(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方向に延在する支持基板の一方の主面上に、少なくとも第1電極層、有機機能層及び第2電極層をこの順番で積層した有機デバイス部を、前記一方向において所定の間隔をあけて複数形成する形成工程と、
各前記有機デバイス部における前記第1電極層及び前記第2電極層それぞれの一部が露出し且つ複数の前記有機デバイス部に跨がるように、前記一方向に延在する封止部材を前記一方向に沿って貼り合わせる貼合工程と、
前記封止部材が貼合された複数の前記有機デバイス部を個片化する裁断工程と、を含み、
前記貼合工程では、封止基材及び感圧接着剤を有する前記封止部材を前記有機デバイス部に貼り合わせ、
前記裁断工程では、基部に設けられた裁断刃と、前記基部において前記裁断刃を間に挟む位置に対向して一対配置され且つ先端部が前記裁断刃の先端よりも突出すると共に弾性を有する弾性部材と、を有する裁断部を用いて、前記封止部材側から前記裁断刃を進入させ、
前記裁断刃が前記封止部材側から進入したときには前記弾性部材が縮み、前記裁断刃が退避するときに前記弾性部材が伸びる、有機デバイスの製造方法。
前記裁断工程では、枠状を呈する前記裁断刃を複数用いて、複数の前記有機デバイス部を同じタイミングで個片化する、請求項1又は2に記載の有機デバイスの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1に示されるように、本実施形態の有機デバイスの製造方法によって製造される有機EL素子(有機デバイス)1は、支持基板3と、陽極層(第1電極層)5と、有機機能層7と、陰極層(第2電極層)9と、封止部材11と、を備えている。陽極層5、有機機能層7及び陰極層9は、有機EL部(有機デバイス部)10を構成している。
【0015】
[支持基板]
支持基板3は、可視光(波長400nm〜800nmの光)に対して透光性を有する樹脂から構成されている。支持基板3は、フィルム状の基板(フレキシブル基板、可撓性を有する基板)である。支持基板3の厚さは、例えば、30μm以上500μm以下である。支持基板3が樹脂の場合は、ロールツーロール方式の連続時の基板ヨレ、シワ、及び伸びの観点からは45μm以上、可撓性の観点からは125μm以下が好ましい。
【0016】
支持基板3は、例えば、プラスチックフィルムである。支持基板3の材料は、例えば、ポリエーテルスルホン(PES);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物;ポリアクリロニトリル樹脂;アセタール樹脂;ポリイミド樹脂;エポキシ樹脂等を含む。
【0017】
支持基板3の材料は、上記樹脂の中でも、耐熱性が高く、線膨張率が低く、かつ、製造コストが低いことから、ポリエステル樹脂、又はポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリエチレンレテフタレート、又はポリエチレンナフタレートがより好ましい。また、これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
支持基板3の一方の主面3a上には、ガスバリア層、或いは、水分バリア層が配置されていてもよい。支持基板3の他方の主面3bは、発光面である。支持基板3の他方の主面3bには、光取り出しフィルムが設けられていてもよい。光取り出しフィルムは、粘着層によって、支持基板3の他方の主面3bに貼合されていてもよい。なお、支持基板3は、薄膜ガラスであってもよい。支持基板3が薄膜ガラスの場合、その厚さは、強度の観点からは30μm以上、可撓性の観点からは100μm以下が好ましい。
【0019】
[陽極層]
陽極層5は、支持基板3の一方の主面3a上に配置されている。陽極層5には、光透過性を示す電極層が用いられる。光透過性を示す電極としては、電気伝導度の高い金属酸化物、金属硫化物及び金属等の薄膜を用いることができ、光透過率の高い薄膜が好適に用いられる。例えば酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、銅等からなる薄膜が用いられ、これらの中でもITO、IZO、又は酸化スズからなる薄膜が好適に用いられる。
【0020】
陽極層5として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機物の透明導電膜を用いてもよい。また、陽極層5として、上記で挙げられた金属又は金属合金等をメッシュ状にパターニングした電極、或いは、銀を含むナノワイヤーがネットワーク状に形成されている電極を用いてもよい。
【0021】
陽極層5の厚さは、光の透過性、電気伝導度等を考慮して決定することができる。陽極層5の厚さは、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜200nmである。
【0022】
陽極層5の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライ成膜法、インクジェット法、スリットコーター法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、スプレーコーター法等の塗布法を挙げることができる。また、陽極層5は、さらにフォトリソ法、ドライエッチング法、レーザートリミング法等を用いてパターンを形成することができる。塗布法を用いて支持基板3上に直接塗布することで、フォトリソ法、ドライエッチング法、レーザートリミング法等を用いることなくパターンを形成することもできる。
【0023】
[有機機能層]
有機機能層7は、陽極層5の主面(支持基板3に接する面の反対側)及び支持基板3の一方の主面3a上に配置されている。有機機能層7は、発光層を含んでいる。有機機能層7は、通常、主として蛍光及び/又はりん光を発光する発光材料、或いは該発光材料とこれを補助する発光層用ドーパント材料を含む。発光層用ドーパント材料は、例えば発光効率を向上させたり、発光波長を変化させたりするために加えられる。なお、蛍光及び/又はりん光を発光する発光材料は、低分子化合物であってもよいし、高分子化合物であってもよい。有機機能層7を構成する有機物としては、例えば下記の色素材料、金属錯体材料、高分子材料等の蛍光及び/又はりん光を発光する発光材料や、下記の発光層用ドーパント材料等を挙げることができる。
【0024】
(色素材料)
色素材料としては、例えばシクロペンダミン及びその誘導体、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体、トリフェニルアミン及びその誘導体、オキサジアゾール及びその誘導体、ピラゾロキノリン及びその誘導体、ジスチリルベンゼン及びその誘導体、ジスチリルアリーレン及びその誘導体、ピロール及びその誘導体、チオフェン化合物、ピリジン化合物、ペリノン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー、キナクリドン及びその誘導体、クマリン及びその誘導体等を挙げることができる。
【0025】
(金属錯体材料)
金属錯体材料としては、例えばTb、Eu、Dy等の希土類金属、又はAl、Zn、Be、Pt、Ir等を中心金属に有し、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を配位子に有する金属錯体等を挙げることができる。金属錯体としては、例えばイリジウム錯体、白金錯体等の三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、フェナントロリンユーロピウム錯体等を挙げることができる。
【0026】
(高分子材料)
高分子材料としては、例えばポリパラフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリパラフェニレン及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、ポリアセチレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、上記色素材料、又は金属錯体材料を高分子化した材料等を挙げることができる。
【0027】
(発光層用ドーパント材料)
発光層用ドーパント材料としては、例えばペリレン及びその誘導体、クマリン及びその誘導体、ルブレン及びその誘導体、キナクリドン及びその誘導体、スクアリウム及びその誘導体、ポルフィリン及びその誘導体、スチリル色素、テトラセン及びその誘導体、ピラゾロン及びその誘導体、デカシクレン及びその誘導体、フェノキサゾン及びその誘導体等を挙げることができる。
【0028】
有機機能層7の厚さは、通常約2nm〜200nmである。有機機能層7は、例えば、上記のような発光材料を含む塗布液(例えばインク)を用いる塗布法により形成される。発光材料を含む塗布液の溶媒としては、発光材料を溶解するものであれば、限定されない。また、上記のような発光材料は、真空蒸着によって形成されてもよい。
【0029】
[陰極層]
陰極層9は、有機機能層7の主面(陽極層5に接する面の反対側)及び支持基板3の一方の主面3a上に配置されている。陰極層9の材料としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及び周期表第13族金属等を用いることができる。陰極層9の材料としては、具体的には、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、前記金属のうちの2種以上の合金、前記金属のうちの1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1種以上との合金、又はグラファイト若しくはグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等を挙げることができる。
【0030】
また、陰極層9としては、例えば、導電性金属酸化物や、導電性有機物等からなる透明導電性電極を用いることができる。導電性金属酸化物としては、具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、IZO等を挙げることができ、導電性有機物としてポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等を挙げることができる。なお、陰極層9は、2層以上を積層した積層体で構成されていてもよい。なお、後述の電子注入層が陰極層9として用いられる場合もある。
【0031】
陰極層9の厚さは、電気伝導度、耐久性を考慮して設定される。陰極層9の厚さは、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0032】
陰極層9の形成方法としては、例えば、インクジェット法、スリットコーター法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、スプレーコーター法等の塗布法、真空蒸着法、スパッタリング法、金属薄膜を熱圧着するラミネート法等を挙げることができ、真空蒸着法、又はスパッタリング法が好ましい。
【0033】
[封止部材]
封止部材11は、少なくとも有機機能層7を覆うように有機EL素子1において最上部に配置されている。封止部材11は、粘接着部17と、バリア層18と、封止基材19と、を有している。封止部材11は、粘接着部17、バリア層18及び封止基材19の順番で積層されている。粘接着部17は、バリア層18及び封止基材19を陽極層5、有機機能層7及び陰極層9に接着させるために用いられる。粘接着部17は、具体的には、感圧接着剤である。感圧接着剤は、好ましくは、α−オレフィン系樹脂及び粘着付与剤を含有する。α−オレフィン系樹脂及び粘着付与剤に特に限定は無く、従来公知のものを使用することができる。α−オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリイソブチレン等の単独重合体又は共重合体等が挙げられる。該共重合体としては、2種以上のα−オレフィンを重合して得られる共重合体、α−オレフィンとα−オレフィン以外の単量体(例えば、スチレン、非共役ジエン等)とを重合して得られる共重合体等が挙げられる。また、感圧接着剤は、添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、吸湿性金属酸化物(例えば、酸化カルシウム、焼成ハイドロタルサイト等)、吸湿性金属酸化物以外の無機充填剤(例えば、シリカ、マイカ、タルク等)が挙げられる。
【0034】
バリア層18は、ガスバリア機能、特に水分バリア機能を有する。封止基材19は、金属箔、透明なプラスチックフィルム、或いはフレキシブル性を有する薄膜ガラス等からなる。金属箔としては、バリア性の観点から、銅、アルミニウム、又はステンレスが好ましい。金属箔の厚さは、ピンホール抑制の観点から厚い程好ましいが、フレキシブル性の観点も考慮すると10μm〜50μmが好ましい。
【0035】
[有機EL素子の製造方法]
続いて、上記構成を有する有機EL素子1の製造方法について説明する。
【0036】
支持基板3が可撓性を有し、長手方向に延在する基板である形態では、
図2に示される基板乾燥工程S01から貼合工程S05まで、ロールツーロール方式が採用され得る。
【0037】
有機EL素子1を製造する場合、最初に、支持基板3を加熱し、乾燥させる(基板乾燥工程S01)。次に、乾燥された支持基板3の一方の主面3a上に、陽極層5を形成する(陽極層形成工程(形成工程)S02)。陽極層5は、陽極層5の説明の際に例示した形成方法で形成し得る。支持基板3上には、陽極層5が、支持基板3の長手方向において所定の間隔をあけて複数形成されると共に、支持基板3の幅方向(一方向に直交する他方向)において所定の間隔をあけて複数(本実施形態では2つ)形成される。
【0038】
続いて、陽極層5上に、有機機能層7を形成する(有機機能層形成工程(形成工程)S03)。有機機能層7は、有機機能層7の説明の際に例示した形成方法で形成し得る。次に、有機機能層7上に、陰極層9を形成する(陰極層形成工程(形成工程)S04)。陰極層9は、陰極層9の説明の際に例示した形成方法で形成し得る。以上により、
図3に示されるように、支持基板3上には、有機EL部10が、支持基板3の長手方向(
図3のY方向)において所定の間隔をあけて複数形成されると共に、支持基板3の幅方向(
図3のX方向)において所定の間隔をあけて複数(本実施形態では2つ)形成される。つまり、支持基板3の長手方向に沿って、有機EL部10の列が2列形成される。
【0039】
続いて、封止部材11を貼り合わせる(貼合工程S05)。封止部材11は、所定の幅を有し、支持基板3の長手方向に延在する。具体的には、封止部材11は、
図3に示されるように、陽極層5及び陰極層9のそれぞれの一部が露出するように幅が設定され、帯状を呈している。封止部材11は、可撓性を有している。封止部材11は、封止基材19の一方の面に粘接着部17が設けられている。封止部材11は、封止基材19の一方の面にバリア層18を介して粘接着部17が形成された後に帯状に切断されてもよいし、封止基材19を帯状に切断した後に封止基材19の一方の面にバリア層18を介して粘接着部17を形成してもよい。
【0040】
封止部材11は、陽極層5の一部及び陰極層9の一部が露出するように、有機EL部10上に貼付される。具体的には、封止部材11は、複数の有機EL部10に跨って一方向に沿って貼付される。ロールツーロール方式では、支持基板3を搬送しながら、支持基板3上に形成された有機EL部10と封止部材11とを貼り合わせる。支持基板3と封止部材11とは、ローラ(図示省略)の間を通過する。これにより、支持基板3及び封止部材11は、ローラによって、圧力が付与される。これにより、粘接着部17と有機EL部10とが密着する。有機EL部10と封止部材11とを貼り合わせるときは、水分濃度の低い環境で行うことが好ましく、特に窒素雰囲気で行われることが好ましい。
【0041】
続いて、封止部材11が貼合された複数の有機EL部10を個片化する(裁断工程S06)。
図3に示されるように、裁断工程S06では、裁断線Lに沿って支持基板3及び封止部材11を裁断し、封止部材11が貼合された複数の有機EL部10を個片化する。具体的には、
図4及び
図5に示されるように、支持基板3を支持体100で支持して、裁断刃Bで支持基板3を裁断する。
図4は、
図3のX方向に沿った断面をY方向から見た図であり、陽極層5及び有機機能層7を含む位置での断面を示している。
図5は、
図3のX方向に沿った断面をY方向から見た図であり、陽極層5及び有機機能層7を含まない位置での断面を示している。
【0042】
図6に示されるように、裁断刃Bは、裁断部50に設けられている。裁断部50は、裁断刃Bと、裁断刃Bを保持する保持部(基部)52と、弾性部材54,55と、を有している。保持部52は、例えば、ベニヤ板等の板部材である。裁断刃Bは、裁断線Lに応じた形状であり、枠状を呈している。本実施形態では、裁断刃Bは、4枚の刃部材が一体に設けられている。裁断刃Bは、例えば、裁断刃Bの保持部52側の端部が保持部52に埋設されることにより、保持部52に保持されている。また、他の一例として、裁断刃Bは、NC(numerical control)加工機を使用して保持部52の一部を切削して削り出された刃であって、裁断刃Bと保持部52とが一体となっていてもよい。この場合、裁断刃Bと保持部52とは同じ素材になりうる。
【0043】
弾性部材54,55は、例えば、ゴム、スポンジ等が挙げられる。弾性部材54,55は、保持部52に固定されている。弾性部材54,55は、裁断刃Bを間に挟む位置に対向して一対配置されている。本実施形態では、弾性部材54,55の組が、所定の間隔をあけて複数(ここでは10組)設けられている。弾性部材54,55の先端部(保持部52に接合されている端部とは反対側の端部)は、
図6に示されるように、裁断刃Bの先端(刃先)よりも突出している。
【0044】
弾性部材54,55の作用(機能)について、
図7(a)〜
図7(c)を参照して説明する。
図7(a)〜
図7(c)では、支持基板3を裁断する形態を一例に説明する。
図7(a)に示されるように、切断箇所に裁断刃Bを位置させる。このとき、裁断刃Bよりも先端部が突出する弾性部材54,55が支持基板3を押さえ付ける。
図7(b)に示されるように、裁断刃Bを支持基板3に進入させると、弾性部材54,55が支持基板3と保持部52との間に挟まれ、保持部52により押圧されることで縮む。そして、
図7(c)に示されるように、裁断刃Bが支持基板3を裁断して元の位置に戻ると、弾性部材54,55も伸びて元の状態に戻る。裁断刃Bが支持基板3から退避するとき、弾性部材54,55により支持基板3が押圧されている。これにより、裁断刃Bが支持基板3から引き上げられるときに、裁断刃Bに支持基板3が引っ張られて、支持基板3が反り上がることが抑制される。裁断刃Bが封止部材11、有機EL部10及び支持基板3を切断するときには、封止部材11の封止基材19が反り上がることを抑制できる。裁断工程S06では、以上のような構成を有する裁断部50を複数用いる。これにより、裁断工程S06では、一度に複数の有機EL素子1を個片化できる。
【0045】
裁断工程S06では、
図4及び
図5に示されるように、複数の有機EL部10が形成された支持基板3を支持体100で支持させる。そして、裁断部50の裁断刃Bを、支持基板3の一方の主面3a側(封止部材11が貼合されている領域は封止部材11側)から進入させる。裁断刃Bは、その先端が支持基板3の他方の主面3bに到達する位置まで進行させる。これにより、封止部材11が貼合された複数の有機EL部10が個片化される。以上により、
図1に示される有機EL素子1が製造される。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る有機EL素子1の製造方法では、封止基材19及び感圧接着剤である粘接着部17を有する封止部材11を有機EL部10に貼り合わせている。そして、封止部材11側から裁断刃Bを進入させて、封止部材11が貼合された複数の有機EL部10を個片化している。粘接着部17は、圧力が加えられることにより接着すると共に、接着後も硬化せずに柔軟性を有する。そのため、裁断刃Bが進入するときの圧力により粘接着部17が封止部材11と有機EL部10とを接着すると共に、裁断刃Bが退避するときに封止基材19と粘接着部17とが剥離することを抑制できる。したがって、有機EL素子1の製造方法では、層間剥離に起因する不具合の発生を抑制できるため、信頼性の低下を抑制できる。
【0047】
また、本実施形態に係る有機EL素子1の製造方法では、熱硬化型接着剤を用いていないため、熱溶融断裁を必要としない。そのため、有機EL素子1の製造方法では、素子に熱劣化が生じることがなく、裁断刃Bに熱硬化型接着剤等が付着しないためメンテナンス性が良く、更に加熱手段が必要ないため構成の簡易化を図れる。したがって、有機EL素子1の製造方法では、有機EL素子1の信頼性の低下を抑制しつつ効率的に個片化することができる。
【0048】
本実施形態に係る有機EL素子1の製造方法では、支持基板3の長手方向に直交する幅方向において所定の間隔をあけて有機EL部10を複数形成する。貼合工程S05では、支持基板3の幅方向において並列する有機EL部10の列のそれぞれに封止部材11を一方向に沿って貼り合わせる。このように、封止部材11を複数条貼合することにより、効率的に有機EL素子1を製造できる。
【0049】
本実施形態に係る有機EL素子1の製造方法では、裁断工程S06では、枠状を呈する裁断刃Bを複数用いて、複数の有機EL素子1を同じタイミングで個片化する。これにより、効率的に有機EL素子1を個片化することができる。従来の熱溶融断裁の方法では、加熱手段を有する裁断刃を用いている。従来の方法において、複数の裁断刃を使用する場合には、各裁断刃に加熱手段を設ける必要があるため、構成が複雑化する。本実施形態に係る有機EL素子1の製造方法では、加熱手段が必要ないため、複数の裁断刃Bを用いる場合であっても、簡易な構成で効率的に個片化することができる。
【0050】
本実施形態に係る有機EL素子1の製造方法では、裁断工程S06では、保持部52に設けられた裁断刃Bと、保持部52において裁断刃Bを間に挟む位置に一対配置され且つ先端部が裁断刃Bの先端よりも突出すると共に弾性を有する弾性部材54,55と、を有する裁断部50を用いている。裁断部50では、裁断刃Bが封止部材11側から進入したときには弾性部材54,55が縮み、裁断刃Bが退避するときに弾性部材54,55が伸びる。この方法では、先端部が裁断刃Bの先端よりも突出する弾性部材54,55を用いることにより、裁断刃Bが進入及び退避するときに、弾性部材54,55により封止部材11が押さえ付けられる。これにより、裁断刃Bを進入させるときに粘接着部17に圧力を加えることができると共に、裁断刃Bを退避させるときに、裁断刃Bにより引っ張られることで封止基材19と粘接着部17とが剥離することを抑制できる。したがって、層間剥離に起因するダークスポットの発生等の不具合が生じることを抑制できる。その結果、有機EL素子1の信頼性の低下を抑制できる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態では、陽極層5と陰極層9との間に発光層を含む有機機能層7が配置された有機EL素子1を例示した。しかし、有機機能層7の構成はこれに限定されない。有機機能層7は、以下の構成を有していてもよい。
(a)(陽極層)/発光層/(陰極層)
(b)(陽極層)/正孔注入層/発光層/(陰極層)
(c)(陽極層)/正孔注入層/発光層/電子注入層/(陰極層)
(d)(陽極層)/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/(陰極層)
(e)(陽極層)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/(陰極層)
(f)(陽極層)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/(陰極層)
(g)(陽極層)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/(陰極層)
(h)(陽極層)/発光層/電子注入層/(陰極層)
(i)(陽極層)/発光層/電子輸送層/電子注入層/(陰極層)
ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。上記(a)に示す構成は、上記実施形態における有機EL素子1の構成を示している。
【0053】
正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層のそれぞれの材料は、公知の材料を用いることができる。正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層のそれぞれは、例えば、有機機能層7と同様に塗布法により形成できる。
【0054】
ここで、電子注入層は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属、又は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、フッ化物を含有していてもよい。電子注入層の成膜法としては、塗布法、真空蒸着法等を挙げることができる。酸化物及びフッ化物の場合は、電子注入層の厚さは0.5nm〜20nmが好ましい。電子注入層は、特に絶縁性が強い場合は、有機EL素子1の駆動電圧上昇を抑制する観点からは、薄膜であることが好ましく、その厚さは、例えば、0.5nm〜10nmであることが好ましく、また、電子注入性の観点からは、2nm〜7nmであることが好ましい。
【0055】
有機EL素子1は、単層の有機機能層7を有していてもよいし、2層以上の有機機能層7を有していてもよい。上記(a)〜(i)の層構成のうちのいずれか1つにおいて、陽極層5と陰極層9との間に配置された積層構造を「構造単位A」とすると、2層の有機機能層7を有する有機EL素子の構成として、例えば、下記(j)に示す層構成を挙げることができる。2個ある(構造単位A)の層構成は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
(j)陽極層/(構造単位A)/電荷発生層/(構造単位A)/陰極層
【0056】
ここで電荷発生層とは、電界を印加することにより、正孔と電子とを発生する層である。電荷発生層としては、例えば酸化バナジウム、ITO、酸化モリブデン等からなる薄膜を挙げることができる。
【0057】
また、「(構造単位A)/電荷発生層」を「構造単位B」とすると、3層以上の有機機能層7を有する有機EL素子の構成として、例えば、以下の(k)に示す層構成を挙げることができる。
(k)陽極層/(構造単位B)x/(構造単位A)/陰極層
【0058】
記号「x」は、2以上の整数を表し、「(構造単位B)x」は、(構造単位B)がx段積層された積層体を表す。また複数ある(構造単位B)の層構成は同じでも、異なっていてもよい。
【0059】
電荷発生層を設けずに、複数の有機機能層7を直接的に積層させて有機EL素子を構成してもよい。
【0060】
上記実施形態では、支持基板3上に陽極層5を形成する形態を一例に説明した。しかし、支持基板3上に陽極層5を予め形成したロールを用いてもよい。
【0061】
上記実施形態では、有機EL素子1の製造方法において、支持基板3を加熱して乾燥させる工程を実施する形態を一例に説明した。しかし、支持基板3の乾燥工程は必ずしも実施しなくてもよい。
【0062】
上記実施形態では、裁断工程S06において裁断部50を用いる形態を一例に説明した。しかし、裁断工程S06に用いる裁断刃は、弾性部材54,55を備えていなくてもよい。すなわち、裁断刃を単体で用いてもよい。
【0063】
上記実施形態では、
図6に示される裁断部50を用いる形態を一例に説明した。しかし、裁断部は、
図8に示される構成であってもよい。
図8に示されるように、裁断部50Aは、裁断刃Bと、保持部52と、弾性部材54A,55Aと、を有している。裁断部50Aは、弾性部材54A,55Aの構成が、裁断部50と異なる。弾性部材54A,55Aは、裁断刃Bを間に挟む位置に対向して配置されている。弾性部材54Aは、裁断刃Bの外側に位置し、所定の間隔をあけて複数(ここでは8個)設けられている。弾性部材55Aは、枠状の裁断刃Bの内側に配置されており、裁断刃Bに沿った形状(矩形状)を呈している。弾性部材54A,55Aの先端部(保持部52に接合されている端部とは反対側の端部)は、
図8に示されるように、裁断刃Bの先端よりも突出している。
【0064】
上記実施形態では、裁断刃Bが枠状を呈している形態を一例に説明した。しかし、裁断刃の形状はこれに限定されない。裁断刃は、裁断線に沿って裁断可能な形状であれば、いなかる形状であってもよい。
【0065】
上記実施形態では、
図3に示されるように、支持基板3上に、支持基板3の長手方向(
図3のY方向)において所定の間隔をあけて有機EL部10を複数形成すると共に、支持基板3の幅方向(
図3のX方向)において所定の間隔をあけて有機EL部10を複数形成する形態を一例に説明した。つまり、支持基板3上に有機EL部10を2列(複数列)形成する形態を一例に説明した。しかし、有機EL部10は、少なくとも、支持基板3上に1列形成されればよい。
【0066】
上記実施形態では、有機デバイスとして、有機EL素子を一例に説明した。有機デバイスは、有機薄膜トランジスタ、有機フォトディテクタ、有機薄膜太陽電池等であってもよい。
【解決手段】有機デバイス1の製造方法は、一方向に延在する支持基板3の一方の主面3a上に、少なくとも第1電極層5、有機機能層7及び第2電極層9をこの順番で積層した有機デバイス部10を、一方向において所定の間隔をあけて複数形成する形成工程と、各有機デバイス部10における第1電極層5及び第2電極層9それぞれの一部が露出し且つ複数の有機デバイス部10に跨がるように、一方向に延在する封止部材11を一方向に沿って貼り合わせる貼合工程と、封止部材11が貼合された複数の有機デバイス部10を個片化する裁断工程と、を含み、貼合工程では、封止部材11を感圧接着剤により有機EL部10に貼り合わせ、裁断工程では、封止部材11側から裁断刃Bを進入させる。