特許第6393802号(P6393802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6393802基板載置装置、基板載置方法、成膜装置、成膜方法、アライメント装置、アライメント方法、および、電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6393802
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】基板載置装置、基板載置方法、成膜装置、成膜方法、アライメント装置、アライメント方法、および、電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20180910BHJP
   C23C 14/50 20060101ALI20180910BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20180910BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20180910BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   C23C14/50 D
   H01L27/32
   H05B33/10
   H05B33/14 A
【請求項の数】31
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-101251(P2017-101251)
(22)【出願日】2017年5月22日
【審査請求日】2018年3月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100125357
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100131532
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 浩一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155871
【弁理士】
【氏名又は名称】森廣 亮太
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(72)【発明者】
【氏名】石井 博
【審査官】 山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−278927(JP,A)
【文献】 特開2001−166272(JP,A)
【文献】 特開2014−065959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
C23C 14/50
H01L 27/32
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の周縁部を挟持するための複数の挟持具を有する挟持手段と、
前記基板を載置体の上に載置するための載置手段とを有する基板載置装置であって、
前記挟持手段は、前記複数の挟持具の挟力を可変する挟力可変手段を有し、
前記挟力可変手段は、前記複数の挟持具のうちの一部の挟持具の挟力を、その他の挟持具とは独立して可変することを特徴とする基板載置装置。
【請求項2】
前記一部の挟持具は、前記基板の周縁部のうちの一辺内を挟持する挟持具であり、前記その他の挟持具は、前記基板の周縁部のうちの前記一辺と対向した辺内を挟持する挟持具であることを特徴とする請求項1に記載の基板載置装置。
【請求項3】
前記一部の挟持具、及び、前記その他の挟持具は、夫々複数の挟持具で構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の基板載置装置。
【請求項4】
基板の周縁部を挟持するための複数の挟持具を有する挟持手段と、
前記基板を載置体の上に載置するための載置手段とを有する基板載置装置であって、
前記挟持手段は、前記複数の挟持具の挟力を可変する挟力可変手段を有し、
前記挟力可変手段は、前記複数の挟持具の挟力を、挟持具ごとに夫々独立して可変する挟力可変手段であることを特徴とする基板載置装置。
【請求項5】
前記複数の挟持具のうちの一部の挟持具は、前記基板の周縁部のうちの一辺内を挟持する挟持具であり、その他の挟持具は、前記基板の周縁部のうちの前記一辺と対向した辺内を挟持する挟持具であることを特徴とする請求項4に記載の基板載置装置。
【請求項6】
前記一部の挟持具、及び、前記その他の挟持具は、夫々複数の挟持具で構成されていることを特徴とする請求項5に記載の基板載置装置。
【請求項7】
前記挟持手段の挟持具は、前記基板を支持するための支持具と、前記基板を前記支持具に押圧するための押圧具とを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の基板載置装置。
【請求項8】
前記載置手段は、前記基板を昇降させるための基板昇降手段を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の基板載置装置。
【請求項9】
前記載置手段は、前記載置体を昇降させるための載置体昇降手段を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の基板載置装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の基板載置装置と、
前記基板と前記載置体との相対位置を調整するための位置調整手段を有することを特徴とするアライメント装置。
【請求項11】
前記載置体は、前記基板上に所定パターンの成膜を行うために用いられる、前記所定パターンを有するマスクであることを特徴とする請求項10に記載のアライメント装置。
【請求項12】
請求項11に記載のアライメント装置を有し、前記基板上に前記所定パターンの成膜を行うことを特徴とする成膜装置。
【請求項13】
基板の周縁部を複数の挟持具で挟持する挟持工程と、
挟持された前記基板を載置体の上に載置する載置工程とを有する基板載置方法であって

前記挟持工程は、複数の挟持具のうちの、一部の挟持具の挟力とその他の挟持具の挟力とを異ならせて、前記基板を挟持することを特徴とする基板載置方法。
【請求項14】
前記挟持工程は、前記一部の挟持具で前記基板の周縁部のうちの一辺内を挟持し、前記その他の挟持具で前記基板の周縁部のうちの前記一辺と対向した辺内を挟持することを特徴とする請求項13に記載の基板載置方法。
【請求項15】
前記挟持工程は、前記一部の挟持具と前記その他の挟持具のうち一方の挟持具が、挟持している前記基板の挟持位置が移動可能な挟力で前記基板を挟持することを特徴とする請求項13または14に記載の基板載置方法。
【請求項16】
前記挟持位置が移動可能な挟力は、前記載置工程において前記載置体から前記基板にかかる力によって、挟持位置が移動可能な挟力であることを特徴とする請求項15に記載の基板載置方法。
【請求項17】
前記載置工程は、前記基板を前記載置体に載置した後に、前記一部の挟持具と前記その他の挟持具とが、同じ挟力で前記基板を挟持することを特徴とする請求項13〜16のいずれか1項に記載の基板載置方法。
【請求項18】
前記載置工程は、前記基板を前記載置体に載置した後に、前記一部の挟持具と前記その他の挟持具とが、前記基板の挟持位置を固定可能な挟力で前記基板を挟持することを特徴とする請求項13〜16のいずれか1項に記載の基板載置方法。
【請求項19】
基板の周縁部を挟持具で挟持する挟持工程と、
挟持された前記基板を載置体の上に載置する載置工程とを有する基板載置方法であって、
前記挟持工程は、前記挟持具で、前記基板の周縁部のうちの一辺内を挟持することを特徴とする基板載置方法。
【請求項20】
前記挟持工程は、前記挟持具の複数で、前記基板の周縁部のうちの一辺内を挟持することを特徴とする請求項19に記載の基板載置方法。
【請求項21】
前記載置工程は、前記基板を載置体に載置した後に、前記挟持具で前記基板の周縁部のうちの一辺内を挟持し、その他の挟持具で前記基板の周縁部のうちの前記一辺と対向した辺内を挟持することを特徴とする請求項19または20に記載の基板載置方法。
【請求項22】
前記挟持具と前記その他の挟持具は、前記基板を前記載置体に載置した後では、同じ挟力で前記基板を挟持することを特徴とする請求項21に記載の基板載置方法。
【請求項23】
前記挟持具と前記その他の挟持具とは、前記基板を前記載置体に載置した後では、前記基板の挟持位置が固定可能な挟力で前記基板を挟持することを特徴とする請求項21に記載の基板載置方法。
【請求項24】
前記載置工程の前に、前記基板と前記載置体との相対位置を調整する第1の位置調整工程を有することを特徴とする請求項13〜23のいずれか1項に記載の基板載置方法。
【請求項25】
請求項13〜24のいずれか1項に記載の基板載置方法により、前記基板を前記載置体の上に載置した後に、前記基板と前記載置体との相対位置を調整する第2の位置調整工程を有することを特徴とするアライメント方法。
【請求項26】
請求項13〜24のいずれか1項に記載の基板載置方法により、前記基板を前記載置体の上に載置した後に、前記基板を前記載置体から離間して、前記基板と前記載置体との相対位置を調整する第2の位置調整工程を有することを特徴とするアライメント方法。
【請求項27】
前記載置体は、前記基板上に所定パターンの成膜を行うために用いられる、前記所定パターンを有するマスクであることを特徴とする請求項25または26に記載のアライメント方法。
【請求項28】
前記基板上に所定パターンの成膜を行う成膜方法であって、請求項27に記載のアライメント方法により、前記基板と前記マスクとの相対位置の調整が行われた後に、前記基板上に前記所定パターンの成膜を行うことを特徴とする成膜方法。
【請求項29】
基板上に形成された有機膜を有する電子デバイスの製造方法であって、
請求項28に記載の成膜方法により前記有機膜が形成されることを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項30】
基板上に形成された金属膜を有する電子デバイスの製造方法であって、
請求項28に記載の成膜方法により前記金属膜が形成されることを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項31】
前記電子デバイスが、有機EL表示装置の表示パネルであることを特徴とする請求項29または30に記載の電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板載置装置、基板載置方法、成膜装置、成膜方法、アライメント装置、アライメント方法、および、電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイ等の電子デバイス製造において、基板に有機材料を蒸着させる工程がある。蒸着装置は蒸着工程において、基板の周縁部(四辺)を支持または挟持する基板保持ユニットによって、基板を支持している。また、基板保持ユニットは、基板を支持した状態で、基板をマスク等の載置体に接触および載置させる。ここで、基板の外周のうち、一方の対向辺部(例えば長辺部)では基板を挟持し、他方の対向辺部(例えば短辺部)では挟持せずに支持のみする。特許文献1には、蒸着により有機ELディスプレイを製造する装置の一例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−277655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の、有機材料等を蒸着する際の挟持工程において、成膜領域を基板中央部に設ける関係上、基板を挟持できるのは基板の周縁部に限られている。そのため、基板自体の重量によって中央部に撓みが発生する場合がある。特に近年、基板の大型化、薄型化が進んでおり、基板を載置する際の自重による撓みの影響が大きくなっている。撓みが発生した状態で基板を載置体に載置すると、基板に歪みが発生し、その歪みをアライメントにより修正するために時間が掛かったり、製造品質が低下したりするおそれがある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、有機ELディスプレイの製造において基板を載置体に載置するときの歪みを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的のため、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
基板の周縁を挟持するための複数の挟持具を有する挟持手段と、
基板を載置体の上に載置するための載置手段とを有する基板載置装置であって、
前記挟持手段は、更に、前記複数の挟持具の挟力を可変する挟力可変手段を有し、
前記挟力可変手段は、前記複数の挟持具のうちの一部の挟持具の挟力を、その他の挟持具とは独立して可変することを特徴とする基板載置装置である。
本発明はまた、以下の構成を採用する。すなわち、
基板の周縁を挟持するための複数の挟持具を有する挟持手段と、
基板を載置体の上に載置するための載置手段とを有する基板載置装置であって、
前記挟持手段は、更に、前記複数の挟持具の挟力を可変する挟力可変手段を有し、
前記挟力可変手段は、前記複数の挟持具の挟力を、挟持具ごとに夫々独立して可変する挟力可変手段であることを特徴とする基板載置装置である。
本発明はまた、以下の構成を採用する。すなわち、
基板の周縁部を複数の挟持具で挟持する挟持工程と、
挟持された基板を載置体の上に載置する載置工程とを有する基板載置方法であって、
前記挟持工程は、複数の挟持具のうちの、一部の挟持具の挟力とその他の挟持具の挟力
とを異ならせて、基板を挟持することを特徴とする基板載置方法である。
本発明はまた、以下の構成を採用する。すなわち、
基板の周縁を挟持具で挟持する挟持工程と、
挟持された基板を載置体の上に載置する載置工程とを有する基板載置方法であって、
前記挟持工程は、前記挟持具で、基板の周縁のうちの一辺内を挟持することを特徴とする基板載置方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、有機ELディスプレイの製造において基板を載置体に載置するときの歪みを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電子デバイスの製造装置の構成の一部を模式的に示す上視図
図2】成膜装置の構成を模式的に示す断面図
図3】基板保持ユニットの斜視図
図4】有機EL表示装置の構造を示す図
図5】実施例1における基板の挟持および載置処理の流れを示す図
図6】実施例1において基板にかける挟力を示す平面図
図7】実施例2における基板保持ユニットおよび挟持機構の構成を示す図
図8】実施例3にかかる基板の挟持および載置処理の流れを示す図
図9】実施例4にかかる基板の挟持および載置処理の流れを示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態及び実施例を説明する。ただし、以下の実施形態及び実施例は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲をそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特に特定的な記載がないかぎりは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0010】
本発明は、基板上に薄膜を形成する成膜装置及びその制御方法に関し、特に、基板の高精度な搬送および位置調整のための技術に関する。本発明は、平行平板の基板の表面に真空蒸着により所望のパターンの薄膜(材料層)を形成する装置に好ましく適用できる。基板の材料としては、ガラス、樹脂、金属などの任意の材料を選択でき、また、蒸着材料としても、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選択できる。また、有機膜だけではなく金属膜を成膜することも可能である。本発明の技術は、具体的には、有機電子デバイス(例えば、有機EL表示装置、薄膜太陽電池)、光学部材などの製造装置に適用可能である。なかでも、有機EL表示装置の製造装置は、基板の大型化あるいは表示パネルの高精細化により基板の搬送精度及び基板とマスクのアライメント精度のさらなる向上が要求されているため、本発明の好ましい適用例の一つである。
【0011】
<製造装置及び製造プロセス>
図1は、電子デバイスの製造装置の構成の一部を模式的に示す上視図である。図1の製造装置は、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられる。スマートフォン用の表示パネルの場合、例えば約1800mm×約1500mm、厚み約0.5mmのサイズの基板に有機ELの成膜を行った後、該基板をダイシングして複数の小サイズのパネルが作製される。
【0012】
電子デバイスの製造装置は、一般に、図1に示すように、複数の成膜室111、112と、搬送室110とを有する。搬送室110内には、基板10を保持し搬送する搬送ロボット119が設けられている。搬送ロボット119は、例えば、多関節アームに、基板を
保持するロボットハンドが取り付けられた構造をもつロボットであり、各成膜室への基板10の搬入/搬出を行う。
【0013】
各成膜室111、112にはそれぞれ成膜装置(蒸着装置ともよぶ)が設けられている。搬送ロボット119との基板10の受け渡し、基板10とマスクの相対位置の調整(アライメント)、マスク上への基板10の固定、成膜(蒸着)などの一連の成膜プロセスは、成膜装置によって自動で行われる。各成膜室の成膜装置は、蒸着源の違いやマスクの違いなど細かい点で相違する部分はあるものの、基本的な構成(特に基板の搬送やアライメントに関わる構成)はほぼ共通している。以下、各成膜室の成膜装置の共通構成について説明する。
【0014】
<成膜装置>
図2は、成膜装置の構成を模式的に示す断面図である。以下の説明においては、鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系を用いる。成膜時に基板は水平面(XY平面)と平行となるよう固定されるものとし、このときの基板の短手方向(短辺に平行な方向)をX方向、長手方向(長辺に平行な方向)をY方向とする。またZ軸まわりの回転角をθで表す。
【0015】
成膜装置は、真空チャンバ200を有する。真空チャンバ200の内部は、真空雰囲気か、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持されている。真空チャンバ200の内部には、概略、基板保持ユニット210と、マスク220と、マスク台221と、冷却板230と、蒸着源240が設けられる。基板保持ユニット210は、搬送ロボット119から受け取った基板10を保持・搬送する手段であり、基板ホルダとも呼ばれる。マスク220は、基板10上に形成する所定パターンの薄膜パターンに対応する開口パターンをもつメタルマスクであり、枠状のマスク台221の上に固定されている。成膜時にはマスク220の上に基板10が載置される。したがってマスク220は基板10を載置する載置体としての役割も担う。冷却板230は、成膜時に基板10(のマスク220とは反対側の面)に密着し、基板10の温度上昇を抑えることで有機材料の変質や劣化を抑制する部材である。冷却板230がマグネット板を兼ねていてもよい。マグネット板とは、磁力によってマスク220を引き付けることで、成膜時の基板10とマスク220の密着性を高める部材である。蒸着源240は、蒸着材料、ヒータ、シャッタ、蒸発源の駆動機構、蒸発レートモニタなどから構成される(いずれも不図示)。
【0016】
真空チャンバ200の上(外側)には、基板Zアクチュエータ250、クランプZアクチュエータ251、冷却板Zアクチュエータ252、Xアクチュエータ(不図示)、Yアクチュエータ(不図示)、θアクチュエータ(不図示)が設けられている。これらのアクチュエータは、例えば、モータとボールねじ、モータとリニアガイドなどで構成される。基板Zアクチュエータ250は、基板保持ユニット210の全体を昇降(Z方向移動)させるための駆動手段である。クランプZアクチュエータ251は、基板保持ユニット210の挟持機構(後述)を開閉させるための駆動手段である。冷却板Zアクチュエータ252は、冷却板230を昇降させるための駆動手段である。Xアクチュエータ、Yアクチュエータ、θアクチュエータ(以下まとめて「XYθアクチュエータ」と呼ぶ)は基板10のアライメントのための駆動手段である。XYθアクチュエータは、基板保持ユニット210及び冷却板230の全体を、X方向移動、Y方向移動、θ回転させる。なお、本実施形態では、マスク220を固定した状態で基板10のX,Y,θを調整する構成としたが、マスク220の位置を調整し、又は、基板10とマスク220の両者の位置を調整することで、基板10とマスク220のアライメントを行ってもよい。
【0017】
真空チャンバ200の上(外側)には、基板10及びマスク220のアライメントのために、基板10及びマスク220それぞれの位置を測定するカメラ260、261が設け
られている。カメラ260、261は、真空チャンバ200に設けられた窓を通して、基板10とマスク220を撮影する。その画像から基板10上のアライメントマーク及びマスク220上のアライメントマークを認識することで、各々のXY位置やXY面内での相対ズレを計測することができる。短時間で高精度なアライメントを実現するために、大まかに位置合わせを行う第1アライメント(「ラフアライメント」とも称す)と、高精度に位置合わせを行う第2アライメント(「ファインアライメント」とも称す)の2段階のアライメントを実施することが好ましい。その場合、低解像だが広視野の第1アライメント用のカメラ260と狭視野だが高解像の第2アライメント用のカメラ261の2種類のカメラを用いるとよい。本実施形態では、基板10及びマスク220それぞれについて、対向する一対の辺の2箇所に付されたアライメントマークを2台の第1アライメント用のカメラ260で測定し、基板10及びマスク220の4隅に付されたアライメントマークを4台の第2アライメント用のカメラ261で測定する。
【0018】
成膜装置は、制御部270を有する。制御部270は、基板Zアクチュエータ250、クランプZアクチュエータ251、冷却板Zアクチュエータ252、XYθアクチュエータ、及びカメラ260、261の制御の他、基板10の搬送及びアライメント、蒸着源の制御、成膜の制御などの機能を有する。制御部270は、例えば、プロセッサ、メモリ、ストレージ、I/Oなどを有するコンピュータにより構成可能である。この場合、制御部270の機能は、メモリ又はストレージに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピュータとしては、汎用のパーソナルコンピュータを用いてもよいし、組込型のコンピュータ又はPLC(programmable logic controller)を用いてもよい。あるいは、制御部270の機能の一部又は全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。なお、成膜装置ごとに制御部270が設けられていてもよいし、1つの制御部270が複数の成膜装置を制御してもよい。
【0019】
なお、基板10の保持・搬送及びアライメントに関わる構成部分(基板保持ユニット210、基板Zアクチュエータ250、クランプZアクチュエータ251、XYθアクチュエータ、カメラ260、261、制御部270など)は、「基板載置装置」、「基板挟持装置」、「基板搬送装置」などとも呼ばれる。
【0020】
<基板保持ユニット>
図3を参照して基板保持ユニット210の構成を説明する。図3は基板保持ユニット210の斜視図である。
基板保持ユニット210は、挟持機構(挟持具とも呼ぶ)によって基板10の周縁部を挟持することにより、基板10を保持・搬送する手段である。具体的には、基板保持ユニット210は、基板10の4辺それぞれを下から支持する複数の支持具300が設けられた支持枠体301と、各支持具300との間で基板10を挟み込む複数の押圧具302が設けられたクランプ部材303とを有する。一対の支持具300と押圧具302とで1つの挟持機構が構成される。図3の例では、基板10の短辺に沿って3つの支持具300が配置され、長辺に沿って6つの挟持機構(支持具300と押圧具302のペア)が配置されており、長辺2辺を挟持する構成となっている。ただし挟持機構の構成は図3の例に限られず、処理対象となる基板のサイズや形状あるいは成膜条件などに合わせて、挟持機構の数や配置を適宜変更してもよい。なお、支持具300は「受け爪」又は「フィンガ」とも呼ばれ、押圧具302は「クランプ」とも呼ばれる。
【0021】
搬送ロボット119から基板保持ユニット210への基板10の受け渡しは例えば次のように行われる。まず、クランプZアクチュエータ251によりクランプ部材303を上昇させ、押圧具302を支持具300から離間させることで、挟持機構を解放状態にする。搬送ロボット119によって支持具300と押圧具302の間に基板10を導入した後、クランプZアクチュエータ251によってクランプ部材303を下降させ、押圧具30
2を所定の押圧力で支持具300に押し当てる。これにより、押圧具302と支持具300の間で基板10が挟持される。この状態で基板Zアクチュエータ250により基板保持ユニット210を駆動することで、基板10を昇降(Z方向移動)させることができる。なお、クランプZアクチュエータ251は基板保持ユニット210と共に上昇/下降するため、基板保持ユニット210が昇降しても挟持機構の状態は変化しない。かかる構成を、基板昇降手段とも呼ぶ。基板昇降手段は、制御部やアクチュエータなども含めた載置手段に含まれると考えても良い。なお、マスク220を昇降させる載置体昇降手段を設けることによっても、マスク220と基板10を接触させることができる。さらに基板昇降手段とともに載置体昇降手段を設けても良い。
【0022】
なお、図3の符号101は、基板10の4隅に付された第2アライメント用のアライメントマークを示し、符号102は、基板10の短辺中央に付された第1アライメント用のアライメントマークを示している。
【0023】
<電子デバイスの製造方法の実施例>
次に、本実施形態の成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。図4(a)は有機EL表示装置60の全体図、図4(b)は1画素の断面構造を表している。
【0024】
図4(a)に示すように、有機EL表示装置60の表示領域61には、発光素子を複数備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施例にかかる有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子62R、第2発光素子62G、第3発光素子62Bの組合せにより画素62が構成されている。画素62は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組合せで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0025】
図4(b)は、図4(a)のA−B線における部分断面模式図である。画素62は、基板63上に、第1電極(陽極)64と、正孔輸送層65と、発光層66R,66G,66Bのいずれかと、電子輸送層67と、第2電極(陰極)68と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層65、発光層66R,66G,66B、電子輸送層67が有機層に当たる。また、本実施形態では、発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。発光層66R,66G,66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、第1電極64は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層65と電子輸送層67と第2電極68は、複数の発光素子62R,62G,62Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極64と第2電極68とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極64間に絶縁層69が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層70が設けられている。
【0026】
有機EL層を発光素子単位に形成するためには、マスクを介して成膜する方法が用いられる。近年、表示装置の高精細化が進んでおり、有機EL層の形成には開口の幅が数十μmのマスクが用いられる。このようなマスクを用いた成膜の場合、マスクが成膜中に蒸発源から受熱して熱変形するとマスクと基板との位置がずれてしまい、基板上に形成される薄膜のパターンが所望の位置からずれて形成されてしまう。そこで、これら有機EL層の
成膜には本発明にかかる成膜装置(真空蒸着装置)が好適に用いられる。
【0027】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)および第1電極64が形成された基板63を準備する。
【0028】
第1電極64が形成された基板63の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極64が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層69を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0029】
絶縁層69がパターニングされた基板63を第1の成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて基板を保持し、正孔輸送層65を、表示領域の第1電極64の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0030】
次に、正孔輸送層65までが形成された基板63を第2の成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板63の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層66Rを成膜する。本例によれば、マスクと基板とを良好に重ね合わせることができ、高精度な成膜を行うことができる。
【0031】
発光層66Rの成膜と同様に、第3の成膜装置により緑色を発する発光層66Gを成膜し、さらに第4の成膜装置により青色を発する発光層66Bを成膜する。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域61の全体に電子輸送層67を成膜する。電子輸送層65は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の層として形成される。
【0032】
電子輸送層65までが形成された基板をスパッタリング装置に移動し、第2電極68を成膜し、その後プラズマCVD装置に移動して保護層70を成膜して、有機EL表示装置60が完成する。
【0033】
絶縁層69がパターニングされた基板63を成膜装置に搬入してから保護層70の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【0034】
このようにして得られた有機EL表示装置は、発光素子ごとに発光層が精度よく形成される。従って、上記製造方法を用いれば、発光層の位置ずれに起因する有機EL表示装置の不良の発生を抑制することができる。
【0035】
<実施例1>
図5(a)〜(e)は、本発明の実施例1にかかる基板の挟持および載置処理の流れを示す図である。各図は、挟持された基板10を図3に示す基板保持ユニットにて載置体に載置する様子を順次示しており、基板保持ユニットおよび基板10を図3のXZ平面で切断した断面図である。なお必要に応じて、挟持機構の4辺のうち一方の長辺側(図5の左側)に配置された押圧具に符号302a、それと対向する長辺側(図5の右側)に配置された押圧具に符号302bを付して区別する。
【0036】
図5(a)は、搬送ロボット119により基板10が支持具300と押圧具302の間
に導入され、基板10の周縁部10aが支持具300によって支持された状態である。図5(a)の状態では基板10が固定されていないため、基板10の中央が撓んでいる。
【0037】
図5(b)では、制御部270の制御に応じてクランプZアクチュエータ251がクランプ部材303を下降させることにより、押圧具302aおよび302bが下降して、支持具300との間で基板10を挟持する。ここで、制御部270は、一辺内(一方の長辺側)の押圧具302aと支持具300の間には通常通りの挟力を発生させるが(図中、「通常」と記した下向き矢印)、対向する他方の長辺側の押圧具302bと支持具300の間には、通常より弱い挟力を発生させるか、挟力が発生しないようにする(図中、「弱
or Free」と記した下向き矢印)。このような制御は例えば、クランプZアクチュ
エータ251による押圧力を左右で変更することで実施できる。このように挟力が可変であることによって、本発明の制御が可能である。かかる挟力を可変する制御を可能にする制御部や各アクチュエータを、挟力可変手段と称しても良い。
【0038】
押圧具302aと支持具300の間の挟力は、基板10が容易にズレないような力が好ましい。一方、押圧具302bと支持具300の間の挟力は基板10にある程度の力が働いたときに、押圧具302bと支持具300の間にある基板10がズレて挟持位置が変わる程度の力が好ましい。なお、挟持機構が基板10を保持する挟力には、押圧具302a,302bにかける力の他に、基板10と挟持機構の間の摩擦力も寄与しているので、押圧具302bにかける力を制御する際には、摩擦力も加味することが好ましい。
【0039】
図5(c)は、図5(b)のように片側の挟力が弱いかゼロの状態で、基板Zアクチュエータ250が基板10を下降させ、基板10が載置体であるマスク220に接触した状態を示す。
【0040】
図5(d)は、図5(c)の状態から、基板Zアクチュエータ250がさらに基板10を下降させ、基板10とマスク220の接触領域が増大した状態を示す。このとき、マスク220からの応力と基板中央に生じていた撓みによって基板10の形状が変化し、歪みが生じていることが分かる。従来の挟持方法および載置方法では、この形状変化が、基板10のアライメントに時間を要する原因となっていた。
しかし本発明では、押圧具302bと支持具300の間の挟力が、押圧具302aと支持具300の間の挟力よりも弱いか、ゼロになっている。そのため図5(d)に示すように、マスク220からの応力によって、押圧具302bと支持具300の間の基板10に、矢印501で示す方向のズレ力が発生する。その結果、図5(e)に示すように基板10の撓みや歪みが解消し、基板10とマスク220の接触状態が改善される。
【0041】
図6(a)は、挟持機構によって基板10が通常通りに挟持された様子を示し、図3の基板保持ユニットをZ軸の上方向から見た平面図である。図3の説明で述べたように、短辺側においては、基板の周縁部10aが支持具300に載っているだけで、挟持はされていない。また、長辺側においては、基板の周縁部10aが、支持具300と押圧具302の間に挟持されている。
【0042】
図6(b)は、図5(b)によって説明した挟持の様子を示す。図中、左側の長辺においては、基板の周縁部10aが、通常の挟力で支持具300と押圧具302aの間に挟持されている。一方、図中右側の長編においては、基板の周縁部10aが、左辺よりも弱い挟力で挟持されているか、挟持されていない。これにより、基板10がマスク220に接触した後、矢印501で示す方向にズレ力が発生する。
【0043】
本実施例の挟持機構(挟持装置)を用いた挟持方法、かかる挟持機構を含む基板載置装置を用いた基板載置方法によれば、基板10を載置体であるマスク220に載置したとき
の歪みが、挟力の弱い側(または挟力がゼロである側)に基板10がズレることによって低減または解消される。言い換えると、載置時に基板10がズレる方向が一定になり、ズレ方(ズレ量や方向)に再現性が出る。これにより、マスク220と基板10とのアライメントを良好に実施可能となるため、アライメント時間短縮及びアライメント精度向上といった効果が得られる。なお、挟持装置とアライメントに用いるカメラ、相対位置を調整する位置調整手段(アクチュエータなど)を合わせて、アライメント機構と考えることもできる。
なお、本実施例の挟持力制御は、第1アライメントの前、第1アライメントと第2アライメントの間、第2アライメントの後、いずれの場面においても適用できる。
【0044】
<実施例2>
実施例1で説明したような、基板10の長辺のうち一方に通常の挟力をかけ、他方に通常より弱い挟力をかける(または挟力をゼロにする)ような制御であれば、図3に示した基板保持ユニットが備える挟持機構によって実現できる。本実施例では、より精密な挟力制御を行って基板10の歪みを低減する構成について説明する。
【0045】
図7(a)は、本実施例にかかる基板保持ユニットの主要部分を示した模式図である。基板保持ユニットには、それぞれが互いに独立した複数の挟持機構を備えている。図7(a)では基板10の両長辺側に複数の挟持機構が配置され、両短辺側の構成は省略されている。しかし短辺側にも挟持機構を設けても良いし、図3と同様に、短辺側には支持具300のみを設けても構わない。
【0046】
図7(b)は、本実施例にかかる挟持機構を1つ取り出したものである。それぞれの挟持機構は支持体305によって支持された、押圧具302および支持具300を備えている。例えば、制御部270の制御に従って、支持体305に組み込まれた個別Zアクチュエータ(不図示)が押圧具302をZ方向に昇降させることによって、押圧具302と支持具300の間の挟力が変化する。
【0047】
例えば、押圧具302と支持具400の状態を、基板10のズレが発生しないような通常の挟力がかかっている状態、ある程度の力が加わると基板10がズレるような弱い挟力がかかっている状態、挟力がかかっていない(挟力がゼロである)状態、の間で切り替えることが可能である。すなわち、図7(c)に示すように、押圧具302と支持具300の間の挟力を弱める、あるいはゼロにすることで、基板10を載置した時に、矢印501で示す方向にズレ力が発生する。
【0048】
挟持機構の個別制御の一例を述べる。図7(a)には各長辺に8個の挟持機構が示されているが、このうち一辺において、中央の4つを通常の挟持力とし、端の4つを弱い挟持力とする。また、それに対向する辺においては、挟持力を弱くするか、ゼロにする。これにより、載置により発生した歪みが、挟持力の弱い(またはゼロの)側の長辺方向だけではなく、短辺方向にも逃げやすくなる。
【0049】
以上のように、本実施例の構成によれば、複数設けた挟持機構ごと挟力を制御することにより、基板10が載置体であるマスク220に載置されたときのズレの量や方向を精密に制御できるようになる。
なお、本実施例の挟持機構を用いた挟持力制御は、第1アライメントの前、第1アライメントと第2アライメントの間、第2アライメントの後、いずれの場面においても適用できる。
【0050】
<実施例3>
図8(a)〜(e)は、本発明の実施例3にかかる基板の挟持および載置処理の流れを
示す図である。各図は、挟持された基板10を図3に示す基板保持ユニットにて載置体に載置する様子を順次示しており、基板保持ユニットおよび基板10を図3のXZ平面で切断した断面図である。図5と共通する部材には同じ符号を付する。
【0051】
図8(a)は、搬送ロボット119のロボットハンドによって、基板10が支持具300と押圧具302の間に導入された状態である。また、基板10の短辺側の周縁部は、短辺側用の支持具300にて支持されている。
【0052】
図8(b)では、ロボットハンドが後退することにより基板10の長辺側の周縁部が支持具300にて支持されるとともに、制御部270の制御に応じてクランプZアクチュエータ251がクランプ部材303を下降させることにより、押圧具302aおよび302bが下降して、支持具300との間で基板10を挟持する。このとき、支持具300によって支持されていない領域においては、基板10に撓みが発生している。図8(b)において、図5(b)と同様に、押圧具302aの側に強い挟力が発生し、押圧具302bの側に弱い挟力が発生する(または挟力が発生しない)ような制御を行う。押圧具302aの側の挟力と押圧具302bの側の挟力の好適な関係は、図5(b)での説明と同様である。すなわち押圧具302bの側では、基板10にかかる力による、押圧具302bと支持具300の間にある基板10が移動可能な程度の力が好ましい。
【0053】
なお、本実施例の基板保持ユニットは、基板10の中央部を支持する中央支持具306を備えている。中央支持具306が制御部270の制御に従ってZ方向上下に移動することで、基板10の撓みをある程度低減できる。図8(c)は、片側の長辺の挟力が弱いかゼロの状態で中央支持具306が上昇し、矢印501の方向にズレ力が発生する。ここで、基板10にかかっている挟力は、基板10が移動可能な程度後からであるため、基板10が右側にズレる。これにより、基板10の撓みの一部が解消する。
【0054】
図8(d)において、基板Zアクチュエータ250が基板10を下降させ、基板10がマスク220に載置される。このとき、マスク220からの応力によって、押圧具302bと支持具300の間の基板10に、矢印501で示す方向のズレ力が再び発生する。その結果、図8(e)に示すように基板10の撓みや歪みが解消し、基板10とマスク220の接触状態が改善される。
【0055】
なお、図8(e)において、カメラ260,261によるアライメントマークの撮像結果に基づいて第2アライメントを行い、さらに基板10とマスク220の相対位置を調整することも好ましい。その際、押圧具302bの側の挟力を通常の値にしても良い。これにより、基板10が安定した状態でアライメントを実施できる。
【0056】
以上述べたように、本実施例の挟持機構(挟持装置)を用いた挟持方法、かかる挟持機構を含む基板載置装置を用いた基板載置方法によれば、中央支持具306の移動による基板10のズレと、マスク220への載置による基板10のズレという複数の段階を経て基板10の歪みが良好に低減される。その結果、アライメント時間短縮及びアライメント精度向上といった効果が得られる。
なお、本実施例の挟持力制御は、第1アライメントの前、第1アライメントと第2アライメントの間、第2アライメントの後、いずれの場面においても適用できる。
【0057】
<実施例4>
図9(a)〜(f)は、本発明の実施例4にかかる基板の挟持および載置処理の流れを示す図である。各図は、挟持された基板10を図3に示す基板保持ユニットにて載置体に載置する様子を順次示しており、基板保持ユニットおよび基板10を図3のXZ平面で切断した断面図である。図5図8と共通する部材には同じ符号を付する。
【0058】
図9(a)は、図8(a)と同様に、ロボットハンドによって基板10が支持具300と押圧具302の間に導入された状態を示す。
【0059】
図9(b)では、ロボットハンドが後退することにより基板10の長辺側の周縁部が支持具300にて支持される。
【0060】
図9(c)では、制御部270の制御に応じてクランプZアクチュエータ251がクランプ部材303を下降させることにより、押圧具302aおよび302bが下降して、支持具300との間で基板10を挟持する。図9(c)においても、押圧具302aの側に強い挟力が発生し、押圧具302bの側に弱い挟力が発生する(または挟力が発生しない)ような制御を行う。さらに、図9(c)においては、中央支持具306がZ方向に上昇して基板10と接触することにより矢印501の方向にズレ力が発生して、基板10が紙面上右側にズレている。これにより、基板10の撓みの一部が解消している。
【0061】
図9(d)は、本実施例に特有の操作であり、基板10をマスク220に載置する前に、カメラ260によるアライメントマークの撮像結果に基づいて基板10とマスク220との相対位置を調整する第1アライメントを行っている。このように、基板10がマスク220に接触する前に第1アライメントを行うことで、その後、マスク220への接触後に行われる第2アライメントの精度が向上する。
【0062】
図9(e)において、基板Zアクチュエータ250の動作によって基板10がマスク220に載置される。このとき、マスク220からの応力によって、押圧具302bと支持具300の間の基板10に、矢印501で示す方向のズレ力が再び発生する。その結果、図9(f)に示すように基板10の撓みや歪みが解消し、基板10とマスク220の接触状態が改善される。なお、図9(f)において、カメラ261によるアライメントマークの撮像結果に基づいて第2アライメントを行い、さらに基板10とマスク220の相対位置を調整することも好ましい。その際、押圧具302bの側の挟力を通常の値にしても良い。これにより、基板10の挟持位置が固定可能となり、かつ、対向する両辺の挟力が同じになるため、安定的にアライメントを実施できる。
【0063】
以上述べたように、本実施例の挟持機構(挟持装置)を用いた挟持方法、かかる挟持機構を含む基板載置装置を用いた基板載置方法によれば、中央支持具306の移動による基板10のズレと、第1アライメントと、マスク220への載置による基板10のズレという複数の段階を経て基板10の位置ズレや歪みが良好に低減される。その結果、アライメント時間短縮及びアライメント精度向上といった効果が得られる。
なお、本実施例の挟持力制御は、第1アライメントの前、第1アライメントと第2アライメントの間、第2アライメントの後、いずれの場面においても適用できる。
【符号の説明】
【0064】
10:基板、210:基板保持ユニット、220:マスク、251:基板Zアクチュエータ、270:制御部、300:支持具、302:押圧具
【要約】
【課題】有機ELディスプレイの製造において基板を載置体に載置するときの歪みを低減する。
【解決手段】基板の周縁部を挟持するための複数の挟持具を有する挟持手段と、基板を載置体の上に載置するための載置手段とを有する基板載置装置であって、挟持手段は、複数の挟持具の挟力を可変する挟力可変手段を有し、挟力可変手段は、複数の挟持具のうちの一部の挟持具の挟力を、その他の挟持具とは独立して可変することを特徴とする基板載置装置を用いる。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9