(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施例に係る結晶極性判定装置100の構成例を示すブロック図である。また、
図2は、結晶極性判定装置100の上面図である。本実施例において、結晶極性判定装置100は、例えば、結晶方位に依存する焦電効果を持つウエハWの分極方向に応じて決まるウエハWの表裏を判定する。なお、結晶極性判定装置100は、結晶方位に依存する焦電効果を持つ結晶体のインゴットの極性を判定してもよい。この場合、下記の説明におけるウエハWは結晶体で読みかえられ、また、ウエハWの表裏の判定は、結晶体の分極方向の判定で読みかえられる。
【0015】
本実施例において、結晶極性判定装置100は、主に、制御装置1、振動付与装置2、電圧検出装置3、及び出力装置4を有する。振動付与装置2及び電圧検出装置3は、
図2に示すように、塩化ビニル等の絶縁体で形成される支持台PF上に、ウエハWを挟持できるように配置される。なお、制御装置1及び出力装置4の配置は任意である。また、ウエハWの下面は、通常、支持台PFの平坦な上面に接触しているが、接触していなくてもよい。また、支持台PFの平坦な上面は、水平面であってもよく、傾斜面であってもよい。
【0016】
ウエハWは、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)、タンタル酸リチウム(LiTaO
3)等の焦電効果を持つ材料で形成される。また、ポーリング処理によって決まるウエハWの分極方向(厳密には+z方向を意味する。)は、例えば、
図2の矢印ARで示す方向であり、矢印ARが向く方向が+z方向を表す。なお、ウエハWの分極方向は、通常、ウエハWの表面に対して傾斜し、且つ、鉛直方向の成分を有し得るが、以下では、説明の便宜のため、鉛直方向の成分を考慮しないものとする。ウエハWの表裏は、
図2に示すようにウエハWを結晶極性判定装置100にセットしたときの分極方向によって決められる。
図2の場合、すなわち、+z方向が右向きの場合、結晶極性判定装置100は、ウエハWの上面が表であると判定する。
【0017】
制御装置1は、結晶極性判定装置100を制御するための制御手段の1例であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、NVRAM(Non-volatile RAM)等を備えたコンピュータである。具体的には、制御装置1は、例えば、振動付与部10、電圧波形検出部11、及び結晶極性判定部12のそれぞれの機能要素に対応するプログラムをROMから読み出してRAMに展開し、各機能要素に対応する処理をCPUに実行させる。
【0018】
振動付与装置2は、ウエハWに振動を付与するための振動付与手段の1例であり、ピエゾ素子2a、ピエゾ素子固定部材2b、押さえ部材2c、バネ2d、及びバネ固定部材2eで構成される。
【0019】
ピエゾ素子2aは、圧電効果を利用した受動素子であり、例えば、制御装置1からの制御電圧に応じて、
図2の矢印Fで示す力をウエハWに対して加えることができる。そして、ピエゾ素子2aは、その力を周期的に加えることによって、ウエハWに任意の振動数の振動を与えることができる。なお、振動付与手段として、スピーカ等の振動付与に利用されるボイスコイル、ソレノイド等をピエゾ素子2aの代わりに用いてもよいが、制御電圧に対する追従性からピエゾ素子を用いることが好ましい。
【0020】
ピエゾ素子固定部材2bは、ピエゾ素子2aの一端を固定するための部材であり、ピエゾ素子2aの他端が伸縮してウエハWに振動を与えることができるようにする。
【0021】
押さえ部材2cは、ピエゾ素子2aと協働してウエハWを挟持し且つ固定するための部材である。具体的には、ウエハWは、その周縁に形成される直線状のオリエンテーションフラットOFをピエゾ素子2aの平坦な接触面に接触させる。また、ウエハWは、その周縁における、オリエンテーションフラットOFの直径方向反対側の部分を押さえ部材2cに接触させる。なお、押さえ部材2cは、ウエハWの周縁との接触面をウエハWの周縁に適合する湾曲形状とする。すなわち、押さえ部材2cの接触面は、ウエハWの円周と同じ曲率の湾曲面を有する。また、押さえ部材2cは、望ましくは、塩化ビニル等の絶縁体で形成される。ウエハWの電気的絶縁性をさらに高めるためである。
【0022】
また、ピエゾ素子2aの接触面の中心と、押さえ部材2cの接触面の中心とを結ぶ線は、振動軸2Xを定める。ピエゾ素子2aによる振動は、振動軸2Xに平行な方向に沿ってウエハWに付与される。
【0023】
バネ2dは、支持台PF上で押さえ部材2cをウエハWに押し付けるための弾性部材の1例であり、振動軸2Xに平行にウエハWに対して押さえ部材2cを付勢する。また、バネ2dは、ピエゾ素子2a等によってウエハWに過度の力が加えられた場合に押さえ部材2cを後退させることによってその力を吸収し、ウエハWが割れるのを防止する。
【0024】
バネ固定部材2eは、バネ2dの一端を固定するための部材であり、バネ2dの他端が伸縮して押さえ部材2cを付勢できるようにする。
【0025】
電圧検出装置3は、ウエハWの圧電効果によって生じる電圧を検出するための電圧検出手段の1例であり、一対の電極3aL、3aR、一対の電極保持部材3bL、3bR、バネ3c、及びバネ固定部材3dで構成される。
【0026】
一対の電極3aL、3aRは、ウエハWの圧電効果によって生じる電圧を取り出すための部材であり、ウエハWの周縁の2箇所に互いに向かい合うように配置される。具体的には、ウエハWは、その周縁を一対の電極3aL、3aRのそれぞれに接触させる。なお、一対の電極3aL、3aRのそれぞれは、ウエハWの周縁との接触面をウエハWの周縁に適合する湾曲形状とする。すなわち、一対の電極3aL、3aRのそれぞれの接触面は、ウエハWの円周と同じ曲率の湾曲面を有する。
【0027】
また、電極3aLの接触面の中心と電極3aRの接触面の中心とを結ぶ線は、電極軸3Xを定める。本実施例では、電極軸3Xは、振動軸2Xに対して垂直となるように定められる。
【0028】
また、本実施例では、一対の電極3aL、3aRは、導電ゴムで形成される。ウエハWとの接触をより安定的にし、その接触面積を広く確保することで、ウエハWの圧電効果によって生じる電圧をより安定的に検出できるようにするためである。なお、導電ゴムは、例えば、体積固有抵抗0.9×10
2[Ω・cm]を有する。但し、一対の電極3aL、3aRは、金属で形成されてもよい。
【0029】
一対の電極保持部材3bL、3bRは、一対の電極3aL、3aRを保持するための部材である。具体的には、電極保持部材3bLが電極3aLを保持し、電極保持部材3bRが電極3aRを保持する。
【0030】
バネ3cは、支持台PF上で電極3aRをウエハWに押し付けるための弾性部材の1例であり、電極軸3Xに平行にウエハWに対して電極3aRを付勢する。また、バネ3cは、電極軸3Xの方向においてウエハWに過度の力が加えられた場合に電極3aRを後退させることによってその力を吸収し、ウエハWが割れるのを防止する。
【0031】
バネ固定部材3dは、バネ3cの一端を固定するための部材であり、バネ3cの他端が伸縮して電極3aRを付勢できるようにする。
【0032】
なお、バネ3c及びバネ固定部材3dは、電極3aRを付勢する代わりに、或いは、電極3aRを付勢することに加えて、電極3aLを付勢するように配置されてもよい。
【0033】
出力装置4は、各種情報を出力するための装置であり、例えば、制御装置1によるウエハの表裏の判定結果を表示するためのディスプレイ、又は、その判定結果を音声出力するためのスピーカ等である。
【0034】
次に、制御装置1が有する各種機能要素について説明する。
【0035】
振動付与部10は、振動付与手段を動作させるための機能要素であり、例えば、振動付与装置2に対して所定振動数の制御電圧を出力する。
【0036】
具体的には、振動付与部10は、ウエハW上で定在波が発生するようにピエゾ素子2aを所定振動数で振動させるべく、所定周波数の制御電圧を振動付与装置2に対して出力する。例えば、振動付与部10は、ウエハWの機械的共振が発生するようにピエゾ素子2aを所定振動数で振動させるべく、所定周波数の制御電圧を振動付与装置2に対して出力する。ウエハWにおける振動の振幅が大きいほど、ウエハWの圧電効果によって生じる電圧も大きくなり、電圧の検出も容易になるためである。
【0037】
電圧波形検出部11は、ウエハWの圧電効果によって生じる電圧の波形を検出するための機能要素であり、例えば、電圧検出装置3が検出して出力する電圧の波形を検出するオシログラフ機能を備える。
【0038】
具体的には、電圧波形検出部11は、振動付与部10が出力する制御電圧に応じて振動付与装置2が所定振動数で振動しウエハWを振動させた結果ウエハWの圧電効果によって生じる電圧の波形を検出し、その検出結果を結晶極性判定部12に対して出力する。
【0039】
結晶極性判定部12は、結晶体の極性を判定するための機能要素であり、例えば、結晶体の分極方向を判定する。本実施例では、結晶極性判定部12は、ウエハWの分極方向に依存するウエハWの表裏を判定する。具体的には、結晶極性判定部12は、例えば、ウエハWに付与される振動の波形と、その振動に対するウエハWの圧電効果によって生じる電圧の波形とに基づいてウエハWの表裏を判定する。
【0040】
より具体的には、結晶極性判定部12は、振動付与部10が振動付与装置2に対して出力する制御電圧の波形(以下、「制御電圧波形」とする。)を、ウエハWの振動の波形(以下、「振動波形」とする。)として取得する。また、結晶極性判定部12は、電圧波形検出部11が検出する、電圧検出装置3の出力電圧の波形(以下、「出力電圧波形」とする。)を、ウエハWの圧電効果によって生じる電圧の波形として取得する。
【0041】
その上で、結晶極性判定部12は、振動波形と出力電圧波形との位相差を導き出す。そして、結晶極性判定部12は、その位相差が予め登録された位相差と等しい場合に、結晶極性判定装置100にセットされたウエハWの上面を表と判定する。一方で、結晶極性判定部12は、その位相差が予め登録された位相差と異なる場合に、結晶極性判定装置100にセットされたウエハWの上面を裏と判定する。なお、別の実施例では、この表裏の判定が逆であってもよい。
【0042】
具体的には、結晶極性判定部12は、別の任意の方法によって既に表裏が判別されているウエハ(以下、「マスタサンプル」とする。)の表を上面としてマスタサンプルが結晶極性判定装置100にセットされたときの振動波形と出力電圧波形との間の位相差(以下、「基準位相差φ
ref」とする。)を予め登録している。そして、結晶極性判定部12は、表裏の別が分かっていないウエハWが結晶極性判定装置100にセットされたときの振動波形と出力電圧波形との位相差φが基準位相差φ
refと等しい場合、結晶極性判定装置100にセットされたウエハWの上面を表と判定する。一方、結晶極性判定部12は、表裏の別が分かっていないウエハWが結晶極性判定装置100にセットされたときの振動波形と出力電圧波形との位相差φが基準位相差φ
refと異なる場合、結晶極性判定装置100にセットされたウエハWの上面を裏と判定する。なお、「位相差φが基準位相差φ
refと等しい場合」は、例えば、位相差φと基準位相差φ
refとの間の差がゼロ又はゼロ近傍の場合をいう。また、「位相差φが基準位相差φ
refと異なる場合」は、例えば、位相差φと基準位相差φ
refとの間の差がπ[rad]又はπ[rad]近傍の場合をいう。
【0043】
図3は、振動波形(制御電圧波形)と出力電圧波形の関係の1例を示す図である。なお、
図3(A)はウエハWの表を上面としてウエハWを結晶極性判定装置100にセットした場合の関係を示し、
図3(B)はウエハWの裏を上面としてウエハWを結晶極性判定装置100にセットした場合の関係を示す。また、
図3(A)及び
図3(B)における一点鎖線で示す推移は、マスタサンプルの表を上面としてマスタサンプルが結晶極性判定装置100にセットされた場合の出力電圧波形の推移を示す。
【0044】
図3(A)に示すように、ウエハWの表を上面としてウエハWが結晶極性判定装置100にセットされた場合には、振動波形(制御電圧波形)と出力電圧波形との間の位相差φ
1が基準位相差φ
refと等しく、位相差φ
1と基準位相差φ
refとの間の差はゼロ[rad]となる。一方、
図3(B)に示すように、ウエハWの裏を上面としてウエハWが結晶極性判定装置100にセットされた場合には、振動波形(制御電圧波形)と出力電圧波形との間の位相差φ
2が基準位相差φ
refとは異なり、位相差φ
2と基準位相差φ
refとの間の差はπ[rad]となる。
【0045】
このように、結晶極性判定装置100は、位相差φ
1、φ
2が基準位相差φ
refと等しいか異なるかというこの位相関係に基づいて、ウエハWの表裏を判定することができる。
【0046】
次に、
図4を参照しながら、結晶極性判定装置100がウエハWの表裏を判定する処理(以下、「表裏判定処理」とする。)について説明する。なお、
図4は、表裏判定処理の流れを示すフローチャートであり、結晶極性判定装置100は、ウエハWがセットされた後、例えば、図示しない入力装置を介した操作者の入力(開始指示)に応じて、この表裏判定処理を実行する。また、結晶極性判定装置100は、基準位相差φ
refを予め登録している。
【0047】
最初に、結晶極性判定装置100の制御装置1は、振動付与部10により、振動付与装置2に対して制御電圧を出力する(ステップS1)。具体的には、振動付与部10は、ウエハWの機械的共振が発生するようにピエゾ素子2aを所定振動数で振動させるべく、所定周波数の制御電圧を出力する。
【0048】
その後、制御装置1は、電圧波形検出部11により、電圧検出装置3の出力電圧の波形を検出する(ステップS2)。具体的には、電圧検出装置3は、ピエゾ素子2aの振動によって共振するウエハWの圧電効果によって生じる電圧を一対の電極3aL、3aRを用いて検出し、その検出結果を出力電圧として電圧波形検出部11に対して出力する。電圧波形検出部11は、オシログラフ機能により、電圧検出装置3の出力電圧を継続的に取得し、出力電圧の波形を検出する。
【0049】
その後、制御装置1は、結晶極性判定部12により、振動波形としての制御電圧波形と出力電圧波形との間の位相差φが予め登録された基準位相差φ
refと等しいか否かを判断する(ステップS3)。具体的には、結晶極性判定部12は、振動付与部10から制御電圧波形を取得し、且つ、電圧波形検出部11から出力電圧波形を取得する。その上で、結晶極性判定部12は、制御電圧波形と出力電圧波形との間の位相差φを導き出し、その位相差φが基準位相差φ
refと等しいか否かを判断する。
【0050】
位相差φと基準位相差φ
refとが等しいと判断した場合(ステップS3のYES)、結晶極性判定部12は、結晶極性判定装置100にセットされたウエハWの上面を表と判定する(ステップS4)。
【0051】
一方、位相差φと基準位相差φ
refとが等しくない、すなわち、位相差φと基準位相差φ
refとが異なると判断した場合(ステップS3のNO)、結晶極性判定部12は、結晶極性判定装置100にセットされたウエハWの上面を裏と判定する(ステップS5)。
【0052】
その後、制御装置1は、判定結果に応じた所定の制御信号を出力装置4に対して出力し、判定結果をディスプレイに表示させ、或いは、判定結果をスピーカから音声出力させる(ステップS6)。
【0053】
なお、結晶極性判定部12は、位相差φと基準位相差φ
refとが等しいとも異なるともいえない場合、例えば、位相差φと基準位相差φ
refとの間の差がπ/2[rad]又はπ/2[rad]近傍の場合、表裏判定が不能であると判定してもよい。
【0054】
以上の構成により、結晶極性判定装置100は、ウエハWを周縁の4箇所で挟持しながら、振動軸2Xに沿ってウエハWに振動を与え、ウエハWを共振させる。そして、結晶極性判定装置100は、共振するウエハWの圧電効果によって生じる電圧の波形を検出し、ウエハWの振動波形と出力電圧波形の位相差に基づいてウエハWの表裏を判定する。その結果、結晶極性判定装置100は、X線やレーザ等の光学的手段を用いる方法では判定できないウエハWの分極方向に応じたウエハWの表裏を判定することができる。
【0055】
また、結晶極性判定装置100は、追加的なオリエンテーションフラット、又は、目印となる空隙若しくは細溝をウエハWに形成することなく、ウエハWの表裏を判定することができる。そのため、ウエハWの表裏を判定するタイミングが特定の処理や加工が行われる前に制限されたり、特定の処理や加工が行われた後に制限されたりすることもない。
【0056】
また、結晶極性判定装置100は、ウエハWの表裏を判定するときと同様の処理により、結晶体(例えば、円柱形状のインゴットである。)の分極方向を判定してもよい。また、結晶体が円柱形状のインゴットである場合、オリエンテーションフラットは未形成であってもよい。また、その場合、ピエゾ素子2aの接触面は、押さえ部材2cと同様の湾曲面であってもよい。
【0057】
次に、
図5を参照しながら、振動軸2X及び電極軸3Xの配置例について説明する。なお、
図5(A)及び
図5(B)のそれぞれは、結晶極性判定装置100の上面図であり、
図1に対応する。また、
図5(A)及び
図5(B)では、明瞭化のため、制御装置1及び出力装置4の図示を省略する。
【0058】
図5(A)は、振動軸2Xと電極軸3Xとが直交するように振動付与装置2及び電圧検出装置3が配置された状態を示す。また、
図5(A)は、表を上面としてウエハWがセットされた場合に、ウエハWの分極方向が、矢印AR1で示すように、電極軸3Xに対して90度より小さい角度θ
1を形成することを示す。また、
図5(A)は、裏を上面としてウエハWがセットされた場合に、ウエハWの分極方向が、点線矢印AR2で示すように、電極軸3Xに対して90度より大きい角度θ
2を形成することを示す。
【0059】
この場合、結晶極性判定装置100は、表を上面としてウエハWがセットされたときには、位相差φが基準位相差φ
refと等しいことを検出し、裏を上面としてウエハWがセットされたときには、位相差φが基準位相差φ
refと異なることを検出する。また、表を上面としてウエハWがセットされたときの出力電圧波形の振幅は、裏を上面としてウエハWがセットされたときの出力電圧波形の振幅と同等である。圧電効果によって生成される電圧の大きさが矢印AR1、AR2の大きさに対応すると仮定した場合、表を上面としてウエハWがセットされたときの出力電圧の電極軸3Xに沿った成分C1の大きさは、裏を上面としてウエハWがセットされたときの出力電圧の電極軸3Xに沿った成分C2の大きさと等しくなるためである。
【0060】
図5(B)は、振動軸2Xと電極軸3Xとが直交せずに傾斜するように振動付与装置2及び電圧検出装置3が配置された状態を示す。また、
図5(B)は、表を上面としてウエハWがセットされた場合に、ウエハWの分極方向が、矢印AR3で示すように、電極軸3Xに対して90度より小さい角度θ
3を形成することを示す。また、
図5(B)は、裏を上面としてウエハWがセットされた場合に、ウエハWの分極方向が、点線矢印AR4で示すように、電極軸3Xに対して90度より大きい角度θ
4を形成することを示す。
【0061】
この場合、結晶極性判定装置100は、表を上面としてウエハWがセットされたときには、位相差φが基準位相差φ
refと等しいことを検出し、裏を上面としてウエハWがセットされたときには、位相差φが基準位相差φ
refと異なることを検出する。また、表を上面としてウエハWがセットされたときの出力電圧波形の振幅は、裏を上面としてウエハWがセットされたときの出力電圧波形の振幅よりも大きい。圧電効果によって生成される電圧の大きさが矢印AR3、AR4の大きさに対応すると仮定した場合、表を上面としてウエハWがセットされたときの出力電圧の電極軸3Xに沿った成分C3の大きさは、裏を上面としてウエハWがセットされたときの出力電圧の電極軸3Xに沿った成分C4の大きさより大きくなるためである。
【0062】
次に、
図6を参照しながら、振動軸2X及び電極軸3Xの別の配置例について説明する。なお、
図6(A)及び
図6(B)のそれぞれは、結晶極性判定装置100の上面図であり、
図1に対応する。また、
図6(A)及び
図6(B)では、明瞭化のため、制御装置1及び出力装置4の図示を省略する。
【0063】
図6(A)は、振動軸2Xと電極軸3Xとが直交せずに傾斜するように振動付与装置2及び電圧検出装置3が配置された状態を示す。また、
図6(A)は、表を上面としてウエハWがセットされた場合に、ウエハWの分極方向が、矢印AR5で示すように、電極軸3Xに対して90度より小さい角度θ
5を形成することを示す。また、
図6(A)は、裏を上面としてウエハWがセットされた場合に、ウエハWの分極方向が、点線矢印AR6で示すように、電極軸3Xに対して90度に等しい角度θ
6を形成することを示す。
【0064】
この場合、結晶極性判定装置100は、表を上面としてウエハWがセットされたときには、位相差φが基準位相差φ
refと等しいことを検出するが、裏を上面としてウエハWがセットされたときには、出力電圧波形を検出しないため、位相差φが基準位相差φ
refと異なることを検出しない。表を上面としてウエハWがセットされたときには出力電圧の電極軸3Xに沿った成分C5が存在するのに対し、裏を上面としてウエハWがセットされたときには、分極方向と電極軸3Xが直交し、出力電圧の電極軸3Xに沿った成分が存在しないためである。
【0065】
この場合においても、結晶極性判定装置100は、出力電圧波形が検出されないときのウエハWの上面を裏と判定することができるが、電圧検出装置3の故障との区別がつかない。
【0066】
このような場合、結晶極性判定装置100は、
図6(B)に示すように、電圧検出装置3の配置を変更してもよい。すなわち、結晶極性判定装置100は、表を上面としてウエハWがセットされた場合、及び、裏を上面としてウエハWがセットされた場合の何れにおいても、分極方向と電極軸3Xが直交しないように、電圧検出装置3の配置を変更してもよい。
【0067】
図6(B)は、振動軸2Xと電極軸3Xとが
図6(A)に示す角度とは異なる角度で交差するように振動付与装置2及び電圧検出装置3が配置された状態を示す。また、
図6(B)は、表を上面としてウエハWがセットされた場合に、ウエハWの分極方向が、矢印AR7で示すように、電極軸3Xに対して90度より小さい角度θ
7を形成することを示す。また、
図6(B)は、裏を上面としてウエハWがセットされた場合に、ウエハWの分極方向が、点線矢印AR8で示すように、電極軸3Xに対して90度より大きい角度θ
8を形成することを示す。なお、ウエハWの分極方向は、
図6(A)の場合と同じである。
【0068】
この場合、結晶極性判定装置100は、表を上面としてウエハWがセットされたときには、振動波形と同位相の出力電圧波形を検出し、裏を上面としてウエハWがセットされたときには、位相差φが基準位相差φ
refと異なることを検出する。また、表を上面としてウエハWがセットされたときの出力電圧波形の振幅は、裏を上面としてウエハWがセットされたときの出力電圧波形の振幅よりも小さい。圧電効果によって生成される電圧の大きさが矢印AR7、AR8の大きさに対応すると仮定した場合、表を上面としてウエハWがセットされたときの出力電圧の電極軸3Xに沿った成分C7の大きさは、裏を上面としてウエハWがセットされたときの出力電圧の電極軸3Xに沿った成分C8の大きさより小さくなるためである。
【0069】
以上の構成により、結晶極性判定装置100は、振動軸2X及び電極軸3Xの配置を任意に設定しながら、振動軸2Xに沿ってウエハWに振動を与え、ウエハWを共振させる。そして、結晶極性判定装置100は、電極軸3Xを形成する一対の電極3aL、3aRを用いて、共振するウエハWの圧電効果によって生じる電圧の波形を検出し、ウエハWの振動波形と出力電圧波形の位相差に基づいてウエハWの表裏を判定する。その結果、結晶極性判定装置100は、X線やレーザ等の光学的手段を用いる方法では判定できないウエハWの分極方向に応じたウエハWの表裏を判定することができる。
【0070】
また、結晶極性判定装置100は、ウエハWの表裏を判定するときと同様の処理により、結晶体(例えば、円柱形状のインゴットである。)の分極方向を判定してもよい。なお、結晶体は、角柱形状等、円柱形状以外の形状を有していてもよい。
【0071】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0072】
例えば、上述の実施例では、ピエゾ素子2aは、ウエハWの周縁における直線状のオリエンテーションフラットと接触するよう配置されるが、結晶体(ウエハW)のオリエンテーションフラットOF以外の湾曲部分と接触するよう配置されてもよい。
【0073】
また、上述の実施例では、ウエハWに対するピエゾ素子2aの接触面は平坦面であるが、押さえ部材2cと同様の湾曲面であってもよい。
【0074】
また、上述の実施例では、振動軸2X及び電極軸3Xの双方がウエハWの中心を通るように、振動付与装置2及び電圧検出装置3が配置されるが、振動軸2X及び電極軸3Xのうちの少なくとも一方が結晶体(ウエハW)の中心を通らないように、振動付与装置2、電圧検出装置3が配置されてもよい。
【0075】
また、上述の実施例では、結晶極性判定装置100は、振動付与部10が振動付与装置2に対して出力する制御電圧の波形をウエハWの振動波形とすることによって、ウエハWの振動波形を間接的に検出する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。結晶極性判定装置100は、結晶体又はウエハWに振動センサを取り付けることによって結晶体又はウエハWの振動波形を直接的に検出してもよい。