特許第6394243号(P6394243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6394243
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】光導波路素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/035 20060101AFI20180913BHJP
   G02F 1/03 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   G02F1/035
   G02F1/03 505
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-201317(P2014-201317)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-71198(P2016-71198A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年2月14日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/(高い臨時設営性を持つ有無線両用高速光伝送技術の研究開発)」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
(72)【発明者】
【氏名】日隈 薫
(72)【発明者】
【氏名】市川 潤一郎
【審査官】 山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−072129(JP,A)
【文献】 特開2013−242592(JP,A)
【文献】 特表平06−510378(JP,A)
【文献】 特開2006−284963(JP,A)
【文献】 特開2005−331531(JP,A)
【文献】 特開2004−046283(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0240789(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12
G02F 1/03,1/035
H05K 1/00
H01P 1/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成された光導波路と、当該光導波路を伝搬する光波を制御するため前記基板上に形成された制御電極と、当該制御電極を中心導体とするコプレーナ型線路を構成する2つの接地電極と、を備える光導波路素子であって、
前記コプレーナ型線路の曲がり部分において、当該曲がり部分の内側に位置する一の接地電極と前記制御電極との間を伝搬するスロットモードの速度が、当該曲がり部分の外側に位置する一の接地電極と前記制御電極との間を伝搬するスロットモードの速度よりも遅いことを特徴とする、
光導波路素子。
【請求項2】
基板に形成された光導波路と、当該光導波路を伝搬する光波を制御するため前記基板上に形成された制御電極と、当該制御電極を中心導体とするコプレーナ型線路を構成する2つの接地電極と、を備える光導波路素子であって、
前記コプレーナ型線路の曲がり部分に、当該曲がり部分の内側に位置する一の接地電極の、前記制御電極と対向する側壁に、所定のサイズの開口と所定の奥行きを持つブリッジが、所定の数だけ形成され、前記コプレーナ型線路の曲がり部分において、当該曲がり部分の内側に位置する一の接地電極と前記制御電極との間を伝搬する内側スロットモードの速度が、当該曲がり部分の外側に位置する他の接地電極と前記制御電極との間を伝搬する外側スロットモードの速度よりも遅く設定されており、
前記一の接地電極に設けられた前記ブリッジの少なくとも一つが、前記基板に形成された前記光導波路の全部または一部を跨ぐように形成されているか、又は前記曲がり部分の内側に位置する他の接地電極の、前記制御電極と対向する側壁に、前記光導波路の全部または一部を跨ぐように形成された部分を備える、
光導波路素子。
【請求項3】
前記曲がり部分において、当該曲がり部分の外側に位置する他の接地電極の、前記制御電極と対向する側壁に、所定のサイズの開口と所定の奥行きとを持つブリッジが、所定の数だけ形成されて、前記外側スロットモードの速度が、前記内側スロットモードの速度に対して調整され、
前記一の接地電極に設けられた前記ブリッジ及び前記他の接地電極に設けられた前記ブリッジの少なくとも一つが、前記基板に形成された前記光導波路の全部または一部を跨ぐように形成されている、
請求項2に記載の光導波路素子。
【請求項4】
前記基板は、電気光学効果を有する材料で構成され、
前記光導波路は、マッハツェンダ型光導波路である、
請求項1ないしのいずれか一項に記載の光導波路素子。
【請求項5】
前記基板の厚さが50μm以下である、請求項に記載の光導波路素子。
【請求項6】
前記制御電極は、メッキ法を用いて形成され、且つ、
前記制御電極の厚さは、30μm以上である、
請求項1ないしのいずれか一項に記載の光導波路素子。
【請求項7】
前記光導波路は、方向性結合器を構成する光導波路、互いに交差する光導波路、又はY分岐部を有する光導波路を含むものである、請求項1ないしのいずれか一項に記載の光導波路素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路素子に関し、特に、基板上に形成された光導波路と、該光導波路内を伝搬する光波を制御するための制御電極と、を備えた光導波路素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信や光計測の分野においては、電気光学効果を有する基板上に形成した光導波路と、当該光導波路内を伝搬する光波を制御するための制御電極と、を備えた、導波路型光変調器などの光導波路素子が多く用いられている。
【0003】
このような導波路型光素子のひとつとして、例えば電気光学効果を有する基板として強誘電体結晶であるニオブ酸リチウム(LiNbO3)(「LN」とも称する)を用い、マッハツェンダ型光導波路と制御電極を形成したマッハツェンダ型光変調器が広く用いられている。マッハツェンダ型光導波路は、外部から光を導入するための入射導波路と、当該入射導波路により導入された光を2つの経路に分けて伝搬させるための2本の並行導波路と、当該2本の並行導波路を伝搬した光を合波して外部へ出力するための出射導波路とにより構成される、一般にマッハツェンダ干渉計型と称される光導波路パターンである。また、マッハツェンダ型光変調器は、上記並行導波路内を伝搬する光波の位相を電気光学効果により変化させて制御するための制御電極を備える。
【0004】
この制御電極は、一般に、上記並行導波路の上部又はその近傍部分に形成されたRF(高周波)信号電極(以下、「RF電極」と称する)と、当該RF電極に離間して並走する接地電極とで構成される。特に、数十Gb/s以上の高速光変調を行う用途では、光導波路を伝搬する光の伝搬速度と、当該光導波路に沿って形成される制御電極を伝搬する高速(高周波)変調信号の伝搬速度とを一致させる必要があり、さらに駆動ドライバなどとの電気回路との電気的特性の整合をとる必要があることから、当該伝搬速度の適切な調整と、電気的特性の決定要因のひとつである制御電極の特性インピーダンスの適切な調整範囲の確保と、を両立すべく、LN基板表面と制御電極との間にSiO等のバッファ層が設けられることが多い。
【0005】
この場合、バッファ層上の制御電極からLN基板内の光導波路までの距離は広がることとなり、光導波路に印加される電界は弱まる。その結果、マッハツェンダ型光変調器の半波長電圧(Vπと称する)が大きくなるため、制御電極に印加すべき駆動電圧は大きくなる。
【0006】
このような駆動電圧の増大を防止するためのひとつとして、バッファ層を用いる代わりに基板厚さを薄く(例えば、10μm以下)する策があり、また、この策により制御電極の特性インピーダンスの適切な調整範囲を確保することが知られている(例えば、非特許文献1〜4参照)。ただし、このようなバッファ層を用いない場合には、光導波路は制御電極及び基板側部から高速(高周波)変調信号を制御電極に印加するための配線パターンの金属と直接接することとなる場合があり、その場合は、当該接する部分において光の吸収損失が発生する。
【0007】
XカットのLN基板を用いる場合には、一般的に、制御電極(RF電極および接地電極)は、いずれも並行光導波路の側方に当該導波路と並走して形成されるため、制御電極を構成する材料が、例えば金属である場合にも、電極と光導波路の間隔が十分にとられていれば当該金属による並行光導波路を伝搬する光の吸収は回避し得る。しかしながら、当該配線パターンが基板上に形成された光導波路と交差することは避けられず、このような配線パターンと光導波路との交差部分における光損失を低減することが必要となる場合がある。特に、信号電極を接地電極で挟んで並走させるコプレーナ型制御電極の配線パターンにおいては、配線パターンの接地電極と光導波路とが重なり合う領域が多くなり、発生し得る光吸収損失を低減することが切に望まれる。また、例えば、光導波路を用いたネスト型変調器のようにマッハツェンダ型光導波路及び制御電極を複数備えた、より複雑な光導波路構造でも、配線パターンの接地電極と光導波路とが重なりあう領域が多くなり、発生し得る光吸収損失を低減することが切に望まれる。
【0008】
このような接地電極と光導波路との交差部分の光損失を低減する技術として、従来、接地電極が光導波路を跨ぐ部分を幅の狭い金属パターンとする構成が知られている(特許文献1)。また、光導波路の直近で2つの部分に分断されるように接地電極を形成し、当該分断された接地電極の2つの部分を、光導波路を覆わないように、当該光導波路を跨ぐように形成したボンディングや導体によりブリッジ接続する構成が知られている(特許文献1)。
【0009】
上記構成においては、ブリッジ接続部分と信号ラインとの間の結合は弱くなり、ブリッジ接続区間の特性インピーダンスは、他の区間の特性インピーダンスよりも高くなる。ブリッジ接続区間の長さ(接地電極の分断部分の間隙幅)が、その間隙部分を通る光導波路を伝搬する光のモードフィールド径(約10μm)よりも大きければ、当該区間における光の損失は大きく減少し、光のモードフィールド径の2倍程度(即ち、約20μm)になると光損失はほとんど無視できるレベルにまで低減される。一方、ブリッジ接続区間の長さが20μm程度あっても、この長さは信号ラインを伝搬する高周波信号の波長(例えば110GHzにおいて約1.3mm)に比べて小さいため、信号伝送路としての広帯域特性(反射特性S11や透過特性S21の平坦性)は、上記ブリッジ接続区間における特性インピーダンスの不連続があっても大きくは劣化しない。
【0010】
しかしながら高周波信号線路において、特性インピーダンスの不連続箇所は、信号の散乱箇所となり、特に当該信号の放射損失が発生し得る。また、ブリッジ接続部のサイズ(接続ワイヤやリボンの、ループの高さや接続距離)が大きいほど、この放射損失は大きくなり、隣接する他の電極とのクロストークが大きくなるといった問題も発生し得る。例えば、現在主流となっている偏波多重QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調において、各トリビュタリの電気信号の0.1dB程度の損失は許容できる値であるが、各トリビュタリ信号間の0.1dBものクロストークはきわめて深刻な問題となる。
【0011】
さらに、例えばマッハツェンダ型光変調器においては、その構造上、制御電極や配線パターン及び基板上に設けられた電極パッドなどと、導波路パターンとの位置関係に起因して、導波路上に、制御電極や配線パターンの曲がり部分が形成されてしまう場合がある。そして、このような制御電極や配線パターンの曲り部分では、当該部分の曲り形状そのものに起因して、電気信号の放射損失を生じ得る。
【0012】
すなわち、光導波路上に電極パターンの曲がり部分が形成される場合には、当該曲がり部分において光導波路を跨ぐように上記ブリッジ接続を行うこととなり、当該ブリッジ接続による特性インピーダンスの不連続と、上記曲がり形状とに起因して、当該部分における信号の放射損失は更に増加し得る。このため、上記クロストークが更に大きくなると共に、放射損失により失った信号振幅を補償すべく駆動電圧を増加させなければならない事態も生じ得る。
【0013】
コプレーナ構造の配線パターンにおける、曲がり部分の放射損失を低減する技術として、従来、曲がり部分の曲率半径を所定値以上とする構成や(特許文献2)、信号ラインと接地電極との間隙を調整する構成(特許文献3)など、種々の技術が知られている。しかしながら、これらの構成は、専ら放射損失の防止を図るためのものであり、電極パターンの曲がり部分が光導波路と交差する場合には、上記放射損失防止のための手段に加えて、上記曲り形状に伴う信号の放射損失を防止するための手段を(例えば特許文献1に記載の構成を用いて)個別に設ける必要があり、製造工程が煩雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2013−242592号公報
【特許文献2】特許第3548042号公報
【特許文献3】特開2010−72129号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】E. Yamashita, and K. Atsuki, "Distributed Capacitance of a Thin-Film Electrooptic Light Modulator," Microwave Theory and Techniques, IEEE Transactions on, vo. no. 23(1), pp. 177-178.(1975).
【非特許文献2】T. Sueta, and M. Izutsu, "High speed guided-wave optical modulators," J. Opt. Commun., vol. 3, pp. 52-58 (1982).
【非特許文献3】K. Atsuki, and E. Yamashita, "Transmission Line Aspects of the Design of Broad-Band Electrooptic Traveling-Wave Modulators," Journal of Ligihtwave Technology, vol. LT-5, pp. 316-319 (1987).
【非特許文献4】J. Kondo, K. Aoki, A. Kondo, T. Ejiri, Y. Iwata, A. Hamajima, T. Mori, Y. Mizuno, M. Imaeda, Y. Kozuka, O. Mitomi, and M. Minakata, "High-Speed and Low-Driving-Voltage Thin- Sheet X Cut LiNbO3 Modulator With Laminated Low-Dielectric-Constant Adhesive," IEEE Photon. Tech. Lett., vol. 17, pp. 2077-79 (2005).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記背景より、光導波路素子において、電極パターンの曲り部における放射損失防止と、当該曲がり部分の電極下部を通過する光導波路における光吸収損失防止とを、製造工程の煩雑化を伴うことなく行い得る、素子構造の実現が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一の態様は、基板に形成された光導波路と、当該光導波路を伝搬する光波を制御するため前記基板上に形成された制御電極120と、当該制御電極120を中心導体とするコプレーナ型線路を構成する2つの接地電極130,132と、を備える光導波路素子であって、前記コプレーナ型線路の曲がり部分において、当該曲がり部分の内側に位置する一の接地電極132と前記制御電極120との間を伝搬するスロットモードの速度が、当該曲がり部分の外側に位置する一の接地電極130と前記制御電極との間を伝搬するスロットモードの速度よりも遅いことを特徴とする。
本発明の他の態様は、基板に形成された光導波路と、当該光導波路を伝搬する光波を制御するため前記基板上に形成された制御電極と、当該制御電極を中心導体とするコプレーナ型線路を構成する2つの接地電極と、を備える光導波路素子であって、前記コプレーナ型線路の曲がり部分において、当該曲がり部分の内側に位置する一の接地電極の、前記制御電極と対向する側壁に、所定のサイズの開口と所定の奥行きを持つブリッジが、所定の数だけ形成されている。
本発明の他の態様によると、前記曲がり部分において、当該曲がり部分の外側に位置する他の接地電極の、前記制御電極と対向する側壁に、所定のサイズの開口と所定の奥行きとを持つブリッジが、所定の数だけ形成されている。
本発明の他の態様によると、前記一の接地電極に設けられた前記ブリッジ及び前記他の接地電極に設けられた前記ブリッジの少なくとも一つが、前記基板に形成された前記光導波路の全部または一部を跨ぐように形成されている。
本発明の他の態様によると、前記基板は、電気光学効果を有する材料で構成され、前記光導波路は、マッハツェンダ型光導波路である。
本発明の他の態様によると、前記基板の厚さが50μm以下である。
本発明の他の態様によると、前記制御電極は、メッキ法を用いて形成され、且つ、前記制御電極の厚さは、30μm以上である。
本発明の他の態様によると、前記光導波路は、方向性結合器を構成する光導波路、互いに交差する光導波路、又はY分岐部を有する光導波路を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る光導波路素子の構造を示す図である。
図2A図1に示す光導波路素子の、AA断面矢視図である。
図2B図1に示す光導波路素子の、BB断面矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る光導波路素子の構造を示す図である。
本光導波路素子100は、基板102上に形成されたマッハツェンダ型光変調器であり、外部から光を導入するための入射導波路110と、当該入射導波路110により導入された光を2つの経路に分けて伝搬させる2本の並行導波路112及び114と、当該並行導波路112及び114を伝搬した光を合波して出力するための出射導波路116と、で構成されるマッハツェンダ型光導波路を備える(図1において、各導波路は太い破線で図示されている)。
【0020】
また、光変調器100は、並行導波路112、114の間に、これらの並行導波路112、114から所定距離だけ離れて形成された高周波信号電極(RF電極)120を備える。RF電極120は、所定距離の区間に亘って並行導波路112、114と平行に設けられ、当該区間の左右末端部において、それぞれ図示下方向に曲って延在し、基板102の図示下端において外部の制御回路に接続される。
【0021】
基板102は、例えばLN(ニオブ酸リチウム、LiNbO)基板であり、各導波路110〜116は、例えば基板102上においてフォトリソグラフィとスパッタリング等の手法により所望の導波路パターンを形成するように堆積された金属チタン(Ti)を、基板102内部へ熱拡散させることにより形成することができる。なお、LNを用いた基板102への上記導波路の形成は、上述のTi熱拡散法に限らず、プロトン交換法等の他の公知の手法により行うことができる。また、基板102としては、上記LNのほか、タンタル酸リチウムや、PLZT(ジルコン酸チタン酸鉛ランタン)、電気光学ポリマー等、電界印加により所要の屈折率変化を誘起することのできる電気光学定数を持った素材とすることができる。
【0022】
RF電極120は、例えばTi又はCrを下地としてAu又はAl等の金属により形成した金属電極とすることができる。
【0023】
また、本実施形態において基板102に用いたLN基板はXカット基板であり、導波路に対し基板面に対し平行な方向に電界を印加する必要がある。このため、RF電極120は、並行導波路112、114の直上部ではなく(即ち、重なるように形成されるのではなく)、上述のように並行導波路112、114から所定距離だけ離れた位置に形成されている。
【0024】
基板102上には、RF電極120の幅方向の両側に、並行導波路112、114をそれぞれ挟むように、RF電極120から所定距離だけ離れた位置に接地電極130、132が形成されている。これにより、RF電極120は、接地電極130、132と共にコプレーナ型の線路を構成し、RF電極120と接地電極130及び接地電極132とにより挟まれた並行導波路112、114に電界を印加して、当該並行導波路112、114を伝搬する光波の位相を制御する。
【0025】
また、RF電極120のうち、並行導波路114と交差する部分には、当該並行導波路114を跨ぐようにブリッジ160、162が設けられている。ただし、これらの交差部分は距離が短く(通常4〜30μm)、当該交差部分における光の吸収損失の量は小さいので、ブリッジ160、162の形成は省略することもできる。
【0026】
さらに、RF電極120の図示左側及び右側の曲り部分の内側(即ち、曲率中心に近い側)に位置する接地電極132の、図示左側及び右側の各角部には、それぞれ、所定サイズの開口と所定の奥行きとを有する5つのブリッジ(空洞部)140a、140b、140c、140d、140e(以下、140a〜eと略記する)、及びブリッジ142a、142b、142c、142d、142e(以下、142a〜eと略記する)が設けられている(それぞれ図示点線部分)。
【0027】
また、RF電極120の図示左側及び右側の曲り部分の外側(即ち、曲率中心から遠い側)に位置する接地電極130の、図示左側及び右側の曲がり部分には、それぞれ、3つのブリッジ150a、150b、150c(以下、150a〜cと略記する)、及びブリッジ152a、152b、152c(以下、152a〜cと略記する)が設けられている(それぞれ図示点線部分)。
【0028】
図2Aは、図示一点鎖線に沿うAA断面矢視図であり、図1に示す接地電極132の図示左側の角部における、ブリッジ140a〜eが形成された部分の詳細を示す図である。図示のように、ブリッジ140a〜eは、基板102上に形成された接地電極132内の、基板102との境界面上に形成されている。図1に示す接地電極132の図示右側角部に設けられたブリッジ142a〜eも、図2Aと同様の構成を有している。
【0029】
図2Bは、図示二点鎖線に沿うBB断面矢視図であり、図1に示す接地電極130の図示左側の曲がり部における、ブリッジ150a〜cが形成された部分の詳細を示す図である。図示のように、ブリッジ150a〜cは、基板102上に形成された接地電極130内の、基板102との境界面上に形成されている。ブリッジ150bは、所定サイズの開口と所定の奥行きを持つように形成されており、ブリッジ150a、150cは、それぞれ並行導波路112、114を跨ぐように形成されている。これらのブリッジ150a、150cにより、並行導波路112、114内の光は、接地電極130の金属材料による吸収損失を受けることなく伝搬することができる。
【0030】
特に、接地電極130により覆われた並行導波路112、114の部分のように、光導波路が曲線を描く部分は、直線部分に比べて伝搬光の一部を漏えい光として失い易い部分であるため、当該部分における基板102への歪や応力の付与は極力避けることが好ましい。本実施形態の光導波路素子100では、並行導波路112、114の曲線部分を覆う接地電極1320対し、ワイヤボンディング等の基板歪や基板応力を生じさせ易い手段を用いることなく、ブリッジ150a、150c、152a、150cにより、当該接地電極130と並行導波路112、114との接触が回避されるため、並行導波路112、114における光の伝搬状態を安定に保つことができる。
【0031】
さらに、接地電極130、132に設けられたこれらのブリッジは、RF電極120の上記曲り部分における高周波信号の放射損失を低減する作用も有する。その原理について、以下、説明する。
【0032】
図1示すようにRF電極120と接地電極130、132とにより構成されるコプレーナ線路は、中心導体であるRF電極120及び接地電極130とで構成される第1のスロット線路と、RF電極120及び接地電極132とで構成される第2のスロット線路の、2つのスロット線路が結合した状態とみなすことができる(例えば、Knorr J. B and Kucher K. "Analysis of coupled slots and coplanar strips on dielectric substrate" IEEE Trans. Microwave Theory & Tech. vol. MTT-23, no.7 pp.541-548 (1975) 参照)。
【0033】
上記コプレーナ線路の曲り部(図1)では、上記2つのスロット線路のうち第2のスロット線路が当該曲り部の内側に、第1のスロット線路が当該曲り部の外側に位置することとなる。したがって、外側に位置する第1のスロット線路(以下、「外側スロット線路」とも称する)は、内側に位置する第2のスロット線路(以下、「内側スロット線路」とも称する)に比べて多くの距離を伝搬する必要が生じ、外側スロット線路を伝搬する信号は、内側スロット線路を伝搬する信号に対し遅れることとなる。
【0034】
これにより、RF電極120を挟んだこれら2つのスロット線路間における信号伝搬モード(スロットモード)の対称性が崩れ、上記曲り部分において信号の放射損失が生ずることとなる。
【0035】
したがって、RF電極120が構成するコプレーナ型線路の曲り部分における放射損失を防止するためには、当該曲り部分の内側スロット線路を伝搬する信号の速度を遅くして、外側スロット線路を伝搬する信号が、内側スロット線路を伝搬する信号に対し遅れないようにすればよい。言い換えると、上記曲がり部において、内側スロット線路におけるスロットモードの速度を、外側スロット線路におけるスロットモードの速度に対して遅くして、上記曲がり部に起因するこれら2つのスロットモード間での信号の遅延を防止すればよい。
【0036】
本実施形態の光導波路素子100では、RF電極120の各曲り部分の内側に位置する接地電極132の各角部にブリッジ140a〜e、及び142a〜eがそれぞれ形成されている。このため、当該曲り部分において、RF電極120の曲り部分内側の側壁部分に対向する接地電極132の側壁部分の面積は、ブリッジ140a〜eの開口部面積の総和だけ減少する。したがって、RF電極120と接地電極132とで構成される内側スロット線路は、上記曲り部分において分布容量が減少(したがって、当該部分の特性インピーダンスが増加すると共に、誘電率の高い基板102内部を通る電気力線が増加)するので、当該曲り部分における、内側スロット線路のスロットモード(以下、「内側スロットモード」とも称する)の伝搬速度が低下する。これにより、上記曲り部分において、内側スロットモードの伝搬時間は、外側スロット線路におけるスロットモード(以下、「外側スロットモード」とも称する)の伝搬時間とほぼ等しくなる。その結果、外側スロットモードと内側スロットモードとは、互いの間で信号遅延を生ずることなくバランスするので、放射損失や放射電磁雑音は生じにくくなる。
【0037】
なお、スロットモードの伝搬速度は、中心導体と接地電極との間の分布容量が小さいほど遅くなるので、接地電極に設けるブリッジのサイズ(開口部面積)が大きいほど、またブリッジの数が多いほど遅くなる。
【0038】
また、スロットモードの信号の伝搬を遅延させる効果は、ブリッジの奥行きにも大きく依存し、奥行きが浅いと信号遅延の効果は薄い。各ブリッジの奥行きは、接地電極130、132の材料や、RF電極120を伝搬する信号の周波数、及び当該ブリッジの開口部のサイズに応じて決定する必要があるが、少なくとも、金属内において高周波の表皮効果が発生する深さ(いわゆる表皮深さ(skin depth))の3倍以上、あるいは、望ましくは貫通孔とする必要がある。また、ブリッジは、その深さ方向が接地電極側面の垂線方向と一致するように形成されていなくとも信号遅延の効果が得られる。従って、ブリッジを光導波路の上方に形成する場合は、例えば図1に示すブリッジ150a、150c、160などのように、当該ブリッジを接地電極の壁面と直交しない方向に延伸させた貫通穴として形成することができる。
【0039】
本実施形態では、接地電極132に設けるブリッジ140a〜e、及び142a〜eは、直径7.5μmの半円形の開口を有する、奥行き20μmの空洞として形成されている。また、接地電極130に、並行導波路112、114を跨ぐように設けるブリッジ150a、150c、152a、152cは、これらの導波路を伝搬する光のモードフィールド径(光パワーフィールド分布の有効径)が約10μmであることから、直径15μmの半円形の開口を有するように形成されている。光損失をほぼ無視できる程度に低減するには、直径20μm以上の開口にする必要があるが、接地電極130が並行導波路112、114を跨ぐ長さは、100〜500μm程度と短いため、開口約15μmのブリッジでも光損失を0.05dB以下に抑えることができる。なお、接地電極130に設けたブリッジ150bは、外側スロットモードの信号伝搬速度を低下させて、内側スロットモードの伝搬速度と外側スロットモードの伝搬速度との間の細かな調整を図るためのものである。なお、速度調整用の150bのようなブリッジは、一つに限らず、必要に応じて複数設けることもできる。
【0040】
このように、曲がり部外側の接地電極130に速度調整用のブリッジを設けることにより、例えば、曲がり部内側の接地電極132に設ける各ブリッジ(例えば140a等)を、大きな開口を持つ同一の形状として形成し、その数によって内側スロットモードの速度を調整しつつ、曲がり部外側の接地電極130に設けるブリッジ(例えば150b)を、これより小さな開口を持つ形状として形成し、その数により外側スロットモードの速度を微調整することができ、接地電極130、132におけるブリッジ形成の設計自由度が向上する。
【0041】
なお、RF電極120の曲がり部外側の接地電極130に設けるブリッジの数、開口部の形状及びサイズ、並びに当該曲がり部内側の接地電極132に設けるブリッジの数、開口部の形状及びサイズは、上記に限らず、内側スロットモードと外側スロットモードとの間の信号遅延を解消できる範囲において、それぞれ任意の数、任意の形状、及び任意のサイズとすることができる。例えば、ブリッジの開口部形状を、長半楕円等の任意の曲線形状、又は任意の多角形の形状とすることができる。
【0042】
ここで、内側スロットモードと外側スロットモードとの間の伝搬時間差の解消の観点から必要とされるブリッジ開口部のサイズについての試算結果を示す。
RF電極120の1/4円弧(90度曲げ)の屈曲部における曲げ半径(RF電極120の中心線が構成する円弧の曲げ半径)をrとすると、RF電極120、接地電極130、132で構成されるコプレーナ電極を伝搬するマイクロ波の伝搬距離(RF電極120の中心線の円弧の長さ)は(πr/2)であり、当該距離の伝搬時間tは、
t=(πr/2)/Vcpw=(πr/2)(Ncpw/c) (1)
で与えられる。ここに、Vcpw、Ncpw、及びcは、それぞれ、マイクロ波の群速度、屈折率、及び光速である。
【0043】
また、RF電極120の幅をS、RF電極120と接地電極130、132との間隔をgとし、RF電極120と接地電極130との間隙の中心線が構成する円弧の距離を外側スロットモードの伝搬距離、RF電極120と接地電極132との間隙の中心線が構成する円弧の距離を内側スロットモードの伝搬距離とすると、両スロットモードの伝搬距離差ΔLは、
ΔL=π(S+g)/2 (2)
で与えられる。
【0044】
したがって、式(1)で与えられる時間tの間に発生する外側スロットモードの伝搬距離と内側スロットモードの伝搬距離との差が、式(2)で与えられる伝搬距離差ΔLに等しければ、すなわち、
ΔL=c(1/Nout−1/Nin)t (3)
が満たさされれば、両スロットモード間での伝搬遅延は発生しない。ここに、Nout及びNinは、それぞれ、RF電極120と接地電極130で構成される伝送線路の外側スロットモードに対する屈折率、及びRF電極120と接地電極132で構成される伝送線路の内側スロットモードに対する屈折率である。
【0045】
上述の式(3)及び伝送線路における屈折率についての一般的な算出式に従うと、例えばS=20μm、g=30μm、r=200μmの場合、Noutに対しNinを3%程度大きく設定すれば、両スロットモード間の伝搬遅延をなくすことができることとなる。
【0046】
外側スロットモード及び内側スロットモードの屈折率は、上述したように、RF電極120と接地電極130、132とで構成されるスロット線路の容量分布を変化させることで調整できる。これらのスロット線路の静電容量は、基板102の内部を通る電気力線に沿って基板102の材料を挟むように構成されるコンデンサの静電容量と、RF電極120の側壁と接地電極130、132の側壁とが基板上で対向することによって形成されるそれぞれのコンデンサの静電容量との和によって与えられる。広帯域光変調器の場合、通常は、上記対向する側壁で構成されるコンデンサの容量が支配的であり、Noutに対しNinを3%程度大きくにするには、RF電極120の側壁と接地電極130との側壁との間の静電容量に対し、RF電極120の側壁と接地電極132の側壁との間の静電容量を3%弱小さくすればよい。そして、この容量差を実現するには、ブリッジ開口部の形状や開口部の大きさも依存するが、近似的には、接地電極132に設けるブリッジの開口部の総面積が、ブリッジ132の側面の面積に対し2%〜4%程度となるようにすれば良い。
【0047】
例えば、接地電極132の高さが30μmの場合、ブリッジ140a〜eの開口部をそれぞれ直径15μm程度の半円形状とし、これらのブリッジをおよそ100μmのピッチで形成すれば、内側スロットモードの速度を3%程度遅くすることができる。速度低下の調整は、各ブリッジの開口部の大きさで調整しても良いし、隣接するブリッジ間のピッチ(間隔)で調整しても良い(ピッチを大きくすれば、伝搬距離当たりの静電容量が下がるので、伝搬速度も低下する)。
【0048】
ブリッジ140a〜e、142a〜eを備える接地電極132、ブリッジ150a〜c、152a〜cを備える接地電極130の形成は、例えばMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuits)の製造工程において回路素子間の空中接続配線(エアブリッジ)の形成に用いられるプロセスと同様のプロセスにより行うことができる。この場合、ブリッジ部分を構成するための犠牲層(金属堆積後に除去されてブリッジを構成する部分)の素材としては、フォトレジストや、ニッケル、クロム、ニクロムなどの金属を用いることができる。
【0049】
接地電極130、132の材料堆積は、RF電極120の材料堆積に用いるものと同じメッキプロセス(メッキ法)を用いて、例えばRF電極材料を堆積する工程と同一の工程において行うことができる。例えば、ブリッジ部分となる上述の犠牲層(フォトレジスト等)を基板102上に堆積した後、RF電極120の材料を堆積する際に、これと同じ材料により接地電極130、132も堆積させ、その後に犠牲層をエッチング除去することで、各ブリッジ140a等を容易に形成することができる。この場合には、接地電極130、132の素材や犠牲層に用いる素材に制限があるものの、少ない工程で接地電極130、132を形成することができ、製造コストの点で有利である。
【0050】
また、接地電極130、132の形成は、所定の幅の開口を有する少なくとも一つの金属層を含む、複数の金属膜を基板102上に積層して行うものとすることもできる。
【0051】
さらに、接地電極130、132は、必ずしもその全体が基板102上への材料堆積により形成される必要はない。したがって、例えば、所定サイズのブリッジを構成するように設けられた溝をそれぞれ備える略板状の導電性部材を、予め基板102上に形成された金属膜に対し、例えばフリップチップボンディングにより接合して、接地電極130、132をそれぞれ構成するものとすることもできる。
【0052】
以上、説明したように、本実施形態の光導波路素子は、制御電極であるRF電極がコプレーナ型線路を構成し、その曲がり部分において、当該曲がり部分の内側に位置する接地電極(内側接地電極)に所定サイズの開口を持つ一つ以上のブリッジが設けられている。これにより、RF電極と内側接地電極とで構成される内側スロット線路の信号伝搬モード(内側スロットモード)の伝搬速度を、当該RF電極と上記曲がり部外側の接地電極とで構成される外側スロット線路の信号伝搬モード(外側スロットモード)の伝搬速度よりも遅くして、上記曲がり部分に起因する内側スロットモードと外側スロットモードとの間での信号遅延を解消し、当該信号遅延による両スロットモード間のアンバランスを解消して信号の放射損失を有効に防止することができる。
【0053】
また、本実施形態の光導波路素子は、上記曲がり部分の近傍に形成された光導波路を覆う接地電極に、当該光導波路を跨ぐように上記と同様のブリッジが形成され、当該接地電極の材料金属による上記光導波路における光吸収損失の発生が防止される。すなわち、RF電極が構成するコプレーナ型線路の曲がり部分を通過する光導波路がある場合には、上記放射損失を防止するための構造であるブリッジと同様のブリッジ構造を用いて、上記光吸収損失を防止することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、接地電極130の、並行導波路112、114と重なる部分の全体に亘って、当該並行導波路112、114を跨ぐようにブリッジ150a等を設けるものとしたが、これに限らず、光導波路内を伝搬する光の損失についての許容度に応じて、上記重なる部分の一部についてのみ、並行導波路112、114を跨ぐようにブリッジ150a等を設けるものとすることもできる。
【0055】
また、本実施形態に示した光導波路素子100は、マッハツェンダ型光導波路を有し、RF電極120の曲がり部内側の接地電極132の下部には光導波路が形成されていないものとなっているが、これに限らず、他の構成の光導波路を、RF電極120、接地電極130、132に対し任意の位置関係で用いるものとしても良い。例えば、光導波路は、方向性結合器のように所定距離だけ離れた2本の平行導波路で構成されるものとしてもよく、X字状やY字状に交差又は分岐する導波路で構成されていてもよい。また、これらの光導波路の一部が、内側接地電極132の下部を通るように構成されていてもよい。
【0056】
そして、光導波路の一部が内側接地電極132の下部に形成される場合には、当該接地電極130に形成されるブリッジの少なくとも一つが、当該光導波路の一部又は全部を跨ぐように構成されるものとすることができる。これにより、内側接地電極132に設けられるブリッジにより、上記曲がり部における高周波信号の放射損失と、光導波路における上記接地電極132による吸収損失とを、同時に防止することができる。
【0057】
また、本実施形態に示す光導波路素子は、基板102の上面にバッファ層を設けられていないが、これに限らず、基板102上に形成されたバッファ層上に、上述したブリッジ140a等を設けるものとしてもよい。この場合にも、RF電極の曲がり部内側の接地電極へのブリッジ形成により、高周波信号の放射損失を防止することができる。また、同時に、例えばバッファ層の厚さが薄く、当該バッファ層のみでは接地電極による光の吸収損失を完全には回避できない場合には、光導波路上部の接地電極に当該光導波路を跨ぐブリッジを形成して、上記吸収損失の発生を完全に回避することができる。
【0058】
また、上述した実施形態では、基板102としてXカットのLN基板を用いる構成としたが、これに限らず、ZカットのLN基板を用いるものとすることもできる。ZカットのLN基板を用いる場合には、RF電極を並行導波路の直上部に重ねて設けるため基板表面にバッファ層を形成するのが一般的であるが、上述したように、このようなバッファ層を形成する場合にも、本実施形態に示したブリッジ構造を用いて高周波信号の放射損失を有効に防止することができる。
【0059】
また、本実施形態に示した、RF電極の曲がり部における内側接地電極へのブリッジ形成に加えて、RF電極と内側接地電極との距離を、RF電極と外側接地電極との距離よりも大きくする構成を併用することができる。これにより、例えば、当該構成により内側スロット線路の分布容量を補足的に低減して、ブリッジ形成による調整範囲を狭めて、より細かな調整を可能とすることができる。
【0060】
さらに、上述した実施形態では、RF電極120の側壁と内側接地電極132の側壁との間の空間は空気であるものとしたが、当該空間に低誘電損失の絶縁材料(例えば、樹脂など)を配置して、内側スロットモードの速度低減効果を補足することもできる。
【0061】
また、RF電極120の側壁と外側接地電極130の側壁との間の空間に、低誘電損失の絶縁材料(例えば、樹脂)を配置して、外側スロットモードの伝搬速度低減効果を補足的に高めて、内側スロットモードと外側スロットモードとの間の信号遅延を防止し、放射損失を低減することもできる。
【符号の説明】
【0062】
100・・・光導波路素子、102・・・基板、110・・・入射導波路、112、114・・・並行導波路、116・・・出射導波路、120・・・RF電極、130、132・・・接地電極、140a〜e、142a〜e、150a〜c、152a〜c、160、162・・・ブリッジ。
図1
図2A
図2B