(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
半導体積層体を含む発光素子の上に、平面視において外縁の少なくとも一部が前記発光素子の外縁よりも内側に配置するように、端子基板を実装する工程及び光反射材を含む固定部材で、前記発光素子と前記端子基板とを固定する工程を含む発光装置の製造方法。
第1半導体層、発光層及び第2半導体層がこの順に積層された半導体積層体と、該半導体積層体の一面側に、前記第1半導体層に接続される第1電極及び前記第2半導体層に接続される第2電極を有する発光素子を、支持体上に複数配列し、
該支持体上に配列された各発光素子に、平面視において外縁が前記半導体積層体の外縁よりも内側に配置するように、端子基板を実装し、
光反射材を含む固定部材で、前記発光素子と前記端子基板とを固定する工程を含む発光装置の製造方法。
前記端子基板の側面及び前記発光素子と前記端子基板との間を、前記固定部材で被覆する工程をさらに含む請求項10〜13のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いる。それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。複数の図面に表れる同一符号は同一の部分又は部材を示す。発明を理解しやすくするために、実施形態を分けて説明するが、これらの実施形態はそれぞれ独立するものではなく、共有できるところは他の実施形態の説明を適用する。
【0010】
本発明の発光装置は、半導体積層体を含む発光素子と、端子基板とを含む。発光装置は、さらに固定部材を含んでいてもよい。ここで、発光素子は、1つの発光装置において、1つ又は複数含まれる。この発光装置は、いわゆるトップビュー型、サイドビュー型のいずれにも利用することができる。
【0011】
〔発光素子〕
発光素子は、通常、半導体積層体と、第1電極及び第2電極とを備える。
(半導体積層体)
本発明の半導体積層体は、第1半導体層(例えば、n型半導体層)、発光層、第2半導体層(例えば、p型半導体層)がこの順に積層されている。半導体積層体の一面側(例えば、第2半導体層側、下面側ということもある)に、第1半導体層に接続される第1電極と、第2半導体層に接続される第2電極とが配置される。半導体積層体の他面側、つまり、一面と反対の面側には、半導体積層体からの光を出射させる、光取出し面を有する。半導体積層体は、半導体層の成長用の基板上に積層されたものであり、基板を伴っていてもよいし、基板が除去されたものでもよい。
【0012】
第1半導体層、発光層及び第2半導体層の種類、材料は特に限定されるものではなく、例えば、III−V族化合物半導体、II−VI族化合物半導体等、種々の半導体が挙げられる。具体的には、In
XAl
YGa
1−X−YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)等の窒化物系の半導体材料が挙げられ、InN、AlN、GaN、InGaN、AlGaN、InGaAlN等を用いることができる。各層の膜厚及び層構造は、当該分野で公知のものを利用することができる。
【0013】
半導体層の成長用の基板としては、半導体層をエピタキシャル成長させることができるものが挙げられる。このような基板の材料としては、サファイア(Al
2O
3)、スピネル(MgA1
2O
4)のような絶縁性基板、上述した窒化物系の半導体基板等が挙げられる。半導体層の成長用の基板として、サファイア基板のような透光性を有する基板を用いることにより、半導体積層体から除去せず発光装置に用いることができる。
基板は、表面に凹凸を有するものであってもよい。また、C面、A面等の所定の結晶面に対して0〜10°程度のオフ角を有するものであってもよい。
基板は、第1半導体層との間に、中間層、バッファ層、下地層等の半導体層又は絶縁層等を有していてもよい。
【0014】
半導体積層体は、半導体層の成長用の基板が除去された場合、より薄型化、小型化を実現する発光装置を得ることができる。また、発光に直接寄与しない層を除去することにより、これに起因する発光層から出射される光の吸収を阻止することができるため、より発光効率を向上させることができる。その結果、発光輝度を高めることが可能となる。
【0015】
半導体積層体は、平面視における形状は特に限定されるものではなく、四角形又はこれに近似する形状が好ましい。半導体積層体の大きさは、発光装置の大きさによって、その上限を適宜調整することができる。具体的には、半導体積層体の一辺の長さが、数百μmから10mm程度が挙げられる。
半導体積層体が、半導体層の成長用の基板を伴う場合、基板と半導体積層体とは平面積が同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。つまり、半導体積層体ごとの分割の容易のために基板表面の一部が半導体積層体から露出していてもよい。
【0016】
(第1電極及び第2電極)
第1電極及び第2電極は、半導体積層体の一面側(基板が存在する場合には基板が存在する側とはその反対側の面側、つまり下面側)に形成されている。
【0017】
第1電極及び第2電極は、例えば、Al、Ag、Au、Pt、Pd、Rh、Ni、W、Mo、Cr、Ti等の金属又はこれらの合金の単層膜又は積層膜によって形成することができる。具体的には、半導体層側からAlSiCu/Ti/Pt/Au、Ti/Rh/Au、W/Pt/Au、Rh/Pt/Au、Ni/Pt/Au、Ti/Rh等のように積層された積層膜によって形成することができる。膜厚は、当該分野で用いられる膜の膜厚のいずれでもよい。また、ITOをはじめとする金属以外の導電性材料を用いてもよい。
【0018】
第1電極及び第2電極は、それぞれ第1半導体層及び第2半導体層に近い側に、発光層から出射される光に対する反射率が電極のその他の材料より高い材料層が、これら電極の一部として配置されることが好ましい。
反射率が高い材料としては、銀又は銀合金やアルミニウムを有する層が挙げられる。銀合金としては、当該分野で公知の材料のいずれを用いてもよい。この材料層の厚みは、特に限定されるものではなく、発光素子から出射される光を効果的に反射することができる厚み、例えば、20nm〜1μm程度が挙げられる。この材料層の第1半導体層又は第2半導体層との接触面積は大きいほど好ましい。
なお、銀又は銀合金を用いる場合には、銀のマイグレーションを防止するために、その表面(好ましくは、上面及び側面)を被覆する被覆層を形成することが好ましい。
このような被覆層としては、通常、導電材料として用いられている金属及び合金によって形成されるものであればよく、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル等の金属を含有する単層又は積層層が挙げられる。なかでも、AlCuを用いることが好ましい。被覆層の厚みは、効果的に銀のマイグレーションを防止するために、数百nm〜数μm程度が挙げられる。
【0019】
第1電極及び第2電極は、それぞれ第1半導体層及び第2半導体層に接続されている限り、電極の全面が半導体層に接触されていなくてもよいし、第1電極の一部が第1半導体層の上に及び/又は第2電極の一部が第2半導体層の上に位置していなくてもよい。つまり、例えば、特開平9−331012号公報、特開平9−331022号公報等に記載されているように、絶縁膜等を介して、第1電極が第2半導体層上に配置されていてもよいし、第2電極が第1半導体層上に配置されていてもよい。
ここでの絶縁膜としては、特に限定されるものではなく、当該分野で使用されるものの単層膜及び積層膜のいずれでもよい。
上述の絶縁膜等を用いることで、このような第1電極及び第2電極は、第1半導体層及び/又は第2半導体層の平面積にかかわらず、任意の大きさ及び位置に設定することができる。そのため、後述する端子基板が半導体積層体の平面積よりも小さな平面積を有する場合でも、半導体積層体の端子基板への実装を容易にすることが可能となる。
【0020】
第1電極及び第2電極の形状は、半導体積層体の形状、端子基板の端子の形状等によって設定することができる。例えば、後述する第1電極及び第2電極と接合される端子基板の端子(以下、「接合端子部」ということがある。例えば、四角形又はこれに近い形状)と、第1電極及び第2電極は、それぞれ対応した形状であることが好ましい。第1電極、第2電極及び接合端子部は、それぞれが四角形又はこれに近い形状とすることが好ましい。これにより、セルフアライメント効果により、半導体積層体と端子基板との接合及び位置合わせを容易に行うことができる。この場合、少なくとも、後述する端子基板と接続される半導体積層体の最表面において、第1電極及び第2電極の平面形状が略同じであることが好ましい。また、半導体積層体の中央部分を挟んで、第1電極及び第2電極がそれぞれ対向するように配置されていることが好ましい。
【0021】
第1電極及び第2電極の上面(半導体層と反対側の面)は、段差を有していてもよいが、略平坦であることが好ましい。ここでの平坦とは、半導体積層体の第1半導体層の発光層と接する側と反対側の面から第1電極の表面(第1電極の半導体積層体とは反対側の面)までの高さと、第2電極の表面までの高さとが、略同じであることを意味する。ここでの略同じとは、半導体積層体の高さの±10%程度の変動は許容される。
このように、第1電極及び第2電極の上面を略平坦、つまり、実質的に面一とすることにより、後述する端子基板を水平に実装することが容易となる。このような第1電極及び第2電極を形成するためには、例えば、電極上にメッキ等で金属膜を設け、その後、略面一となるよう研磨や切削を行うことで実現することができる。
第1電極及び第2電極の上面には、それぞれ、端子基板の端子と接続される部分に突起部を形成してもよい。これにより、発光素子と端子基板の間に固定部材を形成する際、固定部材を発光素子と端子基板の間に充填しやすくなり、発光素子からの発光が端子基板側へ透過することを低減できる。また、発光素子と端子基板とを強固に支持することができるようになるため、発光装置の信頼性を高めることができる。
発光素子の電極に設けられた突起部の上面形状は、端子基板の端子の発光素子の実装される部分の平面形状と、略同一であることが好ましい。これにより、セルフアライメント効果を通して、端子基板の発光素子への実装を容易にすることができる。
このような突起部は、突起部が配置されていない電極の上面から任意の高さで設けられ、例えば数μm〜100μm程度の高さで設けられることが好ましい。
【0022】
第1電極及び第2電極と第1半導体層及び第2半導体層とのそれぞれの間に、両者の電気的な接続を阻害しない範囲で、DBR(分布ブラッグ反射器)を配置してもよい。
DBRは、例えば、任意に酸化膜等からなる下地層の上に、低屈折率層と高屈折率層とを積層させた多層構造であり、所定の波長光を選択的に反射する。具体的には屈折率の異なる膜を1/4波長の厚みで交互に積層することにより、所定の波長を高効率に反射させることができる。材料として、Si、Ti、Zr、Nb、Ta、Alからなる群より選択された少なくとも一種の酸化物または窒化物を含んで形成することができる。
【0023】
例えば、低屈折率層をSiO
2、高屈折率層をNb
2O
5、TiO
2、ZrO
2又はTa
2O
5等とすることができる。具体的には、下地層側から順番に(Nb
2O
5/SiO
2)n、nは2〜5が挙げられる。DBRの総膜厚は0.2〜1μm程度が好ましい。
このDBRは、上述の絶縁膜として用いられてもよい。これにより、発光装置の光取出し効率を高めることができる。
後述するレーザー照射によって成長基板の除去を行う場合には、DBRの材料として、用いるレーザー波長の光吸収率が30%以下の材料を用いることが好ましい。これにより、DBRの劣化を低減することができ、高い光取出し効率を保つことができる。例えば、波長248nmのKrFエキシマレーザーを用いる場合には、Nb
2O
5、TiO
2等よりも、ZrO
2を用いることが好ましい。
【0024】
〔端子基板〕
端子基板は、上述した半導体積層体に接続された第1電極及び第2電極とそれぞれ接続されるとともに発光装置の外部と接続される一対の端子と、この端子を固定する絶縁体層を含む。ただし、1つの発光装置に複数の発光素子が含まれる場合、端子基板は、複数の発光素子を電気的に接続する接続配線として機能し得る配線をさらに1以上備えていてもよい。また、電気的に接続される端子又は配線の他に、放熱用の端子又はヒートシンク等を有していてもよい。
本明細書においては、端子基板の発光素子が実装される側の面を素子接合面(第1面)と称し、素子接合面の反対側の面を裏面(第2面)と呼び、素子接合面と裏面との間にある面又はこれらを連結する面を側面と呼ぶ。
【0025】
(絶縁体層)
絶縁体層としては、絶縁性を有する限りどのような材料であってもよい。例えば、セラミック、樹脂、誘電体、パルプ、ガラス又はこれらの複合材料、あるいはこれら材料と導電材料(例えば、金属、カーボン等)との複合材料等が挙げられる。なかでも、セラミックであることが好ましい。いわゆる絶縁体層にセラミックを用いる場合には、小型のチップ抵抗を製造する技術を適用することで安価に調達することができる。セラミックは、放熱性の高い窒化アルミ等を用いることが好ましい。また、線膨張係数の比較的低いガラスエポキシ、ガラスシリコーン及びガラス変性シリコーンのプリプレグ基板であることが好ましい。例えば、半導体用BGA実装の分野で使用されるガラスクロスおよびフィラーを高充填して、線膨張係数を1〜15ppm前後に調整した低線膨張ガラスエポキシ基板を好適に用いることができる。そのような絶縁体層に導電性の配線パターンを形成したものを端子基板として用いることができる。
このようなプリプレグ基板の材料として放熱性の高いガラスクロスまたはフィラーを用いることで、発光装置の放熱性を改善することができる。また、多層基板として内部に部品を内蔵させることで、保護素子等の機能をもたせることもできる。
【0026】
(端子)
端子は、少なくとも、端子基板の素子接合面において、発光素子の第1電極及び第2電極と接続される接合端子部を有し、端子基板のその他の面に設けられる、発光装置の外部と接続される外部接続部を備える。
端子の端子基板内での位置等は、特に限定されるものではなく、例えば、端子基板の素子接合面において、発光素子の第1電極及び第2電極とそれぞれ対向する位置に接合端子部が配置され、そこから端子基板の側面を被覆するように延長していてもよいし、端子基板の素子接合面から側面及び素子接合面の反対側の面(裏面)を被覆するように延長していてもよいし(
図1(a)の端子15、16参照)、端子基板の素子接合面と連続する3つの側面を被覆するように延長していてもよい(
図7の55a、56a参照)。また、端子は、いわゆるビアホールを経て、端子基板の素子接合面から外部接続部が設けられた面に、側面を経ることなく延長していてもよい。外部接続部は、発光装置の外部と接続するため、固定部材等から露出している。外部接続部は、端子基板の裏面、側面のいずれにあってもよい。
【0027】
端子の材料は、導電性及び実装性に優れていれば特に限定されず、接合部材、実装側の半田との接合性及び濡れ性のよい材料が好ましい。具体的には、絶縁体層がセラミックスなどである場合には、W/Ni/Au、W/Ni/Pd/Au、W/NiCo/Pd/Auなどの積層構造が挙げられる。絶縁体層がガラスエポキシ材料などである場合には、Cu/Ni/Au、Cu/Ni/Pd/Au、Cu/NiCu/Ni/Au、Cu/Ni/Pd/Cu/Ni/Pd/Auなどの積層構造が挙げられる。そのほか、上述の第1電極及び第2電極に用いられる導電性の材料を用いることができる。
【0028】
接続配線として機能し得る配線は、端子基板の素子接合面に配置されていればよい。このような配線は、1つの端子基板に実装される発光素子の数、その配列、接続形態(並列及び直列)等によって、その数、形状及び位置等を適宜設定することができる。
端子又は配線の形成方法は、絶縁体層の材料や発光装置の大きさによって適宜選択され、例えば、メッキや蒸着、印刷等の方法が挙げられる。
また、例えば、Mgなどの高放熱性の金属板を所望の端子又は配線の形状に曲げ加工し、絶縁体層の材料(好適には無機フィラーを添加した樹脂)を金属板の周囲に形成し、その後、それらを切削又は切断して成形することによって、樹脂の絶縁体層に金属の端子が埋め込まれ、固定された端子基板を得ることができる。
【0029】
端子又は配線は、それぞれ、素子接合面側において略平坦であることが好ましい。また、端子又は配線は、端子基板の素子接合面において略面一であることが好ましい。さらに、端子又は配線は、上述した発光素子と端子基板が接合された場合に、発光素子の第1電極及び第2電極が形成されていない側の面(つまり光取出し面)を水平に配置することができるように、端子基板の素子接合面において水平であることが好ましい。これによって、後述する固定部材を除去して、端子基板の裏面側を露出させる工程を簡略化することができる。
端子又は配線は、それぞれ発光素子の第1電極及び第2電極と接合される突起部を有していてもよい。これにより、発光素子と端子基板の間に固定部材を形成する際、固定部材を発光素子と端子基板との間に充填しやすくなり、発光素子からの発光が端子基板側へ透過することを防止できる。また、発光素子と端子基板とを強固に支持することができるようになるため、発光装置の信頼性を高めることができる。
突起部の上面の形状は、それぞれ、接合される発光素子の電極の形状と略同一であることが好ましい。これにより、セルフアライメント効果を通して、端子基板の発光素子への実装を容易にすることができる。
突起部は、平坦な端子又は配線にバンプを設けること、端子の下方の絶縁体層の厚みを異ならせること、平坦な絶縁体層の上に端子又は配線の厚みを異ならせること及びこれらの組み合わせ等によって形成することができる。
このような突起部は、突起部が配置されていない端子又は配線の上面から任意の高さで設けられ、例えば、数μm〜100μm程度の高さで設けられることが好ましい。
【0030】
端子基板の平面形状は、特に限定されるものではなく、半導体積層体、発光装置の形状に応じて適宜設定することができる。平面形状としては、例えば、円形、四角形等の多角形又はこれらに近い形状が挙げられる。また、大きさは、特に限定されるものではないが、半導体積層体とほぼ同等又はそれよりも小さい又は大きい平面積であることが好ましい。特に、1つの発光装置に1つの半導体積層体を備える場合、端子基板の平面積は、半導体積層体とほぼ同等又はそれよりも小さいことが好ましい。1つの発光装置に2以上の半導体積層体を備える場合、端子基板は、2以上の半導体積層体の合計平面積とほぼ同等又はそれよりも小さいことが好ましい。
【0031】
端子基板は、平面視において、その外縁が半導体積層体の外縁よりも内側(つまり、中央に近い側)に配置されていることが好ましい。ここでの外縁とは全部であってもよいし、一部であってもよい。
例えば、端子基板の外縁の全部が、半導体積層体の外縁よりも内側に配置されていることが好ましい。これによって、より小型の発光装置を実現することができる。
また、端子基板及び半導体積層体が、平面視において、四角形又はこれに近い形状の場合、少なくとも1辺において端子基板の外縁が半導体積層体の外縁と同じ位置に配置されており、残りの辺において、端子基板の外縁が半導体積層体の外縁よりも内側に配置されていてもよい。
このように、端子基板の平面積を半導体積層体の平面積より小さくしたり、端子基板の外縁を半導体積層体の外縁よりも内側に配置することで、光を端子基板に当たりにくくすることができる。これにより、端子基板による光の吸収を低減することができ、光取出し効率の高い発光装置とすることができる。
【0032】
サイドビュー型の発光装置として実装した場合、実装面となる端子基板の底面に端子を露出するよう設けることが好ましい。また、実装したときの端子基板の底面(発光素子に対向する面(第1面)と反対側の面、つまり裏面、第2面)と、その底面と隣接する端子基板の面の1つ又は2つが露出することが好ましい。さらに、発光装置の実装面と反対側の面に端子が露出していてもよい。
【0033】
端子基板の厚みは、特に限定されるものではなく、発光素子のハンドリング時の割れ、欠け等を防止することができる厚み又は発光装置として発光素子を補強し得る厚みであることが好ましい。例えば、50〜300μm程度が挙げられる。
【0034】
なお、端子基板は、それ自体がコンデンサ、バリスタ、ツェナーダイオード、ブリッジダイオード等の保護素子を構成するものであってもよいし、これら素子の機能を果たす構造をその一部に備えるものでもよい。このような素子機能を果たすものを利用することにより、別途部品を搭載することなく、発光装置として機能させることができるために、静電耐圧等を向上させた高性能の発光装置を、より小型化することが可能となる。
【0035】
端子基板は、接合端子部が、通常発光素子の第1電極及び第2電極と接合部材によって接合されている。このような接合部材は、当該分野で公知の材料のいずれをも用いることができる。具体的には、Au−Sn、Sn−Cu等の共晶合金(例えば、半田)、バンプ、異方性導電材等が挙げられる。なかでも、共晶合金を用いることにより、セルフアライメント効果によって、端子基板を適所に実装することが容易となり、量産性を向上させ、より小型の発光装置を製造することができる。
【0036】
〔固定部材〕
本発明の発光装置は、固定部材をさらに含んでいてもよい。固定部材とは、上述した発光装置を構成する半導体積層体、つまり発光素子及び/又は端子基板を被覆又は固定する機能を有する部材である。このような機能を果たす限り、その材料は特に限定されるものではなく、セラミック、樹脂、誘電体、パルプ、ガラス又はこれらの複合材料等が挙げられる。なかでも、任意の形状に容易に成形することができるという観点から、樹脂が好ましい。
樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。具体的には、エポキシ樹脂組成物、シリコーン樹脂組成物、シリコーン変性エポキシ樹脂などの変性エポキシ樹脂組成物;エポキシ変性シリコーン樹脂などの変性シリコーン樹脂組成物;ポリイミド樹脂組成物、変性ポリイミド樹脂組成物;ポリフタルアミド(PPA);ポリカーボネート樹脂;ポリフェニレンサルファイド(PPS);液晶ポリマー(LCP);ABS樹脂;フェノール樹脂;アクリル樹脂;PBT樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0037】
樹脂は、発光素子からの光に対する反射率が60%以上であるもの、より好ましくは70%、80%又は90%以上であるものとするために、二酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、チタン酸カリウム、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライト、酸化ニオブ、各種希土類酸化物(例えば、酸化イットリウム、酸化ガドリニウム)などの光反射材を含有していてもよい。これにより、発光素子からの光を効率よく反射させることができる。特に、端子基板よりも光反射率の高い材料を用いる(例えば、端子基板に窒化アルミを用いた場合に、固定部材として二酸化チタンを含有させたシリコーン樹脂を用いる)ことにより、ハンドリング性を保ちつつ、端子基板の大きさを小さくして、発光装置の光取出し効率を高めることができる。
樹脂は、光散乱材(硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素など)、着色剤(カーボンブラックなど)等を含有していてもよい。樹脂は、ガラスファイバー、ワラストナイトなどの繊維状フィラー、カーボン、酸化ケイ素等の無機フィラーを含有させてもよい。樹脂は、窒化アルミ等の放熱性の高い材料を含有させてもよい。
例えば、二酸化チタンを用いる場合は、樹脂部材の全重量に対して、20〜40重量%含有させることが好ましい。
このような成分を含有させ、さらに無機フィラー含有率を増加させたり、強度の強い樹脂を使用することにより、基板又は支持体などを除去、剥離するなどプロセス中の固定部材の強度を向上させることができ、ひいては、発光装置においても強度を確保することができる。また、放熱性の高い材料を含有させることで、発光装置の小型化を維持したまま、放熱性を向上させることができる。
【0038】
固定部材は、(1)端子基板の側面を被覆するように配置されている、(2)半導体積層体の側面を被覆するように配置されている及び/又は(3)半導体積層体と端子基板との間を埋め込むように配置されていることが好ましい。なかでも、上記(1)から(3)を満たすように配置されていることがより好ましい。なお、半導体積層体が半導体の成長用の基板を伴う場合、固定部材は、その基板の側面をも被覆するように配置されていることが好ましい。また、半導体層の成長用の基板の表面の一部が半導体積層体から露出する場合には、その露出する部位も固定部材で被覆されていることが好ましい。固定部材がこのように配置することにより、発光装置の強度を確保することを通して、ハンドリング性を良好にすることができる。また、上述したように、半導体層の成長用の基板を除去する際に付加される応力に耐える強度を半導体積層体に与えることができ、小型化を実現した発光装置を歩留まりよく製造することができる。言い換えると、小型化を実現した発光装置の量産性が向上する。その結果、個々に高品質が確保された発光装置を得ることができる。
【0039】
また、上記(1)から(3)を満たすように配置されている場合、固定部材として反射率が高いものを使用することが好ましい。これにより、発光素子の上面への光取り出し向上を効果的に実現することができる。
ここで、端子基板の側面及び/又は半導体積層体の側面を被覆する固定部材の幅(端子基板又は半導体積層体の側面からの高さ)は、端子基板及び/又は半導体積層体の平面形状によって適宜設定することができるが、例えば、20〜200μm程度が挙げられる。このような厚みによって、上述した発光層から出射された光を効果的に反射することができ、また、発光素子に十分な強度を与えることができる。
固定部材は、端子基板の裏面を露出することが好ましい。これによって放熱性を向上させることができる。
【0040】
〔波長変換部材〕
発光装置の光取出し面には、波長変換部材が設けられていることが好ましい。例えば、半導体積層体の光取出し面が、波長変換部材に被覆されていることが好ましい。発光装置の半導体積層体を構成する半導体層の側面が固定部材で被覆されている場合には、半導体積層体の光取出し面に加えて固定部材も波長変換部材で被覆されていることがより好ましい。このような波長変換部材の配置により、半導体積層体から取り出される光を効率よく波長変換することが可能となる。
【0041】
波長変換部材は、主として蛍光体によって形成される。
波長変換部材に含まれる蛍光体は、当該分野で公知のものを使用することができる。例えば、発光素子として青色発光する窒化ガリウム系発光素子を用いる場合、青色光を吸収して黄色〜緑色系発光するYAG系、LAG系、緑色発光するSiAlON系(βサイアロン)、赤色発光するSCASN、CASN系の蛍光体の単独又は組み合わせが挙げられる。上述した光散乱材等を含有していてもよい。
【0042】
波長変換部材は、蛍光体のみを含有するものであってもよいが、結合剤としてアルミナ、酸化ケイ素等の透光性無機物、透光性樹脂等を含むことが好ましい。結合剤の使用により、波長変換部材を任意の位置に容易に配置することができる。
透光性樹脂は、発光層から出射される光の60%以上を透過するもの、さらに、70%、80%又は90%以上を透過するものが好ましい。このような樹脂は、例えば、シリコーン樹脂組成物、変性シリコーン樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、変性エポキシ樹脂組成物、アクリル樹脂組成物等、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂及びこれらの樹脂を少なくとも1種以上含むハイブリッド樹脂等の樹脂等が挙げられる。
【0043】
波長変換部材を形成する方法は、後述する固定部材の被覆方法と同様の方法、波長変換部材をシート状に成形して貼着する方法、電気泳動堆積法、ポッティング、圧縮成型、スプレー、静電塗布法等が挙げられる。
波長変換部材の形状や厚みは特に限定されるものではなく、例えば、10〜300μm程度の層状が挙げられる。
【0044】
なお、波長変換部材に代えて、上述した透光性樹脂による蛍光体を含有しない封止部材を形成していてもよい。
封止部材には、上述した光散乱材、無機フィラー等を含有していてもよい。
これら波長変換部材、光散乱層及び/又は封止部材は、2種以上を積層させてもよい。例えば、半導体積層体上に封止部材を積層し、その上に波長変換部材を設けてもよい。
【0045】
〔発光装置の製造方法〕
本発明の発光装置の製造方法は、半導体積層体を含む発光素子の上に、平面視において外縁の少なくとも一部が前記発光素子の外縁よりも内側に配置するように、端子基板を実装する工程を含む。
一実施形態では、発光装置の製造方法は、
(1)第1半導体層、発光層及び第2半導体層がこの順に積層された半導体積層体と、前記半導体積層体の一面側に、前記第1半導体層に接続される第1電極及び前記第2半導体層に接続される第2電極とを含む発光素子を、支持体上に複数配列する工程と、
(2)支持体上に配列された各半導体積層体に、平面視において外縁が前記半導体積層体の外縁よりも内側に配置するように、端子基板を実装する工程と、を含む。
【0046】
また、(3)複数の端子基板及び複数の半導体積層体を固定部材で固定する工程、
(4)半導体積層体から前記支持体を除去する工程及び
(5)半導体積層体間の固定部材を、1又は複数の半導体積層体ごとに分離(例えば、切断)する工程の1以上を含んでいてもよい。
上記工程(3)は、例えば、
(a)端子基板の側面を固定部材で被覆する工程、
(b)半導体積層体の側面を固定部材で被覆する工程及び/又は
(c)半導体積層体と端子基板との間を固定部材で被覆する工程を含んでいてもよい。
【0047】
まず、工程(1)において、半導体積層体を形成する。
半導体積層体は、当該分野で通常利用されている方法により、上述した半導体層の積層構造を得るために、条件等を適宜調整して基板上に形成することができる。
例えば、MOVPE、有機金属気相成長法(MOCVD)、ハイドライド気相成長法(HVPE)、分子線エピタキシャル成長法(MBE)等の公知の成膜方法が挙げられる。
例えば、サファイアの基板上に、MOCVDによって、AlGaNのバッファ層、n型GaNの第1半導体層、InGaN層を含む発光層、p型GaNの第2半導体層を積層し、半導体層の積層構造を形成する。
【0048】
その後、RIE等のエッチング等により、得られた半導体層の積層構造の第2半導体層及び発光層、任意に第1半導体層の厚み方向の一部を除去し、第1半導体層を露出させる。露出した第1半導体層の表面と、第2半導体層の表面とに、第1半導体層及び第2半導体層にそれぞれ接続する第1電極及び第2電極を形成する。
【0049】
このようにして得られた半導体積層体を、1つの発光装置を構成する単位に分離、切断又は個片化する。このような分離等を簡便に行うために、工程(1)の後又は中において、分離、切断を意図する位置の第1半導体層、発光層及び第2半導体層を除去して、基板表面を露出(素子分離ともいう)させておくことが好ましい。基板表面が露出した部位を分離、切断することにより、半導体層のダメージを防止することができる。これによって、量産性を向上させることができる。また、これにより、複数の半導体積層体の間に間隔ができるため、半導体積層体の外縁と同じかそれより大きい端子基板を用いる場合であっても、端子基板を容易に実装することができる。
【0050】
ここで、1つの発光装置に1つのチップを搭載する場合は素子分離された1単位ごとに分離又は切断し、1つの発光装置に複数のチップを搭載する場合は素子分離された2以上の単位ごとに分離又は切断することができる。
このようにして得られた単位ごとの半導体積層体を、支持体上に複数配列する。
ここでの支持体は特に限定されず、半導体積層体をその上に配置することができる板状のものであればいかなるものでもよい。複数の半導体積層体の配列は、ランダムでもよいが、規則的(例えば、行列状)に配置することが好ましい。配列は、例えば、粘着テープなどを用いて容易に位置変動しないようにすることが好ましい。
【0051】
あるいは、得られた半導体積層体を素子分離した後、複数の半導体積層体が基板上に配列された状態で、そのまま次工程に付してもよい。このような状態で次工程に付す場合には、上述したように基板を切断したり、複数の配列を行う必要がなく、個々に位置変動しないため、量産に適する。この場合の支持体は、半導体層を成長させるために用いた基板である。
【0052】
工程(2)において、支持体上に配列された各半導体積層体に、平面視において外縁が半導体積層体の外縁よりも内側に配置するように、端子基板を実装する。
ここでの端子基板の実装は、端子基板を、それぞれ支持体上に配列された半導体積層体の上に載置してもよいし、複数の端子基板を粘着シート等の上に並べて、支持体上に配列された半導体積層体に対して、一括で転写/載置してもよい。
端子基板の実装は、上述したセルフアライメント効果を利用して行うことが好ましい。この効果を利用することにより、1単位を構成する半導体積層体と同じか、それよりも小さい端子基板を適所に容易に実装することができる。
例えば、平面視において、端子基板が直線状の一辺を有する場合又は四角形の場合、端子基板は、少なくとも半導体積層体の一辺と一致するように(面一となるように)実装してもよい。このような実装によって、サイドビュー型に容易に利用することができる。
【0053】
工程(3)において、複数の端子基板及び複数の半導体積層体を固定部材で固定する。ここでの固定は、(a)端子基板の側面を固定部材で被覆する工程、(b)半導体積層体の側面を固定部材で被覆する工程及び(c)半導体積層体と端子基板との間を固定部材で被覆する工程の1以上であることが好ましい。
固定部材で、これらの側面/間を固定する(つまり、被覆又は埋め込む)ためには、固定部材の塗布、ポッティング、印刷、圧縮成形、トランスファー成形、スピンコート等、当該分野で公知の方法のいずれを用いてもよい。これらの方法を利用することにより、複数の端子基板及び複数の半導体積層体について、端子基板の側面及び半導体積層体の側面ならびに半導体積層体と端子基板との間を、一括して被覆又は固定するあるいは埋め込むことができる。なお、これら公知の方法の条件を設定することにより、任意に工程(a)、(b)及び(c)の1以上を実行することができる。
【0054】
固定部材は、端子基板の裏面と面一となるように形成してもよい。例えば、トランスファー成形では、半導体積層体側を下にして、離形シートに端子基板の裏面を埋め込むように配置し、その後固定部材を形成する。これによって、端子基板の裏面を固定部材から露出して成形することができる。
固定部材は、端子基板の端子の他、絶縁体層を露出させるように設けてもよい。
固定部材は、端子基板全体を埋め込むように厚く成形してもよい。これによって、発光装置全体の強度を増大させることができる。その結果、支持体除去工程で有利となる。また、個片化後の発光装置として有利となる。
【0055】
固定部材は、工程の途中又は個片化前に、ダイシングでの切断、サーフェースプレナーなどの手法を用いた切削での厚み制御、ドライ又はウェットブラストでの除去等を実行してもよい。これによって、端子基板の任意の端子を容易に露出させることができる。
例えば、
図8(a)に示したように、表面にマスク61が形成された端子基板を完全に埋め込むように固定部材18を圧縮成形し、端子基板側からハーフダイシング(固定部材18を一部除去)する。その後、
図8(b)に示したように、ウェットブラストで端子15、16が露出するまで固定部材18を除去することで、容易に端子基板の側面を露出させることができ、側面発光の発光装置を製造することができる。
【0056】
工程(3)の後、工程(4)において、半導体積層体から支持体を除去する。ここでの除去は、上述した粘着テープから個々の半導体積層体を剥離するか、半導体層の成長用基板を剥離することのいずれをも含む。
特に、半導体層の成長用基板は、強固に半導体積層体(つまり、発光素子)が基板に密着しているために、工程(3)における固定部材での固定を行うことによって、この基板の除去を容易かつ確実に実行することができる。
この場合の基板の除去は、通常、基板と半導体積層体との間に、レーザビームを照射することにより、容易に行うことができる。
例えば、半導体積層体がGaN系半導体で、支持体がサファイア基板の場合、支持体側から波長248nmのKrFエキシマレーザー、YAGレーザーなどの4倍波266nmを照射し、半導体積層体を構成する半導体層にエネルギーを吸収させ、アブレーションさせることによって、基板の剥離を行うことができる。レーザビームの照射量、時間等は、用いた基板の種類、厚み等によって適宜調整することができる。
【0057】
除去後は、表面に残存する導電材、酸化物等(例えば、Gaメタル、Ga
2O
3等)を、HCl、HNO
3などの酸で除去し、清浄面を形成する。その後、NaOH、TMAHなどの強アルカリで半導体層をエッチングして粗面とすることにより、光取り出し効率を向上させる加工を施してもよい。
このようなエッチングを施した半導体積層体は、熱及び水分の影響を受けやすいため、その表面に保護膜を形成することが好ましい。保護膜としては、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、Nb
2O
5、ZrO
2など透明酸化物、AlO
xN
y、SiN、SiN
xなどの透明窒化物材料等の透明絶縁体膜の単層又は積層構造が挙げられる。保護膜は、各種成膜方法、スパッタ、蒸着、原子層堆積法(ALD)などで形成することができる。特にALDによれば緻密な膜を形成することができるため、発光装置の信頼性向上のため好ましい。このような保護膜は、半導体層の表面に限られず、端子基板、封止部材、波長変換部材等各種の部材を被覆するように設けられることができる。これにより、光取出し効率の高い発光装置とすることができる。
支持体の除去は、サーフェースプレナー、エッチング、ブラスト等による研磨によっても行うこともできる。
【0058】
工程(5)において、半導体積層体間の固定部材、任意に波長変換部材を分離又は切断するなどによって、個片化する。
ここでの分離位置は、半導体積層体ごと又は2以上の半導体積層体ごとのいずれであってもよい。分離又は切断は、ブレード、レーザー、スクライバー等を用いて行うことができる。先の工程で、半導体積層体から支持体が除去されている場合には、支持体を切断する必要がないため、切断を歩留まりよく行うことができ、量産性を向上させることができる。また、従来の発光装置のように、半導体積層体が接合された端子基板ではなく、固定部材を切断することで、量産性を向上させることができる。
支持体、半導体積層体及び固定部材は、それぞれ別々の手段で分離又は切断してもよい。例えば、支持体がサファイア基板の場合、支持体側からレーザーで割断のための加工を施し、ブレイクにて支持体を個片化、次いで固定部材をダイシングで切断してもよい。
サイドビュー型の発光装置とする場合などにおいて、端子の外部接続部となる部分が固定部材に埋没されている場合は、切断の前にウェット又はドライエッチング、ブラストなどで端子の外部接続部をあらかじめ露出させておくことが好ましい。
【0059】
工程(5)を行う前に、半導体積層体の表面上及び/又は固定部材の表面上に波長変換部材を形成してもよい。
波長変換部材の形成は、例えば、蛍光体、樹脂及び有機溶剤(任意に拡散材等)を混合し、スプレー法を利用して数回に分けて半導体積層体表面に噴霧してコーティングする方法、混合物を塗布する方法等が挙げられる。スプレー法を用いることにより、波長変換部材の配置、形状等を自由に設けることができる。
また、得られた波長変換部材の上に、蛍光体を含まない封止部材を設けてもよいし、レンズ又はナノレンズなど光学部材を設けてもよい。封止部材及び光学部材等は、樹脂、ガラス等によって形成することができる。
あるいは、予め板状、レンズ状などに成形された波長変換部材を半導体積層体の全体又は一部を覆うように配置してもよい。これによって、明るい発光装置とすることができる。
【0060】
以下に、本発明の発光装置及びその製造方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
実施形態1:発光装置
実施形態1の発光装置10は、
図1(a)の断面図及び1(b)の底面図に示したように、第1半導体層、発光層及び第2半導体層がこの順に積層された、略四角形の半導体積層体14と、これに接続された第1電極12及び第2電極13とを有する発光素子となる半導体積層体14aと、一対の端子15、16と絶縁体層17とを含む端子基板17aとを備える。
【0061】
端子基板17aは、略四角形の酸化亜鉛セラミックスからなる絶縁体層17と、素子接合面からそれぞれ異なる側面を通って裏面に及ぶ一対の端子15、16を備える。この端子基板17aは、バリスタ機能を有している。
第1電極12及び第2電極13は、それぞれ、n型半導体層である第1半導体層及びp型半導体層である第2半導体層と電気的に接続されており、図示しないが、第1電極12の一部は、絶縁膜(例えば、SiO
2)を介して第2半導体層上にも及んでいる。第1電極12及び第2電極13は、端子基板17aと接合する面が、略同一の平面積を有しており、略面一である。
【0062】
第1電極12及び第2電極13は、端子基板17aの一対の端子15、16の接合端子部とそれぞれ、共晶半田(Au−Sn)によって、半導体積層体14aの光取出し面と端子基板17aの裏面とが略平行になるよう接合されている。
端子基板17aは、平面視において、半導体積層体14aの外周よりも内側にその外周の全てが配置されている(特に
図1(b)参照)。
【0063】
半導体積層体14aの側面から端子基板17aの側面は、シリコーン樹脂(SMC、フィラーとして二酸化珪素を30重量%、反射材(拡散材)として二酸化チタンを30重量%含有)からなる固定部材18で被覆されている。この半導体積層体14aの側面から固定部材18の表面までの長さは10〜200μm程度、例えば150μm程度であり、端子基板17aの側面から固定部材18の表面までの長さは20〜250μm程度、例えば200μm程度である。また、固定部材18は、半導体積層体14と端子基板18との間にも配置されている。
半導体積層体14aの第1半導体層の表面から固定部材18の表面にわたって、波長変換部材19が配置されている。波長変換部材19は、YAG蛍光体を30重量%程度含有するシリコーン樹脂からなるシート状である。
【0064】
このような発光装置は、整列された個々の発光素子となる半導体積層体に対して、小片化した端子基板を個別に配置することにより、適切にアライメントされた発光装置を得ることができる。また、いわゆるチップサイズパッケージを実現することができる。加えて、実装基板自体が、半導体積層体のサイズよりも実質的に小型化することができるために、より小型化のパッケージを得ることが可能となる。
さらに、従来の発光素子においては、サファイア基板等の半導体層を成長させるための基板が、発光素子の基板としてそのまま使用されていたが、この基板を除去する場合には、この基板に起因する、光の吸収や内部散乱、閉じ込め等を阻止することができ、より一層光取り出し効率を高め、高輝度化を実現することができる。
端子基板として、バリスタ等の機能を有する構造を利用する場合には、別個、機能素子を搭載することなく、その機能を発揮させることができる。その結果、小型化を維持しながら、より高品質の発光装置が実現できる。
【0065】
実施形態2:発光装置の製造方法
図1(a)及び
図1(b)に示す発光装置10は、以下の方法によって製造することができる。
まず、
図2(a)に示したように、サファイア基板11上に、第1半導体層、発光層及び第2半導体層を積層した半導体層14を形成する。半導体層14は、第2半導体層及び発光層の一部が除去されて第1半導体層の一部が露出している。また、半導体層14は、1チップの発光素子として機能する単位に、サファイア基板11の表面を露出する分離溝62によって、分離されている。
このような半導体層14において、露出した第1半導体層の上、第2半導体層の上に第1電極12及び第2電極13を形成する。電極は、公知の方法を利用して形成することができる。これによって、半導体積層体14aが形成される。
【0066】
図2(b)の上面図及び2(c)の断面図に示したように、サファイア基板11上に配列されている半導体積層体14aの第1電極12及び第2電極13と、端子基板17aの一対の端子15、16の接合端子部とが接合するように、端子基板17aを個々の半導体積層体14a上に実装する。この際、端子基板17aの外縁を、半導体積層体14aの外縁よりも内側に配置する(特に、
図2(b)参照)。
【0067】
図2(d)に示したように、端子基板17a側から、端子基板17aの全体及び半導体積層体14aの側面を被覆するように、固定部材18を塗布する。この際、半導体積層体14aと端子基板17aとの間にも固定部材18が塗布される。
あるいは、端子基板17aと接合された半導体積層体14aをサファイア基板11ごと上下金型で挟み込み、金型内に樹脂を注入して、端子基板17aの全体、半導体積層体14aの側面及び半導体積層体14aと端子基板17aとの間に、固定部材18を配置する。
【0068】
図2(e)に示したように、端子基板17aの裏面において、一対の端子15、16の外部接続部を露出させるように、固定部材18を除去する。その後、サファイア基板11側から、波長248nmKrFエキシマレーザーを照射し、半導体積層体14aを構成する半導体層にエネルギーを吸収させ、アブレーションさせることによって、サファイア基板11を剥離し、第1半導体層の表面を露出させる。これによって、固定部材18内で、半導体積層体14aが1チップごとに分離されることとなる。
サファイア基板11の剥離後、表面に残存するGaメタル、Ga
2O
3等の残留物を、HClで除去し、清浄面を形成する。その後、NaOHで半導体層をエッチングして粗面化する。
【0069】
図2(f)に示したように、露出した第1半導体層の表面に波長変換部材19を被覆する。ここでの波長変換部材19は、第1半導体層の側方に配置される固定部材18の表面をも被覆する。
その後、波長変換部材19と固定部材18とを
図2(f)のX線に沿って、1つの半導体積層体14aごとに切断する。これによって、
図1(a)及び1(b)に示す発光装置10を得る。
【0070】
このように、個々の半導体積層体に、あらかじめ設けられた端子を有する小片化した端子基板を配置することができるため、端子をめっき成長等で形成する場合よりも、歩留まりが良好となり、また集合基板を実装させるよりもアライメントさせやすいため、量産性を向上させることができる。
また、個々の半導体積層体を固定部材で被覆する場合には、半導体層を成長させるために使用した基板を剥離する際の応力を、半導体積層体の大きさに応じて低減させることができる。よって、半導体積層体にダメージを与えることなく、容易に基板の剥離を実現することができる。その結果、歩留まりの向上を実現することができる。
このように基板を剥離した後に半導体積層体を切断する場合には、基板を切断することなく、小片化することができるために、より一層の量産性の向上に寄与する。
【0071】
実施形態3:発光装置
実施形態3の発光装置20は、
図3の底面図に示したように、第1半導体層、発光層及び第2半導体層がこの順に積層された、略四角形の半導体層とこれに接続された第1電極12及び第2電極13とを有する半導体積層体14aを2つ及び端子基板27aを含む。
【0072】
端子基板27aは、絶縁体層27と、その両側において、素子接合面から側面を通って裏面に及ぶ一対の端子25、26と、素子接合面において端子25、26の間にこれらと分離された配線用の1つの端子21とを備える。
一方の半導体積層体14aの第1電極は端子基板27aの端子25と、他方の半導体積層体14aの第2電極は端子基板27aの端子26と、一方の半導体積層体14aの第2電極及び他方の半導体積層体14aの第1電極は配線用の端子21と、それぞれ直列接続されている。
端子基板27aは、平面視、各半導体積層体14aの三辺においてはその外周よりも内側に配置されており、各半導体積層体14aの対向する一辺においては跨って配置されている。
このように、2つの半導体積層体14aごとに、固定部材28及び波長変換部材が切断されている以外、実質的に実施形態1の発光装置10と同様の構成を有し、実施形態2での製法と同様に製造することができる。
この発光装置においても、実施形態1の発光装置10と、実施形態2の製法と同様の効果を有する。
【0073】
実施形態4:発光装置
実施形態4の発光装置30は、
図4(a)の断面図(
図4(b)のN−N’線)及び(b)の底面図に示したように、第1半導体層、発光層及び第2半導体層がこの順に積層された略正方形の半導体層と、これに接続された第1電極及び第2電極とを有する半導体積層体34aと、一対の端子35、36と絶縁体層37とを含む端子基板37aとを備える。
第1電極及び第2電極と一対の端子35、36とは、接合部材60を介して電気的に接続されている。
【0074】
この発光装置30は、半導体積層体34aの電極が設けられていない側、つまり光取出し面側に波長変換部材39を備えているが、この半導体積層体34aと波長変換部材39との大きさと形状が略一致している。また、固定部材38は半導体積層体34aの第1電極及び第2電極部分のみを被覆し、半導体層の側面を被覆していない。
端子基板の一方の端子36は、端子基板の裏面において、外部接続部として、他方の端子35と対向する辺の略中央部に切欠きを有する矩形状に設けられている。他方の端子35は切欠きを有さない矩形状に設けられており、一方の端子35と異なる形状である。このように、一対の端子の外部接続部の形状を互いに異なるものとすることにより、発光装置の極性の判定を容易に行うことができる。
これら以外は、実施形態1の発光装置10と実質的に同様の構成を有し、実施形態2での製法と同様に製造することができる。
この発光装置においても、実施形態1の発光装置10と、実施形態2の製法と同様の効果を有する。
【0075】
実施形態5:発光装置
実施形態5の発光装置40は、
図5(a)の断面図(
図5(b)のM−M’線)及び(b)の底面図に示したように、第1半導体層、発光層及び第2半導体層がこの順に積層された略正方形の半導体層と、これに接続された第1電極及び第2電極とを有する半導体積層体44aと、一対の端子45、46と絶縁体層47とを含む端子基板を備える。
第1電極及び第2電極と一対の端子45、46とは、接合部材60を介して電気的に接続されている。
【0076】
この発光装置40は、半導体積層体44aの光取出し面に波長変換部材49を備えている。半導体積層体44aは、波長変換部材49よりも小さい。
固定部材48は、半導体積層体44aの第1電極及び第2電極部分とともに、半導体層の一部側面を被覆している。
端子基板における端子45、46は、端子基板の素子接合面から側面を通って端子基板の裏面に及んでいる。また、端子基板の一つの側面において、端子45、46が固定部材48から露出している。この側面では、波長変換部材49、半導体積層体44a、固定部材48が端子45、46の露出面と一致し、略面一である。
また、端子基板の裏面では、絶縁体層47の表面が固定部材48で覆われている。
【0077】
これら以外は、実施形態1、4の発光装置10、30と実質的に同様の構成を有し、実施形態2での製法と同様に製造することができる。
この発光装置においても、実施形態1、4の発光装置10、30と、実施形態2の製法と同様の効果を有する。
また、端子基板の端子45、46が発光装置の側面においても露出しているために、サイドビュー型の発光装置として使用することもできる。
【0078】
実施形態6:発光装置
実施形態6の発光装置50は、
図6(a)〜(e)に示したように、第1半導体層、発光層及び第2半導体層がこの順に積層された略長方形の半導体層と、これに接続された第1電極及び第2電極とを有する半導体積層体54aと、一対の端子55、56と絶縁体層57とを含む端子基板とを備える。
この発光装置50は、半導体積層体54aの光取出し面に波長変換部材59を備えている。半導体積層体54aは波長変換部材59よりも小さい。
固定部材58は、半導体積層体54a全体の側面を被覆し、波長変換部材59が半導体積層体54aと固定部材58の双方の上面を被覆している。これによって、半導体積層体54aの全ての側面を固定部材58で補強することができ、発光装置の強度をより一層確保することができる。また、固定部材58は、端子基板の側面に露出した端子と接する面で傾斜を有している。これにより、この傾斜した部分に、端子の部位56aaと接合する実装用の半田を効果的に溜めることができる。
【0079】
端子基板における絶縁体層57は、
図6(c)及び(e)に示したように、その側面から見ると、半導体積層体54a側に凸状の形状を有する。これにより、つまり、端子基板の絶縁体層57における半導体積層体に近い部分をその反対側と比べて幅狭とすることにより、
図2(f)の工程の前後に行うブラスト加工等の際、固定部材を除去する量を減少させることができ、簡便な加工を実現することができる。また、固定部材58に凸状部を埋め込むことで、密着性を高めることができる。
【0080】
端子55、56は、端子基板の素子接合面側から一対の側面を被覆して裏面に及んでいる。そして、端子基板の裏面および一対の側面の裏面側近傍において、固定部材58から露出している。つまり、端子55、56は、一対の側面において、半導体積層体54aに近い部分においては固定部材58に被覆され、裏面側に近い部分においては被覆されていない。これによって、端子基板の裏面側および側面の露出した端子55、56の両方を外部接続部として用いることができる。
端子基板の端子55、56が露出している一対の側面と異なる他の一対の側面は、波長変換部材59及び固定部材58が、略面一である(
図6(c)及び(e)参照)。これら他の一対の側面が、発光装置の底面及び上面とされ、サイドビュー型の発光装置として用いることができる。この場合、端子基板の裏面側および側面の露出した端子55、56の両方を外部接続部として用いることにより、発光装置の実装強度を向上させることができる。
【0081】
本実施形態の発光装置では、半導体積層体54aの全ての側面を固定部材58で被覆することにより、発光装置の信頼性を高めることができる。特に、半導体積層体54aが、発光装置の実装基板と近接して実装されるサイドビュー型の発光装置として用いる場合には、発光装置の実装に用いられるフラックス等の侵入を防止することが可能となる。
これら以外は、実施形態1、4の発光装置10、30と実質的に同様の構成を有する。
【0082】
このような発光装置は、
図2(f)に示したように、波長変換部材と固定部材とを切断する前又は後において、一対の端子が設けられた一対の側面を被覆する固定部材をブラスト加工等で除去することにより、端子基板57aの端子を露出させることができる。
これ以外は、実施形態2での製法と実質的に同様に製造することができる。
この発光装置においても、実施形態1、4の発光装置10、30と、実施形態2の製法と同様の効果を有する。
【0083】
実施形態7:発光装置
実施形態7の発光装置60は、
図7に示したように、端子55a、56aが、端子基板の裏面側と、裏面と連続する二対の側面において露出している。つまり、サイドビュー型の発光装置として実装した場合、端子55a、56aは、発光装置の底面となる面Qと、その底面と隣接する面Sと、半導体積層体に対向する面と反対側の面P、発光装置の実装面と反対側の上面Tを露出している。
それ以外は、実質的に実施形態6の発光装置50と同様の構成及び同様の効果を有する。
【0084】
実施形態8:発光装置
実施形態8の発光装置70は、
図9に示したように、半導体積層体74が半導体層の成長用の基板75を備えており、基板75の表面の一部が半導体積層体74から露出している。
それ以外は、実質的に実施形態1の発光装置10と同様の構成及び同様の効果を有する。