(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成分(A)が、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、アクリロイル基及びカルボキシル基を有する化合物とを反応させて得られるものである、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
成分(B)が、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、メタクリロイル基及びカルボキシル基を有する化合物とを反応させて得られるものである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
更に、重合開始剤を含み、かつその含有量が成分(A)及び成分(B)の合計100重量部に対し、0.01〜20重量部である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
基材とハードコート層とを有する積層体であり、該ハードコート層が請求項1乃至6のいずれか1項に記載の硬化性組成物を該基材上に塗布し、これに活性エネルギー線を照射して形成されてなるものである積層体。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。また、本発明において、「(メタ)アクリル」という表現を用いた場合、「アクリル」と「メタクリル」の一方又は両方を意味するものとする。「(メタ)アクリレート」「(メタ)アクリロイル」についても同様である。また、「(ポリ)プロピレングリコール」は「プロピレングリコール」と「ポリプロピレングリコール」の一方又は両方を意味するものとする。「(ポリ)エチレングリコール」についても同様の意味をもつこととする。
【0024】
〔硬化性組成物〕
本発明の硬化性組成物は、下記成分(A)及び成分(B)を含み、成分(A)と成分(B)との重量比が5:95〜95:5であるものである。
成分(A):重量平均分子量(Mw
A)が1,000〜500,000であり、アクリロイル基量が2.0〜5.0mmol/g、メタクリロイル基量が2.0mmol/g未満である(メタ)アクリル酸エステル系重合体(以下、「(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)」と称す場合がある。)
成分(B):重量平均分子量(Mw
B)が1,000〜500,000であり、メタクリロイル基量が2.0〜5.0mmol/g、アクリロイル基量が2.0mmol/g未満である(メタ)アクリル酸エステル系重合体(以下、「(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)」と称す場合がある。)
なお、本発明において「(メタ)アクリル酸エステル系重合体」とは、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを原料として得られる重合体を意味する。
【0025】
本発明の硬化性組成物は、成形加工時に良好な伸び性、アンチブロッキング性を有し、かつ加工後に優れた耐傷付性、硬度を有するという効果を奏する。即ち、本発明の硬化性組成物は活性エネルギー線を低照射量とした際には良好な伸びとアンチブロッキング性を有し、活性エネルギー線を高照射量として十分に硬化反応を進行させた際には高い耐傷付性、硬度を有するものである。本発明の硬化性組成物がこのような効果を奏する理由としては、成分(A)及び成分(B)がそれぞれ相対的に反応性の高いアクリロイル基と反応性の低いメタクリロイル基を有することにより、架橋反応の進行度を制御することが可能になることによるものと考えられる。
【0026】
[成分(A)]
本発明に用いる成分(A)の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)は、重量平均分子量(Mw
A)が1,000〜500,000であり、アクリロイル基量が2.0〜5.0mmol/g、メタクリロイル基量が2.0mmol/g未満であるものであれば特に制限されない。
【0027】
成分(A)の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw
A)は、アンチブロッキング性を高めるために1,000以上であり、また、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)のゲル化を防ぐために500,000以下である。これらをより良好なものとする観点から、重量平均分子量(Mw
A)は、3,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、7,000以上であることが更に好ましく、10,000以上であることが特に好ましく、一方、400,000以下であることが好ましく、250,000以下であることがより好ましく、100,000以下であることが更に好ましく、50,000以下であることが特に好ましい。なお、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)及び後述の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の重量平均分子量(Mw
A),(Mw
B)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて、ポリスチレン標準による換算値として決定することができる。具体的な重量平均分子量の測定方法は後掲の実施例に示す。
【0028】
成分(A)の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)はアクリロイル基を有し、かつアクリロイル基量が2.0〜5.0mmol/gである。アクリロイル基量が2.0mmol/g以上であることが活性エネルギー線を高照射量としたときに得られる硬化物の耐傷付性、硬度を良好なものとするために必要であり、また、5.0mmol/g以下であることが硬化性組成物のゲル化を防ぐために必要である。これらをより良好なものとする観点から、アクリロイル基量は、2.2mmol/g以上であることが好ましく、2.4mmol/g以上であることがより好ましく、一方、4.8mmol/g以下であることが好ましく、4.6mmol/g以下であることがより好ましい。
【0029】
また、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)はメタクリロイル基を有さないか、或いはメタクリロイル基を有する場合であっても、メタクリロイル基量は2.0mmol/g未満である。
即ち、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)は、反応性の高いアクリロイル基を有することで、架橋反応の進行度を高めるためのものであり、十分量のアクリロイル基量を確保して、この機能を高める上で、メタクリロイル基量は2.0mmol/g未満であることが必要である。この機能を良好なものとする観点から、メタクリロイル基量は、1.0mmol/g以下であることが好ましく、0.5mmol/g以下であることがより好ましく、一方、メタクリロイル基量の下限は通常、0mmol/g、即ち、メタクリロイル基を有さないものである。
【0030】
なお、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)及び後述の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)のアクリロイル基量及びメタクリロイル基量は(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)、(B)それぞれを製造する際に用いた原料成分の仕込み量の全てが反応したものと仮定し、その仕込みの理論量から計算される値である。より詳細には、例えば、以下の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)における方法〔1〕の場合であれば、原料である炭素間不飽和二重結合を有するラジカル重合性モノマーの仕込み量全てが反応してエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得たものとし、更にこのエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体とアクリロイル基及びカルボキシル基を有する化合物が理論量で完全に反応したものと仮定した場合のこれらの原料の仕込みの理論量から計算される値である。
【0031】
成分(A)の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)において、アクリロイル基は以下のようにして導入することができる。
【0032】
例えば、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を製造し、これにアクリロイル基及びカルボキシル基を有する化合物を反応させる方法(方法〔1〕)、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を製造し、これにアクリロイル基及びエポキシ基を有する化合物を反応させる方法(方法〔2〕)、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を製造し、これにアクリロイル基及びカルボキシル基を有する化合物を反応させる方法(方法〔3〕)、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を製造し、これにアクリロイル基及び水酸基を有する化合物を反応させる方法(方法〔4〕)、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を製造し、これにアクリロイル基及び水酸基を有する化合物を反応させる方法(方法〔5〕)、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を製造し、これにアクリロイル基及びイソシアネート基を有する化合物を反応させる方法(方法〔6〕)等が挙げられる。また、以上に挙げた方法は組み合わせて用いてもよい。以下において、C=Cを有するラジカル重合性モノマーを「ビニルモノマー」と称することがある。
【0033】
前記方法〔1〕において、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得るために用いられるエポキシ基を有するビニルモノマーとしては、例えば、下記式(1)〜(3)で表されるものが挙げられる。これらは、1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
(ここで、R
1は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、R
2は水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基を示し、pは1〜8の整数を示す。)
【0037】
(ここで、R
3は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、R
4は−CH
2O−基又は−CH
2−基を示し、R
5は水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基を示し、qは0〜7の整数を示す。)
【0039】
(ここで、R
6は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、rは1〜8の整数を示す。)
【0040】
式(1)において、R
1及びR
2として好ましいのは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。式(1)で表されるモノマーとしては、具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグルシジル(メタ)アクリレートを例示することができ、その中ではグリシジルメタクリレート(GMA)が入手性の面等から好ましい。
【0041】
式(2)において、R
3及びR
5として好ましいのは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R
4として好ましいのは−CH
2O−である。式(2)で表されるモノマーとしては、具体的には、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−p−ビニルベンジルグリシジルエーテルを例示することができ、その中ではo−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテルが入手性の面等から好ましい。
【0042】
式(3)において、R
6として好ましいのは、水素原子又はメチル基である。式(3)で表されるモノマーとしては3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートを例示することができる。その中で3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートが硬度等、硬化性組成物の硬化物の物性の面から好ましい。
【0043】
また、前記方法〔1〕において、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体と反応させるアクリロイル基及びカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、アクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、グリセリンジアクリレートと無水コハク酸の付加物、ペンタエリスリトールトリアクリレートと無水コハク酸の付加物、ペンタエリスリトールトリアクリレートと無水フタル酸の付加物等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、ペンタエリスリトールトリアクリレートと無水コハク酸の付加物が好ましく、アクリル酸が特に好ましい。なお、アクリロイル基及びカルボキシル基を有する化合物は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
前記方法〔2〕において、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得るために用いられるカルボキシル基を有するビニルモノマーとしては例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、多塩基酸変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸が好ましい。これらは1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
また、前記方法〔2〕において、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体と反応させるアクリロイル基及びエポキシ基を有する化合物として、例えば、グリシジルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中でもグリシジルアクリレートが好ましい。これらは1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
前記方法〔3〕において、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得るために用いられる水酸基を有するビニルモノマーとしては例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート等が挙げられる。これらは1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
また、前記方法〔3〕において、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体と反応させるアクリロイル基及びカルボキシル基を有する化合物としては、前記方法〔1〕において挙げた化合物と同様のものを用いることができる。
【0048】
前記方法〔4〕において、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得るために用いられるカルボキシル基を有するビニルモノマーとしては、前記方法〔2〕で挙げた化合物と同様のものを用いることができる。
【0049】
また、前記方法〔4〕において、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体と反応させるアクリロイル基及び水酸基を有する化合物としては例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート等が挙げられる。これらは1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
前記方法〔5〕において、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得るために用いられるイソシアネートを有するビニルモノマーとしては例えば、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
また、前記方法〔5〕において、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体と反応させるアクリロイル基及び水酸基を有する化合物としては例えば、前記方法〔4〕において挙げた化合物と同様のものを用いることができる。
【0052】
前記方法〔6〕において、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得るために用いられる水酸基を有するビニルモノマーとしては、前記方法〔3〕で挙げた化合物と同様のものを用いることができる。
【0053】
また、前記方法〔6〕において、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体と反応させるアクリロイル基及びイソシアネート基を有する化合物としては例えば、イソシアネートエチルアクリレート等が挙げられる。これらは1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
なお、以下において、前記方法〔1〕〜〔6〕において、成分(A)の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)又は後述の成分(B)の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を得るためのエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を「原料(メタ)アクリル酸エステル系重合体」と称す場合がある。
【0055】
以上に挙げた方法〔1〕〜〔6〕の中でも、(メタ)アクリル酸エステル系重合体におけるアクリロイル基は前記方法〔1〕又は〔2〕、特に方法〔1〕によるものであることが反応を制御し易いために好ましい。前記方法〔1〕により成分(A)の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)を得る場合、アクリロイル基は通常、原料(メタ)アクリル酸エステル系重合体のエポキシ基と、アクリロイル基及びカルボキシル基を有する化合物におけるカルボキシル基との間の開環・付加反応により導入されるものである。
【0056】
前記方法〔1〕において、原料(メタ)アクリル酸エステル系重合体を製造する際に用いるエポキシ基を有するモノマーは、原料(メタ)アクリル酸エステル系重合体を構成するモノマー全量のうち、アクリロイル基を十分に導入させるために30重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることが更に好ましく、一方、上限については特に制限されず、通常100重量%以下である。
【0057】
また、前記方法〔1〕において、上記のアクリロイル基及びカルボキシル基を有する化合物は、エポキシ基を有する原料(メタ)アクリル酸エステル系重合体のエポキシ基に対する、アクリロイル基及びカルボキシル基を有する化合物のカルボキシル基の割合として、好ましくは10〜150モル%であり、より好ましくは30〜130モル%であり、特に好ましくは50〜110モル%であることが、反応を過不足なく進行させ、また、原料の残渣を少なくなくする観点から好ましい。
【0058】
前記方法〔1〕において、成分(A)の原料(メタ)アクリル酸エステル系重合体の原料には、以上に説明したエポキシ基を有するビニルモノマーの他に、以下に挙げる(メタ)アクリル酸エステル及びその他のビニルモノマーを用いることができる。なお、これらの原料の重合反応は通常、ラジカル重合であり、公知の条件で実施することができる。
【0059】
原料として用いることのできる、エポキシ基を有するモノマー以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシ(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種のみを用いても、2種以上を用いてもよい。
【0060】
原料として用いることのできるその他のビニルモノマーとしては、エチル(メタ)アクリルアミド、n−ブチル(メタ)アクリルアミド、i−ブチル(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド; スチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレンなどのスチレン系単量体等が挙げられる。これらは1種のみを用いても、2種以上を用いてもよい。
【0061】
原料(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、上記のような原料ビニルモノマーを用い、公知のラジカル重合反応を用いて製造することができる。ラジカル重合反応は通常、有機溶媒中、ラジカル重合開始剤の存在下で実施することができる。
【0062】
ラジカル重合反応に用いることのできる有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン系溶媒;エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、イソブタノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−エトキシエチルアセタート等のエステル系溶媒;トルエン等の芳香族炭化水素溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
ラジカル重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を用いることができるが、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。ラジカル重合開始剤は原料のビニルモノマーの合計100重量部に対し、通常0.01〜5重量部の範囲で用いられる。
【0064】
原料(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造の際には、連鎖移動剤を用いることが、重量平均分子量の制御が容易となるために好ましい。
【0065】
連鎖移動剤としては、公知のものを使用することが可能であり、例えば、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、2−メルカプトプロピオン酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、チオグリコール酸2−エチルへキシル、ブチル−3−メルカプトプロピオネート、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチル−3−メルカプトプロピオネート、2,2−(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、エタンチオール、4−メチルベンゼンチオール、オクタン酸2−メルカプトエチルエステル、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、デカントリチオール、ドデシルメルカプタン、ジフェニルスルホキシド、ジベンジルスルフィド、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノ−ル、メルカプトエタノール、チオサリチル酸、チオグリセロール、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、メルカプト酢酸、メルカプト琥珀酸、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系化合物等が挙げられる。これらは、1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
連鎖移動剤の使用量は、原料として用いるビニルモノマーの合計100重量部に対し、好ましくは0.1〜25重量部であり、より好ましくは0.5〜20重量部であり、更に好ましくは1.0〜15重量部である。
【0067】
ラジカル重合反応の反応時間は、通常1〜20時間であり、好ましくは3〜12時間である。また、反応温度は、通常40〜120℃であり、好ましくは50〜100℃である。
【0068】
成分(A)の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の重量平均分子量が前記範囲となるように、所定の重量平均分子量の原料(メタ)アクリル酸エステル系重合体を製造するためには、例えば重合温度、重合開始剤量、連鎖移動剤量、反応系のビニルモノマー濃度、ビニルモノマーの添加方法などの重合条件を制御する方法を採用することができる。
【0069】
原料(メタ)アクリル酸エステル系重合体にアクリロイル基及びカルボキシル基を有する化合物等を反応させるには、上記のようにして得られた原料(メタ)アクリル酸エステル系重合体に、アクリロイル基及びカルボキシル基を有する化合物等を添加して、トリフェニルホスフィン、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルアミン等の触媒の1種又は2種以上存在下に通常、80〜150℃、好ましくは90〜130℃で通常、3〜9時間程度反応されればよい。ここで、触媒は、原料(メタ)アクリル酸エステル系重合体、並びにアクリロイル基及びカルボキシル基を有する化合物等の化合物の合計100重量部に対して0.5〜3重量部程度の割合で用いることが好ましい。この反応は、原料(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重合反応後、引き続き行ってもよく、反応系から一旦原料(メタ)アクリル酸エステル系重合体を分取した後、アクリロイル基及びカルボキシル基を有する化合物等の化合物等を添加して行ってもよい。
【0070】
本発明の硬化性組成物は、成分(A)として、上記のようにして得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
【0071】
[成分(B)]
本発明に用いる成分(B)の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)は、重量平均分子量(Mw
A)が1,000〜500,000であり、メタクリロイル基量が2.0〜5.0mmol/g、アクリロイル基量が2.0mmol/g未満であるものであれば特に制限されない。
【0072】
成分(B)の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の重量平均分子量(Mw
B)は、アンチブロッキング性を高めるために1,000以上であり、また、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)のゲル化を防ぐために500,000以下である。これらをより良好なものとする観点から、重量平均分子量(Mw
B)は、3,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、7,000以上であることが更に好ましく、一方、400,000以下であることが好ましく、300,000以下であることがより好ましく、250,000以下であることが更に好ましい。
【0073】
成分(B)の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)はメタクリロイル基を有し、かつメタクリロイル基量が2.0〜5.0mmol/gである。メタクリロイル基量が2.0mmol/g以上であることが活性エネルギー線を低照射量としたときに得られる硬化物の伸び、アンチブロッキング性を良好なものとするために必要であり、また、5.0mmol/g以下であることが硬化性組成物のゲル化を防ぐために必要である。これらをより良好なものとする観点から、メタクリロイル基量は、2.2mmol/g以上であることが好ましく、2.4mmol/g以上であることがより好ましく、一方、4.8mmol/g以下であることが好ましく、4.6mmol/g以下であることがより好ましい。
【0074】
また、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)はアクリロイル基を有さないか、或いはアクリロイル基を有する場合であっても、アクリロイル基量は2.0mmol/g未満である。
即ち、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)は、反応性の低いメタクリロイル基を有することで、架橋反応の進行度を下げるためのものであり、十分量のメタクリロイル基量を確保して、この機能を高める上で、アクリロイル基量は2.0mmol/g未満であることが必要である。この機能を良好なものとする観点から、アクリロイル基量は、1.0mmol/g以下であることが好ましく、0.5mmol/g以下であることがより好ましく、一方、アクリロイル基量の下限は通常、0mmol/g、即ち、アクリロイル基を有さないものである。
【0075】
成分(B)の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)において、メタクリロイル基は、成分(A)の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)のアクリロイル基と同様にして導入することができる。即ち、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)は、前述の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の製造方法において、アクリロイル基の代りにメタクリロイル基を有する化合物を用い、これを原料(メタ)アクリル酸エステル系重合体に反応させることにより同様にして製造することができる。
【0076】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の製造に当たり、前記方法〔1〕,〔3〕において、原料(メタ)アクリル酸エステル系重合体と反応させるメタクリロイル基及びカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、メタクリル酸、カルボキシエチルメタクリレート、グリセリンジメタクリレートと無水コハク酸の付加物、ペンタエリスリトールトリメタクリレートと無水コハク酸の付加物、ペンタエリスリトールトリメタクリレートと無水フタル酸の付加物等の1種又は2種以上が挙げられる。これらの中でも、メタクリル酸、ペンタエリスリトールトリメタクリレートと無水コハク酸の付加物が好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。また、方法〔4〕,〔5〕において、原料(メタ)アクリル酸エステル系重合体と反応させるメタクリロイル基及び水酸基を有する化合物としては例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0077】
また、前記方法〔2〕において、原料(メタ)アクリル酸エステル系重合体と反応させるメタクリロイル基及びエポキシ基を有する化合物として、例えば、グリシジルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレートジグリシジルエーテル等の1種又は2種以上が挙げられる。これらの中でもグリシジルメタクリレートが好ましい。
また、前記方法〔6〕において、原料(メタ)アクリル酸エステル系重合体と反応させるメタクリロイル基及びイソシアネート基を有する化合物としては例えば、イソシアネートエチルメタクリレート等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0078】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)もまた、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)と同様、(メタ)アクリル酸エステル系重合体におけるメタクリロイル基は前記方法〔1〕又は〔2〕、特に方法〔1〕によるものであることが反応を制御し易いために好ましい。前記方法〔1〕により成分(B)の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を得る場合、メタクリロイル基は通常、原料(メタ)アクリル酸エステル系重合体のエポキシ基と、メタクリロイル基及びカルボキシル基を有する化合物におけるカルボキシル基との間の開環・付加反応により導入されるものである。
【0079】
本発明の硬化性組成物は、成分(B)として、上記のようにして得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
【0080】
[成分(A)と成分(B)の含有量比]
本発明の硬化性組成物は、成分(A)と成分(B)とを重量比で5:95〜95:5の割合で含有する。この範囲よりも成分(A)の含有割合が多く、成分(B)の含有割合が少ないと、反応性の高い成分(A)と反応性の低い成分(B)とを併用することによる本発明の架橋反応の進行度の制御による効果、即ち、成形加工時に良好な伸び性、アンチブロッキング性を有し、かつ加工後に優れた耐傷付性、硬度、透明性を有するという効果を有効に得ることができない。この効果をより一層良好なものとするために、成分(A)と成分(B)の含有割合は、重量比で90:10〜10:90であることが好ましく、85:15〜15:85であることがより好ましく、80:20〜20:80であることが更に好ましい。
【0081】
なお、本発明の硬化性組成物に含まれる成分(A)の重量平均分子量(Mw
A)と成分(B)の重量平均分子量(Mw
B)との比(Mw
A:Mw
B)は、これらを併用することによる効果をより一層有効に得る上で、50:1〜1:50であることが好ましい。成分(A)の重量平均分子量(Mw
A)と成分(B)の重量平均分子量(Mw
B)との比(Mw
A:Mw
B)が上記範囲よりも外れて、成分(A)と成分(B)との分子量差が上記範囲内であると、硬化性組成物の相溶性が良好となり、また、硬化物の透明性が良好となる傾向にある。この観点から、(Mw
A:Mw
B)は1:40〜40:1であることがより好ましく、1:30〜30:1であることが更に好ましく、1:20〜20:1であることが特に好ましい。
【0082】
[有機溶媒]
本発明の硬化性組成物は有機溶媒を含むものであることが好ましい。本発明の硬化性組成物は、有機溶媒を含むことで、固形分濃度5〜95重量%に調製されることが好ましい。硬化性組成物の固形分濃度が5重量%以上であることが、硬化性組成物の意図しない硬化反応(ゲル化等)を防ぐために好ましく、また、95重量%以下であることが塗工性の観点から好ましい。これらの観点から固形分濃度は、より好ましくは10重量%以上であり、更に好ましくは20重量%以上であり、また、より好ましくは90重量%以下であり、更に好ましくは85重量%以下であり、特に好ましくは80重量%以下である。なお、本発明において、「固形分」とは溶媒を除いた成分を意味するものであり、固体の成分のみならず、半固形や粘稠な液状物のものをも含むものとする。
【0083】
有機溶媒としては、特に限定されるものではなく、成分(A)、成分(B)の種類やハードコート層を形成する際に用いる基材の種類、基材への塗布方法等を考慮して適宜選択することができる。有機溶媒の具体例としては、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、n−ドデカン、2,3−ジメチルヘキサン、2−メチルヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトール等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテート等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。
【0084】
本発明の硬化性組成物は、多官能イソシアネートを用いた場合のように、使用可能な有機溶媒の種類に制限を受けることがなく、各種の有機溶媒を用いることができるが、これらの有機溶媒のうち、飽和炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒及びケトン系溶媒から選ばれる少なくとも1種が好ましく使用される。
【0085】
[重合開始剤]
本発明の硬化性組成物は、活性エネルギー線による硬化性を向上させるために、重合開始剤を含有することが好ましい。
【0086】
重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましく、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル-プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイル-ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらの重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0087】
本発明の硬化性組成物の重合開始剤の含有量は、硬化性を高める観点から、成分(A)及び成分(B)の合計100重量部に対し、好ましくは0.01重量部以上であり、より好ましくは0.05重量部以上であり、更に好ましくは0.1重量部以上である。また、重合開始剤の含有量は、硬化性組成物の安定性の観点から、好ましくは20重量部以下であり、より好ましくは10重量部以下であり、更に好ましくは5重量部以下である。
【0088】
[無機粒子]
本発明の硬化性組成物は、更に、平均一次粒子径が1μm以下の無機粒子を含有していてもよい。このような無機粒子を含有することにより、硬度、アンチブロッキング性が更に優れたハードコート層を形成し得る硬化性組成物を得ることができる。
【0089】
無機粒子の例としては、シリカ(オルガノシリカゾルを含む)、アルミナ、チタニア、ゼオライト、雲母、合成雲母、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、フッ化マグネシウム、スメクタイト、合成スメクタイト、バーミキュライト、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン等が挙げられ、これらの中でもシリカが好ましい。また、以上に挙げた無機粒子は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
無機粒子の平均一次粒子径は1μm以下であるが、800nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることが更に好ましく、100nm以下であることが特に好ましい。無機粒子の平均一次粒子径の下限値は特段限定されないが、通常5nm以上、好ましくは10nm以上である。平均一次粒子径が上記上限以下であると、粒子の自重による沈降が生じにくく、硬化性組成物の塗液の貯蔵安定性が良好となりやすいために好ましい。
【0091】
一方、平均一次粒子径が上記範囲である無機粒子の硬化性組成物の塗液中での運動は、重力による沈降よりも熱拡散が支配するため、無機粒子は硬化性組成物の塗液中に安定に分散可能となり、更にハードコート層を形成した際に効果的に表面に存在するようになる。また、無機粒子の平均一次粒子径が小さいほど、光学特性が良好になる傾向がある。
【0092】
なお、本発明における無機粒子の平均一次粒子径は、BET吸着法による比表面積測定値(JIS Z8830に準拠)を求め、以下の式から換算値として求められる値である。
[平均一次粒子径(nm)]=6,000/〔[比表面積(m
2/g)]
×[密度(g/cm
3)]〕
【0093】
本発明の硬化性組成物が上記のような無機粒子を含む場合、その含有量は、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対し、0.05重量部以上であることが好ましく、0.5重量部以上であることがより好ましく、0.7重量部以上であることが更に好ましく、1重量部以上であることが特に好ましい。また、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対し、100重量部以下であることが好ましく、80重量部以下であることがより好ましく、60重量部以下であることが更に好ましく、40重量部以下であることが特に好ましい。無機粒子の含有量が上記下限値以上であると無機粒子を用いることによる効果を十分に得ることができるために好ましく、また、上記上限値以下であると透明性の観点から好ましい。
【0094】
なお、無機粒子は、アンチブロッキング性や硬度を向上させる点において、成分(A)及び/又は成分(B)で表面修飾された無機粒子として本発明の硬化性組成物に配合されていてもよい。成分(A)及び/又は成分(B)で表面修飾された無機粒子を製造するには、例えば、成分(A)及び/又は成分(B)と無機粒子とを、酸や塩基、アセチルアセトンアルミニウム等のシランカップリング反応触媒の存在下に25〜120℃で1〜24時間程度反応させる方法が挙げられる。
【0095】
[その他の成分]
本発明の硬化性組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で成分(A)、成分(B)、有機溶媒、重合開始剤及び無機粒子以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、充填剤、シランカップリング剤、反応性希釈剤、帯電防止剤、有機顔料、スリップ剤、分散剤、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)、消泡剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0096】
[硬化性組成物の製造方法]
本発明の硬化性組成物の製造方法は特に制限されないが、例えば、成分(A)、(B)と必要により適宜その他の成分等を混合することにより得ることができる。各成分の混合に際しては、ディスパーザー、撹拌機等で均一に混合することが好ましい。
【0097】
〔硬化物・積層体〕
本発明の硬化性組成物に活性エネルギー線を照射する等して硬化させることにより、本発明の硬化物を得ることができる。特に、本発明の硬化性組成物を基材の上等に塗布して硬化させることにより、本発明の硬化性組成物よりなる硬化層を基材上に形成してなる積層体とすることができる。また、このように、本発明の硬化性組成物を基材の上等に塗布し、フィルム状に硬化させることで、ハードコートフィルム(ハードコート層)を得ることができる。また、基材として他の樹脂フィルム上に本発明の硬化性組成物を塗布し、硬化させてハードコートフィルムを成形することで、他の樹脂フィルム上にハードコートフィルムを積層してなるフィルム積層体が得られる。なお、本発明において、「塗布」とは一般的に「塗工」と呼ばれるものも含む概念として用いることとする。
【0098】
上記の積層体に用いる基材としては、プラスチック基材等の有機材料;金属基材、ガラス基材等の無機材料が挙げられる。プラスチック基材としては、各種合成樹脂、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリオフィン樹脂等よりなるものが挙げられる。金属基材としては、特に限定はないが、例えば、熱延板、冷延板等の鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、ブリキ、ティンフリースチール、その他各種のめっき、あるいは合金めっき鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板等の金属板が挙げられる。更にはこれらをリン酸塩処理、クロメート処理、有機リン酸塩処理、有機クロメート処理、ニッケル等の重金属置換処理等、各種の表面処理を施したものであってもよい。ガラス基材としては、通常のガラスのほか、各種の化学処理を施したガラス(例えば、コーニング社のゴリラガラス(登録商標)や旭硝子社のドラゴントレイル(登録商標)等)や多成分系のガラスを用いてもよい。本発明の硬化性組成物はプラスチック基材、ガラス基材に好適であり、特にプラスチック基材に適したものである。
【0099】
前記基材上に形成されるハードコート層は、例えば、本発明の硬化性組成物を基材上に塗布(塗工)し、これに活性エネルギー線を照射して形成することができる。本発明の硬化性組成物を基材上に塗布(塗工)する方法としては、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、マイヤーバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法等が挙げられる。また、本発明の硬化物の形態は特に制限されないが、通常、基材上で活性エネルギー線を照射して硬化させて得られた硬化物は基材の少なくとも片面の一部に硬化被膜(硬化膜)の状態として得ることができる。
【0100】
本発明の硬化性組成物を硬化させる際に用いることのできる活性エネルギー線には、紫外線、電子線、X線、赤外線及び可視光線が含まれる。これらの活性エネルギー線のうち硬化性と樹脂劣化防止の観点から好ましいのは紫外線及び電子線である。
【0101】
本発明の硬化性組成物を紫外線照射により硬化させる場合には、種々の紫外線照射装置を用いることができ、その光源としてはキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、LED−UVランプ等を使用することができる。紫外線の照射量(単位はmJ/cm
2)は、通常10〜10,000mJ/cm
2であり、本発明の硬化性組成物の硬化性、硬化物(硬化膜)の可撓性等の観点から好ましくは100〜5,000mJ/cm
2であり、より好ましくは200〜3,000mJ/cm
2である。
【0102】
また、本発明の硬化性組成物を電子線照射で硬化させる場合は、種々の電子線照射装置を使用することができる。電子線の照射量(Mrad)は、通常、0.5〜20Mradであり、本発明の硬化性組成物の硬化性、硬化物の可撓性、基材の損傷防止等の観点から好ましくは1〜15Mradである。
【0103】
なお、本発明の硬化性組成物を基材上に塗布(塗工)した後、微弱な活性エネルギー線の照射で、十分なアンチブロッキング性を有し、かつ伸び性にも優れた半硬化膜とする場合の活性エネルギー線の照射量は、硬化性組成物中の成分(A)と成分(B)との割合によっても異なるが、通常、紫外線であれば、1〜50mJ/cm
2、特に5〜20mJ/cm
2であることが好ましい。
【0104】
〔用途〕
本発明の硬化性組成物は、成形加工時には良好な伸び性、アンチブロッキング性を有し、かつ加工後、即ち硬化後には優れた耐傷付性、硬度、透明性を有するものであるため、転写フィルム用の硬化性組成物として好適に用いることができる。例えば内装・外装用の建装材や自動車、家電、情報電子材料等の各種部材等に有効に適用することが可能である。特に、本発明の硬化性組成物より得られる硬化物は、これをトップコート層とする加飾フィルムとして有用である。
【実施例】
【0105】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0106】
なお、以下の製造例で製造した(メタ)アクリル酸エステル系重合体(「A−1」、「B−1」、「B−2」)の重量平均分子量はGPC法により次の条件により測定した値である。
機器:東ソー株式会社製「HLC−8120GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSKgel Super H3000+H4000
+H6000」
検出器:示差屈折率検出器(RI検出器/内蔵)
溶媒:テトラヒドロフラン
温度:40℃
流速:0.5ml/分
注入量:10μL
濃度:0.2重量%
較正試料:単分散ポリスチレン
較正法:ポリスチレン換算
【0107】
〔製造例〕
[製造例1]
温度計、攪拌機及び還流冷却管を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル155.1g、グリシジルメタクリレート98.0g、メチルメタクリレート1.0g、エチルアクリレート1.0g、メルカプトプロピルトリメトキシシラン1.9g、及び2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.0gを入れ、65℃で3時間反応させた。その後、さらに2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5gを加えて3時間反応させた後、プロピレングリコールモノメチルエーテル212.8gとp−メトキシフェノール0.52gを加え100℃まで加熱した。次に、アクリル酸50.7g、及びトリフェニルホスフィン3.05gを添加して、110℃で6時間反応させることで、アクリロイル基とメトキシシリル基を有する、重量平均分子量(Mw)20,100でアクリロイル基量4.5mmol/gの(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)を得た(固形分:30重量%)。以下、この(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)を「A−1」と表記する。「A−1」の物性について表−1に示す。
【0108】
[製造例2]
温度計、攪拌機及び還流冷却管を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル155.1g、グリシジルメタクリレート98.0g、メチルメタクリレート1.0g、エチルアクリレート1.0g、メルカプトプロピルトリメトキシシラン1.9g、及び2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.0gを入れ、65℃で3時間反応させた。その後、さらに2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5gを加えて3時間反応させた後、プロピレングリコールモノメチルエーテル236.3gとp−メトキシフェノール0.56gを加え100℃まで加熱した。次に、メタクリル酸60.5g、及びトリフェニルホスフィン3.25gを添加して、110℃で6時間反応させることで、メタクリロイル基とメトキシシリル基を有する、重量平均分子量(Mw)9,000でメタクリロイル基量4.1mmol/gの(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を得た(固形分:30重量%)。以下、この(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を「B−1」と表記する。「B−1」の物性について表−1に示す。
【0109】
[製造例3]
温度計、攪拌機及び還流冷却管を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル81.1g、メタクリル酸58.1g、メチルメタクリレート4.0g及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.62gを入れ、65℃で3時間反応させた。その後、さらに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.31gを加えて3時間反応させた後、プロピレングリコールモノメチルエーテル262.1gとp−メトキシフェノール0.53gを加え100℃まで加熱した。次に、グリシジルメタクリレート96.0g、及びテトラブチルアンモニウムブロマイド1.58gを添加して、110℃で6時間反応させることで、メタクリロイル基を有する、重量平均分子量(Mw)210,000でメタクリロイル基量4.3mmol/gの(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を得た(固形分:30重量%)。以下、この(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を「B−2」と表記する。「B−2」の物性について表−1に示す。
【0110】
【表1】
【0111】
〔評価方法〕
[塗膜又は半硬化膜の評価]
<伸び率>
塗膜又は半硬化膜をPETフィルムから剥して10mm幅に切断し、引っ張り試験機(イマダ社製、縦型電動計測スタンドMX2−500N−FA及びFA−Plus)を用いて、温度140℃、引張速度40mm/分、チャック間距離40mmの条件で引張試験を行って破断伸度を測定した。
【0112】
<アンチブロッキング性>
塗膜又は半硬化膜を形成したPETフィルムと、皮膜形成していないPETフィルムを1枚ずつ用意し、40℃にて、これらを塗膜又は半硬化膜を内側にして重ね合わせた。その上から400g/cm
2の荷重を24時間負荷した後、塗膜又は半硬化膜の他方のPETフィルムへの張り付き(ブロッキング)の程度を目視観察により調べ、以下の基準で評価した。
○:重ねあわせた塗膜又は半硬化膜の面積のうち、張り付きが起きた面積は20%未満であった。
×:重ねあわせた塗膜又は半硬化膜の面積のうち、張り付きが起きた面積は20%以上であった。
【0113】
[硬化膜の評価]
<透明性(全光線透過率・ヘーズ)>
ハードコートフィルム(硬化膜を形成したPETフィルム)の全光線透過率(T
t(%))は、ハードコートフィルムに対する入射光強度(T
0)とハードコートフィルムを透過した全透過光強度(T
1)とを測定し、下記式により算出した。なお、全光線透過率の測定は、ヘーズメーター(村上色彩技術研究所製:HM−65W)を用いて測定した。全光線透過率は85.0%以上であることが好ましい。
Tt(%)=(T
1/T
0)×100
【0114】
ハードコートフィルムのヘーズは、ヘーズメーター(村上色彩技術研究所)を用いて測定し、JIS K−7136(2000年)に準拠して、下記式より算出した。ヘーズは1.0%以下であることが好ましい。
H(%)=(T
d/T
t)×100
H:ヘーズ(曇価)(%)
T
d:拡散透光率(%)
T
t:全光線透過率(%)
【0115】
<硬度(鉛筆硬度)>
得られた硬化膜についてJIS−K5600に従い鉛筆硬度を測定した。
【0116】
<耐擦傷性>
得られた硬化膜に対し、500g/cm
2の荷重下でスチールウール(ボンスター製 #000)を10回擦った時の硬化膜の傷付きを観察し、下記基準で評価した。
○:傷はほとんど見られない
△:傷が多少見られる
×:多くの傷が見られる
【0117】
[総合評価]
<アンチブロッキング性>
半硬化膜(紫外線照射量15mJ/cm
2)のアンチブロッキング性の評価結果を用いた。
【0118】
<伸び率>
塗膜(紫外線照射量0mJ/cm
2)の伸び率が180%以上で、半硬化膜(紫外線照射量15mJ/cm
2)の伸び率が50%以上のものを伸び率良好「○」とし、上記伸び率を満たさないものを伸び率不良「×」とした。
【0119】
<耐擦傷性>
硬化膜の耐擦傷性の評価結果を用いた。
【0120】
[硬化反応の反応率]
硬化反応前後での反応率は、(メタ)アクリロイル基の反応率を指標とし、FT−IR(フーリエ変換型赤外分光)を測定したときに観測される特定波数のピーク高さ比((メタ)アクリロイル基由来のピーク高さ)/(エステル結合由来のピーク高さ))を、未硬化膜、半硬化膜および硬化膜で比較することで換算した。ただし、「(メタ)アクリロイル基由来のピーク高さ」については780〜830cm
−1に見られる赤外吸収をベースラインとみなしてその高さを求めた。
なお、反応率の算出に用いたピークは、以下の波数範囲で観測されるものである。
(メタ)アクリロイル基由来のピーク:802〜814cm
-1
エステル結合由来のピーク:1650〜1800cm
-1
また、測定機器のFT−IR(Perkin Elmer社製 Spectrum100)の測定条件は以下の通りである。
・測定条件
積算回数:4回
分解能:4cm
-1
・反応率算出方法
(硬化反応の反応率)
=[1−((半)硬化後の塗膜で観測されるピーク高さ比)/(未硬化の塗膜で観測されるピーク高さ比)]×100
【0121】
〔実施例・比較例〕
[実施例1]
<硬化性組成物の製造>
四つ口フラスコに、成分(A)として、固形分濃度30重量%の(メタ)アクリル酸エステル系重合体「A−1」を固形分量として25.0重量部、成分(B)として、固形分濃度30重量%の(メタ)アクリル酸エステル系重合体「B−1」を固形分量として75.0重量部、重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF社製「イルガキュア(登録商標)184」)2.5重量部を加え、固形分濃度30重量%の硬化性組成物を得た。
【0122】
<半硬化膜の製造>
厚み100μmの易成形ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み:100μm)に、乾燥後膜厚が4〜5μmとなるようにバーコーター(#14)で硬化性組成物を塗布した。塗布後、80℃、1分の乾燥時間を設け、塗液に含まれる溶剤を除去した。この乾燥後の塗膜を用いて前記の方法により伸び率及びアンチブロッキング性を評価した。
続いて、この塗工フィルムにジーエス・ユアサコーポレーション製の紫外線照射装置(UCI−6NAH−4)を用いて15mJ/cm
2(35mW/cm
2)で紫外線照射を行い、半硬化膜を得た。得られた半硬化膜を用いて前記の方法により伸び率及びアンチブロッキング性を評価した。
結果を表−2に示す。
【0123】
<硬化膜の製造>
A4サイズのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み:125μm)上に乾燥後膜厚4〜5μmとなるように硬化組成物を塗布し、80℃で1分間乾燥を行った。出力密度120Wの高圧水銀灯を光源として、光源下15cmの位置で、アイグラフィック社製紫外線照射装置(EYE UV METER UVPF−A1、PD365)を使用して積算光量500mJ/cm
2(450mW/cm
2)となるように紫外線を照射して、PETフィルム上の硬化性組成物を硬化させて硬化膜を得た。得られた硬化膜を用いて前記の方法により透明性、硬度及び耐傷付性を評価した。
結果を表−2に示す。
【0124】
[実施例2〜4及び比較例1、2]
硬化性組成物中の成分(A)と成分(B)の配合を、表−2に示す配合に変更した以外は実施例1と同様にして硬化性組成物を得た。更に、得られたそれぞれの硬化性組成物を用いて、実施例1と同様にして乾燥塗膜、半硬化膜及び硬化膜を製造し、前記の各評価を行った。これらの結果を表−2に示す。
【0125】
【表2】
【0126】
以上の結果より、本発明によれば、成分(A)と成分(B)とを所定の割合で用いることにより、硬化前には良好な伸び性、アンチブロッキング性を有することから、加工性に優れたものとなり、また、硬化後には、耐傷付性、硬度、透明性に優れた硬化膜を得ることができることが分かる。特に、反応性の高い成分(A)を成分(B)よりも少なく用いた実施例1,2では、成分(A)と成分(B)を同量用いた実施例3,4よりも半硬化膜の伸び率が大きい。
これに対して、成分(A)のみを用いた比較例1では、低紫外線照射量での架橋反応が進行しすぎるため半硬化膜の伸び率が低い。逆に、成分(B)のみを用いた比較例2では、低紫外線照射量での架橋反応の進行が遅いために、半硬化膜の伸び率は大きいが、アンチブロッキング性が悪く、硬化膜の耐擦傷性も劣るものとなる。
【0127】
なお、実施例3及び比較例1,2における紫外線照射量と硬化反応の反応率との関係(紫外線照射量を15mJ/cm
2、50mJ/cm
2、500mJ/cm
2のそれぞれとしたときの反応率)を
図1にグラフ化して示す。この
図1から、比較例1では紫外線照射量を50mJ/cm
2とした場合に反応率が30%超となってしまい、比較例2では紫外線照射量を500mJ/cm
2とした場合でも反応率が60%未満である。一方で実施例3は紫外線照射量を50mJ/cm
2とした場合に反応率が20%未満に抑えられ、また、紫外線照射量を500mJ/cm
2とした場合には反応率が80%以上となっている。即ち、成分(A)と成分(B)の割合を調整することにより、硬化反応の進行度を制御することが可能であることがわかる。