(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コンピュータ上で動作し、エッチング装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、請求項1から請求項6のいずれかのエッチング方法が行われるように、コンピュータに前記エッチング装置を制御させることを特徴とする記憶媒体。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
<本発明の実施形態に用いる処理システムの一例>
図1は、本発明の一実施形態に係るエッチング方法を実施するエッチング装置を搭載した処理システムの一例を示す概略構成図である。この処理システム1は、被処理基板である半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)Wを搬入出する搬入出部2と、搬入出部2に隣接させて設けられた2つのロードロック室(L/L)3と、各ロードロック室3にそれぞれ隣接して設けられた、ウエハWに対して熱処理を行なう熱処理装置4と、各熱処理装置4にそれぞれ隣接して設けられた、チャンバー内でプラズマを生成することなくウエハWに対してエッチングを行う本実施形態に係るエッチング装置5と、制御部6とを備えている。
【0018】
搬入出部2は、ウエハWを搬送する第1ウエハ搬送機構11が内部に設けられた搬送室(L/M)12を有している。第1ウエハ搬送機構11は、ウエハWを略水平に保持する2つの搬送アーム11a,11bを有している。搬送室12の長手方向の側部には、載置台13が設けられており、この載置台13には、ウエハWを複数枚並べて収容可能なキャリアCが例えば3つ接続できるようになっている。また、搬送室12に隣接して、ウエハWを回転させて偏心量を光学的に求めて位置合わせを行なうオリエンタ14が設置されている。
【0019】
搬入出部2において、ウエハWは、搬送アーム11a,11bによって保持され、第1ウエハ搬送機構11の駆動により略水平面内で直進移動、また昇降させられることにより、所望の位置に搬送させられる。そして、載置台13上のキャリアC、オリエンタ14、ロードロック室3に対してそれぞれ搬送アーム11a,11bが進退することにより、搬入出させられるようになっている。
【0020】
各ロードロック室3は、搬送室12との間にそれぞれゲートバルブ16が介在された状態で、搬送室12にそれぞれ連結されている。各ロードロック室3内には、ウエハWを搬送する第2ウエハ搬送機構17が設けられている。また、ロードロック室3は、所定の真空度まで真空引き可能に構成されている。
【0021】
第2ウエハ搬送機構17は、多関節アーム構造を有しており、ウエハWを略水平に保持するピックを有している。この第2ウエハ搬送機構17においては、多関節アームを縮めた状態でピックがロードロック室3内に位置し、多関節アームを伸ばすことにより、ピックが熱処理装置4に到達し、さらに伸ばすことによりエッチング装置5に到達することが可能となっており、ウエハWをロードロック室3、熱処理装置4、およびエッチング装置5間で搬送することが可能となっている。
【0022】
熱処理装置4は、
図2に示すように、真空引き可能なチャンバー20と、その中でウエハWを載置する載置台23を有し、載置台23にはヒーター24が埋設されており、このヒーター24によりエッチング処理が施された後のウエハWを加熱してウエハWに存在するエッチング残渣を気化して除去する。チャンバー20のロードロック室3側には、ロードロック室3との間でウエハを搬送する搬入出口20aが設けられており、この搬入出口20aはゲートバルブ22によって開閉可能となっている。また、チャンバー20のエッチング装置5側にはエッチング装置5との間でウエハWを搬送する搬入出口20bが設けられており、この搬入出口20bはゲートバルブ54により開閉可能となっている。チャンバー20の側壁上部にはガス供給路25が接続され、ガス供給路25はN
2ガス供給源30に接続されている。また、チャンバー20の底壁には排気路27が接続され、排気路27は真空ポンプ33に接続されている。ガス供給路25には流量調節弁31が設けられており、排気路27には圧力調整弁32が設けられていて、これら弁を調整することにより、チャンバー20内を所定圧力のN
2ガス雰囲気にして熱処理が行われる。Arガス等、N
2ガス以外の不活性ガスを用いてもよい。
【0023】
制御部6は、処理システム1の各構成部を制御するマイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えたプロセスコントローラ91を有している。プロセスコントローラ91には、オペレータが処理システム1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、処理システム1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を有するユーザーインターフェース92が接続されている。また、プロセスコントローラ91には、処理システム1で実行される各種処理、例えば後述するエッチング装置5における処理ガスの供給やチャンバー内の排気などをプロセスコントローラの制御にて実現するための制御プログラムや処理条件に応じて処理システム1の各構成部に所定の処理を実行させるための制御プログラムである処理レシピや、各種データベース等が格納された記憶部93が接続されている。レシピは記憶部93の中の適宜の記憶媒体(図示せず)に記憶されている。そして、必要に応じて、任意のレシピを記憶部93から呼び出してプロセスコントローラ91に実行させることで、プロセスコントローラ91の制御下で、処理システム1での所望の処理が行われる。
【0024】
本実施形態に係るエッチング装置5は、H
2ガスおよびArガスからなる処理ガスを励起した状態で供給してSiをエッチングするものである。その具体的な構成については、後で詳細に説明する。
【0025】
このような処理システム1では、ウエハWとして、エッチング対象であるSiを有し、さらにSiGeを有するものを用い、そのようなウエハWを複数枚キャリアC内に収納して処理システム1に搬送する。
【0026】
処理システム1においては、大気側のゲートバルブ16を開いた状態で搬入出部2のキャリアCから第1ウエハ搬送機構11の搬送アーム11a、11bのいずれかによりウエハWを1枚ロードロック室3に搬送し、ロードロック室3内の第2ウエハ搬送機構17のピックに受け渡す。
【0027】
その後、大気側のゲートバルブ16を閉じてロードロック室3内を真空排気し、次いでゲートバルブ54を開いて、ピックをエッチング装置5まで伸ばしてウエハWをエッチング装置5へ搬送する。
【0028】
その後、ピックをロードロック室3に戻し、ゲートバルブ54を閉じ、エッチング装置5において後述するようにしてエッチング処理を行う。
【0029】
エッチング処理が終了した後、ゲートバルブ22、54を開き、第2ウエハ搬送機構17のピックによりエッチング処理後のウエハWを熱処理装置4に搬送し、チャンバー20内にN
2ガスを導入しつつ、ヒーター24により載置台23上のウエハWを加熱して、エッチング残渣等を加熱除去する。
【0030】
熱処理装置4における熱処理が終了した後、ゲートバルブ22を開き、第2ウエハ搬送機構17のピックにより載置台23上のエッチング処理後のウエハWをロードロック室3に退避させ、第1ウエハ搬送機構11の搬送アーム11a、11bのいずれかによりキャリアCに戻す。これにより、一枚のウエハの処理が完了する。
【0031】
なお、処理システム1において、熱処理装置4は必須ではない。熱処理装置4を設けない場合には、エッチング処理が終了した後のウエハWを第2ウエハ搬送機構17のピックによりロードロック室3に退避させ、第1ウエハ搬送機構11の搬送アーム11a、11bのいずれかによりキャリアCに戻せばよい。
【0032】
<エッチング装置の構成>
次に、本実施形態のエッチング方法を実施するためのエッチング装置5について詳細に説明する。
図3は、エッチング装置5を示す断面図である。
図3に示すように、エッチング装置5は、密閉構造のチャンバー40を備えており、チャンバー40の内部には、ウエハWを略水平にした状態で載置させる載置台42が設けられている。また、エッチング装置5は、チャンバー40にエッチングガスを供給するガス供給機構43、チャンバー40内を排気する排気機構44を備えている。
【0033】
チャンバー40は、チャンバー本体51と蓋部52とによって構成されている。チャンバー本体51は、略円筒形状の側壁部51aと底部51bとを有し、上部は開口となっており、この開口が蓋部52で閉止される。側壁部51aと蓋部52とは、シール部材(図示せず)により密閉されて、チャンバー40内の気密性が確保される。蓋部52の天壁には上方からチャンバー40内に向けてガス導入ノズル61が挿入されている。
【0034】
側壁部51aには、熱処理装置4のチャンバー20との間でウエハWを搬入出する搬入出口53が設けられており、この搬入出口53はゲートバルブ54により開閉可能となっている。
【0035】
載置台42は、平面視略円形をなしており、チャンバー40の底部51bに固定されている。載置台42の内部には、載置台42の温度を調節する温度調節器55が設けられている。温度調節器55は、例えば温度調節用媒体(例えば水など)が循環する管路を備えており、このような管路内を流れる温度調節用媒体と熱交換が行なわれることにより、載置台42の温度が調節され、載置台42上のウエハWの温度制御がなされる。
【0036】
ガス供給機構43は、H
2ガスを供給するH
2ガス供給源63およびArガスを供給するArガス供給源64を有している。また、H
2ガス供給源63に接続されたH
2ガス供給配管65、Arガス供給源64に接続されたArガス供給配管66、および、H
2ガス供給配管65とArガス供給配管66に接続され、H
2ガスとArガスを励起するガス励起部67を有している。ガス励起部67には励起ガス供給配管68が接続されている。励起ガス供給配管68は上述したガス導入ノズル61に接続されている。そして、H
2ガス供給源63およびArガス供給源64から、H
2ガス供給配管65およびArガス供給配管66を通ってガス励起部67に供給されたH
2ガスおよびArガスがガス励起部67で励起され、励起されたガスが励起ガス供給配管68およびガス導入ノズル61を介してチャンバー40へ導入されるようになっている。
【0037】
ガス励起部67は、ガスを励起できればその構成は限定されないが、適宜の手法でガスをプラズマ化するものを好適に用いることができる。プラズマとしては、例えば、誘導結合プラズマ、容量結合プラズマ、マイクロ波プラズマ等、通常用いられているものを用いることができる。
【0038】
H
2ガス供給配管65およびArガス供給配管66には、流路の開閉動作および流量制御を行う流量制御器70が設けられている。流量制御器70は例えば開閉弁およびマスフローコントローラにより構成されている。
【0039】
なお、チャンバー40の上部にシャワープレートを設け、シャワープレートを介して励起されたガスをシャワー状に供給してもよい。
【0040】
排気機構44は、チャンバー40の底部51bに形成された排気口81に繋がる排気配管82を有しており、さらに、排気配管82に設けられた、チャンバー40内の圧力を制御するための自動圧力制御弁(APC)83およびチャンバー40内を排気するための真空ポンプ84を有している。
【0041】
チャンバー40の側壁には、チャンバー40内の圧力を計測するための圧力計として2つのキャパシタンスマノメータ86a,86bが、チャンバー40内に挿入されるように設けられている。キャパシタンスマノメータ86aは高圧力用、キャパシタンスマノメータ86bは低圧力用となっている。載置台42に載置されたウエハWの近傍には、ウエハWの温度を検出する温度センサ(図示せず)が設けられている。
【0042】
エッチング装置5を構成するチャンバー40、載置台42等の各種構成部品の材質としては、Alが用いられている。チャンバー40を構成するAl材は無垢のものであってもよいし、内面(チャンバー本体51の内面など)に陽極酸化処理を施したものであってもよい。一方、載置台42を構成するAlの表面は耐摩耗性が要求されるので、陽極酸化処理を行って表面に耐摩耗性の高い酸化被膜(Al
2O
3)を形成することが好ましい。
【0043】
<エッチング装置によるエッチング方法>
次に、このように構成されたエッチング装置によるエッチング方法について説明する。
【0044】
Siの選択エッチングは、例えば
図4に示すような構造のデバイスに適用される。すなわち、
図4(a)に示すように、Si基体101の上に、SiGe膜102とSi膜103とを交互に積層し、その上に形成されたSiO
2膜等からなるハードマスク層104をエッチングマスクとして用いて、SiGe膜102とSi膜103との積層膜をエッチングして予めトレンチ105を形成したウエハWを準備し、このウエハWに対して本実施形態のエッチング方法を実施して、
図4(b)に示すように、Si膜103をサイドエッチングする。
【0045】
なお、Si膜103およびSiGe膜102はCVD法やエピタキシャル成長法により形成することができる。
【0046】
本実施形態のエッチング方法を実施するにあたっては、エッチング装置5のゲートバルブ54を開放した状態で、ロードロック室3内の第2ウエハ搬送機構17のピックにより、例えば
図4(a)に示す構成のウエハWを搬入出口53からチャンバー40内に搬入し、載置台42に載置する。
【0047】
その後、ピックをロードロック室3に戻し、ゲートバルブ54を閉じ、チャンバー40内を密閉状態する。
【0048】
次いで、H
2ガスおよびArガスを励起してチャンバー40内へ導入し、ウエハWに形成されたSi膜103のサイドエッチングを行う。
【0049】
具体的には、温度調節器55によって載置台42の温度を所定の範囲に調節し、チャンバー40内の圧力を所定の範囲に調節して、ガス供給機構43のH
2ガス供給源63およびArガス供給源64から、それぞれH
2ガスおよびArガスをH
2ガス供給配管65およびArガス供給配管66を介してガス励起部67に導き、そこで励起されたガスを励起ガス供給配管68およびガス導入ノズル61を介してチャンバー40内へ導入し、Si膜のサイドエッチングを行う。
【0050】
このように、H
2ガスおよびArガスからなる処理ガスを励起した状態でチャンバー40内に導入することにより、Si膜をSiGe膜に対して高選択比でエッチングすることができ、条件を調整することにより、エッチング選択比を50以上という極めて高い値とすることが可能である。
【0051】
次に、このようなガス系に至った経緯について説明する。
Siのエッチングには、従来からHFガスが検討されており、最初にHFガスを用いてSi膜のSiGe膜に対する選択的エッチングを検討した。HFガスは反応性が極めて高いため、HFガスにH
2ガスと希釈ガスであるArガスとを混合した処理ガスを用い、この処理ガスをプラズマ化したものをチャンバー内に供給し、Si膜とSiGe膜とをエッチングした。その結果、Si膜が高エッチングレートでエッチングできるが、SiGe膜もエッチングされ、SiGe膜に対するSi膜のエッチング選択比は低いものとなった。一方、HFガスの量を0として、H
2ガスとArガスのみをプラズマ化したものを用いて同様のエッチングを行った。その結果、Si膜のエッチング量は低下したものの、SiGe膜はほとんどエッチングされず、SiGe膜に対するSi膜のエッチング選択比は極めて高いものとなった。
【0052】
このことが導かれた実験結果を
図5に示す。
ここでは、Si膜が形成されたブランケットウエハと、SiGe膜が形成されたブランケットウエハとを準備し、H
2ガスの流量:370sccm、Arガスの流量:400sccm、温度:25℃、圧力:100mTorr(13.3Pa)、プラズマ生成電力(IPCプラズマ):600W、処理時間:1minの基本条件で、HFガス流量を0sccm、100sccm、200sccm、300sccmと変化させ、Si膜とSiGe膜のエッチングを行った。この図に示すように、HFを添加した場合はSi膜のエッチング量が80nmであるが、SiGe膜も20nm近くまでエッチングされ、SiGe膜に対するSi膜のエッチング選択比が4付近と低いのに対し、H
2ガス+Arガスのみの場合は、Si膜のエッチング量が15nm程度であるものの、SiGe膜に対するSi膜のエッチング選択比が93まで上昇した。
【0053】
そこで、H
2ガスの有効性を確認するため、H
2ガスのみをプラズマ化してSi膜とSiGe膜をエッチングした。その結果、Si膜もSiGe膜もほとんどエッチングされなかった。
【0054】
次に、H
2ガスと他のガスとの組み合わせを確認するため、H
2ガスとN
2ガスをプラズマ化したものを用いて、Si膜とSiGe膜をエッチングした。その結果、Si膜よりもむしろSiGe膜のほうがエッチング量が多くなった。
【0055】
このことが導かれた実験結果を
図6に示す。
ここでは、H
2ガスの流量370sccm、N
2ガスの流量:100sccm、温度:25℃、圧力:100mTorr(13.3Pa)、プラズマ生成電力(IPCプラズマ):600W、処理時間:1minの条件で同様にSi膜とSiGe膜のエッチングを行った。この図に示すように、H
2ガス+N
2ガスでエッチングすることにより、Si膜のエッチング量は26.5nmであったのに対し、SiGe膜のエッチング量は66.7nmであり、Si膜よりもSiGe膜のエッチング量が多い結果となった。
【0056】
以上のように、Si膜をSiGe膜に対して高選択比でエッチングするためには、H
2ガスを励起したものを用いることが有効であるが、H
2ガス単独ではSi膜もSiGe膜もエッチングされず、H
2ガスとN
2ガスとを混合したものでは、むしろSiGe膜のほうがエッチングされ、H
2ガスにArガスを混合して励起することにより初めてSi膜をSiGe膜に対して高選択比でエッチングすることが可能になることが確認された。
【0057】
Si膜をSiGe膜に対して選択的エッチングする用途は、Si膜のエッチングレートよりも選択比が高いことが要求される。このため、本実施形態のH
2ガスとArガスからなる処理ガスを励起する手法が有効である。
【0058】
このエッチング処理におけるチャンバー40内の圧力は1.33〜133Pa(10〜1000mTorr)の範囲が好ましい。より好ましくは、6.66〜66.6Pa(50〜500mTorr)の範囲である。また、載置台42の温度(ほぼウエハの温度)は0〜80℃が好ましい。より好ましくは10〜40℃である。
【0059】
また、H
2ガスとArガスの体積比率(流量比率)は1:20〜20:1の範囲が好ましく、1:10〜10:1の範囲がより好ましい。
【0060】
このようにして、エッチング装置5におけるエッチング処理が終了した後、ゲートバルブ54を開き、第2ウエハ搬送機構17のピックにより載置台42上のエッチング処理後のウエハWをチャンバー40から搬出する。
【0061】
以上のように、本実施形態では、フッ素を含まずかつシンプルなガス系を用いて、プロセス条件を大きく限定することなくシリコンゲルマニウム膜に対しシリコン膜を高選択比でエッチングすることができる。
【0062】
<実験例>
次に、実験例について説明する。
【0063】
[実験例1]
ここでは、Si膜が形成されたブランケットウエハと、SiGe膜が形成されたブランケットウエハとを準備し、H
2ガスの流量:370sccm、温度:25℃、圧力:100mTorr(13.3Pa)、プラズマ生成電力(IPCプラズマ):600W、処理時間:3minの基本条件で、Arガス流量を50sccm、100sccm、400sccmと変化させ、Si膜とSiGe膜のエッチングを行った。
【0064】
その結果を
図7に示す。
図7は、各Arガス流量における、Si膜のエッチング量と、SiGe膜に対するSi膜のエッチング選択比とを示す図である。この図に示すように、Si膜のエッチング量は、Arガス流量が増加するにしたがって増加する傾向にある。一方、SiGe膜はほとんどエッチングされず、Ar流量が100sccmではエッチング量が1.1nm、Ar流量が50sccmおよび400sccmではエッチング量が0であった。このため、SiGe膜に対するSi膜のエッチング選択比は、Arガス流量が100sccmでは51、Arガス流量が50sccmおよび400sccmでは無限大であり、いずれのArガス流量においても極めて高い値となった。
【0065】
[実験例2]
ここでは、実験例1と同様、Si膜が形成されたブランケットウエハと、SiGe膜が形成されたブランケットウエハとを準備し、H
2ガスの流量:370sccm、Arガスの流量:100sccm、温度:25℃、プラズマ生成電力(IPCプラズマ):600W、処理時間:3minの基本条件で、圧力を100mTorr(13.3Pa)、200mTorr(26.6Pa)と変化させ、Si膜とSiGe膜のエッチングを行った。
【0066】
その結果を
図8に示す。
図8は、各圧力における、Si膜のエッチング量と、SiGe膜に対するSi膜のエッチング選択比とを示す図である。この図に示すように、圧力が低いほどSi膜のエッチング量が高い傾向にある。一方、SiGe膜はほとんどエッチングされず、圧力が100mTorr(13.3Pa)ではエッチング量が1.1nm、200mTorr(26.6Pa)ではエッチング量が0であった。このため、SiGe膜に対するSi膜のエッチング選択比は、圧力が100mTorr(13.3Pa)では51、圧力が200mTorr(26.6Pa)では無限大であり、いずれも極めて高い値となった。
【0067】
[実験例3]
ここでは、実験例1と同様、Si膜が形成されたブランケットウエハと、SiGe膜が形成されたブランケットウエハとを準備し、H
2ガスの流量:370sccm、Arガスの流量:400sccm、温度:25℃、プラズマ生成電力(IPCプラズマ):600Wの基本条件で、エッチング時間を1mim、3minと変化させ、Si膜とSiGe膜のエッチングを行った。
【0068】
その結果を
図9に示す。
図9は、各エッチング時間における、Si膜のエッチング量と、SiGe膜に対するSi膜のエッチング選択比とを示す図である。この図に示すように、エッチング時間が増加することによりSi膜のエッチング量は増加するが、SiGe膜はエッチング時間によらずほとんどエッチングされず、エッチング時間が1minではエッチング量が0.16nmと計測され、3minでは0nmと計測されて、SiGe膜に対するSi膜のエッチング選択比は、それぞれ93および無限大であり、エッチング時間によらず高い選択比が得られた。
【0069】
<本発明の他の適用>
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態の装置は例示に過ぎず、種々の構成の装置により本発明のエッチング方法を実施することができる。また、SiとしてSi膜、SiGeとしてSiGe膜を用いた例を示したが、いずれか一方が半導体ウエハの基体そのもの(半導体基板)であってもよい。さらに、被処理基板として半導体ウエハを用いた場合について示したが、半導体ウエハに限らず、LCD(液晶ディスプレイ)用基板に代表されるFPD(フラットパネルディスプレイ)基板や、セラミックス基板等の他の基板であってもよい。