アニーリング温度は、好ましくは最高130℃、より好ましくは最高120℃、および最も好ましくは最高110℃である。好ましくは、膨潤後アニーリングを行う時間は、少なくとも5秒、より好ましくは少なくとも10秒、さらにより好ましくは少なくとも15秒、および最も好ましくは少なくとも20秒である。好ましくは、膨潤後アニーリングを行う時間は、最大で8分間、より好ましくは最大で6分、さらにより好ましくは最大で4分、さらにより好ましくは最大で3分、および最も好ましくは最大で2分である。
【0091】
好ましくは、膨潤ステップの後、または存在する場合には前記膨潤後アニーリングステップの後に、バンク構造をさらに、上記のように架橋することができる。
好ましくは、半導体材料の層を堆積するステップの前に、すなわちステップI−g、II−g、III−fまたはIV−fの前に、本方法はさらに、バンク構造、誘電体層または平坦化層それぞれの表面エネルギーを変化させる材料の自己組織化単分子膜を堆積することによって、表面処理を行うステップを含む。この表面処理は、例えば、表面処理製剤LisiconM001(登録商標)(Merck KGaA, Darmstadt, Germany)を用いて行うことができる。
【0092】
本発明は、バンク構造を含む電子デバイスの、時間、材料、およびコスト効率の高い製造を可能にすることが見出された。特に本発明は、追加的な処理によりバンク構造を形成する必要性を排除することによって、かかる電子デバイスの効率的な製造を可能にし、ここで追加的な処理とは例えば、バンク構造をポリマー溶液からインクジェット印刷、フレキソ印刷、またはグラビア印刷などの印刷技術を用いて印刷し、続いて溶媒を除去し、例えばUV照射などによってポリマーを任意に硬化する、などである。
本発明者らは、本発明が、前記バンク構造を材料の別個の層として適用する必要性なしに、バンク構造の形成を可能にすることを見出した。最初の実験により、非常に驚くべきことに、本発明の方法は、例えば10μmオーダーの非常に小さなチャネル長を有し、同時に良好なデバイス特性を有する電子デバイスの製造を可能にすることが示された。
【0093】
したがって、本出願はまた、本発明の方法によって得られるバンク構造にも関する。さらに本出願は、本出願で先に定義されたポリシクロオレフィン系ポリマーを含むバンク構造であって、バンク構造が本出願で先に定義された膨潤溶媒を含む、前記バンク構造に関する。
また本出願は、本発明の方法により得られる有機電子デバイスに関する。
さらに本出願は、上記定義の有機電子デバイスを含む製品またはアセンブリであって、該製品またはアセンブリが、集積回路、無線周波数識別タグ、無線周波数識別タグを含むセキュリティマーキングまたはセキュリティデバイス、フラットパネルディスプレイ、FPDのバックプレーン、フラットパネルディスプレイのバックライト、電子写真装置、電子写真記録装置、有機メモリデバイス、センサー、バイオセンサー、およびバイオチップからなる群から選択される、前記製品またはアセンブリに関する。
【0094】
本発明の前述の態様に対する変形を、本発明の範囲内を維持しつつ作り出せることが理解されるであろう。本明細書に開示された各特徴は、特に明記しない限り、同一、等価または類似の目的を果たす代替の特徴によって置き換えてもよい。したがって特に明記しない限り、開示された各特徴は、等価または類似の特徴の、一般的シリーズの一例である。
本明細書に開示された特徴の全ては、かかる特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的であるような組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせることができる。特に、本発明の特徴は、本発明の全ての側面に適用可能であり、任意の組み合わせで使用することができる。同様に、非本質的組み合わせにおいて記載された特徴は、(組み合わせずに)別々に使用してもよい。
本発明を、次の例を参照することによってさらに詳細に説明するが、これは単に例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。